(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)組成物が、母親または潜在的な母親からの中和複合体の除去と併用され、任意で、中和複合体の除去がアフィニティープラスマフェレーシスにより実施される、かつ/または
(b)組成物が、静脈内投与用に製剤化されている、
請求項15記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
I.導入
自閉症スペクトラム症(ASD)は、150人中1人もの子供を冒す重篤な神経発達障害である。ASDを有する子の母親のサブセットにおいて、およそ37 kDa、39 kDaおよび73 kDaの分子量のヒト胎児脳タンパク質に対して特異性を有する母親由来IgG抗体の存在が記載された。例えば、米国特許第7,452,681号を参照のこと。本発明は、部分的には、胎児または子などの出生児がASDを発症するリスクの増加を表す移行抗体へ特異的に結合するペプチド(例えば、ペプチドエピトープ)の同定に基づく。本明細書に記載されるペプチドエピトープは、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)についてのものを含む。母親または潜在的な母親の生体試料中のペプチドエピトープのうちの1つまたは複数に対する母親由来自己抗体の存在は、出生児がASDを発症するリスクの増加を示す。ペプチドエピトープまたはそれらのミモトープはまた、母親由来自己抗体とそれらの抗原との結合をブロックし、それによって母親由来自己抗体を中和するために、母親または潜在的な母親へ投与することができ、母親由来自己抗体へ結合されたペプチドエピトープを含む中和された複合体は、任意で、アフィニティープラスマフェレーシスのような体外療法を使用して除去される。
【0037】
II.定義
本明細書において使用される場合、以下の用語は、特別の定めのない限り、それらに割り当てられた意味を有する。
【0038】
用語「自閉症スペクトラム症」、「自閉症スペクトラム障害」、「自閉症」または「ASD」は、反復的かつ常同的な行動を伴う社会的相互関係およびコミュニケーションの障害によって特徴付けられる神経発達障害のスペクトラムを指す。自閉症は、社会的相互関係およびコミュニケーションの障害のスペクトラムを含み、しかしながら、この障害は、社会的相互関係およびコミュニケーションの機能障害の程度に依存して、「高機能自閉症」または「低機能自閉症」に大雑把に分類され得る。「高機能自閉症」と診断された個人は、最小であるが識別可能な社会的相互関係およびコミュニケーションの機能障害(即ち、アスペルガー症候群)を有する。自閉症スペクトラム症に関する追加情報は、例えば、Autism Spectrum Disorders: A Research Review for Practitioners, Ozonoff, et al., eds., 2003, American Psychiatric Pub; Gupta, Autistic Spectrum Disorders in Children, 2004, Marcel Dekker Inc; Hollander, Autism Spectrum Disorders, 2003, Marcel Dekker Inc; Handbook of Autism and Developmental Disorders, Volkmar, ed., 2005, John Wiley; Sicile-Kira and Grandin, Autism Spectrum Disorders: The Complete Guide to Understanding Autism, Asperger’s Syndrome, Pervasive Developmental Disorder, and Other ASDs, 2004, Perigee Trade; およびDuncan, et al., Autism Spectrum Disorders [Two Volumes]: A Handbook for Parents and Professionals, 2007, Praegerに見出すことができる。
【0039】
用語「定型発達」および「TD」は、自閉症スペクトラム症(ASD)と診断されなかった対象を指す。定型発達児は、ASDに関連するコミュニケーション能力の障害、社会的相互関係の障害、またはASDの診断と典型的に関連する重症度を伴う反復的かつ/もしくは常同的な行動を示さない。定型発達児は、ASDと診断された子によって示されるいくつかの行動を示し得るが、定型発達児は、ASDの診断を支持する行動の群および/または重症度を示さない。
【0040】
用語「乳酸デヒドロゲナーゼ」または「LDH」は、NADHおよびNAD+の同時相互変換を伴うピルビン酸塩および乳酸塩の相互変換を触媒する酵素を指す。乳酸デヒドロゲナーゼは4つの別個の酵素クラスで存在する。それらのうちの2つは、D-乳酸塩(EC 1.1.2.4)またはL-乳酸塩(EC 1.1.2.3)のいずれかに各々が作用するシトクロムc依存性酵素である。他の2つは、D-乳酸塩(EC 1.1.1.28)またはL-乳酸塩(EC 1.1.1.27)のいずれかに各々が作用するNAD(P)依存性酵素である。LDH酵素は、4つのサブユニットから構成され、ここで、サブユニットは「M」または「H」のいずれかである。LDH A遺伝子は、交換可能にLDH-MまたはLDH Aとして公知の、Mサブユニットをコードする。LDH B遺伝子は、交換可能にLDH-HまたはLDH Bとして公知の、Hサブユニットをコードする。5つのLDHアイソザイムが存在し、各々は4つのサブユニットを含有する。骨格筋および肝臓の主要なLDHアイソザイムであるLDH-5(M4)は、4つの筋(M)サブユニットを有し;一方、LDH-1(1〜14)は、大部分の種における心筋についての主なアイソザイムであり、4つの心(H)サブユニットを含有する。他のバリアントは、両方のタイプのサブユニットを含有する:例えば、網内系におけるLDH-2(H3Mi)、肺におけるLDH-3(H2M2)、および腎臓におけるLDH-4(HiM3)。LDH-2は血清における優勢形態である。LDHAは、LDH1、LDH筋サブユニット、LDH-M、EC 1.1.1.27、腎癌抗原NY-REN-59、細胞増殖誘導性遺伝子19タンパク質、PIG19およびL-乳酸デヒドロゲナーゼA鎖としても公知であり;LDHBは、LDH2またはLDH-HまたはTRG-5としても公知であり;LDHCは精巣特異的である。LDH Aアミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号AAP36496.1、BAD96798.1、NM_005566.3 ---> NP_005557.1(アイソフォーム1)、NM_001135239.1 --> NP_001128711.1(アイソフォーム2)、NM_001165414.1 --> NP_001158886.1(アイソフォーム3)、NM_001165415.1 --> NP_001158887.1(アイソフォーム4)、およびNM_001165416.1 --> NP 001158888.1(アイソフォーム5)に記載される。LDH Bアミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_002300.6 --> NP_002291.1(バリアント1)およびNM_001174097.1 --> NP 001167568.1(バリアント2)に記載される。
【0041】
用語「コラプシン反応媒介タンパク質1」または「CRMP1」(DRP1;DRP-1;CRMP-1;DPYSL1;ULIP-3としても公知)は、神経細胞分化および軸索誘導において機能することが公知の細胞質リンタンパク質を指す。CRMP1は、専ら神経系において発現される細胞質リンタンパク質のファミリーのメンバーである。コードされるタンパク質は、神経発生中のセマフォリン誘導成長円錐崩壊に関与するセマフォリンシグナル伝達経路の一部であると考えられている。CRMP1アミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_001014809.1 ---> NP_001014809.1(アイソフォーム1)およびNM_001313.3 --> NP. 001304.1(アイソフォーム2)に記載される。
【0042】
用語「コラプシン反応媒介タンパク質2」または「CRMP2」(DRP2;DRP-2;CRMP-2;DPYSL2;ULIP-2としても公知)は、神経細胞発生および極性、軸索成長および誘導、神経細胞成長円錐崩壊および細胞移動において機能することが公知の細胞質リンタンパク質を指す。CRMP2は、専ら神経系において発現される細胞質リンタンパク質のファミリーのメンバーである。コードされるタンパク質は、神経発生中のセマフォリン誘導成長円錐崩壊に関与するセマフォリンシグナル伝達経路の一部であると考えられている。CRMP2アミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_001386.4 --> NP_001377.1およびBAD92432に記載される。
【0043】
用語「ストレス誘導性リンタンパク質1」または「STIP1」(Hsp70/Hsp90組織化タンパク質(HOPI)、STI1、STILL、IEF-SSP-3521およびP60としても公知)は、HSP70およびHSP90のフォールディングを助けるアダプタータンパク質を指す。STIP1はまた、HSP90のATPアーゼ活性を阻害しながら、HSP70のATPアーゼ活性を刺激し、これは調節的役割を示唆する。さらに、STIP1は、細胞プリオンタンパク質PrPcへ結合し、短期および長期記憶固定を調節する。STIP1アミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_006819.2 --> NP_006810.1に記載される。
【0044】
用語「グアニンデアミナーゼ」および「GDA」(シピン、グアナーゼ、KIAAl258、MGC9982およびネダシンとしても公知)は、グアニンの加水分解的脱アミノ化を触媒し、キサンチンおよびアンモニアをもたらす酵素を指す。GDAはまた、PSD-95シナプス後ターゲティングを調節することが示された。GDAアミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_004293.3 ---> NP_004284.1に記載される。
【0045】
用語「Yボックス結合タンパク質1」および「YBX1」(BP-8、CSDA2、CSDB、DBPB、MDR-NF1、MGC104858、MGC110976、MGC117250、NSEP-1、NSEP1、YB-1およびYB1としても公知)は、プレmRNA選択的スプライシング調節を媒介するタンパク質を指す。YBX1は、プレmRNAにおけるスプライス部位に結合し、スプライス部位選択を調節し;細胞質mRNAに結合し安定化させ;mRNAと真核生物翻訳開始因子との相互作用を調整することによって翻訳の調節に寄与し;例えば、HLAクラスII遺伝子に見出される、Yボックス
を含有するプロモータへ結合し;ミスマッチを含有するかまたはシスプラチンによって改変されているDNA鎖の分離を促進する。YBX1アミノ酸配列の非限定的な例は、GenBankアクセッション番号NM_004559.3 --> NP 004550.2に記載される。
【0046】
用語「単離された」は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が天然状態において会合されている他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。それは、好ましくは均質な状態である。それは、乾燥または水溶液の状態であってもよい。純度および均質性は、典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高性能液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、遺伝子にフランキングし、関心対象の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。用語「精製された」は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを意味する。特に、それは、核酸またはタンパク質が、少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0047】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)および一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかであるそれらのポリマーを指す。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似する結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと類似する様式で代謝される、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。他に指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補配列、ならびに明示的に示される配列を暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0048】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマー、またはアミノ酸残基の複数のポリマーのアセンブリを指すために本明細書において交換可能に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物である、アミノ酸ポリマー;ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに当てはまる。
【0049】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するα-アミノ酸およびそれらの立体異性体、ならびに非天然(天然に存在しない)アミノ酸およびそれらの立体異性体を含む。アミノ酸の「立体異性体」は、L-アミノ酸またはD-アミノ酸のような、アミノ酸の鏡像異性体を指す。例えば、天然に存在するアミノ酸の立体異性体は、天然に存在するアミノ酸の鏡像異性体、即ち、D-アミノ酸を指す。
【0050】
天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに、後で改変されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンである。天然に存在するα-アミノ酸としては、非限定的に、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。天然に存在するα-アミノ酸の立体異性体としては、非限定的に、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
非天然(天然に存在しない)アミノ酸としては、非限定的に、天然に存在するアミノ酸と類似する様式で機能するL-またはD-立体配置のいずれかである、アミノ酸アナログ、アミノ酸模倣物、合成アミノ酸、N-置換グリシン、およびN-メチルアミノ酸が挙げられる。例えば、「アミノ酸アナログ」は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する(即ち、水素、カルボキシル基、アミノ基へ結合されているα炭素)が、修飾R(即ち、側鎖)基または改変ペプチド骨格を有する非天然アミノ酸、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似する様式で機能する、化合物を指す。
【0052】
アミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されるそれらの一般的に知られている三文字表記または一文字表記のいずれかによって、本明細書において表され得る。例えば、L-アミノ酸は、その一般的に知られている三文字表記(例えば、L-アルギニンについてはArg)によって、または大文字一文字アミノ酸表記(例えば、L-アルギニンについてはR)によって、本明細書において示され得る。D-アミノ酸は、その一般的に知られている三文字表記(例えば、D-アルギニンについてはD-Arg)によって、または小文字一文字アミノ酸表記(例えば、D-アルギニンについてはr)によって、本明細書において示され得る。
【0053】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列において単一のアミノ酸または僅かな割合のアミノ酸を変更、付加、または欠失する、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、付加、または欠失は、その変更が、化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす場合に、「保存的に改変された変異体」であることを、当業者は認識する。化学的に類似するアミノ酸としては、非限定的に、天然に存在するアミノ酸、例えばL-アミノ酸、天然に存在するアミノ酸の立体異性体、例えばD-アミノ酸、ならびに非天然アミノ酸、例えば、アミノ酸アナログ、アミノ酸模倣物、合成アミノ酸、N-置換グリシン、およびN-メチルアミノ酸が挙げられる。
【0054】
機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。例えば、脂肪族アミノ酸(例えば、G、A、I、L、またはV)がこのグループの別のメンバーで置換される置換が行われ得る。同様に、脂肪族極性非荷電基(例えば、C、S、T、M、N、またはQ)がこのグループの別のメンバーで置換され得;塩基性残基(例えば、K、R、またはH)が互いの代わりに用いられ得る。いくつかの態様において、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、EまたはD)が、その非荷電相当物(例えば、それぞれ、QまたはN)で置換され得;またはその逆もまた同様である。以下の8つのグループの各々は、互いに対して保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含有する:
1) アラニン(A)、グリシン(G);
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4) アルギニン(R)、リジン(K);
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7) セリン(S)、スレオニン(T);および
8) システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton, Proteins, 1993を参照のこと)。
【0055】
用語「アミノ酸改変」または「アミノ酸変更」は、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または挿入を指す。
【0056】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウィンドウにおける配列(例えば、本発明のペプチド)の部分は、2つの配列の最適なアラインメントについて、付加も欠失も含まない参照配列と比較して付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、同一のアミノ酸残基が両配列において生じる位置の数を決定し、合致した位置の数を得、比較ウィンドウにおける全位置数で合致した位置数を割り、その結果に100を掛け、配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
【0057】
用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、2つ以上のポリペプチドまたはペプチド配列の文脈において、同じ配列である2つ以上の配列またはサブ配列を指す。以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動アラインメントおよび目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウ、または指定領域にわたって最大対応について比較および整列された場合に、2つの配列が、同じであるアミノ酸残基の特定されたパーセンテージ(即ち、特定された領域にわたって、または特定されない場合には、参照配列の配列全体にわたって、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性)を有する場合、2つの配列は「実質的に同一」である。アミノ酸配列に関して、同一性または実質的な同一性は、少なくとも5、10、15もしくは20アミノ酸長、任意で少なくとも約25、30、35、40、50、75もしくは100アミノ酸長、任意で少なくとも約150、200もしくは250アミノ酸長である領域にわたって、または参照配列の全長にわたって存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば、20個以下のアミノ酸のアミノ酸配列に関して、実質的な同一性は、本明細書において定義される保存的置換に従って、1または2個のアミノ酸残基が保存的に置換される場合に存在する。
【0058】
配列比較について、典型的に、1つの配列は、試験配列と比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列は、コンピュータ中に入力され、必要に応じて、サブ配列の座標が指定され、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムのパラメータが使用され得るか、または代替的パラメータが指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列についてのパーセント配列同一性を計算する。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適切なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公に利用可能である。
【0059】
2つのポリペプチドまたはペプチド配列が実質的に同一であることの表れは、第1のポリペプチドまたはペプチドが、第2のポリペプチドまたはペプチドに対して惹起された抗体と免疫交差反応性である場合に生じる。従って、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第1のポリペプチドまたはペプチドは、典型的に、第2のポリペプチドまたはペプチドと実質的に同一である。
【0060】
用語「抗原性断片」は、抗体へ結合するポリペプチドの連続サブ配列を指す。抗原性断片は、免疫原性であってもなくてもよく、即ち、それは、免疫反応を誘導してもしなくてもよい。
【0061】
用語「立体構造的抗原性断片」は、連続サブ配列によって形成されてもされなくてもよいポリペプチドまたは四量体の空間的連続領域を指す。立体構造的抗原性断片は、免疫原性であってもなくてもよい。
【0062】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」は、Bおよび/またはT細胞がそれに対して反応するペプチドまたはポリペプチド上の部位を指す。B細胞エピトープは、連続アミノ酸、またはタンパク質の三次もしくは四次フォールディングにより並置される非連続アミノ酸の両方から形成されることができる。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶媒への曝露で典型的に保持され、一方、三次または四次フォールディングにより形成されるエピトープ(即ち、構造的に決定される)は、変性溶媒での処理で典型的に失われる。エピトープは、典型的に、特有の空間的構造において少なくとも3個、より通常には少なくとも5または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的構造を決定する方法には、例えば、x線結晶学および2次元核磁気共鳴が包含される。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed. (1996)を参照のこと。同じエピトープを認識する抗体は、標的抗原への別の抗体の結合をブロックするある抗体の能力を示す簡単な免疫アッセイ(例えば、電気化学発光アッセイ、競合ELISA、固相ラジオイムノアッセイ(SPRIA)またはブロッキングウェスタンブロット)において同定することができる。T細胞は、CD8細胞では約9個のアミノ酸、またはCD4細胞では約13〜15個のアミノ酸の連続するエピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに応答してのプライミングされたT細胞による
3H-チミジン取り込みにより決定されるような、抗原依存性増殖を測定するインビトロアッセイにより(Burke et al., J. Inf. Dis. 170, 1110-19 (1994))、抗原依存性死滅により(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tigges et al., J. Immunol. (1996) 156:3901-3910)もしくはサイトカイン分泌により同定することができる。ヒト精巣特異的な乳酸デヒドロゲナーゼのエピトープがcDNAから推定された。Millan et al., Proc. Natl Acad Sci, (1987), 84(15):5311-5315を参照のこと。
【0063】
用語「特異的に結合する」または「〜に対して特異的に指向される」は、他のペプチド/ポリペプチドと比較しての、全部または一部における、標的ペプチド/ポリペプチドまたはその抗原性断片と、T細胞受容体および/または抗体との優先的な会合を指す。当然ながら、ある程度の非特異的相互作用が、抗体またはT細胞受容体と非標的ペプチド/ポリペプチドとの間に生じ得ることが認識される。それにも関わらず、特異的結合は、標的ペプチド/ポリペプチドまたはその抗原性断片の特異的認識を通して媒介されるように区別され得る。典型的に、特異的結合または特異的に指向される免疫反応は、標的ペプチド/ポリペプチドに対する抗体またはT細胞受容体と非標的ペプチド/ポリペプチドとの間よりも、標的ペプチド/ポリペプチドに対する抗体またはT細胞受容体と標的ペプチド/ポリペプチドとの間に、遥かに強い会合をもたらす。特異的結合は、典型的に、標的ポリペプチドのエピトープを欠いている細胞または組織と比較して、標的ポリペプチドを有する細胞または組織への標的ポリペプチドに対する結合される抗体(単位時間当たり)の量を、約10倍超、最も好ましくは100倍超、増加させる。標的ポリペプチドと標的ポリペプチドに対する抗体との間の特異的結合は、一般に、少なくとも10
6 M
-1の親和性を意味する。10
8 M
-1を超える親和性が好ましい。特異的結合は、当技術分野において公知の抗体結合についての任意のアッセイを用いて決定することができ、これには、非限定的に、ウェスタンブロット、ドットブロット、ELISA、フローサイトメトリー、電気化学発光、マルチプレックスビーズアッセイ(例えば、Luminexまたは蛍光マイクロビーズを使用する)、免疫組織化学が含まれる。標的ポリペプチドのエピトープに特異的に指向されるT細胞は、典型的に、非標的ポリペプチドに応答しての抗原誘導性増殖よりも約2倍超、より好ましくは約5倍または10倍超である、標的ポリペプチドに応答しての抗原誘導性増殖を示す。T細胞増殖アッセイは、当技術分野において公知であり、
3H-チミジン取り込みによって測定され得る。
【0064】
用語「試料」は、対象、例えば、ヒト対象から得られる任意の生体検体を指す。試料としては、非限定的に、全血、血漿、血清、赤血球、白血球、唾液、尿、糞便、痰、気管支洗浄液、涙、乳頭吸引液、母乳、任意の他の体液、組織試料、例えば、胎盤のバイオプシー、およびその細胞抽出物が挙げられる。いくつかの態様において、試料は、全血またはその部分成分、例えば、血漿、血清、または細胞ペレットである。
【0065】
用語「対象」、「個体」、または「患者」は、典型的に、ヒトを含むが、例えば、他の霊長動物、齧歯動物、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどのような、他の動物も含むことができる。好ましい態様において、対象はヒト対象である。
【0066】
用語「ASDを発症するリスクの増加」は、本明細書に記載される1種類または複数種類の抗原(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2))へ結合する抗体へ曝露された、または該抗原のうちの1つまたは複数に対する、所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体へ曝露された胎児または子がASDの症状を発症する可能性または確率の、1種類または複数種類の該抗原に対する抗体へ曝露されていないまたは1種類または複数種類の該抗原に対する所定の閾値レベル未満であるレベルの抗体へ曝露されていない胎児または子のリスク、可能性または確率と比較した増加を指す。
【0067】
用語「ASDを発症するリスクの減少」は、本明細書に記載される1種類または複数種類の抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)に対する抗体へ曝露された、または該抗原のうちの1つまたは複数に対する、所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体へ曝露された胎児または子(その母親は、例えば、抗原へ結合する抗体をブロック、不活性化または除去するために、治療的介入を受けている)がASDの症状を発症する可能性または確率の、該抗原に対する抗体へ曝露されたまたは1種類または複数種類の該抗原へ対する、所定の閾値レベルを超えるレベルの抗体へ曝露された胎児または子(その母親は治療的介入を受けていない)がASDの症状を発症する可能性または確率と比較した減少を指す。
【0068】
用語「ペプチドエピトープ」または「抗原性ペプチド」は、そのようなペプチドエピトープの構造または配列と天然抗原のエピトープとの間に明確な相同性が存在しない場合があるが、エピトープを模倣する(例えば、抗原に対する抗体によって結合される)、本明細書に記載される1種類または複数種類の抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)のペプチドまたは断片を指す。代わりに、ペプチドエピトープの模倣は、物理化学的特徴の類似性および類似の空間的構成に依る。ペプチドエピトープのスクリーニングおよび構築は、当技術分野において公知である。例えば、ペプチドエピトープは、配列改変によって既知のエピトープから誘導することができ、または、例えば、1種類または複数種類の抗原に対する抗体へ結合する、ペプチドについてのコンビナトリアルペプチドライブラリーを用いてデノボで生じさせることができる。例えば、Yip and Ward, Comb Chem High Throughput Screen (1999) 2(3):125-128; Sharav, et al, Vaccine (2007) 25(16):3032-37; およびKnittelfelder, et al., Expert Opin Biol Then (2009) 9(4):493-506を参照のこと。
【0069】
用語「家族歴」は、家族構成員における疾患状態(例えば、ASDまたは自己免疫疾患)の存在を指す。家族構成員は、直系、例えば、親、子もしくは祖父母、または近縁、例えば、兄弟、叔母もしくは叔父、いとこであってもよい。典型的に、家族構成員は、共通の遺伝形質を有する血族である。
【0070】
用語「治療有効量」は、好ましくは副作用が最小であるかまたは全く無しで、治療効果または所望の結果を達成することができる本発明のペプチドの量(即ち、標的抗原への抗原に対する抗体の結合をブロックするためのペプチドの十分な量)を指す。いくつかの態様において、治療的に許容される量は、望ましくない副作用を誘発せず、引き起こさない。治療有効量は、最初に低用量を投与し、次いで、所望の効果が達成されるまでその用量を漸増的に増やすことによって決定され得る。本発明の抗体ブロッキング物質の「予防有効量」および「治療有効量」は、ASDの発症を予防するか、またはASDの重症度の低下をもたらすことができる。「予防有効量」および「治療有効量」はまた、それぞれ、移行抗体の活性に起因する障害および疾患による機能障害または身体障害を予防または改善することができる。
【0071】
用語「薬学的に許容される担体」は、一般に安全で非毒性であり、生物学的にもその他の点でも有害ではく、かつ、対象における薬学的使用について許容されるものを含む、薬学的組成物の調製において有用である化合物、化学物質、または分子を指す。好適な薬学的担体は、本明細書においておよびE.W. Martinによる“Remington's Pharmaceutical Sciences”において記載されている。
【0072】
本明細書において使用される場合、用語「投与する」は、対象への、経口投与、局所接触、坐剤としての投与、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、髄腔内、鼻腔内、もしくは皮下投与、または徐放デバイス(例えば、ミニ浸透圧ポンプ)の埋め込みを含む。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、または経皮)を含む、任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、移行抗体の存在または活性と関連する1つまたは複数の症状を予防または軽減するために治療有効量の本発明のペプチドを投与するための追加の方法を知っているだろう。「同時投与する」によって、本発明のペプチドが、第2の薬物の投与と同時に、投与直前に、または投与直後に投与されることが意味される。
【0073】
本明細書において使用される場合、用語「治療する」は、症状の緩和、寛解、縮小、または病状もしくは状態を患者により許容されるものにすること、変性もしくは減退の速度の減速、変性の最終ポイントをあまり弱めないこと、または患者の身体的もしくは精神的な健康の向上のような、任意の客観的または主観的パラメータを含む、病状または状態の治療または改善の成功の任意のしるしを指す。症状の治療または改善は、身体検査、病理組織検査(例えば、生検組織の分析)、尿、唾液、組織試料、血清、血漿、もしくは血液の実験室分析、またはイメージングの結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づき得る。
【0074】
用語「特異的に阻害する」は、1種類または複数種類の抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)に対する抗体の結合を阻害する作用物質(例えば、ペプチドエピトープ)の能力を指す。特異的阻害は、典型的に、バックグラウンドに対して少なくとも約2倍の阻害、例えば、作用物質がない場合の抗体の結合と比較して、例えば、標的抗原に対する抗体の結合の約10倍、20倍、50倍を超える阻害をもたらす。いくつかの態様において、標的抗原への抗体の結合は、ペプチドエピトープによって完全に阻害またはブロックされる。典型的に、特異的阻害は、適切な統計的検定を使用した際の、標的抗原への抗体結合の統計的に有意な減少(例えば、p < 0.05)である。
【0075】
用語「作用物質」は、ペプチドエピトープ、ミモトープ、ポリペプチド(例えば、リガンド、抗体)、核酸、低分子有機化合物などを含む。
【0076】
用語「固体支持体」は、プラスチックまたはガラス管、ビーズ、スライドガラス、マイクロタイタープレート、多孔性フィルターもしくは膜、非多孔性フィルターもしくは膜、非磁性ビーズ、マイクロビーズ、スライドガラス、マイクロアレイなどのような、本発明の方法を実施するために適した任意の材料を指す。
【0077】
用語「中和複合体」は、移行抗体がその抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)へ結合することを防止/阻害/ブロックする特異的ペプチドエピトープへ結合された移行抗体を含む複合体を指す。例えば、CRMP1抗原(例えば、NCBI RefSeq No.: NP_001304.1によって示されるCRMP1タンパク質)を特異的に認識する母親由来自己抗体は、本明細書に記載されるCRMP1ペプチドエピトープまたはそのミモトープと中和複合体を形成することができ、その結果、母親由来自己抗体はCRMP1抗原へ結合しない。
【0078】
用語「アフィニティープラスマフェレーシス」は、対象の血漿からの有害な因子(例えば、疾患を引き起こす因子)の除去のための、体外血液精製手順を指す。
【0079】
III.態様の詳細な説明
本発明は、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)を含む内因性自己抗原に対する母親由来自己抗体へ特異的に結合するペプチド(例えば、ペプチドエピトープおよびそれらのミモトープ)を提供する。本発明はまた、本明細書に記載されるペプチドを含む組成物およびキットを提供する。さらに、本発明は、本明細書に記載されるペプチドを使用して母親または潜在的な母親の生体試料中の母親由来自己抗体の存在を検出することよって、子または未来の出生児(例えば、妊娠中もしくは受胎前の母親または潜在的な母親における)が自閉症スペクトラム症(ASD)を発症するリスクを判定するための方法を提供する。本発明はさらに、母親由来自己抗体とそれらの抗原との結合をブロックするために出生児の母親または潜在的な母親へ治療有効量の本明細書に記載されるペプチドを投与することによって、出生児がASDを発症するリスクを防ぐまたは低減するための方法を提供する。
【0080】
A.ペプチドエピトープ
ある局面において、本発明は、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)より選択される1種類または複数種類のポリペプチドに対して母親または潜在的な母親中で生成される移行抗体へ特異的に結合する単離ペプチドを提供する。
【0081】
第1局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:1〜7および62〜64のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:1〜7および62〜64のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:1〜7および62〜64のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:1〜7および62〜64のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、LDH Aポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0082】
第2局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:8〜19および65〜72のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:8〜19および65〜72のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:8〜19および65〜72のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:8〜19および65〜72のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、LDH Bポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0083】
第3局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:20〜23および73〜76のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:20〜23および73〜76のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:20〜23および73〜76のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:20〜23および73〜76のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、STIP1ポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0084】
第4局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:24〜27および77〜79のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:24〜27および77〜79のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:24〜27および77〜79のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:24〜27および77〜79のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、グアニンデアミナーゼ(GDA)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。特定の態様において、ペプチドは、GDAポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0085】
第5局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:28〜35および80〜83のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:28〜35および80〜83のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:28〜35および80〜83のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:28〜35および80〜83のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、YBX1ポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0086】
第6局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:36〜44および84〜88のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:36〜44および84〜88のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:36〜44および84〜88のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:36〜44および84〜88のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、CRMP1ポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0087】
第7局面において、ペプチドは、SEQ ID NO:45〜61および89〜96のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:45〜61および89〜96のいずれか1つのアミノ酸配列の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続アミノ酸を含む。他の態様において、ペプチド(例えば、その抗原性断片)は、SEQ ID NO:45〜61および89〜96のいずれか1つのアミノ酸配列の長さの少なくとも約50%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を有する。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:45〜61および89〜96のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたは該アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。他の態様において、ペプチドは、コラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)ポリペプチド配列中のアミノ末端および/またはカルボキシル末端でのアミノ酸残基に対応する1つまたは複数の追加のアミノ酸残基を、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に含む。ある態様において、ペプチドは、
より選択されるアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドは、CRMP2ポリペプチドへ結合する移行抗体へ結合する。
【0088】
いくつかの態様において、ペプチドは、約5〜約45アミノ酸長、約8〜約45アミノ酸長、約8〜約25アミノ酸長、約12〜約45アミノ酸長、約5〜約40アミノ酸長、約10〜約40アミノ酸長、約15〜約30アミノ酸長、約15〜約25アミノ酸長、または約45、40、35、30、25、20、15、10、もしくは5アミノ酸長である。例えば、ペプチドは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。典型的に、ペプチドは、例えば、単離された分子として存在する場合は45アミノ酸を超えるなど、三次構造の形成を可能にする長さを超えるべきではない。しかしながら、ペプチドは、ペプチド内の三次構造の形成を妨げることができる抗体または別のタンパク質もしくは高分子のようなより大きな分子へ融合される場合、45アミノ酸を超えてもよい。ペプチドはまた、異なる移行抗体へ結合する第1および第2ペプチド断片を有する二価ペプチドである場合、45アミノ酸を超えてもよい。特定の態様において、ペプチドは、最長約15、20、25、30、35、40、または45アミノ酸長である。
【0089】
いくつかの態様において、ペプチドは、検出可能な標識などの標識をさらに含む。ある特定の場合において、標識は、ビオチン、蛍光標識、化学発光標識、および放射性標識からなる群より選択される。ある他の場合において、標識は、ペプチドへ共有結合される。
【0090】
他の態様において、ペプチドは、タンパク質分解に対する耐性を改善するように、または可溶性特性を最適化するように、またはそれらを治療剤としてより適切にするようにさらに改変されているバリアントを含む。例えば、ペプチドは、天然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えば、D-アミノ酸または天然に存在しない合成アミノ酸を含有するアナログをさらに含む。D-アミノ酸をアミノ酸残基の一部または全部の代わりに用いてもよい。
【0091】
ある態様において、ペプチドは、天然に存在するアミノ酸および/または非天然アミノ酸を含む。非天然アミノ酸の例としては、D-アミノ酸、オルニチン、ジアミノ酪酸オルニチン、ノルロイシンオルニチン、ピリイルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、フェニルグリシン、アルファおよびアルファ二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、天然に存在するアミノ酸のハロゲン化物誘導体(例えば、トリフルオロチロシン、p-Cl-フェニルアラニン、p-Br-フェニルアラニン、p-I-フェニルアラニンなど)、L-アリル-グリシン、b-アラニン、L-a-アミノ酪酸、L-g-アミノ酪酸、L-a-アミノイソ酪酸、L-e-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、Lメチオニンスルホン、L-ノルロイシン、L-ノルバリン、p-ニトロ-L-フェニルアラニン、L-ヒドロキシプロリン、L-チオプロリン、フェニルアラニンのメチル誘導体(例えば、1-メチル-Phe、ペンタメチル-Phe、L-Phe (4-アミノ)、L-Tyr (メチル)、L-Phe(4-イソプロピル)、L-Tic (1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボキシル酸)、L-ジアミノプロピオン酸、L-Phe (4-ベンジル)など)が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドはさらに改変されてもよい。例えば、1つまたは複数のアミド結合を、エステルまたはアルキル骨格結合によって置き換えてもよい。N-もしくはC-アルキル置換基、側鎖修飾、または、ジスルフィド架橋または側鎖アミドもしくはエステル結合のような拘束が存在してもよい。
【0092】
いくつかの態様において、ペプチドは、改変ペプチドおよび合成ペプチド類似体の両方を含む。ペプチドは、製剤化および貯蔵特性を改善するように、または非ペプチド構造を組み込むことによって不安定なペプチド結合を保護するように、改変され得る。
【0093】
他の態様において、ペプチドは環化されてもよい。安定性の強化をもたらす構造的拘束を選択および提供するために環状構造をペプチドに導入するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、酸化される際にペプチドがジスルフィド結合を含んで環状ペプチドを生み出すように、C末端またはN末端システインをペプチドに加えることができる。他のペプチド環化方法としては、チオエーテル、ならびにカルボキシル末端およびアミノ末端のアミドおよびエステルの形成が挙げられる。合成環状ペプチドを生み出すためのいくつかの合成技術が開発されている(例えば、Tarn et al., Protein Sci., 7:1583-1592 (1998); Romanovskis et al., J. Pept . Res., 52: 356-374 (1998); Camarero et al., J. Amer. Chem. Soc., 121: 5597- 5598 (1999); Valero et al., J. Pept. Res., 53(1): 56-67 (1999)を参照のこと)。一般に、ペプチドを環化することの役割は以下の2つである:(1)インビボで加水分解を減少させること;および(2)アンフォールド状態を熱力学的に不安定化し、二次構造形成を促進すること。
【0094】
いくつかの態様において、本発明は、共有結合的にまたは非共有結合的に連結された同じペプチドまたは異なるペプチドの少なくとも2つを含む複数のペプチドを含む。例えば、いくつかの態様において、少なくとも2、3、4、5、または6個の同じペプチドまたは異なるペプチドは、例えば、適切なサイズおよび/または結合特性を有するが、望ましくない凝集を回避するように、共有結合的に連結されている。
【0095】
本発明のペプチドは、当技術分野において公知のまたは後で開発される任意の好適な手段によって生成され得、例えば、インビトロで合成され得、天然の供給源から精製されるかまたは実質的に精製され得、真核細胞または原核細胞から組換え的に産生され得るなどである。
【0096】
ペプチドは、当技術分野において公知の従来の方法を使用して、インビトロ合成によって調製することができる。例えば、化学合成によって、例えば固相技術および/もしくは自動ペプチド合成機を使用して、ペプチドを生成することができる。ある特定の場合において、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学を用いて自動複数ペプチド合成機(Abimed AMS 422)上で固相戦略を使用して、ペプチドを合成することができる。次いで、ペプチドを逆相HPLCで精製し、凍結乾燥させることができる。合成機を使用することによって、天然に存在するアミノ酸を非天然アミノ酸で置換してもよい。特定の配列および調製様式は、利便性、経済性、必要とされる純度などによって決定されるだろう。あるいは、より長いペプチド配列または全長タンパク質配列の切断によって、ペプチドを調製してもよい。
【0097】
ペプチドはまた、組換え合成の従来の方法に従って、単離および精製されてもよい。発現宿主の溶解物が調製され、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、または他の精製技術を使用して、溶解物が精製され得る。コーディング配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用され得る方法は、当業者に周知である。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ組換え/遺伝的組換えが挙げられる。あるいは、関心対象のペプチドをコードすることができるRNAを化学的に合成してもよい。当業者は、本発明の任意のペプチドについての適切なコーディング配列を提供するために、周知のコドン使用頻度表および合成方法を容易に利用することができる。例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press; およびAusubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology, 1987-2009, John Wiley Interscienceを参照のこと。
【0098】
他の局面において、本発明は、本明細書に記載されるペプチドのいずれか1つまたはその複数を含む組成物を提供する。非限定的な例として、組成物は、STIP1に対する移行抗体へ結合する複数のペプチド、またはCRMP2に対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含有する。さらなる非限定的な例として、組成物は、複数の抗原に対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含有し、複数の抗原は以下からなる群より選択される:CRMP2およびGDA、CRMP2およびSTIP1、LDH BおよびYBX1、YBX1およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびGDA、CRMP1、CRMP2およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびYBX1、ならびにLDH A、LDH B、GDAおよびYBX1。追加の非限定的な例として、組成物は、以下からなる群より選択されるペプチドの1つまたは複数の組み合わせを含有する:SEQ ID NO:20および21、SEQ ID NO:27および55、SEQ ID NO:20および55、SEQ ID NO:45および55、SEQ ID NO:9および28、SEQ ID NO:20および32、SEQ ID NO:27、38および45、SEQ ID NO:21、38および55、SEQ ID NO:32、38、45、55および60、ならびにSEQ ID NO:3、12、27および28。さらなる非限定的な例として、組成物は、SEQ ID NO:9、11、12、36、54、66、71、またはそれらの組み合わせに対応するペプチドを含む。
【0099】
B.ミモトープ
ある局面において、本発明は、本明細書に記載されるペプチドエピトープ(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される標的ポリペプチド自己抗原へ結合する移行抗体へ結合するペプチド)を免疫学的に模倣するミモトープを提供する。いくつかの態様において、ミモトープは、ペプチドエピトープを免疫学的に模倣し、かつ、抗原部位に対する配列相同性を有する、ペプチド配列である。他の態様において、ミモトープは、ペプチドエピトープを免疫学的に模倣し、かつ、配列相同性ではなく、抗原部位と類似している三次元コンフォメーションを有する、ペプチド配列である。
【0100】
いくつかの態様において、ミモトープは、ペプチドエピトープによって誘発されるものと同様の抗体反応を引き起こす。ある特定の場合において、ミモトープの抗体反応は、ペプチドエピトープが結合する移行抗体上の同じ抗原部位への結合に対応する。移行抗体へ結合するように分子模倣体として作用するミモトープの能力は、抗体がそのオリジナルの標的抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)へ結合するのをブロックするために使用され得る。
【0101】
いくつかの態様において、ミモトープは、バイオパニングによってファージディスプレイライブラリーから得られる。候補ミモトープをスクリーニングおよび同定するために適したファージディスプレイライブラリーは、典型的に、抗体によって結合され得る場所にて長さで100アミノ酸未満、75アミノ酸未満、50アミノ酸未満、25アミノ酸未満、特に約3〜約25アミノ酸の範囲内のランダムなアミノ酸配列を発現する多様なファージである。
【0102】
他の態様において、ミモトープは、ペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって得られる。いくつかの場合において、ペプチドライブラリーは重複ペプチドライブラリーである。他の場合において、ペプチドライブラリーは切断ペプチドライブラリーであり、これは、活性に必要な最短のアミノ酸配列を同定するめに使用され得る。さらに他の場合において、ミモトープは、アラニンスキャニングによって得られ、ここで、アラニンは、ペプチド活性を担う特定のアミノ酸残基を同定するために連続して各残基を置換するために使用される。さらなる場合において、ミモトープは、ポジショナルスキャニングによって得られ、これは、単一の位置での関心対象のアミノ酸を同定し、それを一度に一つずつ全ての別の天然アミノ酸で置換し、ペプチドの活性を増加させるためのその位置での好ましいアミノ酸残基を同定する。関連する場合において、ポジショナルスキャニングは、ツーポジションコンビナトリアルスキャニングまたはスリーポジションコンビナトリアルスキャニングを含み得る。ミモトープを設計、スクリーニング、および決定するための追加の方法は、例えば、米国特許第4,833,092号に記載されており、その開示は、全ての目的について参照によりその全体が組み入れられる。
【0103】
さらなる態様において、ミモトープは、配列の直鎖状形態と比べて構造的により拘束されているペプチド配列を含み得る。溶液中で遊離した状態で存在するような非置換直鎖状ペプチドは、通常、多数の異なるコンフォメーションをとることができると考えられる。対照的に、それがとり得る可能性のあるコンフォメーションの数を減らす、1つまたは通常は2つ以上の置換基を恐らく有することによって構造的に拘束されているペプチドもまた、本発明の範囲内にある。
【0104】
さらなるペプチド鎖への共有結合または分子内結合のような置換基は、ペプチドを構造的に拘束すると考えられる。例えば、ペプチドは、ペプチドのアミノ酸配列を含有するより大きなポリペプチドの一次構造の部分を形成し得る。ある特定の場合において、ペプチドは環状ペプチドを含む。
【0105】
他の置換基は、生物学的構造および非生物学的構造を含む高分子構造のような他の部分への共有結合を含む。生物学的構造の例としては、非限定的に、担体タンパク質が挙げられる。非生物学的構造の例としては、脂質小胞、例えば、リポソーム、ミセル、脂質ナノ粒子などが挙げられる。
【0106】
いくつかの態様において、担体タンパク質はミモトープへコンジュゲートされる。多数の担体が、この目的について公知であり、これらとしては、様々なタンパク質ベースの担体、例えば、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、オボアルブミン(OVA)、破傷風トキソイド(TT)、分類不能型インフルエンザ菌からの高分子量タンパク質(HMP)、ジフテリアトキソイド、または細菌外膜タンパク質が挙げられ、これらの全ては、生化学または薬学の供給会社から得てもよく、または標準方法によって調製してもよい。
【0107】
他の態様において、ミモトープはワクチンの成分である。ワクチンは、1種類または複数種類のミモトープを含み得、ここで、各ミモトープは、同じまたは異なる移行抗体へ結合して、抗体がそのオリジナルの標的抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2)へ結合するのをブロックすることができる。複数のミモトープは、例えば、各ミモトープがコンジュゲートされるポリリジンを使用して、一緒にコンジュゲートされ得る。
【0108】
特定の態様において、ペプチドミモトープは、単一のアミノ酸置換を使用し、続いて各ペプチド構築物について親和性試験をし、ペプチド模倣体が自閉症特異的母親由来自己抗体をブロックする能力を有するかどうかを決定することによって、設計される。ある特定の場合において、D-アミノ酸が、ペプチドミモトープを合成する場合に使用される。何故ならば、D-アミノ酸から合成されたペプチドは、タンパク質消化に対してより耐性であり、インビボでより長い半減期を有するためである。他の場合において、各自己抗原についてのペプチドミモトープは、ポリエチレングリコール(PEG)スキャフォールドへ融合され、これによって、自閉症特異的母親由来自己抗体を中和することができるヘテロ多量体が作られる。例えば、Kessel et al., Chem Med Chem. 4(8):1364-70, 2009を参照のこと。
【0109】
PEGスキャフォールド上のペプチドは、個々のペプチドよりも免疫原性が低いため、PEGスキャフォールドへ連結されたミモトープペプチドは、抗体ブロッカーとして有用である。ペプチドミモトープは、自動ペプチド合成機(Pioneer; Applied Biosystems; Foster City, CA)を使用することによって、適切なポリエチレングリコール(PEG)-PS樹脂(GenScript Corporation; Piscataway, NJ)上において9-フルオレニル-メトキシ-カルボニル保護アミノ酸化学を用いて、合成され得る。樹脂からのペプチドの切断および側鎖からの保護基の除去は、スカベンジャーと共にトリフルオロ酢酸を使用して行われ得る。粗製ペプチドは、溶媒A[95%/5%, H
2O (0.1%トリフルオロ酢酸)/アセトニトリル]および溶媒B(100%アセトニトリル)の勾配を用いて、分取C
18カラムを使用する逆相高性能液体クロマトグラフィーによって精製され得る。次いで、ペプチドの純度が、分析C
18カラムを使用する高性能液体クロマトグラフィーによって分析される。合成されたペプチドの同一性もまた、マトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析によって確認され得る。ある特定の場合において、ペプチドミモトープは、ペプチド上の特定の残基の可逆的な保護を伴う戦略を使用して、PEG化され得る。この手順は、ペプチドについてのみ可能であり、何故ならば、それらは、一般に、ごくわずかな求核基を含有し、このプロセスに関与する過酷な化学処理に対して全長タンパク質よりも安定しているためである。この方法は3つのステップを伴う:(1)活性について重要であることが既知の残基の好適な試薬による保護、および、最終的に、所望の異性体の精製;(2) 一つの無保護の反応性標的残基のレベルでのPEG化;ならびに(3)全ての保護基の除去。
【0110】
多量体化ペプチドミモトープが患者血清中の抗脳自己抗体へ結合するかどうかを決定するために、ELISAアッセイが利用され得る。ELISAアッセイはまた、多量体化ペプチドミモトープが、天然抗原タンパク質に対する抗原-抗体相互作用を阻害するかどうかを決定するために使用され得る。これは、ELISAを行う前に、移行抗体陽性血漿をヘテロ多量体と共にプレインキュベートすることによって、達成され得る。
【0111】
動物モデルは、インビボでのペプチドミモトープの効能、安全性、および/または薬物動態特性を調べるために使用され得る。非限定的な例として、母親由来自己抗体関連(MAR)自閉症のマウスモデルが使用され得る。例えば、実施例5を参照のこと。MAR自閉症および対照雌親(即ち、妊娠中の雌性マウス)は、在胎ミモトープ処置または食塩水対照である2つの処置条件のうちの1つへ無作為に割り当てられ得る。寛容性がMAR自閉症雌親において破られたならば、処置群へ割り当てられた雌親に、静脈内注射によってミモトープペプチドが投与され得る。インビボでのミモトープの効能は、合計4回の注射について24時間毎に雌親へ200μgのミモトープを投与することによって決定され得る。処置後のペプチドミモトープによるマウス自己抗体力価の減少は、標的抗原タンパク質全体に対してELISAアッセイを使用して決定され得る。一連の処置トライアルは、妊娠期間中にマウス移行抗体を減らす/ブロックするためにどれぐらい多くの処置が必要であるかを決定するために行われ得る。理想的な処置レジメを決定すると、雌親は、その後の行動分析のために産仔を産むように繁殖され得る。
【0112】
特定の態様において、ペプチドは、アミノ酸配列中の一部または全部の位置においてD-アミノ酸を含み、かつ/または、SEQ ID NO:1〜96のいずれか1つのアミノ酸配列と比べてアミノ酸配列中の1つまたは複数(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)の位置でアミノ酸改変(例えば、置換)を含む、ミモトープである。
【0113】
C.キット
本発明はまた、胎児または子などの出生児が自閉症スペクトラム症(ASD)を発症するリスクが増加しているかどうかの診断または予後のためのキットを提供する。関連して、キットはまた、母親または潜在的な母親がASDを発症であろう子を有するリスクが増加しているかどうかの診断または予後のための使用を見出す。
【0114】
これらの様々な方法を行うための材料および試薬は、方法の実行を容易にするためにキット中に提供され得る。本明細書において使用される場合、用語「キット」は、プロセス、アッセイ、分析、または操作を容易にする物品の組み合わせを含む。特に、本発明のペプチドまたは組成物を含むキットは、例えば、診断法、予後法、免疫療法などを含む、広範囲の適用において有用性を見出す。
【0115】
特定の態様において、キットは、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)を含む抗原性ポリペプチドに対する移行抗体へ特異的に結合する本明細書に記載されるペプチド(例えば、ペプチドエピトープおよびそれらのミモトープ)のいずれか1つまたは複数と、固体支持体とを含む。いくつかの場合において、キットは、SEQ ID NO:9、11、12、36、54、66、71、およびそれらの組み合わせに対応するペプチド(例えば、ペプチドエピトープおよびそれらのミモトープ)を含む。
【0116】
いくつかの態様において、固体支持体は、少なくとも1種類のペプチド、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96種類のペプチドを含む。ある特定の場合において、固体支持体は、LDH Aペプチドエピトープ、LDH Bペプチドエピトープ、GDAペプチドエピトープ、STIP1ペプチドエピトープ、YBX1ペプチドエピトープ、CRMP1ペプチドエピトープ、CRMP2ペプチドエピトープ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるペプチドを含む。いくつかの態様において、固体支持体は、本明細書に記載されるペプチドと、例えば、SEQ ID NO:1〜96のいずれか1つのアミノ酸配列と、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する1種類または複数種類のペプチドを有する。他の態様において、固体支持体は、SEQ ID NO:1〜96のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を有する1種類または複数種類のペプチドまたはその断片を含む。
【0117】
いくつかの態様において、ペプチドまたは複数のペプチドは、固体支持体上に固定され得る。他の態様において、固体支持体は、マルチウェルプレート、ELISAプレート、マイクロアレイ、チップ、ビーズ、多孔性ストリップ、またはニトロセルロースフィルターである。固定化は、共有または非共有結合によるものであり得る。いくつかの態様において、固定化は、1種類または複数種類のペプチドへ特異的に結合する捕捉抗体によるものである。ある特定の場合において、キット中の固体支持体は、1種類または複数種類の固定化ペプチドで作製された状態で提供される。
【0118】
ある態様において、キット中の複数のペプチドは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96種類の、例えば、SEQ ID NO:1〜96より選択される、異なるペプチドおよびそれらのミモトープを含む。ある特定の場合において、キット中の異なるペプチドの各々は、同じ移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドの全てが、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される単一の抗原に対する移行抗体へ結合する。ある他の場合において、キット中の異なるペプチドの各々は、少なくとも2、3、4、5、6、または7種類の異なる移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドは、以下の抗原のうちの2、3、4、5、6、または7つ全てに対する移行抗体へ結合する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。
【0119】
特定の態様において、キット中の複数のペプチドは、1つまたは複数のパネルを構成し、ここで、各パネルは、以下の抗原のうちの1、2、3、4、5、6、または7個に対する移行抗体へ結合するペプチドの組み合わせを含有する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。非限定的な例として、各パネルは、STIP1またはCRMP2に対する移行抗体へ結合するペプチドの組み合わせを含有する。さらなる非限定的な例として、各パネルは、複数の抗原に対する移行抗体へ結合するペプチドの組み合わせを含有し、複数の抗原はからなる群より選択される:CRMP2およびGDA、CRMP2およびSTIP1、LDH BおよびYBX1、YBX1およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびGDA、CRMP1、CRMP2およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびYBX1、ならびにLDH A、LDH B、GDAおよびYBX1。追加の非限定的な例として、キットは、以下からなる群より選択されるペプチドの1つまたは複数の組み合わせを含有する:SEQ ID NO:20および21、SEQ ID NO:27および55、SEQ ID NO:20および55、SEQ ID NO:45および55、SEQ ID NO:9および28、SEQ ID NO:20および32、SEQ ID NO:27、38および45、SEQ ID NO:21、38および55、SEQ ID NO:32、38、45、55および60、ならびにSEQ ID NO:3、12、27および28。
【0120】
キットは、化学試薬ならびに他のコンポーネントを含有することができる。さらに、本発明のキットは、非限定的に、キット使用者への説明書、試料収集および/または精製のための装置および試薬、生成物収集および/または精製のための装置および試薬、細菌細胞形質転換のための試薬、真核細胞トランスフェクションのための試薬、以前に形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主細胞、試料チューブ、ホルダー、トレー、ラック、皿、プレート、溶液、緩衝液または他の化学試薬、標準化、正規化のために使用される好適な試料、および/または対照試料を含むことができる。本発明のキットはまた、例えば、蓋を有する箱中に、好都合な貯蔵および安全な出荷のために包装され得る。
【0121】
いくつかの態様において、キットはまた、1種類または複数種類のペプチドへ結合する母親由来自己抗体の存在を検出するために使用される標識された二次抗体を含む。二次抗体は、異なるクラスまたはアイソタイプの免疫グロブリンIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEの定常領域または「C」領域へ結合する。通常、IgG定常領域に対する二次抗体、例えば、IgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)のうちの1つに対する二次抗体が、キット中に含まれる。二次抗体は、フルオロフォア(例えば、フルオロセイン、フィコエリトリン、量子ドット、Luminexビーズ、蛍光ビーズ)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、放射性同位体(例えば、
3H、
32P、
125I)、または化学発光部分を含む、任意の直接的にまたは間接的に検出可能な部分で標識され得る。標識シグナルは、ビオチンとビオチン結合部分(即ち、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン)との複合体を用いて増幅され得る。蛍光標識された抗ヒトIgG抗体は、Molecular Probes, Eugene, ORから市販されている。酵素標識された抗ヒトIgG抗体は、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOおよびChemicon, Temecula, CAから市販されている。
【0122】
キットは、固体支持体と母親または潜在的な母親からの生体試料とを接触させるための説明書、および移行抗体の存在または閾値レベルを超える移行抗体のレベルと、母親または潜在的な母親の胎児または子がASDを発症する確率の増加とを相関させるための説明書をさらに含み得る。
【0123】
いくつかの態様において、キットはまた、移行抗体の検出のための陰性および陽性対照試料を含有する。いくつかの場合において、陰性対照試料は、TD児を有する母親から得られる。他の場合において、陰性および/または陽性対照試料は、以下の全長抗原のうちの1、2、3、4、5、6、または7つ全てに対して反応性である:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。さらに他の場合において、陰性および/または陽性対照試料は、全長抗原LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、またはCRMP2のいずれとも反応しない。いくつかの態様において、キットは、試験生体試料中の抗体の定量化レベルの評価を助けるために、試料中の移行抗体の滴定曲線の作成のための試料を含有する。特定の態様において、キットは、SEQ ID NO:1〜96に記載される1種類または複数種類のペプチド、例えば、SEQ ID NO:1〜96に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96種類のペプチドを含む。
【0124】
キットは、妊娠可能年齢の任意の女性に診断または予後を提供するための使用を見出す。診断または予後は、妊娠前、妊娠中、または妊娠後に決定することができる。移行抗体の検出は、妊娠の第1期、第2期および/または第3期の1つまたは複数において行うことができる。いくつかの態様において、移行抗体の検出は、例えば、妊娠の約12週後に、脳が発生し始めた胎児を有する女性からの生体試料において行われる。いくつかの態様において、移行抗体の存在もしくは非存在または移行抗体の定量化レベルは、分娩後、例えば、出生後の最初の4週間中におよび/または母親が子に授乳している間に、1回または複数回評価される。いくつかの態様において、移行抗体の存在または移行抗体の定量化レベルは、妊娠前に、または妊娠していない任意の女性において、1回または複数回評価される。
【0125】
D.診断または治療へ供される患者
本発明の方法は、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、実験用哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)、家庭用哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ)、または農業用哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ)に対して行われ得る。いくつかの態様において、患者は女性かつヒトである。
【0126】
子を宿すことができるあらゆる女性が、本発明の方法から恩恵を受けることができる。子は考慮されてもされなくてもよく、即ち、女性は妊娠できるが、その必要はない。いくつかの態様において、女性は、新生児である子を有する。いくつかの態様において、女性は妊娠可能年齢であり、即ち、この女性は月経が始まっており、閉経に達していない。
【0127】
いくつかの態様において、本発明の診断および予防および/または治療法は、胎児を有する(即ち、妊娠している)女性において行われる。これらの方法は、妊娠中のいずれかの時期に行うことができる。いくつかの態様において、これらの方法は、脳が発生し始めた胎児を有する女性において行われる。例えば、胎児は、妊娠の約12週またはそれ以降であってもよい。いくつかの態様において、治療または診断を受ける女性は、妊娠の第2期または第3期にある。いくつかの態様において、治療または診断を受ける女性は、妊娠の第1期にある。いくつかの態様において、女性は、分娩後、例えば、出産6ヵ月以内である。いくつかの態様において、女性は分娩後かつ授乳中である。
【0128】
本発明の方法から恩恵を受ける女性は、ASDまたは自己免疫疾患の家族歴を有してもよいが、その必要はない。例えば、女性は、ASDを有してもよく、またはASDを有する家族構成員(例えば、親、子、祖父母)を有してもよい。いくつかの態様において、女性は、自己免疫疾患を患うか、または自己免疫疾患を患う家族構成員(例えば、親、子、祖父母)を有する。
【0129】
いくつかの態様において、本発明の方法は、診断または治療が、例えば、以前の病歴または家族の病歴または妊娠状態または任意の他の関連した基準に基づいて、患者に適していることを決定するステップを含む。
【0130】
E.自閉症スペクトラム症を発症するリスクを判定する方法
ある局面において、本発明は、胎児または子が自閉症スペクトラム症(ASD)を発症する可能性またはリスクを判定するための方法を提供し、方法は、胎児または子の母親または潜在的な母親からの生体試料において、本明細書に記載される標的ポリペプチド抗原、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、グアニンデアミナーゼ(GDA)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2)のうちの1、2、3、4、5、6、または7つへ結合する移行抗体の存在を同定する工程を含む。方法は、本明細書に記載されるペプチドのいずれか1つまたはその複数へ結合する母親由来自己抗体の存在または非存在を生体試料において検出する工程であって、ここで、該1種類または複数種類のペプチへ結合する移行抗体の存在が、胎児または子がASDを発症する可能性またはリスクの増加を示す、工程を含む。
【0131】
母親または潜在的な母親から採取される生体試料に関して、抗体を含有する任意の流体試料を、使用することができる。例えば、生体試料は、血液、血清、血漿、羊水、尿、母乳または唾液であり得る。当然ながら、1種類または複数種類の異なる体液が、1種類または複数種類のペプチドへ特異的に結合する抗体について評価され得る。
【0132】
特定の態様において、生体試料は、本明細書に記載されるペプチド(例えば、SEQ ID NO:1〜96)の少なくとも1つまたは複数、例えば、SEQ ID NO:1〜96に記載されるペプチドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96つへ特異的に結合する移行抗体の存在について評価される。いくつかの場合において、生体試料は、SEQ ID NO:9、11、12、36、54、66、71、およびそれらの組み合わせに対応するペプチドへ特異的に結合する移行抗体の存在について評価される。いくつかの態様において、1種類または複数種類の標的ポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、CRMP2またはそれらの任意の組み合わせを含む、1、2、3、4、5、6、または7種類の標的ポリペプチド自己抗原へ特異的に結合する移行抗体の存在は、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチド(例えば、SEQ ID NO: 1〜96)を使用して、試料において検出される。非限定的な例として、1種類または複数種類のペプチド、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96種類のSEQ ID NO:1〜96に記載される異なるペプチドは、試料中の移行抗体の存在または非存在を検出するために使用され得る。
【0133】
ある特定の場合において、異なるペプチドの各々は、同じ移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドの全てが、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される単一のポリペプチド自己抗原に対する移行抗体へ結合する。ある他の場合において、異なるペプチドの各々は、少なくとも2、3、4、5、6、または7種類の異なる移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドは、以下のポリペプチド自己抗原のうちの2、3、4、5、6、または7つ全てに対する移行抗体へ結合する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。
【0134】
いくつかの態様において、1種類のポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の単一の自己抗原に対する移行抗体の存在を検出する。非限定的な例として、STIP1またはCRMP2の組み合わせに対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含むパネルが、検出のために使用される。追加の非限定的な例として、パネルは、以下からなる群より選択されるペプチドの組み合わせを含有する:SEQ ID NO:20および21ならびにSEQ ID NO:45および55。
【0135】
いくつかの態様において、2種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH AおよびLDH B、LDH AおよびSTIP1、LDH AおよびGDA、LDH AおよびYBX1、LDH AおよびCRMP1、LDH AおよびCRMP2、LDH BおよびSTIP1、LDH BおよびGDA、LDH BおよびYBX1、LDH BおよびCRMP1、LDH BおよびCRMP2、STIP1およびGDA、STIP1およびYBX1、STIP1およびCRMP1、STIP1およびCRMP2、GDAおよびYBX1、GDAおよびCRMP1、GDAおよびCRMP2、YBX1およびCRMP1、YBX1およびCRMP2、またはCRMP1およびCRMP2より選択される自己抗原の任意の組み合わせに対する移行抗体の存在を検出する。非限定的な例として、CRMP2およびGDA、CRMP2およびSTIP1、LDH BおよびYBX1、またはYBX1およびSTIP1の組み合わせに対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含むパネルが、検出のために使用される。追加の非限定的な例として、パネルは、以下からなる群より選択されるペプチドの組み合わせを含有する:SEQ ID NO:27および55、SEQ ID NO:20および55、SEQ ID NO:9および28、ならびにSEQ ID NO:20および32。
【0136】
いくつかの態様において、3種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の3つの自己抗原の組み合わせに対する移行抗体の存在を検出する。非限定的な例として、CRMP1、CRMP2およびGDA、CRMP1、CRMP2およびSTIP1、またはCRMP1、CRMP2およびYBX1の組み合わせに対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含むパネルが、検出のために使用される。追加の非限定的な例として、パネルは、以下からなる群より選択されるペプチドの組み合わせを含有する:SEQ ID NO:27、38および45、SEQ ID NO:21、38および55、ならびにSEQ ID NO:32、38、45、55および60。
【0137】
いくつかの態様において、4種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の4つの自己抗原の組み合わせに対する移行抗体の存在を検出する。非限定的な例として、LDH A、LDH B、GDA、およびYBX1の組み合わせに対する移行抗体へ結合する複数のペプチドを含むパネルが、検出のために使用される。追加の非限定的な例として、パネルは、SEQ ID NO:3、12、27、および28からなるペプチドの組み合わせを含有する。
【0138】
いくつかの態様において、5種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の5つの自己抗原の組み合わせに対する移行抗体の存在を検出する。
【0139】
いくつかの態様において、6種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の6つの自己抗原の組み合わせに対する移行抗体の存在を検出する。
【0140】
いくつかの態様において、以下のポリペプチド自己抗原の7つ全てに対する母親由来抗の存在を検出する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。
【0141】
ある特定の場合において、LDH Aに対する移行抗体の存在は、SEQ ID NO:1〜7および62〜64に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。LDH Bに対する抗体の存在は、SEQ ID NO:8〜19および65〜72に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。
STIP1に対する抗体の存在は、SEQ ID NO:20〜23および73〜76に記載される1、2、3、4、5、6、7、または8種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。いくつかの場合において、GDAに対する移行抗体の存在は、SEQ ID NO:24〜27および77〜79に記載される1、2、3、4、5、6、または7種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。他の場合において、YBX1に対する移行抗体の存在は、SEQ ID NO:28〜25および80〜83に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。CRMP1に対する移行抗体は、SEQ ID NO:36〜44および84〜88に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。いくつかの場合において、CRMP2に対する移行抗体の存在は、SEQ ID NO:45〜61および89〜96に記載される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25種類のペプチドまたはその抗原性断片を使用して検出され得る。
【0142】
いくつかの態様において、(移行抗体の検出の非存在に対する)移行抗体の存在の検出は、胎児または子がASDを有するかまたは発症する確率の増加を示す。
【0143】
いくつかの態様において、生体試料中の移行抗体のレベルまたは力価を、閾値レベルまたは力価と比較する。閾値レベルまたは力価よりも高い、生体試料中の抗体のレベルまたは力価は、胎児または子がASDを有するかまたは発症する確率の増加を示す。同様に、閾値レベルまたは力価未満である、生体試料中の抗体のレベルまたは力価は、胎児または子がASDを有するかまたは発症する確率の増加を示さない(即ち、確率の増加がないことを示す)。特定の生体液中の移行抗体の閾値レベルまたは力価は、妊婦の集団における移行抗体のレベルを評価し、子がASDを発症した場合の母親の生体液中の抗体レベルまたは力価と、子がASDを発症しなかった場合の母親の生体液中の抗体レベルまたは力価とを比較することによって決定することができる。閾値レベルまたは力価はまた、妊娠中の異なる時点で、例えば、胎児を妊娠中4週間毎、2週間毎または毎週に決定することができる。閾値抗体レベルまたは力価はまた、子が生まれた後、例えば、出生後の最初の4週間中におよび/または母親が子に授乳している間に測定することができる。
【0144】
本明細書に記載される標的ポリペプチド自己抗原に対する移行抗体の存在、または標的ポリペプチド自己抗原に対する移行抗体の定量化レベルは、妊娠前、妊娠中、または妊娠後に決定され得る。妊娠中に決定される場合、移行抗体の検出は、妊娠の経過中の任意の時に、必要に応じて、1、2、3、4、またはそれより多い回数で、行うことができる。例えば、移行抗体の検出は、妊娠の第1期、第2期および/または第3期の1つまたは複数において行うことができる。いくつかの態様において、移行抗体の検出は、例えば、妊娠の約12週後に、脳が発生し始めた胎児を有する女性からの生体試料について行われる。いくつかの態様において、移行抗体の存在もしくは非存在または移行抗体の定量化レベルは、分娩後、例えば、出生後の最初の4週間中におよび/または母親が子に授乳している間に、1回または複数回評価される。いくつかの態様において、移行抗体の存在もしくは非存在または移行抗体の定量化レベルは、妊娠前に、または妊娠していない任意の女性において、1回または複数回評価される。
【0145】
移行抗体の存在は、必要に応じてまたは所望により、1回または1回を超えて決定されてもよい。いくつかの態様において、移行抗体の存在もしくは非存在または移行抗体の定量化レベルは、必要に応じて、妊娠中の4週間毎、2週間毎もしく毎週、またはより多いもしくはより少ない頻度で、評価される。
【0146】
いくつかの態様において、移行抗体の存在は、試験試料(即ち、母親または潜在的な母親からの生体試料)を対照試料と比較することなく、得られる。他の態様において、試験試料を対照と比較する。対照は、異なる時点での同じ個体由来であってもよい。例えば、試験試料は妊娠中に採取され得、対照試料は妊娠前の同じ個体から採取され得る。いくつかの場合において、試験試料は妊娠期間の比較的遅くに採取され、対照試料は妊娠期間の初期に同じ個体から採取される。この場合において、移行抗体のレベルが対照試料よりも試験試料において大きい場合、胎児または子はASDを発症するリスクが増加している。いくつかの試料が妊娠の経過にわたって評価される場合、妊娠期間にわたる移行抗体のレベルまたは力価の増加は、胎児または子がASDを発症するリスクの増加を示す。同様に、妊娠期間にわたる移行抗体の非存在またはレベルもしくは力価の減少は、胎児または子がASDを発症するリスクが低いかまたは減少していることを示す。
【0147】
対照はまた、移行抗体の存在について既知の状態を有する異なる個体由来であってもよい。対照はまた、移行抗体の存在について既知の状態を有する個体の集団由来の計算値であってもよい。対照は、陽性対照または陰性対照であってもよい。いくつかの場合において、陰性対照は、TD児を有する母親から得られる。他の場合において、陰性および/または陽性対照試料は、以下の全長抗原のうちの1、2、3、4、5、6、または7つ全てに対して反応する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。さらに他の場合において、陰性および/または陽性対照試料は、全長抗原LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、またはCRMP2のいずれに対しても反応しない。
【0148】
いくつかの態様において、対照は、別の個体または個体の集団由来の陰性対照である。対照試料の既知の状態が抗体について陰性である場合、陰性対照試料と比べての、試験試料における移行抗体のより高いレベルは、胎児または子がASDを発症するリスクが増加していることを示す。陰性対照試料に対しての、試験試料における移行抗体の類似したレベルは、胎児または子がASDを発症するリスクが増加していないこと、即ち、リスクが低いかまたは減少していることを示す。
【0149】
いくつかの態様において、対照は、別の個体または個体の集団由来の陽性対照であり、あるいは対照は、抗体の所定の閾値レベルを反映する。対照試料の既知の状態が抗体について陽性である場合、陽性対照試料と比べての、試験試料における移行抗体の同様のまたはより高いレベルは、胎児または子がASDを発症するリスクが増加していることを示す。対照試料に対しての、試験試料における移行抗体のより低いレベルは、胎児または子がASDを発症するリスクが増加していないかまたはリスクが低いもしくは減少していることを示す。
【0150】
対照試料または値と試験試料との差は、検出されるのに十分でありさえすればよい。いくつかの態様において、試験試料中における移行抗体のレベルの増加、従って、ASDのリスクの増加は、抗体レベルが、陰性対照または事前測定対照と比較して、少なくとも、例えば、10%、25%、50%、1倍、2倍、3倍、4倍、またはそれ以上である場合に判定される。
【0151】
胎児または子がASDを発症する可能性の増加を診断する目的について、1種類または複数種類の標的ポリペプチド自己抗原(例えば、LDH A、LDH B、GDA、STIP1、YBX1、CRMP1、および/またはCRMP2)の任意のサブタイプ、アイソフォームまたはアイソザイムに対する移行抗体の存在が判定され得る。
【0152】
移行抗体は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して検出することができる。例示的な方法としては、非限定的に、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、電気化学発光、およびマルチプレックスビーズアッセイ(例えば、Luminexまたは蛍光マイクロビーズを使用する)が挙げられる。
【0153】
ペプチドは、標的ポリペプチド自己抗原の抗原性断片であり得る。ペプチドは、自己抗原の既知の抗原性エピトープから誘導することができ、1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、または他の方法で改変されている。ペプチドは、天然の供給源から精製されるかもしくは実質的に精製され得るか、または組換え的にもしくは合成的に生成され得る。
【0154】
いくつかの態様において、移行抗体を検出するために使用されるペプチドは、固体支持体上に固定され得る。固体支持体は、例えば、マルチウェルプレート、マイクロアレイ、チップ、ビーズ、多孔性ストリップ、またはニトロセルロースフィルターであり得る。固定化は、共有または非共有結合によるものであり得る。いくつかの態様において、固定化は、標的エピトープへ特異的に結合する捕捉抗体によるものである。
【0155】
移行抗体の検出について、試料は、試料中に存在する、1種類または複数種類の標的抗原へ特異的に結合する任意の抗体の特異的結合を可能にするのに十分な条件(例えば、時間、温度、試料濃度)下で、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドと共にインキュベートされ得る。1種類または複数種類のペプチドが固体支持体へ結合され得る。例えば、1種類または複数種類のペプチドは、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0時間、または一晩、約8、10、12、14、または16時間、試料へ曝露され得る。しかしながら、インキュベーション時間は、例えば、1種類または複数種類のペプチドの組成、1種類または複数種類の標的抗原の組成、試料の希釈、およびインキュベーションの温度に多少依存し得る。あまり希釈されていない試料およびより高い温度を用いたインキュベーションは、より短い期間で行うことができる。インキュベーションは、通常、室温(約25°C)または生物学的温度(約37°C)で行われ、冷蔵庫(約4°C)で行われ得る。二次抗体の添加前に未結合試料を除去するための洗浄は、公知のイムノアッセイ法に従って行われる。
【0156】
標識された二次抗体は、一般に、本明細書に記載されるペプチドの1つまたは複数へ結合された試料中の抗体を検出するために使用される。二次抗体は、異なるクラスまたはアイソタイプの免疫グロブリンIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEの定常領域または「C」領域へ結合する。通常、IgG定常領域に対する二次抗体が、本方法において使用される。IgGサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に対する二次抗体もまた、本方法における使用を見出す。二次抗体は、フルオロフォア(例えば、フルオロセイン、フィコエリトリン、量子ドット、Luminexビーズ、蛍光ビーズ)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、放射性同位体(例えば、
3H、
32P、
125I)または化学発光部分を含む、任意の直接的にまたは間接的に検出可能な部分で標識され得る。標識シグナルは、ビオチンとビオチン結合部分(即ち、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン)との複合体を用いて増幅され得る。蛍光標識された抗ヒトIgG抗体は、Molecular Probes, Eugene, ORから市販されている。酵素標識された抗ヒトIgG抗体は、Sigma-Aldrich, St. Louis, MOおよびChemicon, Temecula, CAから市販されている。
【0157】
試料中の自己抗体の存在もしくは非存在、または示差的存在を検出する方法は、二次抗体の標識の選択に対応する。例えば、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドがイムノブロットに適したメンブレンサブストレート上に移される場合、検出可能なシグナル(即ち、ブロット)は、酵素標識を使用する場合にはデジタル撮像装置、または放射性同位体標識を使用する場合にはx線フィルム現像機を用いて定量され得る。別の例では、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドがマルチウェルプレートに移される場合、検出可能なシグナルは、蛍光、化学発光、および/または発色シグナルを検出および定量することができる自動プレートリーダーを用いて定量され得る。このような検出方法は、当技術分野において周知である。
【0158】
一般的なイムノアッセイ技術は当技術分野において周知である。パラメータの最適化についてのガイダンスは、例えば、Wu, Quantitative Immunoassay: A Practical Guide for Assay Establishment, Troubleshooting, and Clinical Application, 2000, AACC Press; Principles and Practice of Immunoassay, Price and Newman, eds., 1997, Groves Dictionaries, Inc.; The Immunoassay Handbook, Wild, ed., 2005, Elsevier Science Ltd.; Ghindilis, Pavlov and Atanassov, Immunoassay Methods and Protocols, 2003, Humana Press; Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, 1998, Cold Spring Harbor Laboratory Press; およびImmunoassay Automation: An Updated Guide to Systems, Chan, ed., 1996, Academic Pressにおいて見出すことができる。
【0159】
ある態様において、移行抗体の存在または存在の増加は、イムノアッセイにおいて検出可能なシグナル(例えば、ブロット、蛍光、化学発光、色、放射能)によって示され、ここで、母親または潜在的な母親からの生体試料が、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドと接触される。この検出可能なシグナルは、対照試料由来のシグナルと、または閾値と比較される。いくつかの態様において、対照試料中の移行抗体のシグナルまたは所定の閾値と比較して、試験試料中の移行抗体の検出可能なシグナルが少なくとも約10%、20%、30%、50%、75%より大きい場合に、存在の増加が検出され、ASDのリスクの増加が示される。いくつかの態様において、対照試料中の移行抗体のシグナルまたは所定の閾値と比較して、試験試料中の移行抗体の検出可能なシグナルが少なくとも約1倍、2倍、3倍、4倍またはそれ以上より大きい場合に、存在の増加が検出され、ASDのリスクの増加が示される。
【0160】
いくつかの態様において、移行抗体測定の結果は、有形的表現媒体に記録される。例えば、本診断アッセイの結果(例えば、移行抗体の存在または存在の増加の観察)、およびASDのリスクの増加が決定されるか否かの診断は、例えば、紙または電子媒体(例えば、オーディオテープ、コンピュータディスク、CD、フラッシュドライブなど)に記録することができる。
【0161】
他の態様において、方法は、移行抗体測定の結果に基づいて、患者の胎児または子がASDを発症するリスクの増加があるか否かの診断を患者(即ち、母親または潜在的な母親)へ提供するステップをさらに含む。
【0162】
F.ペプチドエピトープを投与することによってリスクを低減する方法
ある局面において、本発明は、ASDと関連する母親由来自己抗体へ特異的に結合するLDH Aペプチドエピトープ、LDH Bペプチドエピトープ、STIP1ペプチドエピトープ、GDAペプチドエピトープ、YBX1ペプチドエピトープ、CRMP1ペプチドエピトープ、CRIMP2ペプチドエピトープ、およびそれらの任意の組み合わせまたはそのミモトープより選択されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質を、母親または潜在的な母親へインビボで投与することによって、胎児または子において自閉症スペクトラム症(ASD)を発症するリスクを防ぐおよび/または低減するための方法を提供する。ブロッキング物質は、移行抗体が胎児または子中に存在する内因性ポリペプチド自己抗原へ特異的に結合するのを防ぐことができる。
【0163】
いくつかの態様において、方法は、少なくとも1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチド(例えば、SEQ ID NO:1〜96)またはそのミモトープ、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96種類のSEQ ID NO:1〜96に記載されるペプチドまたはそのミモトープを含む少なくとも1つのブロッキング物質を、母親または潜在的な母親へ投与する工程を含む。ある特定の場合において、ブロッキング物質は、SEQ ID NO:9、11、12、36、54、66、71、およびそれらの組み合わせに対応するペプチドまたはそのミモトープを含む。いくつかの場合において、ブロッキング物質は、抗原LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、またはCRMP2を認識する移行抗体へ特異的に結合する。いくつかの態様において、方法は、1、2、3、4、5、6または7種類の異なる移行抗体によって認識される1種類または複数種類のペプチドまたはそのミモトープを、母親または潜在的な母親へ投与する工程を含む。ある特定の場合において、異なるペプチドまたはミモトープの各々は、同じ移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドまたはミモトープの全てが、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される単一の抗原に対する移行抗体へ結合する。ある他の場合において、異なるペプチドまたはミモトープの各々は、少なくとも2、3、4、5、6、または7種類の異なる移行抗体へ結合し、例えば、異なるペプチドまたはミモトープは、以下の抗原のうちの2、3、4、5、6、または7つ全てに対する移行抗体へ結合する:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2。
【0164】
非限定的な例として、ブロッキング物質は、STIP1またはCRMP2に対する移行抗体へ結合するペプチドの組み合わせを含む。さらなる非限定的な例として、ブロッキング物質は、複数の抗原に対する移行抗体へ結合するペプチドの組み合わせを含み、複数の抗原は、以下からなる群より選択される:CRMP2およびGDA、CRMP2およびSTIP1、LDH BおよびYBX1、YBX1およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびGDA、CRMP1、CRMP2およびSTIP1、CRMP1、CRMP2およびYBX1、ならびにLDH A、LDH B、GDAおよびYBX1。追加の非限定的な例として、ブロッキング物質は、以下からなる群より選択されるペプチドの1つまたは複数の組み合わせを含む:SEQ ID NO:20および21、SEQ ID NO:27および55、SEQ ID NO:20および55、SEQ ID NO:45および55、SEQ ID NO:9および28、SEQ ID NO:20および32、SEQ ID NO:27、38および45、SEQ ID NO:21、38および55、SEQ ID NO:32、38、45、55および60、ならびにSEQ ID NO:3、12、27および28。
【0165】
ブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質を使用する本発明の予防および/または治療方法は、妊娠前、妊娠中、または妊娠後に、女性へ提供することができる。いくつかの態様において、ブロッキング物質は、妊娠の経過中の任意の時に、必要に応じて、1、2、3、4、またはそれより多い回数で、投与され得る。例えば、ブロッキング物質は、妊娠の第1期、第2期および/または第3期の1つまたは複数において投与され得る。いくつかの態様において、ブロッキング物質は、例えば、妊娠の約12週後に、脳が発生し始めた胎児を有する女性へ投与される。いくつかの態様において、ブロッキング物質は、分娩後、例えば、出生後の最初の4週間中におよび/または母親が子に授乳している間に、1回または複数回投与される。いくつかの態様において、ブロッキング物質は、妊娠前に、例えば、移行抗体に対して陽性であると検査結果が出ており、妊娠しようと試みている女性において、1回または複数回投与される。
【0166】
いくつかの態様において、2つ以上のペプチドまたはそれらのミモトープを含む複数種類の作用物質が投与される。複数種類の作用物質は、別々にまたは一緒に投与することができる。複数種類の作用物質は、個々のペプチドまたはミモトープのプールであってもよい。いくつかの態様において、異なるエピトープを有する2つ以上のペプチドまたはミモトープは、化学的に連結される。複数の抗原性エピトープは、同じであるかまたは異なる抗原性ポリペプチド由来であり得る。この場合の化学的連結は、ペプチドの直接的な連結、または化学的スキャフォールドもしくはリンカーの使用を介しての連結によるものであり得る。いくつかの態様において、異なるペプチドエピトープを有する2つ以上のペプチドまたはミモトープは一緒に融合される。ペプチドエピトープ融合は、組換え的に発現されるかまたは化学的に合成され得る。
【0167】
いくつかの態様において、方法は、本明細書に記載される1、2、3、4、5、6、または7種類の標的ポリペプチド抗原(例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される)への母親由来自己抗体の結合を低減、阻害、または防止するために、1種類または複数種類のブロッキング物質(例えば、1種類または複数種類のSEQ ID NO:1〜96のペプチドまたはそれらのミモトープ)の治療または予防レジメを母親または潜在的な母親へ投与するステップをさらに含む。
【0168】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される1種類のポリペプチド自己抗原に対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0169】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、2種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH AおよびLDH B、LDH AおよびSTIP1、LDH AおよびGDA、LDH AおよびYBX1、LDH AおよびCRMP1、LDH AおよびCRMP2、LDH BおよびSTIP1、LDH BおよびGDA、LDH BおよびYBX1、LDH BおよびCRMP1、LDH BおよびCRMP2、STIP1およびGDA、STIP1およびYBX1、STIP1およびCRMP1、STIP1およびCRMP2、GDAおよびYBX1、GDAおよびCRMP1、GDAおよびCRMP2、YBX1およびCRMP1、YBX1およびCRMP2、ならびにCRMP1およびCRMP2より選択される抗原の任意の組み合わせに対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0170】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、3種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の3種類の抗原の組み合わせに対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0171】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、4種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の4種類の抗原の組み合わせに対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0172】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、5種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の5種類の抗原の組み合わせに対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0173】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、6種類の異なるポリペプチド自己抗原、例えば、LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2より選択される任意の6種類の抗原の組み合わせに対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0174】
いくつかの態様において、1種類または複数種類のブロッキング物質を、7種類全ての異なる以下のポリペプチド自己抗原:LDH A、LDH B、STIP1、GDA、YBX1、CRMP1、およびCRMP2に対する移行抗体の結合を低減、阻害、または防止するために投与する。
【0175】
ある特定の場合において、LDH Aポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10種類のSEQ ID NO:1〜7および62〜64に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。他の場合において、LDH Bポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20種類のSEQ ID NO:8〜19および65〜72に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。さらに他の場合において、STIP1ポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、または8種類のSEQ ID NO:20〜23および73〜76に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。さらなる場合において、GDAポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、または7種類のSEQ ID NO:24〜27および77〜79に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。他の場合において、YBX1ポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12種類のSEQ ID NO:28〜35および80〜83に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。さらに他の場合において、CRMP1ポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14種類のSEQ ID NO:36〜44および84〜88に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。さらなる場合において、CRMP2ポリペプチドへの移行抗体の結合を低減、阻害、または防止する投与されるブロッキング物質または複数種類のブロッキング物質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25種類のSEQ ID NO:45〜61および89〜96に記載されるペプチドまたはその抗原性断片もしくはミモトープを含む。
【0176】
投与されるブロッキング物質は、それらの免疫原性を減少させるかまたは最小にするために改変を含んでいてもよい。ペプチドまたはミモトープ中のアミノ酸の改変としては、アミド部分またはピログルタミル残基またはポリエチレングリコール鎖の付加(PEG化)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの改変は、Rシートコンフォメーションを形成する傾向の減少に寄与し得、またはペプチド安定性、可溶性、および免疫原性の低下に寄与し得る。いくつかの場合において、より安定であり、可溶性であり、かつ免疫原性が小さいペプチドが望ましい。CONH
2(アミド)基によってC末端で改変された多くのペプチドは、カルボキシペプチダーゼによる攻撃に耐性であるようであり、N末端にピログルタミル残基を有する多くのペプチドは、幅広い特異性アミノペプチダーゼによる攻撃により耐性である。PEG化ペプチドは、非改変ペプチドと比較して、血漿半減期が増加し、免疫原性が減少することが示されている。さらに、ブロッキング物質の配列分析は、保存的改変を介して既知のT細胞エピトープの最小化を可能にする。また、本発明のペプチドとして含まれるものは、カルボキシペプチダーゼとアミノペプチダーゼの両方による攻撃に耐性である環状ペプチドである。さらに、ブロッキング物質の経口投与は、免疫原性の最小化を助長し得る。
【0177】
いくつかの態様において、予防および/または治療方法は、本明細書に記載される検出方法を使用して、母親または潜在的な母親中の1種類または複数種類の標的ポリペプチド自己抗原へ結合する移行抗体の存在または存在の増加を最初に判定するステップを含む。移行抗体の存在について陽性であるかまたは閾値レベルを上回るレベルであると検査結果が出る女性は、移行抗体へ特異的に結合するブロッキング物質を受容する候補である。移行抗体の存在について陰性であるかまたは閾値レベルを下回るレベルであると検査結果が出る女性は、移行抗体へ特異的に結合するブロッキング物質を受容する必要がない。
【0178】
本発明における使用に適した薬学的組成物は、有効成分が治療有効量で含有される組成物を含む。投与される組成物の量は、当然ながら、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与様式、および処方医師の判断に依存する。有効量の決定は、特に、本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内にある。一般に、1種類または複数種類の移行抗体ブロッキング物質の効果量または有効量は、最初に、低用量または少量のブロッキング物質を投与し、次いで、所定の閾値レベル未満に未結合または遊離の移行抗体の存在を排除または低減するなどの所望の効果が、有毒なまたは望ましくない副作用が最小であるかまたは全くなしに、治療される対象において観察されるまで、投与される用量または投薬量を漸増的に増加させ、かつ/または、必要に応じて第2のブロッキング物質を添加することによって、決定される。本発明の薬学的組成物の投与についての適切な用量および投薬スケジュールを決定するための適用可能な方法は、例えば、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1lth Ed., Brunton, et al., Eds., McGraw-Hill (2006)、およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., University of the Sciences in Philadelphia (USIP), 2005, Lippincott, Williams and Wilkinsに記載されている。
【0179】
投薬量および間隔は、治療効果を維持するのに十分なブロッキング物質の血漿または組織レベルを与えるために個々に調節され得る。有効量の1種類または複数種類のブロッキング物質を含む組成物の単回または複数回投与は、処置医師によって選択される投与レベルおよびパターンを用いて実施され得る。用量および投与スケジュールは、例えば、臨床医によって通常実施される方法または本明細書に記載される方法に従って治療過程の全体にわたってモニタリングされ得る、母親または潜在的な母親における移行抗体のレベルに基づいて、決定および調節することができる。いくつかの態様において、治療レベルは、1日1回の用量の投与によって達成される。他の態様において、投与スケジュールは、1日複数回の投与スケジュールを含むことができる。さらに他の態様において、1日おきに、週2回、または毎週の投与が本発明に含まれる。
【0180】
例えば、ブロッキング物質は、必要に応じて、毎月、隔週、毎週または毎日投与され得る。いくつかの態様において、母親または潜在的な母親における移行抗体のレベルがモニタリングされ、ブロッキング物質が、移行抗体が存在するかまたは所定の閾値レベルを上回って存在する場合に投与される。ブロッキング物質は、必要に応じて、約1、2、3、4、5、10、12、15、20、24、30、32、36週間、またはそれよりも長いかもしくは短い期間の間、投与され得る。例えば、ブロッキング物質の投与は、移行抗体のレベルが所定の閾値レベルを下回って低下する場合に中断され得る。ブロッキング物質は、妊娠の全期間中、または妊娠の第1期、第2期もしくは第3期のうちの1つまたは複数の期間中に投与され得る。投与は、受胎前に開始することができ、出生後、例えば、母親が子に授乳している間、継続することができる。
【0181】
ブロッキング物質がペプチドまたはそのミモトープであるいくつかの態様において、典型的な投薬量は、約0.1μg/kg体重から最大約1 g/kg体重まで、例えば、約1μg/kg体重〜約500 mg/kg体重の範囲であり得る。いくつかの態様において、ペプチドまたはミモトープの用量は、約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100 mg/kg体重である。
【0182】
正確な用量は、特定の阻害剤、疾患の重症度、および投薬経路を含む、本明細書において記載されるような様々な因子に依存する。正確な治療的有効用量の決定は、過度の実験なしに医師によって決定することができ、上記開示された範囲内に含まれる任意の用量を含むことができる。
【0183】
ブロッキング物質は、作用物質が移行抗体へ結合して、ASDの発症のリスクと関連する内因性自己抗原への該抗体の結合を妨げ、かつ、作用物質に対する免疫反応が最小化されるような、投与経路によって投与される。通常、作用物質は全身投与される。いくつかの態様において、作用物質は、非経口的に、例えば、静脈内にまたは羊膜内に(即ち、直接羊膜嚢内に)、投与される。さらに、作用物質は経口投与されてもよい。
【0184】
ブロッキング物質は、注射による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与用に製剤化され得る。注射について、例えば、ブロッキング物質は、それらを水溶性溶媒または非水溶性溶媒、例えば、植物油または他の類似油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸またはプロピレングリコールのエステル中に;さらに、所望により、従来の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤と共に、溶解、懸濁または乳化させることによって、調合物に製剤化することができる。いくつかの態様において、ブロッキング物質の組み合わせは、水溶液中に、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩緩衝液中に、製剤化することができる。注射用の製剤は、単位投薬形態、例えば、アンプルまたは複数回投薬容器に添加された保存剤とともに与えられ得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態であることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0185】
非経口投与用の薬学的製剤は、水溶性形態のブロッキング物質の水溶液を含む。さらに、ブロッキング物質の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有することができる。任意で、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために適切な安定剤または化合物の溶解性を増加させる剤を含有することができる。あるいは、ブロッキング物質は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリー水を用いて構成するための粉末形態であってもよい。
【0186】
ブロッキング物質での治療は、1種類または複数種類の内因性自己抗原へ能動的に結合する移行抗体のレベルまたは力価が、ブロッキング物質の投与前と比較して、ブロッキング物質の1回または複数回の投与を受けた後の個体からの生体試料において減少または消失している場合に、効果的であると考えられる。例えば、1種類または複数種類のブロッキング物質の1回または複数回の投与後の、少なくとも約10%、25%、50%、75%または100%の、試料中における1種類または複数種類の内因性自己抗原へ能動的に結合する移行抗体の減少は、ブロッキング物質の投与が効果的であったことを示す。閾値レベルが確立されていた場合、ブロッキング物質での治療は、1種類または複数種類の内因性自己抗原へ能動的に結合する移行抗体のレベルまたは力価が、閾値レベルを下回って減少される場合に、効果的であると考えられる。1種類または複数種類の内因性自己抗原へ能動的に結合する移行抗体は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野において公知の任意の方法を用いて測定され得る。
【0187】
G.移行抗体を除去することによってリスクを低減する方法
ある局面において、本発明は、エクスビボで母親または潜在的な母親の生体液から移行抗体を除去し、次いで、低減または消失したレベルの移行抗体を有する生体液を母親または潜在的な母親へ戻すことによって、胎児または子などの出生児が自閉症スペクトラム症(ASD)を発症するリスクを防ぐまたは低減する方法を提供する。
【0188】
いくつかの態様において、移行抗体を含有する生体液を、母親または潜在的な母親から取り出し、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドと接触させることができる。他の態様において、1種類または複数種類の本明細書に記載されるペプチドを、母親または潜在的な母親へ投与して、生体液中の母親由来自己抗体とそれらの自己抗原との結合をブロックし、それによって母親由来自己抗体を中和することができ、そして、生体液中に存在する中和された複合体を、アフィニティープラスマフェレーシスのような体外療法を使用して除去する。
【0189】
いくつかの態様において、母親または潜在的な母親からの生体液を、固体支持体上に固定された1種類または複数種類のペプチドと接触させる。固体支持体は、例えば、マルチウェルプレート、ELISAプレート、マイクロアレイ、チップ、ビーズ、カラム、多孔性ストリップ、膜、またはニトロセルロースフィルターであり得る。固定化は、共有または非共有結合によるものであり得る。いくつかの態様において、固定化は、標的ペプチドエピトープへ特異的に結合する捕捉抗体によるものである。固体支持体へ結合されたペプチドは、生体液中の移行抗体を捕捉する固定相であり、低減または消失したレベルの移行抗体を有する生体液が、固体支持体から分離され(即ち、移動相として)、そして母親または潜在的な母親へ戻されることを可能にする。
【0190】
いくつかの態様において、エクスビボで処理される生体液は血漿であり、移行抗体は、当技術分野において周知のプロセスであるプラスマフェレーシスによって除去される。血漿は、1種類または複数種類の固定化されたペプチドを有する固体支持体と接触される。血漿中の移行抗体は、固定化されたペプチドへ結合する。低減または消失したレベルの移行抗体を有する血漿は、次いで、母親または潜在的な母親へ戻される。
【0191】
移行抗体のエクスビボ除去は、妊娠前、妊娠中、または妊娠後の女性に対して行われ得る。いくつかの態様において、移行抗体は、妊娠の経過中の任意の時に、必要に応じて、1、2、3、4、またはそれより多い回数で、生体液から除去される。例えば、移行抗体は、妊娠の第1期、第2期および/または第3期の1つまたは複数において除去され得る。いくつかの態様において、移行抗体を、例えば、妊娠の約12週後に、脳が発生し始めた胎児を有する女性から除去する。いくつかの態様において、移行抗体は、分娩後、例えば、出生後の最初の4週間中におよび/または母親が子に授乳している間に、1回または複数回除去される。いくつかの態様において、移行抗体は、妊娠前に、例えば、移行抗体に対して陽性であると検査結果が出ており、妊娠しようと試みている女性において、1回または複数回除去される。
【0192】
エクスビボ移行抗体除去のプロセスは、母親または潜在的な母親から移行抗体を排除または低減するために、必要に応じて、1、2、3、4、またはそれより多い回数で、行われ得る。移行抗体のエクスビボ除去は、必要に応じて、毎日、毎週、隔週、毎月、隔月、行われ得る。いくつかの態様において、母親または潜在的な母親における移行抗体のレベルがモニタリングされ、移行抗体の存在が所定の閾値レベルを上回る場合にエクスビボ移行抗体除去が行われる。エクスビボ移行抗体除去は、必要に応じて、1、2、3、4、5、10、12、15、20、25、35、36週間、またはそれよりも長いかもしくは短い期間にわたって、行われ得る。例えば、移行抗体のエクスビボ除去は、移行抗体のレベルが所定の閾値レベルを下回って低下する場合に中断され得る。エクスビボ移行抗体除去は、妊娠の全期間中、または妊娠の第1期、第2期もしくは第3期のうちの1つまたは複数の期間中に実施され得る。移行抗体除去は、受胎前に開始することができ、出生後、例えば、母親が子に授乳している間、継続することができる。
【0193】
移行抗体を含有する生体液は、通常、血液、血清、血漿、または乳である。いくつかの態様において、生体液は羊水である。
【実施例】
【0194】
IV.実施例
以下の実施例は、特許請求される発明を限定するためではなく、説明するために提供される。
【0195】
実施例1.自閉症スペクトラム症と関連する移行抗体用の天然ペプチドエピトープの同定
この実施例は、自閉症特異的移行抗体に標的とされる乳酸デヒドロゲナーゼAおよびB(LDH AおよびLDH B)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、コラプシン反応媒介タンパク質1および2(CRMP1およびCRMP2)、グアニンデアミナーゼ(GDA)ならびにYボックス結合タンパク質(YBX1)を含む自己抗原のペプチド配列を決定するために行った研究を記載する。
【0196】
バンクに保存されていた母体血漿試料は、Childhood Autism Risk from Genetics and Environment (CHARGE) Study at the University of California, Davis M.I.N.D. Instituteによって提供された。この研究では、自閉症スペクトラム症を有する子を有する母親(ASD;n=55)および定型発達児の母親(TD;n=31)からの血漿を使用し、これらの全ては、胎児脳タンパク質に対するそれらの反応性について特徴付けられた。全ての登録された子の診断は、UC Davis M.I.N.D. Instituteで確認された。
【0197】
特異的抗体結合性ペプチドエピトープを明らかにするために、重複ペプチドスキャニング法を利用した。候補自己抗原の各々についてのアミノ酸配列をNCBIタンパク質データベースから得た。PEPperPrint(登録商標)(Heidelberg, Germany)と協力して作業して、各タンパク質を、重複ペプチド配列から構成されるペプチドアレイへ翻訳した。各ペプチドは、14アミノ酸のペプチド-ペプチド重複を有する15個のアミノ酸を含有した。さらに、各ペプチドを、切断ペプチドを防止し、かつ、ペプチドが互いから分離されていることを確実にするために、N-およびC-末端にて中性GSGSGSGリンカーで延長した。
【0198】
次の2つの異なるディスカバリーマイクロアレイを実験のために合成した:一方のマイクロアレイ(スキーム番号1)は、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH A、GenBankアクセッションAAH67223)、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1 GenBankアクセッションAAH39299)、およびコラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1、GenBankアクセッションNP_001014809)を含有し;他方のマイクロアレイ(スキーム番号2)は、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH B、GenBankアクセッションCAA32033)、グアニンデアミナーゼ(GDA、GenBankアクセッションAAH53584)、Yボックス結合タンパク質1(YBX1、GenBankアクセッションAAI06046)、およびコラプシン反応媒介タンパク質2(CRMP2、GenBankアクセッションNP_001184222)を含有した。マイクロアレイスキーム番号1は、デュプリケートでプリントされた1,537個の異なるペプチドを含有し(合計3,074スポット)、スキーム番号2は、デュプリケートでプリントされた1,810個の異なるペプチドを含有した(合計3,620スポット)。
対照ペプチドはまた各アレイをフレーム化した。各マイクロアレイについて3〜6個のスライドガラスを合成し、各々を母体血漿試料と共にインキュベートした。血漿試料は、マイクロアレイのタンパク質の全てに対して反応性であるとウェスタンブロットによって予め判定されたか、または、各試料が自己抗原のうちの少なくとも1つに対して非常に反応性であると分かった母体血漿試料の組み合わせであった。
【0199】
各マイクロアレイを以下のように処理した:試料とインキュベートする前に、スライドガラスを、室温で、10分間標準バッファー中および45分間ブロッキングバッファー中でプレ膨潤のためにインキュベートした。母体血漿試料(染色バッファー中に1:250希釈)を、振盪しながら4℃で一晩、スライドガラスと共にインキュベートした。次いで、マイクロアレイを標準バッファー中にて10分間、次いで室温で30分間、標識抗体、例えば、HAおよびFLAG対照抗体(染色バッファー中に1:1,000希釈された、それぞれ、抗-HA-Cy5および抗-FLAG-Cy5)またはDyLight680(Rockland #609-144-123)標識F(ab’)2ヤギ抗-ヒトIgG (H+L)二次抗体(染色バッファー中に1:5,000希釈)と共にインキュベートした。上述のようなペプチドマイクロアレイ染色を、PEPperCHIP(著作権)染色キットを使用して行った。RocklandブロッキングバッファーMB-070、0.05% Tween 20を含むリン酸緩衝食塩水、ならびに0.05% Tween 20および10% Rocklandブロッキングバッファーを含むリン酸緩衝食塩水を、それぞれ、ブロッキング、洗浄、および染色のために使用した。
【0200】
マイクロアレイからの発光を、GenePix 4000B(登録商標)マイクロアレイスキャナーを使用して検出した。スポット強度の定量化およびペプチドアノテーションを、PepSlide(登録商標)アナライザーを使用して行った。このソフトウェアは、各スポットの蛍光強度を、生シグナル、フォアグラウンドシグナル、バックグラウンドシグナルへ分解するアルゴリズムを提供する。計算されたフォアグラウンド強度中央値は、選択されたペプチドへの抗体結合の程度を反映する。両側フィッシャー正確確率検定を使用して、p値を得た。以下の基準の両方が満たされた場合、ペプチドを所定の試料について陽性(反応性)と呼んだ。
1.赤の生の平均データに基づいて計算された、チェビシェフの不等式(CI) p値が、そのペプチドの両方のスポットについて0.05未満であった。CI p値は以下:
のように定義され、式中、Y
kは、スポットについての観察された蛍光であり、sは、アレイ上の対照スポットのサンプル標準偏差であり、
は、アレイ上の対照スポットのサンプル平均値である。
2.デュプリケートスポット間の変動係数が50%未満であった。
【0201】
マイクロアレイをフレーム化するHAおよびFLAG対照ペプチドの予想された(対照)スポットパターンが検出された。隣接するペプチドの列によって形成された明確に検出可能なエピトープ様スポットパターンが見られた。表1は、マイクロアレイ研究によって同定された抗原性ペプチドを示す。表2は、重複アミノ酸配列が組み合わされた後の各標的抗原についてのペプチドエピトープを示す。例えば、表2中のSEQ ID NO:62は、表1に記載されるSEQ ID NO:2および3の重複配列を組み合わせることから生じるペプチドエピトープである。
【0202】
(表1)各標的抗原のペプチドエピトープ
【0203】
(表2)各標的抗原の組み合わせられたペプチドエピトープ
【0204】
実施例2.自閉症スペクトラム症と診断された子を有する母親から得られた試料と定型発達児を有する母親から得られた試料とを識別する
この実施例は、本発明のペプチドが、自閉症スペクトラム症(ASD)を有する子を有する母親から得られた血漿試料と、定型発達(TD)児を有する母親から得られた血漿試料とを識別するために有用であることを実証した研究を記載する。特に、この実施例は、子の母親(または潜在的な母親)からの試料において、1種類以上(例えば、複数種類)のペプチドへ結合する自己抗体の存在を検出することによって、子がASDを発症するリスクを判定するために、本発明のペプチドを使用することができることを説明する。
【0205】
これらの実験について、表1および2に列挙されるペプチドを各々が含有する、同一のバリデーションマイクロアレイを構築した。各マイクロアレイはまた、実施例1に記載される実験中にいかなる母体血漿試料によっても結合されなかったいくつかのペプチドを陰性対照として含有した。さらに、ポリオウイルス由来のペプチド
を陽性対照として使用した。それぞれの同一のマイクロアレイは、ランダム分布にてデュプリケートでペプチドを含有し、
対照ペプチドによってフレーム化された。
【0206】
バリデーションマイクロアレイを、実施例1に記載されるように処理およびプロセッシングした。バリデーションマイクロアレイを、ウェスタンブロットおよびELISAによって候補自己抗原のうちの少なくとも1つに対して非常に反応性であると予め判定された母体血漿試料と共にインキュベートした。マイクロアレイからの発光を、実施例1に記載されるように測定および解析した。
【0207】
表3は、ASDと診断された子を有する母親から得られた試料と、TD児を有する母親から得られた試料とを区別するために、表1および2中のペプチドのうちの一部が有用であることを示す。SEQ ID NO:9、11、12、36、54、66、および71によって示されるペプチドは、ASDの診断を有する子の母親から得られた血漿試料と共にマイクロアレイをインキュベートした場合にのみ、自己抗体によって結合された(即ち、TD児の母親から得られた試料と共にマイクロアレイをインキュベートした場合、ペプチドは抗体によって結合されなかった)。他のペプチドは、ASDの診断を有する子の母親からの血漿試料と共にマイクロアレイをインキュベートした場合、TD児の母親から得られた試料と共にマイクロアレイをインキュベートした場合と比較して、より頻繁に自己抗体によって結合された。
【0208】
さらに、表4は、表3に列挙されるペプチドの組み合わせが、ASD児の母親から得られた試料と、TD児の母親から得られた試料とを区別するために使用され得ることを示す。1つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上のペプチドの特定の組み合わせは、分析のために使用された場合、ASD児の母親から得られた試料と、TD児の母親から得られた試料とを、統計的有意性を伴って区別することができた。表5は、表1からのペプチドの組み合わせのいくつかの例を列挙し、ここで、自己抗体の結合が、ASD児の母親から得られた試料において検出されたが、TD児の母親から得られた試料においては検出されなかった。いくつかの場合において、所定の組み合わせ中の全てのペプチドは、同じ自己抗原に由来した。他の場合において、2、3、または4種類の異なる自己抗原に由来するペプチドを使用した。
【0209】
これらの結果はまた、同じ自己抗原の異なる領域へ結合する抗体を検出するために、ペプチドが有用であることを示している。これらのペプチドは、対応する全長自己抗原自体への抗体結合を試料が示さない状況、または、試験試料および対照試料(例えば、TD児を有する母親からの血漿試料)の両方が特定の自己抗原への抗体結合を示す状況において、追加情報を提供する。
【0210】
(表3)ASDとTDとを識別するための母親由来自己抗体反応性の利用
【0211】
(表4)ASD児およびTD児を有する子の母親の血漿からの母親由来自己抗体によって結合されたペプチドの組み合わせ
【0212】
(表5)ASD試料とTD試料とを識別するための特異的なペプチド組み合わせ
【0213】
実施例3.抗原性ペプチドへ特異的に結合する母親由来試料中の抗体を検出するためのELISAベースアッセイ
この実施例は、抗原性ペプチドへ結合する移行抗体の検出のためのELISAベースアッセイを作成する方法を記載する。母親または潜在的な母親における移行抗体の存在は、自閉症スペクトラム症を有する子を有するリスクと関連する。この実施例はまた、リスクがある母親または潜在的な母親を同定するためのELISAベースアッセイの使用を説明する。
【0214】
表2のペプチドを、リンカーを用いて合成し、ビオチン化した。特に、各ビオチン化ペプチドは、スペーサーとしてのSGSSおよびペプチドのC末端でのジケトピペラジン(DKP)基を有する、ビオチン-SGSS-ペプチド-DKPであった。Pierce(登録商標)NeutrAvidin(登録商標)タンパク質がコーティングされたマイクロウェルプレート(Thermo Scientific)をPBSTで洗浄し、過剰なバッファーをウェルから除去した。ビオチン化ペプチドを、純溶媒(例えば、DMSOもしくはDMF)または溶媒/水混合物中に再構成した。再構成されたペプチドを、最終濃度5μg/mlへ超純水中に1:250希釈した。100μlの希釈されたビオチン化ペプチドを、ウェル中へ分配し、スローロッカー上にて室温で1時間または4℃で一晩インキュベートした。参照ウェルを未コーティングのままにしたが、バッファーで満たした。非特異的結合部位を、室温で2時間、200μlの5% Pierce(登録商標)Superblock(商標)PBS溶液とのインキュベーションによってブロックした。その後、自動プレート洗浄機を使用して、プレートをPBSTで6回洗浄した。
【0215】
Sanchez et al. (Cancer Chemother. Pharmacol., 66: 919-925 (2010))から適応された以下の方法を使用して、上述のELISAベースアッセイの1種類または複数種類のペプチドに対する移行抗体を検出した。アッセイにおいて、前記ペプチドの全長抗原に対して反応性であると予め判定された試料を含む、母体血漿試料を得た。試験試料を試料希釈剤(例えば、PBST中2.5% Pierce(登録商標)Superblock(商標))中に希釈し、100μlの各試料をアッセイプレートのウェルへ添加した。全ての試料を、ペプチドコーティングウェルおよび未コーティングウェルの両方において、デュプリケートで分析した。希釈された試料を室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBSTで6回洗浄した。標識二次抗体溶液(例えば、ホースラディシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗-ヒトIgG、Invitrogen)をウェルへ添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートを再びPBSTで8回洗浄した。次いで、プレートを、Tweenを含まないPBSで2回洗浄した。BD Opt EIA(商標)基質(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)をウェルへ添加し、室温で10分間インキュベートした。停止溶液(2N H
2SO
4)を添加し、490 nmでのリファレンスフィルターを使用して、プレートを450 nmで読み取った。
【0216】
実施例4.STIP1ペプチドに対する母親由来試料の反応性の決定
この実施例は、母体血漿試料が、全長STIP1ポリペプチドと比較した場合、本発明のSTIP1ペプチドに対してより高い反応性を示したことを説明する。特に、4つの母体血漿試料を、アミノ酸配列
を有するSTIP1ペプチドに対するそれらの反応性について、以下のペプチドELISAプロトコルを使用して試験した:
1.全ての試薬を室温にする。
2.ペプチドをペプチドストック(1mg/mL)から最終濃度5μg/mLへ超純水中に希釈する。
3.100μlの各ペプチドを96-ウェルNeutrAvidinコーティングプレート上の対応のウェルへ添加する。
4.プレートを室温で1時間インキュベートする。
5.0.05% Tweenを含むPBSでプレートを6回洗浄する。
6.200μlの5% Superblockを各ウェルへ添加し、室温で2時間インキュベートする。
7.0.05% Tweenを含むPBSでプレートを6回洗浄する。
8.母体血漿試料を試料バッファー(0.05% Tweenを含むPBS中2.5% Superblock)中に1:400希釈する。
9.100μlの希釈された血漿試料をウェルへ添加し、室温で1時間インキュベートする。
10.0.05% Tweenを含むPBSでプレートを6回洗浄する。
11.ヤギ抗-ヒト抗体を、0.05% Tweenを含むPBS中に1:2,500希釈する。
12.100μlの希釈されたヤギ抗-ヒト抗体をウェルへ添加し、室温で30分間インキュベートする。
13.0.05% Tweenを含むPBSで8回、そしてPBSニートで2回、プレートを洗浄する。
14.100μlのBD Opt EIA基質を各ウェルへ添加する。
15.プレートを暗室において室温で10分間インキュベートする。
16.50μlのH
2SO
4を各ウェルへ添加し、化学反応を停止させる。
17.490nmリファレンスを用いて450nmで分光光度計において還元設定でプレートを読み取る。
【0217】
試料をデュプリケートで実行し、吸光度値を平均化した。表6は、試料番号1190がSTIP1ペプチドに対して特に反応性であったことを示す(最終吸光度=2.045)。対照的に、全長STIP1ポリペプチドを用いてELISAを使用して同じ試料について得られた吸光度値は、ほぼ1.0であった。従って、この実施例は、本発明のペプチドが、母親由来試料中に存在する自己抗体に対して高い反応性を示し、全長ポリペプチド配列よりも改善された感度を提供することを実証している。
【0218】
(表6)STIP1ペプチドELISAデータ
【0219】
実施例5.移行抗体関連自閉症スペクトラム症についてのマウスモデル
この実施例は、インビボでの本発明のペプチドまたはそのミモトープの効能、安全性、および/または薬物動態特性を調べるために使用され得る、移行抗体関連自閉症スペクトラム症(MAR-ASD)についてのマウスモデルの作製および特徴付けを説明する。リジン残基がスキャフォールディングコアとして使用された分岐骨格へコンジュゲートされた、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、乳酸デヒドロゲナーゼB(LDH-B)、コラプシン反応媒介タンパク質1(CRMP1)、およびストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)由来のペプチドで成体雌性マウスを免疫化することによって、MAR-ASDマウスを作製した。動物に合計5回の免疫化を受けさせ、その後、繁殖させた。各免疫化時に、動物に100μLのペプチド-アジュバント-食塩水ミックスを注射した。第4免疫化を除いて、各免疫化について、各8.4μgのLDH A、LDH BおよびCRMPペプチドを、16.4μgのSTIP1ペプチドと一緒に、同時に投与した。第4免疫化は、アジュバントに加えて、25μgのSTIP1ペプチドおよび15μgのSTIP1タンパク質全体を含有した。対照動物に、100μLの食塩水のみを含有する同様の数の注射を受けさせた。個々のMAR-ASDペプチドエピトープに対する寛容性が、ELISAアッセイによって証明されたように、繁殖前の雌において首尾よく破られた。全てのペプチドの免疫反応性をアッセイするために行った光学密度測定値は、対照動物と比べてMAR-ASD動物において、有意により高かった(およそ4倍)(p < 0.001)。
【0220】
発達のマイルストーンを、MAR-ASDマウスの産仔において調べ、対照の産仔と比較した。体重および頭幅を22匹のMAR-ASD産仔および17匹の対照産仔において測定した。自閉症特異的移行抗体へ曝露された産仔は、出生後4、6、8、10、12、および14日での体重が有意により重かった(p = 0.009)。さらに、MAR-ASD産仔における頭幅は、出生後12および14日で対照と比べて有意により広かった(p < 0.001)。観察された頭幅の増加は、全体長について調節された場合に有意のままであり、これは、頭サイズの差が体サイズ全体と無関係であったことを示している。
【0221】
MAR-ASD産仔はまた、神経発生の変化、反復的なひとり毛繕い行動の増加、超音波発声の減少、および社会的相互関係の欠陥を含む、自閉症に関係があるいくつかの行動異常を示した。若年相互的社会的相互関係(Juvenile reciprocal social interactions)(JRSI)ならびに雄性-雌性社会的相互関係(male-female social interactions)(MFSI)を評価した。
【0222】
JRSIを評価するために、MAR-ASD産仔を、出生後25日に、年齢および性別が合致した新しい見知らぬC57BL/6Jマウスとの10分間プレイセッション中に、いくつかの行動について調べた。24匹のMAR-ASD産仔における行動を22匹の対照と比較した。MAR-ASD産仔は、鼻対鼻(p = 0.021)および肛門性器嗅ぎ(p = 0.029)の減少、押し-這い(p < 0.001)、前面接近(p < 0.001)および追従行動(p = 0.043)の減少、ならびにひとり毛繕いの増加(およそ3倍; p < 0.001)を含む、多くの行動の有意な欠陥を示した。
【0223】
MFSIを5分間プレイセッション中に調べ、ここで、成体雄性産仔を、発情期にある見覚えがない年齢が合致した雌と共に置いた(MAR-ASD、n = 12;対照、n = 11)。MAR-ASD産仔は、鼻対肛門性器(p = 0.044)および体嗅ぎ(p = 0.041)の減少、前面接近(p = 0.017)および追従行動(p < 0.001)の減少、ならびにひとり毛繕いの増加(p = 0.005)を含む、対照と比較した場合の多くの行動の有意な欠陥を示した。
【0224】
上記の発達異常に加えて、自閉症特異的移行抗体へ曝露された産仔は、MRIによって評価されたように、それらの成体脳において、対照と比較した場合、いくつかの神経解剖学的差異を示した。雌性MAR-ASD脳は、雄性MAR-ASD脳ならびに雄性および雌性対照脳と比較して、総脳体積が有意により大きかった。いくつかの皮質領域(主に眼窩皮質および視覚皮質における)ならびに白質路(前交連、帯状束、脳梁、および内包を含む)のサイズの増加が、対照と比べてMAR-ASD成体脳において観察され、主にMAR-ASD雌によって引き起こされた差異が観察された。
【0225】
本明細書に記載される実施例および態様は単に例示を目的とすること、ならびにそれらを踏まえた様々な改変または変更が当業者に示唆されるであろうこと、そしてそれらは本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解される。本明細書において引用される、全ての刊行物、特許、特許出願、および配列アクセッション番号は、全ての目的について参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。