(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者に混合薬液を注入する際に用いられるミキシングデバイスであって、前記混合薬液が流出する流出口と、前記流出口に向かって連続的に狭窄している空間を有する狭窄室と、旋回流生成室とを有するミキシングデバイスと、
重力方向において前記流出口が前記旋回流生成室より下方に位置し、且つ前記旋回流生成室及び前記狭窄室の中心軸線が前記重力方向に平行となるか又は前記重力方向に傾くように、前記ミキシングデバイスが固定される固定部材と、
前記中心軸線と平行な方向に延在し、前記患者に注入される造影剤を導入する第1薬液導入管路と、
前記旋回流生成室内において前記旋回流生成室の前記中心軸線を中心とする円周の接線方向に延在し、前記造影剤の比重より小さい比重を有し且つ前記患者に注入される生理食塩水を導入して、前記旋回流生成室内に前記中心軸線まわりの前記生理食塩水の旋回流を生成する第2薬液導入管路と、を備える薬液注入システムであって、
前記狭窄室は、前記空間内に前記造影剤と前記生理食塩水とが案内されることにより、前記生理食塩水の旋回流に前記造影剤が衝突し、前記造影剤と前記生理食塩水との前記混合薬液を前記流出口から流出する薬液注入システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るミキシングデバイス1を備える薬液注入システム100の斜視図を示す。この薬液注入システム100は、患者に造影剤等の薬液を注入するための薬液注入装置200(インジェクター)と、薬液注入装置200に装着された第1シリンジ201及び第2シリンジ202と、第1シリンジ201及び第2シリンジ202に接続されたミキシングチューブ300とを備えている。また、透視撮像装置(不図示)が、薬液注入システム100のメインユニット212に接続され、薬液の注入時及び画像の撮影時には透視撮像装置と薬液注入システム100との間で各種データが送受信される。
【0016】
薬液注入装置200は、第1シリンジ201及び第2シリンジ202が装着されるヘッド210と、このヘッド210にヘッドケーブル211を介して接続されたメインユニット212とを備えている。このメインユニット212は、電源ケーブル218を介して不図示の電源に接続される。なお、
図1では、第1シリンジ201及び第2シリンジ202のいずれも、シリンジ保護ケース内に収容した状態で示されている。このシリンジ保護ケースからは、第1シリンジ201及び第2シリンジ202の先端の導管部が露出している。
【0017】
第1シリンジ201には比重の大きい薬液が充填されており、第2シリンジ202は比重の小さい薬液が充填されている。本実施例では、第1シリンジ201に造影剤が充填されており、第2シリンジ202に生理食塩水が充填されている。また、第1シリンジ201及び第2シリンジ202は、予め薬液が充填されたプレフィルドタイプであってもよいし、薬液バッグから薬液を吸引する吸引タイプであってもよい。
【0018】
造影剤の具体例としては、ヨード濃度240mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度3.3Pa・s、比重1.268〜1.296)、ヨード濃度300mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度6.1mPa・s、比重1.335〜1.371)、ヨード濃度350mg/mlの造影剤(例えば、37℃において粘度10.6mPa・s、比重1.392〜1.433)等がある。また、生理食塩水の具体例としては、生理食塩水20mL中に塩化ナトリウム180mgを含有した生理食塩水(例えば、20℃において粘度0.9595mPa・s、比重1.004〜1.006)等がある。
【0019】
ヘッド210は、床面に置かれた可動式のスタンドベース216上のスタンドポール217の上部に回動自在に保持されている。これにより、ヘッド210の先端側(第1シリンジ201及び第2シリンジ202が装着される側)を床面に向ける姿勢と、ヘッド210の後端側(第1シリンジ201及び第2シリンジ202が装着されない側)を床面に向ける姿勢とにヘッド210を回動できる。
【0020】
コンソール213は、タッチパネルを備えると共に、ケーブルを介してハンドスイッチ214に接続されている。また、コンソール213は、コントローラーとして機能し、コンソールケーブル215を介してメインユニット212に接続されていると共に、当該メインユニット212及びケーブル215,211を介してヘッド210に接続されている。そして、メインユニット212は、ヘッドケーブル211を介してヘッド210に接続されている。患者に薬液を注入する場合は、オペレータがタッチパネルを操作して、注入速度、注入量、注入時間、体重などの患者の身体的データ、及び薬液の種類のデータ等を入力する。
【0021】
また、コンソール213には、動作パターン(注入プロトコル)のデータ、及び薬液のデータ等が予め記憶されている。そして、コンソール213は、入力されたデータと予め記憶されているデータに応じて、最適な注入条件を算出する。その後、コンソール213は、算出された注入条件に基づいて、患者に注入する薬液の量及び注入プロトコルを決定する。
【0022】
コンソール213は、薬液の量及び注入プロトコルを決定すると、所定のデータ又はグラフなどをタッチパネルに表示させる。オペレータは表示されたデータ又はグラフなどを確認し、実際に注入動作をスタートさせるならばタッチパネルの決定ボタンを押す。決定ボタンが押されると、コンソール213はヘッド210に指令を出し、薬液の注入が開始される。なお、ハンドスイッチ214のボタンを押しても注入が開始され、ハンドスイッチ214のボタンを押している間だけ注入が行われる。
【0023】
図2は、薬液注入システム100の薬液注入装置200のヘッド210と、ミキシングチューブ300の斜視図を示す。ヘッド210に装着された第1シリンジ201及び第2シリンジ202は、それぞれの先端に導管部を有している。そして、この導管部には、本発明に係るミキシングデバイス1を備えるミキシングチューブ300が接続されている。また、ミキシングチューブ300は、可撓性チューブ105、不図示の分岐管及びカテーテルハブ104等を介して、カテーテル103と連通する。なお、
図2では、第1シリンジ201及び第2シリンジ202のいずれも、シリンジ保護ケース内に収容した状態で示されている。
【0024】
第1シリンジ201及び第2シリンジ202の先端の導管部は、シリンジ保護ケースか露出している。そして、第1シリンジ201の導管部は、ミキシングチューブ300の第1チューブ301に接続されている。また、第2シリンジ202の導管部は、ミキシングチューブ300の第2チューブ302に接続されている。
【0025】
また、第1シリンジ201及び第2シリンジ202には、いずれも不図示のプランジャーが取り付けられている。そして、プランジャーが取り付けられた状態で、第1シリンジ201及び第2シリンジ202がシリンジ保護ケースに固定されている。このシリンジ保護ケースは、シリンジクランパーによってヘッド210に固定されている。
【0026】
さらに、ヘッド210には、二つのシリンジプレッサー(不図示)が設けられている。このシリンジプレッサーは、第1シリンジ201及び第2シリンジ202に取り付けられたプランジャーの係止部と係合し、当該プランジャーを出し入れさせるように動作する。なお、薬液吸引時には、第1シリンジ201及び第2シリンジ202の先端の導管部に充てん用の吸引チューブを取り付け、この吸引チューブを介して薬液バッグから薬液を充填する。この際、シリンジプレッサーは、第1シリンジ201及び第2シリンジ202の軸線方向において、シリンジ先端部までプランジャーを前進させ、その後シリンジ後端部まで後退させる。
【0027】
薬液注入時には、第1シリンジ201及び第2シリンジ202の先端の導管部にミキシングチューブ300を取り付ける。そして、シリンジプレッサーは、第1シリンジ201及び第2シリンジ202の軸線方向にプランジャーを前進させる。これにより、第1シリンジ201内の造影剤、及び第2シリンジ202内の生理食塩水が押し出される。なお、二つのシリンジプレッサーは、別々に駆動することもできるし、同時に駆動することもできる。
【0028】
押し出された造影剤及び生理食塩水は、ミキシングチューブ300のミキシングデバイス1に流入し、このミキシングデバイス1内にて混合される。その後、造影剤及び生理食塩水の混合薬液は、カテーテル103を介して患者の血管内に注入される。
【0029】
なお、薬液の注入前には、エア抜きを目的としたプライミングが行われる。このプライミングにはいくつかの方法があり、ミキシングチューブ300内が生理食塩水、造影剤のいずれかの薬液で満たされる。具体的には、まず第1シリンジ201から造影剤を押し出し、ミキシングデバイス1までの第1チューブ301を造影剤で満たす。次いで、第2シリンジ202から生理食塩水を押し出して、第2チューブ302、ミキシングデバイス1、第3チューブ303、及び、第3チューブ303からカテーテル103までを生理食塩水で満たす。これによりミキシングチューブ300、及びミキシングチューブ300からカテーテル103までの薬液の回路全体が薬液で満たされ、エアが抜かれた状態となる。
【0030】
また、まず第1シリンジ201から造影剤を押し出し、次いで第2シリンジ202から生理食塩水を押し出した後に、第1シリンジ201及び第2シリンジ202から同時に薬液を押し出す方法もある。さらに、まず第2シリンジ202から生理食塩水を押し出し、次いで第1シリンジ201から造影剤を押し出して薬液の回路全体を薬液で満たす方法がある。
【0031】
これらの方法に加えて、まず第2シリンジ202から生理食塩水を押し出し、次いで第1シリンジ201から造影剤を押し出した後に、第1シリンジ201及び第2シリンジ202から同時に薬液を押し出す方法もある。その他に、初めから第1シリンジ201及び第2シリンジ202から同時に薬液を押し出して、薬液の回路全体を薬液で満たす方法もある。
【0032】
図3は、本発明に係るミキシングデバイス1を備えるミキシングチューブ300の斜視図を示す。このミキシングチューブ300は、第1シリンジ201とミキシングデバイス1を接続する第1チューブ301と、第2シリンジ202とミキシングデバイス1を接続する第2チューブ302と、可撓性チューブ105とミキシングデバイス1を接続する第3チューブ303とを備えている。そして、第1チューブ301を比重の大きな薬液が通過し、第2チューブ302を比重の小さな薬液が通過し、第3チューブ303を混合された薬液が通過する。なお、本実施例では、第1チューブ301、第2チューブ302及び第3チューブ303は可撓性のチューブである。しかし、これらのチューブを剛性のチューブとしてもよい。
【0033】
第1チューブ301は、第1シリンジ201の先端の導管部に接続される第1接続部304を有している。また、第2チューブ302は、第2シリンジ202の先端の導管部に接続される第2接続部305を有している。さらに、第3チューブ303は、可撓性チューブ105に接続される第3接続部306を有している。なお、第1接続部304、第2接続部305及び第3接続部306は、螺合接続又は接合等の方法によって接続される。
【0034】
また、第1チューブ301又は第2チューブ302には、一方弁を設けることができる。一方弁を設けることで、混合薬液等が第1シリンジ201側又は第2シリンジ202側に逆流することを防止できる。
【0035】
図4及び
図5は、本発明に係るミキシングデバイス1の斜視図を示す。
図4は、第1チューブ301、第2チューブ302及び第3チューブ303が接続されたミキシングデバイス1を示し、
図5は、これらのチューブが接続されていないミキシングデバイス1を示す。
【0036】
本実施例のミキシングデバイス1は、旋回流を生成する旋回流生成室2である第1室と、旋回流を軸方向に集中させる狭窄室3である第2室とを備えている。本実施例の旋回流生成室2は、円筒状の外形と円柱状の内部空間とを有する。また、本実施例の狭窄室3は、漏斗状の外形と、旋回流生成室2の内部空間と共軸な円錐状の内部空間とを有する。
【0037】
なお、旋回流生成室2の短手方向の断面形状は、円、楕円、その他の曲線から形成される種々の形状が考えられる。また、旋回流生成室2は、狭窄室3に近づくにつれて先が狭まる狭窄形状を有するように構成することもできる。この場合は、旋回流生成室2の内面と狭窄室3の内面とを、旋回流生成室2が有する円錐状空間の中心軸線に対して、同じ傾きで傾斜する一つの面で構成することができる。さらに、旋回流生成室2の中心軸線に対する狭窄室3の内面の傾きが、旋回流生成室2の中心軸線に対する旋回流生成室2の内面の傾きよりも大きくなるように、旋回流生成室2の狭窄形状を構成することができる。
【0038】
図5には、混合薬液の流れ方向Aが矢印で示されている。そして、旋回流生成室2の中央から流れ方向Aの上流側の位置には、第1チューブ301に接続される円筒状の第1導管部4が流れ方向Aに沿って延在するように設けられている。同じく旋回流生成室2の中央から上流側の位置には、第2チューブ302に接続される円筒状の第2導管部5も設けられている。さらに、狭窄室3の中央から流れ方向Aの下流側の位置には、第3チューブ303に接続される円筒状の第3導管部6が設けられている。
【0039】
比重の大きい薬液が流入する第1導管部4は、旋回流生成室2の第1流入口14(
図7)と連通する。そのため、第1導管部4は、流れ方向Aの上流側において、旋回流生成室2の前方の外側端面11Aの中央に設けられている。また、混合薬液が流出する第3導管部6は、この第3導管部6の中心線と第1導管部4の中心線とが一致するように、すなわち両者が共軸となるように、流出口16の端部に設けられている。
【0040】
他方、比重の小さい薬液が流入する第2導管部5は、旋回流生成室2の第2流入口15と連通する。そのため、第2導管部5は、旋回流生成室2の外部の湾曲した側面に設けられ、断面円形である旋回流生成室2の円周の接線方向に延在する。つまり、本実施例の第2導管部5は、旋回流生成室2が有する円柱状空間の中心軸線から旋回流生成室2の周縁側にずれた位置に設けられている。これにより、第2導管部5から流入した比重の小さい薬液の旋回流が生成される。
【0041】
本実施例では、第1導管部4から造影剤が流入し、第2導管部5から生理食塩水が流入する。そして、旋回流生成室2及び狭窄室3において、造影剤と生理食塩水とが混合される。その後、造影剤及び生理食塩水の混合薬液は、第3導管部6から流出する。
【0042】
なお、旋回流生成室2内において渦を発生させる限りにおいては、第2導管部5から狭窄室3までに適当な容積が形成されるような寸法であればよい。そのため、第2導管部5から狭窄室3までに十分な容積があれば、旋回流生成室2の中央付近に第2導管部5を設けても良い。ただし、この場合であっても、第2導管部5は旋回流生成室2の側面に設けられ、旋回流生成室2の円周の接線方向に延在する。
【0043】
図6及び
図7は、本発明に係るミキシングデバイス1の長手方向の断面の模式図を示す。具体的には、
図6及び
図7は、第1導管部4、旋回流生成室2、狭窄室3及び第3導管部6の中心線上に沿う縦方向の断面の模式図である。また、この中心線上の断面には表れない部分も便宜的に点線で示されている。なお、
図6は、第1チューブ301、第2チューブ302及び第3チューブ303が接続されたミキシングデバイス1を示し、
図7は、これらのチューブが接続されていないミキシングデバイス1を示す。
【0044】
旋回流生成室2は、円柱状の空間を形成する円周内面である湾曲した内面17を有する。そして、第2流入口15は、湾曲した内面17の円周の接線方向に延在する。これにより、第2流入口15から流入した薬液が旋回流を発生させる。また、狭窄室3は、旋回流生成室2と流出口16との間に設けられ、流出口16に向かって連続的に狭められている狭窄形状を有する。さらに、狭窄室3は、漏斗状の空間を形成するように流出口16に向かって傾斜した内面18を有すると共に、旋回流生成室2に連通する。これにより、発生した旋回流が、渦の中心軸方向に集中することになる。
【0045】
また、造影剤が流入する第1導管部4は、第1流入口14を介して旋回流生成室2と連通している。これにより、第1流入口を通過した比重の大きい薬液を、比重の小さい薬液の旋回流の中心軸と平行な方向で旋回流生成室2に導入することができる。つまり、比重の大きい薬液は、旋回流生成室2が有する円柱状空間の中心軸線と平行な方向に導入される。また、生理食塩水が流入する第2導管部5は、第2流入口15を介して旋回流生成室2と連通している。これにより、旋回流が旋回流生成室2において生成されるように、生理食塩水を旋回流生成室2に導入することができる。
【0046】
また、第2導管部5は、旋回流生成室2の中心軸線と交差する方向に延在している。さらに、旋回流生成室2は、図中点線で示された境界Cにおいて狭窄室3の大径側開口12に連通している。また、狭窄室3は、小径側開口13を介して流出口16に連通している。なお、本実施例では、第2導管部5が旋回流生成室2の中心軸線と直交する方向に延在しているが、第2導管部5を旋回流生成室2の中心軸線に対して傾いた方向に延在させることもできる。
【0047】
本実施例では、第1流入口14の中心線、旋回流生成室2の中心軸線、狭窄室3の中心軸線、及び流出口16の中心線が、いずれも図中の点線で示された直線B(ミキシングデバイス1の中心線)と重なる。このように各構成部分が共軸を有するように配置することにより、ミキシングデバイス1内において発生する渦の等方性を高めることができる。つまり、渦を空間内で淀みなく均一に発生させ,混合効率を向上させることができる。
【0048】
第1チューブ301は、第1導管部4の内側に形成された第1受け部21内に接合されている。また、第3チューブ303は、第3導管部6の内側に形成された第3受け部23内に接合されている。なお、第1チューブ301及び第3チューブ303は、第1受け部21及び第3受け部23に螺合接続されてもよい。
【0049】
ところで、比重の小さい薬液の流速が遅い場合、注入開始時にミキシングデバイス1内に停滞し且つ残存する比重の大きい薬液に流れが衝突することにより、旋回流の慣性力が減衰するおそれがある。そして、慣性力が減衰すると、旋回強度が不足してしまい、短時間で渦を発生させることができない。または、発生した渦を、渦の流速が十分に速くなるまで成長させるのに長時間を必要としてしまう。そのため、薬液の混合効率が低下してしまう。
【0050】
そこで、本実施例においては、図中点線で示された第2流入口15の内径を、第1流入口14の内径よりも狭くしている。つまり、比重の小さい薬液が流入する第2流入口15は、比重の大きい薬液が流入する第1流入口14よりも狭い。具体的には、第2流入口15の内径は、第1流入口14の内径の3分の2〜3分の1程度の大きさで形成されている。例えば、第1流入口14の内径が1.5mmの場合、第2流入口15の内径は1mm〜0.5mmである。
【0051】
これにより、所定の圧力で薬液を注入する場合、断面積が小さい第2流入口15から流入する比重の小さい薬液の流速は、断面積が大きい第1流入口14から流入する比重の大きい薬液の流速よりも速くなる。ただし、本発明は比重が小さい薬液の流速を比重が大きい薬液の流速よりも速くする構成に限られず、両者の流速を同じ速さとすることもできる。この場合は、例えば、第2流入口15の内径が第1流入口14の内径と同じ大きさとなる。
【0052】
なお、本実施例では、旋回流生成室2の内径及び狭窄室3の大径側開口12の内径は7.5mmであり、狭窄室3の小径側開口13及び流出口16の内径は1.5mmである。また、狭窄室3の傾斜した内面18は、狭窄室3の中心軸線に対して15°傾いている。さらに、
図7に矢印で示した旋回流生成室2の中心軸線に平行な流れ方向Aにおいて、旋回流生成室2の長さは7.5mmであり、狭窄室3の長さは11.2mmである。
【0053】
なお、これらの寸法は一例であり、本発明に係るミキシングデバイス1の寸法がこれらに限定されるものではない。例えば、狭窄室3の傾斜した内面18は、狭窄室3の内部空間が流出口16に近づくにつれて軸対称の形態で狭められるように構成されていれば良い。また、旋回流生成室2と狭窄室3との境界Cにおける角度の変化は、なだらかであることがより好ましい。これは、角度変化が大きい部分、すなわち角があると、その部分で抵抗力が発生してしまうからである。
【0054】
また、本発明に係るミキシングデバイス1の内面には、親水化処理を施すことができる。親水化処理を施すことにより、エア抜きを行う際に、ミキシングデバイス1内面に気泡が付着することを防止できる。この親水化処理の方法としては、プラズマ処理、オゾン処理、コロナ放電処理、グロー放電処理及び紫外線照射処理等がある。なお、親水化処理を施す場合は、旋回流生成室2の湾曲した内面17、旋回流生成室2の前方の内側端面11B、又は狭窄室3の傾斜した内面18の少なくとも一面に処理が施される。
【0055】
図8及び
図9は、本発明に係るミキシングデバイス1の短手方向の断面の模式図を示す。具体的には、
図8及び
図9は、第2導管部5の中心線上に沿った方向の断面の模式図、すなわち、図中点線で模式的に示した旋回流生成室2の中心軸線Dと直交する方向における断面の模式図である。また、第2導管部5の中心線上の断面には表れない部分も便宜的に点線で示されている。なお、
図8は、第2チューブ302が接続されたミキシングデバイス1を示し、
図9は、第2チューブ302が接続されていないミキシングデバイス1を示す。
【0056】
生理食塩水が流入する第2チューブ302は、第2導管部5の内側に形成された第2受け部22内に接合されている。また、第2導管部5は、旋回流生成室2の円周の接線方向に延在する。そして、第2導管部5は、旋回流生成室2の外部の湾曲した側面から連続するように設けられている。そのため、第2流入口15は、旋回流生成室2の湾曲した内面17の形状に沿って湾曲した形状で開口している。なお、第2チューブ302は、第2受け部22に螺合接続されてもよい。
【0057】
図10及び
図11を参照して、本発明に係るミキシングデバイス1内に発生する旋回流を利用した混合を説明する。なお、以下本明細書では、ミキシングデバイス1内に発生する旋回流による混合の工程をスパイラルフローという。
図10及び
図11では、比重が大きい薬液である造影剤の流れが実線の矢印で示されており、比重が小さい薬液である生理食塩水の流れが点線の矢印で示されている。
図11の点線の円Dは、旋回流生成室2の中心軸線の位置を模式的に示す。
【0058】
第1シリンジ201から第1チューブ301を介して流入する造影剤は、内径が小さい第1流入口14から旋回流生成室2に流入すると、矢印Eで示すジェット流となる。そして、ジェット流の運動量は、矢印Fで示すように旋回流生成室2の外周方向に拡散される。すなわち、造影剤の流れは、旋回流生成室2の外周方向に拡散される流れとなる。
【0059】
一方、第2シリンジ202から第2チューブ302を介して流入する生理食塩水は、第2流入口15から旋回流生成室2の湾曲した内面17に案内され、矢印Gで示すように湾曲した内面17に沿って旋回する旋回流となる。そして、生理食塩水の旋回流は、狭窄室3に導かれて旋回流の中心軸方向に集中する(軸中心化)。このような渦はランキン渦として知られ、旋回流のもつ慣性力を渦の回転軸の近傍に集中させることができる。
【0060】
図12は、
図10のA−A’断面における渦の旋回速度プロフィールを概略的に示す。縦軸は旋回流の流速を表し、横軸との交差点での値は0である。つまり、縦軸方向に原点から離れるにつれて、旋回流の流速が速くなることを表している。横軸はミキシングデバイス1の中心線からの距離を表し、縦軸との交差点はミキシングデバイス1の中心線上となる。つまり、横軸方向に原点から離れるにつれて、ミキシングデバイス1の中心線から遠くなることを表している。
【0061】
図13は、
図10のB−B’断面における渦の旋回速度プロフィールを概略的に示す。
図12と同様に、縦軸は旋回流の流速を表し、横軸はミキシングデバイス1の中心線からの距離を表している。
【0062】
図12と
図13を比較すると明らかなように、狭窄室3の旋回流の流速のピークは、旋回流生成室2の旋回流の流速のピークよりも、ミキシングデバイス1の中心線に近い位置となっている。これは、旋回流の流れが、渦の中心軸方向、すなわちミキシングデバイス1の中心線の方向に集中するためである。つまり、ミキシングデバイス1の流出口16に近づくにつれて、旋回流の流速が最大となる位置は、ミキシングデバイス1の中心線により接近することになる。
【0063】
図10で示すように、旋回流生成室2において、造影剤のジェット流は生理食塩水の旋回流に衝突する。そして、旋回流は、ジェット流を周囲から巻き込むように、旋回運動を形成しはじめる。その後、狭窄室3に向かうにつれて、旋回流の旋回強度のピークは、旋回流生成室2の外周側からミキシングデバイス1の中心軸に近接するように遷移する。そして、このように旋回強度がフォーカスされた旋回流の渦中心に、ジェット流が誘導され巻き込まれる。
【0064】
これにより、高粘度流体である造影剤に強い回転力が加わるため、遠心力が発生する。その結果、造影剤が、旋回流生成室2の外周方向へ飛散する。この流れ構造は、注入過程で連続的に構成され、結果としてミキシングデバイス1内の流れ場全体を乱流化させる。その後、造影剤と生理食塩水の混合薬液の流れは、狭窄室3で整流化される。そして、整流化された混合薬液は、流出口16から第3チューブ303へと流出する。
【0065】
つまり、造影剤と生理食塩水との混合薬液が、流出口16に向かって連続的に狭窄している狭窄室3内に案内されることにより、ベクトルの異なる二つの流体が積極的に衝突する。これにより、造影剤を渦の中心に巻き込み、旋回流生成室2の外周方向へ連続的に飛散させることができる。その結果、流れ場全体が乱流化され、造影剤と生理食塩水が効率的に混合されるのである。
【0066】
このように、生理食塩水の旋回流の回転軸と平行な方向に造影剤のジェット流を導入することにより、旋回流とジェット流は積極的に衝突する。これにより、比重が大きく高粘度の流体である造影剤を乱流化させ、ミキシングデバイス1内の三次元方向で効率的に混合させることができる。その結果、二次元的混合と比較して、混合効率が著しく向上する。なお、以下本明細書では、このような立体的な混合を三次元混合という。
【0067】
また、少量の造影剤と生理食塩水であっても、数十ミリ秒で渦を発生させることができる。そのため、本発明のミキシングデバイス1を用いたスパイラルフローによれば、僅かな時間で造影剤と生理食塩水を混合させることが可能となると共に、少量の造影剤と生理食塩水を確実に混合させることができる。その結果、画像のむらの発生を防止できるという効果を奏する。
【0068】
さらに、本発明のミキシングデバイス1によれば、造影剤と生理食塩水の合計流量が0.6〜10mL/secという広範な条件において、T字状の継手よりも高い混合効率を発揮できる。また、造影剤の流量が生理食塩水の流量よりも多い条件、例えば造影剤の流量が生理食塩水の4倍である場合、又は注入時間が短い条件、例えば注入時間が5秒である場合でも、高い混合効率を発揮できる。
【0069】
実際に、本発明に係るミキシングデバイス1を用いて造影剤と生理食塩水が混合する様子を撮影した画像が、
図14の連続画像である。また、T字状の継手を用いて造影剤と生理食塩水が混合する様子を撮影した画像が、
図15の連続画像である。なお、画像の右肩に示された数値は経過時間を示し、単位は秒である。
【0070】
図14及び
図15の連続画像は、レーザー誘起蛍光法(LIF)を用いて撮影した。具体的には、まず、造影剤に蛍光色素(ローダミンB)を混合する。そして、Nd:YLFレーザー(波長532nm)により蛍光発色させ、造影剤と生理食塩水とを1:1の割合で注入した。なお、流量は3ml/secである。
【0071】
混合の様子は、高速度カメラを用いて毎秒500フレームで撮影し、撮影された画像をモノクロ画像に変換している。よって、
図14及び15の白く見える部分が造影剤の流れであり、黒く見える部分が生理食塩水の流れである。このように、蛍光色素をトラッキングすることにより、混合の度合いを可視化することができる。
【0072】
図14から明らかなように、本発明に係るミキシングデバイス1を用いたスパイラルフローの場合は、三次元混合によって、数十ミリ秒で造影剤と生理食塩水がほぼ完全に混合される。そのため、流出口16から流れ出る混合薬液は二層に分離しておらず、白く濁って写っている。一方、
図15のT字状の継手を用いた二次元的混合の場合は、生理食塩水がT字状の継手の下流で乖離し二層に分離している。そのため、混合が造影剤と生理食塩水の接触面に限定されている。その結果、流出口から流れ出る薬液も白と黒に明確に分かれており、混合が十分に行われていない。
【0073】
続いて
図16を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。なお、上記実施例と同一の構成要素には、同じ参照番号を用い説明は省略する。
【0074】
図7の実施例においては、旋回流生成室2の湾曲した内面17と第1流入口14側の内側端面11Bとが角部30を構成している。そして、このような角部には気泡が付着しやすい。また、角部での角度変化が大きい場合は、抵抗も大きくなる。そこで、
図16の第1実施形態においては、旋回流生成室2の湾曲した内面17と、第1流入口14側の内側端面11Bとの間にテーパ部31が形成されている。これにより、旋回流生成室2の内面に気泡が付着しにくくなると共に、抵抗を小さくすることができる。
【0075】
図17を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。なお、上記実施例と同一の構成要素には、同じ参照番号を用い説明は省略する。
【0076】
図7の実施例においては、旋回流生成室2と狭窄室3の境界Cに角部32が存在する。そこで、第2実施形態においては、狭窄室3の内面が流線形状を構成し、旋回流生成室2と狭窄室3の境界部分になだらかな曲面33が設けられている。さらに、旋回流生成室2の湾曲した内面17と、第1流入口14側の内側端面11Bとの間の境界に湾曲部34が形成されている。これにより、気泡が付着しにくくなると共に、抵抗が小さくなる。
図17の第2実施形態では、ミキシングデバイス1の外部における旋回流生成室2と狭窄室3の境界もなだらかな曲面で形成されている。しかし、旋回流生成室2と狭窄室3の外部の境界は、上記実施例と同様に角部で構成してもよい。
【0077】
図18を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。なお、上記実施例と同一の構成要素には、同じ参照番号を用い説明は省略する。
【0078】
図7の実施例においては、狭窄室3が漏斗状の外形を有しており、旋回流生成室2が円筒状の外形を有している。しかし、このように外形が異なる場合、ミキシングデバイス1を金型で製造する際に、複雑な形状の金型を用意する必要があり製造コストが高くなる。また、母材を削ってミキシングデバイス1を製造する場合は、母材の削り量が多くなり製造時間が長くなる。
【0079】
そこで、
図18の第3実施形態においては、旋回流生成室2の外部の湾曲した側面を狭窄室3と第3導管部6まで延在させている。すなわち、旋回流生成室2、狭窄室3及び第3導管部6が共通の湾曲した側面35を有しており、旋回流生成室2、狭窄室3及び第3導管部6が円筒状の外形を構成している。これにより、金型で製造する場合は、金型の形状を簡素化することができる。また、母材を削って製造する場合は、削り量を少なくすることができる。
【0080】
なお、本発明に係るミキシングチューブ300には、第1チューブ301、第2チューブ302、第3チューブ303又はミキシングデバイス1の内部の気泡を検出する空気検出器として、光センサー、超音波センサー、静電容量センサー等が設けられてもよい。例えば、ミキシングデバイス1の外部に空気検出器を配置する場合は、ミキシングデバイス1の外面に、空気検出器を取り付けるための取り付け部を形成することができる。
【0081】
図19を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。なお、上記実施例と同一の構成要素には、同じ参照番号を用い説明は省略する。
【0082】
図7の実施例においては、旋回流生成室2、狭窄室3、第1導管部4、第2導管部5及び第3導管部6が同一の部材により一体で構成されている。しかし、旋回流生成室2及び狭窄室3と比較して狭い内径を有する第1流入口14、第2流入口15及び流出口16は、旋回流生成室2及び狭窄室3よりも高い強度が要求される。そこで、
図19の第4実施形態においては、第1流入口14を有する第1導管部4、第2流入口15を有する第2導管部5、及び流出口16を有する第3導管部6を、旋回流生成室2及び狭窄室3とは別の部材36,37,38で構成している。
【0083】
すなわち、第1導管部4を別の部材36で構成し、第2導管部5を別の部材37で構成し、第3導管部6を別の部材38で構成している。これにより、第1導管部4、第2導管部5及び第3導管部6を、旋回流生成室2及び狭窄室3よりも高い強度の材料で形成することができる。なお、第1導管部4、第2導管部5及び第3導管部6と、旋回流生成室2及び狭窄室3とは、接合又は螺合接続等の方法で接続することができる。
【0084】
本発明の第5実施形態に係るミキシングデバイス1は、流出口16が第1流入口14より下方に位置するように、ミキシングデバイス1を縦方向に立てて配置、又は斜めに傾けて配置される。なお、このように配置すると、第1流入口14、旋回流生成室2及び狭窄室3の中心軸線は、重力方向に平行となる、又は重力方向に傾くことになる。換言すると、第1流入口14、旋回流生成室2及び狭窄室3の中心軸線が、床面に対して直交する状態、又は傾いた状態となる。すなわち、混合薬液の流れ方向A(
図7)が、重力方向に向くように配向される。
【0085】
このように、ミキシングデバイス1における混合薬液の流れ方向Aを重力方向に向けることにより、ミキシングデバイス1内の混合薬液の系の軸対称性が増す。そのため、混合する薬液の比重の影響が大きい場合であっても、効果的な薬液の混合が達成される。すなわち、混合する薬液の比重差が大きい場合、又は混合する薬液の慣性力が小さい(旋回速度が低い)ために相対的に比重の影響が強くなる場合であっても、効果的な薬液の混合が達成される。
【0086】
このようにミキシングデバイス1を配置する構成としては、ミキシングデバイス1を重力方向と平行に、薬液注入装置200へ固定する構成が考えられる。また、薬液注入装置200と患者との間に中継台を配置すると共に、ミキシングデバイス1を重力方向と平行に中継台上で固定する構成が考えられる。さらに、第1チューブ301及び第2チューブ302を床面に向かって折れ曲がる形状の剛性のチューブとし、ミキシングデバイス1を重力方向と平行に保持する構成が考えられる。これらの他、ミキシングチューブ300が薬液注入装置200から床面に向かって垂れ下がるように、第1チューブ301及び第2チューブ302を十分に長くし、ミキシングデバイス1を重力方向と平行に保持する構成も考えられる。
【0087】
なお、本発明の範囲内において、ミキシングデバイス1には種々の変形を加えることができる。例えば、流出する混合薬液に対する抵抗を小さくするために、流出口16の内径を第1流入口14よりも大きくすることもできる。さらに、十分な容積を確保するために、旋回流生成室2の中心軸線に沿った方向における旋回流生成室2の長さを、狭窄室3の長さよりも長くすることができる。
【0088】
また、上記実施例では、造影剤と生理食塩水の二種類の薬液を混合させる場合について説明した。しかし、二種類の液の一方を造影剤と生理食塩水の混合薬液とし、他方を生理食塩水としても良い。この場合、第1シリンジ201には、造影剤に代えて予め混合された造影剤と生理食塩水の混合薬液が充填される。そして、第2シリンジ202には、生理食塩水が充填される。なお、この混合薬液の比重及び粘度は、生理食塩水よりも大きい。
【0089】
上述の実施例及び各実施形態によって本発明を説明したが、本発明は上述の実施例及び各実施形態の構成に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された発明の範囲内における、本発明の構成要素の変形、及び本発明の構成要素と均等な構成も、本発明に含まれる。また、上述の実施例及び各実施形態は、本発明の内容を実質的に変更しない範囲で、適宜組み合わせることができる。