特許第6873050号(P6873050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873050光取り出し特徴構造物を含むガラス物品およびその製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873050
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】光取り出し特徴構造物を含むガラス物品およびその製作方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20210510BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20210510BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20210510BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20210510BHJP
【FI】
   G02B3/00 A
   G02B5/02 C
   F21V8/00 355
   F21V8/00 100
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-559522(P2017-559522)
(86)(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公表番号】特表2018-522264(P2018-522264A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】US2016031960
(87)【国際公開番号】WO2016186935
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】62/162,252
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,ブライアン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ゴリエ,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィチャンドラン,ヴァシューダ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルコット,クリスティン コールター
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−037882(JP,A)
【文献】 特開平10−123329(JP,A)
【文献】 特開2001−052519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 − 1/08
G02B 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面、および、反対を向いた第2の表面を有するガラス物品において、
前記第1の表面は、少なくとも10マイクロメートルの直径、および、1マイクロメートル以上5マイクロメートル未満の高さを有する凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むものであり、RMS粗さが少なくとも0.07マイクロメートルである、ガラス物品。
【請求項2】
前記光取り出し特徴構造物の直径が、10マイクロメートルから700マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
前記光取り出し特徴構造物同士の間の距離が、5マイクロメートルから2mmの範囲である、請求項1または2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス物品の厚さが、0.3mmから3mmの範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項5】
前記光取り出し特徴構造物の前記高さ、前記直径、直径対高さの比、および、幾何学形状の任意の1つ、または、組合せが、前記第1の表面上の位置の関数として変化するものである、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス物品を含む、表示装置または照明器具。
【請求項7】
ガラス物品の製作方法において、
ガラス基板の第1の表面上にインクを積層して、被覆された表面部分、および、被覆されていない表面部分のアレイを形成する工程と、
前記被覆されていない表面部分をエッチングして、少なくとも10マイクロメートルの直径、および、1マイクロメートル以上5マイクロメートル未満の高さを有する凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含み、RMS粗さが少なくとも0.07マイクロメートルである第1の表面を有するガラス物品を形成する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
前記被覆された表面部分が、前記被覆されていない表面部分によって囲まれた、不連続のインク特徴構造物を含み、
前記被覆されていない表面部分が、前記被覆された表面部分によって囲まれた、不連続の特徴構造物表面部分を含むものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光取り出し特徴構造物の直径が、10マイクロメートルから30マイクロメートルの範囲である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記光取り出し特徴構造物同士の間の距離が、5マイクロメートルから50マイクロメートルの範囲である、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光取り出し特徴構造物の前記高さ、前記直径、直径対高さの比、および、幾何学形状の任意の1つ、または、組合せが、前記第1の表面上の位置の関数として変化するものである、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エッチング工程が、前記ガラス基板を、少なくとも1つのエッチング剤と接触させる処理を含み、
前記方法が、
前記エッチング工程後に、前記ガラス基板を洗浄して、前記第1の表面から前記インクを除去する工程を、
更に含む、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2015年5月15日出願の米国仮特許出願第62/162,252号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラス物品、および、そのような物品を備えた表示装置に関し、特に、色ずれを削減する光取り出し特徴構造物を含むガラス物品、および、その製作方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置(LCD)が、携帯電話、ラップトップコンピュータ、電子タブレット、テレビ、および、コンピュータモニタなどの様々な電子機器で一般に使われている。より大きく高解像度のフラットパネル表示部への要求が高まり、表示部で使用するための大型の高品質ガラス基板が必要となっている。例えば、ガラス基板を、LCD内の光導波板(LGP)として使用して、そこに光源を接続してもよい。より薄型の表示部用の一般的なLCDの構成は、光導波板の縁部に光学的に接続された光源を含む。光が光導波板の長さに沿って進むにつれて光を散乱させるために、光導波板の1つ以上の表面上に、光取り出し特徴構造物が設けられることが多く、それによって、光の一部が光導波路から漏れて、見る人の方へ投射される。光導波路の長さに沿って散乱する光の均一性を高めて、より高品質の投射画像を生成しようと、そのような光取り出し特徴構造物の設計が研究されてきた。
【0004】
現在、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、または、メチルメタクリレートスチレン(MS)などの高い透過性を有するプラスチック材料から、光導波板を構成しうる。しかしながら、それらは機械的強度が比較的低いので、PMMAまたはMSから、消費者の要求を満たすように十分に大きく、かつ、薄い光導波路を製作するのは難しいということがありうる。ガラスの光導波路は、低い光減衰性、低い熱膨張係数、および、高い機械的強度を有するので、プラスチックの光導波路の代わりとして提案されてきた。
【0005】
プラスチック材料上に光取り出し特徴構造物を設ける方法は、例えば、約0.1mm未満の直径を有する特徴構造物を生成するための射出成形およびレーザ損傷を含む。これらの技術は、プラスチックの光導波路については、よく働きうるが、射出成形はガラスの光導波路には適合せず、更に、レーザ露光はガラスの信頼度と両立せず、例えば、欠け、ひびの広がり、および/または、シートの破断を促進させうる。
【0006】
ガラスの光導波路に光取り出し特徴構造物を加える他の方法は、スクリーン印刷、または、インクジェット印刷などの印刷技術を含みうる。しかしながら、ガラス上に光取り出し特徴構造物を印刷することは、他の問題を提起しうる。具体的には、インクジェット印刷は、UV‐B光またはUV‐C光を用いてインクを硬化する工程を含み、その工程は、ガラスのソラリゼーションを生じて、結果的に、ガラスによる吸収、および/または、色ずれを生じうる。同様に、スクリーン印刷は、例えば、IR硬化のように、熱でインクを硬化する硬化工程を含む。熱硬化は、ソラリゼーションによって生じる問題を排除するかもしれないが、IR硬化性インクも、ガラスの光導波路について、重大な色ずれ(例えば、65インチ(165cm)の対角線寸法の表示パネルについて、CIE色度図で、少なくとも0.02から0.03のdy)を生じうる。更に、インクジェットおよびスクリーン印刷方法は、結果的に、高周波ノイズ(「ムラ」)などの画像アーチファクトを生じるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記の欠点に取り組む表示装置について、光導波板などのガラス物品、例えば、高画質および低い色ずれを実現する光取り出し特徴構造物を有するガラスの光導波板を提供することは、利点があるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
様々な実施形態において、本開示は、第1の表面、および、反対を向いた第2の表面を有し、第1の表面が、少なくとも約10マイクロメートルの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含むものである、ガラス物品に関する。
【0009】
そのようなガラス物品の製作方法も開示し、方法は、ガラス基板の第1の表面上にインクを積層して、被覆された表面部分、および、被覆されていない表面部分のアレイを形成する工程を含む。次に、被覆されていない表面部分をエッチングして、少なくとも約10マイクロメートルの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含む、第1の表面を有するガラス物品を形成しうる。
【0010】
第1の実施形態において、第1の表面にインクを積層して不連続のインク特徴構造物のアレイを形成することによって、実質的に凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを形成しうるものであり、各不連続のインク特徴構造物は、被覆されていない表面部分によって囲まれている。第2の実施形態において、第1の表面にインクを積層して不連続の被覆されていない表面部分のアレイを形成することによって、実質的に凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを形成しうるものであり、各不連続の被覆されていない表面部分は、被覆された表面部分によって囲まれている。
【0011】
本開示の更なる特徴および利点は、次の詳細な記載に示されると共に、部分的には、当業者には、その記載から容易に明らかであるか、または、添付の図面に加えて、次の詳細な記載および請求項を含む本明細書に記載された方法を行うことにより、分かるだろう。
【0012】
上記概略的な記載および次の詳細な記載の両方が、本開示の様々な実施形態を示し、請求項の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると、理解されるべきである。添付の図面は、本開示の更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を示し、記載と共に、本開示の原理および動作を説明する役割を果たす。
【0013】
類似した構成要素を参照するのに、類似した番号を可能な限り用いた添付の図面と共に読むことで、以下の詳細な記載は、更に理解しうるものであり、添付の図面は、必ずしも縮尺通りではないと理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施形態による、光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品を示す。
図2】本開示のある実施形態による、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の断面図を示す。
図3】本開示の他の実施形態による、凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の断面図を示す。
図4】RMS表面粗さの関数として、青/赤の散乱効率比のプロットを示す。
図5A】本開示の実施形態による、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の製造方法を示す。
図5B】本開示の実施形態による、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の製造方法を示す。
図6】高周波テクスチャを有するガラス基板の表面を示す。
図7A】ガラス物品への様々な付着性を有するインクを用いて形成した、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品を示す。
図7B】ガラス物品への様々な付着性を有するインクを用いて形成した、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品を示す。
図7C】ガラス物品への様々な付着性を有するインクを用いて形成した、凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品を示す。
図8A】凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の製造方法を示す。
図8B】凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ガラス物品
本明細書は、第1の表面、および、反対を向いた第2の表面を有するガラス物品を開示し、第1の表面は、少なくとも約10マイクロメートルの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含んでいる。
【0016】
本明細書において、「凸状」という用語は、表面が、ガラス物品の表面から外側に湾曲した、または、外側に延伸した、例えば、半球状、または、半楕円体状などの光取り出し特徴構造物を表すことを意図する。光取り出し特徴構造物は、ガラス物品の表面上に配置された丸まったドームと考えうるものであり、その寸法は、完全に丸まった、半球状、または、半楕円体状でもある必要はない。
【0017】
本明細書において、「凹状」という用語は、表面が、ガラス物品のその周囲の表面より下側に湾曲した、例えば、半球状または半楕円体状形状の光取り出し特徴構造物を表すことを意図する。光取り出し特徴構造物は、ガラス物品の表面上に配置された丸まった窪みと考えうるものであり、その寸法は、完全に丸まった、半球状、または、半楕円体状でもある必要はない。
【0018】
ガラス物品は、表示装置または同様の装置での使用が当技術分野で周知の任意の材料を含んでもよく、それは、アルミノケイ酸塩、アルカリ‐アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリ‐ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、アルカリ‐アルミノホウケイ酸塩、ソーダライム、および、他の適切なガラスを含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、ガラス物品は、例えば、約0.3mmから約2mmの範囲、約0.7mmから約1.5mmの範囲、または、約1.5mmから約2.5mmの範囲などの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約3mm以下の厚さを有するガラスシートを含んでもよい。制限するものではないが、光導波板としての使用に適した市販ガラスの例は、例えば、コーニング社のEAGLE XG(登録商標)、Iris(商標)、Lotus(商標)、Willow(登録商標)、および、Gorilla(登録商標)ガラスを含む。
【0019】
ガラス物品は、第1の表面、および、反対を向いた第2の表面を有してもよい。ある実施形態において、表面は、平面、または、例えば、実質的に平ら、および/または、平坦など、実質的に平面であってもよい。様々な実施形態において、第1および第2の表面は、平行、または、実質的に平行であってもよい。ガラス物品は、例えば、少なくとも2つの側縁部、少なくとも3つの側縁部、または、少なくとも4つの側縁部など、少なくとも1つの側縁部を更に含んでもよい。制限するものではないが、例として、ガラス物品は、4つの縁部を有する矩形または正方形のガラスシートを含んでもよいが、他の形状および構成も考えうるものであり、それらを、本開示の範囲に含むことを意図する。
【0020】
図1に示すように、ガラス物品100(例えば、ガラスの光導波板)は、第1の表面101、反対を向いた第2の表面102、および、それらの間に延伸する厚さtを有しうるものであり、第1の表面は、直径d、および、各光取り出し特徴構造物の間の間隔xを有する、光取り出し特徴構造物103のアレイを含む。上記のように、ガラス物品の厚さtは、約0.3mmから約3mmの範囲でありうる。図1は、ガラス物品の第1の表面101を、光取り出し特徴構造物のアレイを含むものとして示しているが、更に詳細に以下に記載するように、第2の表面102が、同様に、光取り出し特徴構造物のアレイを含みうるか、または、両方の表面が、任意の形状および/または向きを独立に有しうる、そのような特徴構造物を含みうると理解されるべきである。
【0021】
ある実施形態において、光取り出し特徴構造物のアレイ103を、1つ以上の行または列などのパターンで配列しうる。図1は、3列で6行に配列された、18個の光取り出し特徴構造物を示しているが、任意の数の行、列、または、光取り出し特徴構造物が可能であり、考えうるものである。光取り出し特徴構造物の行および列の使用を示したが、制限することを意図したものではなく、アレイは、ガラス物品の表面上に存在する光取り出し特徴構造物を、例えば、ランダムか、または、配列か、若しくは、繰返しか、または、非繰返しか、若しくは、対称か、または、非対称かなど、任意の所定のパターンで含んでもよい。確かに、他の配列を提供しうるものであり、それを、本開示の範囲に含むことを意図している。
【0022】
ある実施形態において、光取り出し特徴構造物は、少なくとも約10マイクロメートルの直径dを有しうる。直径dの範囲は、例えば、約15マイクロメートルから約600マイクロメートル、約20マイクロメートルから約500マイクロメートル、約25マイクロメートルから約400マイクロメートル、約30マイクロメートルから約300マイクロメートル、約40マイクロメートルから約200マイクロメートル、または、約50マイクロメートルから約100マイクロメートルなどの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約10マイクロメートルから約700マイクロメートルの範囲でありうる。様々な実施形態によれば、各光取り出し特徴構造物の直径dは、アレイ内の他の光取り出し特徴構造物の直径dと同一か、または、異なっていてもよい。
【0023】
光取り出し特徴構造物同士の間の距離は、2つの隣接した光取り出し特徴構造物103の中心間の距離xとして、定義しうる。いくつかの実施形態において、距離xは、約10マイクロメートルから約1.5mm、約20マイクロメートルから約1mm、約30マイクロメートルから約0.5mm、または、約50マイクロメートルから約0.1mmなどの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約5マイクロメートルから約2mmの範囲でありうる。各光取り出し特徴構造物の間の距離xは、アレイ内で異なりうるものであり、異なる取り出し特徴構造物が、様々な距離xで、互いに間隔をあけていてもよいと、理解されるべきである。
【0024】
様々な実施形態によれば、図2および3に示すように、光取り出し特徴構造物のアレイは、実質的に凸状または凹状でありうる複数の光取り出し特徴構造物を含みうる。図2は、ガラス物品100の第1の表面101から外側に延伸する凸状の光取り出し特徴構造物103aを含む、ガラス物品100の断面図を示す。凸状の光取り出し特徴構造物103aを半球状に示しているが、完全に丸まった、半球状、または、半楕円体状でもある必要はなく、本明細書で定義したような、任意の凸状形状を有しうる。例えば、光取り出し特徴構造物103aは、楕円体、放物体、双曲体、円錐台、または、任意の他の適切な幾何学形状であってもよく、任意のこれらの特徴構造物が、ランダムか、または、配列されているか、若しくは、繰返しか、または、非繰返しか、若しくは、対称か、または、非対称かであってもよい。いくつかの実施形態において、ガラス物品100のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103aは、第1の幾何学形状を有し、一方、ガラス物品100の他の部分上の光取り出し特徴構造物103aは、第2の幾何学形状を有してもよい。例えば、ガラス物品100(光導波板など)の縁部に隣接または近接した、若しくは、(不図示の)光源から受光する部分に隣接または近接した、ガラス物品100のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103aは、第1の幾何学形状を有し、ガラス物品100の中心に近接した、または、光源から所定の距離の光取り出し特徴構造物103aは、第2の幾何学形状を有してもよい。
【0025】
凸状の光取り出し特徴構造物は、高さhおよび直径dを有する。上記のように、直径dは、例えば、約10マイクロメートルから約700マイクロメートルの範囲など、少なくとも約10マイクロメートルでありうる。凸状の光取り出し特徴構造物も、第1の表面から光取り出し特徴構造物の頂点a(または、最高点)までの距離として測定した高さhを有しうる。様々な実施形態において、高さhは、約2マイクロメートルから約9マイクロメートル、約3マイクロメートルから約8マイクロメートル、約4マイクロメートルから約7マイクロメートル、または、約5マイクロメートルから約6マイクロメートルなどの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲でありうる。更なる実施形態によれば、d:hの比は、少なくとも約1:1でありうる。いくつかの実施形態において、d:hの比は、約2:1から約400:1、約3:1から約300:1、約4:1から約200:1、約5:1から約100:1、または、約10:1から約50:1などの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約1:1から約500:1の範囲でありうる。凸状の光取り出し特徴構造物は、頂点aを有し、光取り出し特徴構造物同士の間の距離xは、2つの隣接した凸状の光取り出し特徴構造物103aの頂点間の距離として、定義しうる。上記のように、距離xは、約5マイクロメートルから約2mmの範囲でありうる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ガラス物品100(例えば、ガラスの光導波板)のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103aは、高さ、または、d:hの比を有し、一方、ガラス物品100の他の部分上の光取り出し特徴構造物103aは、第2の高さ、または、d:hの比を有してもよい。例えば、ガラス物品100(光導波板など)の縁部に隣接または近接した、若しくは、(不図示の)光源から受光する部分に隣接または近接した、ガラス物品100のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103aは、第1の高さ、または、d:hの比を有し、ガラス物品100の中心に近接した、または、光源から所定の距離の光取り出し特徴構造物103aは、第2の高さ、または、d:hの比を有してもよい。他の実施形態において、光取り出し特徴構造物103aの高さ、比、および/または、幾何学形状は、ガラス物品100の表面上の位置の関数として変化してもよい。
【0027】
図3は、ガラス物品100の第1の表面101から内側に延伸する凹状の光取り出し特徴構造物103bを含むガラス物品100の断面図を示す。凹状の光取り出し特徴構造物103bを半球状に示しているが、完全に丸まった、半球状、または、半楕円体状でもある必要はなく、本明細書で定義したような、任意の凹状形状を有しうる。確かに、光取り出し特徴構造物103bも、凹状の楕円体、放物体、双曲体、円錐台、または、任意の他の適切な幾何学形状であってもよく、任意のこれらの特徴構造物が、ランダムか、または、配列されているか、若しくは、繰返しか、または、非繰返しか、若しくは、対称か、または、非対称かであってもよい。凹状の光取り出し特徴構造物103bは、第1の表面から光取り出し特徴構造物の頂点a(または、最低点)までの距離として測定した高さ(または、深さ)h、および、直径dを有し、それらは、図2の凸状の光取り出し特徴構造物103aについて記載した上記のものと同様である。同様に、光取り出し特徴構造物同士の間の距離xは、2つの隣接した凹状の光取り出し特徴構造物の頂点間の距離として測定しうるものであり、図2について記載した値と同様の値を有しうる。
【0028】
図2について記載したのと同様に、ガラス物品100(例えば、ガラスの光導波板)のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103bは、高さh、または、d:hの比を有し、一方、ガラス物品100の他の部分上の光取り出し特徴構造物103bは、第2の高さ、または、d:hの比を有してもよい。更に、ガラス物品100のいくつかの部分上の光取り出し特徴構造物103bは、第1の幾何学形状を有し、一方、ガラス物品100の他の部分上の光取り出し特徴構造物103bは、第2の幾何学形状を有してもよい。したがって、例示的な実施形態において、光取り出し特徴構造物103bの高さ(深さ)、比、および/または、幾何学形状は、ガラス物品100(ガラスの光導波板など)の表面上の位置の関数として変化してもよい。
【0029】
制限するものではないが、様々な実施形態において、光取り出し特徴構造物の直径d、および/または、高さhは、凸状か凹状に関わらず、波長に依存した散乱、および/または、色ずれを最小にするように選択しうる。例えば、散乱すべき光(例えば、可視光)の最も長い波長より大きな直径および高さ(または、深さ)を有する光取り出し特徴構造物を備えることによって、ガラス物品の表面上の高周波テクスチャを削減または排除しうる。本明細書において、「高周波テクスチャ」という用語は、ガラス物品の表面上に、約5マイクロメートル以下(例えば、約5、4、3、2、または、1マイクロメートル以下)の直径、および、例えば、可視領域内の光の波長未満(400〜700nmまで)の深さ、または、高さなど、約0.7マイクロメートル未満の浅い深さ、または、高さを有する小さな特徴構造物を含むことを意図する。
【0030】
高周波テクスチャは、細かい(例えば、小さくて浅い)粗さを有する表面を生成し、それは、選択的、または、波長に依存した光散乱を生じうるものであり、結果的に、色ずれを引き起こしうる。例えば、散乱は、波長の関数でありうるものであり、散乱効率は、青の(より短い)波長(400〜500nmまで)で、赤の(より長い)波長(600〜700nmまで)より高いということがありうる。散乱すべき光の波長より大きい粗さを有するランダムな表面について、フ―リエ光学を用いて以下の公式を使って、回折効率を計算しうる。
【0031】
Eff=1−exp(−(2πδΔn/λ))、
但し、Effは、散乱効率(反射せずに散乱した光の%)、δは、RMS粗さの値、Δnは、屈折率差(n=1.5の反射モードの光導波板の場合には、約3)、更に、λは、波長である。この公式を使って、青(440nmまで)の波長での散乱効率と赤(640nmまで)の波長での散乱効率との比を計算しうる。
【0032】
図4は、青/赤の散乱効率比を、RMS粗さの関数として、グラフで示している。グラフによれば、色ずれを無視しうる程度にするには、ガラス表面のRMS粗さは、少なくとも約0.07マイクロメートルであるべきである。しかしながら、散乱すべき光の波長より小さな大きさを有する光取り出し特徴構造物が採用された場合には、波長依存性が高いということがありうるレイリー散乱、または、ミー散乱などの他の散乱モードに直面することになる(例えば、レイリー散乱効率は、波長の4乗に反比例する)。したがって、本明細書において開示した様々な実施形態による光取り出し特徴構造物は、ガラス物品の表面上の高周波テクスチャを削減または排除するのに十分な高さhおよび直径dを有するように構成しうるものであり、それによって、望ましくない色ずれを削減または排除しうる。いくつかの実施形態において、本明細書において開示した、光導波板などのガラス物品は、65インチ(165cm)の対角線寸法の表示パネルについて、CIE色度図で、約0.01未満の色ずれdyを生成しうる。
【0033】
方法
本明細書において、ガラス物品または光導波板の製作方法を開示し、方法は、ガラス基板の第1の表面に、インクを積層して、被覆された表面部分、および、被覆されていない表面部分のアレイを形成する工程と、被覆されていない表面部分をエッチングして、少なくとも約10マイクロメートの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含む、ガラス物品を形成する工程を含む。ここで、図5A‐Bを参照して、図2に示した凸状の光取り出し特徴構造物を含むガラス物品の第1の製造方法を記載する。
【0034】
図5Aを参照すると、第1の表面201、および、反対を向いた第2の表面202を有するガラス基板200を用意しうる。ある実施形態において、ガラス基板200に、清浄工程を、行って、ガラス基板200から、分子有機汚染物質などの表面汚染物質を除去しうる。いくつかの実施形態において、清浄工程は、いくつかの例を挙げれば、Parker 225などの洗浄剤、SC−1、オゾン、および/または、酸素プラズマなどを用いて行いうる。いくつかの実施形態において、ガラス基板を清浄して、分子有機汚染物質を除去する工程は、後続のインク処理工程で塗布されるインクの浸潤度を高めうる。
【0035】
図5Aに示すように、ガラス基板200の第1の表面201上にインクを積層して、不連続のインクの特徴構造物205のアレイを提供しうる。本明細書において、「不連続の」インクの特徴構造物という用語は、ガラス基板に塗布されたインクが、互いに接触せずに、別々の、または、間隔をあけたインクで覆われた部分のアレイを含みうることを表すことを意図する。様々な実施形態によれば、不連続のインクの特徴構造物の配置は、凸状の光取り出し特徴構造物の配置と実質的に対応しうる。インクジェットおよびスクリーン印刷処理を含むが、それらに限定されない任意の既知の方法を用いて、ガラス基板に、インクを塗布してもよい。インクは、下記のエッチング処理に対する十分な耐性を有すると共に、ガラス基板への十分な付着性を示す、当技術分野で周知の任意のインクを含んでもよい。例えば、適切なインクは、チタン、ジルコニア、セリア、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、サファイア、ダイアモンド、ヒ化ガリウム、酸化ゲルマニウム、および、それらの組合せから選択された無機材料、または、適切な有機材料を含みうるものであり、それらに限定されない。
【0036】
ある実施形態において、不連続のインクの特徴構造物は、例えば、円形または楕円形など、丸まった形状を有するが、寸法は、完全な円形でも、完全な楕円形でもある必要はない。丸まった不連続のインクの特徴構造物は、約10マイクロメートルから約700マイクロメートル、または、図1から3を参照して記載した任意の他の範囲または部分範囲を含む、少なくとも約10マイクロメートルの直径dを実現するのに適した方法、および/または、量で塗布しうる。同様に、不連続のインクの特徴構造物同士の間の距離は、隣接した不連続のインクの特徴構造物の中心間の距離xとして、定義しうるものであり、図1から3を用いて記載した上記値から選択しうる。
【0037】
図5Aは、3列で9行に配列した27個の不連続のインクの特徴構造物を示しているが、任意の数の行、列、または、不連続のインクの特徴構造物が可能であり、考えられうる。不連続のインクの特徴構造物の行および列の使用を示したが、制限することを意図せず、アレイは、ガラス基板の表面上に、例えば、ランダムか、または、配列されているか、若しくは、繰返しか、または、非繰返しか、若しくは、対称か、または、非対称かなど、任意の所定のパターンで存在する、不連続のインクの特徴構造物を含んでもよい。確かに、他の配列を提供してもよく、それも、本開示の範囲に入ることを意図する。
【0038】
インク塗布後に、不連続のインクの特徴構造物205のアレイを含むガラス基板200に、エッチング工程を行いうる。エッチングは、当技術分野で周知の任意の処理を用いて、例えば、エッチング剤に浸漬または接触させることによって行いうる。様々な実施形態によれば、エッチング工程は、フッ化水素酸、および/または、塩酸、若しくは、任意の他の適切な鉱酸または無機酸などの酸性浴に、ガラス基板を浸漬させる工程を含みうる。酸性浴の適切な濃度は、例えば、約0.4Mから約1.8M、約0.6Mから約1.6M、約0.8Mから約1.4M、または、約1Mから約1.2Mなどの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約0.2Mから約2Mの範囲でありうる。
【0039】
様々な実施形態によれば、ガラス物品の表面上に高周波テクスチャを生成しない薬剤から、エッチング剤を選択してもよい。例えば、有機エッチング剤は、ガラス物品の表面上に不溶性結晶を生成して、それが、ガラス物品の表面上に高周波テクスチャを生成しうる。図6は、例示的な高周波テクスチャを示し、酢酸、フッ化アンモニウム、および、水の混合液でエッチングされたガラス物品の表面を示している。エッチング液に酢酸が存在することによって、図6で、被覆されていないガラス領域上の不溶性結晶が、はっきりと見える。これらの結晶は、ガラス物品上の高周波テクスチャに寄与して、色ずれを引き起こしうる。
【0040】
不連続のインクの特徴構造物205のアレイを含むガラス基板200を、図2を参照して記載した上記凸状の光取り出し特徴構造物を生成するのに十分な時間、エッチングしうる。エッチング時間は、例えば、約1分から約10分、約2分から約8分、または、約3分から約5分などの全ての範囲、および、それらの部分範囲を含む、約30秒から約15分の範囲であってもよく、エッチングは、室温、または、高められた温度で行われてもよい。酸濃度/比、温度、および/または、時間などの処理パラメータは、結果的に生成される光取り出し特徴構造物の大きさ、形状、および、分布に影響しうる。いくつかのパラメータの例を挙げれば、例えば、エッチング液の濃度が高く、および/または、エッチング時間が長くなると、エッチング工程中に溶解するガラスの量に影響し、したがって、結果的に実現される光取り出し特徴構造物の高さ(または、深さ)hに影響しうる。これらのパラメータを変えて、望ましい表面上の光取り出し特徴構造物を実現することは、当業者の能力の範囲である。
【0041】
エッチング処理中に、不連続のインクの特徴構造物は、エッチング遮蔽物として機能しうるので、エッチング剤が、例えば、全ての方向に等しく、等方性に、ガラス基板のインクで覆われていない部分を溶解し、一方、インクで覆われた部分は、実質的に影響を受けないままである。インクが基板に適切に付着している場合には、この処理は、結果的に、凸状の光取り出し特徴構造物を生成しうる。しかしながら、インクとガラス間の付着強度は、上記のようなエッチング工程で実現される光取り出し特徴構造物の高さおよび/または輪郭形状に影響しうる。
【0042】
図7Aを参照すると、インクがガラス基板に弱く付着していると、エッチングマスクが、エッチング処理の早い段階で剥離してしまい、結果的に、より平らの輪郭形状を有する光取り出し特徴構造物を生成しうる。一方、インクがガラス基板に強く付着しすぎていると、結果的に実現される光取り出し特徴構造物は、図7Bに示すような、「シルクハット状」輪郭形状を有しうる。図7Cに示すように、過剰にも、不十分にも、ガラスに付着しないインクを用いて、より丸まった凸状の光取り出し特徴構造物を実現しうる。様々な実施形態によれば、光取り出し特徴構造物は、実質的に丸まった凸状の輪郭形状を有するが、他の形状、および、その変形も可能であり、本開示の範囲に入ると考えられる。
【0043】
エッチング工程に続いて、ガラス基板の表面からインクを除去するために、不連続のインクの特徴構造物205のアレイを含む、エッチングされたガラス基板200を、任意で洗浄しうる。図5Bに示した、結果的に実現されたガラス物品は、図2を参照して記載した凸状の光取り出し特徴構造物103aと輪郭形状および特徴が実質的に同様である凸状の光取り出し特徴構造物203のアレイを含みうる。
【0044】
図8A‐Bを参照して、図3に示した凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを含むガラス物品の第2の製作方法を記載する。方法は、図5A‐Bを参照して記載した凸状の光取り出し特徴構造物のアレイを有するガラス物品の製造方法と、実質的に同様であり、例えば、ガラス基板を用意する工程、任意で、ガラス基板を清浄して、表面汚染物質を除去する工程、インク塗布工程、エッチング工程、および、任意で、表面からインクを洗浄する工程を含みうる。しかしながら、インクを塗布して、不連続のインクの特徴構造物を形成する代わりに、図8Aに示すように、ガラス基板300の第1の表面301にインクを塗布して、連続したインクの特徴構造物305、および、不連続のインクがない部分307を備えうる。これらのインクがない部分307の位置は、例えば、後続のエッチング工程で生成される凹状の光取り出し特徴構造物と対応しうる。不連続のインクで覆われていない部分307は、図5Bを参照して記載した、上記不連続のインクの特徴構造物205の寸法(dおよびx)と実質的に同様の寸法を有しうる。
【0045】
連続したインクの被覆部305を塗布した後、図5A‐Bを参照して記載したエッチング工程と実質的に同様に、エッチング工程を行いうる。しかしながら、ここでは、インクの遮蔽部が、連続したインクの特徴構造物305を含み、インクで覆われていない部分307が、上記のような不連続の丸まった部分を含むので、エッチング剤は、インクで覆われていない不連続の部分307を溶解し、一方、連続したインクで覆われた部分305は、実質的に影響を受けないままである。このエッチング処理は、本明細書で定義したような凹状形状を有する光取り出し特徴構造物のアレイを生成しうる。エッチング工程の完了後に、ガラス基板を任意で洗浄して、ガラス基板の表面からインクを除去しうる。図8Bに示したように、結果的に実現されたガラス物品は、図3を参照して記載した光取り出し特徴構造物103bと輪郭形状および特徴が実質的に同様である、凹状の光取り出し特徴構造物のアレイを含む第1の表面301を有しうる。
【0046】
制限するものではないが、様々な実施形態によれば、ガラス基板を、更に、例えば、イオン交換によって、化学強化してもよい。イオン交換処理の間に、ガラス基板の中のイオンが、ガラス基板の表面で、または、その近くで、例えば塩浴からの、より大きな金属イオンと交換されてもよい。より大きなイオンを、ガラス内に取り込むことによって、表面に近い領域で圧縮応力を発生させることによって、基板を強化しうる。対応する引っ張り応力を、ガラスシートの中心領域内で生じて、圧縮応力と均衡しうる。
【0047】
イオン交換は、例えば、溶融塩浴内に、所定の時間、ガラスを浸漬させることによって、行ってもよい。例示的な塩浴は、KNO、LiNO、NaNO、RbNO、および、それらの組合せを含むが、それらに限定されない。溶融塩浴の温度、および、処理時間は、様々でありうる。望ましい利用に応じて、時間および温度を決定するのは、当業者の能力の範囲である。制限するものではないが、例として、溶融塩浴の温度は、約400℃から約500℃など、約400℃から約800℃の範囲でありうるものであり、更に、所定の時間は、約4時間から約10時間など、約4時間から約24時間の範囲でありうるものであり、他の温度と時間の組合せも考えうる。制限するものではないが、例として、ガラスを、例えば、約450℃で、約6時間、KNO浴に沈めて、表面圧縮応力を付与するK濃化層を実現しうる。
【0048】
本明細書において開示したガラス物品は、テレビ、広告装置、自動車、および、他の産業分野で使用されるLCDまたは他の表示部を含むが、それに限定されない様々な表示装置で使用してもよい。例えば、ガラス物品は、表示装置の光導波板として使用しうる。LCDで使用される従来のバックライトユニットは、様々な構成要素を含みうる。例えば、発光ダイオード(LED)、または、冷陰極蛍光管(CCFL)などの1つ以上の光源を使用してもよい。従来のLCDは、色変換蛍光体とパッケージにされたLEDまたはCCFLを採用して、白色光を生成してもよい。本開示の様々な態様によれば、開示したガラスの光導波路を採用した表示装置は、近紫外光(約300〜400nm)などの青色光(UV光、約100〜400nm)を発する少なくとも1つの光源を含んでもよい。本明細書において開示した光導波板および装置は、照明器具などの任意の適切な照明利用でも使用してもよく、それに限定されない。
【0049】
様々な開示した実施形態は、特定の実施形態に関連して記載した、特定の特徴、構成要素、または、工程を含んでもよいことが分かるだろう。更に、特定の特徴、構成要素、または、工程を、1つの特定の実施形態に関係して記載したが、それらを、示していない様々な組合せで、または、並び替えで、他の実施形態と交換、または、組み合わせてもよいことも分かるだろう。
【0050】
さらに、本明細書では、原文の英語の定冠詞および不定冠詞は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、そうでないと明示しない限りは、「1つだけ」に限定されるべきではない。したがって、例えば、「光源」と記載する場合は、そうでないと文脈から明らかでない限り、そのような光源を2つ以上有する例を含む。同様に、「複数の」、または、「アレイ」は、「1より多いこと」を表すことを意図している。したがって、「複数の光取り出し特徴構造物」、または、「光取り出し特徴構造物のアレイ」は、3つ以上の、そのような特徴構造物など、2つ以上の、そのような特徴構造物を含む。
【0051】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」特定の他の値までと表しうる。そのような範囲を表した場合には、その1つの特定の値から、および/または、その特定の他の値までという例を含む。同様に、値を、「約」という接頭語を用いて概数で表した場合には、その特定の値が、他の態様を形成するものと理解される。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係で、および、他方の端点とは独立にの両方で重要であると理解される。
【0052】
本明細書で用いた「実質的」、「実質的に」、および、それらの変形は、記載した特徴が、値または記載内容に等しいか、または、略等しいことを表すことを意図している。例えば、「実質的に平」面は、平面、または、略平面を表すことを意図している。
【0053】
別段の明示的記載がない限り、本明細書に示した任意の方法は、その工程を特定の順番に行うことを要すると解釈されることを全く意図していない。したがって、方法の請求項が、工程の行われるべき順番を実際に記載していないか、または、請求項または明細書の記載において、工程が特定の順番に限定されるというように別段の特定の記載がない場合には、特定の順番が推定されることを全く意図していない。
【0054】
特定の実施形態の様々な特徴、構成要素、または、工程を、「含む」という移行句を用いて記載したが、他の実施形態においては、「からなる」または、「実質的にからなる」という移行句を用いて記載してもよいものを含むと理解されるべきである。したがって、例えば、A+B+Cを含む方法は、他に、A+B+Cからなる方法の実施形態、および、本質的にA+B+Cからなる方法の実施形態を、含有する。
【0055】
当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。当業者には、本開示の精神および本質を組み込んだ、開示した実施形態の変更、組合せ、部分的組合せ、および、変形が可能なので、本開示は、添付の請求項および等価物の範囲の全てを含むと解釈されるべきである。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0057】
実施形態1
第1の表面、および、反対を向いた第2の表面を有するガラス物品において、
前記第1の表面は、少なくとも約10マイクロメートルの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含むものである、ガラス物品。
【0058】
実施形態2
前記光取り出し特徴構造物が、凸状または凹状である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0059】
実施形態3
前記凸状または凹状の光取り出し特徴構造物が、楕円体、放物体、双曲体、または、円錐台である、実施形態2に記載のガラス物品。
【0060】
実施形態4
前記光取り出し特徴構造物のアレイが、ランダムか、配列されているか、繰返しか、非繰返しか、対称か、または、非対称かである、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0061】
実施形態5
前記光取り出し特徴構造物の直径が、約10マイクロメートルから約700マイクロメートルの範囲である、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0062】
実施形態6
前記光取り出し特徴構造物が、約1:1から約10:1の範囲の直径対高さの比を有するものである、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0063】
実施形態7
前記光取り出し特徴構造物同士の間の距離が、約5マイクロメートルから約2mmの範囲である、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0064】
実施形態8
前記ガラス物品の前記第1の表面が、約5マイクロメートル未満の直径、および、約0.7マイクロメートル未満の高さを有する光取り出し特徴構造物を含まないものである、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0065】
実施形態9
前記ガラス物品の厚さが、約0.3mmから約3mmの範囲である、実施形態1または2に記載のガラス物品。
【0066】
実施形態10
前記光取り出し特徴構造物の前記高さ、前記直径、直径対高さの比、および、幾何学形状の任意の1つ、または、組合せが、前記第1の表面上の位置の関数として変化するものである、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0067】
実施形態11
実施形態1から10のいずれか1つに記載のガラス物品を含む、表示装置または照明器具。
【0068】
実施形態12
ガラス物品の製作方法において、
ガラス基板の第1の表面上にインクを積層して、被覆された表面部分、および、被覆されていない表面部分のアレイを形成する工程と、
前記被覆されていない表面部分をエッチングして、少なくとも約10マイクロメートルの直径、および、約1マイクロメートルから約10マイクロメートルの範囲の高さを有する光取り出し特徴構造物のアレイを含む、第1の表面を有するガラス物品を形成する工程と、
を含む方法。
【0069】
実施形態13
前記被覆された表面部分が、前記被覆されていない表面部分によって囲まれた、不連続のインク特徴構造物を含むものである、実施形態12に記載の方法。
【0070】
実施形態14
前記被覆されていない表面部分が、前記被覆された表面部分によって囲まれた、不連続の特徴構造物表面部分を含むものである、実施形態12または13に記載の方法。
【0071】
実施形態15
前記光取り出し特徴構造物のアレイが、ランダムか、配列されているか、繰返しか、非繰返しか、対称か、または、非対称かである、実施形態12から14のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態16
前記光取り出し特徴構造物の直径が、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲である、実施形態12から15のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態17
前記光取り出し特徴構造物が、約1:1から約10:1の範囲の直径対高さの比を有するものである、実施形態12から16のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態18
前記光取り出し特徴構造物同士の間の距離が、約5マイクロメートルから約50マイクロメートルの範囲である、実施形態12から17のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態19
前記光取り出し特徴構造物の前記高さ、前記直径、直径対高さの比、および、幾何学形状の任意の1つ、または、組合せが、前記第1の表面上の位置の関数として変化するものである、実施形態12から18のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態20
前記方法において、
前記ガラス基板の前記第1の表面上に前記インクを積層する前に、該ガラス基板を清浄する工程を、
更に含む、実施形態12から17のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態21
前記エッチング工程が、前記ガラス基板を、少なくとも1つのエッチング剤と接触させる処理を含むものである、実施形態12から17のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態22
前記エッチング工程が、前記ガラス基板を、酸性浴内に、約30秒から約15分の範囲の時間、浸漬させる処理を含むものである、実施形態12から17のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態23
前記少なくとも1つのエッチング剤が、鉱酸類から選択されるものである、実施形態21に記載の方法。
【0080】
実施形態24
前記少なくとも1つのエッチング剤が、有機酸類から選択されないものである、実施形態21に記載の方法。
【0081】
実施形態25
前記方法において、
前記エッチング工程後に、前記ガラス基板を洗浄して、前記第1の表面から前記インクを除去する工程を、
更に含む、実施形態12から17のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0082】
100 ガラス物品
101、201、301 第1の表面
102、202 第2の表面
103 光取り出し特徴構造物
103a、203 凸状の光取り出し特徴構造物
103b 凹状の光取り出し特徴構造物
200、300 ガラス基板
205 不連続のインク特徴構造物
305 連続したインク特徴構造物
307 インクで覆われていない部分
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B