【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代構造部材創製・加工技術開発/次世代複合材及び軽金属構造部材創製・加工技術開発(第二期)構造健全性診断技術(SHM)の実用化」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一複合材層、第二複合材層、及び第三複合材層を順に有する被補強部材と、当該被補強部材の表面に固定されている補強部材と、を備える組立体を評価する評価方法であって、
前記第一複合材層と前記第二複合材層との間に延びている第一光ファイバに入射光を導入して出射光を検出し、当該第一光ファイバの軸方向の各位置における歪みの分布である第一歪み分布を計測すると共に、前記第一光ファイバに沿って前記第二複合材層と前記第三複合材層との間に延びている第二光ファイバに入射光を導入して出射光を検出し、当該第二光ファイバの軸方向の各位置における歪みの分布である第二歪み分布を計測するステップと、
前記第一歪み分布及び前記第二歪み分布から前記被補強部材の表面のリンクルの形状を取得するステップと、を含む評価方法。
第一複合材層、第二複合材層、及び第三複合材層を順に有する被補強部材と、当該被補強部材の表面に固定されている補強部材と、を備える組立体を評価する評価システムであって、
前記第一複合材層と前記第二複合材層との間に延びている第一光ファイバに入射光を導入して出射光を検出し、当該第一光ファイバの軸方向の各位置における歪みの分布である第一歪み分布を計測すると共に、前記第一光ファイバに沿って前記第二複合材層と前記第三複合材層との間に延びている第二光ファイバに入射光を導入して出射光を検出し、当該第二光ファイバの軸方向の各位置における歪みの分布である第二歪み分布を計測する計測部と、
前記第一歪み分布及び前記第二歪み分布から前記被補強部材の表面のリンクルの形状を取得する形状取得部と、
を備える評価システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る評価システムについて
図1〜
図9を参照して説明する。
【0016】
(評価システムの構成)
評価システム1は、組立体50を評価するためのシステムである。
図1に示すように、評価システム1は、計測部10と、第一光ファイバ20と、第二光ファイバ30と、形状取得部40と、を備える。
【0017】
第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30は、組立体50に設けられており、組立体50の内部変形に応じた歪みを受ける。
【0018】
計測部10は、第一光ファイバ20、第二光ファイバ30に入射光をそれぞれ導入して第一光ファイバ20、第二光ファイバ30から出射する出射光をそれぞれ検出する。
計測部10は、第一光ファイバ20の出射光を検出することによって、第一光ファイバ20の軸方向の各位置における歪みの分布である第一歪み分布を計測することができる。
同様に計測部10は、第二光ファイバ30の出射光を検出することによって、第二光ファイバ30の軸方向の各位置における歪みの分布である第二歪み分布を計測することができる。
【0019】
形状取得部40は、計測部10と通信可能に接続している。形状取得部40は、計測部10から計測された第一歪み分布及び第二歪み分布を取得する。形状取得部40は、第一歪み分布及び第二歪み分布から、内部の演算によって、被補強部材60の表面60sのリンクルWKの形状を取得する。
【0020】
(組立体の構成)
組立体50の構成について詳しく説明する。
組立体50は、被補強部材60と、補強部材70とを備える。
【0021】
本実施形態では、被補強部材60は、スキンパネルである。
図2に示すように、被補強部材60は、表面60s側からZ方向に向かって、第一複合材層61、第二複合材層62、及び第三複合材層63を順に有する。第一複合材層61、第二複合材層62、及び第三複合材層63は、それぞれ、炭素繊維に熱硬化性樹脂を染み込ませたプリプレグであって、順に積層されている。
【0022】
また、本実施形態では、補強部材70は、ストリンガである。
図1に戻って、補強部材70は、一方向に延びている。具体的には、補強部材70は、X方向に沿う方向よりもY方向に沿う方向に長く延びている。
以下、補強部材70において、X方向に沿う方向を幅方向ともいい、Y方向に沿う方向を奥行方向ともいう。また、補強部材70や被補強部材60において、Z方向に沿う方向を高さ方向ともいう。
補強部材70は、被補強部材60の表面60s上に接着される。被補強部材60の表面60sと補強部材70とは、生材(未硬化)の被補強部材60の表面60sに、硬化済の補強部材70が接着されることによって、コボンド接着されている。
【0023】
補強部材70は、幅方向両側及び奥行方向両側に周縁部71を有する。周縁部71は、補強部材70の幅方向両側において奥行方向に延びている一対の幅周縁部71xと、補強部材70の奥行方向両側において幅方向に延びている一対の奥行周縁部71yと、を有する。幅周縁部71xは、奥行周縁部71yより長く延びている。
【0024】
(光ファイバの構成)
図2に示すように、第一光ファイバ20は、第一複合材層61と第二複合材層62との間に延びている。
第二光ファイバ30は、第一光ファイバ20に沿って、第二複合材層62と第三複合材層63との間に延びている。
本実施形態では、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30は、第一複合材層61、第二複合材層62、及び第三複合材層63を積層する際に設けられる。
したがって、被補強部材60の表面60sと補強部材70とは、第一複合材層61と第二複合材層62との間に第一光ファイバ20が設けられ、第二複合材層62と第三複合材層63との間に第二光ファイバ30が設けられた状態でコボンド接着される。
なお、本実施形態では、
図2に示すように、第一光ファイバ20と第二光ファイバ30との間に、複合材層として、第二複合材層62のみ形成されているが、変形例として、第一光ファイバ20と第二光ファイバ30の間に、第二複合材層62に加えて、他の複合材層が含まれていてもよい。
また、本実施形態では、
図2に示すように、第一光ファイバ20上に、複合材層として、第一複合材層61のみ形成されているが、変形例として、第一光ファイバ20の上に、第一複合材層61に加えて、他の複合材層が含まれていてもよい。
【0025】
第一光ファイバ20、第二光ファイバ30は、それぞれ補強部材70の周縁部71の少なくとも一部とそれぞれ交差している。具体的には、
図1に示すように、第一光ファイバ20、第二光ファイバ30は、補強部材70の周縁部71のうち、一対の幅周縁部71xと繰り返し交差するように、補強部材70の幅方向両側に亘ってそれぞれ蛇行している。
【0026】
(形状取得部の構成)
形状取得部40の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、形状取得部40は、膜歪み演算部41と、曲げ歪み演算部42と、曲率演算部43と、回転角演算部44と、形状演算部45と、を機能的に備える。
膜歪み演算部41は、第一歪み分布、第二歪み分布における各位置のそれぞれの歪である第一歪みε1、第二歪みε2から、膜歪みεaを演算により取得する。
曲げ歪み演算部42は、第一歪み分布、第二歪み分布における各位置のそれぞれの歪である第一歪みε1、第二歪みε2から、曲げ歪みεbを演算により取得する。
曲率演算部43は、各位置の表面60sの曲率φを演算により取得する。
回転角演算部44は、各位置の表面60sの回転角θを演算により取得する。
形状演算部45は、各位置の表面60sの回転角θを累積してリンクルWKの形状を取得する。
【0027】
形状取得部40におけるリンクルWKの形状を取得するための各演算について
図4から
図6を参照して詳しく説明する。
形状取得部40は、第一歪み分布及び第二歪み分布から、被補強部材60の表面60sのリンクルWKの形状を取得する。
図4に示すように、リンクルWKが発生すると、第一光ファイバ20、第二光ファイバ30に、第一歪みε1、第二歪みε2がそれぞれ発生する。
【0028】
このとき、例えば、
図5に示す部分では、第二歪みε2>第一歪みε1の関係となる。この場合、εa=(ε2+ε1)/2より、第二複合材層62の膜歪み(軸方向歪み)εaが算定でき、εb=(ε2−ε1)/2より曲げ歪みεbが算定できる。
これらの演算により膜歪み演算部41、曲げ歪み演算部42は、膜歪みεa、歪みεbをそれぞれ取得する。
【0029】
計測部10で計測可能なX方向の位置分解能をΔxとし、第一光ファイバ20と第二光ファイバ30との間隔をdとすると、εb/(d/2)=φより、計測範囲Δxの箇所の表面60sの曲率φが算定できる。また、φ×Δx=θより、計測範囲Δxの箇所における表面60sの回転角θが算定できる。
これらの演算により曲率演算部43、回転角演算部44は、曲率φ、回転角θをそれぞれ取得する。
【0030】
計測範囲Δx全体において、εaのみが算定され、εbがほぼゼロの場合、計測範囲Δxは、曲げ変形を生じていない領域とみなすことができる。
これに対し、εbが大きくなりはじめる点がリンクルWKの発生範囲の端部として評価できる。また、連続する計測範囲Δxでの回転角θを算定していくことによって、各計測範囲Δxの傾きがでるので、各計測範囲Δxにおける傾きの累積値を算定することによって、形状演算部45は、リンクルWKの高さ方向の形状を取得する。
例えば、
図6に示すように、各計測範囲Δx1、Δx2、Δx3・・・それぞれでの回転角θ1、θ2、θ3・・・を累積することによって、形状演算部45は、リンクルWKの形状を取得できる。
【0031】
(評価方法)
本実施形態の評価システム1による評価方法について
図7を参照して説明する。
本評価方法では、生材の被補強部材60の硬化後において、表面60sに発生するリンクルWKの形状を評価する。
【0032】
まず、表面60s上に硬化済の補強部材70を載せて、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30が設けられた生材(未硬化)の被補強部材60を硬化する(ST10:硬化するステップ)。これにより、表面60sに硬化済の補強部材70がコボンド接着される。このとき、
図2に示すように、表面60sにリンクルWKが発生することがある。
【0033】
続いて、第一光ファイバ20の軸方向の各位置における歪みの分布である第一歪み分布を計測すると共に、第二光ファイバ30の軸方向の各位置における歪みの分布である第二歪み分布を計測する(ST20:計測するステップ)。
【0034】
続いて、第一歪み分布及び第二歪み分布から、被補強部材60の表面60sのリンクルWKの形状を取得する(ST30:形状を取得するステップ)。
【0035】
(作用及び効果)
本実施形態では、光ファイバをリンクルWKが発生する第一複合材層61、第二複合材層62、及び第三複合材層63の各層間に第一光ファイバ20、第二光ファイバ30をそれぞれ埋め込み、硬化後の歪みを計測する。
各層間に第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30を埋め込むことで変形量を把握し、リンクルWKの形状を評価することができる。
【0036】
事前に歪み値とリンクルWKの大きさの相対関係を把握しておくことで、1つの層間の歪みからリンクルWKの形状の評価を行うことは可能な場合もあるが、精度があまりよくない。
これに対し、実施形態では、2つの層間の各歪みからリンクルWKの形状の評価しているため、リンクルWKの形状をより高い精度で取得できる。
【0037】
また本実施形態では、第一光ファイバ20、第二光ファイバ30が、補強部材70の幅方向両側に亘ってそれぞれ蛇行している。これにより、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30が、補強部材70が接着される領域全体にわたって分布している。
どこでどの程度の大きさのリンクルWKが発生しているか把握できないと、ピックアップした箇所の目視検査データから過度に安全な許容値、設計値を用いる必要がある。
これに対し、本実施形態では、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30を補強部材70が接着される領域全体にわたって分布させることによって、全面検査を行うことができ、どこでどの程度の大きさのリンクルWKが発生しているかを把握できる。これにより、リンクルWKが発生していない箇所を特定することができる。
したがって、リンクルWKが発生していない箇所の強度設計値を最大限活用することができる。
【0038】
本実施形態では、計測部10は、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30に入射光を導入して出射する出射光を検出することによって、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30の軸方向の各位置における歪み分布を計測しているが、歪みの分布はどのように計測されてもよい。
【0039】
例えば、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30の軸方向の各位置における歪み分布を計測する計測部10は、
図8に示すような計測部10が用いられてもよい。
図8に示す計測部10は、BOCDA(ブリルアン光相関領域解析法、特許第4652309号公報参照。)を用いる計測部である。
BOCDAを用いる計測部10では、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30の各一端から入射光(ポンプ光)を導入することで発生する微弱な後方散乱光に対し、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30の各他端から周波数をシフトさせた別の光(プローブ光)を導入する。すると、計測部10は、ポンプとプローブ光との相互作用により誘導ブリルアン散乱光SBS(Stimulated Brillouin Scattering)を検出光として検出する。SBSの光スペクトルのシフトによって、計測部10は、第一光ファイバ20に付与される歪みを、軸方向の各位置について、それぞれ検出することができる。同様に。SBSの光スペクトルのシフトによって、計測部10は、第二光ファイバ30に付与される歪みを、軸方向の各位置について、それぞれ検出することができる。
図8に示す計測部10の場合、入射する各光の周波数、強度を変調させることで、計測するSBSの箇所を特定することが可能であり、計測部10は、第一光ファイバ20の軸方向の各位置における歪みである第一歪み分布を計測することができる。
同様に入射する各光の周波数、強度を変調させることで、計測部10は、第二光ファイバ30の軸方向の各位置における歪みである第二歪み分布を計測することができる。
【0040】
また光ファイバの軸方向の各位置における歪み分布を計測する計測部10、第一光ファイバ20及び第二光ファイバ30に代えて、
図9に示すような計測部10’、第一光ファイバ20’及び第二光ファイバ30’が用いられてもよい。
図9に示す計測部10’は、FBG(Fiber Bragg Grating)を用いる計測部である。
FBGを用いる計測部10’では、軸方向の各位置にそれぞれ異なる特定の波長の光を反射する回折格子(Bragg Grating)80が施された第一光ファイバ20’の一端から、入射光を導入する。入射光は回折格子80により後方反射光と、透過光に分離される。計測部10’は、検出光として後方反射光又は透過光を検出し、当該後方反射光又は透過光の光スペクトルやピーク周波数変動を計測することで、各回折格子80における歪み、すなわち各位置における歪みである第一歪み分布を計測できる。
同様に、FBGを用いる計測部10’では、軸方向の各位置にそれぞれ異なる特定の波長の光を反射する回折格子80が施された第二光ファイバ30’の一端から、入射光を導入する。計測部10’は、検出光として後方反射光又は透過光を検出し、当該後方反射光又は透過光の光スペクトルやピーク周波数変動を計測することで、各回折格子80における歪み、すなわち各位置における歪みである第二歪み分布を計測できる。
<変形例>
【0041】
上記実施形態では、第一複合材層と第二複合材層との間に第一光ファイバ、第二複合材層と第三複合材層との間に第二光ファイバを設けている。
変形例として、第一複合材層、第二複合材層、第三複合材層、及び第四複合材層を順に有する被補強部材に対し、第三複合材層と第四複合材層の間にさらに第三光ファイバを設けて第三歪み分布を計測し、第一歪み分布、第二歪み分布、及び第三歪み分布から、被補強部材の表面のリンクルの形状を取得してもよい。
他の変形例として、さらにファイバを増やして、さらに多くの歪み分布から、被補強部材の表面のリンクルの形状を取得してもよい。
【0042】
上記実施形態では、第一光ファイバ、第二光ファイバは、それぞれ幅周縁部71xと交差している。変形例として、第一光ファイバ、第二光ファイバは、幅周縁部71xに加えて、それぞれ奥行周縁部71yとさらに交差してもよい。奥行周縁部71yと交差させれば、奥行周縁部71y周辺に発生するリンクルWKの形状も取得できる。
【0043】
上記実施形態では、形状取得部40において、第一歪み分布及び第二歪み分布に対し、各種演算部で演算を行うことにより、被補強部材60の表面60sのリンクルWKの形状を取得しているが、各種演算部で演算を行わず、表面60sのリンクルWKの形状を取得してもよい。
変形例として、形状取得部40が、予め各種第一歪み分布及び第二歪み分布に対するリンクルWKの形状をそれぞれ記憶しておいてもよい。この場合、形状取得部40は、記憶された複数のリンクルWKの形状の中から、計測された第一歪み分布及び第二歪み分布に対する表面60sのリンクルWKの形状を読み出し、表面60sのリンクルWKの形状を取得する。
【0044】
上述の各実施形態においては、形状取得部の各種機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各種処理を行うものとしてもよい。ここで、コンピュータシステムのCPUの各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。