(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873067
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両用レジスタ装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20210510BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-5075(P2018-5075)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-123365(P2019-123365A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】井田 善行
【審査官】
奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−149830(JP,A)
【文献】
特開2000−318438(JP,A)
【文献】
実開昭60−162837(JP,U)
【文献】
特開2011−051385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路と、この通風路を挟んで第1方向に対峙する一対の主壁とを有するとともに、上記通風路の下流端が空調装置からの空気を車室へ吹き出すための吹出口として提供されるレジスタ本体と、
上記吹出口に臨むフィンアッセンブリと、
を備えた車両用レジスタ装置において、上記フィンアッセンブリは、
ア.上記通風路における上記第1方向の中間部に配置されるとともに、上記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸線を中心として上記レジスタ本体に回動可能に支持された中間フィンと、
イ.上記中間フィンの第1方向両側において上記一対の主壁の近傍にそれぞれ配置された一対の端フィンと、
ウ.上記中間フィンと上記一対の端フィンを連動させる連動機構とを備え、
上記端フィンの各々は、上流側フィン部と下流側フィン部とを有し、上記上流側フィン部の下流端部と上記下流側フィン部の上流端部が、上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に連結され、
上記上流側フィン部の上流端部と下流側フィン部の下流端部の一方が、上記主壁近傍において上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能にして上記レジスタ本体に支持され、他方が上記主壁近傍において上記通風路に沿って移動可能かつ上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能にして上記レジスタ本体に支持されており、
上記連動機構は、上記中間フィンの回動に伴い、上記一対の端フィンにおける上流側フィン部と下流側フィン部の連結部を、上記主壁に対して接近・離間する方向に移動させるようになっており、
上記中間フィンが上記主壁と平行な基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンは互いに同じ姿勢にあり、
上記中間フィンが傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの下流端部に近い方の端フィンの下流側フィン部が上記中間フィンと同方向に傾斜し、上記中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの下流側フィン部は、当該下流側フィン部と上記中間フィンとの間隔が吹き出し方向に向かって拡大する姿勢になることを特徴とする車両用レジスタ装置。
【請求項2】
上記連動機構は、上記レジスタ本体に上記通風路に沿って移動可能に支持されたコネクタと、主リンクと、一対の副リンクとを備え、
上記主リンクは、上記コネクタの上流側に配置されるとともに、その両端部が上記中間フィンの上流端部と上記コネクタの上流端部にそれぞれ回動可能に連結され、上記主リンクにより、上記中間フィンの回動が上記コネクタの上記通風路に沿う移動に変換され、
上記一対の副リンクの一端部は、上記コネクタの下流側端部における上記第1方向の両側部にそれぞれ回動可能に連結され、上記一対の副リンクの他端部は、上記一対の端フィンにおける上記連結部にそれぞれ回動可能に連結され、上記一対の副リンクにより、上記コネクタの移動が、上記一対の端フィンの上記連結部の、上記主壁に対する接近・離間方向への移動に変換されることを特徴とする請求項1に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項3】
上記中間フィンが上記基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上流側フィン部と下流側フィン部は、上記主壁に沿い上記中間フィンと平行な姿勢となり、
上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上記連結部が上記主壁から離れ、上記上流側フィン部と下流側フィン部がく字形をなして折れ曲がることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項4】
上記連動機構は上記第1方向に延びる連動リンクを含み、上記連動リンクの中間部は、上記中間フィンにおいて上記中間フィンの回動軸線から上流側に離れた部位に回動可能に連結され、上記連動リンクの両端部は、上記一対の端フィンの上記連結部にそれぞれ回動可能に連結され、
上記中間フィンが上記基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上記連結部が上記主壁から離れていて、上記上流側フィン部と下流側フィン部がく字形をなして折れ曲がり、
上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの下流端部に近い方の端フィンの上記連結部は、上記中間フィンが基本姿勢にあるときより上記主壁から離れ、上記中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの上記連結部は、上記中間フィンが基本姿勢にあるときより上記主壁に近づくことを特徴とする請求項1に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項5】
上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの上流側フィン部と下流側フィン部は、上記主壁に沿う姿勢になることを特徴とする請求項4に記載の車両用レジスタ装置。
【請求項6】
上記レジスタ本体が上記第1方向に扁平をなし、上記中間フィンが上記通風路の上記第1方向中央に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用レジスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において空調装置からの空気を車室に吹き出すためのレジスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネル等に設置されるレジスタ装置は、通風路を有するレジスタ本体と、通風路に配置されたフィンアッセンブリを有している。
フィンアッセンブリは、通風路を横切るように並べられ、この並び方向と交差する方向に延びる回動軸線を有する複数のフィンと、これら複数のフィンを連動させる連動機構とを備えている。通常のフィンアッセンブリでは、中央のフィンの回動に伴い、その両側のフィンが連動機構を介して中央のフィンと同方向に回動するようになっている。
【0003】
例えば、薄型のレジスタ装置において、通風路の吹出口に臨むフィンアッセンブリでは、フィンの数は、中央フィンと、その両側の一対の端フィンの3枚に制約を受ける場合が多い。一対の端フィンを中央フィンと同方向に回動させようとする場合、レジスタ装置の扁平方向に対峙する主壁との干渉を回避するために、一対の端フィンの回動軸線を主壁から離間させる必要があるが、そうすると、中間フィンと端フィンとの間隔を十分に確保できなくなってしまう。
そのため、一対の端フィンの配置および中央フィンとの連動の仕方について種々の工夫がなされている。
【0004】
特許文献1のレジスタ装置のフィンアッセンブリでは、各端フィンが上流側フィン部と下流側フィン部とを有しており、上流側フィン部の下流端部と下流側フィン部の上流端部が共通の回動軸線上において連結されている。この回動軸線は主壁の近傍にあり、移動しない。一対の端フィンの上流側フィン部は、中央フィンの上流端部と長穴付きの連動リンクを介して連結されており、下流側フィン部は、中央フィンの下流端部と長穴付きの他の連動リンクを介して連結されている。
【0005】
特許文献1のフィンアッセンブリにおいて、上記中央フィンが主壁と平行な基本姿勢にあるとき、一対の端フィンの上流側フィン部と下流側フィン部は主壁に沿い中央フィンと平行をなしており、空気はレジスタ装置の正面に吹き出す。
中央フィンが傾斜姿勢にある時、中央フィンの下流端部に近い方の端フィンでは、上流側フィン部が中央フィンと同方向に傾き、下流側フィン部が主壁に沿った姿勢を維持され、中央フィンの下流端部から遠い方の端フィンでは、上流側フィン部が主壁に沿った姿勢を維持され、下流側フィン部が中央フィンと同方向に傾く。これにより、中央フィンの傾き方向に空気を吹き出すようになっている。
【0006】
特許文献2のレジスタ装置のフィンアッセンブリでは、中央フィンはその下流端部が回動可能に支持されている。各端フィンは上流側フィン部と下流側フィン部とを有しており、上流側フィン部の下流端部と下流側フィン部の上流端部が回動可能に連結されており、この回動軸線は移動可能である。上流側フィン部の上流端部は主壁近傍において通風路に沿って移動可能であるとともに回動可能である。下流側フィン部の下流端部は、主壁の延長面から離間した位置で回動可能である。一対の端フィンの下流側フィン部の上流端部(上流側フィン部と下流側フィン部の連結部)と中央フィンの上流端部が連動リンクに回動可能に連結されている。
【0007】
特許文献2のフィンアッセンブリでは、一対の端フィンの下流側フィン部は常に中央フィンと平行である。中央フィンが主壁と平行な基本姿勢にある時、一対の端フィンの下流側フィン部も主壁と平行であり、正面吹き出しを実行する。中央フィンが傾斜姿勢にある時、一対の端フィンの下流側フィン部も同方向に傾斜し、中央フィンが指向する方向に空気を吹き出すことができる。一対の端フィンの上流側フィン部は主壁から下流側フィン部への円滑な空気の流れを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−318438号公報
【特許文献2】特開2008−149830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のレジスタ装置では、中央フィンが傾斜姿勢にあるとき、中央フィンと中央フィンの下流端部から遠い方の端フィンの下流側フィン部との間を流れる空気は中央フィンの傾斜方向に吹き出すが、この空気流に対して、中央フィンと中央フィンの下流端部に近い方の端フィンの下流端部との間から吹き出す空気の流れが交差するため、調節した方向への空気の吹き出しを良好に行なえない。また、中央フィンが傾斜姿勢にあるときに、一方の端フィンの上流側フィン部が傾斜しているため、吹出口に至る空気の円滑な流れを妨げている。
【0010】
特許文献2のレジスタ装置では、一対の端フィンの下流側フィン部の回動軸線が主壁の延長面から離れて中央フィンに近づいており、吹き出し面積を減じてしまう。また、中央フィンが傾斜して正面から外れた方向に吹き出す場合に、その吹出方向への指向性が強過ぎて乗員が不快を感じることもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、通風路と、この通風路を挟んで第1方向に対峙する一対の主壁とを有するとともに、上記通風路の下流端が空調装置からの空気を車室へ吹き出すための吹出口として提供されるレジスタ本体と、上記吹出口に臨むフィンアッセンブリと、を備えた車両用レジスタ装置において、上記フィンアッセンブリは、
ア.上記通風路における上記第1方向の中間部に配置されるとともに、上記第1方向と直交する第2方向に延びる回動軸線を中心として上記レジスタ本体に回動可能に支持された中間フィンと、
イ.上記中間フィンの第1方向両側において上記一対の主壁の近傍にそれぞれ配置された一対の端フィンと、
ウ.上記中間フィンと上記一対の端フィンを連動させる連動機構とを備え、
上記端フィンの各々は、上流側フィン部と下流側フィン部とを有し、上記上流側フィン部の下流端部と上記下流側フィン部の上流端部が、上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に連結され、上記上流側フィン部の上流端部と下流側フィン部の下流端部の一方が、上記主壁近傍において上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能にして上記レジスタ本体に支持され、他方が上記主壁近傍において上記通風路に沿って移動可能かつ上記第2方向に延びる回動軸線を中心に回動可能にして上記レジスタ本体に支持されており、上記連動機構は、上記中間フィンの回動に伴い、上記一対の端フィンにおける上流側フィン部と下流側フィン部の連結部を、上記主壁に対して接近・離間する方向に移動させるようになっており、上記中間フィンが上記主壁と平行な基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンは互いに同じ姿勢にあり、上記中間フィンが傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの下流端部に近い方の端フィンの下流側フィン部が上記中間フィンと同方向に傾斜し、上記中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの下流側フィン部は、当該下流側フィン部と上記中間フィンとの間隔が吹き出し方向に向かって拡大する姿勢になることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、一対の端フィンにおける上流側フィン部の上流端部と下流側フィン部の下流端部が常に主壁の近傍に配置されているので、通風路を流れる空気の円滑な流れを妨げることはない。下流側フィン部の下流端部が主壁の近傍に配置されているので、通風路の吹出口の面積を減じることもない。
中間フィンが傾斜姿勢にあるとき、中間フィンの下流端部に近い方の端フィンの下流側フィン部が同方向に傾斜するので、確実に中間フィンの傾斜に沿って空気を吹き出すことができる。このとき、中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの下流端部と中間フィンとの間を流れる空気は、拡散しながら吹き出すので、上記傾斜方向への空気流の指向性を緩和することができる。
【0013】
一態様として、上記連動機構は、上記レジスタ本体に上記通風路に沿って移動可能に支持されたコネクタと、主リンクと、一対の副リンクとを備え、上記主リンクは、上記コネクタの上流側に配置されるとともに、その両端部が上記中間フィンの上流端部と上記コネクタの上流端部にそれぞれ回動可能に連結され、上記主リンクにより、上記中間フィンの回動が上記コネクタの上記通風路に沿う移動に変換され、上記一対の副リンクの一端部は、上記コネクタの下流側端部における上記第1方向の両側部にそれぞれ回動可能に連結され、上記一対の副リンクの他端部は、上記一対の端フィンにおける上記連結部にそれぞれ回動可能に連結され、上記一対の副リンクにより、上記コネクタの移動が、上記一対の端フィンの上記連結部の、上記主壁に対する接近・離間方向への移動に変換される。
上記構成によれば、連動機構はカム機構を用いずに比較的簡単な構成とすることができる。また、一対の端フィンは略鏡面対称の姿勢をとることができる。
【0014】
一態様として、上記中間フィンが上記基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上流側フィン部と下流側フィン部は、上記主壁に沿い上記中間フィンと平行な姿勢となり、上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上記連結部が上記主壁から離れ、上記上流側フィン部と下流側フィン部がく字形をなして折れ曲がる。
上記構成によれば、中間フィンが基本姿勢にある正面吹き出しの時に、流通抵抗を最小限にすることができる。また、中間フィンが傾斜姿勢にある時、中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの下流側フィン部が中間フィンと異なる方向に傾斜するため、これら下流側フィン部と中間フィンとの間を通る空気を、より広い角度で拡散することができる。
【0015】
他の態様として、上記連動機構は上記第1方向に延びる連動リンクを含み、上記連動リンクの中間部は、上記中間フィンにおいて上記中間フィンの回動軸線から上流側に離れた部位に回動可能に連結され、上記連動リンクの両端部は、上記一対の端フィンの上記連結部にそれぞれ回動可能に連結され、上記中間フィンが上記基本姿勢にあるとき、上記一対の端フィンの上記連結部が上記主壁から離れていて、上記上流側フィン部と下流側フィン部がく字形をなして折れ曲がり、上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの
下流端部に近い方の端フィンの上記連結部は、上記中間フィンが基本姿勢にあるときより上記主壁から離れ、上記中間フィンの
下流端部から遠い方の端フィンの上記連結部は、上記中間フィンが基本姿勢にあるときより上記主壁に近づく。
上記構成によれば、連動機構の構成を簡単にすることができる。また、中間フィンが基本姿勢にある正面吹き出しの時に、一対の端フィンの下流側フィン部が吹き出し方向に向かって互いに広がっているので、拡散送風することができる。
【0016】
上記他の態様において、上記中間フィンが上記傾斜姿勢にあるとき、上記中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンの上流側フィン部と下流側フィン部は、上記
主壁に沿う姿勢になる。
上記構成によれば、中間フィンの下流端部から遠い方の端フィンと中間フィンとの間の空気流を十分に確保したい場合に、有効である。
【0017】
好ましくは、上記レジスタ本体が上記第1方向に扁平をなし、上記中間フィンが上記通風路の上記第1方向中央に配置されている。
上記構成によれば、通風路の吹出口近傍の開口面積が狭いレジスタ装置において、最大限に本発明の効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通風路の吹出口の面積を減じず、通風路内で空気を円滑に流すことができ、さらに、中間フィンの傾斜方向に確実に空気を吹き出すことができるとともに、傾斜方向の空気流の指向性を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用レジスタ装置を車室側から見た斜視図である。
【
図3】同レジスタ装置において、吹出側フィンアッセンブリによる正面吹き出しの状態を示す平断面図である。
【
図4】上記吹出側フィンアッセンブリによる右方向吹き出しの状態を示す
図3相当図である。
【
図5】上記吹出側フィンアッセンブリによる左方向吹き出しの状態を示す
図3相当図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る車両用レジスタ装置の縦断面図である。
【
図7】同第2実施形態のレジスタ装置における吹出側フィンアッセンブリの作用を説明する平断面図であり、(A)は正面吹き出し、(B)は右方向吹き出し、(C)は左方向吹き出しの状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態について
図1〜
図5を参照しながら説明する。図示の車両用レジスタ装置は、車両のインストルメントパネル(図示しない)に臨んで設置されるものであり、レジスタ本体10を備えている。レジスタ本体10は筒形状をなして車両の前後方向に延びており、その上流端がダクトを介して空調装置(いずれも図示しない)に接続されている。レジスタ本体10の内部空間が通風路15として提供され、空調装置からの空気が通風路15を通ってその吹出口から車室に供給される。
【0021】
本実施形態のレジスタ装置は薄型であり、レジスタ本体10は、左右方向(第1方向)の寸法が上下方向(第2方向)の寸法に比べて小さい扁平形状をなしている。レジスタ本体10の横断面形状は矩形をなし、左右の側壁11、12(主壁)と、上壁13(副壁)と下壁14(副壁)とを有している。レジスタ本体10の吹出端にはカバー19が取り付けられている。
【0022】
通風路15には、上流側フィンアッセンブリ20と、下流側フィンアッセンブリ30とが配置されている。
上流側フィンアッセンブリ20は、上下方向に風向きを調節するものであり、平板形状の複数のフィン21と、図示しない連動リンクとを有している。これらフィン21は、左右方向に延びるとともに上下方向に間隔をおいて並べられ、その中央を通って左右方向に延びる回動軸線を中心に回動可能にして、左右の側壁11、12に支持されている。フィン21は互いに平行をなし、平行を維持したまま連動リンクにより同方向に回動するようになっている。
【0023】
下流側フィンアッセンブリ30は、通風路15の吹出口に臨み、左右方向に風向きを調節するものであり、中央フィン31(中間フィン)と、一対の端フィン32,33とを備えるとともに、中央フィン31と端フィン32,33を連動させる連動機構40とを備えている。
【0024】
中央フィン31は上下方向に延びる細長い平板形状をなして、通風路15の左右方向の略中央に配置され、その上下端が、ピン34により上壁13と下壁14に回動可能に支持されている。なお、この中央フィン31の上下方向に延びる回動軸線は、その幅方向中央より下流側に偏倚している。
【0025】
一対の端フィン32,33は、中央フィン31の左右方向両側において、側壁11,12の近傍にそれぞれ配置されている。一対の端壁32,33は、上下方向に延び平板形状をなす上流側フィン部32a,33aと下流側フィン部32b,33bに、それぞれ分割されている。
上流側フィン部32a,33aの下流端部と、下流側フィン部32b,33bの上流端部は、それぞれピン35により上下方向に延びる回動軸線を中心に回動可能に連結されている。この連結部を
図3〜
図5において符号Pで示す。
【0026】
中央フィン31は、上流側フィン部32a,33a、下流側フィン部32b,33bより幅広であり、真直状態の端フィン32,33と略同等の幅を有しており、これら端フィン32,33より吹き出し方向に突出している。
【0027】
左右の下流側フィン部32b,33bの下流端部は、通風路15の吹出口の側壁11,12の近傍において、上下のピン36により、上下に延びる回動軸線を中心にして回動可能に連結されている。
左右の上流側フィン部32a,33aの上流端部は、その下端に設けたピン37が下壁14の前後方向に延びる長穴10xに挿入されることにより、側壁11,12の近傍において上下に延びる回動軸線を中心にして回動可能に、かつ前後方向(通風路15に沿う方向)に移動可能に支持されている。
【0028】
本実施形態の連動機構40は、レジスタ本体10の上壁13に装着されており、平板形状のコネクタ41と、3本のリンク42〜44を備えている。
コネクタ41は前後方向に細長い略長方形をなしており、レジスタ本体10の上壁13の上面に前後方向のスライドを可能にして支持されている。
図1に示すように、上壁13には左右一対のガイド爪18が形成されており、これらガイド爪18によりコネクタ41をスライド方向に案内するようになっている。なお、コネクタ41の上流端部には後述するピン46が突設されており、下流側端部には2本のピン47が突設されており、これらピン46、47が上壁13に形成された前後方向に延びる長穴10y、10z(長穴10yは
図2〜
図5に示し、長穴10zは
図1にのみ示す。)に挿通されることによってもスライド方向に案内されるようになっている。
【0029】
3本のリンク42〜44は上壁13の下面に沿って配置されている。中央の主リンク42は中央フィン31の上流側に配置されており、その一端部は中央フィン31の上流端部にピン45を介して回動可能に連結され、他端部はコネクタ41の上流端部において左右幅方向の中央にピン46を介して回動可能に連結されている。
中央フィン31が回動すると、その回動は主リンク42を介してコネクタ41の前後方向の移動に変換されるようになっている。
【0030】
左側の副リンク43の一端部は、コネクタ41の下流側端部の左側にピン47を介して回動可能に連結されており、他端部は左側の端フィン32の連結部P、より具体的には上流側フィン部32aの下流端部に、ピン48を介して回動可能に連結されている。
右側の副リンク44の一端部は、コネクタ41の下流側端部の右側にピン47を介して回動可能に連結されており、他端部は右側の端フィン33の連結部P、より具体的には上流側フィン部32aの下流端部に、ピン48を介して回動可能に連結されている。
端フィン32,33の各々において、ピン48とピン35は同一回転軸線上に配置するのが好ましい。
【0031】
図1に示すように、中央フィン31には操作つまみ50が上下方向にスライド可能に支持されており、この操作つまみ50を掴んで、中央フィン31を上下方向に延びる回動軸線を中心に回わすことにより、吹き出し方向を左右に調節することができる。
【0032】
上記操作つまみ50には奥に向かって突出する係合部材51が設けられており、この係合部材51が奥側フィンアッセンブリ20において上下方向の中央近傍に位置するフィン21に係合されている。操作つまみ50を中央フィン31に沿って上下方向にスライドさせると、複数の奥側フィン21が左右方向に延びる回動軸線を中心に回動し、これにより、吹き出し方向を上下に調節することができる。
【0033】
次に、上記レジスタ装置の吹出側フィンアッセンブリ30による吹き出し方向の左右調節について説明する。
図3に示すように、中央フィン31が左右の側壁11,12と平行な基本姿勢にあるとき、主リンク42は、中央フィン31と同一平面上に位置し、側壁11,12と平行であり、左右のリンク43,44は側壁11に対して大きく傾いている。端フィン32,33の連結部Pは側壁11,12に近接した位置にあり、上流側フィン部32a,33aと下流側フィン部32b,33bは側壁11,12に沿って配置され、端フィン32,33は真直状態にある。通風路15の上流側から流れてきた空気は、端フィン32,33の抵抗を殆ど受けずに、中央フィン31と端フィン32,33に沿って真っすぐ流れ、レジスタ装置の正面から吹き出す。
【0034】
図4に示すように、操作つまみ50を掴んで中央フィン31を、その下流端部が右へ移動するように、すなわち
図4において反時計回り方向に回動させると、主リンク42を介してコネクタ41が吹き出し方向に向かって移動し、これに伴い、左右のリンク43,44を介して、端フィン32,33の連結部Pが側壁11,12から離れる方向に移動し、その結果、端フィン32,33が内側に凸のく字形をなすように、上流側フィン部32a,33aと下流側フィン部32b,33bが回動する。この回動は、上流側フィン部32a,33aの上流端部が吹き出し方向に移動することにより可能である。一対の端フィン32,33は鏡面対称をなして姿勢が変化する。
【0035】
上記操作により、右側の端フィン33(中央フィン31の下流端部に近い方の端フィン33)の下流側フィン部33bが中央フィン31と同方向に傾き、略平行となり、通風路15の上流側からの空気の主部分はこれら中央フィン31と下流側フィン部33bに沿って右方向に吹き出す。この空気流は、後述の他の空気流に乱されることなく確実に右方向に吹き出すことができる。
【0036】
通風路15の上流側からの空気の一部は、中央フィン31と左側の端フィン32(中央フィン31の下流端部から遠い方の端フィン32)の上流側フィン部32aを通り、さらに中央フィン31と下流側フィン部32bを通って吹き出す。下流側フィン部32bは中央フィン31と異なる方向に傾いており、吹き出し方向に向かって互いの間隔が広がっているので、この空気は中央フィン31と下流側フィン部32bに沿って広がるように拡散して吹き出す。そのため、右方向に吹き出す空気流の指向性を緩和することができる。
【0037】
上述したように中央フィン31が傾斜姿勢にあるとき、端フィン32,33はく字形をなしているので、側壁11,12に沿って流れる空気は、端フィン32,33の上流側フィン部32a,33から下流側フィン部32b,33bへ円滑に流れる。
【0038】
図5に示すように、中央フィン31を、その下流端部が左へ移動するように、すなわち
図5において時計回り方向に回動させると、端フィン32,33の連結部Pが側壁11,12から離れる方向に移動し、端フィン32,33が内側に凸のく字形をなす。上記と作用は同様であるので簡単に説明すると、左側の端フィン32(中央フィン31の下流端部に近い方の端フィン32)の下流側フィン部32bが中央フィン31と同方向に傾き、右側の端フィン33(中央フィン31の下流端部から遠い方の端フィン33)の下流側フィン部33bが中央フィン31と異なる方向に傾く。これにより、左方向への吹き出しと、右側での拡散吹き出しを行うことができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係るレジスタ装置を、
図6、
図7を参照しながら説明する。これら図において、第1実施形態に対応する構成部については、同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
連動機構は1つの連動リンク60からなる。この連動リンク60はく字形をなし、レジスタ本体10の上壁13の下面に沿って左右方向に延びている。連動リンク60の中央の屈曲部がピン61により中央フィン31の幅方向中央(回動軸線となるピン34より上流側)に回動可能に連結されている。連動リンク60の左端部は左側の端フィン32の連結部P、具体的には上流側フィン部32aの下流端部にピン62を介して回動可能に連結され、連動リンク60の右端部は右側の端フィン33の連結部P、具体的には上流側フィン部33aの下流端部にピン62を介して回動可能に連結されている。
【0041】
図7(A)に示すように、中央フィン31が側壁11,12と平行な基本姿勢にある時、一対の端フィン32,33の連結部Pは側壁11,12から離れており、端フィン32,33は内側に凸のく字形をなして同じ姿勢をとっている。個の正面吹き出しでは、一対の端フィン32,33の下流側フィン部32b、33bが吹き出し方向に向かって互いに間隔を広げるように配置されているので、拡散して吹き出すことができる。
【0042】
図7(B)に示すように、中央フィン31を、その下流端部が右へ移動するように、すなわち反時計回り方向に回動させると、連動リンク60が左方向に移動する。その結果、右側の端フィン33の連結部Pが側壁12からさらに離れ、く字形の屈曲角度を増大させ、下流側フィン部33bが中央フィン31と同方向にかつほぼ平行に傾く。他方、左側の端フィン32の連結部Pが側壁11に近づき、く字形の屈曲状態が解消されて真直状態となり側壁11に沿う。
図7(B)に示す中央フィン31の右への傾斜状態では、第1実施形態と同様に、右方向への吹き出しが実行されるとともに、左側では拡散吹き出しが実行される。左側の端フィン32が側壁11に沿って配置されているので、第1実施形態より左側での流通抵抗が少なくなる。
【0043】
図7(C)に示すように、中央フィン31を、その下流端部が左へ移動するように、すなわち時計回り方向に回動させると、連動リンク60が右方向に移動する。その結果、左側の端フィン32の連結部Pが側壁11からさらに離れ、く字形の屈曲角度を増大させ、下流側フィン部32bが中央フィン31と同方向にかつほぼ平行に傾く。他方、右側の端フィン33の連結部Pが側壁12に近づき、く字形の屈曲状態が解消されて真直状態となり側壁11に沿う。他の作用は
図7(B)と同様であるから、その説明を省略する。
【0044】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様が可能である。
例えば、端フィンの上流側フィン部の上流端部を回動可能に支持し、下流側フィン部の下流端部を前後方向に移動可能かつ回動可能に支持してもよい。
第1実施形態の副リンク32,33や第2実施形態の連動リンク60を、端フィン32,33の連結部Pとして、上流側フィン部32a,33aの下流端部に連結したが、下流側フィン部32b、33bの上流端部に連結してもよい。
第1実施形態では、中央フィン31が基本姿勢にあるとき、端フィンを側壁に沿う真直姿勢にしたが、内側に凸のく字形にしてもよい。この場合には、第1実施形態でも拡散したなら正面吹き出しを行うことができる。
【0045】
上記実施形態では薄型レジスタ装置を横に設置したが、縦に設置してもよい。この場合、中央フィン、端フィンが上下方向(第1方向)に配置され、その回動軸線が左右方向(第2方向)に延びる。
本発明は、薄型でないレジスタ装置にも適用可能である。この場合、中間フィンは複数配置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両の空調のためのレジスタ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
10 レジスタ本体
11、12 側壁(主壁)
15 通風路
30 吹出側フィンアッセンブリ
31 中央フィン(中間フィン)
32,33 端フィン
32a,33a 上流側フィン部
32b,33b 下流側フィン部
40 連動機構
41 コネクタ
42 主リンク
43,44 副リンク
60 連動リンク(連動機構)
P 連結部