(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコン反応物質を用いて、前記ポリマーコーティングを二酸化シリコンコーティングに変換することは、前記ポリマーコーティングされた硫黄粒子を、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)溶液と混合することを含む、請求項1に記載の方法。
前記二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合することは、前記二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を一定量のカーボンブラックと混合することを含む、請求項1に記載の方法。
前記二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合することは、前記二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を、一定量の部分的に還元された酸化グラフェンシートと混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明においては、本明細書の一部をなす添付の図面を参照し、これら図面では、本発明が実施されうる特定の実施形態を、例示によって示す。図面においては、同様な参照番号は、幾つかの図面に渡って、実質的に同様なコンポーネントを表す。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施可能なように十分詳細に記述されたものである。他の実施形態が利用でき、構造的変更、又は、論理的変更などは、本発明の範囲を逸脱することなくなされることが出来る。
【0006】
リチウム硫黄カソード材料としての用途のために2段階湿式化学プロセスによって製造された
、SiO
2コーティングされた硫黄粒子(SCSP)が示されている。酸化グラフェン、例えば、緩やかに還元された酸化グラフェン(mr
GO)を添加すると、SCSPは、はるかに高まったサイクル動作安定性を示して、50回のサイクルの後、700 m
Ahg
−1以上の状態を維持する。
【0007】
再充電可能なリチウムイオン(Li
イオン)バッテリ技術の発明は、過去数十年にわたってエネルギー貯蔵において最も新しいパラダイムを設定してきた。これらのバッテリは、多分に開発されており、携帯電話、コンピュータ、及び、電気自動車に電力を供給するための責務を負ってきた。Li
イオンバッテリカソードは、現在、約150〜200mAhg
−1の容量範囲を有している一方、リチウム-硫黄(Li-S)カソードの理論的容量は、1675 mAhg
−1であり、最近の研究によれば、700 mAhg
−1以上の比容量において、数百サイクルが可能である。Li-Sバッテリは、高い比容量によりEV
バッテリの臨界的ニーズを、体積的にも、重量的にも満たすという大きな期待を示す。Li-S系は、同様に、他の利点も提供し、元素リチウム及び元素硫黄が、それらの重量が
軽く、相対的に多く存在することで、相対的にローコストなバッテリを提供する。
【0008】
近年の新規のLi-Sバッテリ出版物の数は、急激に増えており、Li-Sバッテリの問題を扱うことへの関心の高まりを示している。しかし、Li-Sバッテリの課題は、硫黄
の低
電子伝導度(25℃で5 x 10
−30 S cm
−1)、乏しいイオン拡散率、リチウム化中の体積膨張(約80%)、多硫化物「シャトル」効果(中間リチウム多硫化物(Li
2S
n, 4≦n≦8)が溶解して電解質になる
効果)を含む。
【0009】
最近では、他の材料が硫黄カソードに導入され、それらの多くは、カーボンでは不可能な方法でカソード性能を増強する特性を有している。例えば、TiO
2及び幾つかの他の酸化物ナノ構造は、酸化還元反応に対する不活性、及び、顕著な多硫化物吸収特性を有することで、硫黄カソードへの有利な添加物として実証されてきた。多くの場合、SiO
2は、「多硫化物リザーバ(reservoir)」と呼ばれ、SBA-15メソ多孔性シリカが、リチウム硫黄カソード構造用に、メソ多孔性カーボン/硫黄合成物への添加物として用いられた。一例では、多硫化物を捕獲し、次いで、電気化学還元/酸化の間、それらを放出するのが容易になるように、少量のSiO
2添加物を使用する。更に、このカソード合成物のサイクル動作において示される高まった安定性は、SiO
2のメソ多孔性構造に起因しており、これにより、多硫化物陰イオンの拡散が抑制される。SiO
2の他には、他の酸化物が、グラフェン又は酸化グラフェン(GO)とともにナノコンポジットにしばしば組み込まれるAl
2O
3及び La
2O
3を含む、可溶性多硫化物種を安定させることが示されてきた。硫黄シリカコアシェル構造のバッテリ性能は、今までのところ、研究されていない。
【0010】
本開示内容は、SiO
2コーティングされた硫黄粒子(SCSP)の容易な湿式合成を示し、この新規な材料の、Li-Sバッテリカソードの候補としての評価を行う。SCS
Pの一般的な合成が、
図1に概略示され、この合成は、以下のように実行された
。Na
2S
2O
3・5H
2O
と、両親媒性界面活性ポリマー(amphiphilic surfactant polymer)であるポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)(PVP)(20 mg, 55,
000 MW)
との
、100mL水溶
液が調製された。
【0011】
図1は、SCSPの2段階湿式化学合成の概略図を示し、開始材料であるチオ硫酸ナトリウム五水和物(sodium thiosulfate pentahydrate)
及びPVP(a)
と、HCl添加
後のPVPCSP
の形成(b)
と、
最終的にTEOS添加後のSCSP
とを示している。
【0012】
水溶液を緩やかに攪拌しつつ、0.80mLの濃縮HClが、滴下された。反応は、完了に2時間を要したが、白色の濁った沈殿物は、殆ど間をおかずに観察することが出来る。この間、チオ硫酸イオンは
元素硫黄(S8)に分解され、
これが、PVPでコーティングされた粒子を形成す
る。2時間後、反応容器の内容物は、3.6 krpm で、10分遠心分離機にかけられ、0.05重量%のPVP溶液に再懸濁された。懸濁液は、再び、3.6krpmで10分遠心分離機にかけられ、この洗浄/遠心分離プロセスは、脱イオン化した水(DI H
2O)を用いて、更に二回行われた。洗浄後のPVPコーティング
された硫黄粒子(PVPCSP)は、20mLのDI H
2O に懸濁され、放置された。次に、変形ストーバー法(modified Stober process)が、硫黄粒子をシリカ(SiO
2
)でコーティングするために用いられた。このプロセスでは、まず、テトラエチルオルトケイ酸塩(tetraethyl orthosilicate)(TEOS)の溶液が、20uLのTEOSを20mLのメタノール(MeOH)に加えることによって調製された。フラスコ内で、60mLのMeOHと2mLの30%アンモニア(NH
3)が合わされ、激しく攪拌された。攪拌の間、20mLのPVPCSP懸濁液が、NH
3溶液へ滴下された。TEOS溶液は、それから、30分毎に5mLの添加で、なくなるまで反応容器に滴下された。
【0013】
反応において、17時間攪拌が行われ、それから、遠心分離され、DI H
2Oとイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)(IPA)により、数回洗浄された。一例においては、反応がこれらの条件に対して最適化されるように、ストーバー法についてのエージング時間(ageing time)(12〜24時間)および添加されるTEOSの量(10〜30μL)を変動させた。
【0014】
酸化グラフェン、例えば、穏やかに還元された酸化グラフェン(mrGO)の添加については、ハンマー法(Hummer’s method )などの方法が、最初に、酸化グラフェン(GO)を調製するために用いられた。次に、20mgのSCSPが、10mLのエタノール(EtOH)内に懸濁され、攪拌され続けた。3mLのDI H
2Oに6mgのGOが入った別個の懸濁液も調製され、次いで、それが、少しずつ、攪拌が行われる中で、SCSP懸濁液に添加された。反応容器は、それから、氷浴され、部分的還元のため、16μLのヒドラジンが添加された。この反応では、24時間、0℃で、攪拌が行われ、その後、生成物は、DI H
2Oによって繰り返し洗浄され、60℃で、24時間、真空下で乾燥された。
【0015】
PVPCSPとSCSPの形態が、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて調べられ、
図2a及び2bに示されている。
図2は、PVPコーティングされた硫黄粒子のSEM画像(a)、SCSP(b)、及び、単離されたSCSPのTEM画像(低倍率〜高倍率のアモルファスSiO
2コーティング)(c〜e)を示している。
【0016】
図2aにおいて、PVPCSPは、約700〜800nmの直径を有する、球状形状を有するのが示されている。幾つかのより小さな粒子も合成中に形成される傾向があるが、これはおそらくは、反応条件の小さな変化によるものである。SEMビームの下、PVPコーティングは歪み、それらのコアシェルタイプの構造をあらわにする。
図2bは、アルミニウム基板上のSCSPを示す。SCSPの直径は、一般に、PVPCSPより大きく、SiO
2コーティングは凸凹で、いくらか表面が平らでないように見える。
【0017】
この平らでない表面は、堆積されたシリカコーティングにおける、組成上のある程度の不均質性によるものである可能性がある。結果として、多くのSCSPは、殆どは、比較的球状のままであるものの、完全な球状形態ではなく、ジャガイモ様形態をとる傾向がある。表面の凸凹の一方、
図2のTEM解析から、SiO
2は、硫黄粒子の表面の薄膜として形成されることがわかる。
【0018】
図2cは、より小さなジャガイモ形状のSCSPを捕えたものであり、硫黄のコアとSiO
2シェルを区別している。この粒子は、SiO
2ナノチューブの上部に置かれており、これは、PVPCSP合成から来る余分なPVPがある場合、形成される傾向がある。シリカシェルのTEMが
図2dに示されており、硫黄なしでの、連続的なコーティングを見ることができる。この画像は、電子ビームにより、硫黄が反応し、構造から離れた結果であり、シェル単独についての貴重な情報を与えている。シリカシェルのHRTEM(
図2e)は、シリカはアモルファスであることを立証する。SiO
2シェルの厚さは、凹凸の近くで大きくなるが、平均では、その厚さは、約20nmである。
【0019】
SiO
2 コーティングのアモルファス性は、また、
図2eのHRTEMでも確認された。明らかに、新規の本SCSP材料のサイズと形態は、相対的に高い度合いで制御することができ、これにより、本SCSP材料は、Li−Sカソード材料として電気化学的に特徴付く理想的なシステムとなる。
【0020】
更に、点IDエネルギー分散X線分光法(point ID energy dispersive x-ray spectroscopy (EDS))により、SCSP内に、元素の硫黄とシリカの両方が存在することが確認され、SCSPカソード内のシリカに対して、硫黄の存在が大勢を占めることは、
図3aに見られるように、アモルファスSiO
2と硫黄に比較したSCSPのXRDスペクトルによって証明される。EDSにおけるAlピークは、Siの存在を歪ませないようにするために用いられるアルミニウム基板に由来する。
図3は、アモルファスシリカ、SCSP及び元素硫黄のXRDを含むスペクトルデータ(a)及び、対応する相対重量パーセンテージを含む、SCSPのEDS(b)を示す。
【0021】
硫黄コアを囲むアモルファス薄膜SiO
2シェルは、多硫化物シャトル効果を阻害して、吸着性のバリア及び多硫化物リザーバとして機能すると推定される。多硫化物シャトル効果は、典型的なカーボン硫黄カソード構造の障害になる傾向が有り、これら構造は、活性物質の損失をこうむりうる。SiO
2は、電解質に可溶な多硫化物種を表面吸着する固有の能力を有し、これは、多くのサイクルに渡って、電気化学的に活性な硫黄の損失を阻止する。この設計においては、 SiO
2シェルは、この機能を果たし、Li
+ 拡散を可能とする。バッテリ製造の間、本発明者らは、導電性添加剤としてカーボンブラック(CB)のみを含ませるのではなく、穏やかに還元された酸化グラフェン(mrGO)を添加することにより、カソードのサイクル性能がかなり改善され、50サイクルの後、300 mAhg
-1 以上カソードの放電容量が増加することを見出した。
【0022】
mrGOなどの酸化グラフェンをカソード合成物用に選択したが、これは、酸化グラフェンが、そのシートで粒子を包み、より相互に接続した導電性網を形成する能力を有するからである。CB単独では、この導電性シンクは提供出来ず、このことは、他の絶縁体(SiO
2)でコーティングされた1種の絶縁体(硫黄)からなるこのカソード材料に支障をきたす。構造が時間と共に損傷するにつれ、mrGOは、導電性ネットとして機能し、その構造を包含し、また、多硫化物捕獲特性を有するようになる。従って、幾つかの作用モードで、mrGOの添加が、SCSPのサイクル安定性を改善するのに役立つ。
【0023】
図4Aは、SCSPのサイクル性のプロット(a)、mrGOを添加したSCSPのサイクル性のプロット(b)、および、50サイクルまでの、mrGOなしとありのSCSPの放電サイクル容量の比較(c)を示す。
図4Bは、SCSPのサイクリックボルタンメトリ(a)、mrGOを添加したSCSPのサイクリックボルタンメトリ(b)、SCSPの電圧プロファイル(c)及び、mrGOありのSCSPの電圧プロファイル(d)を示す。
【0024】
合成した後何も手を加えていないSCSPの硫黄含有量は、幾つかの合成からのEDSデータ(
図3b)に基づくと、約90重量%であった。全てのサイクル性プロットについて、最初のサイクルは、1675 mAhg
-1の理論容量に基づいて、C/50のレートで作動し、各後続のサイクルは、C/10のレートで作動した。この遅い電流サイクル動作は、SCSP構造の高絶縁性ゆえに、必然であった。サイクリックボルタンメトリ(CV)曲線は、0.1 mVs
-1のスキャンレートを用いて取得された。50サイクルの後、SCSPは、444.4 mAhg
-1 のかなりの比放電容量を維持し(
図4A(a))、今日産業で用いられる材料のそれよりも依然かなり高い。
【0025】
S
8からLi
2S
への変換は、幾つかのサイクルにわたって可逆的に繰り返し進行することが可能であるが、このことは、クーロン効率が約99%で安定していることが示している。しかし、最初の50サイクルのわたる容量崩壊は、依然大きく、サイクル2〜50で、1サイクルごとに12.2 mAhg
−1の平均の比容量損失がある。
図4B(a)
に示される、SCSPについてのCV曲線は、Li−Sカソードについての典型的なリチウム化及び脱リチウム化のピークを強調しており、予測されるように、リチウム化はわずかに減少し、それから、サイクル2の後で、安定化する。これは、サイクル1での超低電流密度と、薄いSiO
2コーティングによるものであり、両者は、安定なSEI層の形成を進めると考えられる。
【0026】
SCSPについてのサイクル動作データから分かるように、容量減衰は、SCSPカソードで依然かなり大きかったが、これは、おそらくは、他の絶縁材料(SiO
2, バンドギャップ約9eV)による、極端に電子的絶縁性の高い材料(S
8)の囲みこみによるものである。SCSP単独の場合に被る容量損失が、カソード混合物へのmrGOの添加を行うこと、およびその研究を行うことの契機であった。
【0027】
図4A(c)によると、SCSPの容量崩壊は、mrGOの添加によりかなり改善される。サイクル2〜50では、サイクルごとの平均の容量損失は、わずか8.6 mAhg
-1であり、クーロン効率が約99.3%と改善された。CV曲線は、また、mrGO増強カソードのすばらしい安定性を示し、SCSP単独での酸化還元ピーク(
図4B(b))に比較して、より多様な酸化還元ピークを示す。リチウム化ピーク及び脱リチウム化ピークは、最初の数サイクルで安定化するが、サイクル1の後に、その酸化還元電位に、わずかな上昇場シフト(up-field shift)も存在し、このシフト及び後続の安定化は、おそらく、mrGOシート間のSiO
2と多硫化物の捕捉による。
【0028】
添加物としてのmrGOにより、SCSPの50回目の放電は、763.2mAhg
-1の比容量を示した。従って、
図4A(c)の放電容量の比較に図示されるように、CB単独ではなく、mrGOとCBとを導電性添加物の組合せとした場合の結果は、318.8 mAhg
-1の増加であり、大きな利点であった。一例においては、これらの利点は、SCSP粒子が部分的に包まれることに由来しており、こうなることで、小さなCB粒子が混合物全体に渡ってランダムに分散される場合と比較して、導電性媒体が密着することが可能になる。更なる利点は、mrGOの多硫化物シャトル抑制特性であり、これは、数サイクルにわたり、SCSP構造が崩壊するにつれて重要となる。
【0029】
注目されることは、硫黄は、充電−放電プロットにおいて、3つの主な電圧プラトー(voltage plateau)を示すことであり;初めの最も小さいプラトーは、固体Li
2S
8種に由来し(2.4〜2.3V)、2番目の最も鋭いプラトーは、Li
2S
8の可溶Li
2S
6種への変換に由来し(2.3〜2.1V)、最も長いプラトーは、可溶種Li
2S
6≧x>2に由来する(2.1〜2.0V)。
【0030】
SCSP及びmrGOを有するSCSPの放電/充電電圧プロファイルを、それら電圧プラトー領域を解析するために取得した。SCSPカソードの最初のサイクルのプラトーは、それぞれのCV曲線(
図4B(c)に図示)の充電ピーク及び放電ピークと十分一致し、主動作領域が、充電については2.3〜2.4Vであり、放電については2.0〜2.3Vである。しかし、後の充電は、より広い電圧ウィンドウ(voltage window)を示し始める。例えば、5回目、25回目、及び50回目の充電は、2.2〜2.4Vで動作し、放電は、同一の動作ウィンドウに留まる。
【0031】
図4B(d)に図示されるように、mrGOが添加されると、後のサイクルで、電圧プラトーが広がり、放電/充電容量が、50回目のサイクルについて約700mAhg
-1で安定化し、これに対して、SCSP単独の場合は、約400mAhg
-1である。mrGO増強SCSPについての電圧プラトーはまた、それぞれのCV曲線と一致し、プラトーの曲率がより大きくなり、これにより、より高い電圧のための更なる容量が与えられる。mrGO添加物の補足的効果の1つは、単独のSCSPカソードに見られるような、動作電圧の減少がないことである。
【0032】
電気化学的半電池電極の一例のアセンブリは、乳鉢と乳棒を用いて、重量比が6:3:1のSCSP、CB、フッ化ポリビニリデン(PVdF)を混合することを含んだ。N−メチル−2−ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)(NMP)を用いてスラリーを作り、これを、高純度のアルミニウムホイルの電流コレクタ上に置き、乾燥するために、一晩、60℃で真空オーブン内に入れた。次いで、作用電極としてのSCSP/CB/PVDF合成物、隔離体としての微多孔性ポリプロピレン(Celgard 2300)、および、対向電極としてのリチウム金属ホイルを有するCR2032−タイプのコイン電池を製造した。
【0033】
使用された電解質は、1,3−ジオキソラン(1,3-dioxolane)(DOL)及び1,2−ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)(DME)の体積比が1:1であり、0.5重量%の濃度の硝酸リチウム(LiNO3)をリチウムパッシベーション添加物とする、1Mのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)(LiTFSI)であった。複数の電池を、Ar充満VAC Omni-lab グローブボックス内に用意し、Arbin BT2000上で、1.7〜2.8Vでリチウムと比較してテストした。CVデータが、0.1mVs
-1のスキャンレートで、Bio-logic VMP3を用いて収集された。走査型電子顕微鏡法特性評価が、FEI Nova Nano450SEM、 FEI XL30 SEMを用いて実行され、透過型電子顕微鏡法が、Philips CM300 TEMを用いて実行された。
【0034】
この研究においては、シリカコーティングを施された硫黄粒子(SCSP)が合成され、これが、Li−Sバッテリ用のカソード材料とされた。この新規のコアシェル構造は、容易な2段階湿式化学合成によって製造された。SCSPカソードは、添加剤としてのmrGOと結合された場合、すばらしいサイクル動作安定性を示し、mrGOなしでの440.8mAhg
-1からmrGOありの763.2mAhg
-1へと、50サイクル後の容量維持率を改善した。電気化学データは、また、mrGOなしでの1サイクルあたり12.2 mAhg
-1からmrGOありでの1サイクルあたり8.6 mAhg
-1へと、50サイクルにわたる容量減衰の減少も示す。
【0035】
サイクル動作の間、SCSPは、割れて活性物質(S
8)を放出することが理解されており、mrGOは、破裂した粒子を閉じ込める助けとなり、従って、サイクリング安定性を改善する。50回目のサイクルまでに、SCSPは、mrGOの添加で、比放電容量が318.8 mAhg
-1上昇した。従って、mrGOの添加のあるSCSPは、携帯電子機器及びEV用の低コスト、高エネルギー密度バッテリシステムの用途において、大きな可能性を示す。更なる調査が、特に、サイクル動作中のシリカシェル粉状化について、SCSPカソードシステムに必要である。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態による、バッテリ500の例を示す。バッテリ500は、アノード510とカソード512を含むのが示されている。電解質514が、アノード510とカソード512の間に示されている。一例では、バッテリ500は、リチウムイオンバッテリである。一例では、アノード510及び/あるいはカソード512などの1以上の電極は、上記例に記述したように、コーティングされた硫黄粒子を含む。一例では、本発明は、これには限定されないが、バッテリ500は、2032コインタイプ形状因子に従って形成される。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態による例示的形成方法を示す。動作602において、ポリマーでコーティングされたいくつかの硫黄粒子が形成される。動作604において、ポリマーコーティングが、シリコン反応物を用いて、二酸化シリコンコーティングに変換されて、二酸化シリコンコーティングされたいくつかの硫黄粒子が形成される。動作606において、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子は、導電体材料と混合されて、二酸化シリコンコーティングされた粒子−導電体合成物が形成される。動作608において、一定量の二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子−導電体合成物は、電極に形成される。
【0038】
本明細書で開示したデバイス及び方法をより良く例示するために、実施形態の非限定的リストをここに提供する:
【0039】
例1は、バッテリ電極を形成する方法を含む。この方法は、ポリマーコーティングされたいくつかの硫黄粒子を形成することと、シリコン反応物質を用いて、ポリマーコーティングを二酸化シリコンコーティングに変換して、二酸化シリコンコーティングされたいくつかの硫黄粒子を形成することと、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合して、二酸化シリコンコーティングされた粒子−導電体合成物を形成することと、一定量の二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子−導電体合成物を電極に形作ることと、を含む。
【0040】
例2は、ポリマーコーティングされたいくつかの硫黄粒子を形成することが、ポリビニルピロリドン(PVP)コーティングされたいくつかの硫黄粒子を形成することを含む、例1に記載の方法を含む。
【0041】
例3は、ポリマーコーティングを、シリコン反応物質を用いて、二酸化シリコンコーティングに変換することは、ポリマーコーティングされたいくつかの硫黄粒子をテトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)溶液と混合することを含む、例1〜2のいずれか1つを含む。
【0042】
例4は、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合することは、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を一定量のカーボンブラックと混合することを含む、例1〜3のいずれか1つを含む。
【0043】
例5は、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合することは、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を一定量の酸化グラフェンと混合することを含む、例1〜4のいずれか1つを含む。
【0044】
例6は、二酸化シリコンコーティングされた硫黄粒子を導電体材料と混合することは、二酸化シリコンコーティングされた粒子を、一定量の穏やかに還元された酸化グラフェンシートと混合することを含む、例5に記載の方法を含む。
【0045】
例7は、電極を含む。この電極は、いくつかの硫黄粒子と、いくつかの硫黄粒子のそれぞれを実質的に囲む二酸化シリコンコーティングと、二酸化シリコンコーティングされたいくつかの硫黄粒子と混合される導電体と、を含む。
【0046】
例8は、導電体は、カーボンブラックを含む、例7に記載の電極を含む。
【0047】
例9は、導電体は、酸化グラフェンを含む、例7〜8のいずれか1つの電極を含む。
【0048】
例10は、導電体は、穏やかに還元された酸化グラフェンシートを含む、例7〜9のいずれか1つの電極を含む。
【0049】
例11は、いくつかの硫黄粒子は、電極の約90重量%である、例7〜10のいずれか1つの電極を含む。
【0050】
例12は、いくつかの硫黄粒子は、約700〜800ナノメータの直径を有し、実質的に球状である、例7〜11のいずれか1つの電極を含む。
【0051】
例13は、二酸化シリコンコーティングの厚さは、約15〜20ナノメータである、例7〜12のいずれか1つの電極を含む。
【0052】
上記詳細な記述は、その詳細な記述の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、例示として、本発明が実施されることが出来る特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、また、「例」としても本明細書では参照される。そのような例は、図示された要素または説明が行われた要素とは別に、更なる要素を含むことが出来る。しかし、本発明者は、また、図示又は説明を行った要素のみが提供される例も企図する。更に、本発明者は、図示または説明を行った要素の任意の組合せまたは並べ替えを用いた例(または、その1以上の側面)も、特定の例(もしくは、その1以上の側面)について、又は、図示または本明細書中で説明を行った他の例(もしくは、その1以上の側面)について企図している。
【0053】
この文書においては、語句「a」又は「an」は、特許文書において一般的であるように、「at least one」又は「one or more」の任意の他の例又は使用とは独立に、1以上を含むものとして用いられる。この文書においては、語句「or」は、特に明記しない限り、非排他的であることを指すために、又は、「AまたはB」が、「AではあるがBではない」、「BではあるがAではない」及び「A及びB」を含むことを指すために用いられる。この文書においては、語句「including」及び「in which」は、「comprising」及び「wherein」の夫々の語句の純粋な英語の等価物として用いられる。また、以下の請求項においては、語句「including」及び「comprising」は、限定的ではなく、つまり、請求項の中で、そのような語句の後にリストアップされる要素とは別の要素を含む、システム、デバイス、製品、合成物、製剤、又はプロセスが、依然、その請求項の範囲に入るとみなされる。更に、以下の請求項においては、語句「first」、「second」及び「third」などは、単に、ラベルであり、それらの対象に、数字的条件を課すことは意図されていない。
【0054】
上記記述は、例示的であることが意図され、限定的であることは意図されない。例えば、上記例(及び、その1以上の側面)は、相互に組み合わせて用いられることが出来る。当業者が、上記説明を吟味するなどによって、他の実施形態が用いられることもある。要約書は、読者が、迅速に、技術的開示内容の性質を調べられるようにするために提供される。それは、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために用いられないという理解の下に提出される。また、上記詳細な説明においては、様々な特徴は、開示内容を合理化するために、グループ化されることもできる。このことは、特許請求されていない開示された特徴が、任意の請求項に必須であることを意図すると解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、開示された特定の実施形態の全ての特徴には存在しない場合もある。従って、以下の請求項は、ここに、詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自身で個別の実施形態をなし、そのような実施形態は、様々な組み合わせ又は並べ替えにおいて、相互に組み合わすこともできることが企図される。本発明の範囲は、添付の請求項を参照して、これら請求項の権利が与えられる均等物の全範囲と共に決定されるべきである。