特許第6873028号(P6873028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873028
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両誘導システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0968 20060101AFI20210510BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20210510BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20210510BHJP
   B60W 40/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G08G1/0968 A
   G05D1/02 Z
   G08G1/09 F
   B60W40/00
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-239608(P2017-239608)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-106116(P2019-106116A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健治郎
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 出
【審査官】 武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−154660(JP,A)
【文献】 特開2008−140375(JP,A)
【文献】 特開平06−340336(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/0968
B60W 40/00
G05D 1/02
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂を積載した運搬車両を誘導する車両誘導システムであって、
前記土砂の撒出作業を行う建設機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、
少なくとも前記建設機械の位置情報、前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記運搬車両における前記土砂の排出の目標位置を算出し、前記運搬車両における前記目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報を前記運搬車両に対し送信する通信部と、
前記運搬車両に設けられ、前記目標位置の情報に基づき前記運搬車両の運転者に対し少なくとも前記運搬車両と前記目標位置までの距離及び前記目標位置までの目標進入軌道を示して前記運搬車両の誘導を行う誘導部と、
を備えた車両誘導システム。
【請求項2】
前記建設機械の向き情報を取得する方向情報取得部を備え、
前記算出部は、前記建設機械の位置情報、前記建設機械の向き情報、前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記目標位置を算出する、
請求項1に記載の車両誘導システム。
【請求項3】
前記算出部は、前記建設機械の位置情報、前記建設機械の向き情報、前記建設機械の撒出経路及び前記運搬車両の前記土砂の積載量に基づいて前記目標位置を算出する、
請求項2に記載の車両誘導システム。
【請求項4】
前記誘導部は、前記運搬車両の特定の箇所が前記目標位置に位置するように前記運搬車両を誘導する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両誘導システム。
【請求項5】
前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両による実際の前記土砂の排出位置を送信する通信部と、
前記通信部による前記土砂の排出位置の情報に基づいて、前記建設機械の撒出経路を再設定する撒出経路設定部と、
を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両誘導システム。
【請求項6】
前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両が前記土砂の排出を完了した後に前記建設機械の撒出作業の領域を退出したことを知らせる退出信号を送信する通信部を備える、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両誘導システム。
【請求項7】
土砂を積載した運搬車両を誘導する車両誘導システムであって、
少なくとも前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記運搬車両における前記土砂の排出の目標位置を算出し、前記運搬車両における前記目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報を前記運搬車両に対し送信する通信部と、
前記運搬車両に設けられ、前記目標位置の情報に基づき前記運搬車両の運転者に対し少なくとも前記運搬車両と前記目標位置までの距離及び前記目標位置までの目標進入軌道を示して前記運搬車両の誘導を行い、または、前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報に基づいて前記運搬車両を前記目標進入軌道に沿って前記目標位置まで自動走行させて前記運搬車両の誘導を行う誘導部と、
を備えた車両誘導システム。
【請求項8】
前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両が前記土砂の排出を完了した後に土砂の撒出作業の領域を退出したことを知らせる退出信号を送信する通信部を備え、
前記退出信号を受信した無人走行可能な建設機械が前記土砂の撒出を行い、または、前記退出信号を受信した施工管理システムが前記土砂についての荷下ろしの進捗を管理する、
請求項7に記載の車両誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場などで車両の誘導を行う車両誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を誘導する装置として、例えば、特許第4369419号公報に記載されるように、土砂を積んだ無人車両を誘導する誘導走行制御装置であって、予め設定された走行経路に沿って無人車両を誘導走行させ、目標排出地点で無人車両に積んだ土砂を排出させるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4369419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工事現場において、無人車両を自動運転させることは、走行経路の設定、車速制御に加えて、障害物回避などが必要であり、高度な自動運転制御を実行する必要がある。また、工事によっては、無人車両を複数または多数台数必要となり、工事コストが高くなってしまう。このため、有人の手動運転による車両によって土砂を工事現場へ運び込むことが考えられる。この場合、工事現場において土砂の排出地点に車両を効率良く誘導するのは容易ではない。例えば、工事現場に誘導員を配置し、誘導員により車両を誘導させることが考えらえるが、車両の土砂の積載量など車両により排土される状態が車両によって必ずしも同じでなく、それらの車両の排土状態に応じて誘導員が適切に車両誘導することは容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、車両の誘導が適切に行える車両誘導システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る車両誘導システムは、土砂を積載した運搬車両を誘導する車両誘導システムであって、前記土砂の撒出作業を行う建設機械の位置情報を取得する位置情報取得部と、少なくとも前記建設機械の位置情報、前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記運搬車両における前記土砂の排出の目標位置を算出し、前記運搬車両における前記目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報を前記運搬車両に対し送信する通信部と、前記運搬車両に設けられ、前記目標位置の情報に基づき前記運搬車両の運転者に対し少なくとも前記運搬車両と前記目標位置までの距離及び前記目標位置までの目標進入軌道を示して前記運搬車両の誘導を行う誘導部とを備えて構成されている。この車両誘導システムによれば、土砂を積載した運搬車両を誘導するにあたり、建設機械の位置情報、運搬車両の土砂の積載量及び運搬車両に積載される土砂の種類に基づいて運搬車両の排出の目標位置を算出し、運搬車両の運転者に対し運搬車両と目標位置までの距離及び運搬車両における目標進入軌道を示して運搬車両の誘導が行われる。このため、建設機械の近くの位置に土砂を排出できると共に、土砂の積載量及び土砂の種類に対応して土砂を排出でき、土砂の排出の偏りを抑制することができる。このため、従って、建設機械の撒出作業が施工計画に応じて効率良く行える。
【0007】
また、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記建設機械の向き情報を取得する方向情報取得部を備え、前記算出部は、前記建設機械の位置情報、前記建設機械の向き情報、前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記目標位置を算出してもよい。この場合、土砂を積載した運搬車両を誘導するにあたり、建設機械の向きを加味して運搬車両の排出の目標位置が算出される。このため、建設機械の作業部の方向に目標位置を設定することができる。このため、建設機械の撒出作業が効率良く行える。
【0008】
また、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記算出部は、前記建設機械の位置情報、前記建設機械の向き情報、前記建設機械の撒出経路及び前記運搬車両の前記土砂の積載量に基づいて前記目標位置を算出してもよい。この場合、土砂を積載した運搬車両を誘導するにあたり、建設機械の撒出作業における経路を加味して運搬車両の排出の目標位置が算出される。このため、建設機械の撒出経路に沿って土砂を排出させることができる。従って、撒出作業において建設機械の無駄な動きを抑制することでき、撒出作業を効率良く行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記誘導部は、前記運搬車両の特定の箇所が前記目標位置に位置するように前記運搬車両を誘導してもよい。この場合、運搬車両が土砂を排出する位置となる特定の箇所を目標位置へ誘導できるため、土砂の排出を正確に行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両による実際の前記土砂の排出位置を送信する通信部と、前記通信部による前記土砂の排出位置の情報に基づいて、前記建設機械の撒出経路を再設定する撒出経路設定部とを更に備えていてもよい。この場合、運搬車両による実際の土砂の排出位置の情報に基づいて建設機械の撒出経路が再設定される。このため、土砂の排出位置が目標位置とずれを生じた場合であっても、適切な撒出作業を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両が前記土砂の排出を完了した後に前記建設機械の撒出作業の領域を退出したことを知らせる退出信号を送信する通信部を備えていてもよい。この場合、建設機械が退出信号を受信することにより、運搬車両が土砂を排出して撒出領域から退出したことを認識できる。従って、建設機械による撒出作業が円滑に行える。
【0012】
本発明に係る車両誘導システムは、土砂を積載した運搬車両を誘導する車両誘導システムであって、少なくとも前記運搬車両の前記土砂の積載量及び前記運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて前記運搬車両における前記土砂の排出の目標位置を算出し、前記運搬車両における前記目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部と、前記算出部により算出された前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報を前記運搬車両に対し送信する通信部と、前記運搬車両に設けられ、前記目標位置の情報に基づき前記運搬車両の運転者に対し少なくとも前記運搬車両と前記目標位置までの距離及び前記目標位置までの目標進入軌道を示して前記運搬車両の誘導を行い、または、前記目標位置の情報及び前記目標進入軌道の情報に基づいて前記運搬車両を前記目標進入軌道に沿って前記目標位置まで自動走行させて前記運搬車両の誘導を行う誘導部とを備えて構成されている。この車両誘導システムによれば、土砂を積載した運搬車両を誘導するにあたり、運搬車両の土砂の積載量及び運搬車両に積載される前記土砂の種類に基づいて運搬車両の排出の目標位置を算出し、運搬車両の運転者に対し運搬車両と目標位置までの距離及び運搬車両における目標進入軌道を示して運搬車両の誘導が行われ、または、目標位置までの距離及び運搬車両における目標進入軌道に応じて運搬車両を自動走行させて運搬車両の誘導が行われる。このため、土砂の種類に応じた位置に土砂を排出できると共に、土砂の排出の偏りを抑制することができる。このため、従って、建設機械の撒出作業が施工計画に応じ効率良く行える。
【0013】
また、本発明に係る車両誘導システムにおいて、前記運搬車両に設けられ、前記運搬車両が前記土砂の排出を完了した後に前記建設機械の撒出作業の領域を退出したことを知らせる退出信号を送信する通信部を備え、前記退出信号を受信した無人走行可能な建設機械が前記土砂の撒出を行い、または、前記退出信号を受信した施工管理システムが前記土砂についての荷下ろしの進捗を管理してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の誘導が適切に行える車両誘導システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両誘導システムにおける車両誘導の説明図である。
図2図2は、図1の車両誘導システムの電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1の車両誘導システムにおける誘導部の表示画面の説明図である。
図4図4は、図1の車両誘導システムにおける誘導部の表示画面の説明図である。
図5図5は、図1の車両誘導システムの建設機械における制御処理を示すフローチャートである。
図6図6は、図1の車両誘導システムの運搬車両における制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る車両誘導システム1における車両誘導の説明図であり、図2は、本発明の実施形態に係る車両誘導システム1の電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る車両誘導システム1は、工事現場において、土砂を積載した運搬車両20を誘導する車両誘導システムである。工事現場では、撒出領域30内に土砂排出の目標位置Pが設定され、運搬車両20が目標位置Pへ誘導される。そして、運搬車両20から排出された土砂は、建設機械10により撒き出される。このとき、運搬車両20が適切な位置に土砂を荷下ろしして排出することにより、建設機械10による撒出作業が効率良く行えることとなる。
【0019】
運搬車両20は、土砂を運搬可能な車両であり、例えばダンプトラックが用いられる。この運搬車両20は、有人車両であって、運転者の手動運転により走行する。運搬車両20は、例えば、土砂を積載するための荷台を備えており、荷台を傾斜させて積載している土砂を排出可能となっている。建設機械10は、運搬車両20が排出した土砂を均して撒き出し可能な建機であり、例えばブルドーザが用いられる。この建設機械10は、例えば、有人走行する建機が用いられ、作業員の手動運転により操作される。また、建設機械10として、無人走行し自動運転されるブルドーザを用いることもできる。この場合、運搬車両20の土砂の排出位置に応じて撒出経路の修正、及び、排出位置の受信後に撒出作業を開始することなどを自動制御により実行できるものを用いればよい。また、建設機械として、土砂の撒出作業が行えるものであれば、ホイールローダなどのブルドーザ以外の建機を用いてもよい。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る車両誘導システム1は、建設機械10と運搬車両20により構成される。建設機械10は、位置検出部11、制御部12及び通信部13を備えている。位置検出部11は、建設機械10の位置を検出する機器であり、例えばGPS(GlobalPositioning System)受信機が用いられる。また、好ましくは、リアルタイムキネマティックス方式のGPS測位システムが用いられる。この場合、数cmの精度で測位が可能となり、正確な位置検出が可能となる。位置検出部11は、例えば、建設機械10の位置をX及びYの座標値で位置情報を出力する。位置検出部11は、制御部12に接続されており、建設機械10の位置情報を制御部12に入力する。
【0021】
制御部12は、運搬車両20の誘導に必要なデータの取得及び記録、運搬車両20における土砂排出の目標位置の算出、運搬車両20における目標位置までの目標進入軌道の算出、建設機械10の撒出経路設定に必要なデータの取得及び記録、建設機械10における撒出経路の設定、並びに、通信制御などを行う機器である。また、制御部12は、運搬車両20の実際の土砂の排出位置の情報に基づいて、建設機械10の撒出経路を再設定する撒出経路設定部としても機能する機器である。制御部12は、作業領域記録部121、位置情報取得部122、方向情報取得部123、目標位置算出部124、記録部125及び通信制御部126を備えている。なお、建設機械10として、有人走行し手動運転する建機を用いる場合には、制御部12において、建設機械10の撒出経路設定に必要なデータの取得及び記録、及び、建設機械10における撒出経路の設定の機能を備えないものを用いてもよい。
【0022】
作業領域記録部121は、工事現場において、建設機械10が撒出作業を行うべき撒出領域30を設定し記録する。撒出領域30は、例えば広大な現場領域の一部であって、運搬車両20の土砂運搬ごとに設定される領域である。位置情報取得部122は、建設機械10の位置情報を取得し記録する。例えば、位置検出部11により検出された位置情報が建設機械10の位置情報として位置情報取得部122に記録される。方向情報取得部123は、建設機械10の向き情報を取得し記録する。向き情報は、建設機械10が向いている向きの情報であり、建設機械10がブルドーザの場合、ブレードの向いている向きが建設機械10の向き情報となる。つまり、向き情報は、建設機械10の作業部の向きの情報である。建設機械10の向きの情報は、建設機械10の移動による位置の変化に基づいて推定してもよいし、建設機械10から出力される情報により取得されてもよい。
【0023】
目標位置算出部124は、運搬車両20の土砂排出の目標位置を算出し、運搬車両20における目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部として機能する。目標位置の算出は、運搬車両20が複数ある場合には、それぞれの運搬車両20に対して行われる。目標位置は、運搬車両20の土砂の荷下ろしの目標位置であり、土砂の撒出作業を効率良く行う上で土砂の排出位置は重要である。
【0024】
目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路、運搬車両20の土砂の積載量、運搬車両20に積載される土砂の種類、運搬車両20の荷下ろし角度、建設機械10の撒出能力及び土砂の撒出状況の一部又は全部に基づいて行われる。
【0025】
例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、運搬車両20の土砂の積載量及び運搬車両20に積載される土砂の種類に基づいて行われる。具体的には、建設機械10の近くに地点、すなわち、建設機械10から所定距離以内の範囲に目標位置が設定される。この場合、建設機械10の近くの目標位置を設定することにより、建設機械10の近くの位置に土砂を排出することができ、撒出作業を効率良く行うことができる。また、運搬車両20の土砂の積載量が多いほど、土砂が排出される範囲が大きくなるため、土砂の排出範囲を考慮して、目標位置が設定される。この場合、運搬車両20の土砂の積載量に基づいて目標位置を算出することにより、撒出領域30において土砂の排出の偏りを抑制することができる。このため、撒出作業の効率低下を抑制することができる。また、運搬車両20に積載される土砂の種類に応じて目標位置が設定される。土砂の種類に応じて撒き出される領域が異なる場合があり、土砂の種類に応じて目標位置を設定することにより、施工計画に応じた適切な土砂の撒出が可能となる。例えば、フィルダムの堤体の施工において、撒き出される土砂として、コア材、フィルタ材、ロック材の種類がある。これらの土砂は、堤体を施工する上で設置される領域が決まっている。このため、土砂の種類に応じて土砂排出の目標位置を設定することにより、施工計画に応じた適切な土砂の撒出が可能となるのである。
【0026】
また、目標位置の算出は、例えば、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報及び運搬車両20の土砂の積載量に基づいて行ってもよい。この場合、目標位置の算出において建設機械10の向き情報を加味することにより、建設機械10のブレードなどの作業部の方向に目標位置を設定することができる。このため、建設機械10の向きを変えずに撒出作業を取り掛かれるようにすることができ、撒出作業が効率良く行える。
【0027】
また、目標位置の算出は、例えば、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路及び運搬車両20の土砂の積載量に基づいて行ってもよい。この場合、目標位置の算出において建設機械10の撒出経路を加味することにより、建設機械10の撒出経路に沿って土砂を排出させることができる。このため、建設機械10が撒出経路に沿って撒出作業を進めることができ、建設機械10の無駄な動きを抑制することできる。従って、撒出作業が効率良く行うことができる。
【0028】
また、目標位置の算出は、例えば、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路、運搬車両20の土砂の積載量及び土砂の種類のほか、運搬車両20の荷下ろし角度、建設機械10の撒出能力、土砂の撒出状況のうちその一部又は全部を加味して行ってもよい。目標位置の算出において運搬車両20の荷下ろし角度、すなわち荷下ろし時の荷台の角度を加味することにより、土砂の排出位置を正確に算出することができ、適切な目標位置を算出することができる。また、目標位置の算出において建設機械10の撒出能力を加味することにより、撒出領域30において土砂を適切に排出させることができる。このため、撒出作業が効率良く行える。さらに、目標位置の算出において土砂の撒出状況を加味することにより、撒出を行っていない領域に対し確実に撒出作業を行えるため、撒出作業が的確に行える。
【0029】
目標進入軌道は、運搬車両20が目標位置まで移動するときに走行すべき目標となる経路である。目標進入軌道の算出は、運搬車両20が所望の方位から進入し目標位置に到達するように行われる。例えば、建設機械10の土砂の撒出経路に基づいて運搬車両20の進入方位を決定し、その進入方位に応じて目標進入軌道が算出される。このように目標進入軌道を算出することにより、運搬車両20が目標位置で荷下ろししたときの土砂の山の形状を建設機械10が撒き出しやすい形状とすることができ、円滑な土砂の撒出が可能となる。なお、運搬車両20における目標位置までの目標進入軌道を算出する算出部は、目標位置算出部124と別の算出部として構成してもよい。
【0030】
記録部125は、運搬車両20の誘導に必要なデータの記録、運搬車両20における土砂排出の目標位置の記録、目標進入軌道の記録、建設機械10の撒出経路設定に必要なデータの記録、建設機械10の撒出経路の記録など行うデータベースである。この記録部125には、撒出領域30を記録してもよく、その場合には作業領域記録部121の設置を省略してもよい。
【0031】
通信制御部126は、通信部13による通信の制御を実行する。例えば、通信制御部126は、建設機械10の位置情報の送信、運搬車両20の土砂排出の目標位置情報の送信、目標進入軌道情報の送信、運搬車両20の実際の土砂の排出位置の受信などの通信制御を行う。通信部13は、運搬車両20との無線通信を行うための通信機器である。
【0032】
図2において、運搬車両20は、位置検出部21、制御部22、誘導部23及び通信部24を備えている。位置検出部21は、運搬車両20の位置を検出する機器であり、例えばGPS(GlobalPositioning System)受信機が用いられる。また、好ましくは、リアルタイムキネマティックス方式のGPS測位システムが用いられる。この場合、数cmの精度で測位が可能となり、正確な位置検出が可能となる。位置検出部21は、例えば、運搬車両20の位置をX及びYの座標値で位置情報を出力する。位置検出部21は、制御部22に接続されており、運搬車両20の位置情報を制御部22に入力する。
【0033】
制御部22は、運搬車両20の位置情報及び向き情報の記録、運搬車両20の誘導制御、通信制御などを行う機器である。制御部22は、位置情報取得部221、誘導制御部222、通信制御部223及び方向情報取得部224を備えている。
【0034】
位置情報取得部221は、運搬車両20の位置情報を取得し記録する。例えば、位置検出部21により検出された位置情報が運搬車両20の位置情報として位置情報取得部221に記録される。方向情報取得部224は、運搬車両20の向き情報を取得し記録する。向き情報は、運搬車両20が向いている向きの情報であり、運搬車両20がダンプトラックの場合、車体や荷台の向きが運搬車両20の向き情報となる。つまり、運搬車両20の荷台の位置情報は、位置情報取得部221で取得される位置情報と方向情報取得部224で取得される向き情報により計算される。運搬車両20の向きの情報は、運搬車両20の移動による位置の変化に基づいて推定してもよいし、運搬車両20から出力される情報により取得されてもよい。
【0035】
誘導制御部222は、運搬車両20の誘導制御を行う。すなわち、誘導制御部222は、誘導部23に対し制御信号を出力し、誘導部23の作動を制御する。誘導部23は、目標位置Pの情報に基づいて、運搬車両20の運転者に対し少なくとも運搬車両20から目標位置Pまでの距離及び目標進入軌道を示して運搬車両20の誘導を行う。例えば、誘導部23としては、運搬車両20及び目標位置Pを表示する表示機器又はモニタが用いられる。この場合、視覚を通じて、運転者に目標位置Pを認識させ、目標位置Pと運搬車両20との距離又は目標位置Pと運搬車両20との相対位置及び目標位置Pの方向を認識させて、運搬車両20を目標位置Pまで案内することができる。運搬車両20の位置としては、例えば、運搬車両20の特定の箇所が設定される。特定の箇所として、例えば荷台後端の中央位置が設定される。このため、運搬車両20は、荷台後端の中央位置が目標位置Pに来るように誘導される。なお、運搬車両20の特定の箇所としては、荷台後端の中央位置以外の箇所であってもよい。運搬車両20の特定の箇所は、運搬車両20の位置情報、向き情報及び車体寸法情報から算出される。
【0036】
また、誘導部23は、音声又は音を出力可能としてもよい。この場合、聴覚を通じて、目標位置Pと運搬車両20との距離、目標位置Pの方向を認識させて、運搬車両20を目標位置Pまで案内することができる。
【0037】
図3に誘導部23の表示画面231を示す。表示画面231には、メイン画像領域231aが設けられている。メイン画像領域231aには、目標位置P及び運搬車両20が表示されている。運搬車両20の表示は、運搬車両20の移動に応じ運搬車両20の位置情報及び向き情報を基に表示変更され、現在の運搬車両20の位置を示している。また、メイン画像領域231aには、撒出領域30が表示されている。このため、運搬車両20の運転者は、メイン画像領域231aを見ることにより、撒出領域30に対する運搬車両20の進入の有無を認識することができる。また、メイン画像領域231aには、目標進入軌道31が表示されている。目標進入軌道31は、目標位置Pまでの運搬車両20の目標となる走行経路を示す表示である。このため、運搬車両20の運転者は、目標進入軌道31を見て、この目標進入軌道31に沿って運搬車両20を走行させることができる。従って、的確な運搬車両20の誘導が可能となる。なお、図3では目標進入軌道31が線状に示されているが、図4に示すように、幅を有する帯状の目標進入軌道32を表示させてもよい。
【0038】
図3において、表示画面231には、車体位置画像領域231bが設けられている。車体位置画像領域231bには、運搬車両20の目標位置のX及びYの座標値が表示されている。また、車体位置画像領域231bには、運搬車両20の位置と目標進入軌道31との軌道誤差、運搬車両20の向き情報と目標進入軌道31の方向との方位誤差、及び目標位置Pまでの残り距離が表示されている。表示画面231には、測量方位画像領域231cが設けられている。測量方位画像領域231cには、測量種類及び測量による目標位置Pの方位が示される。
【0039】
表示画面231には、進入状況画像領域231dが設けられている。進入状況画像領域231dは、撒出領域30に対する運搬車両20の進入状況を示す領域である。この進入状況画像領域231dには、ステータスとして、運搬車両20が作業エリア内に進入したのか否か、目標位置Pに到達したのか否か、および作業完了したのか否かがマーク表示され、文字によりどのような状況であるかが示される。
【0040】
なお、誘導部23は、メイン画像領域231a、車体位置画像領域231b、測量方位画像領域231c及び進入状況画像領域231dの表示情報と共に、これらの表示情報を音声又は音によって出力してもよい。また、誘導部23の表示画面231において、車体位置画像領域231b、測量方位画像領域231c及び進入状況画像領域231dの一部及び全部の表示を省略する場合もある。
【0041】
図2において、通信制御部223は、通信部24による通信の制御を実行する。例えば、通信制御部223は、運搬車両20の土砂排出の目標位置情報の受信、運搬車両20の実際の土砂の排出位置の送信、運搬車両20が土砂の排出を完了した後に撒出領域30から退出したことを知らせる退出信号を送信などの通信制御を行う。通信部24は、建設機械10との無線通信を行うための通信機器である。
【0042】
次に、本実施形態に係る車両誘導システム1の動作について説明する。
【0043】
図5は建設機械10における誘導制御の動作を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおける各処理は、例えば制御部12により実行される。まず、図5のステップS10(以下、単に「S10」と示す。S10以下のステップも同様とする。)に示すように、位置情報取得処理が行われる。位置情報取得処理は、位置情報取得部122により、建設機械10の位置情報を取得する処理である。例えば、位置検出部11により検出された位置情報が建設機械10の位置情報として記録される。このとき、建設機械10の位置情報に加え、建設機械10の向きの情報を取得してもよい。
【0044】
つぎに、S12に処理が移行し、目標位置算出処理が行われる。目標位置算出処理は、目標位置算出部124により、運搬車両20の土砂排出の目標位置を算出し、目標進入軌道31を算出する処理である。目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路、運搬車両20の土砂の積載量、運搬車両20に積載される土砂の種類、運搬車両20の荷下ろし角度、建設機械10の撒出能力及び土砂の撒出状況の一部又は全部に基づいて行われる。
【0045】
例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、運搬車両20の土砂の積載量及び土砂の種類に基づいて行われる。この場合、建設機械10の近くの目標位置を設定することにより、建設機械10の近くの位置に土砂を排出することができ、撒出作業を効率良く行うことができる。具体的には、建設機械10から所定距離以内の範囲に目標位置が設定される。また、運搬車両20の土砂の積載量に基づいて目標位置を算出することにより、撒出領域30において土砂の排出の偏りを抑制することができる。このため、撒出作業の効率低下を抑制することができる。また、運搬車両20に積載される土砂の種類に応じて目標位置を算出することにより、施工計画に応じた適切な土砂の撒出が可能となる。
【0046】
また、目標位置の算出は、建設機械10の向き情報を加味して行ってもよい。例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報及び運搬車両20の土砂の積載量に基づいて行ってもよい。この場合、目標位置の算出において建設機械10の向き情報を加味することにより、建設機械10のブレードなどの作業部の方向に目標位置を設定することができる。このため、建設機械10の向きを変えずに撒出作業を取り掛かれるようにすることができ、撒出作業が効率良く行える。
【0047】
また、目標位置の算出は、建設機械10の撒出経路情報を加味して行ってもよい。例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路及び運搬車両20の土砂の積載量に基づいて行ってもよい。この場合、目標位置の算出において建設機械10の撒出経路を加味することにより、建設機械10の撒出経路に沿って土砂を排出させることができる。このため、建設機械10が撒出経路に沿って撒出作業を進めることができ、建設機械10の無駄な動きを抑制することできる。従って、撒出作業が効率良く行うことができる。
【0048】
また、目標位置の算出は、運搬車両20の荷下ろし角度を加味して行ってもよい。例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路、運搬車両20の土砂の積載量及び運搬車両20の荷下ろし角度に基づいて行ってもよい。この場合、目標位置の算出において運搬車両20の荷下ろし角度を加味することにより、土砂の荷下ろし位置、すなわち土砂の排出位置を正確に算出することができる。
【0049】
また、目標位置の算出は、建設機械10の撒出能力を加味して行ってもよい。例えば、目標位置の算出は、建設機械10の位置情報、建設機械10の向き情報、建設機械10の撒出経路、建設機械10の撒出能力、運搬車両20の土砂の積載量及び運搬車両20の荷下ろし角度に基づいて行ってもよい。建設機械10の撒出能力が大きいほど単位面積あたりの土砂排出量を多くすることが可能であり、このように土砂を排出しても無理なく撒出が行える。このため、目標位置の算出において建設機械10の撒出能力を加味することにより、建設機械10の撒出能力に応じて土砂を適切に排出させることができる。従って、撒出作業が効率良く行える。
【0050】
さらに、目標位置の算出は、撒出領域における土砂の撒出状況を加味して行ってもよい。例えば、目標位置の算出は、撒出領域30において未だ撒出を行っていない地点が目標位置として設定される。撒出を行っているか否かは、例えば、撒出領域30の三次元形状をレーザスキャナなどで検出して判定すればよい。この場合、目標位置の算出において土砂の撒出状況を加味することにより、撒出を行っていない領域に対し確実に撒出作業を行えるため、撒出作業が的確に行える。
【0051】
目標進入軌道31の算出は、例えば、建設機械10の土砂の撒出経路に基づいて運搬車両20の進入方位を決定し、その進入方位に応じて行われる。なお、図3では、目標進入軌道31が直線の経路により構成されているが、曲線経路を含んで構成されていてもよい。このように目標進入軌道を算出することにより、運搬車両20が目標位置で荷下ろししたときの土砂の山の形状を建設機械10が撒き出しやすい形状とすることができ、円滑な土砂の撒出が可能となる。
【0052】
そして、S14に処理が移行し、目標位置送信処理が行われる。目標位置送信処理は、S12により算出された目標位置の情報及び目標進入軌道31の情報を運搬車両20側へ送信処理である。例えば、通信制御部126は、目標位置及び目標進入軌道31のデータを通信部13へ出力する。通信部13は、無線通信を通じて、目標位置及び目標進入軌道31のデータを運搬車両20へ送信する。
【0053】
そして、S16に処理が移行し、運搬車両20における実際の土砂の排出位置のデータを受信したか否かが判定される。土砂の排出位置のデータは、運搬車両20が排出位置のデータを送信した場合、通信部13により受信され、通信制御部126を介して記録部125に記録される。
【0054】
S16において、運搬車両20における実際の土砂の排出位置のデータを受信したか否かが判定された場合、撒出経路の設定処理が行われる(S18)。撒出経路の設定処理は、実際の土砂の排出位置が目標位置に対し所定以上の誤差を生じている場合に、建設機械10により撒出を行う経路を再設定する処理である。実際の土砂の排出位置が目標位置に対し誤差を生じていない場合、および実際の土砂の排出位置が目標位置に対し所定以上の誤差を生じていない場合には、撒出経路を再設定しない。つまり、先に設定した撒出経路を用いて、建設機械10により土砂の撒出作業が行われる。なお、建設機械10として有人走行する建機を用いる場合には、S16の受信判定処理及びS18の撒出経路の設定処理を省略してもよい。この場合、建設機械10の運転者が実際の土砂の排出位置に応じて撒出経路を決定すればよい。S18の処理を終えたら、図5における一連の制御処理を終了する。
【0055】
図6は運搬車両20における誘導制御の動作を示すフローチャートである。
【0056】
図6のフローチャートにおける各処理は、例えば制御部22により実行される。まず、図6のS20に示すように、位置情報及び向き情報の取得処理が行われる。位置情報取得処理は、位置情報取得部221により、運搬車両20の位置情報を取得する処理である。例えば、位置検出部21により検出された位置情報が運搬車両20の位置情報として記録される。向き情報取得処理は、方向情報取得部224により、運搬車両20の向き情報を取得する処理である。
【0057】
つぎに、S22に処理が移行し、目標位置のデータを受信したか否かが判定される。すなわち、運搬車両20における土砂排出の目標位置のデータを受信したか否かが判定される。目標位置データは、建設機械10が送信する位置データである。制御部22は、通信部24を通じて目標位置のデータが入力された場合に目標位置のデータが受信されたと判定し、目標位置のデータが入力されない場合に目標位置のデータが受信されていない判定する。
【0058】
S22において、目標位置のデータを受信したと判定された場合、誘導処理が行われる(S24)。誘導処理は、運搬車両20を土砂排出の目標位置Pに誘導する処理である。例えば、誘導制御部222は誘導部23に制御信号を出力し、図3に示すように誘導部23の表示画面231にはメイン画像領域231aが表示され、メイン画像領域231a内には目標位置P及び運搬車両20が表示される。このメイン画像領域231aを運搬車両20の運転者が見ることにより、目標位置Pに対する運搬車両20の相対位置を認識することができる。そして、目標位置Pに近づくように運搬車両20が運転されることにより、運搬車両20が的確に誘導される。
【0059】
また、メイン画像領域231aには、運搬車両20の目標進入軌道31が表示される。このため、運転者は、目標位置Pまでの運搬車両20の走行すべき経路を認識することができ、目標位置Pまで適切な経路に沿って運搬車両20を走行させることができる。
【0060】
また、表示画面231には、車体位置画像領域231bが表示される。このため、運転者は、運搬車両20の目標位置のX及びYの座標値を認識することができ、運搬車両20の位置と目標進入軌道31との軌道誤差、運搬車両20の進入方向と目標進入軌道31の方向との方位誤差、及び目標位置Pまでの残り距離を認識することができる。また、表示画面231には、測量方位画像領域231cが表示される。このため、運転者は、目標位置Pの方位を認識することができる。
【0061】
また、表示画面231には、進入状況画像領域231dが表示される。このため、運転者は、撒出領域30に対する運搬車両20の進入状況を即時に認識することができる。すなわち、運転者は、進入状況画像領域231dを見ることにより、運搬車両20の進入状況が作業エリア(撒出領域30)内であるのかどうか、目標位置Pに到達したのかどうか、および土砂排出を完了したのか否かを認識することができる。
【0062】
そして、図6において、運搬車両20が目標位置Pに到達したか否かが判定される(S26)。例えば、制御部22は、運搬車両20の荷台後端の中央位置が目標位置Pに到達したか否かを判定する。このとき、運搬車両20の位置を運搬車両20の荷台後端の中央位置として誘導を行うことにより、目標位置Pに対し正確に土砂を排出することができる。S26において運搬車両20が目標位置Pに到達していないと判定された場合、S24に処理が戻る。
【0063】
一方、S26において運搬車両20が目標位置Pに到達した判定された場合、排出位置の送信処理が行われる(S28)。排出位置の送信処理は、運搬車両20が実際に土砂を排出した位置のデータを建設機械10へ送信する処理である。すなわち、通信制御部223は、排出位置のデータを通信部24に出力する。通信部24は、その排出位置のデータを建設機械10側へ送信する。また、この送信処理において、運搬車両20が撒出領域30から退出したときに、運搬車両20が撒出領域30から退出したことを知らせる退出信号が送信される。この退出信号が送信することにより、建設機械10に対し、運搬車両20が撒出領域30から退出したことを知らせることができる。従って、建設機械10による撒出作業が迅速かつ円滑に行える。このS28の処理を終えたら、図6における一連の制御処理を終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、土砂を積載した運搬車両20を誘導するにあたり、建設機械10の位置情報、運搬車両20の土砂の積載量及び土砂の種類に基づいて運搬車両20の排出の目標位置Pを算出し、運搬車両20の運転者に対し運搬車両20と目標位置Pまでの距離及び目標進入軌道31を示して運搬車両20の誘導が行われる。このため、建設機械10の近くの位置に土砂を排出できる共に、土砂の排出の偏りを抑制することができる。また、目標進入軌道31に沿って運搬車両20を誘導することにより、建設機械10が土砂を撒出やすいように土砂を排出させることができる。このため、従って、建設機械10の撒出作業が効率良く行える。
【0065】
また、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、土砂を積載した運搬車両20を誘導するにあたり、建設機械10の進行方向を加味して運搬車両20の排出の目標位置Pが算出される。このため、建設機械10の作業部の方向に目標位置Pを設定することができる。このため、建設機械10の撒出作業が効率良く行える。
【0066】
また、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、土砂を積載した運搬車両20を誘導するにあたり、建設機械10の撒出作業における経路を加味して運搬車両20の排出の目標位置Pが算出される。このため、建設機械10の撒出経路に沿って土砂を排出させることができる。従って、撒出作業において建設機械10の無駄な動きを抑制することでき、撒出作業を効率良く行うことができる。
【0067】
また、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、運搬車両20の荷台の特定の箇所が目標位置Pに位置するように、運搬車両20が誘導される。このため、運搬車両20における土砂を排出する位置を目標位置Pへ誘導することができるため、目標位置Pに対し土砂を正確に排出させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、運搬車両20による実際の土砂の排出位置の情報に基づいて建設機械10の撒出経路が再設定される。このため、土砂の排出位置が目標位置Pとずれを生じた場合であっても、適切な撒出作業が行える。
【0069】
また、本実施形態に係る車両誘導システム1によれば、運搬車両20が土砂の排出を完了した後に撒出領域30から退出したことを知らせる退出信号が送信される。このため、建設機械10が退出信号を受信することにより、運搬車両20が土砂を排出して撒出領域30から退出したことを認識できる。従って、建設機械10による撒出作業が迅速かつ円滑に行える。
【0070】
以上、本発明を上述の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲の記載の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、運搬車両20の目標位置の算出などを行う制御部12が建設機械10に搭載される場合について説明したが、制御部12は、工事現場に設置される管理施設などに設定されていてもよい。この場合、目標位置Pの情報など車両誘導に必要な情報を管理施設の施工管理システムなどから運搬車両20へ送信し、施工管理システムなどが土砂の荷下ろしの進捗などを管理し制御すればよい。この場合であっても、上述した実施形態に係る車両誘導システムと同様の作用効果を得ることができる。
【0072】
上述した実施形態では、運搬車両20が有人の手動運転により走行する運搬車両であったが、運搬車両20が無人の自動運転により走行する運搬車両である車両誘導システムに本発明を適用してもよい。この場合、運搬車両を誘導する誘導部として、目標位置まで運搬車両を自動運転制御する自動運転制御部を用いればよい。
【0073】
上述した実施形態では、建設機械10が有人の手動運転により撒出作業を行っているが、建設機械10が無人の自動運転により撒出を行車両誘導システムとして、本発明を適用してもよい。この場合、運搬車両20からの退出信号を受信することにより、S18で設定される撒出経路に沿って建設機械10が自動運転を開始する。
【符号の説明】
【0074】
1…車両誘導システム、10…建設機械、12…制御部、20…運搬車両、22…制御部、23…誘導部、24…通信部、122…位置情報取得部、124…目標位置算出部、P…目標位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6