特許第6872997号(P6872997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872997
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ボンボン作成用糸巻装置
(51)【国際特許分類】
   D04D 7/06 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   D04D7/06
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-134295(P2017-134295)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-15004(P2019-15004A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 香織
(72)【発明者】
【氏名】岡 透修
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 海
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−220772(JP,A)
【文献】 特開昭63−139588(JP,A)
【文献】 特開2008−308783(JP,A)
【文献】 特開2016−204763(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3079127(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04D 1/00−11/00
D06Q 1/00− 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンボン作成用の糸巻片に糸を巻き付けるボンボン作成用糸巻装置であって、
前記糸巻片に糸を巻き付ける巻動作、及び前記糸巻片に対する糸の巻位置を巻の中心軸方向に移動する糸案内動作が可能にされ、
前記糸巻片に対する糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示する表示手段を備えることを特徴とするボンボン作成用糸巻装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記中心軸方向に連続して巻位置に対応した糸の色指定を表示することを特徴とする請求項1に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置を表示する座標による表示形態を有し、前記座標上に色指定がプロットされていることを特徴とする請求項2に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記座標が表記された付け替え可能な座標表示盤を備えることを特徴とする請求項3に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記座標上において現巻位置を示す指針を有し、前記指針を、前記中心軸方向の巻位置の移動に連動して前記座標に沿って変位させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項6】
前記糸巻片を回転させる糸巻片回転機構と、前記糸巻片回転機構の回転軸に対して平行に往復動作するスライダーと、前記スライダーに支持され、前記糸巻片に対する糸の繰り出し位置を保持する糸案内とを備え、前記指針が前記スライダーに支持され、前記座標が前記回転軸に平行に設けられることを特徴とする請求項5に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項7】
前記巻動作中の前記糸案内動作が往復動作で可能にされ、
前記表示手段は、前記糸案内動作の1往復を2層相当として、層ごとに前記糸巻片に対する糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置と、何層目かを表示し、層ごとに巻位置に対応した糸の色指定を表示することを特徴とする請求項7に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置を表示する第1座標と、当該第1座標に直交し、何層目かを表示する第2座標とからなる2次元座標による表示形態を有し、前記2次元座標上に色指定がプロットされていることを特徴とする請求項8に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項10】
前記表示手段は、前記2次元座標上において現巻位置を示す指針を有し、前記指針を、前記中心軸方向の巻位置の移動に連動して前記第1座標に沿って変位させるとともに、前記糸案内動作の反転に連動して前記第2座標に沿って1層分変位させることを特徴とする請求項9に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【請求項11】
前記表示手段は、前記2次元座標が表記された付け替え可能な2次元座標表示盤と、前記2次元座標表示盤の盤面を前記指針に近接して保持し、前記糸案内動作の反転に連動して前記2次元座標表示盤を前記第2座標の方向に移動させる表示盤送り機構を備えることを特徴とする請求項10に記載のボンボン作成用糸巻装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンボン作成用の糸巻片に糸を巻き付けるボンボン作成用糸巻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも記載されているように従来からボンボンは、所定の間隔(スペース)をあけて面方向に重ね合わせた半割り状の腕片に、コイル状に糸をグルグル巻に巻き付けて所定の巻数の糸層を形成したものを2個用意し、これを環状に結合させ、前記スペースから刃物(通常は鋏)を入れて糸層の外周側を切断し、該切断部より括り糸で糸層の内周側を束ねた後、再度、半割り状の腕片に分解して束ねた糸層を取り外し、その各糸端を球状に整え(鋏でカットすることもある)て作成される。
特許文献1に記載のボンボン作成用糸巻装置にあっては、半割り状の腕片に糸を巻き付ける機構と、その巻き付けに連動して半割り状の腕片を所定角度で往復回動させる機構と有し、半割り状の腕片の一端と他端との間で巻位置を往復させることで、複数層に糸を巻き付けることができるとともに、巻数の表示手段を有する。同文献中では、表示手段に表示される巻数を基準にして糸色を切り替えることで、種々の模様(半球2色、横縞,縦縞、まだら、水玉が例示される)を有したボンボンを作成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−220772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のボンボン作成用糸巻装置にあっては、計画した図案に従って色種の切替位置を表示する手段を有さない。切替位置のずれは、図案の再現性の低下を招く。したがって、複雑な図案になればなるほど、図案を正確に実現しようとすることが困難である。
また、特許文献1に記載のボンボン作成用糸巻装置にあっては、表示手段に表示されるのは糸の巻数であり、層数を表示しないから、ユーザーにとって層数を認識することが困難であり、ユーザーが層数を誤認するおそれがある。層によって色種の切替位置が異なるなどの複雑な模様を実現しようとする場合に、現在の層数を誤認すると計画した図案を実現できないこととなる。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、ボンボン作成用糸巻装置において、容易に所望の図案のボンボンを作成可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、ボンボン作成用の糸巻片に糸を巻き付けるボンボン作成用糸巻装置であって、
前記糸巻片に糸を巻き付ける巻動作、及び前記糸巻片に対する糸の巻位置を巻の中心軸方向に移動する糸案内動作が可能にされ、
前記糸巻片に対する糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示する表示手段を備えることを特徴とするボンボン作成用糸巻装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記表示手段は、前記中心軸方向に連続して巻位置に対応した糸の色指定を表示することを特徴とする請求項1に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置を表示する座標による表示形態を有し、前記座標上に色指定がプロットされていることを特徴とする請求項2に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記表示手段は、前記座標が表記された付け替え可能な座標表示盤を備えることを特徴とする請求項3に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記表示手段は、前記座標上において現巻位置を示す指針を有し、前記指針を、前記中心軸方向の巻位置の移動に連動して前記座標に沿って変位させることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記糸巻片を回転させる糸巻片回転機構と、前記糸巻片回転機構の回転軸に対して平行に往復動作するスライダーと、前記スライダーに支持され、前記糸巻片に対する糸の繰り出し位置を保持する糸案内とを備え、前記指針が前記スライダーに支持され、前記座標が前記回転軸に平行に設けられることを特徴とする請求項5に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記巻動作中の前記糸案内動作が往復動作で可能にされ、
前記表示手段は、前記糸案内動作の1往復を2層相当として、層ごとに前記糸巻片に対する糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置と、何層目かを表示し、層ごとに巻位置に対応した糸の色指定を表示することを特徴とする請求項7に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0014】
請求項9記載の発明は、前記表示手段は、前記中心軸方向の巻位置を表示する第1座標と、当該第1座標に直交し、何層目かを表示する第2座標とからなる2次元座標による表示形態を有し、前記2次元座標上に色指定がプロットされていることを特徴とする請求項8に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0015】
請求項10記載の発明は、前記表示手段は、前記2次元座標上において現巻位置を示す指針を有し、前記指針を、前記中心軸方向の巻位置の移動に連動して前記第1座標に沿って変位させるとともに、前記糸案内動作の反転に連動して前記第2座標に沿って1層分変位させることを特徴とする請求項9に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【0016】
請求項11記載の発明は、前記表示手段は、前記2次元座標が表記された付け替え可能な2次元座標表示盤と、前記2次元座標表示盤の盤面を前記指針に近接して保持し、前記糸案内動作の反転に連動して前記2次元座標表示盤を前記第2座標の方向に移動させる表示盤送り機構を備えることを特徴とする請求項10に記載のボンボン作成用糸巻装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示するから、図案に従って色種の切替位置を表示することがきるため、容易に所望の図案のボンボンを作成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の斜視図で上部カバーを外した状態を示す。
図3】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置を斜め後方から見た斜視図で上部カバーを外した状態を示す。
図4】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置を上から見た図で上部カバーを外した状態を示す。
図5】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の一方の糸巻片の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の他方の糸巻片の斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の2つの糸巻片及び2つの糸押さえを組み立てた構造の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の2つの糸巻片及び2つの糸押さえを組み立てた構造の斜視図であって、図7とは異なる方向から見たものである。
図9】本発明の一実施形態に係るボンボン作成用糸巻装置の2次元座標表示盤カードの平面図である。
図10図9の2次元座標表示盤カードに従って作成されたボンボンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0020】
〔装置概要〕
図1図4に示すように本実施形態のボンボン作成用糸巻装置1は、筐体10に各種機械部品が組み付けられてなり、図5図6に単体で示す2種の糸巻片70A,70Bが着脱可能である。本装置1は、図10に示すようなボンボン100を作成するためのボンボン作成用糸巻装置であり、糸巻片に糸を巻き付ける機械機構により成る。図1に外観を示し、図2から図4には筐体10の上部カバーを外したものを示す。図1図2図3には巻き付けられる糸Sを示す。さらに本ボンボン作成用糸巻装置1は、図7図8に示す2個の糸押さえ80,80と、図9に示す2次元座標表示盤カード90を備える。
【0021】
本ボンボン作成用糸巻装置1は、手回しクランク11と、回転駆動軸12と、回転支持軸13と、スライダー14と、糸案内15と、指針16と、逆転操作ダイヤル17と、表示盤送り機構のテーブル部18と、方向表示部19と、変速操作スライド20と、糸のテンション保持部材21と、ワンウエイ解除レバー22を備える。
さらにボンボン作成用糸巻装置1は、増速歯車伝動機構30、変速歯車伝動機構31、逆転歯車伝動機構32と、螺旋条付軸33と、ガイドレール34と、反転アシストバネ35R,35Lと、表示盤送り機構の歯車伝動部36と、リンク伝動機構37と、インデックスリブ38とを備える。
糸巻片70Aの回転軸、クランク軸、スライダー14の移動方向がすべて同方向であり、この方向の軸をX軸とし図中に示す。通常、X軸をユーザーに対して左右方向に配置して作業を行う。奥行き方向の軸をY軸、高さ方向の軸をZ軸として図中に示す。
【0022】
筐体10は、ベース部10Aと、ベース部10Aの右部分10A1から上方に隆起した右隆起部10Rと、ベース部10Aの左部分10A2から上方に隆起した左隆起部10Lとを形成しており、右隆起部10Rと左隆起部10Lとの間に糸巻片70A(70B)を配置する空間10Bを形成している。右隆起部10Rの外側に手回しクランク11が配置され、右隆起部10Rの空間10Bに臨む内側に回転駆動軸12が配置され、手回しクランク11の回転が増速歯車伝動機構30により増速されて回転駆動軸12に伝達され、回転駆動軸12を回転させる。
手回しクランク11は、矢印Cで示す順方向に常時回転可能であり、右隆起部10R内において手回しクランク11のクランク軸に固定された歯車の歯間に逆転阻止爪(不図示)が入り込むことで逆転不可にされている。ワンウエイ解除レバー22を手前に倒すことで、その逆転阻止爪が上記歯車の歯間から離脱し、逆転が可能となる。手回しクランク11の逆転は、糸Sの巻き直しなどのために使用できる。
【0023】
回転支持軸13は、左隆起部10Lに回転可能に軸受支持され、左隆起部10Lの内側に配置されている。回転駆動軸12と、回転支持軸13とが同軸(X軸方向)に配置され、空間10Bを介して対向配置されている。回転駆動軸12及び回転支持軸13はそれぞれ、糸巻片70A(70B)の端部(連結部72,73)との連結構造を有する。回転駆動軸12に糸巻片70A(70B)の一端部が連結され、回転支持軸13に糸巻片70A(70B)の他端部が連結されて、糸巻片70A(70B)がX軸方向に架け渡されるように装着される。かかる状態で、手回しクランク11が回されることで、糸巻片70A(70B)が回転し、筐体10の中央部10A3から上に突設された糸案内15から繰り出される糸Sが糸巻片70A(70B)の一対のアーチ部71,71の外側に巻き付けられる。
以上の構成により、糸巻片70A(70B)を回転させる糸巻片回転機構40が構成されており、糸巻片70A(70B)に糸を巻き付ける巻動作が可能である。糸巻片回転機構40の回転軸はX軸方向に配置されていることとなる。
【0024】
手回しクランク11の回転は、変速歯車伝動機構31及び逆転歯車伝動機構32を介して螺旋条付軸33に伝達され、螺旋条付軸33を回転させる。
螺旋条付軸33は、筐体10の中央部10A3を貫くようにX軸方向に延設されている。スライダー14は、X軸方向に延設されたガイドレール34によって左右に直動するように保持されている。螺旋条付軸33の外周の螺旋条33aによって形成された溝に、スライダー14に形成された突起(不図示)が入り込むことで、螺旋条付軸33の回転に伴い、スライダー14を左右に移動させる。螺旋条付軸33の一方の回転によりスライダー14が右に、螺旋条付軸33の他方の回転によりスライダー14が左に移動する。螺旋条付軸33の回転方向の切替は、逆転操作ダイヤル17を一段階(90度)回すことで、逆転歯車伝動機構32により行われる。逆転歯車伝動機構32は、手回しクランク11から螺旋条付軸33までの伝動歯車列の歯車数を奇数から偶数、偶数から奇数に切り替えることで、螺旋条付軸33の回転方向を変える。
逆転操作ダイヤル17が一段階(90度)回転するごとに、リンク伝動機構37を介して方向表示部19がスライダー14の移動方向に対応して左方向への移動指示と右方向への移動指示とに交互に切り替わるとともに、表示盤送り機構の歯車伝動部36を介して、テーブル部18が奥側方向(Y軸の負の方向)へ一段階送られる。表示盤送り機構の歯車伝動部36の末端は、テーブル部18の左右端に設けられたラック18a,18aである。
【0025】
糸案内15及び指針16は、スライダー14に支持されており、スライダー14と一体に左右に往復動作する。糸案内15は、糸巻片70A(70B)に対する糸Sの繰り出し位置を保持しており、巻位置を決定する。したがって、中心軸方向の巻位置の移動に連動して指針16をX座標に沿って変位させる。
糸案内15には、X軸方向に延在し上方に開口するスリット15aが形成されており、ここに糸Sが通される。スリット15a内には糸Sの離脱を防止するフック15bがあるので、フック15bの下に糸Sを通す。
テンション保持部材21は、筐体10の左側面に固定されており、糸Sはテンション保持部材21から、スリット15aを通って、スリット15aが終わる糸案内15の右端から糸巻片70A(70B)へ繰り出される。糸案内15の右端のスリット15aより手前側には、糸止め用切込み15cが設けられているので、糸の切替作業時などに使用できる。
【0026】
糸巻片70A(70B)は、糸Sが巻き付けられる部位である互いに隙間を空けて配置された一対のアーチ部71,71を有する。
回転駆動軸12と回転支持軸13に架設支持された糸巻片70A(70B)のアーチ部71,71の右端部から左端部までを、糸案内15から繰り出される糸Sが往復するように、螺旋条33aは限定した範囲に設けられている。
スライダー14が右へ移動していき、スライダー14の突起が螺旋条33aの溝から離脱すると、手回しクランク11をそれ以上回しても(螺旋条付軸33が回転し続けても)、スライダー14は移動しないが、反転アシストバネ35Rによって螺旋条33a側に付勢されており、逆転操作ダイヤル17の操作に従って螺旋条付軸33が逆転することで、スライダー14の突起が螺旋条33aに捕捉されて、スライダー14が左へ移動する。スライダー14が左へ移動した場合も、反転アシストバネ35Lが同様に作用し、スライダー14が左移動から右移動に反転可能である。
以上の構成により、糸巻片70A(70B)に対する糸Sの巻位置を巻の中心軸方向に移動する糸案内動作が可能にされており、さらに巻動作中の糸案内動作が往復動作で可能にされている。また、アーチ部71,71から糸Sが左右にはみ出さず、かつ、アーチ部71,71の右端から左端まで等ピッチで糸Sを巻き付けることができる。
【0027】
筐体10の中央部10A3には、螺旋条付軸33と平行に断続するようにインデックスリブ38が配列している。一つのインデックスリブ38は、YZ平面に平行な板状に形成されており、複数のインデックスリブ38がX軸方向に図9のマス目のX軸方向の配列と同ピッチで等間隔に配置されている。
スライダー14には、弾性突起14aがその先端をインデックスリブ38に接触するように突設されており、スライダー14の移動に伴い、インデックスリブ38が弾性突起14aを弾いて、「カチッ」という音が発生する。また、筐体10を押さえているユーザーの手に触覚で感知される。
【0028】
表示盤送り機構のテーブル部18には、図9に示す2次元座標表示盤カード90が設置される。テーブル部18の奥側端部と手前側端部には、係止爪18bが形成されており、ここに2次元座標表示盤カード90が付け替え可能に係止される。これにより、表示盤送り機構のテーブル部18は、2次元座標表示盤カード90の盤面を指針16に近接して保持する。
図9には、テーブル部18に2次元座標表示盤カード90が設置されたときの、図1等と共通のX軸、Y軸を示す。また、指針16を模式的に示す。
2次元座標表示盤カード90において、糸Sを巻く際の中心軸方向の巻位置を表示する第1座標はX軸座標に相当し、何層目かを表示する第2座標はY軸座標に相当し、第1座標と第2座標とによる2次元座標は、マス目により表記されている。
指針16は現巻位置を示す。指針16がX軸方向に1マス移動するごとに糸Sを3回巻く、すなわち、糸巻片70A(70B)が3回転する。又は、変速操作スライド20を操作に従って変速歯車伝動機構31により、指針16(スライダー14)の送りが低速化し、指針16がX軸方向に1マス移動するごとに糸Sを6回巻く、すなわち、糸巻片70A(70B)が6回転する。なお、ここでの1マスあたりの回転数は一例に過ぎない。
2次元座標表示盤カード90上のマス目のY軸方向の線と、前述のインデックスリブ38とが対応している。
【0029】
図9に示す2次元座標表示盤カード90には、一例としてアルファベットの「A」の図案のボンボンを作成するための色指定が既にプロットされている。2次元座標表示盤カード90の中央には完成図柄94が表記されている。図柄「A」の部分に相当するマス目が濃く塗られており、余白の部分に相当するマス目が白抜きにされている。マス目への指定は、「A」の部分を、黒にするか赤にするか、余白の部分を白にするか黄色にするかなどまでは必ずしも指定する必要はなく、一のマス目と他の特定のマス目とを同じトーンにする指示や、異なるトーンにする指示をモノクロ表現等により表記したものでもよい。もちろん、カラー表現により、より厳密に色調を指定し、場合により3種以上の色種をプロットとしたものを実施してもよい。使用する色種が多いほど、色調を指定するカラー表現することが好ましい。
【0030】
本装置1にあっては、以上の色指定の異なるマス目の境界を指針16が指すことをもって、糸巻片70A(70B)に対する糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示する。すなわち、指針16がマス目の境界を指すとき、巻動作を停止して糸Sを切り替えるべきことを示す。
指針16がマス目の境界を指すとき、インデックスリブ38が弾性突起14aを弾くので、ユーザーは聴覚又は/及び触覚により糸の切替位置を認識することでき、2次元座標表示盤カード90を視覚的に確認するのみの場合よりも、正確な位置で糸の切替作業を行うことができる。このように、糸Sの色種を切り替えるべき糸巻片70A(70B)に対する糸Sの巻位置の設定単位は、一つのマス目のX軸方向の長さとなっている。本装置1は、かかる設定単位と同ピッチのインデックスを聴覚又は/及び触覚で感知させるインデックス表示手段を、上述したインデックスリブ38及び弾性突起14aを含む機械機構により構成している。2次元座標表示盤カード90上のマス目のY軸方向の線と、インデックスリブ38とを合せずに、単に一マス相当進むごとにインデックスが表示されるようにしてもよい。いずれにしてもユーザーに巻作業の進行を巻位置の設定単位で聴覚又は/及び触覚により認識させることができ、色種切替位置の到来について注意を喚起することができる。
【0031】
以上のようにして2次元座標表示盤カード90、指針16及びこれを移動させる機構により、糸の色種を切り替える指示を表示する表示手段が本装置1に構成されている。
また、切り替えるべき位置だけでなく、2次元座標表示盤カード90上のマス目の中の色によって、切り替えるべき糸の色種を表示する。例えば、白抜きのマス目の次のマス目の中の色を赤にしておけば、白から赤に切り替える指示を表示できる。
これに対し、あるマス目群に「E」を表記し、他のマス目群に「F」を表記し、「E」に対応させる色は任意で、「F」に対応させる色は「E」に対応させる色以外で任意とした場合、「E」のマス目と「F」のマス目との境界を指針16が指すことをもって色種を切り替える指示を表示できるが、何色から何色に切り替えるべきか、マス目内で使用する色は何かまでは表示しない。
本実施形態のボンボン作成用糸巻装置1は、巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示し、さらに切り替えるべき糸の色種を表示し、さらに巻の中心軸(X軸)方向に連続して巻位置に対応した糸の色指定を表示する。
本実施形態の2次元座標表示盤カード90上のマス目に色を付けることで、何色から何色に切り替えるべきか、マス目内で使用する色は何かをX軸方向に連続して表示することができる。したがって、糸の切替時にユーザーにとって、何色から何色に切り替えるべきかがわかりやすいことはもちろん、どのタイミング(どの巻位置)でも巻いている糸Sの色種が正しいかを確認することができ、間違えに早期に気が付きやすい。例えば、切替位置を素通りする間違えを事後的にユーザーに気が付かせることができる。間違えが有れば、上述のように手回しクランク11を逆転させて糸Sを巻き戻してからやり直すことができる。早期に気が付けば巻き戻す量も少なくて済む。
【0032】
なお、2次元座標表示盤カード90上のマス目がすべて白抜きにされたものを実施することで、ユーザーがペンを使って色指定をマス目にプロットすることができ、ユーザーの自由創作を促すことができる。
【0033】
本装置1によれば、糸案内15が折り返して次の層の巻動作に移行する際に、上述したようにテーブル部18が奥側方向(Y軸の負の方向)へ一段階送られる。この一段階の送り量は、2次元座標表示盤カード90上のY軸方向のマス目のピッチに対応しているので、指針16が次の層に対応するマス目に移動する。すなわち、糸案内動作の反転に連動して指針16を第2座標(Y座標)に沿って1層分変位させる。
図9に示すように2次元座標表示盤カード90上において、1層目の色指定を表示するマス目の列の左右には「1」を、2層目の色指定を表示するマス目の列の左右には「2」が表記され、全7層について同様に表記されている(層数や一列のマス目の数は一例である。)。図9に示す2次元座標表示盤カード90において、上部7列91aは一方の糸巻片70Aに巻く際の色指定用であり、下部7列91bは他方の糸巻片70Bに巻く際の色指定用である。但し、糸巻片70Aと糸巻片70Bとを入れ替えても同じ図柄のボンボンが作成される。1層目の開始マス92a,92bに指針16を合せることは、手回しクランク11及び逆転操作ダイヤル17を操作して行う。その後は、手回しクランク11による巻操作と、逆転操作ダイヤル17により糸案内15の反転操作に連動して、指針16がマス目を順に移動する。
以上のより本装置1の表示手段は、糸案内動作の1往復を2層相当として、層ごとに糸巻片70A(70B)に対する糸Sの巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示し、さらに表示手段は、X軸方向の巻位置と、何層目かを表示し、層ごとに巻位置に対応した糸の色指定を表示する。例えば、図9に示す指針16Aは、4層目であることを示すとともに、X軸方向の巻位置としては右から3マス目の中央であることを示す。
【0034】
〔糸巻片、糸押さえ〕
さらに、糸巻片70A(70B)及び糸押さえ80につき説明する。
図5図6に示すように糸巻片70A(70B)は、一対のアーチ部71,71を有する。アーチ部71,71は板状であり、面に垂直な方向に所定の間隔を隔てて配置され、アーチ部71,71の両端は、連結部72,73によって互いに連結されている。アーチ部71,71の凹側及び凸側の縁は、X軸に平行な縁が、段差を介して連続した波形状に形成されており、巻かれた糸(特に一層目)のずれを防止する。
連結部72は回転支持軸13に連結される部分であり、リブ72aと凹部72bが形成されており、回転支持軸13に嵌合可能であり、回転駆動軸12に嵌合不能な形状である。
連結部73は回転駆動軸12に連結される部分であり、上記リブ72aに相当するリブを有さず、凸部73bが形成されており、回転駆動軸12に嵌合可能であり、回転支持軸13に嵌合不能な形状である。
【0035】
図7図8に示すように糸巻片70Aと糸巻片70Bは、互いのアーチ部71の凹側を対向させて連結し、略楕円状のリングを構成する。
図5に示すように糸巻片70Aの連結部72にメス部74aが形成され、糸巻片70Aの連結部73にオス部74bが形成されている。図6に示すように糸巻片70Bの連結部72にオス部74cが形成され、糸巻片70Bの連結部73にメス部74dが形成されている。メス部74aとオス部74cとが嵌合するとともに、オス部74bとメス部74dとが嵌合することで、図7図8に示すように糸巻片70Aと糸巻片70Bとが連結する。
【0036】
図7図8に示すように、さらに糸押さえ80の両端部81,81が糸巻片70Aと糸巻片70Bとの連結面を跨って、糸巻片70Aと糸巻片70Bとの離脱を防止するように嵌る。
糸押さえ80の中央部82がアーチ部71に対して、連結した糸巻片70Aと糸巻片70Bとで構成するリングの中心軸B方向に所定間隔を隔てて配置される。中央部82の縁がアーチ部71の凸側の縁と略同形状に形成されており、X軸方向のどの位置でも、中央部82の縁とアーチ部71の凸側の縁との間隔距離が略均等とされている。一対のアーチ部71,71に巻かれた糸を糸押さえ80の中央部82で押さえるためである。
図8に示すように、括り糸の通し部75が連結部72、連結部73のそれぞれに形成されており、アーチ部71,71の間のギャップ76に連通して両側に設けられる。図7図8に示す隔壁77によって、一対のアーチ部71,71に巻かれた糸が括り糸の通し部75に掛かりにくくなるように規制する。したがって、通し部75に括り糸を通しやすい。
図1図5図6に示すように隔壁77には、糸Sの仮止めに使用できる糸止め用切込み78が形成されたものがある。糸Sの巻き始め端部や巻き終わり端部を糸止め用切込み78に係止することができる。糸止め用切込み78は左右両側に設けられる。糸Sの巻き始めと巻き終わりが左右逆端である場合に対応するためである(図9のカードの場合が相当)。
糸巻片70A、糸巻片70B、糸押さえ80の互いの連結はオスメス構造の弾性的な嵌め合いによって実現しており、連結した時の互いの結合力が適度に得られているとともに、繰り返しの組立て、分解が容易にされている。
【0037】
〔作業手順〕
次に、改めて作業手順を説明する。
糸巻片70Aを図1に示すように回転駆動軸12及び回転支持軸13に装着し、2次元座標表示盤カード90をテーブル部18に設置し、指針16を最左端に配置し、指針16が1層目の開始マス92aにあるようにテーブル部18を配置する(順不同)。糸巻片70Aと糸巻片70Bのいずれを先に使ってもよい。
【0038】
次に、第1の色の糸Sをテンション保持部材21に蛇行するように通して、糸案内15に通し、糸巻片70Aの方へ引き出して、糸止め用切込み78に係止する。
次に、手回しクランク11を順方向Cに回して糸巻片70Aへの糸Sの巻き付けを始める。この巻き付け開始前に、必要により変速操作スライド20により巻のピッチを選択しておく。変速操作スライド20は、使用する糸Sの太さに応じて切り替え操作するとよい。すなわち、糸Sが比較的細い場合に巻のピッチを上げ、糸Sが比較的太い場合に巻のピッチを下げるように変速操作スライド20を操作し、ボンボン100の糸密度を適度に確保する。
【0039】
巻動作に連動して、指針16が開始マス92aから右隣りのマスへと移動する。マスの境目では前述したインデックスが表示される。開始マス92aから3マス目と4マス目との境を指針16が指したら、一旦手回しクランク11を止め、糸Sを第2の色に切り替える。糸Sの色種の切替は、第1の色の糸Sの糸巻片70Aに巻かれる前の所定位置を切ってその端部を、第2の色の糸と結ぶことにより行うことができる。
【0040】
次に、手回しクランク11を回して巻動作を再開し、開始マス92aから6マス目と7マス目との境を指針16が指したら、一旦手回しクランク11を止め、糸Sを第1の色に切り替える。
以後、図9の2次元座標表示盤カード90とこれに対する指針16が指し示す位置とによる表示に従って、糸Sの色種を切り替える。途中、糸案内15が最右端及び最左端で止まるから、逆転操作ダイヤル17を一段階回して指針16を次の層に進める。
指針16が前半の最終マス93aまで来て糸案内15が止まったら、糸巻片70Aへの巻きが完了であるので、糸Sを切って糸巻片70Aを取り外し安置する。
【0041】
次に後半の巻作業として、糸巻片70Bを回転駆動軸12及び回転支持軸13に装着し、指針16が後半の1層目の開始マス92bにあるようにテーブル部18を配置する(順不同)。
前半の巻作業と同様に巻作業を進め、指針16が後半の最終マス93bまで来て糸案内15が止まったら、糸巻片70Bへの巻きが完了であるので、糸Sを切って糸巻片70Bを取り外し、安置しておいた糸巻片70Aと連結し、さらに糸押さえ80,80を連結して糸を仮押さえする。
全巻糸の外周側を鋏み等で切断し、括り糸を通し部75に通して、全巻糸の内周側を束ねて同括り糸で縛った後、糸押さえ80,80、糸巻片70A、糸巻片70Bを互いに分離して、束ねた糸層を取り外し、その各糸端を球状に整えると、図10に示すようなボンボン100が完成する。図10において、補助線101は、糸巻片70Aに巻かれた糸層と、糸巻片70Bに巻かれた糸層との合わせ面を、102は括り糸を示す。括り糸102は、ボンボン100の止め紐としてループ状に延出させておくとよい。
【0042】
〔その他〕
以上の本実施形態のボンボン作成用糸巻装置1によれば、糸の巻位置に対応して糸の色種を切り替える指示を表示するから、図案に従って色種の切替位置を表示することがきるため、容易に所望の図案のボンボンを作成が可能である。
巻動作に連動した往復の糸案内動作により多層巻が可能であり、各層ごとに色指定が可能であるから、複雑な図案のボンボンの作成が可能である。
2次元座標表示盤カード90と指針16による表示であるので、図案に従った作業計画の全体と、その中における現在巻位置を一望して認識できる。
2次元座標表示盤カード90が付け替え可能であるから、多様な図案をユーザーに提供することができるとともに、ユーザーの自由創作を促すことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ボンボン作成用糸巻装置
10 筐体
10A ベース部
10A1 右部分
10A2 左部分
10A3 中央部
10B 空間
10L 左隆起部
10R 右隆起部
11 手回しクランク
12 回転駆動軸
13 回転支持軸
14 スライダー
14a 弾性突起
15 糸案内
15a スリット
15b フック
16 指針
17 逆転操作ダイヤル
18 テーブル部
18a,18aラック
18b 係止爪
19 方向表示部
20 変速操作スライド
21 テンション保持部材
22 ワンウエイ解除レバー
30 増速歯車伝動機構
31 変速歯車伝動機構
32 逆転歯車伝動機構
33 螺旋条付軸
33a 螺旋条
34 ガイドレール
35L 反転アシストバネ
35R 反転アシストバネ
36 表示盤送り機構の歯車伝動部
37 リンク伝動機構
38 インデックスリブ
40 糸巻片回転機構
70A,70B糸巻片
71 アーチ部
72,73 連結部
80 糸押さえ
90 2次元座標表示盤カード
100 ボンボン
102 括り糸
S 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10