(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873102
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】開環重合生成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/28 20060101AFI20210510BHJP
C08G 18/18 20060101ALI20210510BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20210510BHJP
C08G 18/83 20060101ALI20210510BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20210510BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
C08G18/28 010
C08G18/18
C08G18/00 F
C08G18/83
C08G81/00
C08G101:00
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-506880(P2018-506880)
(86)(22)【出願日】2016年8月1日
(65)【公表番号】特表2018-523001(P2018-523001A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016068267
(87)【国際公開番号】WO2017025365
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2019年8月1日
(31)【優先権主張番号】15180420.0
(32)【優先日】2015年8月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゾフィー プツィエン
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】ハイモ ヴェルフレ
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−208115(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/118268(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/033045(WO,A1)
【文献】
特開2014−214295(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0051365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G 71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環重合生成物を製造する方法であって、
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸との反応生成物を用意する工程;および
b)前記反応生成物を、触媒量の少なくとも1種の非求核塩基の存在下で40〜150℃の範囲内にある温度に曝す工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、NCO官能価2以上を有する、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネートまたはこれらの組み合わせから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが、トルイレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、これらの異性体、ダイマー、トリマー、オリゴマーおよび混合物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、モル過剰の請求項2または3で定義されるポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られるポリイソシアネートプレポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオールが、平均OH官能価2〜8を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオールが、数平均分子量Mnを400〜10000の範囲で有するC2〜4ポリアルキレンオキシドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程a)の反応生成物が、
(1)ポリイソシアネートを等モル量の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸と反応させることにより;または
(2)第一の工程でモル過剰のポリイソシアネートを2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸と反応させて中間体を得て、第二の工程で前記中間体を、ここで先に定義されたポリオールと反応させることにより
得られる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工
程a)の反応生成物が、式(I):
【化1】
(上記式中、Rは、NCO基を形式的に除去した前記ポリイソシアネート由来のx価の基であり、xは、2〜
6の整数である)
の反応生成物である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程b)が、40〜150℃の範囲にある温度で実施される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記非求核塩基が、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアゾビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルグアニジンまたはこれらの混合物から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得られる、開環重合生成物。
【請求項12】
発泡体の形態にある請求項11記載の開環重合生成物。
【請求項13】
建設材料、絶縁材料、封止剤もしくは被覆としての、またはこれらを製造するための、請求項11もしくは12記載の開環重合生成物の使用。
【請求項14】
マットレスまたは創傷パッドを製造するための、請求項11もしくは12記載の開環重合生成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環重合生成物を製造する方法、本発明の方法により得られる開環重合生成物およびこの生成物の使用に関する。
【0002】
シクロカーボネート誘導体は、近年、硬化性バインダーとして関心を集めている。国際公開第2013/092011号(WO2013/092011)には、ポリ(ヒドロキシウレタン)、ポリ(ヒドロキシカーボネート)およびポリ(ヒドロキシルスルファニルホルメート)を調製するために使用可能な2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドが開示されている。
【0003】
国際公開第2014/118268号(WO2014/118268)には、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボキサミドが開示されており、ここでアミド窒素は、1つ以上のイソシアネート基を有する置換基を有する。この化合物は、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸とポリイソシアネートとを反応させることにより得られ、例えばバインダーを製造するために使用され得る。
【0004】
国際公開第2013/028292号(WO2013/028292)には、ポリ(ヒドロキシウレタン)発泡体材料を製造するために使用可能な環状カーボネートモノマーが開示されている。
【0005】
国際公開第2014/145732号(WO2014/145732)には、少なくとも1種の植物系ポリオールと少なくとも1種のイソシアネート不含モノマーとの反応生成物から形成される、発泡体構造を有する製造物品が開示されている。イソシアネート不含モノマーは環状カーボネートであってよい。
【0006】
また、環状カーボネートおよびその開環重合は、数多の科学出版物の対象でもある。
【0007】
活性化されていない5員環および6員環の環状カーボネート、例えば5−(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オンとDBUとのアニオン開環反応は、Endo等によって報告された(Macromolecules 2005、38、8177〜8182)。発泡反応は観察されなかったが、ポリカーボネート形成は観察された。
【0008】
Heitz等は、様々な触媒によるエチレンカーボネートの重合を調査した(L.Vogdanis、B.Martens、H.Uchtmann、F.Hensel、W.Heitz、Macromol.Chem.1990、191、465〜472)。CO
2形成は言及されているが、発泡体は得られなかった。
【0009】
エチレンカーボネートとKOHとの開環反応は、Lee等によって調べられた(J.−C.Lee、M.H.Litt、Macromolecules 2000、33、1618〜1627)。CO
2の蒸発により、直鎖状のエチレンカーボネート/エチレンオキシド混合ポリマーがもたらされた。架橋および発泡は観察されなかった。
【0010】
また、メチル−4,6−O−ベンジリデン−2,3−O−カルボニル−α−D−グルコピラノシドとDBUとのアニオン開環反応も、Endo等によって報告された(O.Haba、H.Tomizuka、T.Endo、Macromolecules 2005、38、3562〜3563)。CO
2形成は観察されなかった。
【0011】
Zsuga等は、様々な塩基とビスフェノールAとの存在下でのエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートの重合を報告した(L.Soos、G.Deak、S.Keki、M.Zsuga、J.Polym.Sci:A部:Polym.Chem.1999、37、545〜550)。
【0012】
国際公開第2013/092011号(WO2013/092011)に開示されているカルボキサミド化合物は、電子吸引性アミド基により活性化されている環状カーボネートである。硬化生成物を製造するためにカルボキサミド化合物を使用することには、主に2つの欠点がある:a)ポリ(ヒドロキシウレタン)を製造するには、アミン硬化剤、例えばトリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミンなどを架橋成分として使用する必要がある。アミンの使用は、その毒性を理由にますます問題視されている;b)別々に導入すべき2つの成分を使用する必要があり、正確な計量供給および混合が必要とされる。
【0013】
したがって、一成分系の硬化反応が非常に望ましい。よって、本発明の基礎をなす課題は、第二の成分としてのアミン硬化剤を使用することなく環状カーボネート成分から得ることができる重合/架橋の反応および/または生成物を提供することである。
【0014】
驚くべきことに、活性化された環状カーボネートを、触媒量の非求核強塩基、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)の存在下で、第二の成分としてのアミン硬化剤なしで硬化させることができると分かった。硬化反応が高温(60℃超)で実施される場合、安定した軟質発泡体が1時間以内に得られる。
【0015】
したがって、本発明の第一の実施形態は、
a)少なくとも1種のポリイソシアネートと2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸との反応生成物を用意する工程;および
b)前記反応生成物を、触媒量の少なくとも1種の非求核塩基の存在下で40〜150℃の範囲内にある温度に曝す工程
を含む、開環重合生成物を製造する方法である。
【0016】
工程(a)のための出発材料および工程(a)の反応生成物
反応生成物を調製するためのポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製で知られている、NCO官能価(分子内のNCO基の数)が、2以上、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜3の全ての脂肪族、芳香族または脂環式のイソシアネート、またはこれらの組み合わせ、つまり脂肪族/芳香族/脂環式の混合型のイソシアネートを含む。
【0017】
小規模に選び出された市販で入手可能なポリイソシアネートは、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(TMDI)、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびリジンエステルジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロ−ヘキサン(イソホロンジイソシアネート−IPDI)、1,4−ジイソシアナト−2,2,6−トリメチルシクロ−ヘキサン(TMCDI)、2,2’−、2,4’−および4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネートおよびシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシル−2,2−プロパン、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアナトベンゼン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル(TODI)、2,4−および2,6−トルイレンジイソシアネート、2,2’−、2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレン1,2−ジイソシアネートおよびナフタレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、m−およびp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、HDIトリマー、ポリメリックMDI、ならびにこれらの混合物を含む。好ましいポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネートおよび/または2,4−トルイレンジイソシアネート(TDI)および/または2,6−トルイレンジイソシアネートである。
【0018】
また、ポリイソシアネートをポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用することもできる。前記ポリイソシアネートプレポリマーは、モル過剰の先に定義されたポリイソシアネートを、例えば20〜100℃、好ましくは約80℃の温度でポリオールと反応させることで得られる。
【0019】
「モル過剰」という用語は、本明細書で定義されるように、ポリオールのOH基(または本明細書において以下で使用される酸のCOOH基)に対するポリイソシアネートのNCO基のモル比率が、1.1超、好ましくは1.2超であることを意味する。この反応は、当技術分野で公知のように実施される。例えば、不活性溶媒、例えばテトラヒドロフランを使用することができる。さらに、ポリウレタンの調製のために通常使用される触媒、例えばアミン化合物および有機金属化合物、例えばジブチル錫ジラウレートを使用することができる。ポリイソシアネートプレポリマーのNCO含量は、好ましくはNCOが2〜32重量%、より好ましくはNCOが2〜15重量%である。さらに、ポリイソシアネートプレポリマーは、数平均分子量(Mn)を、約500〜10000、好ましくは1000〜8000の範囲で有することが好ましい。
【0020】
ポリイソシアネートプレポリマーを調製するための適切なポリオールは、当技術分野で公知であり、例えば「Plastics Handbook、第7巻、’’Polyurethane’’、Carl Hanser Verlag、第3版 1993、第3.1章」に記載されている。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオール、好ましくはポリエーテルポリオールを使用することができる。概して、ポリオールは、平均OH官能価を、2〜8、より好ましくは2〜6、特に2または3有することができる。
【0021】
さらに、ポリオールは、数平均分子量(Mn)を、少なくとも350g/モル、好ましくは少なくとも400g/モル、特に少なくとも500g/モル有することができる。一般的に、数平均分子量は、15000g/モル以下である。好ましくは、数平均分子量は、400〜10000g/モル、特に500〜4000g/モルである。
【0022】
数平均分子量は、DIN53240によるOH価を使用し、式M
n=Fn・1000・56.1/OH価を適用することで決定される。適用される官能価は公称官能価である。これらの化合物のOH価は、通常、20〜850mgKOH/gの範囲、好ましくは30〜400mgKOH/gの範囲にある。
【0023】
ポリエーテルポリオールは、公知の方法により、例えばアルキレンオキシドと2〜8個、好ましくは2〜6個の反応性水素原子を有する少なくとも1種の開始分子とを触媒の存在下でアニオン重合またはカチオン重合することにより得ることができる。アルキレンオキシドとしては、2〜4個の炭素原子をアルキレン基内に有する1つ以上の化合物、例えばエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、1,2−プロピレンオキシド、1,3−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシドをそれぞれ、単独で、または混合物の形態で使用することができ、好ましくは、エチレンオキシドまたは1,2−プロピレンオキシドを使用する。ポリエーテルポリオールは、数平均分子量(Mn)を400〜10000の範囲で有するC
2〜4ポリアルキレンオキシドであることが好ましい。
【0024】
出発分子としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、糖誘導体、例えばスクロース、ヘキシット誘導体、例えばソルビトール、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、アニリン、トルイジン、トルエンジアミン、特に1,2−トルエンジアミン、ナフチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−メチレンジアニリン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびその他の二価もしくは多価アルコールまたは一価もしくは多価アミンなどの化合物を使用することができる。通常、使用するポリエステルポリオールは、2〜12個の炭素原子を有する多官能アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリンまたはペンタエリトリトールと、2〜12個の炭素原子を有する多官能カルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸異性体または上記の酸の無水物とを縮合することにより調製される。使用するポリエステルポリオールは例えば、OH官能価1.5〜5、好ましくは1.8〜3.5を有する。
【0025】
また、国際公開第2013/127647号(WO2013/127647)および国際公開第2013/110512号(WO2013/110512)に記載されているポリエーテルポリオール/ポリエステルポリオール混成物をポリオールとして適用することもできる。
【0026】
反応生成物(a)を調製するために、2つの方法を使用することができる:
(1)ポリイソシアネートを等モル量の2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸と反応させることができる。「等モル」という用語は、本明細書で使用されるように、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸のCOOH基に対するポリイソシアネートのNCO基のモル比率が、「実質的に」1(つまり0.95〜1.05)に等しいことを意味する。得られる反応生成物は、式(I):
【化1】
(上記式中、Rは、NCO基を形式的に除去した前記ポリイソシアネート由来のx価の基であり、xは、2〜6、好ましくは2または3の整数である)
の反応生成物である。
【0027】
本発明の目的に関して、「x価の基」という用語は、概して、Rが、x個の置換基で置換されている基であることを意味する。言い換えれば、Rは、「x」の価数を有する基である。xが2〜3の整数であることが好ましい。反応生成物(a)は、遊離イソシアネート基を実質的に含有しない。「実質的に」という用語は、本明細書で使用されるように、NCO値が3重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に0重量%であることを意味する。
【0028】
(2)一方、第一の工程でモル過剰のポリイソシアネートを2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸と反応させて中間体を得ることができ、第二の工程でこの中間体を、本明細書において先に定義されたポリオールと反応させる。「モル過剰」という用語およびポリオールとの反応の反応条件は、本明細書において先に定義されている。また、工程(a)の反応生成物は、遊離イソシアネート基を実質的に有さず、また概して、式(I)に該当する。「中間体」は、国際公開第2014/118268号(WO2014/118268A1)のクレーム1で定義されている化合物である。
【0029】
工程(b)における開環重合生成物の製造
工程(a)の反応生成物を、触媒量の非求核塩基の存在下で、約40〜約150℃、好ましくは60〜150℃の範囲にある温度に曝すことで反応させて、開環重合により生成物をもたらす。
【0030】
非求核塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアゾビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、トリアザビシクロデセン、テトラメチルグアニジン、イミダゾール、ジメチルアミノピリジン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、ナトリウムt−ブチレート、カリウムt−ブチレート、水素化ナトリウム、水素化カリウムなど、またはこれらの混合物から選択され得る。ジアザビシクロ化合物、特に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンおよびテトラメチルグアニジンが好ましい。
【0031】
さらに、非求核塩基を、工程(a)の反応生成物の重量を基準として、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の量で使用することができる。
【0032】
本発明の第二の実施形態は、本明細書において先に定義された本発明の方法により得られる開環重合生成物に関する。
【0033】
開環重合生成物は、発泡体、特に独立気泡発泡体の形態にあり得る。
【0034】
開環重合が開始すると、二酸化炭素が開裂して、開環重合生成物が得られる。好ましい実施形態において、重合は、約60℃〜約150℃の範囲にある温度で実施され、これにより、二酸化炭素の発生を理由に安定した発泡体である高度に架橋された三次元網目構造ができあがる。開環重合生成物、特に発泡体は、以下の式(IIa)および(IIb):
【化2】
(上記式中、Rは、先に式(I)について定義した通りである)
の繰り返し単位から構成されている。
【0035】
本発明の第三の実施形態は、工程(a)の反応生成物と本明細書において先に定義された非求核塩基とを含有する組成物に関する。
【0036】
この組成物は、構成成分(parts)のキットの形態にあってよく、ここで、1つの構成成分は工程(a)の反応生成物を含み、もう1つの構成成分は非求核塩基を含む。
【0037】
さらに、本発明は、本発明の発泡体または組成物から得られる物品に関する。
【0038】
本発明のさらなる実施形態は、建設材料、特にバインダー、絶縁材料、封止剤もしくは被覆としての、またはこれらを製造するための、本明細書において先に定義された開環重合生成物、特に発泡体、または組成物の使用に関する。
【0039】
本発明のさらなる実施形態は、マットレスまたは創傷パッドを製造するための、本発明の開環重合生成物または組成物の使用に関する。
【0040】
最後に、本発明のさらなる実施形態は、発泡体を製造するための、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸および/または式(I)の工程(a)の反応生成物の使用に関する。
【0041】
以下の例は、本発明を制限することなく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による生成物の熱重量測定スキャンを示す。
【0043】
実施例
本実施例では、以下の略語および製品を使用する:
CYCA:2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート
DBTL:ジブチル錫ジラウレート
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
THF:テトラヒドロフラン
RT:室温
Lupranol(登録商標)2032:BASF SEの市販品;55mgKOH/gのOH価およびM
n=3060g/モルを有する三官能性ポリエーテルポリオール
Lupranol(登録商標)2095:BASF SEの市販品;35mgKOH/gのOH価およびM
n=4800g/モルを有する三官能性ポリエーテルポリオール
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
TGA:熱重量分析
TDI:トルイレン−2,4−ジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート
Arcol(登録商標)ポリオール1374:Bayerの市販品;25〜29mgKOH/gのOH価およびM
eq=2078g/モルを有する三官能性ポリエーテルポリオール
Desmodur(登録商標)N3600:Bayerの市販品;多官能脂肪族ポリイソシアネート、つまりHDIトリマー;NCO含量23.5±0.5%。
【0044】
例1:4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランの調製(参考)
【化3】
【0045】
80gの炭酸ナトリウムを、1000mlの三つ口フラスコ内で200mlの蒸留水中に溶解させた。この溶液を10℃に冷却した。それから、58.5gのメチルアクリレートを添加し、約10分後、同様に10℃で、濃度7%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液400mlを撹拌導入した。それから、直ちにこの系をCO
2により入念にフラッシュした。温度を室温に上昇させた。フラスコをさらに1時間にわたり約25〜30℃でCO
2により入念にフラッシュし、その間、氷浴により時折冷却することで温度を上述の範囲に保った。できあがった白色の固体を吸引濾過器により濾別した。濾液を90mlのジクロロメタンで4回抽出した。混合された有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾別した。濾液をロータリーエバポレーターにて分離した。メチルエポキシプロピオネートが、収率50%〜60%および純度97%で得られた。
【0046】
20gのメチルエポキシプロピオネートを20gのtert−ブチルメチルエーテルおよび1gのテトラブチルアンモニウムブロミドと混合した。均質な混合物を100mlの加圧式反応器に移し、4日にわたり40℃で、かつ20barのCO
2圧力でカルボキシル化させた。カルボキシル化の後に、二相系が得られた;上相はtert−ブチルメチルエーテルから成り、下相は4−メトキシカルボニル−2−オキソ−1,3−ジオキソランから成っていた(純度94%(GC)、収率94%)。
【0047】
例2:グリセリンカーボネートの好気的酸化(参考)
【化4】
【0048】
11.81g(0.1モル)のグリセリンカーボネート(4−(ヒドロキシメチル)−2−オキソ−1,3−ジオキソラン)、0.50g(0.002モル)の硝酸マンガン(II)四水和物(Mn(NO
3)
2・4H
2O)、0.58g(0.002モル)の硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)および1.88g(0.012モル)のTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)を100mlの酢酸に溶解させた。赤みがかった溶液を、酸素雰囲気のもと室温で72時間にわたり撹拌し、蒸発乾固させ、粗生成物を再結晶により精製した。これにより、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−カルボン酸が、白色から黄色がかった針状結晶の形態でもたらされた。収率は約75%であり、分析データは、既知のデータと一致していた。
【0049】
例1および2の化合物を調製するためのさらなる例は、国際公開第2014/118268号(WO2014/118268)に記載されている。
【0050】
例3:CYCA−I2032(CYCA、IPDIおよびLupranol2032に基づくバインダー系)を3重量%のDBUの存在下で硬化させて、黄色がかった発泡体を100℃で1時間以内にもたらすことができる。
【0051】
3.1 プレポリマーCYCA−I2032の調製
N
2雰囲気のもと、250mLの無水THF中の91.80gのLupranol2032(0.03モル)、20.01gのIPDI(0.09モル)および0.022gのDBTLを60℃に加熱して、3.0%の所望のNCO値が達成されるまで1.25時間にわたり撹拌した。この反応混合物を室温に冷却し、10.70gのCYCA(3.0%の最終的なNCO値によるもの)および0.10gのDMAPを添加し、この反応混合物を、残留NCOがこれ以上検出できなくなるまで、12時間にわたり撹拌した(IR制御)。溶媒を真空で除去し、バインダーが、高粘度の黄色がかった油として定量的収率で得られた。
【0052】
3.2 CYCA−I2032の1K硬化
12.0gのCYCA−I2032および0.36g(3重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で激しく混合し、乾燥機内で1時間にわたり100℃に加熱した。黄色がかった軟質発泡体が得られた。この発泡体は、ほとんどの一般的な有機溶媒、例えばTHF、ジメチルスルホキシド、アセトン、トルエンおよび水に不溶であった。いくつかの場合では、膨潤が観察された。
【数1】
【0053】
発泡体の安定性をN
2のもとTGAにより調査した(
図1)。分解は、およそ150℃で始まり、350℃で激しく増加する。
【0054】
例4:CYCA−T2095(CYCA、TDIおよびLupranol2095に基づくバインダー系)を、1重量%のDBUの存在下でやや高温にして硬化させて、黄色がかった弾性発泡体を1時間以内にもたらすことができる。
【0055】
4.1 プレポリマーCYCA−T2095の調製
N
2雰囲気のもと、584.76gのLupranol2095(0.36モルのOH)、100.0gのTDI−CYCA中間体(15.35%のNCO、0.36モルのNCO;国際公開第2014/118268号(WO2014/118268)の例11または12と同様にして得られる)および0.09gのDBTLをフラスコ内で混合し、60℃に加熱し、残留NCOが検出されなくなるまで撹拌した(およそ6時間、IR制御)。この反応混合物を室温に冷却し、バインダーが、黄色がかった高粘度の油として定量的収率で得られた。
【0056】
4.2 CYCA−T2095の硬化
12.0gのCYCA−T2095および0.12g(1重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で混合し、80℃で1時間にわたり硬化させた。黄色がかった安定した弾性発泡体が得られた。
【0057】
例5:CYCA−T1374(CYCA、TDIおよびArcolポリオール1374に基づくバインダー系)を、3重量%のDBUの存在下でやや高温にして硬化させて、黄色がかった弾性フィルムもたらすことができる。
【0058】
5.1 CYCA−T1374の調製
N
2雰囲気のもと、211.38gのArcolポリオール1374(0.10モルのOH)を、750mLの無水THF中に溶解させた。27.98gのTDI−CYCA中間体(15.27%のNCO、0.10モルのNCO;国際公開第2014/118268号(WO2014/118268)の例11または12と同様にして得られる)および0.06gのDBTLを添加した。この反応混合物を、残留NCOが検出されなくなるまで60℃に加熱した(およそ6時間、IR制御)。この反応混合物を室温に冷却し、溶媒を真空で除去した。純粋なバインダーが、高粘度の黄色がかった油として定量的収率で得られた。
【0059】
5.2 CYCA−T1374の硬化
12.0gのCYCA−T1374および0.36g(3重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で混合し、40℃で1時間にわたり硬化させた。黄色がかった安定した弾性フィルムが得られた。
【数2】
【0060】
例6:CYCA−H9046(TRICYCA)(CYCAおよびDesmodur N3600(HDIイソシアヌレート)に基づくバインダー系)を、1重量%のDBUの存在下で硬化させることができる。
【0061】
6.1 CYCA−H9046(TRICYCA)の調製
N
2雰囲気のもと、78.21gのDesmodur N3600(0.43molのNCO)、57.28gの環状カーボネートカルボン酸(CYCA)(0.43モル)および0.52gの4−DMAPを、400mLの無水THFで希釈し、この反応混合物を、残留NCOが検出されなくなるまで撹拌した(およそ6時間、IR制御)。溶媒を真空で除去し、純粋なバインダーが、黄色がかった粘稠な油として定量的収率で得られた。
【0062】
6.2 CYCA−H9046(TRICYCA)の硬化
12.0gのCYCA−H9046および0.12g(1重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で混合し、80℃で1時間にわたり硬化させた。茶色がかった硬質かつ脆性の多孔質材料が得られた。
【0063】
例7:N3600−GC(グリセリンカーボネートおよびDesmodur N3600(HDIイソシアヌレート)に基づくバインダー系)(例6に対する比較例)。
【0064】
7.1 N3600−GCの調製
N
2雰囲気のもと、320.39gのDesmodur N3600(1.72モルのNCO)、202.78gのグリセリンカーボネート(1.72モル)および0.1gのDBTLを、600mLの無水THFで希釈し、この反応混合物を、残留NCOが検出されなくなるまで60℃に加熱した(およそ6時間、IR制御)。この反応混合物を室温に冷却し、溶媒を真空で除去した。純粋なバインダーが、透明で粘稠な液体として定量的収率で得られた。
【0065】
7.2 N3600−GCの硬化
12.0gのN3600−GCおよび0.12g(1重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で混合し、80℃で1時間にわたり反応させた。硬化および発泡は観察されず、透明で粘稠な液体が得られた。
【0066】
本発明の例とは対照的に、このバインダーの環状カーボネートは、電子吸引性基により活性化されていない。この場合、硬化および発泡の反応は観察されなかった。
【0067】
例8:T−2095−GC(グリセリンカーボネート、TDIおよびLupranol2095に基づくバインダー系)(例4に対する比較例)。
【0068】
8.1 T−2095−GCの調製
N
2雰囲気のもと、211.2gのLupranol2095(M
eq=1600g/mol、0.13molのOH)を、350mLの無水THFで希釈し、23.00gのTDI(48.2%のNCO、0.13モル)を添加し、この反応混合物を20分間にわたり50℃に加熱した。NCO含量を特定し、相応量のグリセリンカーボネート(16.92g、0.14モル)、ならびに0.04g(0.02重量%)のDBTLを添加した。この反応混合物を室温で8時間にわたり撹拌し、溶媒を除去した後に、バインダーが、粘稠で透明な油として定量的収率で得られた。
【0069】
8.2 T−2095−GCの硬化
12.0gのT−2095−GCおよび0.12g(1重量%)のDBUをプラスチックビーカー内で混合し、80℃で3日間にわたり反応させた。硬化および発泡は観察されず、不透明な茶色がかった液体が得られた。