特許第6873106号(P6873106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルー ダニューブ システムズ, インク.の特許一覧

<>
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000002
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000003
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000004
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000005
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000006
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000007
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000008
  • 特許6873106-シリアル相互接続の較正 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873106
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】シリアル相互接続の較正
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/46 20150101AFI20210510BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20210510BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H04B3/46
   H04B7/06 982
   H04B7/08 982
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-512430(P2018-512430)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公表番号】特表2018-533266(P2018-533266A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】US2016050680
(87)【国際公開番号】WO2017044565
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年9月9日
(31)【優先権主張番号】62/216,592
(32)【優先日】2015年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516381806
【氏名又は名称】ブルー ダニューブ システムズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】BLUE DANUBE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】バヌ, ミハイ
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−287560(JP,A)
【文献】 特開平05−244041(JP,A)
【文献】 特開平10−142361(JP,A)
【文献】 特開2001−086049(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0260844(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102273097(CN,A)
【文献】 特開昭63−268319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/46
H04B 7/06
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアル相互接続システムに係る方法であって、前記シリアル相互接続システムは、第1のノードと、第2のノードと、当該シリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された一組の較正ノードを含む複数の内部ノードと、前記直列に接続された一組の較正ノードに対応するとともに、当該シリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された一組の接続ノードと、を有しており、当該方法は、
前記一組の較正ノードのうちのそれぞれの較正ノードについて、
対応する基準信号を前記較正ノードに注入することと、
前記対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、前記第1のノードおよび前記第2のノードで現われる信号から一以上のシステムパラメータを決定すること、ここで前記一以上のシステムパラメータのそれぞれは、前記第1のノードおよび前記第2のノードの両方で現われる信号の関数である、
を含む測定手順を実行するステップと、
前記一組の較正ノードについて決定された前記一以上のシステムパラメータから、前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて補正を計算するステップと、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて計算された前記補正を、前記一組の接続ノードに関連する信号に適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、当該較正ノードに対して決定される一以上のシステムパラメータの一つは、前記対応する基準信号が前記較正ノードに注入されている間に前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の位相の関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算される前記補正は、位相補正である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、当該較正ノードに対して決定される前記一以上のシステムパラメータのうちの一つは、前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の大きさの関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて計算される前記補正は、大きさの補正である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、
当該較正ノードに対して決定される前記一以上のシステムパラメータのうちの一つは、前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の大きさの関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算される前記補正は、さらに位相補正を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の基準信号を前記第1のノードに注入するステップと、
前記第1の基準信号が前記第1のノードに注入されている間に、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる信号から他の1以上のシステムパラメータを決定するステップであり、ここで前記他の1以上のシステムパラメータのそれぞれは、前記第1のノードおよび前記第2のノードの両方に現れる信号の関数であるステップと、
をさらに含み、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて補正を計算するステップは前記第1のノードの前記他の1以上のシステムパラメータも用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
シリアル相互接続システムを含む方法であって、当該シリアル相互接続システムは、第1のノード、第2のノード、当該シリアル相互接続システムによって電気的に直列に接続された一組の較正ノードを含む複数の内部ノード、および、前記一組の直列に接続された較正ノードに対応し前記シリアル相互接続システムにより電気的に直列に接続されている一組の接続ノード、を有しており、
当該方法は、以下の工程:
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、以下の工程:
対応する基準信号を当該較正ノードに注入すること;および、
前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる信号から1以上のシステムパラメータを決定すること、ここで、前記1以上のシステムパラメータは、前記第1のノードおよび前記第2のノードの両方に現れる前記信号の関数である;
を含む測定手順を施すこと、
前記一組の較正ノードに対して決定された前記1以上のシステムパラメータから、前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対する補正を計算すること;および
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算された前記補正を、前記一組の接続ノードに関連する信号に適用すること;
を含み、
前記シリアル相互接続システムは、前記第1のノード、前記一組の接続ノード、および前記第2のノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続を備え、
前記複数の内部ノードのうちのそれぞれの内部ノードは、前記一組の較正ノードのうちの較正ノードと前記一組の接続ノードのうちの接続ノードの両方である方法。
【請求項7】
前記シリアル相互接続システムは、
前記第1のノード、前記一組の較正ノード、および前記第2のノードを直列に相互接続する部分を有する第1のシリアル相互接続と、
前記一組の接続ノードを直列に相互接続する部分を有する第2のシリアル相互接続と、
を含み、
前記第1のシリアル相互接続と前記第2のシリアル相互接続は別個のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第1のシリアル相互接続の前記部分と、前記一組の接続ノードを直列に相互接続する前記第2のシリアル相互接続の前記部分とは、電気的に整合されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シリアル相互接続システムは、
前記第2のノードと前記一組の較正ノードを直列に相互接続する部分を有する第1のシリアル相互接続と、
前記第1のノードと前記一組の較正ノードを直列に相互接続する部分を有する第2のシリアル相互接続と、
前記一組の接続ノードを直列に相互接続する部分を有する第3のシリアル相互接続と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第1のシリアル相互接続の前記部分、
前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第2のシリアル相互接続の前記部分、および、
前記一組の接続ノードを直列に相互接続する前記第3のシリアル相互接続の前記部分と、は電気的に整合されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シリアル相互接続システムであって、
第1のノード、
第2のノード、
当該シリアル相互接続システムによって電気的に直列に接続された一組の較正ノードを含む複数の内部ノード、および、
当該シリアル相互接続システムによって電気的に直列に接続され、前記一組の直列接続された較正ノードに対応する一組の接続ノード、
を含むシリアル相互接続システム;
前記シリアル相互接続システムの前記第1のノードおよび前記第2のノードに電気的に接続され、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる信号から1以上のシステムパラメータを決定するための検出器システムであって、前記1以上のシステムパラメータのそれぞれは、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる両方の前記信号の関数である、検出器システム;
複数の切り替え可能に制御される信号源であって、それぞれの切り替え可能に制御される信号源は、前記一組の較正ノードの異なる対応する一つに接続される、信号源;および、
以下の機能:
前記一組の較正ノードのそれぞれに対し、以下:
当該較正ノードに対する前記切り替え可能に制御された信号源に、当該較正ノードに対応する基準信号を注入させること;および
前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間、前記検出器システムに、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号から、前記1以上のシステムパラメータを決定させること;
を含む測定手順を実行すること、
前記一組の較正ノードに対して決定された前記1以上のシステムパラメータから、前記一組の較正ノードのそれぞれの補正を計算すること;および、
前記一組の較正ノードのそれぞれに対し計算された補正を前記一組の接続ノードに関連付けられた信号に適用すること;
を実行するようにプログラムされた制御システム;
を備える、装置。
【請求項12】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、当該較正ノードに対して決定された前記1以上のシステムパラメータの一つは、前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の位相の関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算される補正は、位相補正である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、当該較正ノードに対して決定された前記1以上のシステムパラメータの一つは、前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の大きさの関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算される補正は、大きさの補正である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードについて、当該較正ノードについて決定された前記1以上のシステムパラメータのうちの一つは、前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間に、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号の大きさの関数であり、
前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対して計算される補正は、大きさの補正をさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のノードに接続され、切り替え可能に制御された第1の信号源;をさらに備え、
前記制御システムは、さらに次の機能:
前記切り替え可能に制御された第1の信号源に、第1の基準信号を前記第1のノードに注入させること;
前記第1の基準信号が前記第1のノードに注入されている間、前記検出器システムに、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる信号から、他の1以上のシステムパラメータを決定させること;
を実行するようにプログラムされており、
ここで、前記一組の較正ノードのそれぞれの較正ノードに対する補正を計算することは、前記第1のノードに対する前記1以上のシステムパラメータも使用する、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
シリアル相互接続システムであって、
第1のノード、
第2のノード、
当該シリアル相互接続システムによって電気的に直列に接続された一組の較正ノードを含む複数の内部ノード、および、
当該シリアル相互接続システムによって電気的に直列に接続され、前記一組の直列接続された較正ノードに対応する一組の接続ノード、
を含むシリアル相互接続システム;
前記シリアル相互接続システムの前記第1のノードおよび前記第2のノードに電気的に接続され、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる信号から1以上のシステムパラメータを決定するための検出器システムであって、前記1以上のシステムパラメータのそれぞれは、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる両方の前記信号の関数である、検出器システム;
複数の切り替え可能に制御される信号源であって、それぞれの切り替え可能に制御される信号源は、前記一組の較正ノードに対応する異なる一つに接続される、信号源;および、
以下の機能:
前記一組の較正ノードのそれぞれに対し、以下:
当該較正ノードに対する前記切り替え可能に制御された信号源に、当該較正ノードに対応する基準信号を注入させること;および
前記対応する基準信号が当該較正ノードに注入されている間、前記検出器システムに、前記第1のノードおよび前記第2のノードに現れる前記信号から、前記1以上のシステムパラメータを決定させること;
を含む測定手順を実行すること、
前記一組の較正ノードに対して決定された前記1以上のシステムパラメータから、前記一組の較正ノードのそれぞれの補正を計算すること;および、
前記一組の較正ノードのそれぞれに対し計算された補正を前記一組の接続ノードに関連付けられた信号に適用すること;
を実行するようにプログラムされた制御システム;を備え、
ここで、前記シリアル相互接続システムは、前記第1のノード、前記一組の接続ノード、および前記第2のノードを直列に相互接続する第1シリアル相互接続を備え、
前記複数の内部ノードのうちのそれぞれの内部ノードは、前記一組の較正ノードのうちの較正ノード、および、前記一組の接続ノードのうちの接続ノード、の両方を備える、装置。
【請求項17】
前記シリアル相互接続システムは、
その一部が、前記第1のノード、前記一組の較正ノード、および前記第2のノードを直列に相互接続する部分を有する第1のシリアル相互接続と、
その一部が、前記一組の接続ノードを直列に相互接続する部分を有する第2のシリアル相互接続と、
を含み、
前記第1のシリアル相互接続と前記第2のシリアル相互接続は別個のものである、請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第1のシリアル相互接続の前記部分と、前記一組の接続ノードを直列に相互接続する前記第2のシリアル相互接続の前記部分とは、電気的に整合されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記シリアル相互接続システムは、
前記第2のノードと前記一組の較正ノードとを直列に相互接続する部分を有する第1のシリアル相互接続と、
前記第2のノードと前記一組の較正ノードとを直列に相互接続する部分を有する第2のシリアル相互接続と、
前記一組の接続ノードを直列に相互接続する部分を有する第3のシリアル相互接続と、を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第1のシリアル相互接続の前記部分、前記一組の較正ノードを直列に相互接続する前記第2のシリアル相互接続の前記部分、および前記一組の接続ノードを直列に相互接続する前記第3のシリアル相互接続の前記部分は、電気的に整合している、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月10日に出願された、米国仮特許出願第62/216,592号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明の実施形態は、概して、アナログフェーズドアレイの局部発振器(Local Oscillator:LO)分配、デジタルフェーズドアレイのサンプリングクロック分配、またはデジタル集積回路のクロック分配などの用途で使用可能な信号分配ネットワークに関する。
【背景技術】
【0003】
別個のシステムモジュール間のシリアル相互接続は、これらのモジュール間の最も単純な通信ネットワークを提供している。その単純さにより、この種のネットワークは、コスト上および信頼性の理由で実用的である。概して、システムモジュールは、任意のサブシステム、すなわち単一の受動部品のような単純なもの、または、位相ロックループ(Phased-Locked Loop:PLL)、無線機全体、アンテナフェーズドアレイ、もしくは他の何らかの複雑な回路のような複雑なものとすることができる。シリアル相互接続では、電気ケーブル、光ファイバ、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン、ワイヤレスナロービームなどの、一次元信号伝搬特性を有する伝送媒体を用いる。この伝送媒体に取り付けられ直列に接続されたシステムモジュールは、通常、プロトコルに従って信号を受信または送信する。単純なプロトコルは、例えば、1つのモジュールから他のすべてのモジュールへの信号の分配を含む。より高度なプロトコルであれば、1つのモジュールと他の任意のモジュールまたは一組のモジュールとの間の、信号の送信、受信の両方を含む場合がある。
【0004】
多くの用途では、1つのモジュールから他のモジュールにシリアル相互接続を介して伝搬するときに信号が受ける時間遅延を正確に知ることが重要である。例えば、多数の無線モジュールを含むフェーズドアレイ上に、LO(局部発振器)またはサンプリング信号をシリアルに分配する場合には、各無線モジュールで受信される信号間の伝搬遅延に起因する位相差を修正することが重要である。フェーズドアレイの非常に優れた動作は、すべての無線機における信号の正確なグローバル位相整合に依存するため、「位相較正」とも呼ばれるこの修正がなければ、フェーズドアレイの適切な機能性が損なわれることになる。
【0005】
同様に、用途によっては、時間遅延または位相シフトだけでなく、伝送損失または他の効果に起因する信号の大きさの変化も、修正する必要がある。例えば、2013年12月17日付けの米国特許第8,611,959号の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。この米国特許に記載されている能動アレイの中間周波数(Intermediate Frequency:IF)ラインは、位相シフトに加えて実質的な損失を有する。正確なシステム動作のためには、これらの損失を補償する必要がある。大きさ修正は、「大きさ較正(振幅較正)」とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品サンプルであれば、位相シフトを生じる時間遅延、およびシリアル相互接続上の信号移送に起因する大きさの変化を計算するか、または直接測定することができる。しかしながら、このような方法は、シリアル相互接続の物理的な実装が、製造後に所望される精度まで予測可能であり、かつ、温度や湿度などの動作条件の予期される変化に関して予測不能に変動しないという伝送特性を有する場合にしか、位相/大きさ較正に用いることができない。例えば、シリアル相互接続の伝送特性が、所望される精度を超えた製造のバラツキによる影響を受ける場合には、どんなに生産前計算およびシミュレーションを行っても、または、どんなに製品サンプルを直接測定しても、すべての生産された単位の伝送特性を正しく表すことはできない。
【0007】
同様に、たとえすべての生産単位が工場の温度および湿度条件で予測可能な伝送特性を有しているとしても、これらの特性は、現場の動作条件では所望される精度を超えて予測不能に変わるかもしれない。このような場合、シリアル相互接続の時間遅延および大きさの変化を特定するための上記方法を使用して、現場での時間遅延および大きさの変化を正しく補償することはできない。
【0008】
シリアル相互接続の位相/大きさ較正が必要な場合、通常は、製造条件および動作条件に対して予測可能な特性を保証する材料および設計技術を有するシリアル相互接続を製造することが行われている。これは、ほとんどの場合、コスト面で大幅にマイナスである。例えば、フェーズドアレイを例にとると、これは、大型の電気システム、すなわち、動作周波数の波長と比較して物理的な寸法が大きなシステムである。LO(局部発振器)信号などの高周波信号がフェーズドアレイを通してシリアル相互接続を介して伝搬する場合、非常に大きな(例えば、数千レベルの)位相歪みが生じる。しかしながら、これらの歪みの補償(位相較正)には、これらの歪みをわずか数レベルにまで低減させなければならない。このような歪の低減は、自然な歪みがこのレベルの精度まで予測可能でなければ達成することができない。そしてこのような正確な特性を有する伝送ラインを製造するためには、高価な材料(例えば、誘電体など)および高い製造公差(例えば、ラインの幅、厚さなど)が必要である。
【0009】
固有の位相較正を有するシリアル相互接続を設計するための低コストな方法が、2008年7月21日付の米国特許第8,259,884号に記載されており、その全内容が、参照により本明細書に組み入れられる。同じ効果を得るための他の手法もまた、米国特許第8,259,884号明細書において特定された従来技術に記載されている。これらの方法において、設計は、高価な材料および製造公差に依存するというよりもむしろ、整合された伝送ライン上を伝搬する信号間の相互の補償に依存している。これらの方法は、様々な高精度アナログ回路にさらに依存している。実際には、これらのアナログ回路は設計の難易度が高く、しかも高速かつ高精度で同時に動作することが要求されるので、ある実装から別の実装にスケーリングまたは移植することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、シリアル相互接続の予測可能な伝送特性に依存しない、シリアル相互接続の位相/大きさ較正の新たな方法を開示する。従来技術の方法とは異なり、これらの新たな方法は、アナログ回路の代わりに、低コストで、スケーリング可能であり、しかも持ち運び可能なデジタル回路の実装にもまた当然適している。さらに、これらの新たな方法のうちのいくつかは、整合された伝送ラインに依存しない。
【0011】
明確かつ簡便のため、連続波(continuous wave:CW)信号、すなわち、単一の周波数または信号音を含む信号を用いて、この新たな概念を紹介し、説明する。しかしながら、これらの概念は、通信システムで用いられる変調された帯域信号などの、より複雑な信号に有効である。例えば、ある特定の周波数における位相較正は、通常、較正する周波数に近い範囲の周波数全体にわたって有効である。
【0012】
本明細書に示されるシリアル相互接続を較正するための方法は、コヒーレントな、位相同期された、大きさが等しい信号を、複数の点に直列に分配する方法と見なすこともできる。このことは、以下の説明により、明らかになる。
【0013】
概して、1つの態様では、本発明の特徴の少なくとも1つは、シリアル相互接続システムであって、第1のノードと、第2のノードと、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の較正ノードと、直列に接続された複数の較正ノードに対応する複数の接続ノードであって、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の接続ノードと、を有するシリアル相互接続システムを較正するための方法であって、複数の較正ノードのそれぞれについて、対応する基準信号をその較正ノードに注入することと、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の位相差を測定することと、を含む測定手順を実行するステップと、複数の較正ノードについての測定された位相差から、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算するステップと、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された位相修正を、対応する複数の接続ノードに適用するステップと、を含む較正方法である。
【0014】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。この方法は、第1の基準信号を第1のノードに注入するステップと、第1の基準信号が第1のノードに注入されている間に、第1のノードに注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差を測定するステップと、をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算するステップが、第1のノードについての測定された位相差だけでなく、複数の較正ノードについての測定された位相差もまた用いる。複数の較正ノードのそれぞれについて、測定手順が、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の大きさの比率を測定することもまた含み、本方法は、複数の較正ノードについての測定された大きさの比率から、複数の較正ノードのそれぞれについて大きさ修正を計算するステップと、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された大きさ修正を、対応する複数の接続ノードに適用するステップと、をさらに含む。この方法は、第1の基準信号を第1のノードに注入するステップと、第1の基準信号が第1のノードに注入されている間に、注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定するステップと、をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正および大きさ修正を計算するステップが、第1のノードについての測定された位相差および測定された大きさの比率もまた用いる。
【0015】
また別の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。シリアル相互接続システムが、第1のノード、複数の接続ノード、および第2のノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続を含み、複数の較正ノードが複数の較正ノードと同じである。あるいは、シリアル相互接続システムが、第1のノード、複数の較正ノード、および第2のノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続と、複数の接続ノードを直列に相互接続している第2のシリアル相互接続と、を含み、第1のシリアル相互接続および第2のシリアル相互接続が別個である。
【0016】
複数の較正ノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続の部分、および複数の接続ノードを直列に相互接続する第2のシリアル相互接続の部分が、電気的に整合されている。あるいは、シリアル相互接続システムが、第2のノードおよび複数の較正ノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続と、第1のノードおよび複数の較正ノードを直列に相互接続している第2のシリアル相互接続と、複数の接続ノードを直列に相互接続している第3のシリアル相互接続と、を含む。複数の較正ノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続の部分、複数の接続ノードを直列に相互接続する第2のシリアル相互接続の部分、および複数の接続ノードを直列に相互接続する第3のシリアル相互接続の部分が、電気的に整合されている。
【0017】
本発明のさらにまた別の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。複数の較正ノードのうちのいずれか1つについて測定手順を実行している間に、複数の較正ノードのうちの残りの較正ノードのどれにも他の基準信号を印加しない。複数の接続ノードが、複数の較正ノードと同じである。複数の較正ノードについての対応する基準信号が、同じ周波数を有する。
【0018】
概して、さらに別の態様では、本発明の特徴の少なくとも1つは、シリアル相互接続システムであって、入力ノードと、第1のノードと、第2のノードと、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の較正ノードと、直列に接続された複数の較正ノードに対応する複数の接続ノードであって、やはりこのシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された前記複数の接続ノードと、を有するシリアル相互接続システムを較正するための方法である。この較正方法は、複数の較正ノードのそれぞれについて、対応する基準信号をその較正ノードに注入することと、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の位相差を測定することと、を含む測定手順を実行するステップと、複数の較正ノードについての測定された位相差から、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算するステップと、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された位相修正を、対応する複数の接続ノードに適用するステップと、を含む。
【0019】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。シリアル相互接続システムが、入力ノードもまた含み、かつ、本方法が、第1の基準信号を入力ノードおよび第1のノードに注入するステップと、第1の基準信号が入力ノードおよび第1のノードに注入されている間に、入力ノードで注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差を測定するステップと、をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算するステップが、入力ノードについての測定された位相差だけでなく、複数の較正ノードについての測定された位相差もまた用いる。複数の較正ノードのそれぞれについて、測定手順が、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の大きさの比率を測定することもまた含み、本方法が、複数の較正ノードについての測定された大きさの比率から、複数の較正ノードのそれぞれについて大きさ修正を計算するステップと、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された大きさ修正を、対応する複数の接続ノードに適用するステップと、をさらに含む。この方法は、第1の基準信号を入力ノードおよび第1のノードに注入するステップと、第1の基準信号が入力ノードおよび第1のノードに注入されている間に、入力ノードで注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定するステップと、をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正および大きさ修正を計算するステップが、入力ノードについての測定された位相差および測定された大きさの比率もまた用いる。
【0020】
さらにまた別の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。シリアル相互接続システムが、第1のノードおよび複数の較正ノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続と、入力ノードおよび複数の接続ノードを直列に相互接続している第2のシリアル相互接続と、を含む。複数の較正ノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続の部分、および複数の接続ノードを直列に相互接続する第2のシリアル相互接続の部分が、電気的に整合されている。
【0021】
概して、さらに別の態様では、本発明の特徴の少なくとも1つは、シリアル相互接続システムであって、第1のノードと、第2のノードと、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の較正ノードと、直列に接続された複数の較正ノードに対応する複数の接続ノードであって、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の接続ノードと、を有するシリアル相互接続システムと、シリアル相互接続システムの第1のノードおよび第2のノードに電気的に接続された、第1のノードおよび第2のノードにおいて検知された信号の位相差を測定するための位相検出器と、複数の切り替え可能に制御された信号源であって、それぞれが切り替え可能に制御された、複数の較正ノードの対応する異なる1つに接続された信号源と、コントローラシステムと、を含む装置である。このコントロールシステムは、複数の較正ノードのそれぞれについて、その較正ノードについての切り替え可能に制御された信号源に、対応する基準信号をその較正ノードに注入させることと、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、位相検出器に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の位相差を測定させることと、を含む測定手順を実行する機能と、複数の較正ノードについての測定された位相差から、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算する機能と、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された位相修正を、対応する複数の接続ノードに適用する機能と、を実行するようにプログラムされている。
【0022】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。この装置は、第1のノードに接続された切り替え可能に制御された第1の信号源をさらに含み、コントローラシステムが、切り替え可能に制御された第1の信号源に、第1の基準信号を第1のノードに注入させる機能と、第1の基準信号が第1のノードに注入されている間に、位相検出器に、注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差を測定させる機能と、を実行するようにさらにプログラムされ、かつ、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算するステップが、入力ノードについての測定された位相差もまた用いる。この装置は、シリアル相互接続システムの第1のノードおよび第2のノードに電気的に接続された、第1のノードおよび第2のノードにおいて検知された信号の大きさの比率を測定するための大きさ検出器をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて、そのノードについての測定手順が、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、大きさの比率検出器に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の大きさの比率を測定させることをさらに含み、かつ、コントローラシステムが、複数の較正ノードについての測定された大きさの比率から、複数の較正ノードのそれぞれについて大きさ修正を計算する機能と、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された大きさ修正を、対応する複数の接続ノードに適用する機能と、を実行するようにさらにプログラムされている。
【0023】
また別の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。この装置は、第1のノードに接続された切り替え可能に制御された第1の信号源をさらに含み、コントローラシステムが、切り替え可能に制御された第1の信号源に、第1の基準信号を第1のノードに注入させる機能と、第1の基準信号が第1のノードに注入されている間に、位相検出器および大きさの比率検出器に、注入されたその第1の基準信号と、第2のノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定させる機能と、を実行するようにさらにプログラムされ、かつ、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正および大きさ修正を計算する機能が、入力ノードについての測定された位相差および測定された大きさの比率もまた用いる。
【0024】
さらにまた別の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。シリアル相互接続システムが、第1のノード、複数の接続ノード、および第2のノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続を含み、複数の較正ノードが、複数の較正ノードと同じである。あるいは、シリアル相互接続システムが、第1のノード、複数の較正ノード、および第2のノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続と、複数の接続ノードを直列に相互接続している第2のシリアル相互接続と、を含み、第1のシリアル相互接続および第2のシリアル相互接続が別個である。複数の較正ノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続の部分、および複数の接続ノードを直列に相互接続する第2のシリアル相互接続の部分が、電気的に整合されている。あるいは、シリアル相互接続システムが、第2のノードおよび複数の較正ノードを直列に相互接続している第1のシリアル相互接続と、第2のノードおよび複数の較正ノードを直列に相互接続している第2のシリアル相互接続と、複数の接続ノードを直列に相互接続している第3のシリアル相互接続と、を含む。複数の較正ノードを直列に相互接続する第1のシリアル相互接続の部分、複数の接続ノードを直列に相互接続する第2のシリアル相互接続の部分、および複数の接続ノードを直列に相互接続する第3のシリアル相互接続の部分が、電気的に整合されている。コントローラシステムが、複数の較正ノードについての切り替え可能に制御された信号源に、対応する基準信号を複数の較正ノードに一度に1つだけ注入させるようにさらにプログラムされている。複数の較正ノードについての対応する基準信号が、同じ周波数を有する。
【0025】
概して、さらにまた別の態様では、本発明の特徴の少なくとも1つは、シリアル相互接続システムであって、入力ノードと、第1のノードと、第2のノードと、このシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の較正ノードと、直列に接続された複数の較正ノードに対応する複数の接続ノードであって、やはりこのシリアル相互接続システムによって直列に電気的に接続された複数の接続ノードと、を有するシリアル相互接続システムと、シリアル相互接続システムの第1のノードおよび第2のノードに電気的に接続された、第1のノードおよび第2のノードにおいて検知された信号の位相差を測定するための位相検出器と、複数の接続ノードの中の各接続ノードを、複数の較正ノードの中の対応する異なる較正ノードに切り替え可能に電気的に接続するための複数のスイッチと、コントローラシステムであって、複数の較正ノードのそれぞれについて、その較正ノードについてのスイッチに、対応する接続ノードからの対応する基準信号をその較正ノードに注入させることと、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、位相検出器に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の位相差を測定させることと、を含む測定手順を実行する機能と、複数の較正ノードについての測定された位相差から、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正を計算する機能と、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された位相修正を、対応する複数の接続ノードに適用する機能と、を実行するようにプログラムされたコントローラシステムと、を含む装置である。
【0026】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。この装置が、シリアル相互接続システムの第1のノードおよび第2のノードに電気的に接続された、第1のノードおよび第2のノードにおいて検知された信号の大きさの比率を測定するための大きさ検出器をさらに含み、複数の較正ノードのそれぞれについて、そのノードについての測定手順が、対応する基準信号がその較正ノードに注入されている間に、大きさ検出器に、第1のノードおよび第2のノードで現われる信号の大きさの比率を測定させることをさらに含み、かつ、コントローラシステムが、複数の較正ノードについての測定された大きさの比率から、複数の較正ノードのそれぞれについて大きさ修正を計算する機能と、複数の較正ノードのそれぞれについて計算された大きさ修正を、対応する複数の接続ノードに適用する機能と、を実行するようにさらにプログラムされている。シリアル相互接続システムが、入力ノードもまた含み、装置がこの入力ノードに電気的に接続された信号源をさらに含む。装置が、入力ノードを第1のノードに切り替え可能に電気的に接続するための第1のスイッチをさらに含み、コントローラシステムが、第1のスイッチに、入力ノードから信号を第1のノードに注入させる機能と、信号が入力ノードから第1のノードに注入されている間に、位相検出器および大きさ検出器に、入力ノードから第1のノードに注入されたその信号と、第2のノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定させる機能と、を実行するようにさらにプログラムされ、かつ、複数の較正ノードのそれぞれについて位相修正および大きさ修正を計算する機能が、入力ノードについての測定された位相差および測定された大きさの比率もまた用いる。
【0027】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明のその他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】シリアル分配ネットワークの位相および大きさ較正の第1の方法の単純化された概略図を表す。
図2】実施可能なPD/MR検出器およびコントローラ(CTR)の単純化された概略図を表す。
図3】シリアル分配ネットワークの位相および大きさ較正の第2の方法の単純化された概略図を表す。
図4】シリアル分配ネットワークの位相および大きさ較正の第3の方法の単純化された概略図を表す。
図5】シリアル分配ネットワークの位相および大きさ較正の第4の方法の単純化された概略図を表す。
図6】本明細書に記載のシリアル相互接続を較正するためのアルゴリズムのフローチャートである。
図7】本明細書に記載の較正技法を使用することが可能な、アナログフェーズドアレイの図である。
図8】フェーズドアレイ較正のためのシリアル相互接続を較正するための手法を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[シリアル相互接続を較正するための第1の方法]
第1の位相/大きさ較正方法を、図1に示されるシステムを用いて説明するが、この方法は、本質的には、図1に示されている特定の実施態様よりも概括的であることを理解されたい。シリアル相互接続1aは、2つの端点XおよびYを接続し、中間点AおよびBを有する。システムに入力信号を供給する入力信号発生器2が、スイッチ3を介して端点Xでシリアル相互接続1aに結合されている。スイッチ3がオンの場合、入力信号発生器2は、シリアル相互接続1aを通して、点X、A、B、およびYを含むこの直列リンク上の多くの点に信号を送ることができる。
【0030】
入力信号発生器2によって点Xで印加された信号は、点Xにおける信号の位相と比較した位相差Φで、また、点Xにおける信号の大きさに対する比率がαとなる大きさで、点Aに到達する。この信号が端点Yの方へさらに移動するにつれて、信号は、点Aにおける位相と比較した位相差ΔΦで、また、点Aにおける大きさに対する比率がαである大きさで、点Bに到達する。最後に、この信号は、点Aにおける信号の位相と比較した位相差Φで、また、点Aにおける信号の大きさに対する比率がαである大きさで、端点Yに到達する。この較正方法の第1の目的は、シリアル相互接続1aの伝送特性が、シリアル相互接続1a全体にわたって、またはその任意の部分に関して予測可能であるとの仮定なく、量Φ、Φ、ΔΦ、α、α、およびαを決定することである。さらに、点X、A、B、およびYに結合された信号源または回路はいずれも、どのグローバル位相および大きさ基準にもアクセスすることができず、したがって、それぞれのノードにおける信号の位相および大きさがその他のノードにおける位相および大きさとどのような関係があるかを決定する手段がない、と仮定する。このような条件は、シリアル接続構成が用いられる多くの実際の用途で生じている。
【0031】
第1の位相/大きさ較正方法の追加的な仮定は、図1のシステムでは動作周波数がすべてのノードにおいて既知である、ということである。これは基本的な制限でも厳しい制限でもない。なぜなら、システムの初期化の間に(位相/大きさ較正プロセスを開始する前に)、動作周波数はシリアル相互接続1aを、接続点XからA、B、およびYを含む他のすべての接続点まで、通信することができるからである。これを行う1つの方法は、点A、B、およびYで調整可能な周波数基準(図1に示されていない)を追加することによるもので、この周波数基準が、システムの初期化の間に入力信号発生器2の周波数に調節することになる。このようにして、接続点A、B、およびYは、接続点Xでの動作周波数についての知識を得るとともに維持する。ここで、点XからA、B、Xまでの動作周波数についての知識の転送は簡単であるが、上述したように、シリアル相互接続1a上に生じる位相および大きさの変化は、本出願に記載の方法が適用される前には未知のままであることを強調しておく。
【0032】
図1のシステムで2つの中間点(AおよびB)だけを用いていることは、第1の較正方法だけでなく、後で紹介する他の較正方法を説明するのにも同様に十分である。しかしながら、本明細書に記載のこの第1の較正方法および他の較正方法は、任意の特定の用途に適合させるために必要なだけの数の中間点を追加しても、依然として有効である。これらの方法を説明した後には、このことがより明白になるであろう。
【0033】
シリアル相互接続1aは、両端部で適切に終端した単純な伝送ライン、または任意の他の受動的もしくは能動的なシリアル接続構成とすることができる。シリアル相互接続1aの要件の1つは、端点または任意の中間点で、反射せずに両方向に信号を伝搬することである。別の要件は、中間点で注入された信号を、既知の相対位相および大きさで(例えば、同じ位相および等しい大きさで、または、既知の位相差および既知の大きさの比率で)、逆方向に発進する成分に分割することである。言いかえれば、中間点でシリアル相互接続1aに注入された任意の一つの信号は、端点に向かって逆方向に伝わる二つの成分に予測的に分割され、これらの成分は、他の中間点を通過するときに反射を生じずに、適切な終端によって端点で完全に吸収されると仮定される。ここで信号が端点のうちの1つに注入された場合、信号はもう一方の端点に向かって伝わる単一の成分だけを生成することになる。
【0034】
図1のシステムは、シリアル相互接続1aの2つの端点に結合されたサブシステムであって、端点における信号間の位相差および大きさの比率を検出することが可能なサブシステム4をさらに含んでいる。この理由により、サブシステム4は、位相差/大きさの比率(phase-difference/magnitude-ratio)検出器またはPD/MR検出器4と呼ばれる。PD/MR検出器4は、シリアル相互接続1aの端点から検出した位相差値および大きさの比率値をコントローラ(CTR)10に送る。CTR10は、スイッチ3をオンとオフにするための制御バス11と、(切り替え可能に制御された)信号源100、101、および102と、を独立して(例えば、別個のデジタルアドレスを用いて)有する。これらの信号源100、101、および102は、接続点X、A、およびBでシリアル相互接続1aにそれぞれ結合されており、また、入力信号発生器2の信号と動作周波数は同じであるが、相互関係のない恣意的な位相および大きさを有すると仮定する。シリアル相互接続1aへのこれらの信号源の結合は、直接接続によって、容量結合器によって、誘導結合器によって、または任意の他の無指向性の信号結合方法によって行うことができる。
【0035】
また、制御バス11を介して、CTR10は較正回路5の状態を独立して設定することができる。各較正回路5は、接続点AまたはBでシリアル相互接続1aにそれぞれ結合され、このノードから信号を受信する。較正回路5は位相をシフトし、受信信号の大きさをスケーリングし、その結果得られた信号をノードA1またはB1でそれぞれ出力する。較正回路5の状態は、較正回路5により行われる位相シフトおよび大きさのスケーリングの量によって規定される。典型的な較正回路5は、可変利得アンプ(Variable Gain Amplifier:VGA)と、プログラム可能な位相シフト回路または位相回転回路との直列結合である。
【0036】
概して、PD/MR検出器4およびCTR10は、アナログ回路、デジタル回路、混合信号回路を用いて、また場合によってはソフトウェアを用いて、様々な方法で実施することができる。好適な実施態様が図2に示されており、ここでは、PD/MR検出器4は、2つのアナログ−デジタル変換器(ADC)41と、1つのデジタルプロセッサ(DP)42と、を有し、CTRはデジタルコントローラ(DCTR)12である。DP42およびDCTR12は、デジタル信号プロセッサ(DSP)20上で実行するソフトウェアにおいて実施される。
【0037】
2つのアナログ−デジタル変換器(ADC)41は、2つの入力信号13をデジタル化するが、これらの入力信号は、図1のシリアル相互接続1aの端点XおよびYから受信される。信号13の直接のデジタル化が実際的でない(例えば、信号周波数が使用するADCには高周波すぎる)場合には、デジタル化の前に、ダウンコンバータ(例えば、ミキサー)を追加する(図2には示されていないが、ADCブロック41に含まれていると仮定する)。DP42は、(例えば、フーリエ変換または同様の技法によって)2つのデジタル化された信号から位相値および大きさの値を抽出し、比率計算のための位相の減算および大きさの除算を実行する。DCTR12は、シーケンス制御ステップ、およびシリアル相互接続1aの位相の変化および大きさの変化を検出し、補償するために必要な計算を実行する。これらの制御ステップおよび計算は、次に説明するが、原則として、図2に示された例示的な実施態様だけでなく、PD/MR検出器4の、およびCTR10の任意の他の実施態様にも有効である。
【0038】
図1のシリアル相互接続1aの位相の変化/大きさの変化の検出は、以下のように行われる。CTR10は、最初に、図1のスイッチ3をオフにして、入力信号がシリアル相互接続1aに結合されるのを阻止する。次に、CTR10は、信号源101および102がオフである間に、信号源100をオンにする。PD/MR検出器4は、全体の位相差PD0=Φ+Φ、および全体の大きさの比率MR0=α*αを検出し、これらの値をCTR10に送り、そこでこれらの値を記憶する。PD0およびMR0についての上記の等式は、単に、直列リンク全体にわたって、位相は足し算し、利得(大きさの比率)は掛け算する、という事実から得られるものである。また、値PD0およびMR0は、信号源100によって生成された信号の位相の絶対値および大きさの絶対値に依存しないということに留意されたい。
【0039】
次に、CTR10は、信号源100をオフにし、信号源101をオンにする。PD/MR検出器4は、今度は、信号源101の信号は、シリアル相互接続1a上を逆方向に伝わる成分に均等に分割されると仮定して、位相差PD1=Φ−Φ、および大きさの比率MRl=α/αを検出する。これらの等式は、信号源101からの信号の伝搬条件から得られる。PD/MR検出器4は、再び、値PD1およびMR1をCTR10に送り、そこでこれらの値を記憶する。前回とまったく同様に、これらの値は、信号源101によって生成された信号の位相の絶対値および大きさの絶対値に依存しない。この時点で利用可能な情報に基づいて、CTR10は、4つの未知数を有する4つの等式(位相差ΦおよびΦの2つの等式、ならびに大きさの比率αおよびαの2つの等式)からなる単純系の解として、量Φ、Φ、α、およびαを計算することができる。この解は、Φ=(1/2)*(PD0+PD1)、Φ=(1/2)*(PD0−PD1)、α=SQRT(MR0*MRl)、およびα=SQRT(MR0/MRl)である。なお、式中、SQRT(x)は平方根機能である。
【0040】
点Bに対して同じプロセスを継続する。CTR10は、信号源101をオフにし、信号源102をオンにする。PD/MR検出器4は、信号源102の信号は、シリアル相互接続1a上を逆方向に伝わる成分に均等に分割されると仮定して、位相差PD2=Φ−Φ+2*ΔΦ、および大きさの比率MR2=α*α/αを検出する。量PD2およびMR2は、信号源102によって生成された信号の位相の絶対値および大きさの絶対値に依存しない。PD/MR検出器4は、これらの値をCTR10に送り、そこでこれらの値を記憶する。値PD2およびMR2は、PD1およびMR1に関して以下のように表すことができることに留意されたい。PD1=Φ−Φであるので、PD2=PD1+2*ΔΦであり、MRl=α/αであるので、MR2=α*MRlである。CTR10は、上記の2つの簡単な等式を解くことにより、値ΔΦおよびαを算出する。結果は次の通りである。ΔΦ=(1/2)(PD2−PD1)であり、α=SQRT(MR2/MRl)である。これらの結果は、点AからBまでの位相の相対的変化および大きさの相対的変化が、点XからAまでの位相の変化および大きさの変化に依存しない、という事実と一致している。フェーズドアンテナアレイ(図7を参照)などの、いくつかの用途では、あるアンテナ素子から別のアンテナ素子までの(例えば、シリアル相互接続1a上のある点から別の点までの)位相の相対的変化および大きさの相対的変化だけが関係する。これらの場合では、信号源100は必要ではなく、省略することができる。
【0041】
上記の方法に従って、CTR10が値Φ、Φ、ΔΦ、α、α、およびα(ならびに、シリアル相互接続1a上にさらに補償の対象となる点が存在する場合には、追加の同様の量)を決定した後に、シリアル相互接続1a上の信号移送により点Aおよび点Bで生じている位相の変化および大きさの変化を逆転させるために、CTR10は、較正回路5の状態を設定する。望ましい結果は、入力信号発生器2の信号がスイッチ3を通してシリアル相互接続1aに切り替えられると、同相であり、かつ、大きさが等しい点A1および点B1に信号が到達することである。CRT10は、較正回路5の位相のシフトおよび大きさのシフトを適切な値で設定するが、それらの値は、値Φ、Φ、ΔΦ、α、α、およびαから直接計算することができる。例えば、点Xに対する点A1の等化は、点Aに接続されている較正回路5で、Ν*π−Φ(式中、Nは整数である)の位相シフト、および1/αの大きさのスケーリングを設定することにより行われる。このようにして、点A1および点Xにおける位相および大きさが等しくなる。Ν*πの位相シフトを追加することは、実際には、因果的なシステム(時間とともに常に進行する位相)を有することを保証するために必要である。同様に、点A1に対する点B1の等化は、点Aに接続されている回路5で、ΔΦの位相シフトおよびαの大きさのスケーリングを設定し、点Bに接続されている較正回路5で、ゼロ位相シフトおよび等倍の大きさのスケーリングを設定することにより行われる。点Aおよび点Bにおける較正回路5の他の状態も、有効な位相/大きさ較正の結果をもたらし得るため、この較正の選択は一意的ではないことに留意されたい。
【0042】
この第1の方法の重要な特性は、前述したように、信号源100、101、および102の動作周波数を除いて、どのパラメータも、信号源も、他の構成部品も整合させる必要がない、ということである。明らかに、位相/大きさ較正が必要な3つ以上の点を有するシリアル相互接続に、同じ方法を用いることができる。また、上述した以外の事例、入力信号発生器2がXとは異なるノードに接続されているときなどに、この方法を適用することは簡単である。これらの他の事例では、量Φ、Φ、ΔΦ、α、α、およびαの検出プロセスは同じであるが、較正回路5の状態を補償する計算は、異なる等式に基づいており、これらの等式は各事例の特定の伝搬条件によりもたらされる。
【0043】
[シリアル相互接続を較正するための第2の方法]
上述した第1の較正方法の限界は、入力信号発生器2がシリアル相互接続1aを駆動している間、シリアル相互接続1a上の位相の変化/大きさの変化を検出することができない、ということである。さらに、信号源100、101、または102のうちのいずれかをオンにすることにより、入力信号発生器2からの信号の伝搬に干渉し、入力信号発生器からの信号は、PD/MR検出器4の出力において誤差を生じることになる。明らかに、この問題は、位相の変化/大きさの変化を検知すること、および較正後の位相および大きさでシステムを動作させること、の両方のために、同じシリアル相互接続が用いられるという事実の結果である。したがって、シリアル相互接続1aの較正を繰り返すか、または再確認することが必要な場合には、発生器2は、スイッチ3をオフにすることによりシリアル相互接続1aから切断されなければならない。用途によっては、これは受け入れられない。例えば、シリアル相互接続1aがライブ通信ネットワークで使用する信号を伝える場合には、入力信号発生器2のスイッチをオフにすることで通信が中断する。しかも、現場の動作条件により、位相/大きさ較正プロセスの繰り返しを必要とするシリアル相互接続1aの伝送特性が変わる場合がある。第1の方法は、シリアル相互接続の動作を停止せずに、シリアル相互接続を較正する可能性を提供するものではない。
【0044】
次に説明する第2の較正方法は、第1の方法の上記の欠点を是正する。図3に図示されているシステムを用いて、この第2の方法を説明するが、この方法の原理は、図3に示されている実施態様よりも概括的である。単一のシリアル相互接続を用いるのではなく、第2の方法は2つの整合されたシリアル相互接続、すなわち、シリアル相互接続1およびシリアル相互接続1aを用いる。整合された相互接続とは、それらが、伝搬特性において、区分Xについてはシリアル相互接続1上のWと、また、対応する区分X’についてはシリアル相互接続1a上のW’と、それぞれ事実上同一であることを意味する。整合されたシリアル相互接続の単純な実現化は、互いにきわめて接近して(平行に)配置された対称的なレイアウトを用いた、低コストのプリント回路基板(PCB)上の整合された伝送ラインによるものである。
【0045】
図3のシステムと図1のシステムとの間の主な差は、検知シリアル相互接続と動作シリアル相互接続との間が分離していることである。シリアル相互接続1aは、PD/MR検出器4、ならびに信号源100、101、および102を使用する第1の方法において用いられたのと同じ手順で、点X’、A’、B’およびY’の間の位相の変動および大きさの変動を検知するために用いられる。入力信号発生器2は、シリアル相互接続1を駆動することで、この発生器から点X、A、B、およびWを含むシリアル相互接続1のすべての点に信号を伝える。検知動作はシリアル相互接続1a上で行われるので、入力信号発生器2をシリアル相互接続1から切断するのにスイッチは必要ではない。
【0046】
シリアル相互接続1aの点X’、A’、B’、およびW’は、信号伝送の観点から見て点X、A、B、およびWと等しいように選択される。2つのシリアル相互接続は整合されていると仮定されるので、この選択が可能である。したがって、シリアル相互接続1aの任意の2点間の位相差および大きさの差は、シリアル相互接続1の等しい2点間の位相差および大きさの差に等しい。当然、シリアル相互接続1aで検知された位相の変化および大きさの変化を用いて、シリアル相互接続1を較正することが可能であることになる。実際の較正は、CTR10および較正回路5を用いて、第1の方法に従って用いられたのと同じ手順を使用して行われる。明らかに、図3のシステムは、入力信号発生器2からの信号の流れを中断せずに、動作シリアル相互接続1を適宜較正することが可能である。加えて、入力信号発生器2の周波数は、等しい点X’、A’、B’、およびY’にそれぞれ物理的に接近している、点X、A、B、およびYのすべてにおいて、自動的に入手可能である。
【0047】
シリアル相互接続を較正するための第3の方法
上述した第1の方法および第2の方法のいずれにおいても、シリアル相互接続上の点の間の位相差および大きさの差の検知は、それぞれの点からシリアル相互接続上に両方向に信号を送ることにより行われる。前述したように、どの点においても信号の反射がないことが不可欠である。そうでなければ検知誤差が生じる。反射は、第1の方法の説明で示された等式を、実際上予測が非常に困難な方法で変える定常波パターンを生成する。有害な反射が実際に起こり得る最も重要な点は、図3のシステムでは端点X、W、X’およびY’である。これらの反射は、シリアル相互接続を終了する整合が不完全なネットワークが引き金となって生じる。これらの整合ネットワークは、シリアル相互接続上を伝搬する信号の全電力を吸収しなければならないので、たとえわずかな整合誤差であっても、依然として厄介な反射を生成する可能性がある。端点とは異なり、図3の中間点A、B、A’およびB’は、低結合係数で結合器を設計することが可能であるため、著しい反射を生じにくいので、わずかな不整合が存在していたとしても、当然、反射は低減する。第1の較正方法および第2の較正方法については、端点反射の問題は、優良な終端を用いることによってのみ低減することができる。
【0048】
次に説明する第3の較正方法は、第1の較正方法および第2の較正方法の概念を、シリアル相互接続の端点で若干の反射の発生が容認される場合に広げたものである。端部で実質的に完全に整合した(実質的に反射がゼロの)シリアル相互接続を構築することは、端部での整合が良好だが完全ではないシリアル相互接続を構築することよりも困難、かつ高価であるので、この方法は実際上重要である。この第3の方法は、図4に図示されているシステムを用いて、説明することにするが、この方法の原理は、図4に示されているものよりも概括的である。
【0049】
図4のシステムは、3つの整合されたシリアル相互接続、および無指向性結合器ではなく、指向性結合器を使用する。指向性結合器は、特定方向に伝搬する信号だけを結合し、逆方向に伝搬する信号は無視する。シリアル相互接続1が、入力信号発生器2の信号を点AおよびBに伝える(これまでと同様に、一般性を一切失わずに2つの点だけを考慮する)。較正回路5は、シリアル相互接続1上を左から右に伝搬するあらゆる信号を結合するように配置された指向性結合器を通してこれらの信号を受信する。指向性結合器を使用する利点は、右から左へと戻って移動する端点Wからの反射がすべて、結合器によって無視され(実質的に減衰され)、較正回路5に入らないことである。これは、点Wで完全な終端を有することと基本的に同等である。点Wからの反射が端点Xに到達したときに、点Xでの終端が完全でないと、点Wからの反射が左から右の方向に反射して戻る。理論上、これらの2次反射は、較正回路5に入るので、システムで位相の誤差および大きさの誤差を生み出す。しかしながら、実際上、入力信号発生器2の信号がシリアル相互接続1上を順方向、逆方向、そして再び順方向に伝搬する時までには、この長い経路上の損失、および、端点(完全ではないが、適度に良好な終端であると仮定する)での電力吸収は、通常、残存する有害な反射を重要でないレベルまで低減している。
【0050】
シリアル相互接続1上の位相の変化および大きさの変化の検知は、第1の方法および第2の方法と同様であるが、2つの整合されたシリアル相互接続(シリアル相互接続1bおよびシリアル相互接続1c)、および指向性結合器を使用して行われる。シリアル相互接続1bは、点X’と点W’との間の区分で、左から右への信号だけを伝え、また、シリアル相互接続1cは、点X’’と点W’’との間の区分で、右から左への信号だけを伝える。点X、A、B、およびWのセットは、点X’、A’、B’およびW’のセットに等しく、点X’’、A’’、B’’およびW’’のセットにもまた等しい。なぜならシリアル相互接続1、1b、および1cは、区分A〜W、区分A’〜W’、および区分A’’〜W’’にわたって整合されているからである。この実施形態では、接続点X’、A’、およびB’、ならびに接続点X’’、A’’、およびB’’が、それぞれ、相互に電気的に接続されてノードとなり、その結果、接続点X’およびX’’が1つのノードとなり、接続点A’およびA’’が別のノードとなり、接続点B’およびB’’がさらに別のノードとなっている。信号源100、101、および102が、等しい信号をシリアル相互接続1bおよび1cに注入する。区分X〜W、区分X’〜W’、および区分X’’〜W’’が整合されているので、当然、シリアル相互接続1bおよび1cで検知された位相の変化および大きさの変化を用いて、シリアル相互接続1が較正可能であることになる。第1の較正方法および第2の較正方法と比較して、付加された利益は、シリアル相互接続1、1bおよび1cの反射はいずれも、過度ではなく、実用上の誤差を生じないことである。
【0051】
[シリアル相互接続を較正するための第4の方法]
上述した第2の方法および第3の方法では、入力信号発生器2の信号を分配するために用いられるシリアル相互接続1とは異なるシリアル相互接続上の、点の間の位相差および大きさの差を検知している。その結果、シリアル相互接続1a、1bおよび1c上で用いられる較正信号は、シリアル相互接続1上に分配された信号とは異なっている場合がある。例えば、入力信号発生器2の信号が帯域通過変調信号(例えば、典型的な通信信号)である場合には、シリアル相互接続1a、1bおよび1c上の較正信号は、単一の無変調の信号音である可能性がある。この信号音の周波数は、システムで用いられるすべての周波数におけるシリアル相互接続の伝送特性(位相の変化および大きさの変化)が、同じであるか、または考慮する周波数のセット内のある周波数において有効な値から引き出し得るようなものでなければならない。通常、信号音の周波数が帯域通過変調信号の周波数に十分に近似しており、かつ、帯域通過変調信号の帯域幅が限度内にある場合には、これがあてはまる。
【0052】
場合によっては、入力信号発生器2の信号を較正信号としてもまた用いることが可能であろう。単純な例は、入力信号発生器2がCW(連続波)信号を生成するときのLO(局部発振器)分配である。このような場合、第3の方法を図5に示されるように修正して、第4の方法を得ることができる。より具体的には、シリアル相互接続1および1bが、入力信号発生器2の信号を伝え、同時に、第3の方法(図4を参照)におけるシリアル相互接続1bの較正機能を実行する、シリアル相互接続1dに置き換えられている。スイッチ600、601、602、および信号注入回路700、701、701が追加され、入力信号発生器2からの信号を較正のために使用することが可能になっている。スイッチ600、601、および602は、CTR10によって制御されている。スイッチ600、601、および602がそれぞれオンになり、シリアル相互接続1dに信号を注入すると、信号注入回路700、701、および701は、シリアル相互接続1c上の対応する点からそれらを受信する。点X’’、A’’、およびB’’で注入された信号の位相および大きさは、点X、A、およびBにおける信号の位相および大きさにそれぞれ、既知の関係(例えば、それらがシリアル相互接続の整合された部分であるかどうか)で関連付けされなければならない。例えば、点X’’、A’’、およびB’’で注入された信号であれば、点X、A、およびBにおけるシリアル相互接続1上の信号と同じ位相および大きさを有することができる。点X’’、A’’、およびB’’で有害な反射を最小限にするためのさらに良好な選択は、信号の大きさを低減して注入することである。
【0053】
図5に示されている第4の較正方法の動作は、前述した他の較正方法の動作とよく似ているが、この場合では、CTR10は、信号源100、101、および102(図1、2、および4を参照)をオン/オフにするのではなく、他の方法の同じスキームに従って、スイッチ600、601、および602をオン/オフにするという違いがある。点X’’、A’’、およびB’’で注入された信号が、点X、AおよびBにおける信号とそれぞれ等しい場合には、第1の方法に用いられる様々な伝送パラメータ(位相および大きさの比率)間の関係を表す等式は、第4の方法についても同様に有効である。しかしながら、点X’’、A’’、およびB’’で注入された信号が、点X、A、およびBにおける信号に対して異なる関係をそれぞれ有する場合には、様々な伝送パラメータ間の関係を表す等式はそれに応じて変わる。いずれの場合も、等式は簡単な初等代数学により解くことが可能である。
【0054】
[一般化]
シリアル相互接続の位相および大きさ較正のための上記4つの方法から、他の可能性を引き出すことができる。例えば、第1の方法は、第2の整合されたシリアル相互接続を導入するのであれば、指向性結合器とともに適用することができる。これは、図5の第4の方法のシリアル相互接続1cおよび1dを、スイッチ600、601、および602、ならびに信号注入回路700、701、701を用いる代わりに、2つのシリアル相互接続に等しい信号を注入する信号源100、101、および102とともに用いることと同等になる。ちょうど第1の方法の場合と同様に、この変形例は、入力信号発生器2の信号を同時に較正し、分配することはできない。
【0055】
説明した4つの方法は、CW信号よりも複雑な信号とともに用いることが可能であることはすでに述べた。例えば、第4の方法は、変調帯域通過信号とともに適用することができる。しかしながら、その場合には、PD/MR検出器は、適切な信号処理技術を実行しなければならないが、それは、CW信号を用いる場合に適用されるものとは異なる。例えば、これらの信号処理技術は、2つの信号間の位相差および大きさの差を抽出する相関計算に基づく場合もある。同様に、他の技術は、較正プロセスにおけるノイズを低減し、したがって、較正の精度を高めるために、信号源100、101、および102によって供給される適切に変調された較正信号を用いることもまた可能である。
【0056】
[プログラムされたコントローラ]
例示的な一実施形態を示す図6を参照すると、コントローラ(またはプロセッサシステム)は、図示された動作を実行してシリアル相互接続システムを較正するようにプログラムされている。
【0057】
最初に、コントローラは、(必要ならば)スイッチに信号源をシステムから切断させる。信号源が切断された状態で、コントローラは、基準信号をシリアル相互接続システムの一方の端部の第1のノードに注入させる(1000)。いくつかの実施形態では、このノードは、信号源が接続されたノードと同じである。基準信号が第1のノードに注入されている間に、コントローラは検出器に、注入された基準信号と、シリアル相互接続システムの第2の端部ノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定させる(1010)。コントローラは、メモリにこれらの測定値を記録し、較正プロセスの最後に使用する。
【0058】
これらの初期測定を行った後、コントローラは、シリアル相互接続システムに沿って各ノードについて以下の動作を実行する。信号源が切断された状態で、コントローラは、ノードを選択し(1020)、選択されたノードにのみ、基準信号を注入させる(1030)。言いかえれば、基準信号は、選択されたノード以外には、どのノードにも注入されない。基準信号が選択されたノードに注入されている間に、コントローラは検出器に、第1のノードで現れる信号と、シリアル相互接続システムの第2の端部ノードで現われる信号との位相差および大きさの比率を測定させる(1040)。コントローラは、メモリにこれらの測定値を記録し、較正プロセスの最後に使用する。
【0059】
この手順は、すべてのノードについて測定がなされ、記録されるまで、システムの各ノードに対して繰り返される(1050)。
【0060】
手順がすべてのノードに対して完了すると、コントローラは、第1のノードおよび複数の直列に接続されたノードについて測定された位相差および測定された大きさの比率を用いて、複数の直列に接続されたノードのそれぞれについて位相修正および大きさ修正を計算する(1060)。この計算は、前述したように行われる。
【0061】
コントローラが、直列に接続されたノードのすべてについて位相修正および大きさ修正を計算した後、コントローラは、例えば、位相回転子および利得増幅器を適切に、かつ、計算された修正に従って調節することによって、直列に接続されたノードにこれらの修正を適用する(1070)。
【0062】
コントローラがこの一連の動作を完了すると、シリアル相互接続は較正される。環境条件が変化したり、または単に時間が経過したりすると、相互接続が較正から逸脱してしまい、手順を繰り返すことが必要になる。コントローラは、予め定められたある遅延で周期的に、または較正から逸脱する可能性のある変化(例えば、温度および/または湿度の変化)を検出することを、次の較正プロセスのトリガとすることができる(1080)。
【0063】
[フェーズドアレイアンテナシステム設計への適用]
コヒーレントな、位相同期された、大きさが等しい信号を分配するための上記手法は、アナログおよびデジタルフェーズドアレイアンテナシステムの設計に特に適用することができる。これらの概念を適用し得る能動的なアナログフェーズドアレイの一例を図7に示す。このアーキテクチャは、米国特許第8,611,959号明細書に記載のアーキテクチャに類似しており、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0064】
能動的なアンテナアレイは、グリッド上に配置された複数のアンテナ素子150を含み、これらのアンテナ素子は、線形、平面、または表面に対して共形とすることができる。複数のアンテナ素子の物理的な距離はアレイの動作周波数に関係し、概ね送信または受信される信号の平均波長の半分に等しい。これは、アレイが、サイドローブが小さいナロービームを生成するために必要である。典型的なアレイは多数の素子を有するので、基本的には大型の電気システムである。言いかえれば、アレイシステムのサイズは、使用される無線周波数(RF)波長に対して大きい。
【0065】
能動的なアンテナアレイは、複数の能動的なTx/Rxモジュール234もまた含む。各Tx/Rxモジュール234は、送信用のアンテナ素子150の対応する1つを駆動し、その対応する受信用のアンテナ素子150から信号を受信する。こうした目的のために、各Tx/Rxモジュール234は、増幅器、フィルタ、調節可能な移相器30、調節可能な利得段40、およびミキサー70を含む。分配/集約ネットワーク50は、Tx/Rxモジュール234にIF信号を分配し、Tx/Rxモジュール234から受信したIF信号を集約する。別の分配ネットワーク、すなわち、LO分配ネットワーク60は、LO信号源80からTx/Rxモジュール234にLO信号を分配する。各Tx/Rxモジュール234のミキサー7は、分配されたLO信号を用いて、アナログ送信IF信号をRFにアップコンバートするとともに、分配されたLO信号を用いて、受信したRF信号をIFにダウンコンバートする。上述した実施形態では、移相器30(位相回転子とも呼ばれる)が、LO信号経路に位置していることに留意されたい。これにより、これらの構成要素の設計をはるかに容易にすることが可能になる。なぜなら、正弦波信号の位相をシフトすることは、変調された信号の位相をシフトするよりもはるかに容易であるからである。
【0066】
説明を簡単にするために、分配/集約ネットワーク50は、単一のネットワークとして示されているが、説明されている実施形態では、実際には、2つの別個のネットワークである。すなわち、1つはTx/Rxモジュール234にIF信号を分配するためのものであり、1つはTx/Rxモジュール234から受信したIF信号を集約するためのものである。同様に、やはり説明を簡単にするために、Tx/Rxモジュール234内の送信経路および受信経路は、単一の経路として示されているが、説明されている実施形態では、それらは別個の経路である。すなわち、1つは、IF信号をRFにアップコンバートし、そのRF信号を対応するアンテナ素子150に送達するための経路であり、もう1つは、アンテナ素子150から受信したRFをIFにダウンコンバートし、その受信IF信号を、分配/集約ネットワーク50の集約ネットワーク部分に送達するための経路である。
【0067】
アレイシステムは、ベースバンドプロセッサ200と、送信側および受信側を有するIF段90と、をさらに含む。送信中、ベースバンドプロセッサ200は、IF段90の送信側にデジタル信号を送り、この段がデジタル−アナログ変換器およびフィルタを使用して、この信号をアナログIF信号に変換し、分配/集約ネットワーク50のTxの側入力にそのアナログIF信号を印加し、次に、すべてのTx/Rxモジュール234にIF信号を分配する。受信中、分配/集約ネットワーク50のRx側からの集約された受信IF信号は、IF段90の受信側に送達され、この段が受信IF信号をデジタルに変換し、それをベースバンドプロセッサ200に送る。
【0068】
段90を通過するIF信号がベースバンド(ゼロIF)信号である場合には、IF段90およびミキサー70は、複合ブロックである。すなわち、それらは同相(I)信号および直交位相(Q)信号を処理する。本説明では、ゼロ以外のIF値である(すなわち、I/Q処理がない)と仮定しているが、本説明は、ゼロIFの場合にもまた有効である。
【0069】
Tx/Rxモジュール234内の移相器30および利得段40を別々に、かつ、独立して設定するために、かつ/またはそれらの設定を変更するために、2つの制御ブロック、G CTR110およびCTR120がある。これは、通常デジタル制御バス上で行われる。
【0070】
ベースバンドプロセッサ200(または、簡単にするために示されていない他の何らかのデジタルコントローラ)で実行しているプログラムが、制御ブロック110および120を駆動する。すべてのアンテナ素子の位相値および利得値の各セットは、ナロービームまたはより複雑な形状といったような、特定の放射パターンを実施し、前述したように計算された較正修正もまた実施する。これらの位相値および大きさの値のセットを適切に変更することによって、アレイ放射(送信および受信両方とも)は、可動ターゲットを追跡するためのビームステアリング、ビームスキャンニング、ファニング(ビームサイズの変更)などといったような、高度な機能を実施するように成形される。
【0071】
上述の較正技術は、Tx/Rx分配ネットワークだけでなく、フェーズドアレイアンテナシステムなどにおけるLO分配ネットワークにも適用することができる。
【0072】
[フェーズドアレイアンテナシステム較正への適用]
シリアル相互接続を較正するための上記手法は、フェーズドアレイ較正に対してもまた特に適用することができる。一適用例が、図8に図示されている。この図のフェーズアレイシステムは、ベースバンドプロセッサ200と、アレイフレーム201と、複数のアンテナ素子150に結合された複数のTx/Rxモジュール235と、からなる。Tx/Rxモジュール235は、図7のブロック234に類似した標準的な無線周波数(RF)モジュールである。アレイフレーム201は、フェーズドアレイの特定の実装のために必要な回路をすべて含んだブロックである。例えば、図7のアナログフェーズドアレイの場合では、アレイフレーム201は、ネットワーク50と、ネットワーク60と、LO信号源80と、IF段90と、制御ブロック110および120と、を含んでいる。デジタルフェーズドアレイでは、アレイフレーム201は、複数のデータ変換器およびフィルタ、サンプリングクロック回路、デジタル移送回路などを含んでいる。ここで説明する適用は、どのタイプの、すなわち、アナログ、デジタル、またはハイブリッド(一部がアナログで一部がデジタル)のフェーズドアレイに対しても有効である。
【0073】
概して、どんなフェーズドアレイであってもその実現には、送信モードでのベースバンドプロセッサ200からアンテナ素子150までのすべての信号経路、および受信モードでのアンテナ素子150からベースバンドプロセッサ200までのすべて信号経路が、伝搬位相シフト、および大きさ変動の点で、実質的に等しいことが必要である。これは、較正なしでは達成困難である。上述した方法に従って較正されたシリアル相互接続システム202が、この目的のために用いることができる。これは図8に示されている。結合器21が、アンテナ150をシリアル相互接続システム202に結合する。後者は、図1図3図4、または図5の例による較正に必要なすべての回路を含んでいる。ベースバンドプロセッサ200は、制御手段/通信手段203を通して、シリアル相互接続システム202を制御するとともに、シリアル相互接続システムと通信する。
【0074】
フェーズアレイ送信サブシステムの較正のために、ベースバンドプロセッサ200は、フェーズドアレイを通して較正信号を順次すべてのアンテナ素子(すなわち、一度に1つのアンテナ)に送信し、シリアル相互接続システム202から戻るそれぞれの信号を受信する。これらの信号が、結合器21を通して相互接続システム202につながっている。このプロセスを通してベースバンドプロセッサ200が得るすべての位相変動値および大きさの変動値に基づいて、シリアル相互接続システムが較正されるので、ベースバンドプロセッサ200は、ベースバンドプロセッサからそれぞれのアンテナ素子までのフェーズドアレイ全体を通しての、送信経路間の位相差および大きさの差を計算することができる。これらの計算値を用いて、ベースバンドプロセッサ200は、各送信経路の位相および大きさを適切に調節し、それらが等しくなるようにする。
【0075】
フェーズアレイ受信サブシステムの較正のために、ベースバンドプロセッサ200は、シリアル相互接続システム202を通して較正信号を順次すべてのアンテナ素子(すなわち、一度に1つのアンテナ)に送信し、フェーズドアレイを通して戻るそれぞれの信号を受信する。これらの信号は、結合器21を通してフェーズドアレイにつながっている。このプロセスを通してベースバンドプロセッサ200が得るすべての位相変動値および大きさの変動値に基づいて、シリアル相互接続システムが較正されるので、ベースバンドプロセッサ200は、それぞれのアンテナ素子からベースバンドプロセッサまでのフェーズドアレイ全体を通しての、受信経路間の位相差および大きさの差を計算することができる。これらの計算値を用いて、ベースバンドプロセッサ200は、各受信経路の位相および大きさを適切に調節し、それらが等しくなるようにする。
【0076】
他の実施形態が、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8