特許第6873055号(P6873055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873055Fe/三座配位子錯体を用いたアルデヒド化合物またはケトン化合物の水素化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873055
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】Fe/三座配位子錯体を用いたアルデヒド化合物またはケトン化合物の水素化
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/141 20060101AFI20210510BHJP
   C07C 29/145 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/025 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/03 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/14 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/20 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/22 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 33/30 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 35/06 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 35/08 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 35/18 20060101ALI20210510BHJP
   C07C 53/02 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 53/10 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 53/128 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 61/08 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 63/04 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 63/08 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 63/331 20060101ALN20210510BHJP
   C07C 65/21 20060101ALN20210510BHJP
   C07F 9/50 20060101ALN20210510BHJP
   B01J 31/24 20060101ALN20210510BHJP
   B01J 31/26 20060101ALN20210510BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07C29/141
   C07C29/145
   C07C33/025
   C07C33/03
   C07C33/14
   C07C33/20
   C07C33/22
   C07C33/30
   C07C35/06
   C07C35/08
   C07C35/18
   !C07C53/02
   !C07C53/10
   !C07C53/128
   !C07C61/08
   !C07C63/04
   !C07C63/08
   !C07C63/331
   !C07C65/21 D
   !C07F9/50
   !B01J31/24 Z
   !B01J31/26 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-565213(P2017-565213)
(86)(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公表番号】特表2018-519282(P2018-519282A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016063893
(87)【国際公開番号】WO2016202925
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】15172581.9
(32)【優先日】2015年6月17日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リオネル ソーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジェザベル プラーズ
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/103703(WO,A1)
【文献】 特許第6483134(JP,B2)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,2014年,Vol.136, No.4,p.1367-1380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/00−35/52
C07C 53/00−65/42
C07F 9/00−9/94
B01J 31/00−31/40
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個または2個のケトン基またはアルデヒド基を含むC3〜C70の基質の分子H2を使用した相応のアルコールまたはジオールへの水素化による還元方法であって、前記方法を、式
[Fe(L3)(L’)(Y)(Z)] (1)
[式中、L3は、
式(C):
【化1】
[式中、Alkは、C3〜C6の分枝鎖状または環状のアルキル基である]の配位子を表し、
L’は、COを表し、
Yは、水素原子を表し、
Zは、ヒドロキシル基、ホルメート基、アセテート基、ピバレート基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す]の鉄錯体の形の少なくとも1種の触媒、ならびに任意に式MXで示され、Mがアルカリ金属カチオンであり、かつXが非配位性モノアニオンである塩の存在下に行われ、
前記方法が、塩基の非存在下で実施されることを特徴とする還元方法。
【請求項2】
前記基質は、式
【化2】
[式中、RaおよびRbは、同時に、C3〜C20−炭化水素基であって任意に置換されており、かつ任意に1個、2個もしくは3個の酸素原子もしくは窒素原子を含む炭化水素基を表すか、または前記RaおよびRbが別々に、Raは、水素原子もしくはRb基を表し、かつ
bは、C1〜C30−炭化水素基であって任意に置換されており、かつ任意に1個、2個もしくは3個の酸素原子もしくは窒素原子を含む炭化水素基を表す]のC5〜C30の化合物であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記基質は、式(I)で示され、その式中、Raが水素原子もしくはRb基を表し、かつそれぞれのRbが、同時にまたは独立して直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のC3〜C18の芳香族基、アルキル基、アルケニル基もしくはアルカンジエニル基であって任意に置換されている基を表す化合物、またはRaおよびRbが一緒に結合されてC5〜C20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝鎖状、単環式、二環式もしくは三環式の基であって任意に置換されている基を形成する化合物であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記MXが、NaBF4、KBF4、CsBF4からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Zが、ホルメート基、アセテート基またはピバレート基を表すことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Zが、メトキシ基を表すことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触水素化の分野に関し、より具体的には三座配位子を有するFe錯体の、ケトンまたはアルデヒドをそれぞれ相応のアルコールまたはジオールへと還元するための水素化法における使用に関する。
【0002】
従来技術
ケトンまたはアルデヒドの相応のアルコールへの還元は、有機化学における重要な反応の1つであり、多数の化学的方法で使用される。一般に、そのような変換を実現するためには、2種の主要な方法が知られている。そのような種類の方法は、以下:
a)シリル水素化物または金属水素化物塩、例えばLiAlH4が使用される水素化物法、
b)分子水素が使用される水素化法
である。
【0003】
実践的観点から、水素化法は、それらが少量の触媒(一般に基質に対して10ppmまたは1000ppm)を使用して少量の溶剤の存在下で、または溶剤の不在下でも実行できるためより魅力的である。さらに、水素化法は、反応性が高く高価な水素化物を使用する必要はなく、重大な量の水性廃棄物を生成しない。
【0004】
水素化法の特徴的な必須の要素の1つは、還元に関して分子水素を活性化させるために使用される触媒または触媒系である。カルボニル官能基の水素化のために有用な触媒または触媒系の開発は、化学において依然として重要な必要性を表す。
【0005】
そのような還元を起こすことが知られる数種の触媒または触媒系のうち、ルテニウム/アミノホスフィン錯体を挙げることができ、それは、文献(Noyori,R Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,40−73;Saudan,L.A.in Dunn,P.J.;Hii,K.K.;Krische,M.J.;Williams M.T.Editors.Sustainable Catalysis,J.Wiley & Sons,New Jersey;2013,pp 37−61)で幅広く報告されている。しかしながら、そのような系は、性能が高いとは言え、非常に高価で毒性のルテニウム金属を必要とするという欠点を有する。
【0006】
Morris(Inorg.Chem.2010,49,1094を参照)により、アセトニトリルを配位子として有するPNPピンサー型イミン配位子を有する2種の鉄錯体が報告されており、活性または使用は報告も示唆もされていない。より最近になって、Morris(J.Am.Chem.Soc.,2014,136(22),1367)により、この前に記載された錯体の、アセトニトリル配位子を一酸化炭素によって置き換えることによる微調整と、この錯体をケトンの水素化のための触媒として使用することが開示された。しかしながら、この触媒には、LiAlH4による予備活性化が必要であり、α,β−不飽和ケトンの還元に対して非効率的である。
【0007】
Milstein(Angew.Chem.Int.Ed,2011,50,2120を参照)により、三座ピリジン誘導体を有する鉄錯体を使用したアルデヒド、ケトンの水素化が報告された。その文献は、エノン/エナールに対する弱い選択性だけでなく、標準的なアルデヒド、ケトンに対する控えめな活性を示している。
【0008】
これらの先行技術に記載される水素化は、常に塩基の存在下で実施されるが、その塩基は、特定の基質について、そのような条件においてアルコール生成物ではなくポリマーの形成をもたらすという欠点がある。
【0009】
そのため、塩基不含の水素化法が求められている。1つの解決策は、Milstein(Chem.Eur.J.,2012,18,7196を参照)によって提案された。確かに[(i−Pr−PNP)Fe(CO)(HBH4)]をPNP配位子が三座ピリジン誘導体である触媒として使用することにより、水素化に対する触媒の活性化のために塩基を添加することを避けることが可能である。それにもかかわらず、これらの塩基不含の条件では、エノン/エナールに対する選択性の問題と標準的なケトンに対する活性は改善されなかった。さらに、アルデヒドの水素化のためには塩基の添加が必要とされる。
【0010】
したがって、塩基を用いない代替的な活性化方式で、基質の範囲が広く、可能であれば選択性の向上を伴う触媒または触媒前駆体を使用した水素化法が求められている。
【0011】
本発明の説明
上述の問題を克服するために、本発明は、分子H2を用いて1個または2個のケトンまたはアルデヒドを含むC3〜C70基質を相応のアルコールまたはジオールへと水素化することによる還元方法であって、該方法は、三座配位子の鉄錯体の形における、配位基が、1個のアミノ基またはイミノ基および2個のホスフィノ基からなる少なくとも1種の触媒、ならびに任意に式MXの塩[式中、Mは、アルカリ金属カチオンであり、かつXは、非配位性のモノアニオンである]の存在下に実施されることを特徴とする還元方法に関する。
【0012】
「少なくとも1種の触媒、ならびに任意に式MXの塩…の存在下に」または同等の表現は、反応が触媒の存在下で、または触媒およびMXの存在下で実施することができることを意味する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記アミノ基は、第二級(すなわちNH)アミノ基である。
【0014】
本発明の具体的な一実施形態によれば、基質は、式(I)
【化1】
[式中、
aおよびRbは、一緒に解釈されれば、C3〜C20−炭化水素基、好ましくはC4〜C20−炭化水素基であって任意に置換されており、かつ任意に1個、2個もしくは3個の酸素原子もしくは窒素原子を含む炭化水素基を表すか、または前記RaおよびRbが別々に解釈される場合に、
aは、水素原子もしくはRb基を表し、かつ
bは、C1〜C30−炭化水素基であって任意に置換されており、かつ任意に1個、2個もしくは3個の酸素原子もしくは窒素原子を含む炭化水素基を表す]の化合物であってよい。
【0015】
相応のアルコール(すなわち(II−a))は、式
【化2】
[式中、RaおよびRbは、式(I)と同様に定義される]のアルコールである。
【0016】
「炭化水素基」とは、前記基が、直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状の、芳香族基、アルキル基、アルケニル基、アルカンジエニル基、もしくはアルキニル基、例えば環状のアルキル基の形であってよいか、または1つだけの種類に具体的に制限されることが述べられていない限り、前記の種類の基の混合物の形であってもよく、例えば特定の基が、直鎖状のアルキル、分枝鎖状のアルカンジエニル(例えば1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する)、(多)環式アルキル部およびアリール部を含み得ることを意味すると解釈される。同様に、本発明の全ての以下の実施形態においては、ある基が1つの種類より多くのトポロジーの形(例えば直鎖状、環状、または分枝鎖状)であり、かつ/または不飽和(例えばアルキル、芳香族、またはアルケニル)であると述べられている場合に、前記説明のように、前記のトポロジーまたは不飽和のいずれか1つを有する部を含み得る基も意味する。同様に、本発明の全ての以下の実施形態においては、ある基が不飽和(例えばアルキル)の1つの種類の形であると述べられている場合に、前記基は、任意の種類のトポロジー(例えば直鎖状、環状、または分枝鎖状)であってよく、または様々なトポロジーを有する幾つかの部を有することを意味する。
【0017】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、前記アルデヒドまたはケトンは、医薬品産業、農業化学産業または香料産業において最終生成物または中間体として有用であるアルコールまたはジオールを与えるものである。特に好ましい基質は、香料産業において最終生成物または中間体として有用であるアルコールまたはジオールを与えるアルデヒドまたはケトンである。
【0018】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、基質は、式(I)のC5〜C30の化合物またはさらに式(I)のC5〜C20の化合物である。
【0019】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、基質としては、Raが水素原子もしくはRb基を表し、かつそれぞれのRbが、別々に解釈される場合に同時にまたは独立して直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のC1〜C30の芳香族基、アルキル基、アルケニル基もしくはアルカンジエニル基であって任意に置換されており、かつ任意に1個もしくは2個の酸素原子もしくは窒素原子を含む基を表す化合物、またはRaおよびRbが一緒に結合されてC4〜C20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝鎖状、単環式、二環式もしくは三環式の基であって任意に置換されており、かつ任意に1個もしくは2個の酸素原子もしくは窒素原子を含む基を形成する化合物を挙げることができる。
【0020】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、基質としては、Raが水素原子もしくはRb基を表し、かつそれぞれのRbが、別々に解釈される場合に同時にまたは独立して直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のC3〜C18の芳香族基、アルキル基、アルケニル基もしくはアルカンジエニル基であって任意に置換されている基を表す化合物、またはRaおよびRbが一緒に結合されてC5〜C20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝鎖状、単環式、二環式もしくは三環式の基であって任意に置換されている基を形成する化合物を挙げることができる。
【0021】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、Rbがアルケニル基またはアルカジエニル基である場合には、前記基は、アルカ−1−エニル基またはアルカ−1,3−ジエニル基(すなわち、炭素−炭素二重結合は、カルボニル基と共役されている)である。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、Rbは、C3〜C18−アルカ−1−エニル基であって、炭素−炭素二重結合が二置換または三置換されている基である、すなわち式(I)の化合物は、エノールまたはエナールとしても知られるα,β−不飽和ケトンまたはアルデヒドである。さらにより好ましくは、Rbは、アルカ−1−エニル基であって、炭素−炭素二重結合が二置換されている基である。
【0023】
本発明の前記実施形態のいずれか1つによれば、Raが水素原子である場合に、Rbは、特に分枝鎖状または環状の炭化水素基であって、分枝が基質のCHO基に対してα位にある基を表し得る。
【0024】
aおよびRbの可能な置換基は、1個、2個または3個のハロゲン、ORc基、NRc2基またはRc基であって、Rcが水素原子、ハロゲン化C1〜C2基またはC1〜C10の環状、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはC1〜C4の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基である基である。その他の可能な置換基としては、基COORcを挙げることもでき、前記基はまた、本発明による方法の間に、当業者に良く知られるようにして、使用されるモル量のH2により相応のアルコールへと還元され得る。
【0025】
本発明の具体的な一態様によれば、RaおよびRbの可能な置換基は、1個または2個のハロゲン、ORc基、NRc2基またはRc基であって、Rcが水素原子、C1〜C6の環状、直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基、好ましくはC1〜C4の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基もしくはアルケニル基である基である。
【0026】
制限されるものではないが、式(I)の基質の例は、以下のものである:
− C3〜C14−アルデヒド、例えば:
3〜C10−アルカナール、「C3〜C10−2−アルケナール」、C3〜C10−2−メチル−2−アルケナール、「C5〜C10−2,4−ジエナール」、3−アルキル−3−ベンゼン−プロパ−2−エナール、3−アルキル−2−メチル−3−ベンゼン−プロパ−2−エナール、C7〜C10−ベンゼン−カルバルデヒド、C5〜C10−シクロアルカ−1−エン−1−カルバルデヒド、「C4〜C12−2−メチレン−アルデヒド」、
ここで、括弧付けした化合物は、特に塩基に感受性が高い基質であることが知られている
− C3〜C17−ケトン、例えば:
ジ(C1〜C12−アルキル)ケトン、C4〜C12−環状ケトン、「C5〜C12−炭化水素基によってα位で置換されたシクロペンテノン」、「0個〜3個のメチル基によって置換されたシクロヘキサ−2−エン−1−オン」、C6〜C12−炭化水素基によってα位で置換されたシクロヘキセノン、置換されたアリール−C1〜C12−アルキルケトン、「置換されたアリール−C2〜C12−1−アルケンメチルケトン」、「置換されたシクロヘキセニルC2〜C6−1−アルケンメチルケトン」、C2〜C12−1−アルケンメチルケトン、C2〜C15−2−アルケン−1,1−ジメチルメチルケトン、C2〜C15−2−アルキル−1,1−ジメチルメチルケトン、
ここで、括弧付けした化合物は、特に塩基に感受性が高い基質であることが知られている。
【0027】
本発明の方法は、触媒または触媒前駆体(以降、特に記載がない限り錯体と呼ばれる)として前記の鉄錯体を使用することを特徴とする。該錯体は、イオン種または中性種の形であってよい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、鉄錯体は、一般式
[Fe(L3)(L’)(Y)(Z)] (1)
[式中、L3は、三座配位子を表し、ここで配位する基は、1個のアミノ基またはイミノ基および2個のホスフィノ基からなり、
L’は、COまたはC1〜C11−イソニトリル化合物を表し、
Yは、水素原子またはC1〜C14−カルボン酸基を表し、かつ
Zは、ヒドロキシル基、C1〜C14−カルボン酸基または直鎖状のC1〜C14−アルコキシ基を表す]の錯体であってよい。
【0029】
「C1〜C14−カルボン酸基」またはそれと同等のものは、当該技術分野における通常の意味、すなわちRCOO基であって、R基が水素原子または1個もしくは2個の酸素原子もしくは窒素原子を任意に含むC1〜C13−炭化水素基である基を意味する。好ましくは、Rは、アルキル基または芳香族基であって任意に置換されており、かつ任意に1個または2個の酸素原子または窒素原子を含む基である。
【0030】
当業者であれば、Yおよび/またはZは、特にYおよび/もしくはZがアルコキシ基もしくはカルボン酸基を表す場合に、鉄の配位圏内にあってよく、または脱配位されていてよいことを十分に認識している。
【0031】
本発明の具体的な一実施形態においては、上記L3配位子は、C6〜C40の化合物またはさらにC6〜C30の化合物であってよい。
【0032】
本発明の任意の実施形態によれば、式(1)においては、Yは、水素原子またはC1〜C8−カルボン酸基、例えばHCOO、CH3COOまたはCH3CH2COO基を表し得る。より好ましくは、Yは、水素原子を表し得る。
【0033】
本発明の任意の実施形態によれば、式(1)においては、Zは、ヒドロキシ基を表し得る。
【0034】
本発明の任意の実施形態によれば、式(1)においては、Zは、C1〜C14−カルボン酸基であって任意に1個〜3個のエーテル官能基によって置換された基を表し得る。好ましくは、Zは、C1〜C8−アルキルカルボン酸基、例えばHCOO基、CH3COO基またはCH3CH2COO基であって任意に1個〜3個のエーテル官能基によって置換された基、またはC7〜C13−芳香族カルボン酸基であって任意に1個〜3個のアルキル基もしくはエーテル基によって置換された基、例えば4−フェニル安息香酸COO、3,5−ジメチルフェニルCOOもしくはp−MeOフェニルCOOを表し得る。より好ましくは、Zは、C1〜C6−アルキルカルボン酸基またはC8〜C13−芳香族カルボン酸基であって任意にアルキル基またはエーテル基によって置換された基を表し得る。より好ましくは、Zは、C1〜C5−アルキルカルボン酸基またはC8〜C9−芳香族カルボン酸基であって、芳香族環が、好ましくは電子供与性基、例えばメチル基またはメトキシ基によって置換されている基を表し得る。より好ましくは、Zは、C1〜C4−アルキルカルボン酸基を表し得る。さらにより好ましくは、Zは、ホルメート基、アセテート基またはピバレート基を表し得る。さらにより好ましくは、Zは、ホルメート基またはアセテート基を表し得る。Zがホルメートを表す前記錯体は、ルイス酸複合型ギ酸脱水素化反応においてのみ報告されている(J.Am.Chem.Soc.2014,136,10234−10237)。
【0035】
もう1つの実施形態によれば、Zは、アセテート基またはピバレート基を表し得る。
【0036】
本発明の任意の実施形態によれば、式(1)においては、Zは、直鎖状のC1〜C14−アルコキシを表し得る。好ましくは、Zは、直鎖状のC1〜C6−アルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基を表し得る。より好ましくは、Zは、直鎖状のC1〜C4−アルコキシ基を表し得る。より好ましくは、Zは、メトキシ基またはエトキシ基、好ましくはメトキシ基を表し得る。
【0037】
「電子供与性基」または同等の用語は、当該技術分野において通常の意味、すなわちその電子密度の幾らかを隣接する芳香族系に供与することが可能な原子または官能基、例えばアルコキシ基、アルキル基またはアミン基を意味する。
【0038】
本発明の任意の実施形態によれば、L’は、COを表し得る。
【0039】
前記実施形態のいずれか1つによれば、三座配位子L3は、式
【化3】
の1つで示され、その式中、点線は、単結合または二重結合を示し、
点線を伴う炭素−窒素結合が、二重結合または単結合を表す場合に、それぞれzは、0または1であり、
1およびR2は、別々に解釈される場合に、同時にまたは独立して、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C10−アルキル基またはアルケニル基であって任意に置換されている基、C6〜C10−芳香族基であって任意に置換されている基を表し、前記基R1およびR2は、一緒に解釈される場合に、そのR1基およびR2基が結合されるリン原子を含めて、5個〜10個の原子を有する飽和または不飽和の環であって任意に置換されている環を形成することができ、
6およびR7は、同時にまたは独立して、水素原子、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C6−アルキル基またはアルケニル基であって任意に置換されている基、C6〜C10−芳香族基であって任意に置換されている基を表し、点線が単結合を表す場合は、2個のR6が一緒に解釈されて、それらのR6基がそれぞれ結合される窒素原子および炭素原子を含めて、5個〜10個の原子を含む飽和の複素環であって任意に置換されており、かつ任意に1個または2個の追加の窒素原子または酸素原子を含む環を形成することができ、
Qは、
− 式
【化4】
[式中、nは、1から3までの整数であり、かつ
4およびR5は、同時にまたは独立して、水素原子、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C6−アルキル基またはアルケニル基であって任意に置換されている基、C6〜C10−芳香族基であって任意に置換されている基を表し、2個の異なるR4基および/またはR5基は、一緒に解釈される場合に、そのR4基またはR5基のそれぞれが結合される炭素原子を含めて、C5〜C8の飽和環であって任意に置換されている環を形成することができる]の基、または
− ジフェニル基、ジナフチル基、C5〜C12−メタロセジイル基、フェニレン基またはナフチレン基であって任意に置換されている基
を表す化合物であってよい。
【0040】
本発明の任意の実施形態によれば、「芳香族基または芳香族環」とは、フェニル誘導体またはナフチル誘導体を意味する。
【0041】
明快にするために、「式中、1個の点線は、単結合または二重結合を表す」または同等の表現は、当業者によって理解される通常の意味を表す、すなわち前記点線によってつながった炭素原子および窒素原子の間の全結合(実線および点線)が、炭素−窒素の単結合または二重結合であることを意味する。
【0042】
前記実施形態のいずれか1つによれば、三座配位子L3は、式
【化5】
[式中、R1、R2、R6およびR7は、式(A)に示される意味を有する]の1つの化合物であってよい。
【0043】
本発明の任意の実施形態によれば、R1およびR2は、別々に解釈される場合に、同時にまたは独立して、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C10−アルキル基であって任意に置換されている基、C6〜C10−フェニル基またはナフチル基であって任意に置換されている基を表し、前記基R1およびR2は、一緒に解釈される場合に、5個〜10個の原子を有し、かつそのR1基およびR2基が結合されるリン原子を含む飽和環であって任意に置換されている環を形成することができる。
【0044】
本発明の任意の実施形態によれば、R1およびR2は、別々に解釈され、それぞれ同時にまたは独立して、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C6−アルキル基、またはさらにC3〜C6−アルキル基であって任意に置換されている基、任意に置換されているフェニル基を表す。
【0045】
本発明の任意の実施形態によれば、R6およびR7は、同時にまたは独立して、水素原子、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C6−アルキル基であって任意に置換されている基、任意に置換されているフェニル基を表し、点線が単結合を表す場合には、2個のR6は、一緒に解釈されて、それらのR6基がそれぞれ結合される窒素原子および炭素原子を含めて、5個または6個の原子を含む飽和の複素環であって任意に置換されており、かつ任意に1個の追加の窒素原子または酸素原子を含む環を形成することができる。
【0046】
本発明の任意の実施形態によれば、1個または2個のR7は、水素原子である。同様に、1個または2個のR6は、水素原子である。
【0047】
本発明の任意の実施形態によれば、Qは、
− 式
【化6】
[式中、nは、1または2であり、かつ
4およびR5は、同時にまたは独立して、水素原子、直鎖状の、分枝鎖状のまたは環状のC1〜C6−アルキル基であって任意に置換されている基、任意に置換されているC6〜C10−フェニル基またはナフチル基を表す]の基、または
− C5〜C12−フェロセンジイル基、1,2−フェニレン基または1,2−ナフチレン基もしくは2,3−ナフチレン基であって任意に置換されている基
を表す。
【0048】
本発明の任意の実施形態によれば、Qは、式(i)の基を表し、その式中、nは、1または2であり、かつR4およびR5は、同時にまたは独立して、水素原子、直鎖状の、分枝鎖状の、または環状のC1〜C6−アルキル基であって任意に置換されている基、任意に置換されているフェニル基を表す。
【0049】
本発明の任意の実施形態によれば、Qは、直鎖状のメチレン基またはエチレン基であって任意に置換されている基を表す。
【0050】
本発明の任意の実施形態によれば、R4、R5、R6およびR7の可能な置換基は、1個もしくは2個のハロゲン、C1〜C10−アルコキシ基、ハロゲン化炭化水素基もしくは過ハロゲン化炭化水素基、COOR基、NR2基、第四級アミン基またはR基(ここで、Rは、C1〜C6−アルキルまたはC5〜C12−シクロアルキルである)、アラルキル基(例えばベンジル、フェネチル等)または芳香族基であり、その芳香族基はまた、任意に1個、2個または3個のハロゲン、スルホネート基またはC1〜C8−アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホネート基、ハロゲン化炭化水素基もしくは過ハロゲン化炭化水素基またはエステル基によって置換されている。「ハロゲン化炭化水素または過ハロゲン化炭化水素」とは、例えばCF3またはCClH2のような基を意味する。
【0051】
本発明の任意の実施形態によれば、R4、R5、R6およびR7の可能な置換基は、1個もしくは2個のハロゲン、C1〜C6−アルコキシ基、COOR基、NR2基、第四級アミン基またはR基(ここで、Rは、C1〜C6−アルキル、C5〜C12−シクロアルキル、アラルキル基(例えばベンジル、フェネチル等)または芳香族基であり、その芳香族基はまた、任意に1個、2個または3個のハロゲン、スルホネート基またはC1〜C8−アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホネート基、ハロゲン化炭化水素基もしくは過ハロゲン化炭化水素基またはエステル基によって置換されている。
【0052】
1およびR3ならびにQの可能な置換基は、特に前記基がフェニル基もしくは部または芳香族基もしくは部であるか、またはそれらの基もしくは部を含む場合に、1個〜3個のC1〜C5−アルコキシ基、C1〜C4−アルキル基、またはNR基(ここで、Rは、C1〜C6−アルキル、C5〜C6−シクロアルキルである)である。
【0053】
本発明の方法は、L3が、式(C):
【化7】
[式中、Alkは、C3〜C10またはさらにC3〜C6の分枝鎖状または環状のアルキル基である]の配位子を表す場合に特に関心が持たれる。好ましくは、Alkは、イソプロピル基を表し得る。
【0054】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明の方法は、塩基の不在下で実施される。
【0055】
本発明による特定の錯体はまた新規である。したがって、本発明のもう1つの主題は、式
[Fe(L3)(L’)(Y)(Z)] (1)
[式中、L3、L’およびYは、前記と同じ意味を有し、かつ
Zは、C2〜C6−アルキルカルボン酸基またはC7〜C14−芳香族カルボン酸基を表す、すなわちZは、ホルメートを表さない]の錯体である。
【0056】
前記配位子は、技術水準において、かつ当業者によって良く知られている標準的な一般的方法を適用することによって得ることができる。したがって、それらの製造は、特別な説明を要するものではない。例えば、Edwards,P.G.Polyhedron 1990,9,2413−2418に立ち返ることができる。
【0057】
一般的に、式(1)または(2)の錯体は、それらを文献に記載される一般的な方法による方法で使用する前に調製および単離することができる。実施例に1つの方法が記載される。
【0058】
さらに、前記錯体は、インサイチューで、幾つかの方法によって、単離または精製をすることなく、それらを実施例に記載されるように使用する直前に調製することができ、または出発錯体として、式
[Fe(L3’)(L’)Y] (3)
[式中、L3’は、脱プロトン化されたアミンを伴うL3を表す、すなわちL3’は、アミド配位子であり、かつL’およびYは、前記定義の通りである]の錯体が使用され、それらは次いでC1〜C14−カルボン酸と反応され得る。
【0059】
式MXで示され、式中、Mがアルカリ金属カチオンであり、かつXが非配位性モノアニオンである塩は、本発明の方法を実施するために任意に添加され得る。
【0060】
前記実施形態のいずれか1つによれば、Mは、アルカリ金属カチオン、例えばNa、K、CsまたはLiを表し、かつXは、非配位性アニオン、例えばBF4-、CF3SO3-、PO43-、F-、PF6-、BArF4-、Cl-またはCF3COO-を表す。
【0061】
具体的な一実施形態によれば、MXは、NaBF4、KBF4、CsBF4、LiFおよびK3PO4からなる群から選択され得る。好ましくは、MXは、NaBF4、KBF4またはCsBF4であり、さらにより好ましくはMXは、KBF4である。
【0062】
好ましい一実施形態によれば、本発明の方法は、式MXの塩の存在下で実施される。
【0063】
上述のように、本発明の方法の本質は、鉄錯体および任意にMXを使用した基質の水素化にある。典型的な方法は、基質と鉄錯体および任意にMXならびに溶剤とを混合し、次いでそのような混合物を、選択された圧力および温度において分子水素で処理することを包含する。
【0064】
該方法の必須の要素である本発明の錯体は、反応媒体に広い濃度範囲で添加することができる。制限されるものではないが、例としては、錯体の濃度値として、基質の量に対して50ppmから50000ppmまでの範囲の濃度を挙げることができる。好ましくは、錯体濃度は、100ppmから20000ppmの間に、またはさらに1000ppmから10000ppmの間に含まれることとなる。言うまでもないが、錯体の至適濃度は、当業者に知られるように、錯体の性質、基質の性質、そして方法の間に使用されるH2の圧力、ならびに所望の反応時間に依存することとなる。
【0065】
反応混合物に添加されるMXの有用な量は、比較的広い範囲に包含され得る。制限されるものではないが、例としては、基質に対して、0.0005モル当量から0.2モル当量の間の、好ましくは0.001モル当量から0.10モル当量の間の、さらにより好ましくは0.05モル当量から0.10モル当量の間の範囲を挙げることができる。
【0066】
水素化反応は、溶剤の存在下または不在下で実施することができる。実践的理由から溶剤が必要とされるか、または溶剤が使用される場合には、その際、水素化反応において現用される任意の溶剤を、本発明の目的のために使用することができる。制限されるものではないが、例としては、芳香族溶剤、例えばトルエンまたはキシレン、炭化水素溶剤、例えばヘキサン、ヘプタンまたはシクロヘキサン、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはMTBE、極性溶剤、例えば第一級アルコールもしくは第二級アルコール、例えばイソプロパノールもしくはエタノール、またはそれらの混合物が含まれる。好ましくは、溶剤は、THF、トルエンおよびヘプタンからなる群から選択される。溶剤の選択は、錯体の性質に関連し、当業者は、それぞれの場合に水素化反応を最適化するために最も適切な溶剤を選択することが十分に可能である。
【0067】
本発明の水素化方法においては、該反応は、105Paから80×105Pa(1bar〜80bar)の間に含まれるH2圧力で、または所望であればさらに高い圧力で実施することができる。あらためて、当業者は、触媒負荷量および溶剤中の基質の希釈度に関連して、圧力を調節することが十分に可能である。例としては、1×105Pa〜50×105Pa(1bar〜50bar)の典型的な圧力を挙げることができる。
【0068】
本発明の具体的な一実施形態によれば、反応媒体の雰囲気は、H2のモル量に対して、約0.001%から0.10%の、またはさらに0.01%から0.05%のCOを含有してもよい。
【0069】
水素化を実施することができる温度は、0℃から120℃の間に、より好ましくは20℃から100℃の間の範囲に、またはさらに50℃から100℃の間に含まれる。もちろん、当業者は、好ましい温度を、MXの存在、出発生成物および最終生成物の融点および沸点、ならびに所望の反応時間または転化時間に関連して選択することもできる。
【0070】
ここで、本発明を、以下の実施例によりさらに詳細に記載することとする。その際、温度は、摂氏度で示され、略語は、当該技術分野で通常の意味を有する。
【0071】
以下に記載される全ての手順は、特に記載がない限り不活性雰囲気下で行われた。水素化は、ステンレス鋼製オートクレーブの内側に入れた開放したガラス管中で、または直接的にオートクレーブ中で、いずれかで実施することができる。H2ガス(99.99990%)を、入手したままで使用した。全ての基質および溶剤を、適切な乾燥剤によりAr下で純化した。NMRスペクトルは、特に記載がない限り、Bruker社製AM−400型(1Hは、400.1MHzで、13Cは、100.6MHzで、そして31Pは、161.9MHzで)分光計において記録し、通常は300KでCD2Cl2中で測定した。化学シフトは、ppmで、テトラメチルシランから低磁場方向に列挙する。31P NMR化学シフトは、ppmでH3PO4から低磁場方向に、D2O中のリン酸の85%溶液を標準として参照して報告されている。
【0072】
実施例
実施例1
カルボニルジブロモビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(Cl2))の調製(I.Koehne,T.J.Schmeier,E.A.Bielinski,C.J.Pan,P.O.Lagaditis,W.H.Bernskoetter,M.K.Takase,C.Wuertele,N.Hazari,S.Schneider,Inorg.Chem.2014,53,2133−2143に従って調製):
アルゴン雰囲気下で、塩化鉄(II)(620mg、4.89mmol)をTHF(21mL)中に厚肉ガラス管中で撹拌された懸濁液に、ビス(2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル)アミンL−1(A.A.Danopoulos,A.R.Wills,P.G.Edwards,Polyhedron 1990 9,2413−2418に従って調製)(1.5g、4.91mmol)を25℃で添加した。さらにTHF(3×1mL)を添加してすすいだ。その乳白色の溶液を、65℃で1時間の間加熱した。室温に冷却した後に、その懸濁液を、CO(3×1bar)でパージした後に、CO雰囲気(2bar)下に置いた。その混合物を、CO雰囲気下で一晩撹拌した。10分後に、固体が全て溶解すると深紫色の溶液が得られた。真空下での溶剤の蒸発により、深紫色の固体が得られ、それをDCM(10mL)中に溶解させ、ペンタン(50mL)へと滴加した。その懸濁液を濃縮し、引き続きさらなるペンタン(10mL)を添加し、上清が澄明になるまで濃縮した。紫色の固体を濾過し、ペンタン(2×5mL)で洗浄し、最後に真空下で乾燥させた(0.1mbar/1時間)。所望の錯体は、深紫色の固体として得られた(2.133グラム、95%の収率)。
【0073】
実施例2
カルボニルヒドリドブロモビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(Cl))の調製((a):I.Koehne,T.J.Schmeier,E.A.Bielinski,C.J.Pan,P.O.Lagaditis,W.H.Bernskoetter,M.K.Takase,C.Wuertele,N.Hazari,S.Schneider,Inorg.Chem.2014,53,2133−2143;(b)S.Chakraborty,H.Dai,P.Bhattacharya,N.T.Fairweather,M.S.Gibson,J.A.Krause,H.Guan,J.Am.Chem.Soc.2014,136,7869−7872に従って調製):
アルゴン雰囲気下で、50mLの炉内乾燥させた撹拌棒を備えるシュレンクフラスコに、(Fe(L−1)(CO)Cl2)(500mg、1.087mmol)およびNaBH4(44.5mg、1.176mmol)を装入した。この混合物にEtOH(40mL)を0℃で添加することで、数分で黄色の溶液が得られた。得られた混合物を、室温へと徐々に加温し、次いでさらに16時間にわたり撹拌した。真空下で揮発物を除去することで、橙褐色の固体が得られ、それをトルエン(30mL)で処理し、次いでセライト製パッドを通して濾過することで、橙色の溶液が得られた。溶剤を真空下で蒸発させることで、所望の化合物が明橙色の粉末として得られた(419mg、91%の収率)。
【0074】
実施例3
カルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H))の調製(E.A.Bielinski,P.O.Lagaditis,Y.Zhang,B.Q.Mercado,C.Wuertele,W.H.Bernskoetter,N.Hazari,S.Schneider,J.Am.Chem.Soc.2014,136,10234−10237に従って調製):
アルゴン雰囲気下で、シュレンクフラスコに、(Fe(L−1)(CO)(H)Cl(340mg、0.8mmol)およびKOtBu(98mg、0.87mmol)を装入した。室温でTHF(20mL)を添加すると、黄色から赤紫色への即座の変色が観察された。その懸濁液を室温で30分間にわたり撹拌し、そして溶剤を真空中で蒸発させた。その赤紫色の残留物をペンタンで抽出し、セライトを介して濾過し、次いで溶剤を除去した。所望の赤紫色の錯体を真空下で乾燥させる(0.1mbar、1時間)ことで、暗紫色の固体(305mg、98%の収率)が得られた。
【0075】
実施例4
カルボニルヒドリドホルメートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H))(C1)の調製(E.A.Bielinski,P.O.Lagaditis,Y.Zhang,B.Q.Mercado,C.Wuertele,W.H.Bernskoetter,N.Hazari,S.Schneider,J.Am.Chem.Soc.2014,136,10234−10237に従って調製):
アルゴン雰囲気下で、ギ酸(30mg、0.65mmol)をTHF(2mL)中に溶かした溶液を、THF(3mL)中のFe(L−1)(CO)H(250mg、0.642mmol)に室温で添加した。マゼンダ色の混合物は、直接的に黄緑色の溶液に変化した。その混合物を室温で10分間にわたり撹拌し、その後に溶剤を蒸発させ、残留物を濾過したペンタン中に溶解させ、溶剤を蒸発させることで、黄褐色の油状の固体が得られた。粗生成物を、−20℃に冷やしたペンタンで擦り、次いで溶剤を除去した後に、黄色の固体が得られた(220mg、79%の収率)。
【0076】
実施例5
カルボニルヒドリドピバレートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)tBu))(C2)の調製
アルゴン雰囲気下で、ピバル酸(0.11Mで2.1ml、0.23mmol)をTHF中に溶かした溶液を、THF(3mL)中のFe(L−1)(CO)H(93mg、0.239mmol)に室温で添加した。マゼンダ色の混合物は、直接的に黄緑色の溶液に変化した。その溶液を室温で10分間にわたり撹拌し、その後に溶剤を蒸発させ、残留物を濾過したペンタン中に溶解させ、溶剤を蒸発させることで、橙黄色の固体が得られた(117mg、>99%の収率)。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例6
カルボニルヒドリドアセテートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me))(C3)の調製
アルゴン雰囲気下で、酢酸(0.11Mで2.1ml、0.23mmol)をTHF中に溶かした溶液を、THF(3mL)中のFe(L−1)(CO)H(90.6mg、0.23mmol)に室温で添加した。マゼンダ色の混合物は、直接的に黄緑色の溶液に変化した。その溶液を室温で10分間にわたり撹拌し、その後に溶剤を蒸発させ、残留物を濾過したペンタン中に溶解させ、溶剤を蒸発させることで、橙黄色の固体が得られた(102mg、98%の収率)。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例7
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を使用したアセトフェノンの接触水素化
典型的な実験手順は、以下の通りである:
グローブボックス(glow box)中でアルゴン下に、試験管に、連続的に所望の錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)(0.25mol%〜0.5mol%)を、KBF4(5mol%〜10mol%)と一緒に、または一切添加剤を加えずに装入した。次いで、アセトフェノン(3mmol)をTHF(2mL)中に溶かした溶液を添加した。前記試験管を、次いで並行式水素化装置に入れ、相応の温度に加熱し、次いで水素ガスで20barに加圧し、機械的に撹拌した。8時間後に、並行式水素化装置を室温に冷却し、放圧し、そしてそれぞれの試験管をGC(DB−Wax)によって分析した。
【0081】
これらの条件下で、第1表に報告される幾つかの錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を試験した。結果は、第2表に報告される。
【0082】
第1表:使用された錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)の構造および名称
【表3】
【0083】
第2表:単離された錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を使用したアセトフェノンの水素化:
【表4】
C/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:8時間後のアセトフェノンから1−フェニルエタノールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃または100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中の1−フェニルエタノールの量(%)。
【0084】
実施例8
インサイチューで生成される錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を使用したアセトフェノンの接触水素化
典型的な実験手順は、以下の通りである:
溶液ストック:
− THF中の0.11Mのカルボン酸溶液、
− THF中の0.018Mの錯体Fe(L−1)(CO)Hの溶液、
− THF中の3Mのアセトフェノンの溶液。
【0085】
Fe(L−1−H)(CO)(H)の1mlの溶液(0.018M)中に、0.2mLのカルボン酸溶液(0.11M)を添加した。Fe(L−1)(CO)(H)(カルボン酸)の0.015Mの溶液が、15分間の撹拌後に得られた。
【0086】
グローブボックス中でアルゴン下に、試験管にKBF4(10mol%)を装入するか、または装入しなかった。次いでアセトフェノン(3Mで1ml、3.0mmol)を添加し、引き続きFe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)(0.015Mで1mL、0.015mmol)を添加した。前記試験管を、次いで並行式水素化装置に入れ、相応の温度に加熱し、次いで水素ガスで20barに加圧し、機械的に撹拌した。8時間後に、並行式水素化装置を室温に冷却し、放圧し、そしてそれぞれの試験管をGC(DB−Wax)によって分析した。
【0087】
これらの条件下で、第3表に報告される幾つかの錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を試験した。結果は、第4表に報告される。
【0088】
第3表:インサイチューで錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を生成するためにカルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)錯体(Fe(L−1−H)(CO)(H))と一緒に使用されるカルボン酸の構造および名称
【表5】
【0089】
第4表:相応のカルボン酸およびカルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)、つまり(Fe(L−1−H)(CO)(H))錯体からインサイチューで形成される錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を使用したアセトフェノンの水素化
【表6】
C/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:8時間後のアセトフェノンから相応の1−フェニルエタノールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中の1−フェニルエタノールの量(%)。
【0090】
実施例9
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を式MXの様々な塩と一緒に使用したアセトフェノンの接触水素化
実施例8に記載される典型的な手順に従う。これらの条件下で、第5表に報告される幾つかの式MXの塩を試験した。結果は、第6表に報告される。
【0091】
第5表:カルボニルヒドリドホルメートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H))またはカルボニルヒドリドアセテートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me))(インサイチューで生成)と一緒に使用される式MXの塩の構造および名称
【表7】
【0092】
第6表:相応のカルボン酸およびカルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)、つまり(Fe(L−1−H)(CO)H)錯体から相応のMXを用いてインサイチューで形成される錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を使用したアセトフェノンの水素化
【表8】
C/MX:基質に対する触媒/MX比(ppm)
Conv.:8時間後のアセトフェノンから相応の1−フェニルエタノールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中の1−フェニルエタノールの量(%)。
【0093】
実施例10
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)と一緒に種々の溶剤を使用したアセトフェノンの接触水素化
典型的な実験手順は、以下の通りである:
グローブボックス中でアルゴン下に、試験管に、連続的にFe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)(0.5mol%)を装入し、次いでアセトフェノン(3mmol)の相応の溶剤(2mL)中の溶液を装入した。前記試験管を、次いで並行式水素化装置に入れ、相応の温度に加熱し、次いで水素ガスで20barに加圧し、機械的に撹拌した。8時間後に、並行式水素化装置を室温に冷却し、放圧し、そしてそれぞれの試験管をGC(DB−Wax)によって分析した。
【0094】
これらの条件下で、幾つかの溶剤と一緒に錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)を試験した。結果は、第7表に報告される。
【0095】
第7表:単離された錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)R)と一緒に種々の溶剤を使用したアセトフェノンの水素化
【表9】
C:基質に対する触媒比(ppm)
Conv.:8時間後のアセトフェノンから相応の1−フェニルエタノールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃または100℃、溶剤(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中の1−フェニルエタノールの量(%)。
【0096】
実施例11
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)(C1)を用いたアルデヒドおよびケトンの接触水素化
典型的な実験手順は、以下の通りである:
グローブボックス中でアルゴン下に、試験管に、連続的にFe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)(0.5mol%)を、KBF4(10mol%)と一緒に、またはそれを加えずに装入した。次いで、相応のケトンまたはアルデヒド(3mmol)をTHF(2mL)中に溶かして添加した。前記試験管を、次いで並行式水素化装置に入れ、相応の温度に加熱し、次いで水素ガスで20barに加圧し、機械的に撹拌した。16時間後に、並行式水素化装置を室温に冷却し、放圧し、そしてそれぞれの試験管をGC(DB−Wax)によって分析した。こうして相応のアルコールへの転化が示された。
【0097】
これらの条件下で、第8表に報告される幾つかのアルデヒドおよびケトンを試験した。結果は、第9表に報告される。
【0098】
第8表:アルデヒドおよびケトンの構造および名称
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
第9表:錯体カルボニルヒドリドホルメートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H))を使用した種々のアルデヒドおよびケトンの水素化
【表12】
C1/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:16時間後の相応のアルデヒドまたはケトンの相応のアルコールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中のアルコールの量(%)
Sel.:GCによって分析された不飽和アルコールおよび飽和アルコールの間の比率として示される選択性。
【0101】
実施例12
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me)(C3)を用いたアルデヒドおよびケトンの接触水素化
実施例11に記載される典型的な手順に従うが、錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)を、錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me)に置き換えた。
【0102】
これらの条件下で、第8表に報告される幾つかのアルデヒドおよびケトンを試験した。結果は、第10表に報告される。
【0103】
第10表:錯体カルボニルヒドリドアセテートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me))を使用した種々のアルデヒドおよびケトンの水素化
【表13】
C3/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:16時間後の相応のアルデヒドまたはケトンの相応のアルコールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中のアルコールの量(%)
Sel.:GCによって分析された不飽和アルコールおよび飽和アルコールの間の比率として示される選択性。
【0104】
実施例13
錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)tBu)(C2)を用いたアルデヒドおよびケトンの接触水素化
実施例11に記載される典型的な手順に従うが、錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)を、(Fe(L−1)(CO)(H)OC(O)tBu))に置き換えた。
【0105】
これらの条件下で、第8表に報告される幾つかのアルデヒドおよびケトンを試験した。結果は、第11表に報告される。
【0106】
第11表:錯体カルボニルヒドリドピバレートビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)tBu))を使用した種々のアルデヒドおよびケトンの水素化
【表14】
C2/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:16時間後の相応のアルデヒドまたはケトンの相応のアルコールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中のアルコールの量(%)
Sel.:GCによって分析された不飽和アルコールおよび飽和アルコールの間の比率として示される選択性。
【0107】
実施例14
先行技術の錯体Fe(L−1)(CO)(H)(BH4)(C5)を用いたアルデヒドおよびケトンの比較用接触水素化
実施例11に記載される典型的な手順に従うが、錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)を、錯体Fe(L−1)(CO)(H)(BH4)に置き換えた。
【0108】
これらの条件下で、第8表に報告される幾つかのアルデヒドおよびケトンを試験した。結果は、第12表に報告される。
【0109】
第12表:本発明の錯体(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H)(C1)、(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)Me)(C3)または(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)tBu)(C2))と比較した、錯体カルボニルヒドリドボロヒドリドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)(Fe(L−1)(CO)(H)(BH4)(C5))を使用した種々のアルデヒドおよびケトンの水素化
【表15】
C/MX2:基質に対する触媒/KBF4比(ppm)
Conv.:16時間後の相応のアルデヒドまたはケトンの相応のアルコールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中のアルコールの量(%)
Sel.:GCによって分析された不飽和アルコールおよび飽和アルコールの間の比率として示される選択性。
【0110】
実施例15
錯体C1(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H))およびFe(L−1)(CO)(H)(Cl)と一緒にMXを用いるか、または塩基性活性化方式でのアルデヒドおよびケトンの比較用接触水素化
実施例11に記載される典型的な手順に従う。
【0111】
これらの条件下で、第8表に報告される幾つかのアルデヒドおよびケトンを試験した。結果は、第13表に報告される。
【0112】
第13表:錯体C1(Fe(L−1)(CO)(H)(OC(O)H))およびFe(L−1)(CO)(H)(C1)と一緒にMX2を用いるか、または塩基性活性化方式での種々のアルデヒドおよびケトンの水素化
【表16】
C:基質に対する触媒(ppm)
MX2:基質に対するKBF4(ppm)
B:基質に対する塩基(tBuOK)(ppm)
Conv.:16時間後の相応のアルデヒドまたはケトンの相応のアルコールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜80℃、THF(1.5M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中のアルコールの量(%)
Sel.:GCによって分析された不飽和アルコールおよび飽和アルコールの間の比率として示される選択性
Poly.:重合。
【0113】
実施例16
インサイチューで生成される錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OR)を使用したアセトフェノンの接触水素化
典型的な実験手順は、以下の通りである:
溶液ストック:
− THF中の0.015Mの錯体Fe(L−1)(CO)Hの溶液、
− THF中の3Mのアセトフェノンの溶液。
【0114】
グローブボックス中でアルゴン下に、試験管に、KBF4(10mol%)を装入するか、または装入しなかった。次いで、Fe(L−1−H)(CO)(H)(0.015Mで1mL、0.015mmol)の溶液を添加し、それに続き相応のアルコール(0.25ml)およびTHF(0.75ml)を添加した。最後に、アセトフェノン(3Mで1ml、3.0mmol)を添加し、そして前記試験管を、次いで並行式水素化装置に入れ、相応の温度に加熱し、次いで水素ガスで20barに加圧し、機械的に撹拌した。1時間後に、並行式水素化装置を室温に冷却し、放圧し、そしてそれぞれの試験管をGC(DB−Wax)によって分析した。
【0115】
これらの条件下で、第14表に報告される幾つかの錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OR)を試験した。結果は、第15表に報告される。
【0116】
第14表:インサイチューで錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OR)を生成するためにカルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)錯体(Fe(L−1−H)(CO)(H))と一緒に使用されるアルコールの構造および名称
【表17】
【0117】
第15表:相応のアルコールおよびカルボニルアミドビス[2−(ジイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン鉄(II)、つまり(Fe(L−1−H)(CO)(H))錯体からインサイチューで形成される錯体Fe(L−1)(CO)(H)(OR)を使用したアセトフェノンの水素化
【表18】
C/A/MX2:基質に対する触媒/アルコール/KBF4比(ppm)
Conv.:示された時間(時間)後のアセトフェノンから相応の1−フェニルエタノールへの転化率(%、GCによって分析)。反応条件:H2ガス(20bar)、50℃〜100℃、THF(1M)
ROH:GCによって分析された反応混合物中の形成された2−フェニルエタノールの量(%)
[a]H2ガス(5bar)下で行われた反応。