(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記土台部は、前記長さ方向に延在する部分を含む第1貫通孔を有する基部と、少なくとも後側端部が前記第1貫通孔に収容され、前記第1貫通孔の内周面に対して前記長さ方向に進退可能な第1進退部を有する一方、前記高さ方向延在部は、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有して前記高さ方向に延在する柱部と、少なくとも下側端部が前記第2貫通孔に収容され、前記第2貫通孔の内周面に対して前記高さ方向に進退可能な第2進退部を有し、
更に、前記第1進退部の前記後側端部と前記第2進退部の前記下側端部を連結し、延在方向の少なくとも一部分が変形自在な構造を有する連結部材を備え、
前記寸法調整機構は、前記柱部から突出する前記第2進退部の突出長さを調整可能になっており、
前記第2進退部が前記高さ方向に移動すると、前記第2進退部に前記連結部材を介してつながっている前記第1進退部が、前記連結部材から受けた力で前記長さ方向に移動する、請求項1に記載の板状材運搬用台車。
前記下側係止部の下側端部は、前記第1支点を中心として回転可能な第1円環部材の外周側に取り付けられ、前記上側係止部の上側端部は、前記第2支点を中心として回転可能な第2円環部材の外周側に取り付けられる、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の板状材運搬用台車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カゴ天井の交換の際、新しいカゴ天井は、例えば次に示す手順でエレベーターまで運ばれる。詳しくは、先ず、新しいカゴ天井を、トラックから降ろし、市販の台車に載置する。カゴ天井は、重量物であって倒れると危険を伴う。したがって、カゴ天井は、例えば2人の保守作業員で幅方向の左右から支えられ台車に縛りつけられた状態で運ばれる。
【0005】
係る背景において、カゴ天井をカゴまで運ぶ際の搬入経路に、高さが低い箇所や幅が狭い箇所が存在することがある。このような場合、当該箇所を通過するために、保守作業員が、台車上のカゴ天井を持ち上げて台車に対するカゴ天井の相対位置を一時的に変更したり、カゴ天井を台車から一旦降ろさなければならない。よって、当該措置に多大な労力が必要になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、板状材の載置状態での高さ及び長さを容易に変更でき、搬入経路の構造に因らず板状材を容易かつ安全に運搬できる板状材運搬用台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る板状材運搬用台車(以下、単に台車という)は、板状材を運搬するのに用いられる台車であって、高さ方向の下側であって長さ方向の前側及び後側に取り付けられた車輪、及び前記高さ方向の上側であって前記長さ方向の前側に第1支点に対して回動可能に取り付けられ、前記板状材の下側角部を係止可能で側面視において略L字状の下側係止面を含む下側係止部を有し、前記長さ方向の長さが変動可能である土台部と、前記板状材の後面であって前記高さ方向の上側を係止可能な略平面状の上側係止面を含んで前記高さ方向の上側に第2支点に対して回動可能に取り付けられる上側係止部を有し、前記土台部の前記長さ方向の後側であって前記高さ方向の上側から前記高さ方向の上方に延在して高さが変動可能である高さ方向延在部と、前記土台部の前記長さ、及び前記高さ方向延在部の前記高さを調整可能な寸法調整機構と、を備える。
【0008】
本発明によれば、下側係止部が土台部の上側であって前側に配置され、上側係止部が土台部の後側から高さ方向に延在する高さ方向延在部の上側に配置される。また、寸法調整機構で高さ方向延在部の高さと土台部の長さを変更できる。したがって、上側が上側係止部に係止され、下側が下側係止部に係止される板状材の長さ方向に対する傾斜角度を適切に調整できる。その結果、搬入経路における高さが低い箇所を通過する際には、板状材をより長さ方向に近い角度に傾斜させるだけで当該箇所を容易に通過でき、幅が狭い箇所を通過する際には、台車長さが短くなるように板状材をより高さ方向に近い角度に傾斜せるだけで当該箇所を容易に通過できる。よって、搬入経路の構造に因らず板状材を容易かつ安全に運搬できる。
【0009】
また、本発明において、前記土台部は、前記長さ方向に延在する部分を含む第1貫通孔を有する基部と、少なくとも後側端部が前記第1貫通孔に収容され、前記第1貫通孔の内周面に対して前記長さ方向に進退可能な第1進退部を有する一方、前記高さ方向延在部は、前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔を有して前記高さ方向に延在する柱部と、少なくとも下側端部が前記第2貫通孔に収容され、前記第2貫通孔の内周面に対して前記高さ方向に進退可能な第2進退部を有し、更に、前記第1進退部の前記後側端部と前記第2進退部の前記下側端部を連結し、延在方向の少なくとも一部分が変形自在な構造を有する連結部材を備え、前記寸法調整機構は、前記柱部から突出する前記第2進退部の突出長さを調整可能になっており、前記第2進退部が前記高さ方向に移動すると、前記第2進退部に前記連結部材を介して
つながっている前記第1進退部が、前記連結部材から受けた力で前記長さ方向に移動してもよい。
【0010】
上記構成によれば、柱部からの第2進退部の突出長さを調整するだけで、高さ方向延在部の高さと土台部の長さを同時に調整できる。より詳しくは、高さ方向延在部の高さを高く変更するだけで、それに連動する土台部の長さを短くでき、高さ方向延在部の高さを低く変更するだけで、それに連動する土台部の長さを長くできる。よって、長さ方向に対する板状材の傾きを簡単な操作で容易に調整できる。
【0011】
また、本発明において、前記寸法調整機構は、前記第2進退部の後側端部に前記高さ方向に延在するように設けられたラックと、ラックに噛合するピニオンと、前記ピニオンを回動させるためのハンドルと、を有してもよい。
【0012】
上記構成によれば、ハンドルを操作するだけで、長さ方向に対する板状材の傾きを自在に調整できる。
【0013】
また、本発明において、前記延在方向の少なくとも一部分が、鋼製のチェーンで構成され、前記チェーンを案内するスプロケットと、前記チェーンの下側を案内するガイド部と、を備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、連結部材の一部を高さ方向から長さ方向に円滑に屈曲させることができ、連結部材を介した第1進退部と第2進退部の連動動作を円滑なものとできる。
【0015】
また、本発明において、前記下側係止部の下側端部は、前記第1支点を中心として回転可能な第1円環部材の外周側に取り付けられ、前記上側係止部の上側端部は、前記第2支点を中心として回転可能な第2円環部材の外周側に取り付けられてもよい。
【0016】
上記構成によれば、下側及び上側係止面の長さ方向に対する傾斜角度を容易に調整できる。
【0017】
また、本発明において、前記下側係止面と前記上側係止面が、ゴムで構成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、下側及び上側係止面と板状材との間に大きな摩擦力を生成させることができ、板状材を下側及び上側係止面で確実に係止できる。また、下側及び上側係止面との接触で板状材に傷が付くことも抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、板状材の載置状態での高さ及び長さを容易に変更でき、搬入経路の構造に因らず板状材を容易かつ安全に運搬できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の説明及び図面で、X方向は、板状材運搬用台車(以下、単に台車という)1の長さ方向であり、Y方向は、台車1の幅方向であり、Z方向は、台車1の高さ方向である。X方向、Y方向、及び高さ方向は、互いに直交する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る台車1を側方(Y方向の外方側)から見たときの側面図であり、板状材の一例としてのカゴ天井98を運搬している状態の台車1を示す側面図である。また、
図2は、台車1の高さ方向延在部50の上側を斜め上方から見たときの斜視図であり、
図3は、台車1の土台部20の前側を上方から見たときの平面図である。なお、
図1では、後述する基部21及び柱部51に収容された内部構造を明確に図示するため、当該内部構造を実線で示す。
【0023】
図1に示すように、台車1は、土台部20、及び2つの高さ方向延在部50を備え、土台部20は、基部21、及び2つの第1進退部22を含む。基部21は、直方体(板状)の外観を有し、2つの第1貫通孔24を有する。
図3に示すように、2つの第1貫通孔24は、同一形状を有し、Y方向に間隔をおいて配置される。各第1貫通孔24は、X方向延在孔部24aと、円弧状延在孔部24bを含む。X方向延在孔部24aは、略直方体(板状)の内部空間を画定してX方向に延在し、X方向前側に略矩形の開口を有する。
【0024】
円弧状延在孔部24bは、X方向延在孔部24aにつながる。円弧状延在孔部24bは、X方向前側の開口と、Z方向上側開口を有する。X方向前側の開口は、X方向延在孔部24aのX方向後側の開口につながり、Z方向上側開口は、Z方向上側を向く。円弧状延在孔部24bは、X方向前側の開口とZ方向上側開口をつなぐように円弧状に湾曲し、その延在方向はX方向からZ方向に略90度変動する。
【0025】
各第1進退部22は、本体部30、前側車輪31、下側係止部32、及び2つの第1円環部材33を含む。本体部30のYZ平面での断面形状は、第1貫通孔24のX方向延在孔部24aのYZ平面での断面形状よりも僅かに小さく、その断面形状に対応する矩形状になっている。本体部30の後側端部は、台車1のX方向長さに拘わらずX方向延在孔部24aに収容され、本体部30においてのX方向延在孔部24aに収容される部分は、土台部20のX方向長さが短くなるにしたがって大きくなる。
【0026】
図1に示すように、下側係止部32は、本体部30の前側かつ上側に設けられる。詳しくは、本体部30の前側かつ上側には、Y方向に延在する丸棒状部分38が設けられる。丸棒状部分38の長さは、本体部30の幅(Y方向長さ)よりも長く、丸棒状部分38は、本体部30のY方向両側で本体部30からY方向外方に突出する突出部39を有する。突出部39は、丸棒状部分38における突出部以外の他部分よりも外径が小さい丸棒形状を有し、突出部39の中心軸は、上記他部分の中心軸と同一直線上に位置する。
【0027】
各第1円環部材33は、例えば、冷やし嵌め、焼き嵌め、又は圧入により突出部39の外周面に取り付けられる。第1円環部材33は、静止摩擦力よりも大きい力が加わると突出部39の中心軸を支点として回動する。突出部39の中心軸は、第1支点を構成する。なお、第1円環部材33を、上記他部分のY方向端面に当接するまで突出部39にY方向に嵌め込み、その後、図示しない止め輪を、突出部39のY方向先端部に取り付けてもよく、この場合、第1円環部材33の離脱を抑制できて好ましい。
【0028】
下側係止部32は、Y方向外方から見た時の側面視において略L字状の形状を有し、略L字状の下側係止面40を含む。下側係止部32は、金属又は樹脂製の本体部41と、ゴム製の係止面被覆部42を含む。本体部41は、側面視において略L字状の形状を有し、係止面被覆部42は、本体部41のL字状の内側面に接着剤等で固定される。係止面被覆部42の表側面は、下側係止面40を構成する。
【0029】
前側車輪31は、公知の構造で本体部30の前側かつ下側に回動自在に取り付けられる。前側車輪31は、その中心軸のY方向に対する傾斜角度が変動可能な状態で本体部30に取り付けられる。また、台車1は、2つの後側車輪35を有する。2つの後側車輪35は、公知の構造で基部21の後側かつ下側にY方向に間隔をおいた状態で回動自在に取り付けられる。後側車輪35は、その中心軸のY方向に対する傾斜角度が変動可能な状態で基部21に取り付けられる。前側車輪31の下端の高さ位置は、後側車輪35の下端の高さ位置に略一致する。
【0030】
各高さ方向延在部50は、土台部20の後側かつ上側からZ方向上方に延在する。
図2に示すように、2つの高さ方向延在部50は、X方向の同じ位置にY方向に間隔をおいて配置される。
図1に示すように、各高さ方向延在部50は、柱部51と、第2進退部52を有し、柱部51は、Z方向に延在する第2貫通孔54を含む。第2貫通孔54は、Z方向上側開口54aと、Z方向下側開口54bを含む。柱部51は、Z方向下側開口54bが第1貫通孔24のZ方向上側開口24cに連通している状態で溶接等により基部21に接合される。
【0031】
第2進退部52は、本体部60、上側係止部62、及び2つの第2円環部材63を含む。本体部60のXY平面での断面形状は、第2貫通孔54のXY平面での断面形状よりも僅かに小さく、その断面形状に対応する矩形状になっている。本体部60の下側端部は、高さ方向延在部50の長さに拘わらず第2貫通孔54に収容され、本体部60において第2貫通孔54に収容される部分は、高さ方向延在部50の高さ低くなるにしたがって大きくなる。
【0032】
上側係止部62は、本体部60の上側に設けられる。本体部60の上側端部には、Y方向に延在する丸棒状部分68が設けられる。丸棒状部分68の長さは、本体部60の幅(Y方向長さ)よりも長く、丸棒状部分68は、本体部60のY方向両側で本体部60からY方向外方に突出する突出部69を有する。突出部69は、丸棒状部分68における突出部以外の他部分よりも外径が小さい丸棒形状を有し、突出部69の中心軸は、その他部分の中心軸と同一直線上に位置する。
【0033】
第2円環部材63は、例えば、冷やし嵌め、焼き嵌め、又は圧入により突出部69の外周面に取り付けられる。第2円環部材63は、静止摩擦力よりも大きい力が加わると突出部69の中心軸を支点として回動する。突出部69の中心軸は、第2支点を構成する。なお、第2円環部材63を、上記他部分のY方向端面に当接するまで突出部69にY方向に嵌め込み、その後、図示しない止め輪を、突出部69のY方向先端部に取り付けてもよく、この場合、第2円環部材63の離脱を抑制できて好ましい。
【0034】
上側係止部62は、板形状を有し、略矩形状の上側係止面70を含む。上側係止部62は、金属又は樹脂製の本体部71と、ゴム製の係止面被覆部72を含む。本体部71は、略直方体の形状を有し、係止面被覆部72は、本体部47の上面に接着剤等で固定される。係止面被覆部72の上面が上側係止面70を構成する。
【0035】
台車1は、更に、連結部材80と、スプロケット81を備える。連結部材は、例えば、無限軌道(キャタピラー(登録商標))の一部で構成され、非環状のチェーンで構成される。より詳しくは、連結部材80は、例えば、金属製のピース(リンク)88を多数連結した履帯で構成される。連結部材80の一方側端部は、第1進退部22のX方向後側端部に接続され、連結部材80の他方側端部は、第2進退部52の下側端部に接続される。連結部材80は、第1貫通孔24と第2貫通孔54の接続部を跨ぐように、第1貫通孔24の一部と第2貫通孔54の一部に収容される。円弧状延在孔部24bの下側には、摩擦力が小さい材料、例えば樹脂材で構成されたガイド部82が設けられる。連結部材80の延在方向の一部は、そのガイド部82に案内されるように円弧状延在孔部24b内を移動する。
【0036】
図1に示すように、連結部材80のピース88における最も厚さが厚い箇所のYZ断面は、第1貫通孔24のX方向延在孔部24aのYZ断面よりも僅かに小さく、当該YZ断面に対応する形状を有する。また、スプロケット81は、その外周面の一部が第1貫通孔24の円弧状延在孔部24bの上側屈曲部に沿うように基部21に回転自在に取り付けられる。スプロケット81は、図示しない複数の突起を有する。複数の突起は、周方向に互いに間隔をおいて配置され、各突起は径方向に延在する。各突起は、例えば、連結部材80の隣り合うピース88間に生成される隙間に係合する。連結部材80は、円弧状延在孔部24bに位置する部分の少なくとも一部がスプロケット81に案内される。その結果、連結部材80の進行方向が、Z方向からX方向、又はX方向からZ方向へ円滑に変動可能になる。
【0037】
台車1は、更に、ラックピニオン機構90を備える。詳しくは、第2進退部52のX方向後側面には、Z方向に延在するラック91が設けられ、柱部51には、ピニオン92が回動自在にX方向後側に取り付けられる。ピニオン92は、ラック91に噛合する。ピニオン92は、Y方向に延在するピニオン軸94(
図2参照)のY方向の両端部に設けられる。
【0038】
図2に示すように、台車1は、更にギアボックス96を備える。ピニオン軸94は、ギアボックス96を通過し、例えば転がり軸受を介してギアボックスのケースに回転自在に固定される。ピニオン軸94は、ギアボックス96内に位置する部分に傘歯車(図示せず)を有する。ピニオン軸94の傘歯車は、X方向に延在する軸部材(図示せず)の一方側端部に設けられた傘歯車に噛合する。その軸部材の他方側端部には、ハンドル97が取り付けられる。ラックピニオン機構90及びハンドル97は、寸法調整機構を構成する。
【0039】
上記構成において、ユーザがハンドル97を時計回りに回転させると、上記軸部材がハンドル97側から見たとき時計回りに回転し、軸部材の回転動力が互いに噛合する2つの傘歯車によってピニオン軸94の回転動力に変換される。この回転動力の変換によって、ピニオン軸94が、ピニオン92側から見たとき時計回りに回転し、ピニオン92(
図1参照)が時計回りに回転する。その結果、ピニオン92に対して第2進退部52がZ方向上側に移動し、高さ方向延在部50の高さが高くなり、上側係止部62がZ方向上方に移動する。
【0040】
また、第2進退部52がZ方向上側に移動すると、第2進退部52に連結部材80を介して
つながっている第1進退部22が、連結部材80に引っ張られてX方向後側に移動し、第1貫通孔24内に移動する。すなわち、第1進退部22が、第2進退部52のX方向上方の動きに連動してX方向後側に移動し、土台部20のX方向長さが短くなる。
【0041】
このようにして、高さ方向延在部50が、
図2に示す状態から
図4に示す柱部51から第2進退部52がよりZ方向上方に突出した状態に移行すると共に、土台部20が
図3に示す状態から
図5に示す第1進退部22がより第1貫通孔24に収容された状態に移行する。よって、上側係止部62の上側係止面70と下側係止部32の下側係止面40に係止されたカゴ天井98がよりX方向に近い寝そべった状態になり、その結果、台車1が高さが低い箇所を容易に通過できる。
【0042】
他方、ユーザがハンドル97を反時計回りに回転させると、上記軸部材がハンドル97側から見たとき反時計回りに回転し、軸部材の回転動力が互いに噛合する2つの傘歯車によってピニオン軸94の回転動力に変換される。この回転動力の変換によって、ピニオン軸94が、ピニオン92側から見たとき反時計回りに回転し、ピニオン92(
図1参照)が反時計回りに回転する。その結果、ピニオン92に対して第2進退部52がZ方向下側に移動し、高さ方向延在部50の高さが低くなり、上側係止部62がZ方向下方に移動する。
【0043】
また、第2進退部52がZ方向下側に移動すると、第2進退部52に連結部材80を介して
つながっている第1進退部22が、連結部材80に押し出されてX方向前側に移動する。すなわち、第1進退部22が、第2進退部52のX方向下方の動きに連動してX方向前側に移動し、土台部20のX方向長さが長くなる。上述のように、連結部材80のピース88における最も厚さが厚い箇所のYZ断面が、第1貫通孔24のX方向延在孔部24aのYZ断面よりも僅かに小さく、当該YZ断面に対応する形状を有する。したがって、連結部材80が、移動中に上側に屈曲する等の変形を起こしにくく、第1進退部22は連結部材80に円滑な動作で押し出される。
【0044】
このようにして、高さ方向延在部50が、
図4に示す状態から
図2に示す第2進退部52がより柱部51の第2貫通孔54に収容された状態に移行すると共に、土台部20が
図5に示す状態から
図3に示す第1進退部22がより第1貫通孔24からX方向前側に突出した状態に移行する。よって、上側係止部62の上側係止面70と下側係止部32の下側係止面40に係止されたカゴ天井98がよりZ方向に近い立った状態になり、その結果、台車1が幅が低い箇所を容易に通過できる。
【0045】
上記実施形態によれば、下側係止部32が土台部20の上側であって前側に配置され、上側係止部62が土台部20の後側からZ方向に延在する高さ方向延在部50の上側に配置される。また、ラックピニオン機構90で高さ方向延在部50の高さと土台部20の長さを変更できる。したがって、上側が上側係止部62に係止され、下側が下側係止部32に係止されるカゴ天井98のX方向に対する傾斜角度を適切に調整できる。よって、カゴ天井98の載置状態での高さ及び長さを容易に変更でき、搬入経路の構造に因らず重量物であるカゴ天井98を容易かつ安全に運搬できる。
【0046】
また、第1進退部22と第2進退部52が連結部材80を介して
つながっている。よって、柱部51からの第2進退部52の突出長さを、ハンドル97で調整するだけで、高さ方向延在部50の高さと土台部20の長さを同時に調整できる。より詳しくは、高さ方向延在部50の高さを高く変更するだけで、それに連動する土台部20の長さを短くでき、高さ方向延在部50の高さを低く変更するだけで、それに連動する土台部20の長さを長くできる。よって、X方向に対するカゴ天井98の傾きを簡単な操作で容易に調整できる。
【0047】
また、寸法調整機構が、第2進退部52の後側端部にZ方向に延在するように設けられたラック91と、ラック91に噛合するピニオン92と、ピニオン92を回動させるためのハンドル97と、を有する。よって、ハンドル97を操作するだけで、Z方向に対するカゴ天井98の傾きを簡単な操作で容易に調整できる。
【0048】
また、連結部材80の少なくとも一部分が、鋼製のチェーンで構成され、台車1が、チェーンを案内するスプロケット81と、チェーンの下側を案内するガイド部82を備える。よって、連結部材80の一部をZ方向からX方向に円滑に屈曲させることができ、連結部材80を介した第1進退部22と第2進退部52の連動動作を円滑なものとできる。
【0049】
また、下側係止部32の下側端部は、第1支点を中心として回転可能な第1円環部材33の外周側に取り付けられ、上側係止部62の上側端部は、第2支点を中心として回転可能な第2円環部材63の外周側に取り付けられる。よって、下側及び上側係止面40,70のX方向に対する傾斜角度を容易に調整できる。
【0050】
更には、下側及び上側係止面40,70が、ゴムで構成されるので、下側及び上側係止面40,70とカゴ天井98との間に大きな摩擦力を生成させることができ、カゴ天井98を下側及び上側係止面40,70で確実に係止できる。また、下側及び上側係止面40,70との接触でカゴ天井98に傷が付くことも抑制できる。
【0051】
尚、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、寸法調整機構が1つのラックピニオン機構90を含み、ラックピニオン機構90で高さ方向延在部50のZ方向高さと土台部20のX方向長さを同時に調整する場合について説明した。しかし、寸法調整機構は、長孔と締結部材(例えば、ボルトとナット)とを含んでもよく、長孔と締結部材を用いて柱部に対する第2進退部の固定箇所を変えることで、柱部に対する第2進退部の突出量を変動させてもよい。そして、上記突出量を変動させることで、第2進退部に連結部材を介して接続された第1進退部をX方向に移動させて、高さ方向延在部のZ方向高さと土台部のX方向長さを同時に調整してもよい。
【0053】
また、土台部20の第1進退部22と高さ方向延在部50の第2進退部52とを連結部材80で繋ぎ、1つのラックピニオン機構90で高さ方向延在部の高さのみを調整することで、高さ方向延在部50のZ方向高さと土台部20のX方向長さを同時に調整する場合について説明した。しかし、高さ方向延在部のZ方向高さと、土台部のX方向長さを、互いに独立に調整する構成でもよく、例えば、寸法調整機構は、高さ方向延在部のZ方向高さを調整するためのラックピニオン機構又は長孔及び締結部材と、土台部のX方向長さを調整するためのラックピニオン機構又は長孔及び締結部材と、を含んでもよい。このようにして、連結部材、スプロケット、及びガイド部を省略してもよい。
【0054】
また、土台部20の長さと、高さ方向延在部50の高さを、ラックピニオン機構90で調整する場合について説明した。しかし、土台部の長さの調整と高さ方向延在部の高さの調整のうちの少なくとも一方を、電動シリンダ又は油圧ジャッキを用いて行ってもよい。
【0055】
また、第1円環部材33が、静止摩擦力よりも大きい力が加わると突出部39の中心軸を支点として回動し、第2円環部材63が、静止摩擦力よりも大きい力が加わると突出部69の中心軸を支点として回動する場合について説明した。しかし、第1及び第2円環部材のうちの少なくとも一方と、突出部との間に転がり軸受を配置してもよく、当該少なくとも一方が突出部に対して自在に回転可能としてもよい。なお、この場合、第1及び第2円環部材のうちの少なくとも一方の回転角度を適切に調整した後に、該少なくとも一方の回転をできなくするストッパ機構が設けられると好ましい。係るストッパ機構は、例えば、車イスにおいて停止時に車輪を移動できなくするストッパ等の公知の機構で容易に実現できる。
【0056】
また、下側及び上側係止部32,62が、第1及び第2円環部材33,63に固定されて回転可能である場合について説明したが、下側及び上側係止部のうちの少なくとも一方は、回転不可能であってもよい。また、下側及び上側係止面40,70がゴムで構成される場合について説明したが、下側及び上側係止面のうちの少なくとも一方は、ゴム以外の材料で構成されてもよい。また、板状材が、エレベーターのカゴのカゴ天井である場合について説明したが、板状材は、板形状を有する如何なる材であってもよく、例えばガラス板等であってもよい。