(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0012】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、
図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。作業車両1の走行は、自律走行、セミ自律走行、オペレータの操作による走行のいずれの形式であってもよい。
【0013】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。
【0014】
リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0015】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0016】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0017】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、
図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0018】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0019】
制御システム3は、操作装置25aと、コントローラ26と、記憶装置28と、制御弁27とを備える。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25aは、運転室14に配置されている。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25aは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0020】
例えば、走行装置12用の操作装置25aは、前進位置と後進位置と中立位置とに操作可能に設けられる。操作装置25aの位置を示す操作信号は、コントローラ26に出力される。コントローラ26は、操作装置25aの操作位置が前進位置であるときには、作業車両1が前進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。操作装置25aの操作位置が後進位置であるときには、コントローラ26は、作業車両1が後進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。
【0021】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ26は、操作装置25aから操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。なお、コントローラ26は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0022】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した操作装置25aの操作に応じてブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が、操作装置25aの操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0023】
制御システム3は、リフトシリンダセンサ29を備える。リフトシリンダセンサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。
図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。
図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
【0024】
図3では、作業機13の原点位置が二点鎖線で示されている。作業機13の原点位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の原点位置からの角度である。
【0025】
図2に示すように、制御システム3は、位置検出装置31を備えている。位置検出装置31は、作業車両1の位置を測定する。位置検出装置31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ32のアンテナは、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナの位置を演算して車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。コントローラ26は、車体位置データにより、作業車両1の進行方向と車速とを得る。
【0026】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データを取得する。
【0027】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置データと、車体傾斜角データとから、刃先位置P0を演算する。
図3に示すように、コントローラ26は、車体位置データに基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法データに基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置P0のローカル座標を算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置P0のローカル座標と車体傾斜角データとに基づいて、刃先位置P0のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置P0のグローバル座標を刃先位置データとして取得する。
【0028】
記憶装置28は、例えばメモリーと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサによって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0029】
記憶装置28は、設計地形データと作業現場地形データとを記憶している。設計地形データは、最終設計地形を示す。最終設計地形は、作業現場の表面の最終的な目標形状である。設計地形データは、例えば、三次元データ形式の土木施工図である。作業現場地形データは、作業現場の現況の地形を示す。作業現場地形データは、例えば、三次元データ形式の現況地形測量図である。作業現場地形データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。
【0030】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況地形を示す。作業現場の現況地形は、作業車両1の進行方向に沿う領域の地形である。現況地形データは、作業現場地形データと上述の位置検出装置31から得られる作業車両1の位置と進行方向とからコントローラ26での演算により取得される。
【0031】
コントローラ26は、現況地形データと、設計地形データと、刃先位置データとに基づいて、作業機13を自動的に制御する。なお、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作と合わせて行われる半自動制御であってもよい。或いは、作業機13の自動制御は、オペレータによる手動操作無しで行われる完全自動制御であってもよい。
【0032】
以下、コントローラ26によって実行される、掘削における作業機13の自動制御について説明する。
図4は、掘削作業における作業機13の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0033】
図4に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置P0を取得する。
【0034】
ステップS102では、コントローラ26は、作業車両1の進行方向を取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、位置検出装置31が検出した車体位置データから、作業車両1の進行方向を取得する。
【0035】
ステップS103では、コントローラ26は、設計地形データを取得する。
図5に示すように、設計地形データは、作業車両1の進行方向において、複数の参照点Pn(n=0,1,2,3,...,A)での最終設計地形60の高さZdesignを含む。複数の参照点Pnは、作業車両1の進行方向に沿う所定間隔ごとの複数地点を示す。複数の参照点Pnは、ブレード18の進行パス上にある。なお、
図5では、最終設計地形60は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0036】
ステップS104では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。コントローラ26は、記憶装置28より得られる作業現場地形データと、位置検出装置31より得られる車体の位置データ及び進行方向データから演算により、現況地形データを取得する。
【0037】
現況地形データは、作業車両1の進行方向に位置する地形を示す情報である。
図5は、現況地形50の断面を示す。なお、
図5において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業車両1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0038】
詳細には、現況地形データは、作業車両1の進行方向において、現在位置から所定の地形認識距離dAまでの複数の参照点Pnでの現況地形50の高さZnを含む。本実施形態において、現在位置は、作業車両1の現在の刃先位置P0に基づいて定められる位置である。ただし、現在位置は、作業車両1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。複数の参照点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる。
【0039】
図6は、作業現場地形データの一例を示す図である。作業現場地形データは、作業現場の現況地形を水平面上のグリッドで複数のエリアAmに区画し、各エリアAmでの現況地形の高さを示す。グリッドの目の大きさ、すなわち各エリアAmの大きさは、例えば1m×1mであるが、これに限らず異なる大きさであってもよい。作業現場地形データは、各エリアAmの中心点Cmの北方向距離(Northing), 東方向距離(Easting) 平面上の座標と、当該中心点Cmでの現況地形の高さを示す。なお、
図6では、複数のエリアの一部のみに符号“Am”及びその中心点の符号“Cm”を付して、他のエリアについては符号を省略している。
【0040】
図6に示すように、コントローラ26は、作業車両1の進行方向Hに沿って、刃先位置P0から所定距離dA内に位置する複数の参照点Pnを決定する。そして、コントローラ26は、各参照点Pnでの現況地形50の高さZnを、各参照点Pnの周囲のエリアAmでの現況地形の高さから算出する。
【0041】
例えば、コントローラ26は、各参照点Pnでの現況地形50の高さZnを、各参照点Pnの周囲の4つのエリアAmでの現況地形の高さから、線形補完により算出する。ただし、線形補完以外の手法によって、現況地形50の高さZnが取得されてもよい。これにより、
図5に示すように、コントローラ26は、作業車両1の進行方向に沿った複数の参照点Pnでの現況地形50の高さZnを、現況地形データとして取得する。
【0042】
ステップS105では、コントローラ26は、掘削開始位置を取得する。例えば、コントローラ26は、刃先位置P0が、現況地形50の高さZ0を最初に下回ったときの位置を掘削開始位置として取得する。これにより、ブレード18の刃先が下げられて現況地形50を掘削し始めた位置が掘削開始位置として取得される。ただし、コントローラ26は、他の方法によって、掘削開始位置を取得してもよい。例えば、コントローラ26は、操作装置25aの操作に基づいて、掘削開始位置を取得してもよい。例えば、コントローラ26は、ボタン、或いは、タッチパネルによる画面操作などの操作に基づいて、掘削開始位置を取得してもよい。
【0043】
ステップS106では、コントローラ26は、作業車両1の移動量を取得する。コントローラ26は、ブレード18の進行パスにおいて掘削開始位置から現在位置まで進んだ距離を、移動量として取得する。作業車両1の移動量は、車体11の移動量であってもよい。或いは、作業車両1の移動量は、ブレード18の刃先の移動量であってもよい。
【0044】
ステップS107では、コントローラ26は、目標設計地形データを決定する。目標設計地形データは、
図5に破線で記載された目標設計地形70を示す。目標設計地形70は、作業におけるブレード18の刃先の望まれる軌跡を示す。目標設計地形70は、作業対象である地形の目標プロファイルであり、掘削作業の結果として望まれる形状を示す。
【0045】
図5に示すように、コントローラ26は、現況地形50から、目標変位Z_offset、下方に変位した目標設計地形70を決定する。目標変位Z_offsetは、各参照点での鉛直方向における目標変位である。本実施形態において、目標変位Z_offsetは、各参照点での目標深さであり、現況地形50の下方におけるブレード18の目標位置を示す。ブレード18の目標位置とは、ブレード18の刃先位置を意味する。言い換えれば、目標変位Z_offsetは、ブレード18によって掘削される単位移動量当たりの土量を示す。従って、目標設計地形データは、複数の参照点と複数の目標土量との関係を示す。目標変位Z_offsetは、ブレード18への負荷に関係する目標負荷パラメータの一例である。
【0046】
なお、コントローラ26は、最終設計地形60を下方に越えないように、目標設計地形70を決定する。従って、コントローラ26は、掘削作業時には、最終設計地形60以上、且つ、現況地形50より下方に位置する目標設計地形70を決定する。
【0047】
詳細には、コントローラ26は、以下の数1式により、目標設計地形70の高さZを決定する。
[数1]
Z = Zn - Z_offset
目標変位Z_offsetは、目標変位データCを参照することで決定される。目標変位データCは、記憶装置28に記憶されている。
図7は、目標変位データCの一例を示す図である。目標変位データCは、作業車両1の移動量nと、目標変位Z_offsetとの関係を規定する。
【0048】
詳細には、目標変位データCは、ブレード18の地表からの鉛直下方向への掘削深さ(目標変位)Z_offsetを、作業車両1の水平方向の移動量nの従属変数として示す。作業車両1の水平方向の移動量nは、ブレード18の水平方向の移動量と実質的に同じ値である。コントローラ26は、
図7に示す目標変位データCを参照して、作業車両1の移動量nから、目標変位Z_offsetを決定する。
【0049】
図7に示すように、目標変位データCは、開始時データc1と、掘削時データc2と、移行時データc3と、運土時データc4とを含む。開始時データc1は、掘削開始領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。掘削開始領域は、掘削開始点Sから定常掘削開始点Dまでの領域である。開始時データc1で示されるように、掘削開始領域では、移動量nの増大に応じて徐々に増大する目標変位Z_offsetが規定される。開始時データc1は、移動量nに対して線的に増加する目標変位Z_offsetを規定する。
【0050】
掘削時データc2は、掘削領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。掘削領域は、定常掘削開始点Dから運土移行開始点Tまでの領域(第1領域)である。掘削時データc2で示されるように、掘削領域では、目標変位Z_offsetは、一定値に規定される。掘削時データc2は、移動量nに対して一定の目標変位Z_offsetを規定する。
【0051】
移行時データc3は、運土移行領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。運土移行領域は、定常掘削終了点Tから運土開始点Pまでの領域である。移行時データc3で示されるように、運土移行領域では、移動量nの増大に応じて徐々に減少する目標変位Z_offsetが規定される。移行時データc3は、移動量nに対して線的に減少する目標変位Z_offsetを規定する。
【0052】
運土時データc4は、運土領域での移動量nと目標変位Z_offsetとの関係を規定する。運土領域は、運土開始点Pから開始される領域(第2領域)である。運土時データc4に示されるように、運土領域では、目標変位Z_offsetは一定値に規定される。運土時データc4は、移動量nに対して一定の目標変位Z_offsetを規定する。
【0053】
詳細には、掘削領域は、第1開始値b1から開始され、第1終了値b2で終了する。運土領域は、第2開始値b3から開始される。第1終了値b2は、第2開始値b3よりも小さい。従って、掘削領域は、運土領域よりも、移動量nが小さいときに開始される。掘削領域での目標変位Z_offsetは、第1目標値a1で一定である。運土領域での目標変位Z_offsetは、第2目標値a2で一定である。第1目標値a1は、第2目標値a2よりも大きい。従って、掘削領域では運土領域よりも大きな目標変位Z_offsetが規定される。
【0054】
掘削開始位置での目標変位Z_offsetは、開始値a0である。開始値a0は、第1目標値a1よりも小さい。開始目標値a0は、第2目標値a2よりも小さい。
【0055】
図8は、目標変位Z_offsetの決定処理を示すフローチャートである。説明を簡単にするため、以下に説明する決定処理では、作業車両1の走行は前進のみであるものとする。決定処理は、操作装置25aが前進の位置に移動すると開始される。ステップS201では、コントローラ26は、移動量nが0以上、且つ、第1開始値b1未満であるか判定する。移動量nが0以上、且つ、第1開始値b1未満であるときには、ステップS202において、コントローラ26は、移動量nの増大に応じて、目標変位Z_offsetを開始値a0から徐々に増大させる。
【0056】
開始値a0は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。開始値a0は、掘削開始時にブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度に小さな値であることが好ましい。第1開始値b1は、
図7に示す掘削開始領域での傾きc1、開始値a0、及び第1目標値a1から演算により求められる。傾きc1は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。傾きc1は、掘削開始から掘削作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0057】
ステップS203では、コントローラ26は、移動量nが、第1開始値b1以上、且つ、第1終了値b2未満であるか判定する。移動量nが、第1開始値b1以上、且つ、第1終了値b2未満であるときには、ステップS204において、コントローラ26は、目標変位Z_offsetを第1目標値a1に設定する。第1目標値a1は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。第1目標値a1は、効率よく掘削を行うことができると共に、ブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0058】
ステップS205では、コントローラ26は、移動量nが、第1終了値b2以上、且つ、第2開始値b3未満であるか判定する。移動量nが、第1終了値b2以上、且つ、第2開始値b3未満であるときには、ステップS206において、コントローラ26は、移動量nの増大に応じて、目標変位Z_offsetを第1目標値a1から徐々に低減させる。
【0059】
第1終了値b2は、ブレード18の現在の保有土量が、所定の閾値を越えるときの移動量である。従って、ブレード18の現在の保有土量が、所定の閾値を越えたときに、コントローラ26は、目標変位Z_offsetを第1目標値a1から低減させる。所定の閾値は、例えばブレード18の最大容量に基づいて決定される。例えば、ブレード18の現在の保有土量は、ブレード18への負荷が測定され、当該負荷から演算により決定されてもよい。或いは、ブレード18の画像がカメラによって取得され、当該画像を分析することによって、ブレード18の現在の保有土量が算出されてもよい。
【0060】
なお、作業開始時には、第1終了値b2として、所定の初期値が設定される。作業開始後には、ブレード18の保有土量が所定の閾値を越えたときの移動量が更新値として記憶され、第1終了値b2は記憶された更新値に基づいて更新される。
【0061】
ステップS207では、コントローラ26は、移動量nが、第2開始値b3以上であるか判定する。移動量nが、第2開始値b3以上であるかときには、ステップS208において、コントローラ26は、目標変位Z_offsetを第2目標値a2に設定する。
【0062】
第2目標値a2は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。第2目標値a2は、運土作業に適した値に設定されることが好ましい。第2開始値b3は、
図7に示す運土移行領域での傾きc2、第1目標値a1、及び第2目標値a2から演算により求められる。傾きc2は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。傾きc2は、掘削作業から運土作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0063】
なお、開始値a0、第1目標値a1、及び第2目標値a2は、作業車両1の状況等に応じて変更されてもよい。第1開始値b1、第1終了値b2、及び第2開始値b3は、定数として記憶装置28に記憶されてもよい。
【0064】
以上のように、目標変位Z_offsetが決定されることで、目標設計地形70の高さZが決定される。
【0065】
図4に示すステップS108では、コントローラ26は、目標設計地形70に向ってブレード18を制御する。ここでは、コントローラ26は、ステップS107で作成した目標設計地形70に向ってブレード18の刃先位置が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、作業機13の刃先位置P0が目標設計地形70に沿って移動する。
【0066】
上述した掘削領域では、現況地形50と目標設計地形70との間の目標変位Z_offsetが、他の領域と比べて大きい。これにより、掘削領域では、現況地形50の掘削作業が行われる。運土領域では、現況地形50と目標設計地形70との間の目標変位Z_offsetが他の領域と比べて小さい。これにより、運土領域では、地面の掘削が控えられ、ブレード18に保持されている土砂が運搬される。
【0067】
ステップS109では、コントローラ26は、作業現場地形データを更新する。コントローラ26は、刃先位置P0の最新の軌跡を示す位置データによって作業現場地形データを更新する。或いは、コントローラ26は、車体位置データと車体寸法データとから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置データによって作業現場地形データを更新してもよい。この場合、作業地形データの更新は即時に行うことができる。
【0068】
或いは、作業現場地形データは、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから作業現場地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。外部の測量装置又はカメラの場合、作業現場地形データの更新は、所定周期ごと、あるいは随時に行われてもよい。
【0069】
なお、上記の処理は、作業車両1が前進しているときに実行される。例えば、走行装置12用の操作装置25aが前進位置であるときに、上記の処理が実行される。ただし、作業車両1が、所定距離以上、後進すると、掘削開始位置、及び、移動量nは、初期化される。また、ブレード18の保有土量も初期化される。
【0070】
そして、再び作業車両1が前進したときに、上記の処理が実行される。コントローラ26は、更新された作業現場地形データを基に現況地形50を更新し、更新された現況地形50に基づいて、目標設計地形70を新たに決定する。そして、コントローラ26は、新たに決定された目標設計地形70に沿って、ブレード18を制御する。このような処理が繰り返されることにより、現況地形50が最終設計地形60に近づくように、掘削が行われる。
【0071】
コントローラ26は、上記実施形態では、所定距離、前進するごとに、或いは、前進中の所定時間ごとに、ステップS101からS109の処理を繰り返す。しかし、コントローラ26は、所定距離、後進するごとに、或いは、後進中の所定時間ごとに、ステップS101からS109の処理を繰り返してもよい。この場合、作業車両1が、所定距離以上、前進すると、掘削開始位置、及び、移動量nは初期化されてもよい。コントローラ26は、作業車両1が、所定距離、移動するごとに、或いは、所定時間ごとに、ステップS101からS109の処理を繰り返してもよい。ステップS101において、コントローラ26は、現在位置データを新たに取得して更新する。また、ステップS102において、コントローラ26は、作業車両1の進行方向を新たに取得して更新する。従って、コントローラ26は、作業車両1の進行方向が変更された場合には、変更された進行方向を取得して、変更された進行方向に基づいて、目標設計地形70を更新する。
【0072】
例えば、
図9に示すように、参照点P6において、作業車両1の進行方向が変更されたとする。その場合、コントローラ26は、ステップS103において、変更された進行方向に基づいて、設計地形データを更新する。また、コントローラ26は、ステップS104において、変更された進行方向に基づいて、現況地形データを更新する。
【0073】
コントローラ26は、更新された進行方向に沿って新たな参照点Pnを決定する。コントローラ26は、作業現場地形データを参照して、新たな参照点Pnの周囲のエリアAmの高さから、新たな参照点Pnでの現況地形50の高さZnを算出する。これにより、
図9に示すように、コントローラ26は、更新された進行方向に基づいて、更新された現況地形50’を決定し、更新された現況地形50’を示す現況地形データを取得する。なお、進行方向が変更されても、ステップS105において掘削開始位置は当初の位置に維持される。また、S106において車両の移動量も維持される。
【0074】
ステップS107において、コントローラ26は、更新された現況地形データに基づいて、目標設計地形データを更新する。ここでは、
図9に示すように、コントローラ26は、更新された現況地形50’を鉛直方向に目標変位Zoffset変位させた目標設計地形70’を決定する。それにより、目標設計地形が、進行方向の変更前の目標設計地形70(以下、第1の目標設計地形70)から、進行方向の変更後の目標設計地形70’(以下、第2の目標設計地形70’)に変更される。ステップS108,S109の処理については、上述した処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
なお、作業車両1の進行方向は、GNSSレシーバ32の車体位置データから得られる作業車両1の実際の進行方向、すなわち作業車両1の実際の方位であってもよい。或いは、作業車両1の進行方向は、コントローラ26によって設定された作業車両1の目標方位であってもよい。コントローラ26は、作業車両1の進行方向を目標方位に維持するように、作業車両1を制御してもよい。
【0076】
以上説明した、本実施形態に係る作業車両1の制御システム3によれば、コントローラ26は、目標変位データを参照して、移動量nに応じた目標変位Z_offsetを決定する。そして、コントローラ26は、現況地形50から目標変位Z_offset、鉛直方向に変位した目標設計地形70を決定する。このような目標設計地形70に向ってブレード18が制御されることで、大きな凹凸を生成させることなく、スムーズに作業を行うことができる。
【0077】
掘削作業では、作業車両1の移動量nが小さいときには、ブレード18での保有土量は少ない。従って、作業車両1の移動量nが小さい掘削領域において、大きな目標変位Z_offsetが設定されることで、効率よく掘削作業を行うことができる。
【0078】
作業車両1の移動量nが大きいときには、ブレード18での保有土量は多い。そのため、作業車両1の移動量nが大きい運土領域では、小さな目標変位Z_offsetが設定されることで、保有土量が過剰となることを防止することができる。これにより、ブレード18に過剰な負荷がかかることを防止することができる。或いは、ブレード18から土が漏れることを抑えることができる。
【0079】
コントローラ26は、現在の保有土量が所定の閾値より大きくなった時点での作業車両1の移動量nを、第1終了値b2として決定する。これにより、保有土量が過剰となることを、さらに精度良く防止することができる。
【0080】
コントローラ26は、作業車両1の進行方向を更新し、更新された進行方向に基づいて目標設計地形70を更新する。従って、作業車両1の進行パスの途中で、作業車両1の進行方向が進行パスの開始点での進行方向から変更されたときには、目標設計地形が、当初の第1の目標設計地形70から、第2の目標設計地形70’に変更される。そのため、作業車両1の走行中に、障害物、或いは、作業機13への負荷の偏り等の原因によって、作業車両1の進行パスの途中で、進行方向が変更された場合にも、作業を効率よく継続することができる。
【0081】
なお、進行パスの開始点は、上述した掘削開始位置であるが、他の位置であってもよい。例えば、進行パスの開始点は、オペレータによって任意に指定された地点であってもよい。或いは、進行パスの開始点は、コントローラによって自動的に決定された地点であってもよい。
【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0083】
作業車両1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。
【0084】
作業車両1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業車両1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0085】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラ26を有してもよい。例えば、
図10に示すように、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業車両1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、目標設計地形70を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0086】
操作装置25aは、作業車両1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両1から省略されてもよい。或いは、操作装置25aが作業車両1から省略されてもよい。操作装置25aによる操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業車両1が操作されてもよい。
【0087】
現況地形50は、上述した位置検出装置31に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、
図11に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ−ス装置37によって現況地形50が取得されてもよい。インターフェ−ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ−ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形データを記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0088】
コントローラ26は、平滑化された現況地形50に基づいて、目標設計地形70を決定してもよい。すなわち、コントローラ26は、平滑化された現況地形50から、目標変位Z_offset、変位した目標設計地形70を決定してもよい。平滑化とは、現況地形50の高さ変化をなだらかにする処理を意味する。例えば、コントローラ26は、以下の数2式によって現況地形50の複数の地点での高さZnを平滑化してもよい。
[数2]
Zn_smは、平滑化された現況地形50における各地点の高さを示している。なお、数2式では、5つの地点の高さの平均値により平滑化を行っている。しかし、平滑化に用いる地点の数は5つより少ない、或いは5つより大きくてもよい。平滑化に用いる地点の数が変更可能であり、オペレータは、平滑化に用いる地点の数を変更することで、所望の平滑の度合いに設定可能であってもよい。また、平滑化の対象となる地点、及び、その前後の地点の高さの平均値に限らず、平滑化の対象となる地点、及び、その前方に位置する地点の高さの平均値が算出されてもよい。或いは、平滑化の対象となる地点、及び、その後方に位置する地点の高さの平均値が算出されてもよい。或いは、平均値に限らず、他の平滑化処理が用いられてもよい。
【0089】
目標変位データは、目標負荷パラメータと移動量との関係を示すデータであってもよい。或いは、コントローラ26は、目標負荷パラメータと作業車両1の現在位置との関係を示す目標負荷パラメータデータを参照して、目標設計地形を決定してもよい。目標負荷パラメータは、作業機13への負荷に関係するパラメータであればよく、上記の実施形態のような目標変位に限らない。
【0090】
例えば、
図12は、目標負荷パラメータデータの他の例を示す図である。
図12に示すように、目標負荷パラメータは、平坦な地形の各地点ごとの目標土量S_targetであってもよい。すなわち、目標負荷パラメータは、単位距離当たりの目標土量S_targetであってもよい。例えば、コントローラ26は、目標土量S_targetとブレード13の幅とから、目標変位Z_offsetを算出することができる。
【0091】
或いは、目標負荷パラメータは、単位距離当たりの目標土量S_targetと異なるパラメータであってもよい。例えば、目標負荷パラメータは、各地点での作業機13への負荷の目標値を示すパラメータであってもよい。コントローラ26は、目標負荷パラメータから各地点ごとの目標変位Z_offsetを算出することができる。その場合、コントローラ26は、目標負荷パラメータの増大に応じて、目標変位Z_offsetを増大させてもよい。
【0092】
図13に示すように、コントローラ26は、現況地形50から、目標変位Z_offset、上方に変位した目標設計地形70を決定してもよい。この場合、掘削作業に代えて盛土作業を行うことができる。
【0093】
目標変位Z_offsetに所定の係数が乗じられてもよい。或いは、目標変位Z_offsetに所定の定数が加算、或いは減算されてもよい。所定の係数、及び、所定の定数は、制御モードの変更に応じて変更されてもよい。