(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時計は、前記一次貯蔵ユニットによって給電するために前記電気コンバータに接続される、又は規則的に接続されるのに好適な、一次負荷(54;55;74)を備え、
前記一次負荷は前記調速デバイスを備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の時計。
前記時計は、前記二次貯蔵ユニットによって給電できるように前記二次貯蔵ユニットに接続される、又は断続的に接続されるのに好適な、補助負荷を備えることを特徴とする、請求項2に記載の時計。
前記調速デバイス(52;72)はタイマーを更に備え、前記タイマーは前記論理制御回路(62;62a、62b)と連携して、前記論理制御回路に、第1の電圧突出若しくは第2の電圧突出の検出から第1の所与の遅延(TC1;TC2)だけ後に、又は第1の電圧突出若しくは第2の電圧突出の検出から第2の所与の遅延(TD1;TC2+TD2)だけ後に、前記負荷ポンプデバイス(60;60b)を必要に応じて起動させることができることを特徴とする、請求項5に記載の時計。
前記論理制御回路(62;62b)は、測定された前記時間ドリフトが前記少なくとも1つの特定の前進又は前記少なくとも1つの特定の前進より大きな少なくとも1つの所与の前進に対応する場合に、前記第1の電気負荷の複数回の移動をそれぞれ複数の前記第1の時間的範囲内に実施できるよう、及び測定された前記時間ドリフトが前記少なくとも1つの特定の後退又は前記少なくとも1つの特定の後退より大きな少なくとも1つの所与の後退に対応する場合に、前記第2の電気負荷の複数回の抽出をそれぞれ複数の前記第2の時間的範囲内に実施できるよう、配設されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の時計。
前記第1の電源コンデンサ(C2)及び前記第2の電源コンデンサ(C1)は、略同一の容量値を有し、合わせて前記一次負荷に給電するよう配設されることを特徴とする、請求項12に記載の時計。
前記調速デバイス(53;72)は:前記一次貯蔵ユニットに貯蔵された前記電気エネルギを散逸させるための少なくとも1つの散逸回路;少なくとも1つの前記散逸回路と連携して、前記散逸回路を前記一次貯蔵ユニットに瞬間的に接続できる、少なくとも1つのスイッチ(Sw3、Sw4、Sw5);及び前記二次貯蔵ユニットの端子における電圧が、第1の電圧限界を超えるかどうか、又は前記二次貯蔵ユニットの充填レベルが第1の充填限界を超えるかどうかを検出するよう配設された、測定回路を備えること;並びに
前記論理制御回路は更に、前記二次貯蔵ユニットの前記端子における電圧が前記第1の電圧限界又は充填限界以上である場合に、前記少なくとも1つの散逸回路を前記一次貯蔵ユニットに瞬間的に接続することによって、測定された前記時間ドリフトが前記少なくとも1つの特定の前進に対応する場合に、前記一次貯蔵ユニットの第1の散逸放電を実行し、これにより、前記第1の散逸放電の後の前記一次貯蔵ユニットの再充電の大半が、前記複数の第1の電圧突出のうちの少なくとも1つの第1の電圧突出によって生成されるようにすることができるよう、及び測定された前記時間ドリフトが前記少なくとも1つの特定の後退に対応する場合に、前記一次貯蔵ユニットの第2の散逸放電を実行し、これにより、前記第2の散逸放電の後の前記一次貯蔵ユニットの再充電の大半が、前記複数の第2の電圧突出のうちの少なくとも1つの第2の電圧突出によって生成されるようにすることができるように配設されること
を特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の時計。
前記時計は、前記二次貯蔵ユニットの端子における電圧が第2の電圧限界未満であるかどうか、又は前記二次貯蔵ユニットの充填レベルが、第2の充填限界未満であるかどうかを検出するよう配設された、測定回路を備えること;及び
前記論理制御回路は、前記二次貯蔵ユニットの前記端子における電圧が前記第2の電圧限界又は充填限界未満であり、かつ測定された前記時間ドリフトが前記少なくとも1つの特定の後退と前記少なくとも1つの特定の前進との間である場合に、前記負荷ポンプデバイスを起動させることができるように配設され、これにより、前記負荷ポンプデバイスは、第3の電気負荷を前記一次貯蔵ユニットから前記二次貯蔵ユニットに移動させ、これにより、前記第3の電気負荷の前記移動の後の前記一次貯蔵ユニットの再充電の大半が、前記複数の第1の電圧突出のうちの少なくとも1つの第1の電圧突出によって生成され、また前記負荷ポンプデバイスは、第4の電気負荷を前記一次貯蔵ユニットから前記二次貯蔵ユニットに移動させ、これにより、前記第4の電気負荷の前記移動の後の前記一次貯蔵ユニットの再充電の大半が、前記複数の第2の電圧突出のうちの少なくとも1つの第2の電圧突出によって生成されること
を特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の時計。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これより、
図1、2を参照して、本発明による時計について説明する。
図1は、機械式共振器6を備える機械式ムーブメント4と、調速システム8とを備える、時計2の部分平面図である。上記機械式共振器の維持手段10は、従来のものである。これらは、駆動用のゼンマイを有する香箱12、ガンギ車及びアンクル組立体から形成された脱進機14、並びに上記香箱を上記ガンギ車に動力学的に連結する中間歯車列16を備える。共振器6は、テンプ18及び標準的なヒゲゼンマイを備え、上記テンプは、地板とバーとの間の回転軸20の周りで枢動するように設置される。機械式共振器6及び維持手段10(励起手段とも呼ばれる)は、合わせて機械式発振器を形成する。なお一般には、機械式時計発振器の定義において、脱進機のみがこの機械式発振器の維持手段/励起手段として保持され、エネルギ源及び中間歯車列は別個のものとして考えられる。上記ヒゲゼンマイは、脱進機からの機械的パルスを受信すると、軸20の周りで発振し、上記ガンギ車は上記香箱によって駆動される。歯車列16は時計ムーブメントの機構の一部であり、その進行速度は上記機械式発振器によって設定される。この機構は、歯車列16の他に、この歯車列16に動力学的に連結された更なるホイール及びアナログ式インジケータ(図示せず)を備え、これらのアナログ式インジケータの移動速度は、上記機械式発振器によって設定される。当業者に公知の様々な機構を想定してよい。
【0029】
図2は、テンプ18の高さでの水平な断面に沿った、
図1の部分図であり、本発明による電磁式組立体27を形成する磁石22及びコイル28を示す。コイル28は好ましくはウェハタイプ(厚さが比較的小さいディスク状)のものである。これは時計ムーブメントの地板に配設され、従来と同様、2つの接続端部E1、E2を備える。一般に、少なくとも1つのコイルと帯磁構造とを備える電磁式組立体が考えられ、上記帯磁構造は少なくとも1つの磁石から形成され、上記磁石は上記コイルの主平面の方向に磁束を生成し、上記コイルは、上記機械式共振器が有効動作範囲内に含まれる振幅で発振している場合に、上記時速を通過する。図示されている例では、テンプ18は、好ましくはそのテンワによって画定されるその外径の近傍に位置する領域に、軸方向に配向された磁気軸を有する2極磁石22を支承する。なお、テンプによって支承された上記1つ以上の磁石の磁束を、テンプの一部によって、特に磁性部品であって、コイルの一部がこれら2つの磁性部品の間に位置するように軸方向に沿って上記磁石の両側に配設された、磁性部品によって形成されたケーシングを用いて、閉じ込めることが好ましい。
【0030】
テンプ18は、その回転軸20からの、回転軸20に対して垂直な半軸24を画定し、これは磁石22の中央を通過する。上記ヒゲゼンマイがその静止位置にある場合、半軸24は、ヒゲゼンマイがある特定の周波数で、特に自然な、即ち(脱進機によって周期的に供給されるトルク以外の)外力トルクを受けない機械式発振器の発振周波数に相当する自由周波数F0で発振し得る中立位置(0°に対応するヒゲゼンマイの角度静止位置)を画定する。
図2では、(そのヒゲゼンマイが切断平面の上方に位置する状態で示されている)機械式共振器6が、共振器の最小の潜在的機械的エネルギ状態に対応する中立位置で示されている。なおこの中立位置では、半軸24は、回転軸20及びコイル28の中心軸と垂直に交わる固定された半軸50に対して角度θだけずらされた、基準半軸48を画定する。換言すれば、テンプの主表面における投影図において、コイル28の中心は、基準半軸48に対して角度ラグθを有する。
図2では、この角度ラグは絶対値で120°に等しい。好ましくは、この角度ラグθは絶対値で30°〜120°である。
【0031】
上記機械式共振器の各発振は発振周期を画定し、また第1の交替及びこれに続く第2の交替を有し、これらはそれぞれ、機械式共振器の発振振幅を画定する2つの極限位置の間にある(なお、ここでは発振する共振器、従って機械式発振器全体を考えており、ヒゲゼンマイの発振振幅は特に維持手段によって画定される)。各交替は、中央時点における機械式共振器の中立位置の通過と、該交替の始点及び終点それぞれにおいて機械式共振器が占める2つの極限位置によってそれぞれ画定される開始時点と終了時点との間の特定の持続時間とを示す。従って各交替は、上記中央時点に終了する第1の半交替と、この中央時点に開始される第2の半交替とからなる。
【0032】
機械式発振器の周波数を調速するためのシステム8は、電子回路30及び補助発振器32を備え、この補助発振器は、クロック回路と、上記クロック回路に接続される、例えばクオーツ式の共振器とを備える。なお、ある代替実施形態では、補助発振器は少なくとも部分的に上記電子回路に統合される。上記調速システムは更に、上述の電磁式組立体27、即ち電子回路30に電気的に接続されたコイル28及び2極磁石22を備える。有利には、磁石を除く調速システム8の様々な要素は、支持体34上に配設され、上記要素は支持体34と共に、上記時計ムーブメントの独立したモジュールを形成する。従ってこのモジュールは、機械式ムーブメント4をケース内に設置する間に、機械式ムーブメント4に組み付ける又は関連付けることができる。特に
図1に示すように、上述のモジュールは、上記時計ムーブメントを取り囲むケースリング36に取り付けられる。従って調速モジュールは、上記時計ムーブメントを完全に組み立てて調整してから、上記時計ムーブメントに関連付けることができ、このモジュールの組み立て及び分解は、上記機械式ムーブメント自体に対して作業を行う必要なしに実施できることが理解される。
【0033】
図3〜6Cを参照して、本発明による時計に実装される調速原理がベースとする物理的現象についてまず説明する。
図1のものと同様である時計をここで考える。テンプ42のみが
図4A〜4C、6A〜6Cで図示されている機械式共振器40は、単一の2極磁石44を支承し、その磁気軸は、テンプの回転軸20、即ち軸方向と略平行である。この場合、問題となっている機械式共振器40の半軸46は、回転軸20及び磁石44の中心を通過する。ここで説明される例では、基準半軸48と半軸50との間の角度θは、およそ90°の値を有する。これら2つの半軸48、50は時計ムーブメントに対して固定されているが、半軸46は、テンプと共に発振し、基準半軸に対する、このテンプ上に設置された磁石の角度位置βを与え、基準半軸は機械式共振器に関するゼロ角度位置を与える。より一般には、角度ラグθは、コイル内において、このコイルに対面する磁石の通過時に生成された誘導電圧信号が、いずれの発振の第1の交替時には、基準半軸が中央半軸を通過する前(従って第1の半交替中)に、及びいずれの発振の第2の交替中には、この中央半軸を基準半軸が通過した後(即ち第2の半交替中)に位置するようなものである。
【0034】
図3は4つのグラフを示す。第1のグラフは、共振器40が発振する際、即ち機械式発振器が起動される際の、コイル28内の電圧を、経時的に示す。第2のグラフは、制動パルスが共振器40に印加されて、機械式発振器によって設定された機構の進行が補正される時点t
P1を示す。矩形パルス(即ちバイナリ信号)の印加の時点は、ここではこのパルスの中点の時間的位置とみなされる。発振周期の変動が観察され、その間に、制動パルス、従って機械式発振器の周波数の別個の変動が発生する。実際には、それぞれ上記テンプの角速度(ラジアン角/秒(rad/s)での値)及び角度位置(ラジアン角(rad)での値)を経時的に示す
図3の下2つのグラフにおいて確認できるように、時間的変動は、制動パルスが発生している単一の交替に関連する。なお、各発振は2つの連続する交替を有し、これらは本文書では、テンプがある方向の発振運動及びこれに続くもう1つの方向の発振運動を持続させる、2つの半周期として定義される。換言すれば、既に説明されているように、交替は、発振振幅を画定するテンプの2つの極限位置の間の、テンプのある方向又はもう1つの方向の揺動に対応する。
【0035】
用語「制動パルス(braking pulse)」は、実質的にある限定された期間中における、機械式共振器への、上記機械式共振器を制動する特定のトルク、即ちこの機械式共振器の発振運動に対向するトルクの印加を指す。一般に制動トルクは様々なタイプのものであってよく、特に磁気的、静電気的又は機械的なものであってよい。本明細書に記載の実施形態では、制動トルクは磁石‐コイル間の連結によって得られ、従って、調速デバイスによって制御されるコイル28を介して磁石44に印加される磁気制動トルクに対応する。このような制動パルスは例えば、コイルを瞬間的に短絡させることによって生成してよい。この動作は、コイル電圧のグラフにおいて、制動パルスが印加される時間的範囲内で検出でき、この時間的範囲は、磁石の通過によってコイル内の誘導電圧パルスが出現する時であると考えられる。この時間的範囲内において、磁石‐コイル間の連結により、テンプに取り付けられた磁石に対する磁気トルクによる非接触操作が可能となることが明らかである。実際には、短絡制動パルス中にゼロに向かって低下する(磁石44によるコイル28内の誘導電圧は、上述の時間的範囲内において複数の線で示されている)。なお、本発明は特に、調速デバイスに給電するための制動エネルギの回収を想定しているため、
図3、5に示されている短絡制動パルスは、本明細書では、ここで与えられている説明の範囲内である。
【0036】
図3、5では、発振周期T0は、上記時計組立体の上記機械式発振器の「自由(free)」発振(即ち調速パルスが印加されていない)に対応する。1回の発振周期の各交替は、外乱又は(特に調速パルスによる)制約がない場合、持続時間T0/2を有する。時間t=0は、第1の交替の開始をマークする。なお、上記機械式発振器の「自由」周波数F0は、これは4ヘルツにおおよそ等しく(F0=4Hz)、これによりおおよそ、周期T0=250msとなる。
【0037】
図3、4A〜4Cを参照して、第1のシナリオにおける機械式発振器の挙動について説明する。第1の周期T0の後に新たな周期T1、又は新たな交替A1が発生し、その間は制動パルスP1が発生している。初期時点t
D1において交替A1が開始され、次に共振器40は、磁石44が極限位置(最大の正の角度位置A
m)に対応する角度位置βを占める
図4Aの状態となる。そして、共振器がその中立位置を通過する中央時点t
N1の前に位置する時点t
P1において、制動パルスP1が発生し、
図4B、4Cはそれぞれ、2つの連続する時点t
P1及びt
N1における共振器を示している。最後に交替A1は、終了時点t
F1において終了する。
【0038】
この第1の場合において、上記制動パルスは、交替の開始と、共振器による上記共振器の上記中立位置の通過との間、即ちこの交替の第1の半交替中に生成される。想定されるように、制動パルスP1の間に角速度の絶対値は低下する。これは、
図3の角速度及び角度位置の2つのグラフが示すように、上記共振器の発振中に負のタイムラグT
C1、即ち(破線で示されている)妨害されていない理論上の信号に対する後退を生成する。従って交替A1の持続時間は、期間T
C1だけ増大する。従って交替A1を含む発振周期T1は、値T0に対して延長される。これは、上記機械式発振器の周波数の1回の低下、及び関連する機構の進行の瞬間的な減速を誘発する。
【0039】
図5、6A〜6Cを参照して、第2のシナリオにおける機械式発振器の性能について説明する。
図5のグラフは、
図3と同一の変数の経時的な推移を示す。第1の周期T0の後に新たな周期T2、又は交替A2が発生し、その間は制動パルスP2が発生している。初期時点t
D2において交替A2が開始され、次に共振器40は、極限位置(図示されていない最大の負の角度位置)となる。半交替に相当する1/4周期(T0/4)の後、共振器は中央時点t
N2において、その中立位置に到達する(
図6Aに示されている構成)。そして交替A2中、即ちこの交替の第2の半交替中に、共振器がその中立位置を通過する中央時点t
N2の後に位置する時点t
P2において、制動パルスP2が発生する。最後に、この交替は、共振器が再び極限位置(最大の正の角度位置)を占める終了時点t
F2において終了する。
図6B、6Cはそれぞれ、2つの連続する時点t
N2、t
F2における共振器を示す。
図6Aの構成は、各発振運動の対向する方向によって、
図4Cの構成とは区別されることに特に留意されたい。実際には、
図4Cでは、テンプは交替A1中にテンプがその中立位置を通過する際に時計回り方向に回転するが、
図6Aでは、テンプは交替A2中に中立位置を通過する際、反時計回りに回転する。
【0040】
考察対象のこの第2のシナリオでは、制動パルスはこのように、ある交替中において、共振器がその中立位置を通過する中央時点と、この交替が終了する終了時点との間に生成される。想定されるように、角速度の絶対値は制動パルスP2中に減少する。顕著なことに、制動パルスはここでは、
図5の角速度及び角度位置の2つのグラフによって示されているように、共振器の発振周期に、正のタイムラグT
C2、即ち(破線で示されている)妨害されていない理論上の信号に対する前進を導入する。従って、交替A2の持続時間は期間T
C2だけ減少する。従って交替A2を含む発振周期T2は、値T0より短くなる。従ってこれは、機械式発振器の周波数の「個別の(isolated)」減少、及び関連する機構の進行の瞬間的な加速を誘発する。
【0041】
上述の
図1、2と、
図7〜10Cとを参照して、本発明による時計の第1の実施形態について以下に説明する。この時計2は:
‐機構12、16(部分的に図示);
‐最小の機械的位置エネルギに対応する中立位置48の周りで発振するために好適な、機械式共振器6(ヒゲゼンマイ)であって:連続する発振の各交替は、中央時点において、上記機械式共振器の中立位置の通過を有し、また当該交替の中央時点において終了する第1の半交替と、当該交替の上記中央時点において開始される第2の半交替とからなる、機械式共振器6;
‐この機械式共振器と共に、上記機構の進行速度を設定する機械式発振器を形成する、上記機械式共振器の維持デバイス14;
‐機械式発振器6が有効動作範囲内に含まれる振幅で振動する際に、上記機械式発振器からの機械的動力を電力に変換できるよう配設された、電気機械変換器であって、この電磁変換器は、電磁式組立体27によって形成され、これは、上記機械式共振器の支持体(特にムーブメント4の地板)上に設置されたコイル28(
図7で概略的に示されている電磁組立体の唯一の要素)と、この機械式共振器上に設置された磁石22とを備え、電磁式組立体27は、上記機械式共振器が上記有効動作範囲内に含まれる振幅で振動する際に、上記電気機械変換器の2つの出力端子E1、E2間に誘導電圧信号U
i(t)(
図10A)を供給できるように配設される、電気機械変換器;
‐上記電気機械変換器の2つの出力端子に、この電気機械変換器からの記誘導電流I
Re(
図10B)を受信できるるように接続された、電気コンバータ56であって、この電気コンバータは、上記電気機械変換器が供給する電気エネルギを貯蔵できるよう配設された電源コンデンサC
ALを備え、この電気機械変換器と上記電気コンバータとが合わせて、上記機械式共振器の制動デバイスを形成する、電気コンバータ56;
‐上記機械式発振器の周波数を調速するためのデバイス52であって、この調速デバイスは、補助発振器58、CLKと、上記補助発振器に対する上記機械式発振器の潜在的な時間ドリフトを測定できるよう配設された測定デバイスとを備え、上記調速デバイスは、測定された上記時間ドリフトが少なくとも1つの特定の前進又は少なくとも1つの特定の後退に対応するかどうかを決定できるよう配設される、デバイス52
を備える。
【0042】
好ましくは、電磁式組立体27も部分的に上記測定デバイスを形成する。この測定デバイスは更に、双方向性カウンタCB及び(シュミットトリガタイプの)比較器64を備える。上記比較器は、その一方の入力において誘導電圧信号U
i(t)を受信し、もう一方の入力において閾値電圧信号U
thを受信し、上記閾値電圧信号U
thの値は、本例では正である。誘導電圧信号U
i(t)は共振器6の各発振周期中に値U
thを超える2つの正の突出(
図10A)を有するため、上記比較器は出力として、発振周期あたり2つのパルスS1、S2(
図10C)を有する信号「Comp」を供給する。この信号「Comp」は、一方では論理制御回路62に、そしてもう一方ではコントロール66に供給され、このコントロール66は、パルス2つ毎に1つのパルスを阻害して、発振周期あたり1つのパルスを、双方向性カウンタCBの第1の入力「UP」に供給する。上記双方向性カウンタは第2の入力「Down」を備え、これは、発振周波数に関する公称周波数/設定点周波数のクロック信号S
horを受信し、このクロック信号は、基準周波数を画定するデジタル基準信号を供給する上記補助発振器に由来するものである。上記補助発振器は、クオーツ式共振器58を励起して、上記クオーツ式共振器の発振周波数にそれぞれ対応する一連のパルスからなる基準信号を返信として供給する役割を果たす、クロック回路CLKを備える。
【0043】
上記クロック信号は、その基準信号を分割器DIV1、DIV2に供給し、これらの分割器は、この基準信号中のパルスの数を、機械式発振器の公称周期と補助発振器の公称基準周期との比で除算する。従って上記分割器は、設定点周波数(例えば4Hz)を画定して、設定点周期(例えば250ms)あたり1パルスをカウンタCBに提示する、クロック信号S
horを供給する。従ってカウンタCBの状態は、補助発振器に対する、機械式発振器による経時的に蓄積された前進(上記数が正の場合)又は後退(上記数が負の場合)を、設定点周期に略対応する分解能で決定する。上記カウンタの状態は、この状態が少なくとも1つの特定の前進(CB>N1、N1は自然数)又は少なくとも1つの特定の後退(CB<−N2、N2は自然数)のいずれに対応するかを決定するよう配設された、論理制御回路62に供給される。
【0044】
電気コンバータ56は、電気エネルギD1、C
ALを貯蔵するための回路を備え、これは、上述の代替実施形態において、電気コンバータの正の入力電圧のみによって、即ちコイル28が供給する正の誘導電圧のみによって、電源コンデンサC
ALを再充電できるよう配設される。この電源コンデンサはここでは、単独で一次貯蔵ユニットを形成する。電源コンデンサの再充電時、制動デバイスがこの電源コンデンサに供給する電気エネルギの量は、この電源コンデンサの電圧レベルが低下するに従って増大する。一次負荷は、電気コンバータ56に接続されるか又は規則的に接続するのに好適であり、2つの電力供給端子V
DD、V
SSの間に
図10Aに示す一次電力供給電圧U
AL(t)を供給する電源コンデンサによって給電され、この一次負荷は特に調速回路54を備える。
【0045】
時計2は、調速デバイスの調速回路54が電源コンデンサC
ALからここではコンデンサC
Auxで形成された二次貯蔵ユニットへと、特定の電気負荷を要求に応じて移動させることができるよう配設された、負荷ポンプ60を備える点で、際立ったものである。このコンデンサC
Auxは、補助負荷、例えば発光ダイオード、RFID回路、温度センサ、又は本発明による時計に組み込むのに好適な別の電子ユニットのための二次電力供給源として想定されている。この目的のために、コンデンサC
Auxはその2つの端子において、補助電力供給電圧を画定する低電位V
L及び高電位V
Hをそれぞれ示す。このような負荷ポンプのある代替実施形態を
図8に示す。これは、電圧を上昇させることなく単に電荷を移動させる単純な形態の負荷ポンプからなり、従ってこの場合は、補助電力供給電圧は、電気コンバータ56が供給する一次電力供給電圧より小さいと考えられる。なお、これは好ましくない特定の場合である。当業者に公知である負荷ポンプの更なる代替実施形態、特に電圧ブースター機能を有するものを想定できる。このような代替実施形態については、後で第3の実施形態において説明する。負荷ポンプ60は、移動コンデンサC
Trを有する入力スイッチSw1及び出力スイッチSw2を備える。スイッチSw1、Sw2は、以下で説明する本発明による時計の第1の実施形態に実装される調速方法(
図9)に従って、論理制御回路62によって制御される。
【0046】
図10A、10Bでは、誘導電圧信号Ui(t)は、機械式共振器6が有効動作範囲内で発振する場合に機械式共振器6と連携した電磁式組立体27によって生成されるものに相当する。時間軸[t]上には、機械式共振器6の中立位置の一連の通過に対応する中央時点TNn(ただしn=0、1、2、・・・)と、機械式共振器の角速度がゼロとなって機械式共振器の揺動が反転する、機械式共振器の2つの極限位置の交互の一連の通過に対応する時点TMn(ただしn=0、1、2、・・・)とが示されている。本発明によると、制動デバイス27、56は、機械式共振器6の各発振周期において、少なくともこの機械式共振器の発振振幅が有効動作範囲内にある場合に、誘導電圧信号Ui(t)が第1の半交替DA1
1、DA1
P中に発生する第1の電圧突出LU
1と、第2の半交替DA2
1、DA2
P中に発生する第2の電圧突出LU
2とを示すように配設される。従って誘導電圧信号は、連続する第1の電圧突出LU
1及び第2の電圧突出LU
2を交互に示す。第1の電圧突出LU
1はそれぞれ、対応する第1の半交替の第1の時点t
1において第1の最大値UM
1を示し、第2の電圧突出LU
2はそれぞれ、対応する第2の半交替の第2の時点t
2において第2の最大値UM
2を示す。
【0047】
第1及び第2の電圧突出は、ある別の第1の電圧突出の第1の時点t
1の前かつ該第1の電圧突出の1つ前の第2の電圧突出の第2の時点t
2の後にそれぞれ位置する、第1の時間的範囲ZT1と、ある別の第2の電圧突出の第2の時点t
2の前かつ該第2の電圧突出の1つ前の第1の電圧突出の第1の時点t
1の後にそれぞれ位置する、第2の時間的範囲ZT2とを画定する。第1の電圧突出LU
1は、比較器64の出力において信号「Comp」中にパルスS1を生成し、その一方で第2の電圧突出LU
2は、この信号「Comp」中にパルスS2を生成する(
図10C)。
図10Aに示されている代替実施形態では、信号S1、S2の生成に関して考察されている上記突出は、正の閾値電圧U
thが選択されているため正の電圧突出である。以下で更に詳細に説明されないある代替実施形態では、比較器64の入力「+」において供給される負の閾値を選択でき(従って誘導電圧信号はその入力「−」において供給され)、負の電圧突出が信号S1、S2を生成する。
【0048】
そして制動デバイスは、少なくとも測定デバイスによって時間ドリフトが検出されない場合、及び少なくとも端子V
SS、V
DDに接続された上記一次負荷が電源コンデンサC
ALに貯蔵された電気エネルギを連続的又は擬似連続的に消費する場合(電力供給電圧U
AL(t)が、機械式発振器の動作の補正の不在下で特定の負の傾斜を有する、
図10Aに示されている時計の正常動作段階中)に、第1の電圧突出LU
1及び第2の電圧突出LU
2が、電源コンデンサを再充電する誘導電流パルスP1、P2を交互に生成する(
図10B)ように、配設される。なお、電気コンバータ56はダイオードD1を備え、これは、コンデンサC
ALの再充電に正の電圧突出のみが好適となるように配設される。しかしながら、以下で更に詳細に説明されないある代替実施形態では、電気コンバータは、負の電圧突出がコンデンサC
ALの再充電に好適となるように、単交番整流器を画定するよう配設されたダイオードを有してよい。従ってこの場合、以下で説明するように、負の電圧突出が、誘導電流パルスを生成し、また測定された時間ドリフトに従って特定の電気負荷の抽出のための時間的範囲を決定すると考えられる。なお、更なる代替実施形態では、コンバータは二重交番コンバータを備えてよい。この場合、磁石22がコイル28aの前を通過する度に、連続した第1の電圧突出の第1のペア、又は2つの連続した第2の電圧突出の第2のペア(これらは全て略同一の振幅を有する)が得られる。従って、上述の第1及び第2の電圧突出の複製が得られる。この特定の場合は、第1及び第2の電圧突出の代わりに電圧突出の第1及び第2のペアを採用し、また第1の時間的範囲ZT1及び第2の時間的範囲ZT2を決定するために、互いの前後の2つのペアの2つの隣接する突出の時点t
1、t
2を採用する、上述の開示に関して、考慮する必要がある。
【0049】
負荷ポンプ60は、要求に応じて電源コンデンサC
ALから特定の電気負荷を抽出し、これを補助コンデンサC
Auxに移動させることによって、この電源コンデンサC
ALの電圧レベルU
AL(t)を瞬間的に低下させることができるように配設される。調速回路54に給電できるように電源コンデンサを十分に充電すると、論理制御回路62は入力として、測定デバイスが供給する、即ち双方向性カウンタCBからの、測定信号を受信する。この論理制御回路は、測定された時間ドリフトが少なくとも1つの特定の前進に対応する(CB>N1)場合に、負荷ポンプ60が第1の時間的範囲ZT1中に第1の電気負荷を電源コンデンサC
ALから抽出して、この第1の負荷を、二次電力供給源を形成する補助負荷に移動させるように、負荷ポンプ60を起動させるよう配設される。これは電圧U
AL(t)の低下をもたらす。同様に、論理制御回路は、測定された時間ドリフトが少なくとも1つの特定の後退に対応する(CB<−N2)場合に、負荷ポンプ60が第2の時間的範囲ZT2中に第2の電気負荷を電源コンデンサC
ALから抽出することによって電圧U
AL(t)を低下させ、この第2の電気負荷を補助コンデンサに移動させるように、負荷ポンプ60を起動させるよう配設される。
【0050】
本発明の第1の実施形態に実装されるこの調速方法は、
図9にフローチャートの形式で与えられている。調速回路を「POR」へと初期化した後、カウンタCBをリセットする。次に、信号「Comp」中での、比較器64が供給するパルスS1又はS2の立ち上がりエッジの検出を待機し(
図10C参照)、比較器64はこれを論理制御回路62に伝送し、時間カウンタCTが初期化される。続いて、信号「Comp」中での立ち上がりエッジ(パルスS2又はS1の第2の立ち上がりエッジ)の検出を待機する。
【0051】
信号「Comp」中での上述の第2の立ち上がりエッジの検出時、論理回路62は、時間カウンタCTの状態/値をレジスタに伝送し、この値を、第1のパルスS1と第2のパルスS2との間の第1の期間より小さく、かつ第2のパルスS2と第1のパルスS1との間の第2の期間より大きい、差分値Tdiffと比較する。時間カウンタCTの状態がレジスタに伝送されると、この時間カウンタはリセットされ、論理回路62と連携するタイマーが作動して特定の後退を測定する。ここで値T
C1又はT
D1は、カウンタCTの値と値Tdiffとの比較の結果に従って選択される。従って第1の実施形態では、調速デバイスは、第1の電圧突出及び第2の電圧突出が交互に連続して出現するのを検出できるよう配設された検出デバイスと、論理制御回路62と連携して、この論理制御回路62が、第1の電圧突出を後続の第2の電圧突出から隔てる第1の期間、及び第2の電圧突出を後続の第1の電圧突出から隔てる第2の期間を区別できるようにする、時間カウンタCTとを備え、上記第1及び第2の期間は、電磁式組立体の構成によって異なる。
【0052】
電磁式組立体の構成は、誘導電圧信号Ui(t)の曲線が、第2の半交替及び後続の第1の半交替中に発生する、同一の最大振幅(UM
2=UM
1)を有する2つの電圧突出LU
2及びLU
1を示すものの、後続の2回の半交替中には略同一の振幅の電圧突出が生成されないようなものとして想定される。
図10Aに示されている誘導電圧信号Ui(t)の曲線は、上述の電磁式組立体27から得られる。第1の実施形態では、コイル28は、その中心において、基準半軸48に対する角度ラグθ(
図2;機械式共振器6がその静止位置にあるときの磁石22の角度位置)を示し、これにより、機械式共振器の各発振周期中に、上記有効動作範囲内において、極性が同一でありかつ最大振幅が略同一である2つの電圧突出のみが、2回の連続する半交替中に発生し、これらはそれぞれ、上記第2の電圧突出のうちの1つと、上記第1の電圧突出のうちの1つとを形成する。好ましくは、この角度ラグθの絶対値は30°〜120°である。
【0053】
時間カウンタCTと差分値Tdiffとの間の上述の比較中、論理制御回路と連携するタイマーは、時間カウンタCTの値が差分値Tdiffより大きい場合は遅延T
C1を、又は時間カウンタCTの値が差分値Tdiffより小さい場合は遅延T
D1を待機する。第1の場合には、上記比較は、検出されたパルスが、第2の電圧突出LU
2によって生成されたパルスS2であるかどうかを確認でき、遅延T
C1は、この第2の電圧突出に続く第1の時間的範囲ZT1内に終了するように選択される。第2の場合には、上記比較は、検出されたパルスが、第1の電圧突出LU
1によって生成されたパルスS1であるかどうかを確認でき、遅延T
D1は、この第1の電圧突出に続く第2の時間的範囲ZT2内に終了するように選択される。一般に、調速デバイスはタイマーを備え、上記タイマーは論理制御回路と連携して、上記論理制御回路に、第2の電圧突出の検出から第1の所定の遅延だけ後に(ここでこの第1の遅延は、これが第1の時間的範囲内に終了するように選択される)、又は第1の電圧突出の検出から第2の所定の遅延だけ後に(ここでこの第2の遅延は、これが第2の時間的範囲内に終了するように選択される)、負荷ポンプデバイスを必要に応じて起動させることができる。
【0054】
上述の第1の場合において、遅延T
C1が達成されると、機械式発振器の潜在的な時間ドリフトを指示するカウンタCBが所与の自然数N1(正の数又はゼロ)より大きな値を有するかどうかが検出される。結果が正の場合、機械式発振器は補助発振器に対して前進を示す。このような前進を補正するために、本発明に従って、上述の遅延T
C1の終了時、従って対応する第1の時間的範囲ZT1内に、第1の電気負荷を電源コンデンサから補助コンデンサに移動させる。得られた電力供給電圧U
AL(t)の低下(
図10Aでは参照符号PC
1で示される)は、上記移動の後の第1の電圧突出の出現時に、負荷ポンプの起動を行わない場合に発生するパルスP1より大きな振幅を有する誘導電流パルスP1
PCを生成する。コイル28中の誘導電流のこのような増大は、第1の半交替DA1
P中に制動デバイスによって機械式発振器から比較的大きな機械的エネルギが引き出されたことを意味する。上述のように、第1の半交替中の制動は、機械式共振器6の発振に負のタイムラグを導入し、従って問題となっている半交替の持続時間は増大する。第1の半交替DA1
P中に実施される制動がより強力であるため、機械式発振器の瞬間周波数は瞬間的に低下し、これは機構の進行の特定の後退をもたらし、これが、測定デバイスによって検出された前進を少なくとも部分的に補正する。
【0055】
上述の第2の場合において、遅延T
D1が達成されると、カウンタCBが所与の負の数−N2(N2は自然数である)より小さな値を有するかどうかが検出される。結果が正の場合、機械式発振器は補助発振器に対して後退を示す。このような後退を補正するために、本発明に従って、上述の遅延T
D1の終了時、従って対応する第2の時間的範囲ZT2内に、第2の電気負荷を電源コンデンサから補助コンデンサに移動させる。得られた電力供給電圧U
AL(t)の低下(
図10Aでは参照符号PC
2で示される)は、上記移動の後の第2の電圧突出の出現時に、調速を行わない場合に発生するパルスP2より大きな振幅を有する誘導電流パルスP2
PCを生成する。コイル28中の誘導電流のこのような増大は、第2の半交替DA2
P中に制動デバイスによって機械式発振器から比較的大きな機械的エネルギが引き出されたことを意味する。上述のように、第2の半交替中の制動は、機械式共振器の発振に正のタイムラグを導入し、従って問題となっている半交替の持続時間は減少する。第2の半交替DA2
P中に実施される制動がより強力であるため、機械式発振器の瞬間周波数は瞬間的に増大し、これは機構の進行の特定の前進をもたらし、これが、測定デバイスによって検出された後退を少なくとも部分的に補正する。
【0056】
従って、電力供給電圧U
AL(t)中に下降する段を示す参照符号PC
1で示される、遅延T
C1の終了時における第1の時間的範囲ZT1内での電気負荷の抽出は、交替A2の第1の半交替DA1
P中に、比較的大きな振幅の誘導電流パルスP1
PCを生成し、この第1の半交替は、それぞれ誘導電流パルスが生成されない半交替及び一次負荷の電力消費の補償パルスP1が発生する半交替に対応する第1の半交替DA1
0、DA1
1の持続時間より長い持続時間を有する。電力供給電圧U
AL(t)中に下降する段を示す参照符号PC
2で示される、遅延T
D1の終了時における第2の時間的範囲ZT2内での電気負荷の抽出は、交替A1の第2の半交替DA2
P中に、比較的大きな振幅の誘導電流パルスP2
PCを生成し、この第2の半交替は、それぞれ誘導電流パルスが生成されない半交替及び一次負荷の電力消費の補償パルスP2が発生する半交替に対応する第2の半交替DA2
0、DA2
1の持続時間より短い持続時間を有する。
【0057】
これより
図11〜15を利用して、本発明による時計の第2の実施形態について説明する。
【0058】
図11は
図2と同様であるが、第2の実施形態による時計の電磁変換器を形成する電磁式組立体29に関するものである。この図は機械式共振器6aを、そのテンプ18aの高さにおける水平断面図で示しており、この機械式共振器は、
図1に示す共振器6の代わりに、
図1のものと同様の時計ムーブメントに組み込まれる。既に説明した参照符号についてはここで再度説明しない。一般に、少なくとも1つのコイル28と帯磁構造とを備える電磁式組立体が考えられ、上記帯磁構造は少なくとも1つの磁石から形成され、また反対の極性の少なくとも1ペアの磁極を有し、上記磁極はそれぞれ、上記コイルの主平面の方向に磁束を生成し、この磁極のペアは、機械式共振器6aが有効動作範囲内に含まれる振幅で発振している場合に、その各磁束が、タイムラグを有して、ただし上記コイルに入る上記磁束と上記コイルから出る上記磁束とが少なくとも部分的に同時となるように、上記コイルを通過して、最大ピーク値を有する中央電圧突出を形成するよう、配設される。
【0059】
図11の有利な代替実施形態では、テンプ18aは、反対の極性を有する軸方向に配向された磁気軸を有する1ペアの2極磁石22、23を支承する。この磁石のペアとコイル28とが共に、調速システムの一部である電磁式組立体29を形成する。これらの磁石は、これらそれぞれとコイル28との相互作用をこれらの誘導電圧に加えることができる距離において(より具体的には中央電圧突出の生成のために)、互いに近接して配設される。図示されていないある代替実施形態では、単一の2極磁石を、その磁気軸がテンプの平面と平行となり、かつ回転軸20を空芯とする幾何学的円に接するように配向されるように、配設してよい。上記コイルの誘導電圧信号は、上述の1ペアの磁石に関して略同一のプロファイルを有してよいものの、上記磁石の磁束の一部分がコイルを通過することを考えると、振幅は小さくなる。磁束伝導要素を上記単一の磁石と連携させて、上記磁石の磁束を、概ね上記コイルの主平面の方向に配向してよい。
【0060】
テンプ18aは、その回転軸20からの、回転軸20に対して垂直な半軸26を画定し、これは磁石のペアの中央を通過する。上記ヒゲゼンマイがその静止位置にある場合、半軸26は、ヒゲゼンマイがその周りで発振し得る中立位置を画定する。機械式共振器6aは、
図11ではその中立位置で示されており、その半軸26は、回転軸20及びコイル28の中心軸と交わる固定された半軸50に対して角度θだけずらされた、基準半軸48を画定する。好ましくは、この角度ラグθは絶対値で30°〜120°である。
【0061】
図14、15に示す代替実施形態では、電磁式組立体29が生成する誘導電圧信号Ui(t)は、機械式発振器の各発振周期中に、最大の負電圧UM
1を有する第1の中央電圧突出LUC
1(第1の電圧突出と呼ぶ)と、最大の正電圧UM
2を有する第2の電圧突出LUC2(第2の電圧突出と呼ぶ)とを示す。基準半軸48に対するコイルの角度ラグθにより、第2の電圧突出及び第1の電圧突出はそれぞれ、各発振周期の、交替A0
1、A1
1、…、AN
1(ただしNは自然数である)の第2の半交替中、及び次の交替A0
2、A1
2、…、AN
2(ただしNは自然数である)の第1の半交替中に発生する。更なる代替実施形態では、上記電圧突出の極性は反対であり、即ち第1の電圧突出は正電圧を有する一方で、第2の電圧突出は負電圧を有する。なお、コイル28の端子E1、E2、又は同様にこのコイルを形成する線の巻き方向を反転させると、誘導電圧の極性の変化が誘発され、従って上記反転は、ある代替実施形態を別の代替実施形態に切り替えることができる。
【0062】
好ましくは電磁式組立体29も、第1の実施形態と同様に、測定デバイスを部分的に形成する。機械式発振器の潜在的な時間ドリフトを測定するためのデバイス関する
図12の電気回路図の一部に関しては、再度詳細に説明はしない。なお、比較器64は
図14に示されている信号「Comp」を送達し、この信号は発振周期あたり1つのパルスS2を示す。従ってこの信号は、双方向性カウンタCBに直接供給できる。
【0063】
図12では、電気コンバータ57は:一次貯蔵ユニットの第1の電源コンデンサC1を、電気コンバータの正の入力電圧のみで再充電できるように配設された、電気エネルギを貯蔵するための第1の回路D1、C1と;一次貯蔵ユニットの第2の電源コンデンサC2を、電気コンバータの負の入力電圧のみで再充電できるように配設された、電気エネルギを貯蔵するための第2の回路D2、C2とを備える。再充電中、制動デバイスによって選択的に第1の電源コンデンサ及び第2の電源コンデンサに供給される電気エネルギの量は、この第1の電源コンデンサ又はこの第2の電源コンデンサの電圧レベルの絶対値が低下するに従って増大する。
【0064】
一次負荷は、電気コンバータ57に接続されるか又は規則的に接続するのに好適であり、電力供給電圧V
DD、V
SSを供給する一次電源ユニットによって給電される。この一次負荷は、特に調速回路55を備える。好ましくは、上記第1及び第2の電源コンデンサは略同一の容量値を有する。
【0065】
調速デバイス53の調速回路55は、有利には同一の2つの負荷ポンプPC1、PC2で形成された負荷ポンプデバイス61を備え、上記2つの負荷ポンプPC1、PC2は、それぞれ第1の電源コンデンサC1及び第2の電源コンデンサC2から補助コンデンサC
Auxへと電気負荷を要求に応じて移動させるよう配設される。第1の実施形態と同様、この補助コンデンサは、その2つの端子V
L、V
H間に補助電力供給電圧を供給する、二次貯蔵ユニットを形成する。これら2つの負荷ポンプPC1、PC2は、論理制御回路62aによって制御される。それぞれ2つの負荷ポンプを形成するために好適な、負荷ポンプの代替実施形態については、既に
図8を参照して説明した。ある主要な代替実施形態では、上記2つの負荷ポンプを単一の負荷ポンプに置き換え、この単一の負荷ポンプは、第2の実施形態の範囲内で制御回路62aにおいて実装される調速方法の説明において後で説明するように、第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2中の電気負荷を、求められる補正に応じて選択的に引き出すことによって、電気負荷を補助コンデンサに移動させることができるよう、制御回路62aによって制御される、スイッチを備える。上述の代替実施形態では、調速回路55は更に、それぞれレジスタ及びスイッチSw3又はSw4から形成される、2つの散逸回路を備える。これら2つの散逸回路は、特定の抵抗を備え、またそれぞれ、2つのコンデンサC1、C2と2つの負荷ポンプPC1、PC2との間に、2つのコンデンサC1、C2と並列に配設される。
【0066】
また
図14、15には、電源コンデンサC1の上側端子における正電圧V
C1(V
DDを画定)と、電源コンデンサC2の下側端子における負電圧V
C2(V
SSを画定)とが示されている(ゼロ電圧は、直列に配設された2つのコンデンサ間に接続された上記コイルの端子E1の電圧である)。従って、得られる電力供給電圧V
ALは、V
C1−V
C2、即ち第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2の各電圧の合計よって与えられる。本明細書に記載の好ましい実施形態では、負荷は電気コンバータの出力に配置される。これは特に、電力供給電圧V
ALを送達する直列に配設された上記第1及び第2の電源コンデンサによって給電される、調速回路55を備える。最大の負の誘導電圧UM
1(絶対値)及び最大の正の誘導電圧UM
2をそれぞれ示す電圧突出LUC
1、LUC
2は、それぞれコンデンサC2、C1を再充電する役割を果たす。よって、上記電源コンデンサのうちの一方又は他方の短い再充電周期の外側には、電圧V
C1及びV
C2(の絶対値)の特定の経時的漸減が存在する。
【0067】
調速イベントが発生しない第1の発振周期T0において、誘導電流ピークI1
1はコンデンサC1を第2の半交替中に再充電し、誘導電流パルスI1
1はコンデンサC2を第1の半交替中に再充電する。これらの誘導電流パルスは、電磁式組立体29内の電気機械変換器が誘導して電気コンバータ57が吸収する電力に相当する。従ってこれらの電力は、機械式発振器が供給する機械的動力に相当する。これらの電力は電気コンバータによって変換され、上記電気コンバータと連携した一次負荷によって消費される。従って、電気機械変換器によって電気コンバータに供給される各誘導電流パルスIN
1、IN
2(ただしN=1、2、・・・)は、制動パルスに相当し、従って機械式発振器に印加される特定の瞬間的制動トルクに相当する。
図3〜6を参照して上で開示された物理的現象によると、それぞれが第2の半交替中に発生する誘導電流パルスIN
2は、それが発生する交替の持続時間の減少、従って機械式発振器の瞬間周波数の増大を誘発し、その一方で、それぞれが第1の半交替中に発生する誘導電流パルスIN
1は、それが発生する交替の持続時間の増大、従って機械式発振器の瞬間周波数の低下を誘発する。
【0068】
調速イベント及びこのような調速イベントによって得られる特定の実行が発生しない動作の周期、即ち調速が行われない通常動作に対応する周期、従って
図14、15の第1の発振周期中に現れるシナリオは、電圧V
C1、V
C2と、それぞれ誘導電流パルスI1
1、I1
2によって生成されるコンデンサC1、C2の再充電パルスとに関して発生し、即ち、概ね各発振周期の上記2つの第1の半交替中に電気コンバータが吸収する第1の電気エネルギが、概ねこの発振周期の上記2つの第2の半交替中に電気コンバータが吸収する第2の電気エネルギと略同一である、平衡状態のシナリオに関して発生する。従って、概ね上記2つの第2の半交替中に発生する正のタイムラグは、概ね各発振周期の上記2つの第1の半交替中に発生する負のタイムラグによって補償される。
図14、15に示されている特定の場合では、第1の交替A0
1中に発生する正のタイムラグは、対応する発振周期の第2の交替A0
2中に発生する負のタイムラグによって補償される。従って、上記第1の交替の持続時間は上記第2の交替の持続時間とは異なるものの、その合計は、調速動作を受けていない機械式発振器の自然発振周期T0に等しいことが理解される。
【0069】
負荷ポンプデバイス61の論理制御回路62aにおいて実装される調速方法は、
図13においてフローチャートで与えられている。調速回路を「POR」に初期化し、また特に双方向性カウンタCBを初期化した後、特定の後退、即ち特定の期間、例えば複数の周期T0のうちの1つの周期T0だけ待機し、制御回路62aは、時計の進行において少なくとも1つの特定の前進(CB>N1)が発生したかどうかを決定する。結果が正である場合、この代替実施形態では、調速回路は、補助コンデンサの端子における電圧V
CAが、負荷ポンプが有意な電気負荷をコンデンサC1又はC2から補助コンデンサに移動させることができなくなるレベルまで補助コンデンサを充填するための特定の電圧に対応する電圧閾値V
thより大きいかどうかを、制御回路が検出できるように、配設される。この場合、検出された前進の補正を行うために、短期間Δtの間だけスイッチSw2を閉じることにより、対応する散逸回路を介して、コンデンサC2の特定の放電を誘発し、これは
図14の電圧V
C2において、段D
C2(これはコンデンサC2の電圧が低下するに従って絶対値が下降する)によって示されている。
【0070】
電圧V
CAが電圧閾値V
th以下である場合、制御回路は負荷ポンプPC2を起動し、これにより負荷ポンプPC2は、第1の電気負荷を第2の電源コンデンサC2から補助コンデンサC
Auxに移動させる。この調速動作は、下降する段D
C2によって示される電圧V
C2の低下ももたらす。このような電圧V
C2の低下は、少なくとも上記移動に続く1回の発振周期中に、第1の電気負荷の上述のような移動が行われない仮説の場合に対して、第2のコンデンサC2の再充電の増大を誘発する。交替A1
1中に制御回路によって実施される電圧V
C2の低減は、次の交替A1
2中の次の電圧突出LUC
1の出現時に、誘導電流パルスI2
1を誘発し、その振幅(電圧ピーク値)は、1つ前の誘導電流パルスI1
1より大きい。この誘導電流パルスI2
1は第1の半交替に発生するため、全ての誘導電流パルスがコンデンサC2を再充電する際、このコンデンサC2の電圧の低下は常に少なくとも1つの調速パルスを生成し、これは機械式発振器の発振に負のタイムラグを生成するため、発振周波数を瞬間的に低下させることにより、時計の進行中に検出された前進(正の時間ドリフト)を少なくとも部分的に補正する。なお、パルスI1
2、I2
2は、パルスI1
1と絶対値が略等しい振幅を有し、これらのパルスはそれぞれ、一次負荷単独での消費によって生成される誘導電流パルスに対応する。従ってこれらは、標準的な/公称再充電パルスからなる。
【0071】
時計の進行中に前進が検出されない場合、制御回路は、この時計の進行中に少なくとも1つの特定の後退(CB<−N2)が発生したかどうかを決定する。結果が正である場合、調速回路は、補助コンデンサの端子における電圧V
CAが電圧閾値V
thより大きいかどうかを決定する。この場合、検出された後退の補正を行うために、短期間Δtの間だけスイッチSw1を閉じることにより、対応する散逸回路を介して、コンデンサC2の特定の放電を誘発し、これは
図15の電圧V
C2において、段D
C1(これはコンデンサC2の電圧が低下するに従って絶対値が下降する)によって示されている。電圧V
CAが電圧閾値V
th以下である場合、制御回路は負荷ポンプPC1を起動し、これにより負荷ポンプPC1は、第2の電気負荷を第1の電源コンデンサC1から補助コンデンサC
Auxに移動させる。この調速動作は、段D
C1によって示される電圧V
C1の低下ももたらす。このような電圧V
C1の低下は、少なくとも上記移動に続く1回の発振周期中に、第2の電気負荷の上述のような移動が行われない仮説の場合に対して、第1のコンデンサC1の再充電の増大を誘発する。交替A1
1中に制御回路によって実施される電圧V
C1の低減は、同一の交替中の次の電圧突出LUC
2の出現時に、誘導電流パルスI3
2を誘発し、その振幅は、1つ前の誘導電流パルスI1
2より大きい。この誘導電流パルスI3
2は第2の半交替に発生するため、全ての誘導電流パルスがコンデンサC1を再充電する際、このコンデンサC1の電圧の低下は常に少なくとも1つの調速パルスを生成し、これは機械式発振器の発振に正のタイムラグを生成するため、発振周波数を瞬間的に上昇させることにより、時計の進行中に検出された後退(負の時間ドリフト)を少なくとも部分的に補正する。次のパルスI3
1は再び、略標準的な/公称再充電パルスを示す。
【0072】
この第2の実施形態は:第1の半交替中のみに発生する複数の第1の電圧突出は同一の第1の極性を有し、その一方で、第2の半交替中のみに発生する複数の第2の電圧突出は、第1の極性とは反対の、同一の第2の極性を有するため、時計の進行中に検出された時間ドリフトに応じた、コンデンサC1又はC2の電気負荷の選択的抽出を、いずれの時点に実施できる点;並びにコンデンサC1、C2をそれぞれ反対の極性の誘導電圧のみによって再充電できる点で、極めて有利である。従って論理制御回路に関しては、補助コンデンサ内の特定の電気負荷の移動によって、又は補助コンデンサが満杯である場合に考えられる、2つの散逸回路のうちの一方による電気負荷の散逸によって、検出された時間ドリフトのタイプ、即ち前進又は後退に応じて、2つのコンデンサのうちの一方又は他方で特定の電気負荷の抽出を選択的に実施するために、どちらのコンデンサC1又はC2の再充電のために第1又は第2のどちらの極性が好適であるかを決定することしか必要ない。しかしながらある代替実施形態では、電気負荷の選択的な抽出を実施するために、信号「Comp」中でのパルスS2の出現に続く特定の遅延を決定するタイマーが想定される。
【0073】
ある有利な代替実施形態では、第1又は第2の電気負荷を移動させるために、補助コンデンサの端子における電圧V
CAが上昇した場合に、負荷ポンプによる低い方の電気負荷の移動サイクルの回数を増大させることにより、本調速方法のシーケンスあたり、コンデンサC1、C2から略一定の電気負荷を抽出する。低い方の電気負荷の移動サイクルの回数が一定であると考えられる更なる代替実施形態では、電圧V
CAの上昇は一般に、抽出される第1又は第2の電気負荷の低下を誘発し、従って調速シーケンスあたりの補正が小さくなる。しかしながら、調速システムが、問題となっている時計ムーブメントに関して標準的なドリフト範囲内のドリフトを容易に補正できるように構成されている限り、所与の時間ドリフトに関して、調速シーケンスあたりの第1及び第2の電気負荷の値の低下は、単位時間あたりの調速シーケンスの増加を誘発することになる。上述の観察は、従来のコンデンサに関連する、特性電圧‐電気負荷曲線が略直線状である超コンテナにも関連する。その一方で、二次貯蔵ユニットを用いて、貯蔵された電気負荷に応じて、電圧が、特定の最小負荷レベルを超えた微小な変動しか受けない、蓄電器を考えることもできる。この場合、1つ又は複数の負荷ポンプによって移動される電気負荷は、この二次貯蔵ユニットの負荷レベルにかかわらず略一定である。このような場合、上述の調速方法は、特定の電気負荷を二次貯蔵ユニットに移動させるか、又はこの電気負荷を想定される散逸回路内で消費するかの決定に関連して変化してよい。調速デバイスは一般に、二次貯蔵ユニットの充填レベルを決定するための手段を備えることになる。
【0074】
これより、
図16〜19、20A〜20Cを利用して、本発明による時計の第3の実施形態について説明する。この時計の時計ムーブメントは、
図1に示されているものとは、機械式共振器6bを形成するテンプ18bの構成が主に異なり、ここではこの機械式共振器6bは、2極磁石の2つのペア82、84を支承する。この実施形態でも生じる、既に上述した教示については、詳細には記載しないものとする。第1の実施形態に対してこの第3の実施形態を際立ったものとしているのは、特に、電磁変換器を形成する電磁式組立体86、及びこれと連携する電気コンバータ72の選択である。電磁式組立体は、機械式共振器6bのテンプ18b上に設置され、テンプの回転軸20に平行な磁気軸をそれぞれ有する、2極磁石90、91又は92、93の2つのペア82、84と、機械式共振器の支持体に堅固に接続されたコイル28とを備える。
【0075】
反対の極性の2つの2極磁石を有する、磁石の2つのペア82、84はそれぞれ、第2の実施形態の電磁式組立体の磁石22、23のペアと同様であり、コイル28との相互作用も同一である。2極磁石の各ペアは、テンプの回転軸20を始点とし、問題となっている2極磁石のペアの中点を通過する、中央半軸24a、24bを画定する。各中央半軸は、
図16に示すように、共振器6bが静止している、即ちその中立位置にあるときに、それぞれ基準半軸48a、48bを画定する。コイル28はその中央において、第1の基準半軸48aに対する第1の角度ラグθ、及び第2の基準半軸48bに対する第2の角度ラグ−θ(絶対値が第1の角度ラグと同一であるものの、正負の符号が反対である)を示し、これにより、有効動作範囲内における機械式共振器の各交替中に、反対の極性(負及び正)及び絶対値が略同一の振幅UM
1、UM
2を有する2つの中央電圧突出LUC
1、LUC
2を誘発し、これらはそれぞれ第1の電圧突出及び第2の電圧突出(
図20A)を形成する。
【0076】
第2の実施形態と同様、第1の電圧突出LUC
1及び第2の電圧突出LUC
2はそれぞれ、第1の半交替及び第2の半交替中に発生する。好ましくは、テンプ18aを平衡させるために、第1及び第2の角度ラグはの絶対値を90°とする(
図16に示されている代替実施形態)。磁石の2つのペア82、84は、一方のペアの磁石の極性が、他方のペアの磁石の極性と、コイルの中心を通り回転軸20を含む平面に関して対称となるように配設される(この平面は、コイルの中心を通り、かつ回転軸20と垂直に交差する、半軸50を含む)。なお、これらの図面を参照して説明した、第3の実施形態の上記代替実施形態は、強化された代替実施形態である。以下で更に詳細に説明されない更なる代替実施形態では、磁石の1つのペアが想定され、これは30°〜120°(絶対値)の角度ラグを有する。この更なる代替実施形態は、コントロール66を有しない調速回路を備える。調速方法は同様のままであり、当業者であれば調速方法をこの特定の代替実施形態に適合させることができるだろう。
【0077】
図20Aに示されている誘導電圧信号Ui(t)は、負電圧を有する電圧突出LUC
1と正電圧を有する電圧突出LUC
2とを交互に示す。電気コンバータ76は二重交番整流器78を備え、これは当業者に公知の4つのダイオードのブリッジによって形成される。従って整流器78の出力では、第1の電圧突出が整流され、これは
図20Aにおいて破線の突出で示されている。第1の実施形態と同様、負荷ポンプ60bを起動させない場合、第1の電圧突出LUC
1及び第2の電圧突出LUC
2は、特に調速回路74に給電する電源コンデンサC
ALを交互に再充電する。2ペアの磁石が存在するため、各交替は、第1の半交替中の第1の電圧突出及び第2の半交替中の第2の電圧突出を示す。信号「Comp」は発振周期あたり2つのパルスを有するため、コントロール66が双方向性カウンタCBの上流に想定され、これにより、このカウンタに供給される信号中のパルスを2つ毎に1つ阻害する。
図20A、20Cに示されている代替実施形態は、正の電圧U
thを想定しているが、第1の電圧突出は負である。閾値電圧は、正又は負のいずれを選択してよい。この選択は、比較器64が供給する信号「Comp」中でパルスS2又はS1が発生する時点(
図10C参照)を決定する。従って調速デバイスは、第1の電圧突出又は第2の電圧突出の一連の出現を検出できるよう配設される、検出デバイスを備える。なお、入力としてそれぞれ正の電圧閾値及び負の電圧閾値を有する2つの比較器を用いて、これら第1及び第2の電圧突出を交互に検出することも考えられる。当業者であれば、特に遅延T
C2、T
D2の決定のために、論理制御回路62bにおいて実装された調速方法を適宜適合させることができるだろう。
【0078】
負荷ポンプデバイスは負荷ポンプ60bから形成され、この負荷ポンプ60bは電圧ブースターを画定し、また電気負荷を一次貯蔵ユニットから二次貯蔵ユニットへと移動させることができるよう、電源コンデンサC
AL(一次貯蔵ユニット)と蓄電器(二次貯蔵ユニット)との間に配設される。負荷ポンプ60bは、一次電源によって送達された一次電力供給電圧U
ALを4倍にし、これにより、蓄電器の補助電力供給電圧V
CAを、電圧U
ALより大きく、特に2倍とすることができる。上記電圧ブースターの設計及び機能は当業者に公知である。ある代替実施形態の電気回路図を
図18に示す。これは4つの移動コンデンサC
Trと、2つの入力スイッチSw1と、6つのスイッチ82と、3つのスイッチ84と、2つの出力スイッチSw2とを備える。コンデンサC
ALから特定の電気負荷を引き出すために、スイッチSw1、82を閉鎖し、その一方でスイッチSw2、84を開放する(そしてコンデンサC
Trを並列に配設する)。これに続いて蓄電器C
Accを充電するために、スイッチSw1、82を開放し、その一方でスイッチSw2、84を閉鎖する(そしてコンデンサC
Trを直列に配設する)。
【0079】
この第3の実施形態の一次貯蔵ユニットは、電磁変換器が供給する全ての誘導電流を受信する単一のコンデンサC
ALを有する第1の実施形態のものと同一であるが、電磁式組立体86が第2の実施形態のものと同様に配設されており、第1の電圧突出と第2の電圧突出とが反対の極性を有するという事実により、比較器64は、複数の第1の電圧突出又は複数の第2の電圧突出(
図20Aに示されている場合)を直接検出できる。従ってここでは、比較器が供給するパルス中で、第1の突出に対応するものを第2の突出に対応するものから区別する必要がなく、これにより時間カウンタCTが存在しなくなり、2つの遅延T
C2、T
D2を測定するために、論理制御回路と連携した、この論理回路の内部に一体化できるタイマーのみが存在する。
図20Cでは、信号「Comp」が、第2の電圧突出LUC
2の出現にそれぞれ対応するパルスS2のみを示すことが観察される。
【0080】
図19は、第3の実施形態の論理制御回路62bで実装される調速方法のフローチャートである。全ての特徴、全ての電気信号及び発生する様々なイベントの結果については、既に上述した説明に続くものであり、これらの説明に照らして容易に理解されるため、詳細には説明しないものとする。
【0081】
調速デバイスを始動させると、調速回路74、特に双方向性カウンタCBは「POR」に設定される。次に論理回路は、信号「Comp」中のパルスS2の出現、即ち特にパルスS2の立ち上がりエッジを待機する。この立ち上がりエッジの検出は、第1の期間T
C2を測定するタイマーをトリガし、この第1の期間T
C2の持続時間は、その終点が、第2の電圧突出LUC
2と第1の電圧突出LUC
1との間、特にこれら2つの突出がそれぞれの最大値UM
2、UM
1を示す時点t
2と時点t
1との間に時間的に位置する第1の時間的範囲ZT1内に発生するように、選択される(
図20A)。これと並行して、論理回路は、双方向性カウンタCBの値が自然数N1を超えるかどうかを検出することにより、問題となっている機構の進行の前進が存在するかどうかを決定する。結果が正である場合、制御回路は遅延T
C2の終了を待機し、第2の実施形態の調速方法と同様に、蓄電器C
Accが満杯かどうかを決定する(即ち蓄電器C
Accの電気負荷貯蔵レベルが所与の限界を超えているかどうかを検出する)。蓄電器C
Accが満杯である場合、これは、負荷ポンプと並列なものとして想定される、特定の抵抗を備えた散逸回路のスイッチSw5を、特定の期間Δtにわたって閉鎖することによって、第1の電気負荷の電源コンデンサC
ALを放電する(
図17)。蓄電器C
Accが満杯でない場合、蓄電器C
Accは、第1の時間的範囲ZT1中に、第1の電気負荷をコンデンサC
ALから蓄電器C
Accへと移動させる。第1の電気負荷の抽出は、電力供給電圧U
AL(t)中の下降する段PC
1と、次の誘導電流パルスP1
PCとを誘発し、上記誘導電流パルスP1
PCは第1の半交替中に発生し、電気負荷の事前の励起が存在しないパルスP1よりも大きな振幅を有し(
図20A〜20Cの右側セクションを参照)、これにより機械式発振器は、問題となっている第1の半交替中に優れた制動を受ける。
【0082】
カウンタCBが自然数N1以下の値を有する場合、論理回路は、第1の遅延T
C2の直後の、終点にまで至る第2の遅延T
D2を待機する(
図20C)。これを行うために、第1の期間T
C2の終点から、タイマーは第2の期間T
D2の測定を開始する。この第2の遅延T
D2は、その終点が、第1の電圧突出LUC
1と第2の電圧突出LUC
2との間に位置する第2の時間的範囲ZT2内に発生するように選択される。これと並行して、論理回路は、双方向性カウンタCBの値が数−N2(N2は自然数である)未満となるかどうかを検出することにより、問題となっている機構の進行の後退が存在するかどうかを決定する。結果が正である場合、制御回路は遅延T
C2+T
D2の終了を待機し、蓄電器C
Accが満杯かどうかを決定する。蓄電器が満杯であるかどうかに応じて、制御回路は、前進の検出の場合について上述したものと同様の様式で動作する。蓄電器C
ALにおける第2の電気負荷の抽出は、電力供給電圧U
AL(t)中の下降する段PC
2と、次の誘導電流パルスP2
PCとを誘発し、上記誘導電流パルスP2
PCは第2の半交替中に発生し、電気負荷の事前の励起が存在しないパルスP2よりも大きな振幅を有し(
図20A〜20Cの左側セクションを参照)、これにより機械式発振器は、問題となっている第2の半交替中に優れた制動を受ける。
【0083】
結論として、第1の実施形態と同様、問題となっている機構の進行において観察された後退又は前進は、調速デバイスの一次貯蔵ユニットを形成する蓄電器C
ALにおける電気負荷の選択的な抽出によって補正される。
【0084】
第3の実施形態の調速方法は更に、二次貯蔵ユニットが補助電力供給電圧V
CAを補助負荷に送達することによって、この補助負荷に連続的又は断続的に給電するという事実に関連する強化を含む。実際のところ、補助負荷は好ましくは、時計の有用な補助機能と関連しており、従ってこの補助負荷に給電できることが望ましい。この目的のために、
図19のフローチャートに示すように、カウンタCBが数−N2以上の値及び数N1以下の値を有する場合、制御回路62bは好適な手段を用いて、蓄電器が空であるかどうかを決定する。「空(empty)」により、蓄電器C
Acc中の電気負荷貯蔵レベルが所与の下限未満であり、従ってあるシナリオにおいて補助機能(発光ダイオード、RFID回路、温度測定、方角指示(コンパス機能)等)の十分な電源をもはや提供できないことが理解される。従ってこのようなシナリオは、本発明による機械式発振器の瞬間周波数の補正を誘発する時間ドリフトが全く検出されない場合に発生する。このシナリオが発生し、蓄電器C
Accが空である(換言すれば十分に再充電されていない)場合、制御回路は、第1の時間的範囲ZT1内に第1の負荷を、及び第2の時間的範囲ZT2内に、上記第1の電気負荷と略同一の値の第2の電気負荷を抽出することによって、蓄電器の再充電動作を実施する。これら2つのイベントは、機械式共振器の発振中に、互いを補償するラグを誘発し、これにより、時計の進行に時間ドリフトを誘発することなく、一次貯蔵ユニットから二次貯蔵ユニットへと2倍の電気負荷が移動される。調速シーケンスが完了すると、論理制御回路は次の調速シーケンスを実施するために、次のパルスS2の立ち上がりエッジの検出を待機する。
【0085】
上述のように、第1の電気負荷又は第2の電気負荷の移動は、同一の調速シーケンス中、特に同一の時間的範囲ZT1又はZT2中の、負荷ポンプによる小さい方の電気負荷の複数の移動サイクルによって実施できる。ある代替実施形態では、論理制御回路は、測定された時間ドリフトが少なくとも1つの特定の前進に対応する場合に、同一の調速シーケンス中の複数の第1の時間的範囲それぞれにおいて、複数回の電気負荷の抽出を実施できるように配設される。同様に、測定された時間ドリフトが少なくとも1つの特定の後退に対応する場合、複数の第2の時間的範囲それぞれにおいて、複数回の電気負荷の抽出が実施される。
【0086】
図21、22には、本発明によるムーブメントに組み込まれる機械式発振器106の有利な代替実施形態が示されている。共振器106は、強磁性材料製の2つの地板112、114を備えるテンプ18cで形成される。上側地板112はその底面上に、2つの2極磁石22、23を支承する。この上側地板はまた、これら2つの磁石の磁力線を上部で閉鎖する役割も果たす。下側地板114は、これら2つの磁石の磁力線を底部で閉鎖する役割を果たす。従ってテンプの2つの地板は、上記2つの磁石の磁気ケーシングを軸方向に形成し、これにより上記2つの磁石それぞれの磁場が、これら2つの地板それぞれの外側表面の間に位置する容積内に略閉じ込められる。コイル28は、非磁性材料製の円筒形部品116上に固定して設置された2つの地板の間に部分的に配設され、上記部品は天真118に固定して設置される。ある代替実施形態では、部品116は鉄鋼製であってよく、従って磁場を伝導してよく、これは、上記2つの地板のうちの一方又は上記2つの地板それぞれの上に、磁気軸が軸方向に配向された単一の2極磁石を有するものとして想定される代替実施形態において、有利となり得る。後者の場合、円筒形連結部品が非磁性であると、少なくとも1つの地板が1つの強磁性部品を有してよく、この強磁性部品が他方の地板に近接又は接触して、各磁石の磁力線をこれら2つの地板によって閉鎖することにより、テンプの発振時に1つ又は複数のコイルが、各磁石によって生成される磁場の略全体によって軸方向に横断されるようにすることができる。上記地板はその一部のみが高透磁性材料製であってよく、上記材料は、1つの又は場合によっては複数の磁石の上方及び下方それぞれに位置する2つの部品を形成し、これら2つの部品は、テンプの発振時に調速システムの1つの又は場合によっては複数のコイルが上記2つの部品の間を通過できるように配設されることに更に留意されたい。
【0087】
共振器106は更にヒゲゼンマイ110を備え、その一方の端部は天真118に従来の方法で固定されている。なお、上記ヒゲゼンマイは好ましくは非磁性材料、例えばケイ素、又は常磁性材料製である。
図22には、天真に堅固に接続された小型プレート上に配設されたピン、アンクル120及びガンギ車122(一部のみ図示)から形成された、脱進機機構も示されている。上側地板の下の磁石22、23と反対側には、テンプの平衡錘124が設けられる。テンプの慣性の精密な設定及び平衡化を実施するための更なる手段を設けてもよい。なお、ある代替実施形態では、磁石は下側地板にも支承される。このような磁石は好ましくは、上側地板に支承された磁石と対面するように配設される。
【0088】
よって、上述の有利な代替実施形態の範囲内では、テンプは一般に、上記1つ又は複数の磁石と、想定される1つ又は複数のコイルとの磁気結合を可能としながら、テンプによって支承された1つ又は複数の磁石のための磁気ケーシングを画定するよう配設された磁性構造体を備える。