特許第6873024号(P6873024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873024
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】液体加熱用の低空気比バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/22 20060101AFI20210510BHJP
   F23L 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F23D14/22 J
   F23L1/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-208610(P2017-208610)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-82265(P2019-82265A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】別城 光治
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−040620(JP,U)
【文献】 特開2003−343818(JP,A)
【文献】 特開昭50−064827(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0960102(KR,B1)
【文献】 特開2012−034963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/22
F23L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体加熱用の低空気比バーナであって、
長手方向に沿って形成される燃焼ガス排出孔を有すると共に前記長手方向に延びる筒状筐体と、
前記筒状筐体の内部に配設され、前記長手方向に沿って形成される複数の燃料ガス噴出孔を有すると共に前記長手方向に延びる燃料ガス通流配管と、
前記筒状筐体の内部に配設され、前記長手方向に直交する短手方向での一端が接続される形状で前記筒状筐体の内部を仕切ると共に前記長手方向に延びる一対の仕切翼とを備え、
一対の前記仕切翼は、前記長手方向に沿う長手方向断面視でV字状に沿う形状を有すると共に、前記筒状筐体の内部を仕切って形成された一方側空間である燃焼用空気通流空間から、前記筒状筐体の内部を仕切って形成された他方側空間であって前記燃焼ガス排出孔へ直通する燃焼空間へ向けて燃焼用空気を噴出する複数の燃焼用空気噴出孔を有し、
前記燃料ガス通流配管は、前記燃焼空間において、一対の前記仕切翼の接続部位に沿って配設されると共に、前記長手方向断面視で前記燃料ガス噴出孔からの燃料ガス噴出方向が一対の前記仕切翼の短手方向での他端の間へ向けて噴出する状態で配設され、
前記長手方向断面視で、前記V字状に沿って設けられる一対の前記仕切翼の成す角度は、40°以上45°以下に設定され、
前記長手方向断面視で、一対の前記仕切翼に形成される複数の前記燃焼用空気噴出孔は、一対の前記仕切翼の前記短手方向で前記一端から前記他端へ向けて徐々に大径に形成され、
定格負荷から当該定格負荷よりも負荷が低い低負荷までにおいて空気比を1.2以上1.6以下の間で制御する空気比制御手段を備え、
一対の前記仕切翼の短手方向での一端は、凹形状の接続部位にて接続されており、当該凹形状の接続部位に角筒から成る前記燃料ガス通流配管が嵌設されている液体加熱用の低空気比バーナ。
【請求項2】
一対の前記仕切翼に形成される複数の前記燃焼用空気噴出孔は、
一対の前記仕切翼の前記V字状に沿う形状を成す仕切面の面積に対して、前記燃焼用空気噴出孔による開口面積が占める割合である開口率が、3%以上5%未満に設定されている請求項1に記載の液体加熱用の低空気比バーナ。
【請求項3】
一対の前記仕切翼の前記短手方向での前記他端の夫々には、当該他端同士を繋ぐ方向に沿って延びる端部翼が連接されており、
前記端部翼には、前記燃焼用空気通流空間から前記燃焼空間へ向けて燃焼用空気を噴出する複数の補助燃焼用空気噴出孔が、前記長手方向に沿って複数設けられ、
前記端部翼に設けられる前記補助燃焼用空気噴出孔からの燃焼用空気の噴出方向は、燃料ガスの噴出方向に沿う方向に設定されている請求項1又は2に記載の液体加熱用の低空気比バーナ。
【請求項4】
液体としての油を加熱するフライヤーに適用される請求項1〜3の何れか一項に記載の液体加熱用の低空気比バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の加熱が要求される液体を加熱する液体加熱用の低空気比バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高温の加熱が要求される液体を加熱する液体加熱装置として、食品等を効率良く連続的に揚げる業務用のHEC(High Efficiency Continuous)フライヤーの開発が進められている(特許文献1を参照)。
当該特許文献1に開示のHECフライヤーは、特許文献1の図4に例示されるように、燃焼用空気と燃料ガスとを燃焼するバーナと、当該バーナからの燃焼ガスを通流する燃焼室と、燃焼室の上方に配置されると共に当該燃焼室を通流する燃焼ガスにて加熱される液体としての油を貯留する油槽と、燃焼室を通流した後の燃焼排ガスとバーナに導かれる前の燃焼用空気とを熱交換する熱交換器とを備えて構成されている。特に、燃焼室は、燃焼排ガスが燃焼室の入口から出口へ向けて短絡することを防止し、油槽の油への熱伝導性を高めるべく、屈曲流路を形成する仕切壁を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−034963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上述したHECフライヤーでは、その構造上、バーナが燃焼室の底面に締結固定される構造が取られ、そのバーナとしては、図7の一部断面図に示されるようなバーナが採用される。
当該バーナ200の筒状筐体Kは、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに対して、底板Tに形成された開孔T2と筒状筐体Kの上方に設けられるフランジFに形成された開孔F2とにボルトBを挿通してナットNで締結する形態で、固定されている。
当該筒状筐体Kは、その内部の下方領域としての燃焼用空気通流空間FSに対して燃焼用空気通流配管30が連通接続されると共に、長手方向(図7で矢印Xに沿う方向)に伸びる長尺形状を有している。更に、筒状筐体Kの天板に形成される開孔K1が、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに形成される開孔T1と略一致した状態で底板Tに対して固定され、その内部の上方領域としての燃焼空間CSとフライヤーの燃焼室内部の燃焼空間CSとが連通している。
当該筒状筐体Kの内部には、図7に示す断面視において、その略中央領域に、長手方向(図7で矢印Xに沿う方向)に伸びる共に長手方向に沿って形成される複数の燃料ガス噴出孔11を有する燃料ガス通流配管10が設けられている。
更に、当該燃料ガス通流配管10の側方には、図7に示す断面視において、長手方向(図7で矢印Xに沿う方向)に伸びる複数の仕切翼21a、22a、23a、21b、22b、23b(図7では、6枚)が、その短手方向を鉛直方向(図7で矢印Yに沿う方向)に沿わせて配設されている。そして、当該複数の仕切翼21a、22a、23a、21b、22b、23bの間に形成される間隙流路を通流する形態で、燃焼用空気通流空間FSから燃焼空間CSへ燃焼用空気Aが導かれる。尚、図7に示す構成にあっては、燃料ガス通流配管10に近接する一対の仕切翼23a、23bの下方端部は、長手方向に伸びる連接板23にて接続されており、燃料ガス通流配管10の側方及び下方は、一対の仕切翼23a、23b及び連接板23にて外囲されている。また、筒状筐体Kに近接する仕切翼21a、21bは、筒状筐体Kの内壁と仕切翼21aとの間、及び筒状筐体Kの内壁と仕切翼21bとの間に、間隙流路を形成している。
因みに、仕切翼21a、22a、21b、22bの上方端部は、水平方向で筒状筐体Kの中央方向へ向けて屈曲成形されており、間隙流路を通流した燃焼用空気は、燃焼空間CSにおいて、水平方向で筒状筐体Kの中央方向へ向けて流動する。
これにより、バーナ200の筒状筐体Kの燃焼空間CSでは、間隙流路を通流した燃焼用空気Aと、燃料ガス通流配管10の燃料ガス噴出孔11から噴出された燃料ガスとが混合され、図示しない点火プラグにて点火されることにより燃焼する。因みに、フライヤーに適用されるバーナ200では、比較的高温で油槽の油を加熱する必要があるため、低空気比(例えば、1.2以上1.6以下程度)で燃焼される。
【0005】
さて、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに対し、上述のバーナ200を締結固定する場合、バーナ200が複数の間隙流路を形成するために複数の仕切翼21a、22a、23a、21b、22b、23bを有するため重くなり、バーナ200の自重により、フライヤーの燃焼室の底板Tが変形する虞があった。
当該課題を解決するには、バーナ200自体を軽量化する必要があるが、フライヤーのような液体加熱装置に用いられ、高温加熱を目的とした低空気比バーナでは、当該解決するような構成は、知られておらず、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的広い出力範囲において、低空気比を維持しながらも、良好な燃焼状態を維持しつつ、比較的高温の加熱が要求される液体を加熱可能な液体加熱用の低空気比バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための液体加熱用の低空気比バーナは、液体加熱用の低空気比バーナであって、その特徴構成は、
長手方向に沿って形成される燃焼ガス排出孔を有すると共に前記長手方向に延びる筒状筐体と、
前記筒状筐体の内部に配設され、前記長手方向に沿って形成される複数の燃料ガス噴出孔を有すると共に前記長手方向に延びる燃料ガス通流配管と、
前記筒状筐体の内部に配設され、前記長手方向に直交する短手方向での一端が接続される形状で前記筒状筐体の内部を仕切ると共に前記長手方向に延びる一対の仕切翼とを備え、
一対の前記仕切翼は、前記長手方向に沿う長手方向断面視でV字状に沿う形状を有すると共に、前記筒状筐体の内部を仕切って形成された一方側空間である燃焼用空気通流空間から、前記筒状筐体の内部を仕切って形成された他方側空間であって前記燃焼ガス排出孔へ直通する燃焼空間へ向けて燃焼用空気を噴出する複数の燃焼用空気噴出孔を有し、
前記燃料ガス通流配管は、前記燃焼空間において、一対の前記仕切翼の接続部位に沿って配設されると共に、前記長手方向断面視で前記燃料ガス噴出孔からの燃料ガス噴出方向が一対の前記仕切翼の短手方向での他端の間へ向けて噴出する状態で配設され、
前記長手方向断面視で、前記V字状に沿って設けられる一対の前記仕切翼の成す角度は、40°以上45°以下に設定され、
前記長手方向断面視で、一対の前記仕切翼に形成される複数の前記燃焼用空気噴出孔は、一対の前記仕切翼の前記短手方向で前記一端から前記他端へ向けて徐々に大径に形成され、
定格負荷から当該定格負荷よりも負荷が低い低負荷までにおいて空気比を1.2以上1.6以下の間で制御する空気比制御手段を備え、
一対の前記仕切翼の短手方向での一端は、凹形状の接続部位にて接続されており、当該凹形状の接続部位に角筒から成る前記燃料ガス通流配管が嵌設されている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、従来技術の如く、燃焼用空気通流空間から燃焼空間へ燃焼用空気を通流(噴出)する際に、複数の仕切翼を設ける必要がなく、一対の仕切翼さえ設ければ良いから、仕切翼の枚数を低減できる分だけ、バーナの重量を低減することができる。
更に、本発明のバーナは、例えば、油等の比較的高温の加熱が要求される液体を加熱するのに、燃焼ガスの温度を上昇させるべく、例えば、空気比が1.2〜1.6程度の低空気比で、比較的燃焼用空気量の少ない燃焼を行うものである。このような構成にあっては、燃焼空間に噴出される燃焼用空気の流速が低下し、燃焼用空気と燃料ガスとの混合が十分に行われない虞があるが、上記特徴構成によれば、一対の仕切翼に形成した複数の燃焼用空気噴出孔から燃焼空間へ向けて燃焼用空気を噴出することになるから、当該燃焼用空気噴出孔の噴孔数及び噴孔径を適切に設定することで、燃焼用空気の流速を一定以上に保つことができ、燃焼空間での燃焼用空気と燃料ガスとの混合を促進して、良好な燃焼を維持できる。
さて、これまで説明してきたように、本発明では、燃焼用空気の流量が比較的少ない状態でも、燃焼用空気の流速を一定以上に確保することで、燃焼用空気と燃料との混合を促進し、良好な燃焼を保つものである。しかしながら、一定以上の流速が保たれた燃焼用空気流が、燃料ガス噴出孔から噴出した直後の燃料ガス流に衝突すると、立ち消えが起きる虞が出てくる。
上記特徴構成によれば、長手方向断面視で、V字状に沿って設けられる一対の仕切翼の成す角度は、40°以上45°以下の比較的広い角度に設定するから、通常仕切翼の仕切面に対して直交する方向に設定される燃焼用空気噴出方向は、燃料ガス噴出孔から離れる方向へ設定されることになり、一定以上の流速の燃焼用空気流が、燃料ガス噴出孔から噴出した直後の燃料ガス噴出流に衝突することを避けることができ、立ち消えを良好に防止できる。
さらに、上記特徴構成によれば、燃焼用空気噴出孔の孔径を、一対の仕切翼の短手方向で一端から他端へ向けて徐々に大径に形成しているから、燃料ガスの流れ方向での上流側の燃料ガス流に、比較的流速の早い燃焼用空気流を衝突させることができ、上流側にて燃料ガスと燃焼用空気との混合を促進し、良好な燃焼状態を確保できる。
以上より、比較的広い出力範囲において、低空気比を維持しつつ、良好な燃焼状態を維持しながらも、比較的高温の加熱が要求される液体を加熱可能な液体加熱用の低空気比バーナを実現できる。
尚、長手方向断面視で、一対の仕切翼のV字状に沿う形状とは、一対の仕切翼がV字状になっている構成のみならず、略V字形状となっている構成を含むものであり、例えば、仕切翼の表面に凹凸が形成されているような構成も含むものである。
【0009】
液体加熱用の低空気比バーナの更なる特徴構成は、
一対の前記仕切翼に形成される複数の前記燃焼用空気噴出孔は、
一対の前記仕切翼の前記V字状に沿う形状を成す仕切面の面積に対して、前記燃焼用空気噴出孔による開口面積が占める割合である開口率が、3%以上5%未満に設定されている点にある。
【0010】
上述の如く、低空気比バーナで、燃焼用空気の流量が比較的少ない状態にあっても、良好な燃焼を維持する必要がある。
そこで、上記特徴構成によれば、一対の仕切翼のV字状を成す仕切面の面積に対して、燃焼用空気噴出孔による開口面積が占める割合である開口率が、3%以上5%未満に設定されているから、燃焼空間に噴出される燃焼用空気の流速を一定以上に維持することができ、燃焼用空気の流量が比較的少ない状態であっても、燃焼空間における燃料用空気と燃料ガスの混合を促進し、良好な燃焼状態を保つことができる。
【0015】
液体加熱用の低空気比バーナの更なる特徴構成は、
一対の前記仕切翼の前記短手方向での前記他端の夫々には、当該他端同士を繋ぐ方向に沿って延びる端部翼が連接されており、
前記端部翼には、前記燃焼用空気通流空間から前記燃焼空間へ向けて燃焼用空気を噴出する複数の補助燃焼用空気噴出孔が、前記長手方向に沿って複数設けられ、
前記端部翼に設けられる前記補助燃焼用空気噴出孔からの燃焼用空気の噴出方向は、燃料ガスの噴出方向に沿う方向に設定されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、端部翼からの燃焼用空気流により、当該燃焼用空気流による冷却効果により、一対の仕切翼の昇温を押さえることができる。
【0018】
液体加熱用の低空気比バーナの更なる特徴構成は、
液体としての油を加熱するフライヤーに適用される点にある。
【0019】
これまで説明してきた液体加熱用の低空気比バーナは、比較的高温の燃焼ガスを必要とする業務用のフライヤーに好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る低空気比バーナの斜視図
図2】実施形態に係る低空気比バーナの長手方向断面視での断面図
図3】実施形態に係る低空気比バーナの平面図
図4】実施形態に係る低空気比バーナの短手方向視での一部断面図
図5】一次改良バーナと二次改良バーナ(本発明の実施形態に係るバーナ)の出力毎の空気比を示すグラフ図
図6】一次改良バーナと二次改良バーナ(本発明の実施形態に係るバーナ)の出力毎の効率を示すグラフ図
図7】従来技術に係るバーナの長手方向断面視での断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る液体加熱用の低空気比バーナ100は、比較的広い出力範囲において、低空気比を維持しながらも、良好な燃焼状態を維持しつつ、比較的高温の加熱が要求される油等の液体を加熱可能な液体加熱用の低空気比バーナに関する。
以下、図1〜6に基づいて液体加熱用の低空気比バーナ100の実施形態を説明する。
【0022】
液体加熱用の低空気比バーナ100は、例えば、HECフライヤー等の比較的高温の加熱が要求される液体加熱装置に好適に適用可能である。
尚、以下、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに関連する構成について説明する場合があるが、これらの構成は、説明の都合上、図2にのみ記載している。
当該液体加熱用の低空気比バーナ100は、図2に示すように、その筒状筐体Kが、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに対して、底板Tに形成された開孔T2と筒状筐体Kの上方に設けられるフランジFに形成される開孔F2とにボルトBを挿通する形態で、締結固定されている。
当該低空気比バーナ100は、図1〜4に示すように、長手方向(図1〜4で矢印Xに沿う方向)に伸びると共に長手方向に沿って形成される燃焼ガス排出孔K1を有する筒状筐体Kと、筒状筐体Kの内部に配設され、長手方向に延びると共に長手方向に沿って形成される複数の燃料ガス噴出孔11を有する燃料ガス通流配管10と、筒状筐体Kの内部に配設され、長手方向に沿って延びると共に長手方向に直交する短手方向(図2で矢印β1、β2に沿う方向)での一端が接続される形状で、筒状筐体Kの内部を仕切る一対の仕切翼21a、21bとを備え、一対の仕切翼21a、21bは、長手方向に沿う長手方向断面視(図2に示す断面視)でV字状に沿う形状を有すると共に、筒状筐体Kの内部を仕切って形成された一方側空間である燃焼用空気通流空間FSから、筒状筐体Kの内部を仕切って形成された他方側空間であって燃焼ガス排出孔K1へ直通する燃焼空間CSへ向けて燃焼用空気Aを噴出する複数の燃焼用空気噴出孔28、29を有し、燃料ガス通流配管10は、燃焼空間CSにおいて、一対の仕切翼21a、21bの接続部位(連絡板23)に沿って配設されると共に、長手方向断面視で燃料ガス噴出孔11からの燃料ガス噴出方向(図1〜4で矢印Yに沿う方向)が一対の仕切翼21a、21bの短手方向での他端40a、40bの間へ向けて噴出する状態で配設されている。
尚、当該実施形態では、長手方向(図1〜4で矢印Xに沿う方向)が水平方向であり、燃料ガス噴出方向(図1〜4で矢印Yに沿う方向)が鉛直方向であるものとする。
【0023】
説明を追加すると、筒状筐体Kは、その内部の燃焼用空気通流空間FSに対し、燃焼用空気Aを通流する燃焼用空気通流配管30が連通接続されている。更に、筒状筐体Kは、当該筒状筐体Kの天板に形成される開孔K1が、HECフライヤーの燃焼室の底板Tに形成される開孔T1と重畳した状態で底板Tに対して締結固定されており、筒状筐体Kの内部の燃焼空間CSとHECフライヤーの燃焼室内部の燃焼空間CSとが連通している。
【0024】
図2に示すように、長手方向断面視において、一致の仕切翼21a、21bの短手方向での一端は、凹形状の接続部位(連絡板23)にて接続されており、当該凹形状の接続部位(連絡板23)に角筒から成る燃料ガス通流配管10が嵌設されている。
更に、長手方向断面視において、一対の仕切翼21a、21bの短手方向(図2で矢印β1、β2に沿う方向)での他端40a、40bの夫々には、当該他端40aと他端40bとを繋ぐ方向に沿って延びる端部翼22a、22bが連接されている。当該端部翼22a、22bは、長手方向において、一対の仕切翼21a,21bと同一の長さを有して設けられている。
当該端部翼22a、22bには、図1〜3に示すように、燃焼用空気通流空間FSから燃焼空間CSへ向けて燃焼用空気を噴出する複数の補助燃焼用空気噴出孔27a、27bが、長手方向に沿って複数設けられており、当該補助燃焼用空気噴出孔27a、27bからの燃焼用空気Aの噴出方向は、燃料ガス噴出孔11からの燃料ガスの噴出方向に沿う方向(図1、2、3で矢印Yに沿う方向)に設定されている。
因みに、当該実施形態にあっては、端部翼22a、22bは、筒状筐体Kの天板に当接する形態で設けられており、筒状筐体Kの天板には、補助燃焼用空気噴出孔27a、27bに対応して開孔K2a、K2bが形成されている。
【0025】
尚、当該実施形態にあっては、筒状筐体Kの長手方向の一端部に第1点火プラグP1が、他端部に炎検知プラグP2が、筒状筐体Kの内部の燃焼空間CSに位置する状態で配設されている。
【0026】
さて、当該実施形態に係る低空気比バーナ100では、比較的高温の加熱を要する油等の液体を良好に加熱するべく、制御装置Sが、定格負荷から当該定格負荷よりも負荷が低い低負荷(例えば、定格負荷の10%の負荷)までの間の負荷において、燃焼空間CSにおける空気比が1.2以上1.6以下の低空気比となるように、燃焼用空気通流配管30へ燃焼用空気Aを圧送するブロア(図示せず)の回転数を制御する。尚、当該構成にあっては、制御装置S及びブロアが空気比制御手段として機能することになる。
このように低空気比燃焼にあっては、例えば、タンブラー乾燥機に用いられるダクトバーナで実行される高空気比燃焼に比べ、燃焼用空気Aの流量が少ないため、燃焼空間CSへ流入する燃焼用空気Aの流速が低下し、燃焼用空気Aと燃料ガスとの混合が不十分となり、不安定な燃焼状態を引き起こす虞がある。
そこで、当該実施形態に係る低空気比バーナ100では、一対の仕切翼21a、21bに形成される複数の燃焼用空気噴出孔28、20に関し、一対の仕切翼21a,21bのV字状に沿う形状を成す仕切面の面積に対して、燃焼用空気噴出孔28、29の開口面積が占める割合である開口率が、3%以上5%未満の低い開口率に設定されている。
これにより、燃焼用空気通流空間FSから燃焼空間CSへ噴出される燃焼用空気Aの流速を、一定以上に保ち、燃焼空間CSでの燃料ガスとの良好な混合を実現する。
尚、一対の端部翼22a、22bの夫々の面積に対する補助燃焼用空気噴出孔27a、27bの開口面積が占める割合である開口率は、1%以上3%未満に設定されている。
【0027】
ここで、以上の如く、燃焼用空気Aの流速が比較的速くなり、当該燃焼用空気流が、燃料ガス噴出孔11からの噴出直後の燃料ガス流へ衝突する場合、火炎の立ち消えが発生する虞がある。
そこで、当該実施形態にあっては、図2に示すように、一対の仕切翼21a、21bの成す角度αを40°以上45°以下の比較的広い角度に設定している。尚、45°を超える場合には、燃焼用空気Aと燃料ガスとの混合が不十分となり、不完全燃焼を伴った赤火が発生する。
【0028】
更に、燃焼空間CSにおいては、燃料ガス噴出孔11の噴出直後の燃料ガス流に対して、燃焼用空気流が衝突することは、立ち消えの観点から好ましくないが、燃料ガスの流れ方向で、上流側において積極的に燃料ガスと燃焼用空気Aとの混合が行われることが好ましい。
そこで、当該実施形態における低空気比バーナ100にあっては、特に、図2、4に示すように、一対の仕切翼21a、21bに形成される複数の燃焼用空気噴出孔28、29は、一対の仕切翼21a、21bの短手方向で一端から他端40a、40bへ向けて(図2で矢印β1、β2の先端側へ向けて)、徐々に大径に形成されている。
当該構成により、燃料ガスの流れ方向で、上流側ほど、燃焼用空気Aの流速を速くして、燃料ガスと燃焼用空気Aとの混合を行うことができる。
以下、仕切翼21bに設けられる燃焼用空気噴出孔29を例として、具体的に説明する。
燃焼用空気噴出孔29は、図4に示すように、仕切翼21bの短手方向で一端から他端40bへ向けて(図2で矢印β2の基端から先端側へ向けて)、小径の口径を有する燃焼用空気噴出孔24bの第1燃焼用空気噴出孔群と、中径の口径を有する燃焼用空気噴出孔25bの第2燃焼用空気噴出孔群と、大径の口径を有する燃焼用空気噴出孔26bの第3燃焼用空気噴出孔群とが、記載の順に設けられている。
当該実施形態にあっては、小径の口径を有する燃焼用空気噴出孔24bの第1燃焼用空気噴出孔群と、中径の口径を有する燃焼用空気噴出孔25bの第2燃焼用空気噴出孔群と、大径の口径を有する燃焼用空気噴出孔26bの第3燃焼用空気噴出孔群との夫々は、長手方向に沿って一列に並ぶ状態で配設されている。
【0029】
尚、仕切翼21aに設けられる燃焼用空気噴出孔28については、図示は省略するが、燃焼用空気噴出孔29と同様に設けられている。
つまり、燃焼用空気噴出孔28は仕切翼21aの短手方向で一端から他端40aへ向けて(図2で矢印β1の基端から先端側へ向けて)、小径の口径を有する燃焼用空気噴出孔24aの第1燃焼用空気噴出孔群と、中径の口径を有する燃焼用空気噴出孔25aの第2燃焼用空気噴出孔群と、大径の口径を有する燃焼用空気噴出孔26aの第3燃焼用空気噴出孔群とが、記載の順に設けられている。
当該実施形態にあっては、小径の口径を有する燃焼用空気噴出孔24aの第1燃焼用空気噴出孔群と、中径の口径を有する燃焼用空気噴出孔25aの第2燃焼用空気噴出孔群と、大径の口径を有する燃焼用空気噴出孔26aの第3燃焼用空気噴出孔群との夫々は、長手方向に沿って一列に並ぶ状態で配設されている。
【0030】
因みに、燃焼量が50000kcal/hの低空気比バーナ100の寸法等を例示すると、筒状筐体Kの長手方向の長さは380mm、第1燃焼用空気噴孔群を形成する燃焼用空気噴出孔24a、24bは、39×2個で孔径が2.5mm、第2燃焼用空気噴孔群を形成する燃焼用空気噴出孔25a、25bは、39×2個で孔径が2.5mm、第3燃焼用空気噴孔群を形成する燃焼用空気噴出孔26a、26bは、39×2個で孔径が3.5mm、補助燃焼用空気噴出孔27a、27bは、24×2個で孔径が3.5mm、燃料ガス噴出孔11は、37個で孔径が1.5mmに、夫々設定することで、良好な燃焼を保つことができる。また、重量としては、3.2kgの計量のバーナを実現できる。
【0031】
〔運転結果〕
以上のような低空気比バーナ100を採用する場合の運転結果を、図5、6に基づいて説明する。
尚、当該実施形態に係る低空気比バーナ100(図5、6で二次改良バーナ)では、図5に示すように、空気比を1.6以上2.4以下の範囲で可変に制御している。
尚、当該実施形態に係る低空気比バーナ100(図5、6で二次改良バーナ)の効果を示すべく、一対の仕切翼21a、21bの成す角度を28°に設定し、且つ空気量を一定(空気比としては図5に示す値)となるように制御しているバーナ(図5、6で一次改良バーナ)を対照試験結果として示している。
図6に示す試験結果に示すように、当該実施形態に係る低空気比バーナ100の方が、対照試験のバーナに比べ、低出力側ほど高い効率を示すことができることがわかる。
【0032】
尚、上記実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の液体加熱用の低空気比バーナは、比較的広い出力範囲において、低空気比を維持しながらも、良好な燃焼状態を維持しつつ、比較的高温の加熱が要求される液体を加熱可能な液体加熱用の低空気比バーナとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 :燃料ガス通流配管
11 :燃料ガス噴出孔
20 :燃焼用空気噴出孔
21a、21b :仕切翼
22a、22b :端部翼
23 :接続部位
24a、25a、26a、28、24b、25b、26b、29:燃焼用空気噴出孔
27a、27b :補助燃焼用空気噴出孔
30 :燃焼用空気通流配管
40a、40b :他端
100 :低空気比バーナ
A :燃焼用空気
CS :燃焼空間
FS :燃焼用空気通流空間
K :筒状筐体
S :制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7