【文献】
D. Georgescauld et al.,INTERMOLECULAR EXCIMER FLUORESCENCE: A NEW PROBE TRANSITIONS IN SYNTHETIC PHOSPHOLIPID MEMBRANES,Photochemistry and Photobiology,1980年,Vol. 31,539-545
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0018】
分子内又は分子間エキシプレックス又は分子内又は分子間エキシマを一種類の分子で形成する化合物、具体的には一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物を含む有機EL素子は、分子間エキシプレックス又は分子間エキシマを二種類の分子間で形成する化合物を含む従来の有機EL素子よりも、発光層の材料点数を減少させることができることから、均一な膜形成による素子の高特性化、及び蒸着プロセスや塗布プロセスでのプロセスコストの低減が可能となる。薄膜中において、エキシプレックスやエキシマは、2つの部位の相互作用によって形成されることから、その混合比が1:1であるときに効果を極大化できるが、従来の二種類の分子の混合膜を形成する上で、精密に1:1の混合比での膜形成を行うことはプロセスの制約上、困難である。本願の技術を用いることにより、例えばエキシプレックスの場合、電子供与性基Dと電子求引性基Aの混合比を1対1に完全に制御できることから、エキシプレックスの効果を最大限に活かすことができ、素子の発光効率を高めうる。また、従来の分子間エキシプレックス又は分子間エキシマを形成する化合物を含む有機EL素子よりも発光波長の長波長化を抑制しうる。
【0019】
前述の通り、分子内エキシプレックス又は分子内エキシマを形成する化合物、具体的には一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物を含む有機EL素子は、高い発光効率を有し、且つ従来の分子間エキシプレックス又は分子間エキシマを形成する化合物を含む有機EL素子よりも発光波長の長波長化を抑制しうる。
【0020】
この理由は明らかではないが、以下のように推察される。本願では、電子供与性基D同士、電子求引性基A同士、又は電子供与性基Dと電子求引性基Aを、非共役原子で連結するという新たな手法を用いることにより、分子内エキシマ又はエキシプレックスを形成し、ΔE
STを極小化することができる。また、本願の分子内エキシマ又は分子内エキシプレックスは、電子供与性基D同士、電子求引性基A同士、又は電子供与性基Dと電子求引性基Aを分子内の近い距離に存在させることができるため、容易に形成されやすい。これらの結果、従来技術の分子間エキシマ又はエキシプレックスを形成する化合物よりも高発光効率化したものできると推察される。
さらに、本願の分子内エキシマ又は分子内エキシプレックスは、前述の通り、分子内の近い距離で容易に形成されるので、従来技術であるの分子間エキシマ又はエキシプレックスを形成する化合物とは異なり、強力な電子供与性基Dと電子求引性基Aを必要としない。その結果、本願の分子内エキシプレックス又はエキシマを形成する化合物は、従来の分子間エキシプレックス又はエキシマを形成する化合物と比べて、発光波長の長波長化を少なくできる。さらに、本願の分子内エキシプレックス又はエキシマを形成する化合物は、非共役原子を含むので、π共役系が分子内で広がりにくい。その結果、π共役系化合物よりも発光波長の長波長化を少なくすることができる。このように、本願の分子内エキシプレックス又はエキシマを形成する化合物は、発光波長の制御する上で優位性がある。
【0021】
さらに、本願での電子供与性基Dや電子求引性基Aの構造は、通常、それぞれの基が単独の分子であれば液体であったり、固体であっても分子量が小さすぎるため薄膜形成が困難であったりと、有機エレクトロルミネッセンス素子がそもそも作製できない問題点がある。従来技術では、素子の作製不可能な化合物群同士を連結するという新たな手法によって、素子作製を実現した点においても、新規性を有する。本発明は、これらの知見に基づきなされたものである。
【0022】
1.本発明の架橋化合物
本発明の架橋化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【化3】
【0023】
一般式(1)において、LとMは、それぞれ電子供与性基D又は電子求引性基Aを表す。
【0024】
(電子供与性基D)
一般式(1)において、L又はMで表される電子供与性基Dは、「電子供与性基で置換されたアリール基」、「シアノ基及び含窒素芳香族六員環含有複素環基以外の置換基で置換されていてもよい電子供与性の複素環基」、又は「置換されていてもよいアミノ基」である。
【0025】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「アリール基」としては、炭素数が6〜24の芳香族炭化水素環から誘導される基が好ましい。そのような芳香族炭化水素環の例には、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、ペンタレン環、アセアントリレン環、ヘプタレン環、トリフェニレン環、as−インダセン環、クリセン環、s−インダセン環、プレイアデン環、フェナレン環、フルオランテン環、ペリレン環、アセフェナントリレン環、ビフェニル環、ターフェニル環、テトラフェニル環等から誘導される基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、クリセン環、フルオランテン環、ペリレン環、ビフェニル環、及びターフェニル環が挙げられる。
【0026】
Dで表される「シアノ基及び含窒素芳香族六員環含有複素環基以外の置換基で置換されていてもよい電子供与性の複素環基」の「電子供与性の複素環基」としては、炭素数が4〜24の電子供与性の複素環から誘導される基が好ましい。そのような複素環の例には、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、インドロインドール環、9,10−ジヒドロアクリジン環、10,11−ジヒドロジベンゾアゼピン、5,10−ジヒドロジベンゾアザシリン、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾフリルインドール環、ベンゾチエノインドール環、インドロカルバゾール環、ベンゾフリルカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、ベンゾチエノベンゾチオフェン環、ベンゾカルバゾール環、又はジベンゾカルバゾール環等が挙げられる。より好ましくは、カルバゾール環、インドロインドール環、9,10−ジヒドロアクリジン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾフリルインドール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環が挙げられる。なお、電子供与性の複素環は、同一の又は異なる2以上の上記複素環を連結したものであってもよい。また、ジベンゾフラン環は、電子供与性の置換基(例えばカルバゾール基)で置換された場合は、全体として電子供与性基Dとして機能しうるが、無置換又は電子求引性の置換基で置換された場合は電子求引性基Aとして機能しうる。
【0027】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「電子供与性基」としては、アルキル基、アルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよい電子供与性の複素環基等が挙げられる。好ましくは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい電子供与性基の複素環基が挙げられる。
【0028】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「電子供与性基」の「アルキル基」としては、直鎖、分岐、又は環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルオクチル基が挙げられる。
【0029】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「電子供与性基」の「アルコシキ基」としては、直鎖、分岐、又は環状のいずれでもよく、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、2−n−ヘキシル−n−オクチルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−ヘキシルオクチルオキシ基が好ましい。
【0030】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「電子供与性基」の「置換されていてもよいアミノ基」の置換基としては、アルキル基、アルキル基で置換されていてもよいアリール環が挙げられ、アルキル基及びアリール基については、上述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0031】
Dで表される「シアノ基及び含窒素芳香族六員環含有複素環基以外の置換基で置換されていてもよい電子供与性の複素環基」の「シアノ基及び含窒素芳香族六員環含有複素環基以外の置換基」とは、シアノ基及び後述する含窒素芳香族六員環含有複素環基以外の置換基であり、電子供与性基又はアリール基であることが好ましい。電子供与性基又はアリール基の例には、アルキル基、アルコキシ基、アルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアミノ基などが挙げられ、具体的には上述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。また、電子供与性の複素環基の電子供与性を損なわない範囲であれば電子求引性の置換基であってもよく、その例にはジベンゾフリル基等も含まれる。
【0032】
Dで表される「電子供与性基で置換されたアリール基」の「電子供与性基」の「置換されていてもよい電子供与性の複素環基」としては、上述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0033】
Dで表される「置換されていてもよいアミノ基」の置換基としては、上述の「置換されていてもよいアミノ基」の置換基と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0034】
これらの中でも、電子供与性基Dは、他の電子供与性基D又は電子求引性基Aと相互作用しやすい点から、「電子供与性基で置換されたアリール基」又は「置換されていてもよい電子供与性の複素環基」であることが好ましい。これらの基は、平面性が高いことから、他の電子供与性基D又は電子求引性基Aと空間的に重なり合いやすく、相互作用しやすいからである。「電子供与性基で置換されたアリール基」又は「置換されていてもよい電子供与性の複素環基」は、好ましくは電子供与性基で置換されたフェニル基、置換されていてもよいカルバゾリル基、置換されていてもよいアザカルバゾリル基、置換されていてもよいジアザカルバゾリル基、置換されていてもよい9,10−ジヒドロアクリジル基、置換されていてもよいフェノキサジル基、置換されていてもよいフェノチアジル基、又は置換されていてもよい5,10−ジヒドロフェナジル基である。
【0035】
(電子求引性基A)
一般式(1)において、L又はMで表される電子求引性基Aは、「フッ素原子」、「シアノ基」、「フッ素原子で置換されたアルキル基」、「置換されていてもよいカルボニル基」、「置換されていてもよいスルホニル基」、「置換されていてもよいボリル基」、「電子求引性基で置換されていてもよいアリール基」、「シアノ基もしくは含窒素芳香族六員環含有複素環基で置換された電子供与性の複素環基」、又は「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」でありうる。
【0036】
Aで表される「フッ素原子で置換されたアルキル基」の「アルキル基」としては、上述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0037】
Aで表される「置換されていてもよいアリール基」の「アリール基」としては、上述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0038】
Aで表される「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」の「電子求引性の複素環基」としては、炭素数が3〜24の電子求引性の複素環から誘導される基が好ましい。そのような複素環の例には、ジベンゾチオフェンオキシド環、ジベンゾチオフェンジオキシド環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アザカルバゾール環、ジアザカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾシロール環、アザジベンゾフラン環、ジアザジベンゾフラン環、ジベンゾボロール環、ジベンゾホスホールオキシド環などが挙げられる。より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、又はジアザジベンゾフラン環が挙げられ、さらに好ましくは含窒素芳香族複素環であり、特に好ましくは含窒素芳香族6員環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、又はジアザジベンゾフラン環である。なお、電子求引性の複素環は、同一の又は異なる2以上の上記複素環を連結したものであってもよい。
【0039】
Aで表される「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」の置換基としては、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基で置換されていてもよいアリール基、フッ素原子で置換されていてもよいアリール基、シアノ基で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。アルキル基、アリール基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。また、電子求引性の複素環基の電子求引性を損なわない範囲であれば電子供与性の置換基であってもよく、その例にはカルバゾール基等も含まれる。
【0040】
Aで表される「電子求引性基で置換されていてもよいアリール基」の電子求引性基としては、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されたアルキル基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよいスルホニル基、置換されていてもよいホスフィンオキサイド基、置換されていてもよいボリル基、置換されていてもよい電子求引性の複素環基が挙げられ、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されたアルキル基、又は置換されていてもよい電子求引性の複素環基が好ましい。
【0041】
Aで表される「シアノ基もしくは含窒素芳香族六員環含有複素環基で置換された電子供与性の複素環基」の「電子供与性の複素環基」としては、前述と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0042】
Aで表される「シアノ基もしくは含窒素芳香族六員環含有複素環基で置換された電子供与性の複素環基」の「含窒素芳香族六員環含有複素環」とは、含窒素芳香族六員環を含む複素環に由来する基である。含窒素芳香族六員環を含む複素環の例には、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アザカルバゾール環、ジアザカルバゾール環、アザジベンゾフラン環、ジアザジベンゾフラン環などが挙げられる。好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、アザカルバゾール環、ジアザカルバゾール環、アザジベンゾフラン環、ジアザジベンゾフラン環が挙げられ、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾフラン環が挙げられる。
【0043】
Aで表される「置換されていてもよいカルボニル基」、「置換されていてもよいスルホニル基」、「置換されていてもよいボリル基」の置換基としては、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい電子求引性の複素環基が挙げられる。具体例としては、上記と同様のものが挙げられ、同様のものが好ましい。
【0044】
これらの中でも、電子求引基Aは、他の電子求引性基A又は電子供与性基Dと相互作用しやすい点から、「電子求引性基で置換されていてもよいアリール基」、「シアノ基もしくは含窒素芳香族六員環含有複素環基で置換された電子供与性の複素環基」又は「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」であることが好ましい。これらの基は、平面性が高いことから、他の電子求引性基A又は電子供与性基Dと空間的に重なり合いやすく、相互作用しやすいからである。
「電子求引性基で置換されていてもよいアリール基」、「シアノ基もしくは含窒素芳香族六員環含有複素環基で置換された電子供与性の複素環基」又は「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」は、高い電子求引性を有する点から、好ましくはシアノ基で置換されたアリール基、シアノ基で置換されていてもよい電子求引性の複素環基、無置換の含窒素芳香族6員環基、フッ素原子で置換された含窒素芳香族6員環基、シアノ基で置換された含窒素芳香族6員環基、シアノ基で置換された電子供与性の複素環基、アザカルバゾールで置換された電子供与性の複素環基、アザジベンゾフランで置換された電子供与性の複素環基、フッ素置換アルキル基で置換された含窒素芳香族6員環基、又は置換されていてもよいアリール基で置換されている含窒素芳香族6員環基である。より好ましくはシアノ基で置換されたフェニル基、シアノ基で置換されたカルバゾリル基、アザカルバゾールで置換されたカルバゾリル基、アザジベンゾフランで置換されたカルバゾリル基、シアノ基で置換されたジベンゾフリル基、アザジベンゾフリル基、ジアザジベンゾフリル基、シアノ基で置換されたピリジル基、置換されてもよいピラジル基、置換されていてもよいピリミジル基、置換されていてもよいトリアジル基が挙げられ、さらに好ましくはシアノフェニル基、m−ジシアノフェニル基、3−シアノカルバゾリル基、3−(9−アザカルバゾリル)カルバゾリル基、3−アザジベンゾフリルカルバゾリル基、9−アザジベンゾフリルカルバゾリル基、6−シアノカルバゾリル基、2−シアノ基ジベンゾフリル基、アザジベンゾフリル基、ジアザジベンゾフリル基、2−シアノピリジル基、3−シアノピリジル基、2,6−ジシアノピリジル基、2−シアノピラジル基、2−シアノピリミジル基、5−シアノピリミジル基、置換されていてもよい2,4−ジフェニルピリミジル基、置換されていてもよいジフェニルトリアジル基、又は置換されていてもよいトリフェニルトリアジル基である。
【0045】
L及びMの一方が電子供与性基Dであり、他方が電子求引性基Aであってもよいし、L及びMの両方が、電子供与性基Dであってもよいし、L及びMの両方が電子求引性基Aであってもよい。L及びMの一方が電子供与性基Dであり、他方が電子求引性基Aである場合、分子内又は分子間エキシプレックスを形成する化合物となる。L及びMの両方が電子供与性基Dであるか、又はL及びMの両方が電子求引性基Aである場合、分子内又は分子間で電荷分離度が小さいエキシプレックスを形成するか、又は分子内又は分子間でエキシマを形成する化合物となる。L及びMの両方が電子供与性基Dであるか、又はL及びMの両方が電子求引性基Aである場合、LとMは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、分子内又は分子間エキシマを形成する観点では、同一であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ炭素原子、窒素原子、酸素原子又はケイ素原子を表す。
【0047】
一般式(1)において、nは、1〜4の整数を表す。nが2以上のとき、複数のZは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。nは、LとMが相互作用しやすい立体配置をとりやすく、高い発光効率を有する素子が得られやすい観点から、1又は3であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0048】
一般式(1)において、X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む1又は2つの環が形成されていてもよい。但し、X、Mと連結するZ、及びXと該Mと連結するZとの間の原子の少なくとも1つは、当該環の外にあるものとする。
【0049】
X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環は、脂肪族環であってもよいし、芳香族環であってもよい。
【0050】
脂肪族環は、単環式脂肪族環であってもよいし、多環式脂肪族環(芳香族縮合環の水添物)であってもよい。
【0051】
芳香族環は、単環式芳香族環であってもよいし、縮合多環式芳香族環であってもよく、LとMを近い距離で作用させやすい観点から好ましくは単環式芳香族環である。芳香族環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環である。芳香族炭化水素環は、上述の「アリール基」における「芳香族炭化水素環」と同様としうる。芳香族複素環は、上述の「置換されていてもよい電子求引性の複素環基」における「電子求引性の複素環」と同様としうる。中でも、芳香族環は、環を形成しているX、Y及びZがそれぞれ炭素原子又は窒素原子である芳香族炭化水素環又は含窒素芳香族複素環であることが好ましい。
【0052】
X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環は、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、フルオレン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、インドロインドール、インドロカルバゾール等が挙げられ、ベンゼン、ナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、フルオレンが好ましく、ベンゼンがさらに好ましい。また、これらの環構造に含まれるベンゼン環内の炭素原子は窒素原子に置き換わってもよく、窒素原子の数は0〜2個であることが好ましい。
【0053】
X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環が2つ形成される場合、2つの環は、単結合又は環外の原子(炭素原子、酸素原子又はケイ素原子)を介して結合されうる。環が2つ形成される場合の−X−Y−(Z)n−の構造の例には、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン及びジフェニルシランが含まれる。
【0054】
これらの中でも、X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環は、高い発光効率が得られやすい点から芳香族環であることが好ましく;LとMとを近い距離で相互作用させやすい点から単環式芳香族環であることがより好ましく、ベンゼン環であることがさらに好ましい。さらに、X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環の数は、XとYを近い距離で相互作用させやすい点から、1つであることが好ましい。
【0055】
X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上を環構成原子として含む環の外にある原子(環外の原子)は、窒素原子以外の原子、即ち炭素原子、酸素原子、又はケイ素原子であることが好ましい。環外の原子が窒素原子であると、窒素原子上の不対電子と置換したアリール基のπ電子とで共役が繋がり、窒素原子が非共役原子として機能しないからである。環外の原子は、置換されていてもよいアルキル基置換炭素原子、置換されていてもよいアルコキシ基置換炭素原子、置換されていてもよいアリール基置換炭素原子、酸素原子、置換されていてもよいアルキル基置換ケイ素原子、置換されていてもよいアルコキシ基置換ケイ素原子、又は置換されていてもよいアリール基置換ケイ素原子であることがさらに好ましい。置換されていてもよいアルキル基における「アルキル基」は上述のアルキル基と同様のものが挙げられ、「置換基」はフッ素原子等であることが好ましい。置換されていてもよいアルコキシ基における「アルコキシ基」は上述のアルコキシ基と同様のものが挙げられ、「置換基」はフッ素原子等であることが好ましい。置換されていてもよいアリール基における「アリール基」は上述の「アリール基」と同様のものが挙げられ、「置換基」はアルキル基やフッ素原子等であることが好ましい。
【0056】
一般式(1)において、X、Y及び1以上のZのうち隣り合う2以上が1つの環を形成しているか、又はX、Y及び1以上のZが環を形成していないことが好ましい。
【0057】
一般式(1)において、LとMは、1〜3か所で、好ましくは1か所又は2か所で、さらに好ましくは1か所で、−X−Y−(Z)n−を介して連結(架橋)されうる。
【0058】
一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物は、下記一般式(2)〜(9)のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
【化4】
【0059】
一般式(2)〜(9)において、L及びMは、それぞれ一般式(1)のL及びMと同義である。
【0060】
一般式(2)〜(9)において、X’、Y’及びZ’は、それぞれ−CR
1R
2、酸素原子又は−SiR
1R
2を表す。−CR
1R
2及び−SiR
1R
2におけるR
1及びR
2は、それぞれ水素原子又は置換基である。R
1及びR
2で表される置換基の例には、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、及びシアノ基が含まれる。置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、及び置換されていてもよいアリール基は、上述と同様のものが挙げられる。
【0061】
中でも、X’、Y’及びZ’は、それぞれ−CR
1R
2(R
1及びR
2が、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基)、酸素原子、−SiR
1R
2(R
1及びR
2は、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基)であることがより好ましい。
【0062】
一般式(8)における−X’−Y’−Z’―の例には、−CR
1R
2−O−CR
1R
2−、及び−SiR
1R
2−O−SiR
1R
2−(R
1、R
2:水素原子又は置換基)が含まれる。
【0063】
一般式(2)〜(7)において、Qは、独立してC−R
3又は窒素原子を表す。窒素原子の数は、0〜2個であることが好ましい。C−R
3におけるR
3は、水素原子又は置換基である。R
3で表される置換基の例には、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールシリル基、置換されていてもよいアルキルシリル基、置換されていてもよいアリールメチル基、水酸基、フッ素原子及びシアノ基が含まれる。置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、及び置換されていてもよいアリール基は、上述と同様のものが挙げられる。置換されていてもよいアルキルシリル基における「アルキル基」は上述のアルキル基と同様のものが挙げられる。置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールシリル基及び置換されていてもよいアリールメチル基における「アリール基」は上述のアリール基と同様のものが挙げられ、「置換基」は上述の「置換されていてもよいアリール基」における置換基と同様のものが挙げられる。C−R
3におけるR
3は、水素原子、フェニル基、水酸基であることがより好ましい。
【0064】
一般式(2)、(4)及び(6)におけるMは、Mに対してオルト位のQに置換する基(例えばC−R
3のR
3)と互いに結合して環を形成してもよい。例えば後述する例示化合物T−150は、一般式(6)において、M=―NHR
4(R
4:フェニル置換カルバゾール基)、Mのオルト位のQをC−Phとしたとき、C−PhのPh(フェニル基)と―NHR
4のN原子とが互いに結合して5員環を形成した化合物に該当すると考えることができる。また、後述する例示化合物T−192は、一般式(4)において、M=カルバゾール置換フェニル基、Mのオルト位のQをC−R
3(R
3=水酸基)としたとき、C−R
3のR
3(水酸基)とカルバゾール置換フェニル基のフェニル基とが互いに結合して5員環を形成した化合物に該当すると考えることができる。
【0065】
中でも、LとMが相互作用しやすい立体配置をとりやすく、高い発光効率を有する素子が得られやすい観点から、一般式(2)、(5)、(6)、(8)又は(9)で表される構造を有する架橋化合物が好ましく、一般式(2)又は(8)で表される構造を有する架橋化合物がより好ましく、一般式(2)で表される構造を有する化合物がさらに好ましい。
【0066】
例えば、下記の架橋化合物は、一般式(1)又は(2)において、L:2,4−ジシアノフェニル基(電子求引性基A)、M:カルバゾリル基(電子供与性基D)、X:酸素原子、Y及びZ:ベンゼン環を構成する点線でマークされた炭素原子としたものに相当する。
【化5】
【0067】
一般式(2)〜(9)中、LとMは、1〜3か所で、好ましくは1か所又は2か所で、さらに好ましくは1か所で、一般式(2)〜(9)におけるLとMの連結部と同様の連結部を介して架橋されていてもよい。
【0068】
本発明の架橋化合物は、一般式(1)〜(9)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0069】
以下に、本発明に係る架橋化合物の好ましい具体例を挙げるが、これらの化合物はさらに置換基を有していたり、構造異性体などが存在していたりする場合もあり、本記述に限定されない。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0070】
なお、例示化合物T−103は、一般式(2)と一般式(7)の両方を満たしているが、主に一般式(2)で表される構造に基づく性質を示すと考えられる。同様に、例示化合物T−106〜T−108は、一般式(2)と一般式(5)の両方を満たしているが、主に一般式(2)で表される構造に基づく性質を示すと考えられる。これは、電子求引性基A同士(又は電子供与性基D同士)よりも、電子求引性基Aと電子供与性基Dとの間のほうが電荷の相互作用が生じやすく、エキシプレックスのほうが、エキシマよりも形成されやすいからであると考えられる。
【0071】
本発明の架橋化合物の分子量は、薄膜形成を可能にする観点から、300〜2000であることが好ましく、400〜900であることがより好ましい。
【0072】
これらの架橋化合物を用いることで、上述のとおり、発光波長の長波長化を抑制しながら、分子内又は分子間エキシプレックス又は分子内又は分子間エキシマからなる励起子を形成しうる。それにより、これらの架橋化合物を含む有機EL素子は、発光波長が大きく長波長化することなく、高い発光効率を有しうる。
【0073】
一般式(1)においてL及びMの一方が電子供与性基Dであり、他方が電子求引性基Aである架橋化合物は、分子内又は分子間エキシプレックスを形成する。そのような分子内又は分子間エキシプレックスを形成する化合物は、電子求引性基Aと電子供与性基Dとが相互作用して励起子を生成する。
一般式(1)においてL及びMの両方が電子供与性基Dであるか、又はL及びMの両方が電子求引性基Aである架橋化合物は、分子内又は分子間で電荷分離度が小さいエキシプレックスを形成する。LとMが同一である架橋化合物は、分子内又は分子間エキシマを形成する。
【0074】
本発明の架橋化合物が分子内エキシプレックス又は分子内エキシマを形成するかどうかは、以下の方法で確認することができる。
1)上記化合物を、2−メチル−テトラヒドロフランに溶解し、10
−5Mの測定用溶液を調製する。一方、上記化合物が2つの電子求引性基A(又は2つの電子供与性基D)を有する場合、当該電子求引性基A(又は当該電子供与性基D)からなる化合物を、2−メチル−テトラヒドロフランに溶解し、10
−5Mの比較用溶液を調製する。上記化合物が電子求引性基Aと電子供与性基Dの両方を有する場合、当該電子求引性基Aからなる化合物と、当該電子供与性基Dと残部を有する化合物とを、2−メチル−テトラヒドロフランに溶解し、10
−5Mの比較用溶液を調製する。
2)測定用溶液と比較用溶液の発光スペクトルを、それぞれの極大吸収波長で励起して、測定する。
3)測定用溶液の発光スペクトルと比較用溶液の発光スペクトルとを重ね合わせる。
4)測定用溶液の発光スペクトルと比較用溶液の発光スペクトルが一致しない場合、具体的には、測定用溶液の発光スペクトルの最大発光波長が比較用溶液の発光スペクトルの最大発光波長よりも長波長側にシフトし、且つ測定用溶液の発光スペクトルが比較用溶液の発光スペクトルよりもブロードなスペクトルである場合、測定対象となる化合物が分子内エキシプレックス又は分子内エキシマを形成していると判断することができる。
【0075】
本発明の架橋化合物が分子間エキシプレックス又は分子間エキシマを形成するかどうかは、以下の方法で確認することができる。
1)上記化合物の蒸着又は塗布プロセスで、単層の膜(以下、単膜と略)を作製する。
2)上述の測定用溶液と単膜の発光スペクトルを、それぞれの極大吸収波長で励起して、測定する。
3)測定用溶液の発光スペクトルと単膜の発光スペクトルとを重ね合わせる。
4)測定用溶液の発光スペクトルと単膜の発光スペクトルが一致しない場合、具体的には、単膜の発光スペクトルの最大発光波長が測定用溶液の発光スペクトルの最大発光波長よりも長波長側にシフトし、且つ単膜の発光スペクトルが測定用溶液の発光スペクトルよりもブロードなスペクトルである場合、測定対象となる化合物が分子間エキシプレックス又は分子間エキシマを形成していると判断することができる。
【0076】
さらに、これらの架橋化合物は、バイポーラー性を有し、様々なエネルギー準位に対応できることから、発光材料やホスト材料としても使用できるのみならず、正孔輸送、電子輸送にも適した化合物、即ち、電荷輸送材料として使用することができるため、発光層での使用に限定されず、上述の正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、中間層などに用いてもよい。
【0077】
<合成方法>
一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物は、例えば国際公開第2014/022008号に記載の方法、又は、これらの文献に記載の参照文献に記載の方法を参照することにより合成することができる。
【0078】
2.有機エレクトロルミネッセンス素子材料
分子内又は分子間エキシプレックス又は分子内又は分子間エキシマを一種類の分子で形成する、本発明の架橋化合物は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子材料として用いることができる。具体的には、前記一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物を、発光性材料、ホスト材料、アシストドーパント等の用途で有機エレクトロルミネッセンス素子材料として使用することが、高発光性の観点から好ましい。
次に、本発明の技術思想と関連する、有機ELの発光方式及び発光材料について述べる。
【0079】
<有機ELの発光方式>
有機ELの発光方式としては三重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「リン光発光」と、一重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「蛍光発光」の二通りがある。
【0080】
有機ELのような電界で励起する場合には、三重項励起子が75%の確率で、一重項励起子が25%の確率で生成するため、リン光発光の方が蛍光発光に比べ発光効率を高くすることが可能で、低消費電力化を実現するには優れた方式である。
【0081】
一方、蛍光発光においても、75%の確率で生成してしまう、通常では、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱にしかならない三重項励起子を、高密度で存在させることによって、二つの三重項励起子から一つの一重項励起子を発生させて発光効率を向上させるTTA(Triplet−Triplet Annihilation、また、Triplet−Triplet Fusion:「TTF」と略記する。)機構を利用した方式が見つかっている。
【0082】
さらに、近年では、安達らの発見により一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギーギャップを小さくすることで、発光中のジュール熱及び/又は発光素子が置かれる環境温度によりエネルギー準位の低い三重項励起状態から一重項励起状態に逆項間交差がおこり、結果としてほぼ100%に近い蛍光発光を可能とする現象(熱励起型遅延蛍光又は熱励起型遅延蛍光ともいう:「TADF」)とそれを可能にする蛍光物質が見いだされている(例えば、非特許文献1等参照。)。
【0083】
<リン光発光性化合物>
前述のとおり、リン光発光は発光効率的には蛍光発光よりも理論的には3倍有利であるが、三重項励起状態から一重項基底状態へのエネルギー失活(=リン光発光)は禁制遷移であり、また同様に一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差も禁制遷移であるため、通常その速度定数は小さい。すなわち、遷移が起こりにくいため、励起子寿命はミリ秒から秒オーダーと長くなり、所望の発光を得ることが困難である。
【0084】
ただし、イリジウムや白金などの重金属を用いた錯体が発光する場合には、中心金属の重原子効果によって、前記の禁制遷移の速度定数が3桁以上増大し、配位子の選択によっては、100%のリン光量子収率を得ることも可能となる。
【0085】
しかしながら、このような理想的な発光を得るためには、希少金属であるイリジウムやパラジウム、白金などのいわゆる白金属と呼ばれる貴金属を用いる必要があり、大量に使用されることになるとその埋蔵量や金属自体の値段が産業上大きな問題となってくる。
【0086】
<蛍光発光性化合物>
一般的な蛍光発光性化合物は、リン光発光性化合物のような重金属錯体である必要性は特になく、炭素、酸素、窒素及び水素などの一般的な元素の組み合わせから構成される、いわゆる有機化合物が適用でき、さらに、リンや硫黄、ケイ素などその他の非金属元素を用いることも可能で、また、アルミニウムや亜鉛などの典型金属の錯体も活用できるなど、その多様性はほぼ無限と言える。
【0087】
ただし、従来の蛍光化合物では前記のように励起子の25%しか発光に適用できないために、リン光発光のような高効率発光は望めない。
【0088】
<遅延蛍光化合物>
[励起三重項−三重項消滅(TTA)遅延蛍光化合物]
蛍光発光性化合物の問題点を解決すべく登場したのが遅延蛍光を利用した発光方式である。三重項励起子同士の衝突を起源とするTTA方式は、下記のような一般式で記述できる。すなわち、従来、励起子のエネルギーが、無輻射失活により、熱にしか変換されなかった三重項励起子の一部が、発光に寄与しうる一重項励起子に逆項間交差できるメリットがあり、実際の有機EL素子においても従来の蛍光発光素子の約2倍の外部取り出し量子効率を得ることができている。
一般式: T
* + T
* → S
* + S
(式中、T
*は三重項励起子、S
*は一重項励起子、Sは基底状態分子を表す。)
【0089】
しかしながら、上式からもわかるように、二つの三重項励起子から発光に利用できる一重項励起子は一つしか生成しないため、この方式で100%の内部量子効率を得ることは原理上できない。
【0090】
[熱活性型遅延蛍光(TADF)化合物]
もう一つの高効率蛍光発光であるTADF方式は、TTAの問題点を解決できる方式である。
【0091】
蛍光発光性化合物は前記のごとく無限に分子設計できる利点を持っている。すなわち、分子設計された化合物の中で、特異的に三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差が極めて近接する化合物が存在する。
【0092】
このような化合物は、分子内に重原子を持っていないにもかかわらず、ΔE
STが小さいために通常では起こりえない三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差が起こる。さらに、一重項励起状態から基底状態への失活(=蛍光発光)の速度定数が極めて大きいことから、三重項励起子はそれ自体が基底状態に熱的に失活(無輻射失活)するよりも、一重項励起状態経由で蛍光を発しながら基底状態に戻る方が速度論的に有利である。そのため、TADFでは理論的には100%の蛍光発光が可能となる。
【0093】
<ΔE
STに関する分子設計思想>
上記ΔE
STを小さくするための分子設計について説明する。
ΔE
STを小さくするためには、原理上分子内の最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)と最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)の空間的な重なりを小さくすることが最も効果的である。
【0094】
一般に分子の電子軌道において、HOMOは電子供与性部位に、LUMOは電子求引性部位に分布することが知られており、分子内に電子供与性と電子求引性の骨格を導入することによって、HOMOとLUMOが存在する位置を遠ざけることが可能である。
【0095】
例えば、「実用化ステージを迎えた有機光エレクトロニクス」応用物理 第82巻、第6号、2013年においては、シアノ基やトリアジンなどの電子求引性の骨格と、カルバゾールやジフェニルアミノ基等の電子供与性の骨格とを導入することで、LUMOとHOMOとをそれぞれ局在化させている。
【0096】
<TADF化合物が抱える一般的な問題>
TADF化合物は、その発光機構及び分子構造の面から種々の問題を抱えている。以下に、一般的にTADF化合物が抱える問題の一部について記載する。
【0097】
TADF化合物においては、ΔE
STを小さくするためにHOMOとLUMOの存在する部位をできるだけ離すことが必要であるが、このため、分子の電子状態はHOMO部位とLUMO部位が分離したドナー/アクセプター型の分子内CT(分子内電荷移動状態)に近い状態となってしまう。
【0098】
このような分子は、複数存在すると一方の分子のドナー部分と他方の分子のアクセプター部分とを近接させると安定化が図られる。そのような安定化状態は2分子間での形成に限らず、3分子間若しくは5分子間など、複数の分子間でも形成が可能であり、結果、広い分布を持った種々の安定化状態が存在することになり、吸収スペクトル及び発光スペクトルの形状は大きく長波長化してブロードとなる。また、2分子を超える多分子集合体を形成しない場合であっても、二つの分子の相互作用する方向や角度などの違いによって様々な存在状態を取り得るため、基本的にはやはり吸収スペクトル及び発光スペクトルの形状はブロードになる。
【0099】
発光スペクトルがブロードになることは大きな問題を発生する。発光色の色純度が低くなってしまう問題である。照明用途に適用する場合にはそれほど大きな問題にはならないが、電子ディスプレイ用途に用いる場合には色再現域が小さくなり、また、純色の色再現性が低くなることから、実際に商品として適用するのは困難になる。
【0100】
これに対して、一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物では、電子供与性基D同士、電子求引性基A同士、又は電子供与性基Dと電子求引性基Aを、非共役原子で連結されている。それにより、分子内エキシプレックス又は分子内エキシマを形成でき、ΔE
STを極小化することができる。
また、一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物は、分子内の近い距離で形成することができ、容易にエキシマ又はエキシプレックスを形成しうるので、従来の分子間エキシマ又はエキシプレックスを形成する化合物とは異なり、強力な電子供与性基Dと電子求引性基Aを必要としない。その結果、一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物は、従来の分子間エキシプレックス又はエキシマを形成する化合物と比べて、発光波長の長波長化を抑制できる。さらに、一般式(1)に示される構造を有する架橋化合物は、非共役原子を含むことから、π共役系が広がりにくいので、π共役系化合物よりも発光波長の長波長化を抑制できる。
【0101】
3.有機EL素子
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該発光層の少なくとも1層が、分子内又は分子間エキシプレックス又は分子内又は分子間エキシマを一種類の分子で形成する、前記一般式(1)で表される構造を有する架橋化合物を含有することを特徴とする。
【0102】
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層//陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
本発明に用いられる発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
【0104】
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
【0105】
本発明に用いられる電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0106】
本発明に用いられる正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
【0107】
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
【0108】
(タンデム構造)
また、本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
【0109】
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
【0110】
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
【0111】
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
【0112】
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO
2、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO
2、CuGaO
2、SrCu
2O
2、LaB
6、RuO
2、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi
2O
3等の2層膜や、SnO
2/Ag/SnO
2、ZnO/Ag/ZnO、Bi
2O
3/Au/Bi
2O
3、TiO
2/TiN/TiO
2、TiO
2/ZrN/TiO
2等の多層膜、またC
60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0113】
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号、米国特許第7420203号、米国特許第7473923号、米国特許第6872472号、米国特許第6107734号、米国特許第6337492号、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号、特許第3496681号、特許第3884564号、特許第4213169号、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0115】
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
【0116】
(発光層)
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に用いられる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
【0117】
発光層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
【0118】
また、本発明に用いられる個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
【0119】
本発明に用いられる発光層は、一層で構成されてもよいし、複数の層から構成されてもよい。上述の架橋化合物を発光層に用いる場合、単独で用いてもよいし、後述のホスト材料、蛍光発光材料、りん光発光材料などと混合して用いてもよい。発光層の少なくとも一層が、発光ドーパント(発光性化合物、発光性ドーパント、単にドーパントともいう。)を含有し、さらにホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、ホスト材料、単にホストともいう。)を含有することが好ましい。本発明においては、発光層の少なくとも一層が、上述の架橋化合物と、ホスト化合物とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。発光層の少なくとも一層が、上述の架橋化合物と、蛍光発光性化合物及びリン光発光性化合物のうち少なくとも1種類とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。発光層の少なくとも一層が、上述の架橋化合物と、蛍光発光性化合物及びリン光発光性化合物のうち少なくとも1種類と、ホスト化合物とを含有すると、発光効率が向上するため好ましい。
【0120】
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、蛍光発光性ドーパント(蛍光発光性化合物、蛍光ドーパントともいう。)と、リン光発光性ドーパント(リン光発光性化合物、リン光ドーパントともいう。)が好ましく用いられる。本発明においては、発光層が、本発明の架橋化合物を発光性化合物又はアシストドーパントとして、0.1〜50質量%の範囲内で含有し、特に、1〜30質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0121】
本発明においては、発光層が発光性化合物を0.1〜50質量%の範囲内で含有し、特に、1〜30質量%の範囲内で含有することが好ましい。
【0122】
発光層中の発光性化合物の濃度については、使用される特定の発光性化合物及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
【0123】
また、本発明で用いられる発光性化合物は、複数種を併用して用いてもよく、構造の異なる蛍光発光性化合物同士の組み合わせや、蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物とを組み合わせて用いてもよい。これにより、任意の発光色を得ることができる。
【0124】
本発明の架橋化合物と、発光性化合物と、ホスト化合物を発光層に含有する場合、当該架橋化合物はアシストドーパントとして作用する。一方、発光層が、本発明の架橋化合物と発光性化合物とを含有し、ホスト化合物を含有しない場合、当該架橋化合物はホスト化合物として作用する。発光層が、本発明の架橋化合物のみを含有する場合、当該架橋化合物はホスト化合物兼発光性化合物として作用する。
【0125】
効果が発現する機構としては、いずれの場合も同様であり、本発明の架橋化合物の最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位の差の絶対値(ΔE
ST)が極小である点にある。
【0126】
これにより、本発明の架橋化合物上に生成した理論上すべての励起子エネルギーを発光性化合物に蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)することができ、高発光効率の発現を可能にする。
【0127】
したがって、発光層が、本発明の架橋化合物、発光性化合物及びホスト化合物の3成分を含有する場合は、当該架橋化合物のS
1とT
1のエネルギー準位は、ホスト化合物のS
1とT
1のエネルギー準位よりも低く、発光性化合物のS
1とT
1のエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
【0128】
同様に、発光層が、本発明の架橋化合物と発光性化合物の2成分を含有する場合は、当該架橋化合物のS
1とT
1のエネルギー準位は、発光性化合物のS
1とT
1のエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
【0129】
図3及び
図4に、本発明の架橋化合物がそれぞれアシストドーパント及びホスト化合物として作用する場合の模式図を示す。
図3及び
図4は一例であって、本発明の架橋化合物上に生成する三重項励起子の生成過程は電界励起のみに限定されず、発光層内又は周辺層界面からのエネルギー移動や電子移動等も含まれる。
【0130】
さらに、
図3及び
図4では、発光材料として蛍光発光性化合物を用いて示しているが、これに限定されず、リン光発光性化合物を用いてもよいし、蛍光発光性化合物とリン光発光性化合物の両者を用いてもよい。
【0131】
本発明の架橋化合物をアシストドーパントとして用いる場合、発光層は、当該架橋化合物に対し質量比で100%以上のホスト化合物を含有し、蛍光発光性化合物及び/又はリン光発光性化合物を当該架橋化合物に対して質量比0.1〜50%の範囲内で含有していることが好ましい。
【0132】
本発明の架橋化合物をホスト化合物として用いる場合、発光層は、蛍光発光性化合物及び/又はリン光発光性化合物を当該架橋化合物に対して質量比0.1〜50%の範囲内で含有することが好ましい。
【0133】
本発明の架橋化合物をアシストドーパント又はホスト化合物として用いる場合、当該架橋化合物の発光スペクトルと発光性化合物の吸収スペクトルが重なることが好ましい。
【0134】
本発明の有機EL素子や本発明に用いられる化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の
図3.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0135】
本発明においては、1層又は複数層の発光層が、発光色の異なる複数の発光ドーパントを含有し、白色発光を示すことも好ましい。
【0136】
白色を示す発光ドーパントの組み合わせについては特に限定はないが、例えば青と橙や、青と緑と赤の組合わせ等が挙げられる。
【0137】
本発明の有機EL素子における白色とは、2度視野角正面輝度を前述の方法により測定した際に、1000cd/m
2でのCIE1931表色系における色度がx=0.39±0.09、y=0.38±0.08の領域内にあることが好ましい。
【0138】
(1.1)蛍光発光性ドーパント
蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント)は、本発明の架橋化合物を用いてもよいし、有機EL素子の発光層に使用される公知の蛍光ドーパントや遅延蛍光性ドーパントの中から適宜選択して用いてもよい。
【0139】
本発明に使用できる公知の蛍光ドーパントの具体例としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、アリールアミン誘導体、ホウ素錯体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、シアニン誘導体、クロコニウム誘導体、スクアリウム誘導体、オキソベンツアントラセン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、ピリリウム誘導体、ペリレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又は希土類錯体系化合物等が挙げられる。また、近年では遅延蛍光を利用した発光ドーパントも開発されており、これらを用いてもよい。遅延蛍光を利用した発光ドーパントの具体例としては、例えば、国際公開第2011/156793号、特開2011−213643号公報、特開2010−93181号公報、特許5366106号等に記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0140】
(1.2)リン光発光性ドーパント
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントについて説明する。
本発明に用いられるリン光発光性ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
【0141】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
【0142】
リン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
【0143】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78,1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号、米国特許第6687266号、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号、米国特許第7396598号、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号、米国特許第7534505号、米国特許第7445855号、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特願2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
【0144】
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
【0145】
(2)ホスト化合物
本発明に用いられるホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物であり、有機EL素子においてそれ自体の発光は実質的に観測されない。
【0146】
ホスト化合物は、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
【0147】
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機エレクトロルミネッセンス素子を高効率化することができる。
【0148】
以下に、本発明において好ましく用いられるホスト化合物について述べる。
【0149】
ホスト化合物としては、本発明の架橋化合物を用いてもよいが、特に制限はない。逆エネルギー移動の観点から、ドーパントの励起一重項エネルギーより大きな励起エネルギーをもつものが好ましく、さらにドーパントの励起三重項エネルギーより大きな励起三重項エネルギーをもつものがより好ましい。
ホスト化合物は、発光層内においてキャリアの輸送及び励起子の生成を担う。そのため、カチオンラジカル状態、アニオンラジカル状態、及び励起状態の全ての活性種の状態において安定に存在でき、分解や付加反応などの化学変化を起こさないこと、さらに、層中において通電経時でホスト分子がオングストロームレベルで移動しないことが好ましい。
【0150】
また、特に併用する発光ドーパントがエキシプレックス発光やエキシマ発光を示す場合には、発光ドーパントの三重項励起状態の存在時間が長いことから、ホスト化合物自体のT
1エネルギー準位が高いこと、さらにホスト化合物同士が会合した状態で低T
1状態を作らないこと、発光ドーパントとホスト化合物とがエキシプレックスを形成しないこと、ホスト化合物が電界によりエレクトロマーを形成しないことなど、ホスト化合物が低T
1化しないような分子構造の適切な設計が必要となる。
【0151】
このような要件を満たすためには、ホスト化合物自体が電子のホッピング移動性が高いこと、かつ、正孔のホッピング移動が高いこと、三重項励起状態となったときの構造変化が小さいことが必要である。このような要件を満たすホスト化合物の代表格としてカルバゾール骨格、アザカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格又はアザジベンゾフラン骨格などの、高T
1エネルギー準位を有するものが好ましく挙げられる。
【0152】
また、ホスト化合物は、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
【0153】
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−2012に準拠した方法により求められる値である。
【0154】
また、本発明に用いられるホスト化合物としては、本発明の架橋化合物を用いることも好適である。本発明の架橋化合物は、高いT
1を有しており、発光波長の短い(すなわちT
1及びS
1のエネルギー準位が高い)発光材料に対しても好適に用いることができるためである。
【0155】
本発明の有機EL素子に公知のホスト化合物を用いる場合、その具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許公開第20030175553号、米国特許公開第20060280965号、米国特許公開第20050112407号、米国特許公開第20090017330号、米国特許公開第20090030202号、米国特許公開第20050238919号、国際公開第2001039234号、国際公開第2009021126号、国際公開第2008056746号、国際公開第2004093207号、国際公開第2005089025号、国際公開第2007063796号、国際公開第2007063754号、国際公開第2004107822号、国際公開第2005030900号、国際公開第2006114966号、国際公開第2009086028号、国際公開第2009003898号、国際公開第2012023947号、特開2008−074939号、特開2007−254297号、EP2034538、国際公開第2011055933号、国際公開第2012035853号、特開2015−38941号等である。特開2015−38941号明細書の段落0255〜0293に記載されている化合物H−1〜H−230や、以下の化合物H−231〜H−234が挙げられる。
【化27】
【0156】
(電子輸送層)
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0157】
本発明に係る電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
【0158】
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
【0159】
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10
−5cm
2/Vs以上であることが好ましい。
【0160】
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0161】
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体等)等が挙げられる。
【0162】
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0163】
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0164】
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0165】
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
【0166】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0167】
米国特許第6528187号、米国特許第7230107号、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
【0168】
本発明におけるより好ましい公知の電子輸送材料としては、少なくとも一つの窒素原子を含む芳香族複素環化合物や、リン原子を含む化合物が挙げられ、例えばピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、アザジベンゾフラン誘導体、アザジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、アリールホスフィンオキサイド誘導体などが挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0169】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0170】
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
【0171】
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0172】
本発明に係る正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0173】
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
【0174】
(電子注入層)
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0175】
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0176】
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な層(膜)であってもよい。
【0177】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、8−ヒドロキシキノリネートリチウム(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
【0178】
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0179】
(正孔輸送層)
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
【0180】
本発明に係る正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
【0181】
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0182】
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
【0183】
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
【0184】
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
【0185】
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0186】
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)3に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
【0187】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
【0188】
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0189】
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、欧州特許第650955号明細書、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0190】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0191】
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る電子阻止層として用いることができる。
【0192】
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
【0193】
本発明に係る電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
【0194】
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物も電子阻止層に好ましく用いられる。
【0195】
(正孔注入層)
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0196】
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記のごとく陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
【0197】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
【0198】
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
【0199】
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
【0200】
(添加物)
前述した本発明における有機層は、更に他の添加物が含まれていてもよい。
添加物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
【0201】
添加物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
【0202】
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
【0203】
(有機層の形成方法)
本発明に係る有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、中間層等)の形成方法について説明する。
【0204】
本発明に係る有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
【0205】
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
【0206】
本発明に用いられる有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
【0207】
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0208】
更に層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10
−6〜10
−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層(膜)厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
本発明に係る有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0209】
(陽極)
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
【0210】
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0211】
あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
【0212】
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
【0213】
(陰極)
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0214】
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることで作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0215】
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0216】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0217】
[支持基板]
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基板、基材等ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0218】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0219】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/m
2・24h以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3ml/m
2・24h・atm以下、水蒸気透過度が、1×10
−5g/m
2・24h以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0220】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0221】
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0222】
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0223】
本発明の有機EL素子の発光の室温(25℃)における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
【0224】
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0225】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
【0226】
[封止]
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
【0227】
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
【0228】
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10
−3ml/m
2・24h以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が、1×10
−3g/m
2・24h以下のものであることが好ましい。
【0229】
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0230】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0231】
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0232】
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
【0233】
さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
【0234】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0235】
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0236】
[保護膜、保護板]
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0237】
[光取り出し向上技術]
有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
【0238】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
【0239】
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
【0240】
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
【0241】
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
【0242】
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。またさらに1.35以下であることが好ましい。
【0243】
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0244】
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間若しくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
【0245】
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
【0246】
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
【0247】
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、若しくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0248】
[集光シート]
本発明の有機EL素子は、支持基板(基板)の光取出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設ける加工や、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
【0249】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
【0250】
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
【0251】
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
【0252】
[用途]
本発明の有機EL素子は、電子機器、例えば、表示装置、ディスプレイ、各種発光装置として用いることができる。
【0253】
発光装置として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【0254】
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
【0255】
4.表示装置
本発明の有機EL素子を具備する表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
【0256】
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法又は印刷法等で膜を形成できる。
【0257】
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法及び印刷法である。
【0258】
表示装置に具備される有機EL素子の構成は、必要に応じて上記の有機EL素子の構成例の中から選択される。
【0259】
また、有機EL素子の製造方法は、上記の本発明の有機EL素子の製造の一態様に示したとおりである。
【0260】
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0261】
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ又は各種発光光源として用いることができる。表示デバイス又はディスプレイにおいて、青、赤及び緑発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
【0262】
表示デバイス又はディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示及び自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
【0263】
発光装置としては、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0264】
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0265】
図5は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
【0266】
ディスプレイ1は複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B、表示部Aと制御部Bとを電気的に接続する配線部C等を有する。
【0267】
制御部Bは表示部Aと配線部Cを介して電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線ごとの画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
【0268】
図6はアクティブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
【0269】
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部Cと複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
【0270】
図6においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
【0271】
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
【0272】
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
【0273】
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
【0274】
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図7は画素の回路を示した概略図である。
【0275】
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサー13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色及び青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
【0276】
図7において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサー13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
【0277】
画像データ信号の伝達により、コンデンサー13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
【0278】
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサー13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
【0279】
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
【0280】
ここで、有機EL素子10の発光は複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。また、コンデンサー13の電位の保持は次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
【0281】
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
【0282】
図8は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
図8において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
【0283】
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
【0284】
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
【0285】
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した表示装置が得られた。
【0286】
5.照明装置
本発明の有機EL素子は、照明装置に用いることもできる。
本発明の有機EL素子は、共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
【0287】
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
【0288】
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、パッシブマトリクス方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
【0289】
また、本発明の架橋化合物は、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子を具備する照明装置に適用できる。例えば、複数の発光材料を用いる場合、複数の発光色を同時に発光させて、混色することで白色発光を得ることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色及び青色の3原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
【0290】
また、本発明の有機EL素子の形成方法は、発光層、正孔輸送層あるいは電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよい。他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法及び印刷法等で、例えば、電極膜を形成でき、生産性も向上する。
【0291】
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が白色発光である。
【0292】
[本発明の照明装置の一態様]
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
【0293】
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、
図9及び
図10に示すような照明装置を形成することができる。
【0294】
図9は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子(照明装置内の有機EL素子101)はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、照明装置内の有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。)。
【0295】
図10は、照明装置の断面図を示し、105は陰極、106は有機層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
【0296】
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した照明装置が得られる。
【0297】
6.発光性薄膜
本発明に係る発光性薄膜は、本発明の架橋化合物を含有することを特徴とし、前記有機層の形成方法と同様に作製することができる。
【0298】
本発明の発光性薄膜及は、前記有機層の形成方法と同様に作製することができる。
【0299】
本発明の発光性薄膜の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
【0300】
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
【0301】
本発明に用いられる発光材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
【0302】
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
【0303】
更に層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度を50〜450℃の範囲内、真空度を10
−6〜10
−2Paの範囲内、蒸着速度0.01〜50nm/秒の範囲内、基板温度−50〜300℃の範囲内、層厚0.1nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
また、成膜にスピンコート法を採用する場合、スピンコーターを100〜1000rpmの範囲内、10〜120秒の範囲内で、乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0304】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0305】
実施例及び比較例で用いた化合物を以下に示す。
【0306】
(架橋化合物T-2の合成)
国際公開2014/022008号に記載の方法に従って、2−(9H−カルバゾリル−9−イル)フェノールを得た。次に、2−(9H−カルバゾリル−9−イル)フェノール、東京化成製の2−クロロ―4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、炭酸カリウム、N−メチルピロリドンを混合して、100℃で10時間加熱撹拌することによって、架橋化合物T-2の粗精製物を得た。その後、カラムクロマトグラフィー、再結晶、昇華精製を行って、架橋化合物T-2の高純度品を取得した。
【0307】
(その他の架橋化合物の合成)
前述と同様にして、架橋化合物T-1、T−5、T-13、T-15、T-21、T-24、T-30、T-34、T-35、T-38、T-40、T-43、T-45、T-56、T-67、T-85、T-87、T-96、T-97、T-100、T-101、T-102、T-103、T-104、T-105、T-106、T-114、T-124〜T-127、T−129、T−135、T−138、T−144、T−146、T−154、T−156、T−159、T−160、T−167、T−177、T−189、T−191、T−194、T−197、T−198及びT−200を合成した。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0308】
[実施例1]
(有機EL素子1−1の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った。その後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0309】
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、HAT−CN(1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入輸送層を形成した。
【0310】
次いで、α−NPD(4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)を蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔注入層上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送層を形成した。
【0311】
次いで、ホスト化合物としてH−232、発光性化合物として比較化合物1を、それぞれ94%、6%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
【0312】
その後、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0313】
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
【0314】
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子1−1を作製した。
【0315】
(有機EL素子1−2〜1−38の作製)
ホスト化合物と発光性化合物を表1に示すように変えた以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子1−2〜1−38を作製した。
【0316】
得られた有機EL素子1−1〜1−38の駆動時の各サンプルの発光効率を、下記測定を行うことにより評価した。
【0317】
(相対発光効率の測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cm
2の定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
表1に、得られた発光輝度の相対値(実施例1では有機EL素子1-1の発光輝度に対する相対値)を示した。
【表1】
【0318】
[実施例2]
(有機EL素子2−1の作製)
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った。その後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0319】
この透明支持基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を用いて3000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により薄膜を形成した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚20nmの正孔注入層を設けた。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0320】
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、α−NPDを蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔注入層上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送層を形成した。
【0321】
次いで、ホスト化合物としてH−234、発光性化合物として2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBPe)が、それぞれ97%、3%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
【0322】
その後、TPBi(1,3,5−トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
【0323】
さらに、フッ化ナトリウムを膜厚1nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
【0324】
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子2−1を作製した。
【0325】
(有機EL素子2−2の作製)
ホスト化合物としてH−234、発光性化合物として2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、第三成分として比較化合物1を用い、それぞれの比率が82%、3%、15%の体積%となるように発光層を形成した以外は有機EL素子2−1の作製と同様にして、有機EL素子2−2を作製した。
【0326】
(有機EL素子2−3〜2−6の作製)
第三成分を表2に示すように変えた以外は有機EL素子2−2と同様の方法で有機EL素子2−3〜2−6を作製した。
【0327】
得られた有機EL素子2−1〜2−6の駆動時の各サンプルの発光効率を、実施例1と同様の方法で評価した。表2に、得られた発光輝度の相対値(実施例2では有機EL素子2-1の発光輝度に対する相対値)を示した。
【表2】
【0328】
[実施例3]
(有機EL素子3−1の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った。その後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0329】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0330】
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、HAT−CNの入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚15nmの正孔注入層を形成した。
【0331】
次いで、α−NPD(4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0332】
次いで、ホスト化合物として比較化合物1と発光性化合物としてGD−1とが入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚40nmの発光層を形成した。
【0333】
次いで、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの第一電子輸送層を形成した。
【0334】
さらにその上に、ET―1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの第二電子輸送層を形成した。
【0335】
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子3−1を作製した。
【0336】
(有機EL素子3−2〜3−40の作製)
ホスト化合物を表3に示すように変えた以外は有機EL素子3−1と同様の方法で有機EL素子3−2〜3−40を作製した。
【0337】
得られた有機EL素子3−1〜3−40の駆動時の各サンプルの発光効率を、実施例1と同様の方法で評価した。表3に、得られた発光輝度の相対値(実施例3では有機EL素子3−1の発光輝度に対する相対値)を示した。
【表3】
【0338】
[実施例4]
(有機EL素子4−1の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った。その後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0339】
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。前記抵抗加熱ボートはモリブデン製又はタングステン製を用いた。
【0340】
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、α−NPD(4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚30nmの正孔注入層を形成した。
【0341】
次いで、TCTA(トリス(4−カルバゾイル−9−イルフェニル)アミン)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚20nmの第一正孔輸送層を形成した。
【0342】
さらに、H−233を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚10nmの第二正孔輸送層を形成した。
【0343】
次いで、ホスト化合物として比較化合物1と、発光性化合物としてTBPe(2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン)とが入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着し、層厚20nmの発光層を形成した。
【0344】
次いで、H−232を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚10nmの第一電子輸送層を形成した。
【0345】
さらにその上に、TBPi(1,3,5−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30mの第二電子輸送層を形成した。
【0346】
その後、フッ化リチウムを厚さ0.5nmになるよう蒸着した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子4−1を作製した。
【0347】
(有機EL素子4−2〜4−24の作製)
ホスト化合物を表4に示すように変えた以外は有機EL素子4−1と同様の方法で有機EL素子4−2から4−24を作製した。
【0348】
得られた有機EL素子4−1〜4−24の駆動時の各サンプルの発光効率を、実施例1と同様の方法で評価した。
表4に、得られた発光輝度の相対値(実施例4では有機EL素子4-1の発光輝度に対する相対値)を示した。
【表4】
【0349】
素子1〜4において、いずれの場合も、比較化合物より本発明の架橋化合物の方が高い発光効率を示した。
【0350】
また、表1の化合物T−38とT−124との対比から、一般式(6)において、電子求引性基Aが平面性の高い基である化合物T−124のほうが、電子求引性基Aが平面性の低い基である化合物T−38よりも、素子の発光効率を高めうることが示される。
また、表1の化合物T−1とT−125との対比から、一般式(2)において、電子供与性基Dが平面性の高い基である化合物T−1のほうが、電子供与性基Dが平面性の低い基である化合物T−125よりも、素子の発光効率を高めうることが示される。
【0351】
また、表1の化合物T−97とT−114との対比から、一般式(2)において、LとMが同一の基である化合物T−114のほうが、LとMが同一の基ではない化合物T−97よりも、素子の発光効率を高めうることが示される。
【0352】
また、表1、3及び4の化合物T−2とT−85又はT−87との対比から、一般式(1)において形成される環が1つだけあるほうが、環が2つあるよりも、素子の発光効率を高めうることが示される。
【0353】
また、表1、3及び4の化合物T−15とT−34の対比から、一般式(2)の構造を有する架橋化合物(n=1)のほうが、一般式(4)の構造を有する架橋化合物(n=2)よりも素子の発光効率を高めうることが示される。
また、表1の化合物T−35とT−127の対比から、一般式(5)の構造を有する化合物T−35(n=3)のほうが、一般式(4)の構造を有する化合物T−127(n=2)よりも素子の発光効率を高めうることが示される。
【0354】
また、表1の化合物T−21とT−126の対比から、一般式(2)の構造を有する化合物T−21のほうが、一般式(8)の構造を有する化合物T−126よりも素子の発光効率を高めうることが示される。
【0355】
[実施例5]
(溶液5−1の調製)
架橋化合物T−106を2−メチル−テトラヒドロフランに溶解し、10
−5Mの溶液5−1を調製した。
【0356】
(溶液5−1の発光スペクトル測定)
溶液5−1を測定用セルに入れ、窒素バブリング後にセルの蓋をして、発光スペクトル測定装置(日立製作所社製 F−7000)を用いて280nmの励起光を照射して、発光スペクトル測定を行った。
【0357】
(溶液5−2の調製)
比較化合物5と比較化合物6を1:2のモル比で混合して2−メチル−テトラヒドロフランに溶解し、比較化合物5が10
−5M、比較化合物6が2×10
−5Mとなる溶液5−2を調製した。
【0358】
(溶液5−2の発光スペクトル測定)
溶液5−1の発光スペクトル測定と同じ方法で、溶液5−2の発光スペクトルを測定した。
【0359】
得られた発光スペクトルの結果を
図11に示す。
【0360】
図11に示されるように、溶液5−1の発光スペクトルは、溶液5−2の発光スペクトルとは全く異なる発光スペクトルであることが分かった。この結果は、溶液5−1の含有成分である架橋化合物T−106は、分子内で電子供与性基Dと電子求引性基Aが、非共役原子で架橋されているために、分子内エキシプレックスを形成できたことを示している。
【0361】
これに対して比較化合物1〜4は、いずれも電子供与性基Dと電子求引性基A、或いは電子供与性基D同士(又は電子求引性基A同士)が、本願の非共役原子で架橋されておらず、π電子雲が互いに重なり合う位置にないため、分子内エキシプレックス又は分子内エキシマを形成しないことは明らかである。さらに、比較化合物5及び6は分子量が小さすぎるため、薄膜形成が不可能であり、素子の作製自体が困難であることも明らかである。
【0362】
[実施例6]
(溶液6−1の調整)
架橋化合物T−144を用いた以外は実施例5と同様の方法で溶液を調製した。
【0363】
(溶液6−1の発光スペクトル測定)
溶液6−1を用いた以外は実施例5と同様の方法で発光スペクトル測定を行った。
【0364】
(単膜6−2の作製)
石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用の抵抗加熱ボートに、架橋化合物T−144を、単膜作製に最適の量を充填した。抵抗加熱ボートは、モリブデン製を用いた。
真空度1×10
−4Paまで減圧した後、架橋化合物T−144の入った抵抗加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で石英基板上に蒸着し、層厚30nmの単膜6−2を形成した。
【0365】
(単膜6−2の発光スペクトル測定)
単膜6−2を用いた以外は溶液6−1と同様の方法で発光スペクトル測定を行った。
【0366】
得られた発光スペクトルの結果を
図12に示す。
【0367】
図12に示されるように、単膜6−2の発光スペクトルは、溶液6−1の発光スペクトルとは全く異なる発光スペクトルであることが分かった。この結果は、架橋化合物T−144は、分子間でエキシプレックスを形成できたことを示している。
【0368】
本出願は、2015年12月28日出願の特願2015−256982に基づく優先権を主張する。当該出願明細書及び図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。