(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から10までのいずれか一つに記載の生体情報測定装置、または、請求項11から13までのいずれか一つに記載の血圧測定装置を備えたことを特徴とする機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、複数の電極を生体の心臓を挟む部位に装着或いは貼着しなければならないため、装着の手間がかかるし、また、装着状態を維持するのに生体(被験者)の身体的負担が大きい、という問題がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の装置では、装着の手間がかからないけれども、被験者がマットレス上に横たわることを強いられるため、その意味で被験者の身体的負担が大きい、という問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、生体が示す動脈の脈波と心臓の拍動を測定する生体情報測定装置であって、測定のための生体の身体的負担が少ないものを提供することにある。また、この発明の課題は、そのような生体情報測定装置を備えた血圧測定装置、および機器を提供することにある。また、この発明
の課題は、そのような生体情報測定装置を用いて、生体が示す動脈の脈波と心臓の拍動を測定する生体情報測定方法を提供することにある。また、この発明
の課題は、そのような生体情報測定方法を含む血圧測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この開示の生体情報測定装置は、
生体が示す動脈の脈波と心臓の拍動を測定する生体情報測定装置であって、
上記生体の上肢部を取り巻いて装着されるベルトと、
上記ベルトが上記上肢部を取り巻いて装着された装着状態で、上記生体が予め定められた推奨測定姿勢をとったとき上記ベルトのうち上記上肢部を通る動脈と心臓との両方に対向する部分に搭載された、電波の送信および受信が可能な送受信部とを備え、
上記送受信部は、
上記上肢部の動脈と上記心臓とへ向けてそれぞれ電波を発射する送信アンテナ部と、
上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織と上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織とによってそれぞれ反射された電波を受信する受信アンテナ部と
を含み、
上記受信アンテナ部の出力に基づいて、上記上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と上記心臓の拍動を表す拍動信号とを取得する生体情報検出部を備えたことを特徴とする。
【0009】
本明細書で、「上肢部」とは、上腕、前腕、手、および、指を含む。
【0010】
また、上記ベルトのうち上記送受信部が搭載されている部分は、上記ベルトが上記上肢部を取り巻いて装着された装着状態で、上記生体が予め定められた「推奨測定姿勢」をとったとき上記上肢部を通る動脈と心臓との両方に対向する部分として、予め設定されている。ここで、「対向」するとは、上記送受信部と上記上肢部との間、上記送受信部と上記心臓との間でそれぞれ電波の送受信が可能に対向していれば良く、衣服などを介して間接的に対向してもよい。
【0011】
また、「推奨測定姿勢」としては、上肢部の動脈と、心臓とが、重力加速度等の向きを基準として(ほぼ)同じ高さになる姿勢が推奨される。例えば上記上肢部が上腕である場合は、上腕を体幹の側方に沿わせた姿勢が採用され得る。それに代えて、上記上肢部が手首である場合は、生体が直立しているとき、「推奨測定姿勢」としては、前腕を体幹に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に交差して挙げて、手首を心臓の高さレベルに維持し、かつ、手首の掌側面(手首の外周面のうち手の平側に相当する部分)を心臓へ向けた姿勢が採用され得る。上記上肢部が手首である場合において、生体が仰向けに寝転がっているときは、手首を前胸に当てる姿勢は推奨されない。
【0012】
また、上肢部の「動脈の脈波に伴って変位する組織」とは、生体のうち、上記動脈の脈波(血管の拡張と収縮をもたらす)に伴って変位する部分を指す。例えば、「皮膚−脂肪層−動脈」といった構成において、上肢部の皮膚も含まれる。また、「心臓の拍動に伴って変位する組織」とは、生体のうち、上記心臓の拍動に伴って変位する部分を指す。
【0013】
この開示の生体情報測定装置では、生体の上肢部を取り巻いてベルトが装着される。上記ベルトが上記上肢部を取り巻いて装着された装着状態で、上記生体が予め定められた推奨測定姿勢をとったとき、上記送受信部は、上記上肢部を通る動脈と上記心臓との両方に対向する。上記送受信部に含まれた送信アンテナ部は、上記上肢部の動脈と上記心臓とへ向けてそれぞれ電波を発射する。上記送受信部に含まれた受信アンテナ部は、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織と上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織とによってそれぞれ反射された電波を受信する。生体情報検出部は、上記受信アンテナ部の出力に基づいて、上記上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と上記心臓の拍動を表す拍動信号とを取得する。
【0014】
このように、この生体情報測定装置では、生体が身体的には上肢部を取り巻いてベルトを装着し予め定められた推奨測定姿勢をとるだけで、その上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と心臓の拍動を表す拍動信号とが取得される。つまり、測定の際に、生体の心臓を挟む部分に電極を装着或いは貼着する必要が無い。また、生体がとる推奨測定姿勢として、上半身を起こした姿勢や寝た姿勢など様々な姿勢を含むことができ、自由度が大きい。したがって、この生体情報測定装置は、測定のための生体の身体的負担が少ない。
【0015】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記ベルトが帯状に延在する面に沿って、上記送信アンテナ部と上記受信アンテナ部とがそれぞれ配置され、
上記送信アンテナ部は、
上記ベルトの内周面側に配置された、上記上肢部の動脈へ向けて電波を発射する第1の送信アンテナと、
上記ベルトの外周面側に配置された、上記心臓へ向けて電波を発射する第2の送信アンテナと
を含み、
上記受信アンテナ部は、
上記ベルトの内周面側に配置された、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する第1の受信アンテナと、
上記ベルトの外周面側に配置された、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する第2の受信アンテナと
を含むことを特徴とする。
【0016】
上記ベルトが帯状に延在する「面」とは、装着された状態で上記上肢部に対向する内周面、または、この内周面とは反対側の外周面を指す。
【0017】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記ベルトの内周面側で、上記第1の送信アンテナが上記上肢部の動脈へ向けて電波を発射し、上記第1の受信アンテナが上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する。つまり、上記ベルトの内周面側で上記上肢部に対向して配置された上記第1の送信アンテナ、上記第1の受信アンテナによって、上記上肢部の動脈の脈波が検知される。また、上記ベルトの外周面側で、上記第2の送信アンテナが上記心臓へ向けて電波を発射し、上記第2の受信アンテナが上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する。つまり、上記ベルトの外周面側で上記心臓に対向して配置された上記第2の送信アンテナ、上記第2の受信アンテナによって、上記心臓の拍動が検知される。これにより、上記脈波信号、上記拍動信号を精度良く取得できる。
【0018】
また、「送信アンテナ」と「受信アンテナ」とは互いに別体として設けられてもよいが、これに限られるものではない。空間的に1つのアンテナ要素が公知のサーキュレータを介する等して送信アンテナおよび受信アンテナ(つまり、送受共用アンテナ)として用いられてもよい。
【0019】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記ベルトの内周面側に配置された上記第1の送信アンテナおよび上記第1の受信アンテナと、上記ベルトの外周面側に配置された上記第2の送信アンテナおよび上記第2の受信アンテナとの間に、電波を遮蔽する遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記遮蔽層が、上記ベルトの内周面側に配置された上記第1の送信アンテナおよび上記第1の受信アンテナと、上記ベルトの外周面側に配置された上記第2の送信アンテナおよび上記第2の受信アンテナとの間で電波を遮蔽する。したがって、上記脈波信号と上記拍動信号との間の干渉が抑制される。これにより、上記脈波信号、上記拍動信号をさらに精度良く取得できる。
【0021】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記上肢部の動脈へ向けて発射される電波の周波数と、上記心臓へ向けて発射される電波の周波数とが、互いに異なっていることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波と、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波とを、互いに周波数で選別して混信を避けることができる。この結果、上記脈波信号、上記拍動信号をさらに精度良く取得できる。
【0023】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記ベルトが帯状に延在する面に沿って、上記送信アンテナ部と上記受信アンテナ部とがそれぞれ配置され、
上記送信アンテナ部は、上記ベルトの内周面側若しくは外周面側に沿って配置され、または、上記ベルトに埋め込まれた、上記上肢部の動脈と上記心臓との両方へ向けて電波を発射する共通の第3の送信アンテナを含み、
上記受信アンテナ部は、
上記ベルトの内周面側に配置された、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する第1の受信アンテナと、
上記ベルトの外周面側に配置された、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波を受信する第2の受信アンテナと
を含むことを特徴とする。
【0024】
ここで、第3の送信アンテナが「共通」であるとは、上記上肢部の動脈と上記心臓との両方へ向けて電波を同時に発射することが可能な1つのアンテナとして構成されていることを意味する。そのような1つのアンテナとしては、例えばダイポールアンテナが挙げられる。「両方」へ向けて電波を発射するとは、全方位へ向けて電波を発射する場合を含む。
【0025】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記共通の第3の送信アンテナが上記上肢部の動脈と上記心臓との両方へ向けて電波を発射する。上記ベルトの内周面側で、上記第1の受信アンテナが上記上肢部の動脈によって反射された電波を受信する。一方、上記ベルトの外周面側で、第2の受信アンテナが上記心臓によって反射された電波を受信する。この生体情報測定装置では、上記第3の送信アンテナが「共通」であるから、例えば2つの送信アンテナが設けられている場合に比して、装置の構成が簡素化され得る。
【0026】
一実施形態の生体情報測定装置では、
請求項5に記載の生体情報測定装置において、
上記第1の受信アンテナと上記第2の受信アンテナとの間に、電波を遮蔽する遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0027】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記遮蔽層が、上記第1の受信アンテナと上記第2の受信アンテナとの間で電波を遮蔽する。したがって、上記脈波信号と上記拍動信号との間の干渉が抑制される。これにより、上記脈波信号、上記拍動信号を精度良く取得できる。
【0028】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記第3の送信アンテナは、上記上肢部の動脈と上記心臓との両方へ向けて互いに異なる第1の周波数成分と第2の周波数成分とを含む電波を発射し、
上記第1の受信アンテナを介して、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波のうち上記第1の周波数成分に相当する成分を受信し、
上記第2の受信アンテナを介して、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波のうち上記第2の周波数成分に相当する成分を受信することを特徴とする。
【0029】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波のうち上記第1の周波数成分に相当する成分と、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波のうち上記第2の周波数成分に相当する成分とを、互いに周波数で選別して混信を避けることができる。この結果、上記脈波信号、上記拍動信号をさらに精度良く取得できる。
【0030】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記ベルトの内周面側および外周面側が平坦になるように、上記送信アンテナ部および上記受信アンテナ部は上記ベルトに埋め込まれていることを特徴とする。
【0031】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記ベルトの内周面側が平坦になっているので、ベルトを装着した生体に不快感(上記ベルトの内周面側が凸凹になっていることによる不快感)を与えることがない。また、上記ベルトの外周面側が平坦になっているので、仮に生体の活動に伴って上記ベルトの外周面が机や壁などに接触したとしても、この生体情報測定装置は、破損し難くなる。また、見栄えを良くすることができる。
【0032】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記第1の送信アンテナから上記上肢部の動脈へ向けて発射される電波の偏波方向と、上記第2の送信アンテナから上記心臓へ向けて発射される電波の偏波方向とが、互いに異なっていることを特徴とする。
【0033】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織によって反射された電波と、上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織によって反射された電波とを、互いに偏波方向で選別して混信を避けることができる。この結果
、上記脈波信号、上記拍動信号をさらに精度良く取得できる。
【0034】
なお、上記第1の送信アンテナと上記第2の送信アンテナとの間で、電波の偏波方向を互いに異ならせるためには、例えば、上記第1の送信アンテナと上記第2の送信アンテナとをそれぞれ矩形のパターン形状をもつパッチアンテナで構成し、それらのパッチアンテナにおける給電点の部位を互いに異ならせるなどの様々な手段がある。
【0035】
一実施形態の生体情報測定装置では、
上記ベルトの上記送受信部に相当する部分に、
上記送信アンテナ部に上記電波を発射させるように給電する送信回路と、
上記受信アンテナ部によって受信された信号を少なくとも増幅する受信回路と
が搭載されていることを特徴とする。
【0036】
この一実施形態の生体情報測定装置では、上記送信回路から上記送信アンテナ部までの給電経路を比較的短くでき、上記電波の波形の劣化を抑制できる。また、上記受信アンテナ部から上記受信回路までの受信経路を比較的短くできる。これらの結果、上記脈波信号、上記拍動信号をさらに精度良く取得できる。
【0037】
別の局面では、この開示の血圧測定装置は、
生体が示す血圧を測定する血圧測定装置であって、
上記生体情報測定装置と、
上記生体情報検出部が取得した上記脈波信号と上記拍動信号との間の時間差を、脈波伝播時間として取得する時間差取得部と、
脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて、上記時間差取得部によって取得された脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する第1の血圧算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0038】
この開示の血圧測定装置では、時間差取得部は、上記生体情報検出部が取得した上記脈波信号と上記拍動信号との間の時間差を、脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)として取得する。第1の血圧算出部は、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて、上記時間差取得部によって取得された脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する。このように、この血圧測定装置によれば、血圧値が取得され得る。
【0039】
一実施形態の血圧測定装置では、
上記生体情報検出部、上記時間差取得部、および、上記第1の血圧算出部は、上記ベルトに対して一体に設けられていることを特徴とする。
【0040】
この一実施形態の血圧測定装置では、上記生体情報検出部、上記時間差取得部、および、上記第1の血圧算出部が上記ベルトの外部に離間して設けられている場合とは異なり、上記受信アンテナ部の出力から上記脈波信号、上記拍動信号、上記脈波伝播時間、および、上記血圧値を得るために、上記ベルトの外部へ配線を延在させる必要が無い。したがって、この血圧測定装置によれば、測定の際に、生体は配線ケーブルに煩わされることが無く、身体的負担が少ない。
【0041】
一実施形態の血圧測定装置は、
上記ベルトに、上記上肢部を圧迫するための流体袋が取り付けられ、
上記流体袋に空気を供給して圧力を制御する圧力制御部と、
上記流体袋内の圧力に基づいて、オシロメトリック法により血圧を算出する第2の血圧算出部とを備え、
上記圧力制御部、および、上記第2の血圧算出部は、上記ベルトに対して一体に設けられ、または、上記ベルトに対して一体に設けられた本体に搭載されていることを特徴とする。
【0042】
この一実施形態の血圧測定装置では、脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)と、オシロメトリック法による血圧測定とが、共通のベルトを用いて行われ得る。したがって、生体としての被験者の利便性が高まる。また、精度は低いけれども連続して測定できるPTT方式(脈波伝播時間に基づく血圧測定)で血圧の急激な上昇を捉え、その血圧の急激な上昇をトリガにして、より正確なオシロメトリック法での測定を開始することができる。
【0043】
別の局面では、この開示の機器は、
上記生体情報測定装置、または、上記血圧測定装置を備えたことを特徴とする。
【0044】
この開示の機器は、上記生体情報測定装置、または、上記血圧測定装置を含み、他の機能を実行する機能部を含んでいてもよい。この機器によれば、生体の上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と心臓の拍動を表す拍動信号とを取得でき、または、血圧値を算出(推定)できる。その他、この機器は様々な機能を実行することができる。
【0045】
別の局面では、この開示の生体情報測定方法は、
上記生体情報測定装置を用いて生体が示す動脈の脈波と心臓の拍動を測定する生体情報測定方法であって、
上記上肢部を取り巻いて上記ベルトを装着し、
上記ベルトが上記上肢部を取り巻いて装着された装着状態で、上記生体が上記予め定められた姿勢をとることによって、上記上肢部を通る動脈と上記心臓との両方に上記送受信部を対向させ、
上記上肢部の動脈と上記心臓とへ向けてそれぞれ上記送信アンテナ部を介して電波を発射させるとともに、
上記上肢部の動脈および/またはこの動脈の脈波に伴って変位する組織と上記心臓および/またはこの心臓の拍動に伴って変位する組織とによってそれぞれ反射された電波を上記受信アンテナ部を介して受信し、
上記生体情報検出部によって、上記受信アンテナ部の出力に基づいて、上記上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と上記心臓の拍動を表す拍動信号とを取得することを特徴とする。
【0046】
この生体情報測定方法では、生体が身体的には上肢部を取り巻いてベルトを装着し予め定められた推奨測定姿勢をとるだけで、上記上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と上記心臓の拍動を表す拍動信号とが取得される。つまり、測定の際に、生体の心臓を挟む部分に電極を装着或いは貼着する必要が無い。また、生体がとる推奨測定姿勢として、上半身を起こした姿勢や寝た姿勢など様々な姿勢を含むことができ、自由度が大きい。したがって、測定のための生体の身体的負担が少ない。
【0047】
別の局面では、この開示の血圧測定方法は、
生体が示す血圧を測定する血圧測定方法であって、
上記生体情報測定方法を実行して、上記上肢部の動脈の脈波を表す脈波信号と上記心臓の拍動を表す拍動信号とを取得し、
上記脈波信号と上記拍動信号との間の時間差を、脈波伝播時間として取得し、
脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて、上記取得された脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出することを特徴とする。
【0048】
この開示の血圧測定方法では、生体が身体的には上肢部を取り巻いてベルトを装着し予め定められた推奨測定姿勢をとるだけで、血圧値が取得される。したがって、測定のための生体の身体的負担が少ない。
【発明の効果】
【0049】
以上より明らかなように、この開示の生体情報測定装置は、測定のための生体の身体的負担が少ない。また、この開示の血圧測定装置、生体情報測定方法および血圧測定方法によれば、測定のための生体の身体的負担が少ない。また、この開示の機器によれば、脈波信号と拍動信号の取得、または、血圧値の算出の他、様々な機能を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】この発明の一実施形態の生体情報測定装置が生体に装着されて生体情報を取得する適用例を示す図である。
【
図2】この発明の生体情報測定装置および血圧測定装置に係る一実施形態の手首式血圧計の外観を示す斜視図である。
【
図3】上記血圧計が左手首に装着された状態での左手首の長手方向に対して垂直な断面を模式的に示す図である。
【
図4】上記血圧計が左手首に装着された状態での、一例の送受信アンテナ群の平面レイアウトを示す図である。
【
図5】上記血圧計を左手首に装着した被験者が予め定められた推奨測定姿勢をとった状態を示す図である。
【
図6】
図6(A)は、上記一例の送受信アンテナ群の断面構造を、それらの指向性とともに示す図である。
図6(B)は、
図6(A)の断面構造の変形例を示す図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6(A)に相当する送受信アンテナ群の断面構造を示す図である。
図7(B)は、
図7(A)のものを左側方(+Z方向)から見たときの上記送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
図7(C)は、
図7(A)のものを右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図8】上記血圧計の制御系の全体的なブロック構成を示す図である。
【
図9】上記血圧計の制御系の部分的かつ機能的なブロック構成を示す図である。
【
図10】上記血圧計において、オシロメトリック法を行うためのプラグラムによって実装されるブロック構成を示す図である。
【
図11】上記血圧計がオシロメトリック法による血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
【
図12】
図11の動作フローによるカフ圧と脈波信号の変化を示す図である。
【
図13】左手首から得られた脈波信号および心臓から得られた拍動信号の各波形と、それらの脈波信号、拍動信号によって得られる脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)を示す図である。
【
図14】この発明の一実施形態の生体情報測定方法および血圧測定方法に係る動作フローであって、上記血圧計が脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)を取得し、その脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)を行うものを示す図である。
【
図15】
図9に示した制御系のブロック構成において、左手首の動脈へ向けて発射される電波E1の周波数f1と、心臓へ向けて発射される電波E2の周波数f2とが、互いに異なっている例を示す図である。
【
図16】
図16(A)は、上記送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナの別の配置の例を、
図3に対応した断面(ZX平面)で示す図である。
図16(B)は、
図16(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【
図17】
図17(A)は、上記送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナのさらに別の配置の例を、
図3に対応した断面(ZX平面)で示す図である。
図17(B)は、
図17(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【
図18】
図18(A)は、上記送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナのさらに別の配置の例を、
図3に対応した断面(ZX平面)で示す図である。
図18(B)は、
図18(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【
図19】
図19(A)は、
図7(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図19(B)、
図19(C)は、
図19(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図20】
図20(A)は、
図18(A),
図18(B)に示した送信アンテナおよび受信アンテナの断面構造を示す図である。
図20(B)、
図20(C)は、
図20(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図21】
図21(A)は、
図20(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図21(B)、
図21(C)は、
図21(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図22】
図22(A)は、
図7(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図22(B)、
図22(C)は、
図22(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図23】
図23(A)は、
図20(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図23(B)、
図23(C)は、
図23(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図24】
図24(A)は、
図7(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図24(B)、
図24(C)は、
図24(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図25】
図25(A)は、
図7(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図25(B)、
図25(C)は、
図25(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図26】
図26(A)は、
図20(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図26(B)、
図26(C)は、
図26(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図27】
図27(A)は、
図20(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図27(B)、
図27(C)は、
図27(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図28】
図28(A)は、
図7(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図28(B)、
図28(C)は、
図28(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図29】
図29(A)は、
図20(A)に示した断面構造と同じ断面構造をもつ送信アンテナおよび受信アンテナの別の例を示す図である。
図29(B)、
図29(C)は、
図29(A)のものをそれぞれ左側方(+Z方向)、右側方(−Z方向)から見たときの上記送信アンテナおよび受信アンテナの給電点と偏波方向の例を示す図である。
【
図30】
図30(A)は、上記血圧計が左手首に装着された状態での、別の例の送受信アンテナ群の平面レイアウトを示す図である。
図30(B)は、
図30(A)における左手首の長手方向(Y方向)に沿った断面を模式的に示す図である。
【
図32】ダイポールアンテナの指向性を示す図である。
【
図33】ダイポールアンテナによる偏波方向を示す図である。
【
図34】
図34(A)は、
図30(A)中に示した送信アンテナおよび受信アンテナの指向性と偏波方向を、
図30(A)に対応した平面(XY平面)内で示す図である。
図34(B)は、それらの送信アンテナおよび受信アンテナの指向性を、
図30(B)に対応した平面(YZ平面)内で示す図である。
【
図35】上記血圧計が
図30(A),
図30(B)中に示した送信アンテナおよび受信アンテナを備えた場合の、制御系の部分的かつ機能的なブロック構成を示す図である。
【
図36】
図35に示した制御系のブロック構成において、左手首の動脈によって反射され第1の受信アンテナを介して受信される電波E1′の周波数成分(周波数f1)と、心臓によって反射され第2の受信アンテナを介して受信される電波E2′の周波数成分(周波数f2)とが、互いに異なっている例を示す図である。
【
図37】
図37(A)は、
図30(A)中の送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナの別の配置の例を、
図30(A)に対応して示す図である。図
37(B)は、
図37(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【
図38】
図38(A)は、
図30(A)中の送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナのさらに別の配置の例を、
図30(A)に対応して示す図である。
図38(B)は、
図38(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【
図39】
図39(A)は、
図30(A)中の送受信アンテナ群に含まれた送信アンテナおよび受信アンテナのさらに別の配置の例を、
図30(A)に対応して示す図である。
図39(B)は、
図39(A)のものを、左手首の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0052】
(適用例)
図1は、この発明の一実施形態の生体情報測定装置(符号MDで示す。)が生体80に装着されて生体情報を取得する適用例を示している。ここで、生体80は、心臓81を含む体幹82と、心臓81から延在する動脈91が通っている上肢部90とを有するものとする。なお、
図1において体幹82と上肢部90はそれぞれ丸角四角形で、また、心臓81はハート形で模式化して表されている。上肢部90は、上腕、前腕、手、または指等、肩から指先までのいずれの部位であってもよい。
【0053】
生体情報測定装置MDは、生体80が示す動脈91の脈波と心臓81の拍動を測定する装置であり、生体80の上肢部90を取り巻いて装着されるベルト20と、このベルト20に搭載された、電波の送信および受信が可能な送受信部40とを備えている。送受信部40は、ベルト20が上肢部90を取り巻いて装着された装着状態で、生体80が予め定められた推奨測定姿勢をとったときベルト20のうち上肢部90を通る動脈91と心臓81との両方に対向する部分に搭載されている。ここで、「予め定められた推奨測定姿勢」としては、例えば上肢部90が上腕である場合は、上腕を体幹82の側方に沿わせた姿勢が採用され得る。また、「対向」するとは、送受信部40と上肢部90との間、送受信部40と心臓81との間でそれぞれ電波の送受信が可能に対向していれば良く、衣服などを介して間接的に対向してもよい。
【0054】
送受信部40は、上肢部90の動脈91と心臓81とへ向けてそれぞれ電波E1,E2を発射する送信アンテナ部としての送信アンテナ41,43と、上肢部90の動脈91および/またはこの動脈91の脈波に伴って変位する組織91aと心臓81および/またはこの心臓81の拍動に伴って変位する組織81aとによってそれぞれ反射された電波E1′,E2′を受信する受信アンテナ部としての受信アンテナ42,44とを含んでいる。ここで、上肢部90の「動脈91の脈波に伴って変位する組織91a」とは、生体80のうち、動脈91の脈波(血管の拡張と収縮をもたらす)に伴って変位する部分を指す。例えば、「皮膚−脂肪層−動脈」といった構成において、上肢部90の皮膚も含まれる。また、「心臓81の拍動に伴って変位する組織81a」とは、生体80のうち、心臓81の拍動に伴って変位する部分を指す。
【0055】
また、生体情報測定装置MDは、受信アンテナ42,44の出力に基づいて、上肢部90の動脈91の脈波を表す脈波信号PS1と心臓81の拍動を表す拍動信号PS2とを取得する生体情報検出部110を備えている。生体情報検出部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む信号処理系によって構成され得る。脈波信号PS1と拍動信号PS2は、例えば
図13中に示すような山状の波形もつ信号である(
図13の横軸は時間tを示し、縦軸は信号電圧vを示している。)。
【0056】
この生体情報測定装置MDでは、
図1中に示すように生体80の上肢部90を取り巻いてベルト20が装着された装着状態で、生体80が上記予め定められた推奨測定姿勢をとったとき、送受信部40は、上肢部90を通る動脈91と心臓81との両方に対向する。送受信部40に含まれた送信アンテナ41,43は、上肢部90の動脈91と心臓81とへ向けてそれぞれ電波E1,E2を発射する。送受信部40に含まれた受信アンテナ42,44は、上肢部90の動脈91および/またはこの動脈91の脈波に伴って変位する組織91aと心臓81および/またはこの心臓81の拍動に伴って変位する組織81aとによってそれぞれ反射された電波E1′,E2′を受信する。生体情報検出部110は、受信アンテナ42,44の出力に基づいて、上肢部90の動脈91の脈波を表す脈波信号PS1と心臓81の拍動を表す拍動信号PS2とを取得する。
【0057】
このように、この生体情報測定装置MDでは、生体80が身体的には上肢部90を取り巻いてベルト20を装着し予め定められた推奨測定姿勢をとるだけで、その上肢部90の動脈91の脈波を表す脈波信号PS1と心臓81の拍動を表す拍動信号PS2とが取得される。つまり、測定の際に、生体80の心臓81を挟む部分に電極を装着或いは貼着する必要が無い。また、生体80がとる推奨測定姿勢として、上半身を起こした姿勢や寝た姿勢など様々な姿勢を含むことができ、自由度が大きい。したがって、この生体情報測定装置MDは、測定のための生体80の身体的負担が少ない。
【0058】
(構成例)
図2は、この発明の一例の生体情報測定装置および血圧測定装置に係る一実施形態の手首式血圧計(全体を符号1で示す。)の外観を斜めから見たところを示している。また、
図3は、血圧計1が生体としての被験者80(
図5参照。簡単のため、
図1中の生体80と同じ符号で表す。)の上肢部としての左手首90(簡単のため、
図1中の上肢部90と同じ符号で表す。)に装着された状態(以下「装着状態」と呼ぶ。)で、左手首90の長手方向に対して垂直な断面を模式的に示している。以下では、図中の同じ要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0059】
これらの
図2,
図3に示すように、この血圧計1は、大別して、ユーザである被験者80の左手首90を取り巻いて装着されるベルト20と、このベルト20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0060】
図2によって分かるように、ベルト20は、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有し、左手首90に接する内周面20aと、この内周面20aと反対側の外周面20bとを有している。ベルト20の幅方向Yの寸法(幅寸法)は、この例では約30mmに設定されている。
【0061】
本体10は、ベルト20のうち、周方向に関して一方の端部20eに、この例では一体成形により一体に設けられている。なお、ベルト20と本体10とを別々に形成し、ベルト20に対して本体10を係合部材(例えばヒンジなど)を介して一体に取り付けても良い。この例では、本体10が配置された部位は、装着状態で左手首90の背側面(手の甲側の面)90bに対応することが予定されている(
図3参照)。
図3中には、左手首90内で、外面としての掌側面(手の平側の面)90a近傍を通る動脈(この例では、橈骨動脈)91が示されている。なお、動脈としては、尺骨動脈を含んでもよい。
【0062】
図2によって分かるように、本体10は、ベルト20の外周面20bに対して垂直な方向に厚さを有する立体的形状を有している。この本体10は、被験者80の日常活動の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。この例では、本体10は、ベルト20から外向きに突起した四角錐台状の輪郭を有している。
【0063】
本体10の頂面(左手首90から最も遠い側の面)10aには、表示画面をなす表示器50が設けられている。また、本体10の側面(
図2における左手前側の側面)10fに沿って、被験者80からの指示を入力するための操作部52が設けられている。
【0064】
ベルト20のうち、周方向に関して一方の端部20eと他方の端部20fとの間の部位に、送受信部40が一体に設けられている。この例では、送受信部40には、4個の送受信アンテナ41〜44(これらの全体を「送受信アンテナ群」と呼び、符号40Eで表す。)が搭載されている。第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42は、ベルト20の内周面20a側に、ベルト20の長手方向Xに関して互いに離間した状態で配置されている。第2の送信アンテナ43と第2の受信アンテナ44は、ベルト20の外周面20b側で上述の送信アンテナ41、受信アンテナ42とそれぞれ対応する位置に、ベルト20の長手方向Xに関して互いに離間した状態で配置されている(送受信アンテナ群40Eについては後に詳述する。)。この例では、ベルト20の長手方向Xに関して送受信アンテナ群40Eが配置された部位は、装着状態で左手首90の橈骨動脈91に対応することが予定されている(
図3参照)。なお、
図2では、理解の容易のため、ベルト20の内周面20aに沿って設けられた押圧カフ21(後述)の図示が省略されている。
【0065】
図2中に示すように、本体10の底面(左手首90に最も近い側の面)10bとベルト20の端部20fとは、三つ折れバックル24によって接続されている。このバックル24は、外周側に配置された第1の板状部材25と、内周側に配置された第2の板状部材26とを含んでいる。第1の板状部材25の一方の端部25eは、幅方向Yに沿って延びる連結棒27を介して本体10に対して回動自在に取り付けられている。第1の板状部材25の他方の端部25fは、幅方向Yに沿って延びる連結棒28を介して第2の板状部材26の一方の端部
26fに対して回動自在に取り付けられている。第2の板状部材26の他方の端部
26eは、固定部29によってベルト20の端部20f近傍に固定されている。なお、ベルト20の長手方向X(装着状態では、左手首90の周方向に相当する。)に関して固定部29の取り付け位置は、被験者80の左手首90の周囲長に合わせて予め可変して設定されている。これにより、この血圧計1(ベルト20)は、全体として略環状に構成されるとともに、本体10の底面10bとベルト20の端部20fとが、バックル24によって矢印B方向に開閉可能になっている。
【0066】
この血圧計1を左手首90に装着する際には、バックル24を開いてベルト20の環の径を大きくした状態で、
図2中に矢印Aで示す向きに、被験者80がベルト20に左手を通す。そして、
図3に示すように、被験者80は、左手首90の周りのベルト20の角度位置を調節して、左手首90を通っている橈骨動脈91上にベルト20の送受信部40を位置させる。これにより、送受信部40(の送受信アンテナ群40E)が左手首90の掌側面90aのうち橈骨動脈91に対向する状態になる。この状態で、被験者80が、バックル24を閉じて固定する。このようにして、被験者80は血圧計1(ベルト20)を左手首90に容易に装着することができる。
【0067】
図3中に示すように、この例では、ベルト20は、外周面20bをなす帯状体20Cと、この帯状体20Cの内周面20aに沿って取り付けられた押圧カフ21とを含んでいる。帯状体20Cは、プラスチック材料(この例では、厚さ5mmのシリコーン樹脂)からなり、この例では、厚さ方向Zに関して可撓性を有し、かつ、長手方向X(左手首90の周方向に相当)に関して殆ど伸縮しないように(実質的に非伸縮性に)なっている。押圧カフ21は、この例では、伸縮可能な2枚のポリウレタンシートを厚さ方向Zに対向させ、それらの周縁部を溶着して、流体袋として構成されている。この例では、押圧カフ21は、帯状体20Cの内周面20aに沿って第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42を覆うように取り付けられている。以下では、特に区別しない限り、帯状体20Cをベルト20と呼ぶ。
【0068】
この例では、
図3中に示すように、装着状態では、送受信アンテナ群40Eは、左手首90の周方向に関して橈骨動脈91に対応する。特に、第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42との対(以下では、第1の送受信アンテナ対(41,42)と呼ぶ。)は、押圧カフ21を介して、橈骨動脈91と対向する。また、この例では、
図5に示すように、血圧測定の際(特に、後述の脈波伝播時間に基づく血圧測定の際)には、被験者80は、予め定められた推奨測定姿勢(符号POで表す。)として、前腕92を体幹82に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に交差して挙げて、左手首90を心臓81の高さレベルに維持し、かつ、左手首90の掌側面90aを心臓81へ(したがって、左手首90の背側面90bを前方へ)向けた姿勢をとるものとする。すると、
図3中に示すように、第2の送信アンテナ43と第2の受信アンテナ44の対(以下では、第2の送受信アンテナ対(43,44)と呼ぶ。)は、心臓81と対向する。
【0069】
この例では、
図4(装着状態での平面レイアウト)に示すように、1つの送信アンテナまたは受信アンテナは、24GHz帯の周波数の電波を発射または受信し得るように、面方向(
図4におけるXY平面に沿った方向を意味する。)に関して、縦横いずれも3mmの正方形の形状(この面方向の形状を「パターン形状」と呼ぶ。)を有している。この例では、ベルト20の長手方向Xに関して、第1の送信アンテナ41の中心と第1の受信アンテナ42の中心との間の距離は、5mm〜10mmの範囲内(この例では、8.5mm)に設定されている。これに対応して、この例では、ベルト20の長手方向Xに関して、第2の送信アンテナ43の中心と第2の受信アンテナ44の中心との間の距離も、5mm〜10mmの範囲内(この例では、8.5mm)に設定されている。なお、各送受信アンテナのパターン形状と送受信アンテナの中心間距離は一例であって、血圧計の大きさ等に合わせて、適宜選択すればよい。
【0070】
図6(A)は送受信アンテナ群40Eの断面構造を示している。この例では、第1の送受信アンテナ対(41,42)、第2の送受信アンテナ対(43,44)は、それぞれ基板410,420を介してベルト20の内周面20a、外周面20bに取り付けられている。この例では、基板410は、それぞれ厚さ0.5mmのFR4(Flame Retardant Type 4)層411,413の間に、厚さ30μmの遮蔽層としての銅層412を挟んで構成されている。基板410の片面(−Z側の面)には、厚さ30μmの銅層からなる送信アンテナ41、受信アンテナ42がそれぞれパターン形成されている。基板410の反対面(+Z側の面)は、接着剤層414によって、ベルト20の内周面20aに貼り付けられている。同様に、基板420は、それぞれ厚さ0.5mmのFR4(Flame Retardant Type 4)層421,423の間に、厚さ30μmの遮蔽層としての銅層422を挟んで構成されている。基板420の片面(+Z側の面)には、厚さ30μmの銅層からなる送信アンテナ43、受信アンテナ44がそれぞれパターン形成されている。基板420の反対面(−Z側の面)は、接着剤層424によって、ベルト20の外周面20bに貼り付けられている。この構造では、第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42の指向性は、それぞれ破線D41,D42で示すように−Z方向に広がる。一方、第2の送信アンテナ43と第2の受信アンテナ44の指向性は、それぞれ破線D43,D44で示すように+Z方向に広がる。銅層412,422は、第1の送受信アンテナ対(41,42)と第2の送受信アンテナ対(43,44)との間で電波を遮蔽する。これにより、第1の送受信アンテナ対(41,42)と第2の送受信アンテナ対(43,44)との間の干渉が抑制されて、後述の脈波信号、拍動信号を精度良く取得できる。なお、基板410,420は、送受信アンテナ群40Eのためのベース部400を構成している。上記遮蔽層は、銅などの導電材料に限られるものではなく、電波に対する遮蔽効果を有すればよい。
【0071】
なお、
図6(B)に示すように、ベルト20の内周面20a側および外周面20b側が平坦になるように、各送信アンテナ41,43および各受信アンテナ42,44はベルト(符号20′で表す。)に埋め込まれていてもよい。この例では、ベルト20′の厚さは8mmに設定されている。このようにした場合、ベルト20′の内周面20a側が平坦になっているので、ベルト20′を装着した被験者80に不快感(ベルトの内周面側が凸凹になっていることによる不快感)を与えることがない。また、ベルト20′の外周面20b側が平坦になっているので、仮に被験者80の活動に伴ってベルト20′の外周面20bが机や壁などに接触したとしても、この血圧計1の送受信アンテナ群40Eは、破損し難くなる。また、見栄えを良くすることができる。
【0072】
図7(A)は、
図6(A)に相当する送受信アンテナ群40Eの断面構造を示している。この
図7(A)上部に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置を(Ax,Ax)と表すものとする。
図7(C)は、
図7(A)のものを右側方(−Z方向)から見たときの第1の送受信アンテナ対(41,42)を示している。この例では、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42においてそれぞれ後述の送信回路、受信回路につながる給電点41a,42aが−X側の辺の中央に設けられている。これにより、第1の送信アンテナ41から発射される電波の偏波方向、第1の受信アンテナ42によって受信される電波の偏波方向は、両者の間の送受信が低損失で行われるように、互いにX方向に沿った直線偏波Pxになっている。また、
図7(B)は、
図7(A)のものを左側方(+Z方向)から見たときの第2の送受信アンテナ対(43,44)を示している。この例では、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44においてそれぞれ後述の送信回路、受信回路につながる給電点43a,44aが−X側の辺の中央に設けられている。これにより、第2の送信アンテナ43から発射される電波の偏波方向、第2の受信アンテナ44によって受信される電波の偏波方向は、両者の間の送受信が低損失で行われるように、互いにX方向に沿った直線偏波Pxになっている。このように、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向が直線偏波Pxであり、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向が直線偏波Pxである組合せを、
図7(A)上部に符号(Px,Px)で表している。なお、給電点41a,42a、給電点43a,44aが配置される位置は、それぞれ辺の中央に限られるものではなく、中央からずれた位置であってもよい(後述の例でも同様。)。
【0073】
図8は、血圧計1の制御系の全体的なブロック構成を示している。血圧計1の本体10には、既述の表示器50、操作部52に加えて、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100、記憶部としてのメモリ51、通信部59、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310、および、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320が搭載されている。さらに、送受信部40には、既述の送受信アンテナ群40Eに加えて、CPU100によって制御される送受信回路群45が搭載されている。
【0074】
表示器50は、この例では有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなり、CPU100からの制御信号に従って、血圧測定結果などの血圧測定に関する情報、その他の情報を表示する。なお、表示器50は、有機ELディスプレイに限られるものではなく、例えばLCD(Liquid Cristal Display)など、他のタイプの表示器からなっていてもよい。
【0075】
操作部52は、この例ではプッシュ式スイッチからなり、被験者80による血圧測定開始又は停止の指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。なお、操作部52は、プッシュ式スイッチに限られるものではなく、例えば感圧式(抵抗式)または近接式(静電容量式)のタッチパネル式スイッチなどであってもよい。また、図示しないマイクロフォンを備えて、被験者80の音声によって血圧測定開始の指示を入力するようにしてもよい。
【0076】
メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータなどを非一時的に記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0077】
CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従って、制御部として各種機能を実行する。例えば、オシロメトリック法による血圧測定を実行する場合は、CPU100は、操作部52からの血圧測定開始の指示に応じて、圧力センサ31からの信号に基づいて、ポンプ32(および弁33)を駆動する制御を行う。また、CPU100は、この例では圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出する制御を行う。
【0078】
通信部59は、CPU100によって制御されて所定の情報を、ネットワーク900を介して外部の装置に送信したり、外部の装置からの情報を、ネットワーク900を介して受信してCPU100に受け渡したりする。このネットワーク900を介した通信は、無線、有線のいずれでも良い。この実施形態において、ネットワーク900は、インターネットであるが、これに限定されず、病院内LAN(Local Area Network)のような他の種類のネットワークであってもよいし、USBケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。この通信部59は、マイクロUSBコネクタを含んでいてもよい。
【0079】
ポンプ32および弁33はエア配管39を介して、また、圧力センサ31はエア配管38を介して、それぞれ押圧カフ21に接続されている。なお、エア配管39,38は、共通の1本の配管であってもよい。圧力センサ31は、エア配管38を介して、押圧カフ21内の圧力を検出する。ポンプ32は、この例では圧電ポンプからなり、押圧カフ21内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して押圧カフ21に加圧用の流体としての空気を供給する。弁33は、ポンプ32に搭載され、ポンプ32のオン/オフに伴って開閉が制御される構成になっている。すなわち、弁33は、ポンプ32がオンされると閉じて、押圧カフ21内に空気を封入する一方、ポンプ32がオフされると開いて、押圧カフ21の空気をエア配管39を通して大気中へ排出させる。なお、弁33は、逆止弁の機能を有し、排出されるエアが逆流することはない。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。
【0080】
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管38を通してベルト20(押圧カフ21)の圧力、この例では大気圧を基準(ゼロ)とした圧力を検出して時系列の信号として出力する。発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。この例では、圧力センサ31の出力は、押圧カフ21の圧力を制御するため、および、オシロメトリック法によって血圧値(収縮期血圧(Systolic Blood Pressure;SBP)と拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure;DBP)とを含む。)を算出するために用いられる。
【0081】
電池53は、本体10に搭載された要素、この例では、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、通信部59、発振回路310、ポンプ駆動回路320の各要素へ電力を供給する。また、電池53は、配線71を通して、送受信部40の送受信回路群45へも電力を供給する。この配線71は、信号用の配線72とともに、ベルト20の帯状体20Cと押圧カフ21との間に挟まれた状態で、ベルト20の長手方向Xに沿って本体10と送受信部40との間に延在して設けられている。
【0082】
送受信部40の送受信回路群45は、送信アンテナ41,43にそれぞれ接続された送信回路46,48と、受信アンテナ42,44にそれぞれ接続された受信回路47,49とを含んでいる。
図9に示すように、送信回路46は、その動作時に、接続された第1の送信アンテナ41を介して、この例では24GHz帯の周波数f1(この例では、f1=24.05GHzとする。)の電波E1を橈骨動脈91へ向けて発射する。受信回路47は、左手首90の橈骨動脈91および/またはこの橈骨動脈91の脈波に伴って変位する組織91aによって反射された電波E1′を、送信回路46からの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第1の受信アンテナ42を介して受信して、検波および増幅する。一方、送信回路48は、その動作時に、接続された第2の送信アンテナ43を介して、この例では24GHz帯の同じ周波数f1の電波E2を心臓81へ向けて発射する。受信回路49は、心臓81および/またはこの心臓81の拍動に伴って変位する組織81aによって反射された電波E2′を、送信回路48からの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第2の受信アンテナ44を介して受信して、検波および増幅する。この例では、送受信部40に送受信回路群45が搭載されているので、送信回路46,48から各送信アンテナ41,43までの給電経路を比較的短くでき、電波E1,E2の波形の劣化を抑制できる。また、各受信アンテナ42,44から受信回路47,49までの受信経路を比較的短くできる。これらの結果、後述する脈波信号、拍動信号を精度良く取得できる。以下では、簡単のため、反射された電波E1′は橈骨動脈91によって反射された電波であるものとし、また、反射された電波E2′は心臓81によって反射された電波であるものとする。
【0083】
後に詳述するように、
図9中に示す脈波検出部101は、受信回路47の出力に基づいて、左手首90を通る橈骨動脈91の脈波を表す脈波信号PS1を取得する。拍動検出部102は、受信回路49の出力に基づいて、心臓81の拍動を表す拍動信号PS2を取得する。さらに、時間差取得部としてのPTT算出部103は、脈波検出部101と拍動検出部102がそれぞれ取得した脈波信号PS1、拍動信号PS2の間の時間差を、脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)として取得する。また、第1の血圧算出部104は、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式を用いて、PTT算出部103によって取得された脈波伝播時間に基づいて血圧値を算出する。ここで、脈波検出部101、拍動検出部102、PTT算出部103、および第1の血圧算出部104は、CPU100が例えばメモリ51に記憶された所定のプログラムを実行することによって実現される。第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42、送信回路46、受信回路47、および、脈波検出部101を、第1のセンサ40−1と呼ぶ。第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44、送信回路48、受信回路49、および、拍動検出部102を、第2のセンサ40−2と呼ぶ。なお、送受信回路群45、脈波検出部101、および、拍動検出部102は、既述の生体情報検出部110に相当する。
【0084】
動作時には、第1のセンサ40−1の脈波検出部101、第2のセンサ40−2の拍動検出部102は、それぞれ受信回路47,49の出力に基づいて、それぞれ
図13中に示すような山状の波形をもつ脈波信号PS1、拍動信号PS2を時系列で出力する。拍動信号PS2は、第2の送受信アンテナ対(43,44)と心臓81との間の、拍動に伴う距離の変化を表す。脈波信号PS1は、第1の送受信アンテナ対(41,42)と橈骨動脈91との間の、脈波(血管の拡張と収縮をもたらす)に伴う距離の変化を表す。拍動信号PS2は、脈波信号PS1よりも先行して現れる。
【0085】
この例では、
図5に示した推奨測定姿勢POでの動作時には、第1の送受信アンテナ対(41,42)と橈骨動脈91との間の距離は約5mm、第2の送受信アンテナ対(43,44)と心臓81との間の距離は約50mmに、それぞれ想定されている。それらの距離を前提として、第1の送信アンテナ41、第2の送信アンテナ43が発射する電波強度のレベルは、それぞれ約0.5mW、約10mWになっている。受信アンテナ42,44の受信レベルは、それぞれ約1μW(1mWに対するデシベル値では−30dBm)、約0.2μW程度になっている。受信回路47,49の出力レベルは、それぞれ約1ボルト程度になっている。また、脈波信号PS1、拍動信号PS2のそれぞれのピークA1,A2の強度レベルは、それぞれ約100mV〜1ボルトの程度になっている。これにより、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
【0086】
なお、例えば、心臓81から左手首90までの動脈に沿った距離が70cmであり、脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)が1000cm/s〜2000cm/sの範囲であるとすると、拍動信号PS2と脈波信号PS1と間の時間差Δtは35ms〜70msの範囲となる。
【0087】
(オシロメトリック法による血圧測定の構成および動作)
図10は、血圧計1において、オシロメトリック法を行うためのプラグラムによって実装されるブロック構成を示している。
【0088】
このブロック構成では、大別して、圧力制御部201と、第2の血圧算出部204と、出力部205とが実装されている。
【0089】
圧力制御部201は、さらに、圧力検知部202と、ポンプ駆動部203とを含んでいる。圧力検知部202は、圧力センサ31から発振回路310を通して入力された周波数信号を処理して、押圧カフ21内の圧力(カフ圧)を検知するための処理を行う。ポンプ駆動部203は、検知されたカフ圧Pc(
図12参照)に基づいて、ポンプ駆動回路320を通してポンプ32と弁33を駆動するための処理を行う。これにより、圧力制御部201は、所定の加圧速度で、押圧カフ21に空気を供給して圧力を制御する。
【0090】
第2の血圧算出部204は、カフ圧Pcに含まれた動脈容積の変動成分を脈波信号Pm(
図12参照)として取得し、取得された脈波信号Pmに基づいて、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)を算出する処理を行う。血圧値の算出が完了すると、第2の血圧算出部204は、ポンプ駆動部203の処理を停止させる。
【0091】
出力部205は、算出された血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)を、この例では表示器50に表示するための処理を行う。
【0092】
図11は、血圧計1がオシロメトリック法による血圧測定を行う際の動作フロー(血圧測定方法のフロー)を示している。血圧計1のベルト20は、被験者80の左手首90を取り巻くように予め装着されているものとする。また、被験者80は、
図5に示した推奨測定姿勢POをとるものとする。
【0093】
被験者80が本体10に設けられた操作部52としてのプッシュ式スイッチによってオシロメトリック法による血圧測定を指示すると(
図11のステップS1)、CPU100は動作を開始して、処理用メモリ領域を初期化する(ステップS2)。また、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオフし、弁33を開いて、押圧カフ21内の空気を排気する。続いて、圧力センサ31の現時点の出力値を大気圧に相当する値として設定する制御を行う(0mmHg調整)。
【0094】
続いて、CPU100は、圧力制御部201のポンプ駆動部203として働いて、弁33を閉鎖し、その後、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、押圧カフ21に空気を送る制御を行う。これにより、押圧カフ21を膨張させるとともにカフ圧Pc(
図12参照)を徐々に加圧して、被測定部位としての左手首90を圧迫してゆく(
図11のステップS3)。
【0095】
この加圧過程で、CPU100は、血圧値を算出するために、圧力制御部201の圧力検知部202として働いて、圧力センサ31によって、カフ圧Pcをモニタし、左手首90の橈骨動脈91で発生する動脈容積の変動成分を、
図12中に示すような脈波信号Pmとして取得する。
【0096】
次に、
図11中のステップS4で、CPU100は、第2の血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号Pmに基づいて、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)の算出を試みる。
【0097】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS5でNO)、カフ圧Pcが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS3〜S5の処理を繰り返す。
【0098】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS5でYES)、CPU100は、ポンプ32を停止し、弁33を開いて、押圧カフ21内の空気を排気する制御を行う(ステップS6)。そして最後に、CPU100は出力部205として働いて、血圧値の測定結果を表示器50に表示するとともに、メモリ51に記録する(ステップS7)。
【0099】
なお、血圧値の算出は、加圧過程に限らず、減圧過程において行われてもよい。
【0100】
(脈波伝播時間に基づく血圧測定の動作)
図14は、この発明の一実施形態の生体情報測定方法および血圧測定方法に係る動作フローであって、血圧計1が脈波伝播時間(Pulse Transit Time;PTT)を取得し、その脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)を行うものを示している。血圧計1のベルト20は、被験者80の左手首90を取り巻くように予め装着されているものとする。また、被験者80は、
図5に示した推奨測定姿勢POをとるものとする。
【0101】
被験者80が本体10に設けられた操作部52としてのプッシュ式スイッチによってPTTに基づく血圧測定を指示すると、CPU100は動作を開始する。すなわち、
図14のステップS11に示すように、CPU100は、弁33を閉鎖するとともに、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、押圧カフ21に空気を送る制御を行って、押圧カフ21を膨張させるとともにカフ圧Pcを予め定められた値に加圧する。この例では、被験者80の身体的負担を軽くするために、左手首90に対してベルト20が密接するのに足りる程度の加圧(例えば5mmHg程度)に留める。これにより、左手首90の掌側面90aに押圧カフ21を確実に当接させて、第1の送受信アンテナ対(41,42)と橈骨動脈91との間の距離が被験者80の体動に起因してガタガタと変動しないようにする。なお、このステップS11を省略してもよい。
【0102】
次に、この装着状態で、
図14のステップS12に示すように、CPU100は、
図9中に示した第1のセンサ40−1と第2のセンサ40−2においてそれぞれ、送信および受信の制御を行う。具体的には、第1のセンサ40−1において、送信回路46が、第1の送信アンテナ41を介して、橈骨動脈91へ向けて電波E1を発射する。これとともに、受信回路47が、橈骨動脈91によって反射された電波E1′を、送信回路46からの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第1の受信アンテナ42を介して受信して、検波および増幅する。また、第2のセンサ40−2において、送信回路48が、第2の送信アンテナ43を介して、心臓81へ向けて電波E2を発射する。これとともに、受信回路49が、心臓81によって反射された電波E2′を、送信回路48からの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第2の受信アンテナ44を介して受信して、検波および増幅する。
【0103】
次に、
図14のステップS13に示すように、CPU100は、
図9中に示した第1のセンサ40−1と第2のセンサ40−2においてそれぞれ、脈波検出部101、拍動検出部102として働いて、
図13中に示すような脈波信号PS1、拍動信号PS2を取得する。すなわち、第1のセンサ40−1において、CPU100は脈波検出部101として働いて、受信回路47の血管拡張期の出力と血管収縮期の出力から、橈骨動脈91の脈波を表す脈波信号PS1を取得する。また、第2のセンサ40−2において、CPU100は拍動検出部102として働いて、受信回路49の心臓拡張期の出力と心臓収縮期の出力から、心臓81の拍動を表す拍動信号PS2を取得する。
【0104】
次に、
図14のステップS14に示すように、CPU100は時間差取得部としてのPTT算出部103として働いて、拍動信号PS2と脈波信号PS1との間の時間差を、脈波伝播時間(PTT)として取得する。より詳しくは、この例では、
図13中に示した拍動信号PS2のピークA2と脈波信号PS1のピークA1との間の時間差Δtを脈波伝播時間(PTT)として取得する。
【0105】
この後、
図14のステップS15に示すように、CPU100は第1の血圧算出部として働いて、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式Eqを用いて、ステップS14で取得された脈波伝播時間(PTT)に基づいて、血圧を算出(推定)する。ここで、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式Eqは、それぞれ脈波伝播時間をDT、血圧をEBPと表すとき、例えば
EBP=α/DT
2+β …(Eq.1)
(ただし、α、βはそれぞれ既知の係数または定数を表す。)
で示すような、1/DT
2の項を含む公知の分数関数として提供される(例えば、特開平10−201724号公報参照)。なお、脈波伝播時間と血圧との間の予め定められた対応式Eqとしては、その他、
EBP=α/DT
2+β/DT+γDT+δ …(Eq.2)
(ただし、α、β、γ、δはそれぞれ既知の係数または定数を表す。)
のように、1/DT
2の項に加えて、1/DTの項と、DTの項とを含む式など、公知の別の対応式を用いてもよい。
【0106】
このようにして血圧を算出(推定)する場合、被験者80が身体的には左手首90を取り巻いてベルト20を装着し予め定められた推奨測定姿勢POをとるだけで、その左手首90の橈骨動脈91の脈波を表す脈波信号PS1と心臓81の拍動を表す拍動信号PS2とが取得され、血圧値が算出される。つまり、測定の際に、被験者80の心臓81を挟む部分に電極を装着或いは貼着する必要が無く、被験者80はベルト20に左手首90を通してバックル24を閉じるだけで、血圧計1(ベルト20)を左手首90に容易に装着することができる。また、被験者80がとる推奨測定姿勢POとして、上半身を起こした姿勢や寝た姿勢など様々な姿勢を含むことができ、自由度が大きい。したがって、この血圧計1は、測定のための被験者80の身体的負担が少ない。なお、血圧値の測定結果は、表示器50に表示されるとともに、メモリ51に記録される。
【0107】
この例では、
図14のステップS16において操作部52としてのプッシュ式スイッチによって測定停止が指示されていなければ(ステップS16でNO)、脈波伝播時間(PTT)の算出(
図14のステップS14)と、血圧の算出(推定)(
図14のステップS15)とを、脈波と拍動に応じて
脈波信号PS1,
拍動信号PS2が入力されるごとに周期的に繰り返す。CPU100は、血圧値の測定結果を、表示器50に更新して表示するとともに、メモリ51に蓄積して記録する。そして、
図14のステップS16において測定停止が指示されると(ステップS16でYES)、測定動作を終了する。
【0108】
この血圧計1によれば、この脈波伝播時間(PTT)に基づく血圧測定によって、被験者80の身体的負担が軽い状態で、血圧を長期間にわたって連続的に測定することができる。
【0109】
また、この血圧計1では、ベルト20に対して送受信部40と本体10(CPU100等を含む。)とが一体に設けられているので、脈波伝播時間に基づく血圧測定(推定)と、オシロメトリック法による血圧測定とを、共通のベルト20を用いて、一体の装置で行うことができる。したがって、ユーザである被験者80の利便性を高めることができる。例えば、一般に、脈波伝播時間(PTT)に基づく血圧測定(推定)を行う場合は、適宜、脈波伝播時間と血圧との間の対応式Eqの校正(上の例では、実測された脈波伝播時間と血圧値に基づく係数α、β等の値の更新)を行う必要がある。ここで、この血圧計1によれば、同じ機器でオシロメトリック法による血圧測定を行い、その結果に基づいて対応式Eqの校正を行うことができるので、被験者80の利便性を高めることができる。また、精度は低いけれども連続して測定できるPTT方式(脈波伝播時間に基づく血圧測定)で血圧の急激な上昇を捉え、その血圧の急激な上昇をトリガにして、より正確なオシロメトリック法での測定を開始することができる。
【0110】
特に、この血圧計1では、受信アンテナ42,44の出力から脈波信号PS1、拍動信号PS2、脈波伝播時間(PTT)、および、血圧値を得るために、ベルト20の外部へ配線を延在させる必要が無い。したがって、この血圧計1によれば、測定の際に、被験者80は配線ケーブルに煩わされることが無く、身体的負担が少ない。
【0111】
上の例では、第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42は互いに別体として設けられたが、これに限られるものではない。空間的に1つのアンテナ要素が公知のサーキュレータを介して送信アンテナおよび受信アンテナ(つまり、送受共用アンテナ)として用いられてもよい。第2の送信アンテナ43と第2の受信アンテナ44についても、同様である。
【0112】
(変形例1;周波数のバリエーション)
上の例では、
図9中に示したように、送信アンテナ41から左手首90の橈骨動脈91へ向けて発射される電波E1の周波数と、送信アンテナ43から心臓81へ向けて発射される電波E2の周波数とが、互いに同じ周波数f1であるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、
図15中に示すように、送信アンテナ41から左手首90の橈骨動脈91へ向けて発射される電波E1の周波数f1と、送信アンテナ43から心臓81へ向けて発射される電波E2の周波数f2とが、互いに異なっていてもよい。この例では、f1=24.05GHzとし、f2=24.25GHzとする。
【0113】
図15の例では、送信回路46は、その動作時に、接続された第1の送信アンテナ41を介して、周波数f1(=24.05GHz)の電波E1を橈骨動脈91へ向けて発射する。受信回路47は、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′を、送信回路46からの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第1の受信アンテナ42を介して受信して、検波および増幅する。一方、送信回路48は、その動作時に、接続された第2の送信アンテナ43を介して、周波数f2(=24.25GHz)の電波E2を心臓81へ向けて発射する。受信回路49は、心臓81によって反射された電波E2′を、送信回路48からの参照信号(周波数f2)に基づいて特定し、第2の受信アンテナ44を介して受信して、検波および増幅する。
【0114】
このようにした場合、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′と、心臓81によって反射された電波E2′とを、互いに周波数f1,f2で選別して混信を避けることができる。この結果、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
【0115】
(変形例2;アンテナ配置のバリエーション)
上の例では、例えば
図3中に示したように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)(このアンテナ配置の符号を
図7(A)上部に示す。)であるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、
図16(A),
図16(B)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がY方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ay)(このアンテナ配置の符号を
図16(A)上部に示す。)であってもよい。ここで、
図16(A)は、
図3に対応した左手首90の長手方向に対して垂直な断面(ZX平面)を示し、また、
図16(B)は、
図16(A)のものを左手首90の長手方向に沿った断面(YZ平面)で示している(次に述べる
図17、
図18でも同様。)。また、簡単のため、本体10と押圧カフ21の図示は省略されている(以下同様。)。
【0116】
また、
図17(A),
図17(B)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がY方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ay)(このアンテナ配置の符号を
図17(A)上部に示す。)であってもよい。
【0117】
また、
図18(A),
図18(B)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)(このアンテナ配置の符号を
図18(A)上部に示す。)であってもよい。なお、この例では、
図20(B),
図20(C)中に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向が直線偏波Pxであり、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向が直線偏波Pxであるものとする。
図20(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Px,Px)で表している。
【0118】
先に述べたアンテナ配置(Ax,Ax)と同様に、アンテナ配置がこれらの(Ay,Ay)、(Ax,Ay)、(Ay,Ax)であっても、第1の送信アンテナ41から橈骨動脈91へ向けて電波E1を発射し、橈骨動脈91によって反射された電波E1′を第1の受信アンテナ42を介して受信することができる。これとともに、第2の送信アンテナ43から心臓81へ向けて電波E2を発射し、心臓81によって反射された電波E2′を受信アンテナ44を介して受信することができる。これにより、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
【0119】
(変形例3;偏波方向のバリエーション)
上の例では、例えば
図7(C),
図7(B)中に示したように、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向が直線偏波Pxであり、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向が直線偏波Pxであるものとした(
図7(A)上部に、この偏波方向の組合せを符号(Px,Px)で表している。)。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、
図19(C)に示すように、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42において、それぞれ給電点41a,42aを−Y側の辺の中央に設けて、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pyにしてもよい。同様に、
図19(B)に示すように、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44において、それぞれ給電点43a,44aを+Y側の辺の中央に設けて、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pyにしてもよい。これにより、第1の送信アンテナ41と第1の受信アンテナ42との間の送受信、第2の送信アンテナ43と第2の受信アンテナ44との間の送受信をそれぞれ低損失で行うことができる。この結果、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
図19(A)上部に、この偏波方向の組合せを符号(Py,Py)で表している。
【0120】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図21(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)の場合に、例えば
図21(C),
図21(B)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pyにし、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pyにしてもよい。
図21(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Py,Py)で表している。
【0121】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図22(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)の場合に、例えば
図22(C)に示すように、第1の送信アンテナ41において、給電点41aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)41c、+X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)41dをそれぞれ設けて、第1の送信アンテナ41の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。これとともに、第1の受信アンテナ42において、給電点42aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)42c、+X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)42dをそれぞれ設けて、第1の受信アンテナ42の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。同様に、
図22(B)に示すように、第2の送信アンテナ43において、給電点43aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)43c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)43dをそれぞれ設けて、第2の送信アンテナ43の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。これとともに、第2の受信アンテナ44において、給電点44aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)44c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)44dをそれぞれ設けて、第2の受信アンテナ44の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。
図22(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Pr,Pr)で表している。
【0122】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図23(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)の場合に、例えば
図23(C)に示すように、第1の送信アンテナ41において、給電点41aを−Y側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き41c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き41dをそれぞれ設けて、第1の送信アンテナ41の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。これとともに、第1の受信アンテナ42において、給電点42aを−Y側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き42c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き42dをそれぞれ設けて、第1の受信アンテナ42の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。同様に、
図23(B)に示すように、第2の送信アンテナ43において、給電点43aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43dをそれぞれ設けて、第2の送信アンテナ43の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。これとともに、第2の受信アンテナ44において、給電点44aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44dをそれぞれ設けて、第2の受信アンテナ44の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を右旋回の円偏波Prにしてもよい。
図23(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Pr,Pr)で表している。
【0123】
(変形例4;アンテナ配置と偏波方向のバリエーション)
これまでの例では、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向と第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向とが、互いに同じであるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向と第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向とが、互いに異なっていてもよい。例えば
図24(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)の場合に、
図24(C)に示すように、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42において、それぞれ給電点41a,42aを−Y側の辺の中央に設けて、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pyにする一方、
図24(B)に示すように、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44において、それぞれ給電点43a,44aを−X側の辺の中央に設けて、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pxにしてもよい。これにより、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′と、心臓81によって反射された電波E2′とを、互いに偏波方向で選別して混信を避けることができる。これにより、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
図24(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Py,Px)で表している。
【0124】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図25(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)の場合に、
図25(C)に示すように、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42において、それぞれ給電点41a,42aを−X側の辺の中央に設けて、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pxにする一方、
図25(B)に示すように、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44において、それぞれ給電点43a,44aを+Y側の辺の中央に設けて、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pyにしてもよい。
図25(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Px,Py)で表している。
【0125】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図26(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)の場合に、
図26(C)に示すように、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42において、それぞれ給電点41a,42aを−Y側の辺の中央に設けて、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pyにする一方、
図26(B)に示すように、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44において、それぞれ給電点43a,44aを−X側の辺の中央に設けて、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pxにしてもよい。
図26(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Py,Px)で表している。
【0126】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図27(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)の場合に、
図27(C)に示すように、第1の送信アンテナ41、第1の受信アンテナ42において、それぞれ給電点41a,42aを−X側の辺の中央に設けて、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を直線偏波Pxにする一方、
図27(B)に示すように、第2の送信アンテナ43、第2の受信アンテナ44において、それぞれ給電点43a,44aを+Y側の辺の中央に設けて、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を直線偏波Pyにしてもよい。
図27(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Px,Py)で表している。
【0127】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図28(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)の場合に、例えば
図28(C)に示すように、第1の送信アンテナ41において、給電点41aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)41e、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)41fをそれぞれ設けて、第1の送信アンテナ41の偏波方向を左旋回の円偏波Plにしてもよい。これとともに、第1の受信アンテナ42において、給電点42aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)42e、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き(摂動素子)42fをそれぞれ設けて、第1の受信アンテナ42の偏波方向を左旋回の円偏波Plにする。このようにして、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を左旋回の円偏波Plにする。一方、
図28(B)に示すように、第2の送信アンテナ43において、給電点43aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43dをそれぞれ設けて、第2の送信アンテナ43の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。これとともに、第2の受信アンテナ44において給電点44aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44dをそれぞれ設けて、第2の受信アンテナ44の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向(左旋回の円偏波Pl)とは異なる右旋回の円偏波Prにする。
図28(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Pl,Pr)で表している。
【0128】
また、上の例と同じ理由で、例えば
図29(A)に示すように、第1の送受信アンテナ対(41,42)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(43,44)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ax)の場合に、例えば
図29(C)に示すように、第1の送信アンテナ41において、給電点41aを−Y側の辺の中央に設けるとともに、+X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き41e、−X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き41fをそれぞれ設けて、第1の送信アンテナ41の偏波方向を左旋回の円偏波Plにしてもよい。これとともに、第1の受信アンテナ42において、給電点42aを−Y側の辺の中央に設けるとともに、+X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き42e、−X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き42fをそれぞれ設けて、第1の受信アンテナ42の偏波方向を左旋回の円偏波Plにする。このようにして、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向を左旋回の円偏波Plにする。一方、
図29(B)に示すように、第2の送信アンテナ43において、給電点43aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き43dをそれぞれ設けて、第2の送信アンテナ43の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。これとともに、第2の受信アンテナ44において、給電点44aを−X側の辺の中央に設けるとともに、−X側の辺と−Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44c、+X側の辺と+Y側の辺とが作るコーナ部に切り欠き44dをそれぞれ設けて、第2の受信アンテナ44の偏波方向を右旋回の円偏波Prにする。このようにして、第2の送受信アンテナ対(43,44)の偏波方向を、第1の送受信アンテナ対(41,42)の偏波方向(左旋回の円偏波Pl)とは異なる右旋回の円偏波Prにする。
図29(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Pl,Pr)で表している。
【0129】
(変形例5;第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとの共通化)
これまでの例では、例えば
図3中に示したように、第1の送受信アンテナ対(41,42)と第2の送受信アンテナ対(43,44)(特に、第1の送信アンテナ41と第2の送信アンテナ43)は、ベース部400(基板410,420を含む。)を介して、それぞれベルト20の内周面20a、外周面20bに取り付けられているものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、上述の第1の送信アンテナ41と第2の送信アンテナ43に代えて、
図30(A),
図30(B)に示すように、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方へ向けて電波E1,E2を発射する共通の第3の送信アンテナ41Xを備えていてもよい。ここで、
図30(A)は、ベルト20が左手首90に装着された状態での、この変形例の送受信アンテナ群(符号40E′で表す。)の平面レイアウトを示している。
図30(B)は、
図30(A)における左手首90の長手方向(Y方向)に沿った断面を模式的に示している。これらの図に示すように、この例では、既述のベース部400に比してY方向寸法が短い小型のベース部401と、送受信アンテナ群40E′に含まれた第3の送信アンテナ41X、第1の受信アンテナ42′および第2の受信アンテナ44′を備えている。第3の送信アンテナ41X、第1の受信アンテナ42′および第2の受信アンテナ44′は、それぞれ、この例ではX方向に延在するダイポールアンテナからなっている。第3の送信アンテナ41Xは、ベース部401から外れて−Y側に隣り合う位置に配置されている。第1の受信アンテナ42′は、ベルト20(ベース部401)の内周面20aに沿って配置されている。また、第2の受信アンテナ44′は、ベルト20(ベース部401)の外周面20bに沿って配置されている。これにより、装着状態では、
図30(B)に示すように、第3の送信アンテナ41Xは、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方に対向する。第1の受信アンテナ42′は左手首90の橈骨動脈91に対向し、また、第2の受信アンテナ44′は心臓81に対向する。この例では、第3の送信アンテナ41Xと第1の受信アンテナ42′とが第1の送受信アンテナ対(41X,42′)をなし、また、第3の送信アンテナ41Xと第2の受信アンテナ44′とが第2の送受信アンテナ対(41X,44′)をなす。これらの第1の送受信アンテナ対(41X,42′)、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)は、それぞれY方向に並んで配置されている。その意味で、
図30(A)上部に、アンテナ配置を符号(Ay,Ay)で表している。
【0130】
図31(A)は送受信アンテナ群40E′の断面構造を示している。この例では、ベルト20の内周面20a、外周面20bに、それぞれ基板410′,420′を介して、第1の受信アンテナ42′、第2の受信アンテナ44′が取り付けられている。基板410′,420′は、既述の基板410,420と同じ断面構造をもち、Y方向寸法がより小さく設定されている。この例では、第3の送信アンテナ41Xは、ベルト20の内周面20aに沿って配置されている。第3の送信アンテナ41Xと基板410′とは給電線41s,41tで接続されている。なお、第3の送信アンテナ41Xは、ベルト20の外周面20bに沿って配置され、基板420′と給電線41s,41tで接続されていてもよい。また、
図31(B)に示すように、ベルト20の内周面20a側および外周面20b側が平坦になるように、第3の送信アンテナ41X、第1の受信アンテナ42′および第2の受信アンテナ44′はベルト(符号20″で表す。)に埋め込まれていてもよい。この例では、ベルト20″の厚さは8mmに設定されている。このようにした場合、
図6(B)に関して述べたのと同様に、ベルト20″の内周面20a側が平坦になっているので、ベルト20″を装着した被験者80に不快感(ベルトの内周面側が凸凹になっていることによる不快感)を与えることがない。また、ベルト20″の外周面20b側が平坦になっているので、仮に被験者80の活動に伴ってベルト20″の外周面20bが机や壁などに接触したとしても、この血圧計1の送受信アンテナ群40E′は、破損し難くなる。また、見栄えを良くすることができる。
【0131】
図33に示すように、各ダイポールアンテナ(この例では、代表して第3の送信アンテナ41Xを示す。)は、直線的に互いに反対向きに延びる一対のエレメント41Xa,41Xbを含んでいる。各エレメント41Xa,41Xbの長さは、用いられる周波数の約1/4波長に設定されている。動作時には、エレメント41Xa,41Xbが互いに最も接近した箇所に、給電線41s,41tを介して給電が行われる。
図33中に示すように、各ダイポールアンテナは、エレメント41Xa,41Xbが延在する方向(この例では、X方向)に沿った直線偏波Pxを示す。したがって、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向は、いずれも直線偏波Pxとなる。
図34(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ay)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Px,Px)で表している。なお、
図34(A),
図34(B)は、
図30(A),
図30(B)にそれぞれ指向性と偏波方向を追記したものである。
【0132】
また、
図32中に示すように、各ダイポールアンテナは、エレメント41Xa,41Xbに垂直な面内では円形の指向性を示し、エレメント41Xa,41Xbを含む面内では8の字形の指向性を示す。これにより、
図34(A)に示すXY平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第2の受信アンテナ44′も、2点鎖線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D44′を示す。また、
図34(B)に示すYZ平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示す円形の指向性D41Xを示す。第1の受信アンテナ42は、ベース部401(遮蔽層としての銅層412,422を含む)で遮られて、2点鎖線で示す半円形の指向性(−Z方向に広がる)D42′を示す。同様に、第2の受信アンテナ44′は、ベース部401で遮られて、2点鎖線で示す半円形の指向性(+Z方向に広がる)D44′を示す。
【0133】
この例では、
図35に示すように、送受信部40の送受信回路群45′は、第3の送信アンテナ41Xに接続された送信回路46Xと、受信アンテナ42′,44′にそれぞれ接続された受信回路47,49とを含んでいる。送信回路46Xは、その動作時に、接続された第3の送信アンテナ41Xを介して、この例では24GHz帯の周波数f1(この例では、f1=24.05GHzとする。)の電波E1,E2をそれぞれ橈骨動脈91、心臓81へ向けて発射する(実際には、
図34(B)中に示したようにYZ平面内で等方位に発射する。)。受信回路47は、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′を、送信回路46Xからの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第1の受信アンテナ42′を介して受信して、検波および増幅する。一方、受信回路49は、心臓81によって反射された電波E2′を、送信回路46Xからの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第2の受信アンテナ44′を介して受信して、検波および増幅する。この例では、送受信部40に送受信回路群
45′が搭載されているので、送信回路46Xから第3の送信アンテナ41Xまでの給電経路を比較的短くでき、電波E1,E2の波形の劣化を抑制できる。また、各受信アンテナ42′,44′から受信回路47,49までの受信経路を比較的短くできる。また、ベース部401(遮蔽層としての銅層412,422を含む)が第1の受信アンテナ42′と第2の受信アンテナ44′との間で電波を遮蔽するので、脈波信号PS1と拍動信号PS2との間の干渉が抑制される。これらの結果、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
【0134】
また、この例では、既述の第1の送信アンテナ41と第2の送信アンテナ43とを共通化した第3の送信アンテナ41Xを備えているので、血圧計1の構成を簡素化できる。
【0135】
(変形例6;周波数のバリエーション)
上の例では、
図35中に示したように、受信回路47によって受信される電波E1′の周波数と、受信回路49によって受信される電波E2′の周波数とが、互いに同じ周波数f1であるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、
図36中に示すように、第3の送信アンテナ41Xは、左手首90の橈骨動脈91へ向けて互いに異なる第1の周波数成分f1と第2の周波数成分f2とを含む電波E1を発射するとともに、心臓81へ向けて互いに異なる第1の周波数成分f1と第2の周波数成分f2とを含む電波E2を発射する。この例では、f1=24.05GHzとし、f2=24.25GHzとする。さらに、受信回路47は、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′のうち第1の周波数成分f1に相当する成分を、送信回路46Xからの参照信号(周波数f1)に基づいて特定し、第1の受信アンテナ42′を介して受信して、検波および増幅する。一方、受信回路49は、心臓81によって反射された電波E2′のうち第2の周波数成分f2に相当する成分を、送信回路46Xからの参照信号(周波数f2)に基づいて特定し、第2の受信アンテナ44′を介して受信して、検波および増幅する。
【0136】
このようにした場合、左手首90の橈骨動脈91によって反射された電波E1′と、心臓81によって反射された電波E2′とを、互いに周波数f1,f2で選別して混信を避けることができる。この結果、脈波信号PS1、拍動信号PS2をさらに精度良く取得できる。
【0137】
(変形例7;アンテナ配置と偏波方向のバリエーション)
上の例では、例えば
図34(A),
図34(B)中に示したように、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)がY方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ay)である場合に、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)の偏波方向、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向を、いずれも直線偏波Pxであるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば
図37(A),
図37(B)中に示すように、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)がY方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)がY方向に並ぶアンテナ配置(Ay,Ay)である場合に、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)の偏波方向、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向を、いずれも直線偏波Pyにしてもよい。この例では、既述のベース部401に代えて、
図37(A)中に示すように、XY平面内で、Y方向に延在するストレート部402aと、このストレート部402aに連なりX方向に延在するストレート部402bとを含む、略L字状の平面形状をもつベース部402を備えている。ベース部402の断面構造は、ベース部401の断面構造と同じになっている。第3の送信アンテナ41Xは、ベース部402から外れてL字の窪みに相当する位置に、Y方向に延在して配置されている。
図37(B)中に示すように、第1の受信アンテナ42′は、ベルト20(ベース部402)の内周面20aに沿って、Y方向に延在して配置されている。また、第2の受信アンテナ44′は、ベルト20(ベース部402)の外周面20bに沿って、Y方向に延在して配置されている。したがって、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向は、いずれも直線偏波Pyとなる。
図37(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ay,Ay)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Py,Py)で表している。この例では、
図37(A)に示すXY平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第2の受信アンテナ44′も、2点鎖線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D44′を示す(第1の受信アンテナ42′も同様である。)。
図37(B)に示すYZ平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第1の受信アンテナ42′は、ベース部402(遮蔽層としての銅層412,422を含む)で遮られて、2点鎖線で示す円形の指向性(−Z方向に広がる)D42′を示す。同様に、第2の受信アンテナ44′は、ベース部402で遮られて、2点鎖線で示す円形の指向性(+Z方向に広がる)D44′を示す。装着状態では、
図37(B)に示すように、第3の送信アンテナ41Xは、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方に対向する。第1の受信アンテナ42′は左手首90の橈骨動脈91に対向し、また、第2の受信アンテナ44′は心臓81に対向する。したがって、動作時に、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方へ向けて電波E1,E2を発射することができ、また、橈骨動脈91と心臓81とによってそれぞれ反射された電波E1′,E2′を受信することができる。
【0138】
また、例えば
図38(A),
図38(B)中に示すように、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)である場合に、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)の偏波方向、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向を、いずれも直線偏波Pyにしてもよい。この例では、既述のベース部401に代えて、
図38(A)中に示すように、XY平面内で、ベース部401に比してX方向寸法が短く且つY方向寸法が長い小型のベース部403を備えている。ベース部403の断面構造は、ベース部401の断面構造と同じになっている。第3の送信アンテナ41Xは、ベース部403から外れて−X側に隣り合う位置に配置されている。
図38(B)中に示すように、第1の受信アンテナ42′は、ベルト20(ベース部403)の内周面20aに沿って、Y方向に延在して配置されている。また、第2の受信アンテナ44′は、ベルト20(ベース部403)の外周面20bに沿って、Y方向に延在して配置されている。したがって、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向は、いずれも直線偏波Pyとなる。
図38(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Py,Py)で表している。この例では、
図38(A)に示すXY平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第2の受信アンテナ44′も、2点鎖線で示すX方向に細長い8の字形の指向性D44′を示す(第1の受信アンテナ42′も同様である。)。
図38(B)に示すZX平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示す円形の指向性D41Xを示す。第1の受信アンテナ42′は、ベース部403(遮蔽層としての銅層412,422を含む)で遮られて、2点鎖線で示す半円形の指向性(−Z方向に広がる)D42′を示す。同様に、第2の受信アンテナ44′は、ベース部
403で遮られて、2点鎖線で示す半円形の指向性(+Z方向に広がる)D44′を示す。先の例と同様に、装着状態では、
図38(B)に示すように、第3の送信アンテナ41Xは、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方に対向する。第1の受信アンテナ42′は左手首90の橈骨動脈91に対向し、また、第2の受信アンテナ44′は心臓81に対向する。したがって、動作時に、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方へ向けて電波E1,E2を発射することができ、また、橈骨動脈91と心臓81とによってそれぞれ反射された電波E1′,E2′を受信することができる。
【0139】
また、例えば
図39(A),
図39(B)中に示すように、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)がX方向に並び、かつ、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)がX方向に並ぶアンテナ配置(Ax,Ax)である場合に、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)の偏波方向、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向を、いずれも直線偏波Pxにしてもよい。この例では、既述のベース部401に代えて、
図39(A)中に示すように、XY平面内で、X方向に延在するストレート部404aと、このストレート部404aに連なりY方向に延在するストレート部404bとを含む、略L字状の平面形状をもつベース部404を備えている。ベース部404の断面構造は、ベース部401の断面構造と同じになっている。第3の送信アンテナ41Xは、ベース部404から外れてL字の窪みに相当する位置に、X方向に延在して配置されている。
図39(B)中に示すように、第1の受信アンテナ42′は、ベルト20(ベース部404)の内周面20aに沿って、X方向に延在して配置されている。また、第2の受信アンテナ44′は、ベルト20(ベース部404)の外周面20bに沿って、X方向に延在して配置されている。したがって、第1の送受信アンテナ対(41X,42′)、第2の送受信アンテナ対(41X,44′)の偏波方向は、いずれも直線偏波Pxとなる。
図39(A)上部に、アンテナ配置の符号(Ax,Ax)とともに、この偏波方向の組合せを符号(Px,Px)で表している。この例では、
図39(A)に示すXY平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すY方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第2の受信アンテナ44′も、2点鎖線で示すY方向に細長い8の字形の指向性D44′を示す(第1の受信アンテナ42′も同様である。)。
図39(B)に示すZX平面内では、第3の送信アンテナ41Xは、破線で示すZ方向に細長い8の字形の指向性D41Xを示す。第1の受信アンテナ42′は、ベース部403(遮蔽層としての銅層412,422を含む)で遮られて、2点鎖線で示す円形の指向性(−Z方向に広がる)D42′を示す。同様に、第2の受信アンテナ44′は、ベース部402で遮られて、2点鎖線で示す円形の指向性(+Z方向に広がる)D44′を示す。先の例と同様に、装着状態では、
図39(B)に示すように、第3の送信アンテナ41Xは、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方に対向する。第1の受信アンテナ42′は左手首90の橈骨動脈91に対向し、また、第2の受信アンテナ44′は心臓81に対向する。したがって、動作時に、左手首90の橈骨動脈91と心臓81との両方へ向けて電波E1,E2を発射することができ、また、橈骨動脈91と心臓81とによってそれぞれ反射された電波E1′,E2′を受信することができる。
【0140】
(被測定部位のバリエーション)
これまでの例では、血圧計1は、被測定部位として左手首90に装着されることが予定されているものとした。しかしながら、これに限られるものではない。被測定部位は、動脈が通っていれば良く、右手首や、手首以外の上腕、前腕、手、指などの上肢であっても良い。
【0141】
例えば
図1を用いて説明すると、被測定部位が上腕である場合は、被験者80は、上腕に対してベルト20を送受信部40が体の内側(体幹82側)にくる配置で装着し、「推奨測定姿勢」として、上腕を体幹82の側方に沿わせた姿勢を取るものとする。すると、第1の送受信アンテナ対(41,42)は上腕の動脈91に対向し、また、第2の送受信アンテナ対(43,44)は心臓81に対向する。その場合の動作時にも、第1の送受信アンテナ対(41,42)と上腕の動脈91との間の距離は約5mm、第2の送受信アンテナ対(43,44)と心臓81との間の距離は約50mmに、それぞれ想定されている。それらの距離を前提として、第1の送信アンテナ41、第2の送信アンテナ43が発射する電波強度のレベルは、それぞれ約0.5mW、約10mWになっている。受信アンテナ42,44の受信レベルは、それぞれ約1μW、約0.2μW程度になっている。受信回路47,49の出力レベルは、それぞれ約1ボルト程度になっている。また、脈波信号PS1、拍動信号PS2のそれぞれのピークA1,A2の強度レベルは、それぞれ約100mV〜1ボルトの程度になっている。これにより、脈波信号PS1、拍動信号PS2を精度良く取得できる。
【0142】
(制御系のバリエーション)
また、これまでの例では、血圧計1に搭載されたCPU100が脈波検出部101、拍動検出部102、PTT算出部103、第1および第2の血圧算出部104,204として働いて、オシロメトリック法による血圧測定(
図11の動作フロー)およびPTTに基づく血圧測定(推定)(
図14の動作フロー)を実行するものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、血圧計1の外部に設けられたスマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置が、脈波検出部101、拍動検出部102、PTT算出部103、第1および第2の血圧算出部104,204として働いて、ネットワーク900を介して、血圧計1にオシロメトリック法による血圧測定(
図11の動作フロー)およびPTTに基づく血圧測定(推定)(
図14の動作フロー)を実行させるようにしてもよい。その場合、ユーザは、そのコンピュータ装置の操作部(タッチパネル、キーボード、マウスなど)によって血圧測定開始又は停止の指示などの操作を行い、そのコンピュータ装置の表示器(有機ELディスプレイ、LCDなど)によって血圧測定結果などの血圧測定に関する情報、その他の情報を表示させることができる。その場合、血圧計1では、表示器50と操作部52を省略してもよい。
【0143】
また、血圧計1または上記コンピュータ装置が、予め測定時刻を設定可能なタイマを備え、現在時刻がそのタイマに設定された測定時刻になった(または近づいた)とき、その旨を表示や音声で被験者に通知して、推奨測定姿勢を取るように促してもよい。なお、ユーザが推奨測定姿勢を取っていない場合は、血圧計1または上記コンピュータ装置は動作しない(脈波測定をしない)でもよいし、血圧測定(推定)を行わず脈波検出部のみ動作させてもよい。
【0144】
(生体情報のバリエーション)
上述の例では、血圧計1によって、生体情報としての脈波信号、拍動信号、脈波伝播時間、血圧を測定したが、これに限られるものではない。脈拍数などの他の様々な生体情報を測定してもよい。
【0145】
(機器としてのバリエーション)
また、この発明に従って、生体情報測定装置および/または血圧測定装置を含み、さらに他の機能を実行する機能部を含む機器を構成してもよい。この機器によれば生体情報を精度良く測定でき、生体情報として特に脈波信号、拍動信号を精度良く取得でき、または、血圧値を精度良く算出(推定)できる。その他、この機器は様々な機能を実行することができる。
【0146】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。