(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撥液性表面が、平均で少なくとも8個の炭素原子を有する末端ペルフルオロアルキル基、側鎖ペルフルオロアルキル基、及び連続するアルキレン基を含むフルオロケミカル材料を含む、請求項6または7に記載の構成要素。
水との後退接触角が90°〜135°の範囲であって固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含む撥液性表面を備え、前記撥液性表面がテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性であり、前記固体撥液性材料が、シロキサン材料、1500〜50000g/モルのMnを有するフルオロケミカル材料、または200℃以下の融解温度を有するフルオロケミカル材料を含む、スプレー塗布システムの構成要素。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、具体化したスプレー塗布システムを例示する。ガン1は、本体2と、本体の後端から下方に延びるハンドル3と、本体の前端にあるスプレーノズル4とを備える。ガンは、ガンの両側に枢着される引金5によって手動で操作される。液体(例えば、塗料)収容容器6は本体2の上部に配置され、ハンドル3の下端のコネクタ7からノズル4までガンを通って延びる内部通路(不可視)と連通する。使用中、液体(例えば、塗料)は収容容器6に提供される。取り外し可能な蓋8は、(例えば、塗料)液体収容容器6の開放端と係合する。更に、コネクタ7は圧縮空気源(非表示)に接続し、その結果、ユーザーが引金5を引くと、圧縮空気がガンを通ってノズル4まで供給され、液体収容容器6から重力下で送達される塗料を取り込み、霧化する。この時、液体(例えば、塗料)は圧縮空気と共にノズル4からスプレーとして排出される。
【0008】
例えば米国特許第5582350号、米国特許第5267693号、及び欧州特許第0768921号に記載のような、種々のスプレーガンの設計が、具体化されたスプレー塗布システムに使用できる。
【0009】
図2は、液体(例えば、塗料)収容容器6の代わりに
図1のガン1(又は任意の類似のガン)と共に使用できる別の具体化された液体(例えば、塗料)収容容器11の構成要素を例示する。液体(例えば、塗料)収容容器11は、(例えば、手持ち式)スプレーガンへの取り付けに適したサイズで、その底部に空気穴12Aを有しライナー13が装備された、開放容器12を備える。ライナー13は、容器12と形状が一致し、その内側に篏合する。(例えば、取り外し可能な)ライナーは、容器12の上縁と接する開放端に幅細のリム14を有し得る。容器12は、(例えば、使い捨ての)蓋15も有する。蓋15は、典型的には、ライナー13の開放端のリム14に係合し、蓋15が容器12に取り付けられたときに、適所にしっかりと保持される。蓋は、
図3に示されるように、容器にねじ込まれる環状のカラー20によって取り付けできる。
【0010】
液体収容容器6又は液体(例えば、塗料)収容容器11の容器12は、典型的には、任意の好適なサイズの自己支持型(例えば、剛性)の熱可塑性ポリマー材料、例えばポリエチレン又はポリプロピレンから形成される。塗料スプレーガンと使用する場合、250、500又は800mLの容量等の100mL〜1リットルの範囲の容量を有する容器が一般的である。蓋15も、典型的には、熱可塑性ポリマー材料、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成される。蓋は、透明、半透明又は不透明であってもよく、任意に着色されていてもよい。カラー20は、成形された熱可塑性材料であってもよく、又は機械加工された金属(例えば、アルミニウム)であってもよい。いくつかの実施形態では、流体収容容器6及び容器12は、熱可塑性ポリマーの射出成形によって形成される。
【0011】
液体収容容器6、及びライナー13は、典型的には、自己支持型でもあるが、折り畳み可能(すなわち、スプレーガンの操作中に(例えば、塗料)液体がライナー又は液体(例えば、塗料)収容容器から抜き出されたとき折り畳まれる)でもあってよい。一実施形態では、ライナー13又は液体(例えば、塗料)収容容器6は、(例えば、より厚い)剛性底部13A及び(例えば、より薄い)可撓性側壁13Bを有する。この実施形態では、底部は、約250〜400ミクロンの厚さを有してもよい。対照的に、側壁は約100〜250ミクロンの範囲であってよく、いくつかの実施形態では、225、200又は175ミクロン以下である。ライナーが折り畳まれるとき、ライナーは、典型的には、底部よりも側壁が折り畳まれることによって長手方向に折り畳まれる。ライナー13及びいくつかの実施形態の液体(例えば、塗料)収容容器6は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)等の熱可塑性材料のシートを熱/真空成形することによって形成される。ライナー13又は液体(例えば、塗料)収容容器6が折り畳み可能である場合、1回使用又は換言すれば「使い捨て」の構成要素として特徴付けることができる。
【0012】
蓋15は、典型的には、(例えば、中央)開口部16を含み、この開口部からコネクタ管17が延び、その端部に外延部18が設けられ、差し込み接続(すなわち、ソケットに押し込まれた後、回されて適所に固定される係合した取り付け部品)等の接続の一部を形成する。液体(例えば、塗料)収容容器11は、
図3及び
図4に示すように、アダプタ21の使用によってスプレーガン1に取り付けられてもよい。アダプタ21は、一方の端部22で、コネクタ管17への取り付けのための(例えば、差し込み)接続の他の部分と内部で形成される管状構成要素である。アダプタのもう一方の端部23は、スプレーガンの標準的取り付けに適合する形状(典型的には、ねじ山)であってよい。アダプタ21は、機械加工された金属構成要素でもよく、例えば、陽極酸化アルミニウムから作製されてもよい。
【0013】
スプレー塗布システムの使用中、アダプタ21はスプレーガンに(端部23で)しっかりと取り付けられる。ライナー13は、容器12に挿入される。次いで、液体(例えば、塗料)がライナー13に入れられ、蓋15が適所に押し込まれ、カラー20は容器12と密接に係合して(例えば、ねじ込まれて)、蓋を適所に保持する。ライナー13のリム14は、典型的には、
図4に示すように、蓋15と容器12との間の適所に保持される。塗料がライナー13内から除去されると、ライナー内が減圧する結果、
図5に示すようにライナーの側部が折り畳まれる。ライナーの底部は、より剛性であって、その形状を保つことから、ライナーは横断方向よりも長手方向に折り畳まれる傾向があり、それによって、一部の塗料がライナー内に閉じ込められる可能性が低下する。
【0014】
ライナー13は、典型的には平滑な(例えば、連続的な)内側表面を有し、液体(例えば、塗料)の保持を増大すると考えられる構造がない。それ故、ライナーは、典型的には、側壁13Bと底部13Aの内部接合部に、プリーツ、波、継目、目地、まち、又は溝等の平坦面からの不連続部(突起部又は圧痕)がない。更に、ライナーは、容器12の内側と容積測定的に一致する。
【0015】
液体(例えば、塗料)は、ライナー13内又は液体(例えば、塗料)収容容器6内で混合され得る。混合収容部としての使用を容易にするため、容器12又は液体(例えば、塗料)収容容器6の側壁に、マーキング25(
図2及び
図3)を付し、容器内の内容物の体積を確認できるようしてもよい。
【0016】
流体収容容器6、容器12、及びライナー13は、不透明であってもよいが、かかる構成要素は、好ましくは、壁を通して液体を目視観察できるように、透明又は半透明である。これも、流体収容容器6、又は容器12及びライナー13の混合収容部としての使用を容易にする。
【0017】
液体収容容器6又はライナー13に収容された液体(例えば、塗料)は、多くの場合、手で混合される。手で混合することは、空気閉じ込めを避けるために有益となり得る。手で混合した場合、液体収容容器6又はライナー13の内面はまた、典型的には大きな混合力に曝されない。しかし、混合容器の側壁は、全てのトナーが十分に混合されることを確実とするために、「こそげられる」(scraped)場合がある。
【0018】
いくつかの実施形態では、ライナーは、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び/又はこれらのブレンド等であるがこれらに必ずしも限定されない材料から、熱成形、射出成形、吹込み成形される(又は何らかのその他のプラスチック加工技法を用いて成形される)。好適なライナー構成要素は、3M Company(St.Paul,MN)より商品名「3M PPS PAINT PREPARATION SYSTEM」で市販されている。
【0019】
不要な粒子が存在しないことを確実とするため、液体(例えば、塗料)は、典型的には、スプレー塗布システムの使用中に(例えば、塗料)液体が液体収容容器6又はライナー13からスプレーノズルまで通過する際に(例えば、取り外し可能な)フィルターを通過する。かかるフィルターは、さまざまな場所に位置付けることができる。一実施形態では、
図4に示すように、開口部16はフィルターメッシュ19によって覆われ、上記フィルターメッシュは開口部に押し嵌めされてもよく、蓋15の一体部分であってもよい。別の実施形態では、フィルターは、国際公開第98/32539号の
図12に記載及び図示されるように、液体収容容器6内に設けられてもよい。
【0020】
図1〜7並びに8及び11は、例示的な液体(例えば、塗料)収容容器、液体収容容器ライナー、液体(例えば、塗料)収容容器及びライナー用の蓋の例を示す。かかる構成要素は、スプレー塗布システムの技術分野で知られるような、例えば国際公開第98/32539号に記載のような、種々のその他の適応形態を任意に含んでもよい。
【0021】
本発明では、スプレー塗布システムの構成要素(例えば、液体収容容器、液体収容容器ライナー、液体収容容器若しくはライナー用の蓋、又はこれらの組み合わせ)は、撥液性表面(例えば、層)を備える。撥液性表面層は、かかる構成要素のうちの少なくとも1つの表面の一部に存在してもよく、又は撥液性表面層は、使用中に液体(例えば、塗料)と接触する表面全体に存在してもよい。液体収容容器、ライナー、蓋等の外面は本明細書に記載の撥液性表面層を備えてもよいが、典型的な実施形態では、かかる構成要素のうちの少なくとも1つの内面が、撥液性表面層を備える。
【0022】
図7を参照すると、物品100は、基材110(例えば、ライナー、液体収容容器、又は蓋)と、基材の表面(例えば、塗料又はその他の液体に接触する表面)に配置された多孔質層128を含む液体(例えば、塗料)撥性表面と、表面処理された多孔質層の孔125内に配置された潤滑剤150とを備えた、スプレー塗布システムの構成要素である。表面処理された多孔質層(128を有する120)は、基材110と浸透した潤滑剤150との間に位置付けられる。しかしながら、いくつかの実施形態では、多孔質層の部分は潤滑剤の谷部分によって囲まれた最も外側の表面であることは明らかである。
【0023】
1つの好ましい実施形態では、多孔質層は、多孔質三次元ネットワークを形成するように配置された複数の焼結無機酸化物(例えば、シリカ)粒子125を含む。多孔質層は、多孔質三次元ネットワーク上に配置された疎水性層128を備える。疎水性層は概ね、スプレー塗布システムの基材又は構成要素上に(例えば、接触して)配置された多孔質層の表面に対して、反対側の多孔質層の表面上に配置される。それ故、多孔質層は、基材又は構成要素上に配置された1つの主表面と、潤滑剤が浸透した疎水性コーティングを含む反対側の主表面という、2つの主表面を有すると考えることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、多孔質層は、焼結無機酸化物粒子の多孔質ネットワークを含む。典型的な実施形態では、無機酸化物粒子は、シリカを含むか、シリカからなる。しかし、アルミナ、チタニア等の種々のその他の無機酸化物粒子を、シリカの代わりに、又はシリカと組み合わせて、使用してもよい。
【0025】
用語「ナノ粒子」は、大きさがサブミクロンである粒子を指す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、500ナノメートル以下、200ナノメートル以下、100ナノメートル以下、75ナノメートル以下、50ナノメートル以下、40ナノメートル以下、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、10ナノメートル以下、又は5ナノメートル以下の平均粒径(典型的に、粒子の平均最大寸法を指す)を有する。
【0026】
平均粒径は、多くの場合、透過型電子顕微鏡を使用して決定されるが、さまざまな光散乱法も使用することができる。平均粒径は、多孔質層コーティングを形成するために使用されるナノ粒子の平均粒径を指す。つまり、平均粒径は、
図1Aに示すような、焼結前の無機酸化物ナノ粒子の平均粒径を指す。
【0027】
いくつかの実施形態では、多孔質層は、ヒュームドシリカ等の熱焼結した無機酸化物ナノ粒子を含む。ヒュームドシリカは、有利には、より小さい非凝集ナノ粒子と比べて低コストである。ヒュームドシリカは、Evonikからの商品名「Aerosil」、Cabotからの商品名「Cab−O−Sil」、及びWacker Chemie−Dow Corning等の、種々の供給業者から市販されている。ヒュームドシリカは、分枝状、鎖状の三次元二次凝集体粒子へと融合した(fused)非晶質シリカの微小液滴からなる。それ故、ヒュームドシリカ凝集体は、しばしば一次粒子と呼ばれ、典型的には約5〜50nmの範囲のサイズのサブ粒子を含む。更に、凝集体は粒塊となり得る。したがって、凝集体及び粒塊の粒径は、かなり大きい。例えば、(凝集体及び粒塊の)平均粒径は、典型的には、(音波処理なしで)10ミクロンを超える。更に、90秒の音波処理後の平均凝集体粒径は、典型的には0.3〜0.4ミクロンの範囲である。ヒュームドシリカを液体媒体に混合するエネルギーは、概ね、90秒の音波処理よりも小さい。したがって、液体媒体中及びその乾燥コーティングのヒュームドシリカの粒径は、凝集体粒径(例えば、0.3〜0.4ミクロン)と音波処理なしの粒径(10ミクロン)との間の範囲と推測される。
【0028】
特定の実施形態では、二峰性の粒径分布を使用してもよい。例えば、少なくとも150又は200ナノメートルの平均粒径を有するナノ粒子又は粒子を、100、80、50、40、30、20、又は10ナノメートル以下の平均(非凝集)粒径を有するナノ粒子と組み合わせて使用してもよい。より小さいサイズの焼結ナノ粒子は、より大きい粒径の「レンガ」に対する「モルタル」と考えることができる。より小さいナノ粒子と大きいナノ粒子との重量比は、2:98〜98:2の範囲、5:95〜95:5の範囲、10:90〜90:10の範囲、又は20:80〜80:20の範囲であってもよい。この実施形態において、より大きいサイズの粒子は、ヒュームドシリカであってもよい。より大きい無機酸化物粒子の粒径は、典型的には、30、25、20又は15ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、多孔質層は、10ミクロンを超える粒径を有する粒子を含まない。
【0029】
より大きい粒子を含むことで、多孔率(porosity)が増大し、コストが低減される可能性がある。しかしながら、より大きい粒子の使用は、薄く均一な多孔質層の提供を減じる。更に、より大きい粒子は、曇った外観を有する多孔質層及び撥性コーティングを生じ得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、(例えば、シリカ)ナノ粒子は、好ましくは、100、80、50、40、30、20又は10ナノメートル以下である平均粒径(すなわち、最大寸法)を有する。この実施形態では、多孔質層は、100、200、300、400、又は500ナノメートルを超える平均粒径を有する粒子、例えば、ヒュームドシリカを含まなくてもよい。
【0031】
多孔質層コーティング組成物を調製するために使用される(例えば、シリカ)無機酸化物粒子は、任意の所望の形状又は形状の混合物を有することができる。(例えば、シリカ)粒子は、任意の所望のアスペクト比を有する球状又は非球状(すなわち、針状)であってもよい。アスペクト比は、針状粒子の平均最小寸法に対する粒子の平均最大寸法の比を指す。針状(例えば、シリカ)粒子のアスペクト比は、多くの場合、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、又は少なくとも10:1である。いくつかの針状粒子は、棒、楕円、針等の形状である。粒子の形状は、規則的でも不規則でもよい。コーティングの多孔率は、組成物中の規則的及び不規則な形状の粒子の量を変更することによって、並びに/又は組成物中の球状及び針状の粒子の量を変更することによって、変えることができる。
【0032】
(例えば、シリカ)ナノ粒子が球状である実施形態では、平均直径は、多くの場合、50ナノメートル未満、40ナノメートル未満、25ナノメートル未満、又は20ナノメートル未満である。いくつかのナノ粒子は、10ナノメートル未満又は5ナノメートル未満等の、更に小さい平均直径を有することができる。
【0033】
(例えば、シリカ)ナノ粒子が針状である実施形態では、それらは、多くの場合、少なくとも1ナノメートル、少なくとも2ナノメートル、又は少なくとも5ナノメートルに等しい平均幅(最小寸法)を有する。針状(例えば、シリカ)ナノ粒子の平均幅は、多くの場合、25ナノメートル以下、20ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下である。針状ナノ粒子は、例えば、少なくとも40ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも75ナノメートル、又は少なくとも100ナノメートルである、動的光散乱法によって測定される平均長D
1を有してよい。平均長D
1(例えば、より長い寸法)は、最大200ナノメートル、最大400ナノメートル、又は最大500ナノメートルであってもよい。針状ナノ粒子は、米国特許第5,221,497号(Watanabe et al.)に記載されているように、5〜30の範囲の伸長度D
1/D
2を有してもよく、式中、D
2は、等式D
2=2720/Sによって計算される直径(ナノメートル)を意味し、Sは、ナノ粒子の比表面積(1グラム当りの平方メートル(m
2/グラム))を意味する。
【0034】
いくつかの実施形態では、粒子(例えば、ナノ粒子)は、典型的には、少なくとも150m
2/グラム、少なくとも200m
2/グラム、少なくとも250m
2/グラム、少なくとも300m
2/グラム、又は少なくとも400m
2/グラムに等しい平均比表面積を有する。他の実施形態では、粒子(例えば、ナノ粒子)は、典型的には、少なくとも500m
2/グラム、少なくとも600m
2/グラム、又は少なくとも700m
2/グラムに等しい平均比表面積を有する。
【0035】
(例えば、シリカ)無機酸化物ナノ粒子は、典型的には、ゾルの形態で市販されている。球形シリカナノ粒子を含む水性シリカゾルのいくつかの例は、E.I.DuPont de Nemours and Co.,Inc.(Wilmington,DE)から LUDOX(例えば、LUDOX SM)の商品名で市販されている。他の水性シリカゾルは、Nyacol Co.(Ashland,MA)からNYACOLの商品名で市販されている。更に他の水性シリカゾルは、Ondea Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)からNALCO(例えば、NALCO1115、NALCO2326、及びNALCO1130)の商品名で市販されている。また他の水性シリカゾルは、Remet Corporation(Utica,NY)からREMASOL(例えば、REMASOL SP30)の商品名、及びSilco International Inc(Portland,OR)からSILCO(例えば、SILCO LI−518)の商品名で、市販されている。
【0036】
好適な非球形(すなわち、針状)無機酸化物ナノ粒子も、水性ゾルの形態で入手できる。いくつかの針状シリカナノ粒子ゾルは、日産化学工業株式会社(日本国東京)からスノーテックスの商品名で入手できる。例えば、スノーテックスUPは、長さが40〜300ナノメートルの範囲の約9〜15ナノメートルの範囲の直径を有するシリカナノ粒子を含有する。スノーテックスPS−S及びスノーテックスPS−Mは、ビーズ形態の鎖を有する。スノーテックスPS−M粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、長さ80〜150ナノメートルである。スノーテックスPS−Sは、粒径10〜15nm、長さ80〜120nmである。
【0037】
多孔質層内の粒子は焼結される。少なくともいくつかの隣接する無機酸化物粒子は、それらを一緒に接合する無機酸化物(例えば、シリカ)「ネック」等の結合を有する傾向がある。つまり、少なくともいくつかの隣接する粒子は、一緒に接合(例えば、融合)して、三次元多孔質ネットワークを形成する傾向がある。
図1Bは、焼結ナノ粒子を含む多孔質層の一例の透過型電子顕微鏡写真である。焼結は、粒子を互いに結合するために使用されることから、焼結粒子の多孔質層は、典型的には、粒子を構成要素に固定することを目的とする有機(例えば、ポリマー)バインダーを含まない。それ故、焼結多孔質層の無機酸化物含有量は、典型的には、少なくとも90、95、96、97、98、99又は100重量%である。
【0038】
用語「ネットワーク」は、無機酸化物(例えば、シリカ)粒子を一緒に連結することによって形成された連続する三次元構造を指す。用語「連続する」は、多孔質層が、疎水性層及び浸透した潤滑剤と共に、所望の撥水性又はその他の流体に対する撥性(repellency:反撥)を提供し得るように、個々の粒子が十分な寸法(例えば、面積)にわたって連結されることを意味する。典型的な実施形態では、多孔質層には、焼結多孔質層が構成要素上に存在する領域に隙間又は不連続がない。しかしながら、その存在が所望の撥性を損なわないという条件で、いくらかの不連続又は隙間が存在してもよい。
【0039】
用語「多孔質」は、(例えば、連続する)多孔質層コーティング内の個々の(例えば、シリカ)粒子間に空隙が存在することを指す。(乾燥)焼結粒子のネットワークは、20〜50体積%、25〜45体積%、又は30〜40体積%の多孔率を有する。多孔率は、W.L.Bragg and A.B.Pippard,Acta Crystallographica,6,865(1953)等に公表されている手順に従って、多孔質層コーティングの屈折率から算出できる。多孔率は、表面の粗度と相関する傾向がある。いくつかの実施形態では、多孔率は、50体積%を超えてもよい。表面の多孔率は、多くの場合、より大きい平均粒径の(例えば、シリカ)粒子を使用することにより、又は異なる形状の粒子の混合物を使用することにより増大し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、焼結ナノ粒子は酸焼結(例えば、シリカ)ナノ粒子である。この実施形態では、多孔質層は、3.5以下のpKa(H
2O)を有する酸を含有するコーティング組成物から調製される。4を超えるpKaを有する酸(例えば、酢酸)のような、より弱い酸を使用すると、均一性のより低いコーティングが生じる可能性がある。具体的には、酢酸等の弱酸を含むコーティング組成物は、典型的には、構成要素の表面上でビーズ状になる。コーティング組成物に添加される酸のpKaは、多くの場合、3未満、2.5未満、2未満、1.5未満、又は1未満である。多孔質コーティング組成物のpHを調節するために用いることができる有用な酸としては、有機酸及び無機酸の両方が挙げられる。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、H
2SO
3、H
3PO
4、CF
3CO
2H、HCl、HBr、HI、HBrO
3、HNO
3、HClO
4、H
2SO
4、CH
3SO
3H、CF
3SO
3H、CF
3CO
2H、及びCH
3SO
2OHが挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態では、酸は、HCl、HNO
3、H
2SO
4、又はH
3PO
4である。いくつかの実施形態では、有機酸と無機酸との混合物を提供することが望ましい。市販の酸性シリカゾルを使用する場合、より強い酸を添加することで多孔質層の均一性を改良することができる。
【0041】
焼結ナノ粒子が酸焼結(例えば、シリカ)ナノ粒子である実施形態では、コーティング組成物は、概ね、5以下のpHをもたらすのに十分な酸を含有する。pHは、多くの場合、4.5以下、4以下、3.5以下、又は3以下である。例えば、pHは、多くの場合、2〜5の範囲である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、最初にpHを5未満に低下させた後に、5〜6の範囲のpHに調節してもよい。このpHの調節は、pH感応性がより高い構成要素のコーティングを可能にする。
【0042】
酸性化(例えば、シリカ)ナノ粒子を含有する多孔質層コーティング組成物は、通常、構成要素の表面に塗布され、その後乾燥される。多くの実施形態では、多孔質層コーティング組成物は、(a)40ナノメートル以下の平均粒径(すなわち、酸焼結前の平均粒径)を有する(例えば、シリカ)ナノ粒子、及び(b)3.5以下のpKa(H
2O)を有する酸、を含有する。多孔質層コーティング組成物のpHは、多くの場合、5以下、例えば2〜5のpH範囲である。
【0043】
酸性化(例えば、シリカ)ナノ粒子は、pHが2〜4の範囲であるときに安定な外観を示す。光散乱測定は、2〜3の範囲のpH、10重量%シリカナノ粒子の濃度の酸性化シリカナノ粒子が1週間以上又は1ヶ月以上の間同じ大きさを維持できることを示した。そのような酸性化多孔質層コーティング組成物は、シリカナノ粒子の濃度が10重量%より低い場合、更に長く安定を保つと予想される。
【0044】
他の実施形態では、焼結ナノ粒子は塩基焼結(例えば、シリカ)ナノ粒子である。この実施形態では、多孔質層は、8、8.5、9、9.5、又は10を超えるpHを有するナノ粒子ゾルから調製することができ、焼結ナノ粒子は、塩基焼結(例えば、シリカ)ナノ粒子として特徴付けられてもよい。
【0045】
好適な有機塩基としては、アミジン、グアニジン(ビグアニド等の置換グアニジンを含む)、ホスファゼン、プロアザホスファトラン(Verkade塩基としても既知である)、水酸化アルキルアンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。自己プロトン化可能な形態の塩基(例えば、アルギニン等のアミノ酸)は、このような形態が少なくとも部分的に自己中和される傾向がある形態であることから、通常、あまり好適ではない。好ましい塩基としては、アミジン、グアニジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
有機塩基は、硬化性組成物中で単独で(個別に)又は1つ以上の異なる塩基の混合物(異なる構造種からの塩基を含む)の形態で使用され得る。所望であれば、塩基は、潜在的形態で、例えば、熱に曝露するとin situで塩基(複数可)を生成する活性化可能な組成物の形態で、存在し得る。
【0047】
有用なアミジンとしては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
【化1】
式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホン等の酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又は硫黄を含む)及びこれらの組み合わせから選択され、R1、R2、R3及びR4のうちの任意の2つ以上は、一緒に結合して、環構造(好ましくは五員環、六員環又は七員環、より好ましくは六員環又は七員環)を任意に形成することができる。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する。
【0048】
少なくとも1つの環構造を含むアミジン(すなわち、環式アミジン)が一般的には好ましい。2つの環構造を含む環式アミジン(すなわち、二環式アミジン)がより好ましい。
【0049】
有用なアミジン化合物の代表例としては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−n−プロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−イソプロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−n−プロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−イソプロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいアミジンとしては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、及びこれらの組み合わせが挙げられ、DBU、DBN、及びこれらの組み合わせがより好ましく、DBUが最も好ましい。
【0050】
その他の有用な有機塩基は、参照により本明細書に援用される、国際公開第2013/127054号に記載されている。
【0051】
多孔質層は、概ね、無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子ゾルを構成要素の表面にコーティングすることによって調製される。ゾルは、連続液体媒体中のナノ粒子のコロイド懸濁液である。それ故、ゾルは、コーティング組成物として利用される。ゾルは、典型的には、水、又は水と水混和性有機溶媒との混合物を含む。好適な水混和性有機溶媒は、さまざまなアルコール(例えば、エタノール又はイソプロパノール)及びグリコール(例えば、プロピレングリコール)、エーテル(例えば、プロピレングリコールメチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン)、並びにエステル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含むが、これらに限定されない。多孔質層コーティング組成物に含まれる(例えば、シリカ)ナノ粒子は、典型的には、表面改質されていない。
【0052】
いくつかの実施形態では、複数の反応性シリル基を含有する任意のシランカップリング剤が、多孔質層コーティング組成物に添加され得る。カップリング剤のいくつかの例としては、テトラアルコキシシラン(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS))及びポリケイ酸アルキル(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン))等のテトラアルコキシシランのオリゴマー形態が挙げられるが、これらに限定されない。これらのカップリング剤は、少なくともいくつかの実施形態では、シリカ粒子間の結合を改善し得る。カップリング剤は、添加される場合、典型的には、シリカ粒子の重量に対して、1〜10又は1〜5重量%の量で多孔質層コーティング組成物に添加される。しかし、典型的な実施形態では、多孔質層(すなわち、疎水性層の付着前)は、テトラアルコキシシラン(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS))及びポリケイ酸アルキル(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン))等のテトラアルコキシシランのオリゴマー形態のようなシランカップリング剤を含まない。
【0053】
ゾルコーティング組成物は、任意の構成要素に直接塗布され得る。構成要素は、有機材料(例えば、ポリマー)又は無機材料(例えば、ガラス、セラミック、又は金属)であってもよい。構成要素表面の表面エネルギーは、コロナ放電又は火炎処理法等の方法を使用してコーティングする前に構成要素表面を酸化させることによって増加させることができる。これらの方法はまた、多孔質層の構成要素への接着も改良し得る。構成要素の表面エネルギーを増大させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティング等のプライマー層の使用が挙げられる。別の方法としては、多孔質層コーティング組成物の表面張力は、低級アルコール(例えば、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコール)の添加により減少させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、界面活性剤が(例えば、ゾル)コーティング組成物に含まれてもよい。界面活性剤は、親水性(極性)及び疎水性(非極性)領域の両方を有し、かつ多孔質層コーティング組成物の表面張力を減少させることができる分子である。有用な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2013/0216820号、米国特許出願公開第2014/0120340号及び国際公開第2013/127054号に記載のような、種々の界面活性剤を利用してよい。
【0055】
添加される場合、界面活性剤は、典型的には、多孔質層コーティング組成物の総重量に対して、最大5重量%の量で存在する。例えば、量は、最大4重量%、最大2重量%、又は最大1重量%であってもよい。界面活性剤は、典型的には、少なくとも0.001重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%に等しい量で存在する。しかしながら、いくつかの実施形態では、多孔質層は界面活性剤を実質的に含まない。界面活性剤は、多孔質層の構成要素及び/又は疎水性層への接着を妨害し得る。
【0056】
(例えば、ゾル)コーティング組成物は、典型的には、例えば、バーコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、輪転グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、又はディップコーティング法等の従来の技法を使用して、構成要素の表面に塗布される。バーコーティング、ロールコーティング、及びナイフコーティング等のコーティング技法は、多くの場合、コーティング組成物の厚みを調整するために使用される。コーティング組成物は、構成要素の1つ以上の側面にコーティングされ得る。
【0057】
多孔質層の平均乾燥コーティング厚は、使用される特定の多孔質層コーティング組成物に依存する。一般的に、乾燥焼結多孔質層の平均厚さは、典型的には、少なくとも25、30、35、40、45又は50nmであり、多くの場合、約5、4、3、2、又は1ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、厚さは、500、400、又は300nm以下である。その他の実施形態では、厚さは、250、200、又は100nm以下である。厚さは、Gaertner Scientific Corp.のモデル番号L115C等の楕円偏光計を使用して測定され得る。多孔質層の機械特性は、多くの場合、厚さが増すと改善される。
【0058】
実際のコーティング厚は、ある特定の点から別の点までかなり変動する場合があるが、多くの場合、構成要素の表面にわたって均一に多孔質層コーティング組成物を塗布することが望ましい。いくつかの実施形態では、平均コーティング厚さを、200Å以内、150Å以内、又は100Å以内に制御することが望ましい場合がある。ナノ粒子及びそれよりも大きい粒子の粒径は、薄い、均一なコーティングを実現する能力に影響する。それ故、いくつかの実施形態では、コーティングの厚さは、ナノ粒子及びそれよりも大きい粒子の最大粒径よりも大きい。
【0059】
コーティング組成物は、構成要素に塗布されると、典型的には、20℃〜250℃の範囲の温度で乾燥される。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、225℃、200℃、175℃、150℃、125℃又は100℃以下の温度で乾燥される。空気又は窒素等の不活性ガスが循環するオーブンが、乾燥目的で使用されることが多い。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてもよいが、構成要素への損傷を避けるために注意を払うべきである。無機構成要素の場合、乾燥温度は200℃より高くなり得る。乾燥多孔質層は、乾燥プロセス後に残る多孔質層を指す。
【0060】
(例えば、ゾル)コーティング組成物が構成要素に塗布された後、ゾルが乾燥するにつれてゲル化材料が形成され、(例えば、シリカ)酸性化ナノ粒子が焼結して、連続するネットワークを形成する。それ故、この実施形態では、乾燥温度は、焼結が起こる温度でもある。顕微鏡写真は、シランカップリング剤等の他のケイ素含有材料の不在下でも生成する隣接するナノ粒子間での「ネック」の形成を示す。これらのネックの形成は、シロキサン結合の生成及び切断における強酸又は強塩基の触媒作用に起因する。
【0061】
あるいは、十分な耐熱性を有する基材又は構成要素では、無機酸化物(シリカ)粒子を、典型的には実質的に200℃を超える温度で熱焼結することができる。例えば、300℃、400℃、又は500℃を超え1000℃までの範囲の温度で(例えば、シリカ)粒子を熱焼結することは一般的である。
【0062】
乾燥多孔質層は、多孔質層の環境に存在する気中水分と多孔質層との平衡に典型的に関連する水の量等の、ある程度の水を含有し得る。この水の平衡量は、典型的には、乾燥多孔質層の総重量に対して、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下である。
【0063】
焼結無機酸化物(例えば、シリカ)粒子の三次元ネットワークは、耐久性の観点から好ましい多孔質層であるが、当該技術分野において記載されているように、種々の他の多孔質層も、潤滑剤浸透に好適である。例えば、米国特許出願公開第2014/0147627号に記載のように、多孔質層は、別の方法として、溶媒を乾燥すると多孔質層内に集まる粒子/ナノ粒子のエマルションを噴霧することによって形成できる。更に、多孔質層は、電着、機械的粗面化(例えば、ブラスト処理)、ドライエッチング、及びポリマー繊維紡績によっても製造できる。一実施形態では、多孔質層は、構成要素の表面を溶媒(例えば、アセトン)に曝露することによって形成される。例えば、溶媒は、結晶化を誘発することによってテクスチャーを付与する場合がある(例えば、ポリカーボネート製液体収容容器は、アセトンに曝露したときに結晶化する場合がある)。更に別の実施形態では、多孔質層は、粒子/ナノ粒子、溶媒、及びポリマー有機バインダーから形成し得る。
【0064】
疎水性層は、焼結無機酸化物(例えば、シリカ)粒子の多孔質三次元ネットワークの表面上に配置される。疎水性層は、記載のような他の方法によって形成された多孔質層の表面上にも配置され得る。これは、(例えば、焼結)多孔質層の表面を疎水性材料でコーティングすることにより達成される。
【0065】
疎水性材料の選択は、典型的には潤滑剤の選択に基づく。典型的な実施形態では、疎水性層は、潤滑剤と同じ化学的分類の材料を含む。例えば、疎水性層がフッ素化材料(例えば、フッ素化基を含む)を含む場合、潤滑剤は典型的にはフッ素化液体である。同様に、疎水性層が炭化水素材料(例えば、炭化水素基を含む)を含む場合、潤滑剤は典型的には炭化水素液体である。更に、疎水性層は、シラン又はシロキサン材料(長鎖アルキル基を含まない)を含み、潤滑剤は典型的にはシリコーン流体である。
【0066】
いくつかの実施形態では、疎水性層は、ポリジメチルシロキサン等の有機ポリマー材料又はテトラフルオロエチレンを任意にヘキサフルオロプロピレン及び/若しくはフッ化ビニリデンとの組み合わせで含むフルオロポリマーを含んでもよい。
【0067】
しかしながら、典型的な実施形態では、疎水性層は多孔質層に結合している。この実施形態では、疎水性層は、一般式A−B又はA−B−Aを有する化合物を含み、式中Aは焼結(例えば、シリカ)粒子と結合することができる無機基であり、Bは疎水性基である。いくつかの実施形態では、Aは、反応性シリル基である。(例えば、シラン)疎水性表面処理化合物は、典型的には、−Si−O−Si−結合を介して多孔質層に共有結合される。好適な疎水性基としては、脂肪族又は芳香族炭化水素基、ポリフルオロエーテル、ポリフルオロポリエーテル及びペルフルオロアルカン等のフッ素化基が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態では、疎水性層を形成するために使用されるシラン化合物は、式(I)のものである。
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
z
(I)
式(I)において、基R
fは、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカンのz価の基(すなわち、R
fは、(a)ペルフルオロエーテルの一価若しくは二価の基、(b)ペルフルオロポリエーテルの一価若しくは二価の基、又は(c)ペルフルオロアルカンの一価若しくは二価の基)である。基Qは、単結合、二価結合基、又は三価結合基である。各基R
1は、独立して、水素又はアルキルである。各基R
2は、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。各基R
3は、独立して、非加水分解性基である。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。変数yは、1又は2に等しい整数である。変数zは、1又は2に等しい整数である。
【0069】
基R
fは、ポリエーテルのz価の基、ペルフルオロポリエーテルのz価の基、又はペルフルオロアルカンのz価の基である。本明細書で使用される、用語「z価の基」は、変数zと等しい価数を有する基を指す。zは、1又は2に等しい整数であるため、z価の基は、一価又は二価の基である。よって、R
fは、(a)ペルフルオロエーテルの一価若しくは二価の基、(b)ペルフルオロポリエーテルの一価若しくは二価の基、又は(c)ペルフルオロアルカンの一価若しくは二価の基、である。
【0070】
式(I)中の変数zが1に等しい場合、フッ素化シランは、基R
fが一価の基である、式(Ia)のものである。
R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
(Ia)
このような化合物は、式−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
yの単一の末端基が存在するため、単足性フッ素化シランと呼ぶことができる。変数yが1に等しい場合、単一のシリル基が存在し得、又は変数yが2に等しい場合、2つのシリル基が存在し得る。
【0071】
式(I)中の変数zが2に等しい場合、フッ素化シランは、基R
fが二価の基である、式(Ib)のものである。
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y]
2
(Ib)
このような化合物は、式−Q−[C(R
1)−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
yの2つの末端基が存在するため、二脚性フッ素化シラン(bipodal fluorinated silane)と呼ぶことができる。各末端基は、変数yが1に等しい場合、単一のシリル基を有することができ、又は変数yが2に等しい場合、2つのシリル基を有することができる。式(Ib)は、R
f基の二価の性質を強調する以下の同等の式として書くことができる。
[(R
3)
x(R
2)
3−xSi−C(R
1)
2]
y−Q−R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
【0072】
任意の適切なペルフルオロ化基がR
fに使用され得る。ペルフルオロ化基は、典型的には、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルカンの一価又は二価の基である。この基は、単一の炭素原子を有することができるが、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも8個の炭素原子、又は少なくとも12個の炭素原子を有する。R
f基は、多くの場合、最大300個若しくはそれ以上の炭素原子、最大200個の炭素原子、最大100個の炭素原子、最大80個の炭素原子、最大60の炭素原子、最大50の炭素原子、最大40の炭素原子、最大20の炭素原子、又は最大10の炭素原子を有する。R
f基は、通常、飽和であり、直鎖、分枝鎖、環式(例えば、脂環式)、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0073】
ペルフルオロエーテル又はペルフルオロポリエーテルの一価基又は二価基であるR
f基は、多くの場合、−C
bF
2bO−、−CF(Z)O−、−CF(Z)C
bF
2bO−、−C
bF
2bCF(Z)O−、−CF
2CF(Z)O−、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのペルフルオロ化単位を含有する。変数bは、少なくとも1に等しい整数である。例えば、変数bは、1〜10の範囲、1〜8の範囲、1〜4の範囲、又は1〜3の範囲の整数であってもよい。基Zは、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロエーテル基、又はペルフルオロポリエーテル基である。これらのZ基のいずれかは、直鎖、分枝鎖、環式、又はこれらの組み合わせであってもよい。例示的なペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロエーテル、及びペルフルオロポリエーテルのZ基は、多くの場合、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。Zのペルフルオロポリエーテル基は、例えば、最大10個の酸素原子、最大8個の酸素原子、最大6個の酸素原子、最大4個の酸素原子、又は最大3個の酸素原子を有することができる。いくつかの実施形態では、Zは、−CF
3基である。
【0074】
一価のペルフルオロエーテル基は、一般式R
f1−O−R
f2−であり、ここでR
f1はペルフルオロアルキルであり、R
f2はペルフルオロアルキレンである。R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子を有し、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。基R
f1及びR
f2は、それぞれ独立して、最大50個の炭素原子、最大40個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大25個の炭素原子、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大4個の炭素原子、又は最大3個の炭素原子を有することができる。多くの実施形態では、ペルフルオロアルキレン基及び/又はペルフルオロアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。
【0075】
一価のペルフルオロエーテル基は、多くの場合、式C
bF
2b+1O−、CF
2(Z
1)O−、CF
2(Z
1)C
bF
2bO−、C
bF
2b+1CF(Z
1)O−、又はCF
3CF(Z
1)O−[式中、bは上に定義されたものと同一である]の末端基(すなわち、R
f1−O−基)を有する。基Z
1は、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大6個の炭素原子、最大4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルである。いくつかの実施形態では、Z
1は、−CF
3基である。末端基は、ペルフルオロアルキレン基に直接結合される。ペルフルオロアルキレン基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、多くの場合、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。ペルフルオロエーテル基の具体例としては、限定するものではないが、CF
3CF
2OCF
2CF
2CF
2−、CF
3OCF
2CF
2CF
2−、C
3F
7OCF
2CF
2CF
2−、CF
3CF
2OCF(CF
3)CF
2−、CF
3OCF(CF
3)CF
2−、及びC
3F
7OCF(CF
3)CF
2−が挙げられる。
【0076】
二価のペルフルオロエーテル基は、一般式−R
f2−O−R
f3−[式中、R
f2及びR
f3はそれぞれ独立してペルフルオロアルキレンである]のものである。ペルフルオロアルキレンは、それぞれ独立して、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。基R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、最大50個の炭素原子、最大40個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大25個の炭素原子、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大4個の炭素原子、又は最大3個の炭素原子を有することができる。多くの実施形態では、ペルフルオロアルキレン基は、それぞれ、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、又は1〜2個の炭素原子を有する。
【0077】
一価のペルフルオロポリエーテル基は、一般式R
f1−O−(R
f2−O)
a−R
f3−[式中、R
f1はペルフルオロアルキルであり、R
f2及びR
f3はそれぞれ独立してペルフルオロアルキレンであり、変数aは、少なくとも1に等しい整数である]のものである。基R
f1、R
f2、及びR
f3は、ペルフルオロエーテル基に関して上に定義されたものと同一である。変数aは、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、又は1〜10の範囲の、任意の整数である。
【0078】
一価のペルフルオロポリエーテル基は、多くの場合、式C
bF
2b+1O−、CF
2(Z)O−、CF
2(Z)C
bF
2bO−、C
bF
2b+1CF(Z)O−、又はCF
3CF(Z)O−[式中、b及びZは上に定義されたものと同一である]の末端基(すなわち、R
f1−O−基)を有する。末端基は、少なくとも1つのペルフルオロアルキレンオキシ基又はポリ(ペルフルオロアルキレンオキシ)基(すなわち、−(R
f2−O)
a−基)に直接結合する。各ペルフルオロアルキレンオキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。ペルフルオロアルキレンオキシ基又はポリ(ペルフルオロアルキレンオキシ)基は、ペルフルオロアルキレン基(すなわち、−R
f3−)に直接結合される。
【0079】
有用な一価のペルフルオロポリエーテル基又は一価のペルフルオロポリエーテル基の末端基の代表的な例としては、限定するものではないが、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、CF
3O(C
2F
4O)
nCF
2−、CF
3O(CF
2O)
m(C
2F
4O)
qCF
2−、F(CF
2)
3O(C
3F
6O)
n(CF
2)
3−、及びCF
3O(CF
2CF(CF
3)O)
n(CF
2O)X−が挙げられる。基Xは、通常は−CF
2−、−C
2F
4−、−C
3F
6−、又は−C
4F
8−である。変数nは、多くの場合、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、3〜30の範囲、1〜20の範囲、3〜20の範囲、1〜10の範囲、又は3〜10の範囲である整数である。但し、合計(m+q)が少なくとも1に等しいという条件で、変数m及びqは、それぞれ独立して、0〜50の範囲、0〜40の範囲、0〜30の範囲、1〜30の範囲、3〜20の範囲、又は3〜10の範囲であってもよい。合計(m+q)は、多くの場合、1〜50の範囲、1〜40の範囲、1〜30の範囲、3〜20の範囲、1〜20の範囲、3〜20の範囲、1〜10の範囲、又は3〜10の範囲である。
【0080】
二価のペルフルオロポリエーテル基又はセグメントの代表的な例としては、限定するものではないが、−CF
2O(CF
2O)
m(C
2F
4O)
qCF
2−、−CF
2O(C
2F
4O)
nCF
2−、−(CF
2)
3O(C
4F
8O)
n(CF
2)
3−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、−(CF
2)
3O(C
3F
6O)
n(CF
2)
3−及び−CF(CF
3)(OCF
2CF(CF
3))
mOC
tF
2tO(CF(CF
3)CF
2O)
qCF(CF
3)−が挙げられる。変数n、m、及びqは、上に定義されたものと同一である。変数tは、2〜8の範囲、2〜6の範囲、2〜4の範囲、又は3〜4の範囲の整数である。
【0081】
多くの実施形態では、ペルフルオロポリエーテルは(一価であるか二価であるかに関らず)、少なくとも1つの二価のヘキサフルオロプロピレンオキシ基(−CF(CF
3)−CF
2O−又は−CF
2CF
2CF
2O−)を含む。−CF(CF
3)−CF
2O−を有するセグメントは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができ、比較的環境に優しい特性のために好ましい場合がある。−CF
2CF
2CF
2O−を有するセグメントは、テトラフルオロオキセタンのアニオン性オリゴマー化の後、直接フッ素化により得ることができる。ヘキサフルオロプロピレンオキシ基の例としては、限定するものではないが、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、C
3F
7O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、C
3F
7O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、−CF(CF
3)O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF(CF
3)−、−CF(CF
3)O(CF(CF
3)CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF
2CF
2−、−CF(CF
3)O(CF
2CF
2CF
2O)
nCF(CF
3)−、及び−CF(CF
3)(OCF
2CF(CF
3))
mOC
tF
2tO(CF(CF
3)CF
2O)
qCF(CF
3)−が挙げられる。変数n、m、q、及びtは、上に定義されたものと同一である。
【0082】
しばしば、式(I)の化合物は、同じ基本構造であるが、炭素原子の数が異なるR
f基を有する材料の混合物として存在する。例えば、式(I)の化合物は、上の一価及び二価のペルフルオロポリエーテル基の例の異なる変数m、n、及び/又はqを有する材料の混合物であってもよい。そのようなものとして、反復基の数は、多くの場合、整数でなくてもよい平均数として報告される。
【0083】
式(I)の基Qは、単一の共有結合、二価結合基、又は三価結合基である。Qが単結合である場合、変数yは、1に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが単一の共有結合であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ia−1)のものである。
R
f−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x
(Ia−1)
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが単一の共有結合であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ib−1)のものである。
R
f−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ib−1)
【0084】
基Qが、二価結合基である場合、変数yは、1に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが二価の基であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ia−2)のものである。
R
f−Q−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x
(Ia−2)
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが二価の基であり、yが1に等しい場合、化合物は、式(Ib−2)のものである。
R
f−[Q−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ib−2)
【0085】
基Qが三価結合基である場合、変数yは、通常、2に等しい。一価のR
f基を有する式(Ia)の化合物において、Qが三価の基であり、yが2に等しい場合、化合物は、式(Ia−3)のものである。次式の2つの基が存在する。
−C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x
R
f−Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2
(Ia−3)
同様に、二価のR
f基を有する式(Ib)の化合物において、Qが三価の基であり、yが2に等しい場合、化合物は、式(Ib−3)のものである。
R
f−[Q−[C(R
1)
2−Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
2]
2
(Ib−3)
【0086】
基Qは、典型的に、少なくとも1つのアルキレン基(例えば、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレン)に加えて、オキシ、チオ、−NR
4−、メチン、三級窒素、四級窒素、カルボニル、スルホニル、スルフリル(sulfiryl)、カルボニルオキシ、カルボニルチオ、カルボニルイミノ、スルホニルイミノ、オキシカルボニルオキシ、イミノカルボニルイミノ、オキシカルボニルイミノ、又はこれらの組み合わせから選択される任意の基を含む。基R
4は、水素、アルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アリール(例えば、フェニル又はビフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール)、又はアラルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有するアラルキル)である。式(I)の化合物が複数のQ基を有する場合、Q基は、同じであっても異なってもよい。複数のQ基を有する多くの実施形態では、これらの基は同じである。
【0087】
いくつかの実施形態では、基Qは、式(I)の−C(R
1)−基に直接結合される少なくとも1個又は少なくとも2個の炭素原子を有するアルキレンを含む。そのようなアルキレン基の存在は、加水分解及び求核攻撃等の他の化学変換に対して安定性をもたらす傾向がある。
【0088】
いくつかの二価のQ基は、式−(CH
2)
k−のアルキレン基であり、式中、各変数kは、独立して、1より大きい、2より大きい、又は5より大きい整数である。例えば、kは、1〜30の範囲、1〜25の範囲、1〜20の範囲、1〜15の範囲、2〜15の範囲、2〜12の範囲、1〜10の範囲、1〜6の範囲、又は1〜4の範囲の整数であってもよい。具体例としては、限定するものではないが、−CH
2−及び−CH
2CH
2−が挙げられる。このような基は、R
fがペルフルオロアルカンの一価又は二価の基であるときのQでは一般的である。
【0089】
いくつかの二価のQ基は、任意の基のうちの1つ以上に直接結合される単一のアルキレン基を含む。そのような基は、アルキレンがカルボニルイミノ基に結合される−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−、アルキレンがオキシカルボニルイミノ基に結合される−O(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−、アルキレンがカルボニルチオに連結される−(CO)S−(CH
2)
k−、又はアルキレンがスルホニルイミノ基に連結される−S(O)
2N(R
4)−(CH
2)
k−の式のものであってもよい。変数k及び基R
4は、上記と同じである。いくつかのより具体的な基としては、例えば、−(CO)NH(CH
2)
2−、又は−O(CO)NH(CH
2)
2−が挙げられる。これらのQ基において、アルキレン基は−C(R
1)
2−基にも結合する。
【0090】
その他の好適なQ基は、参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2013/021680号に記載されている。
【0091】
R
fがペルフルオロエーテル又はペルフルオロポリエーテルの一価又は二価の基であるいくつかの特定のフッ素化シランは、式R
f−(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3のもの、式R
f−[(CO)N(R
4)−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はこれらの混合物である。変数kは、上に定義されたものと同一である。いくつかの実施形態では、kは、1〜10の範囲、1〜6の範囲、又は1〜4の範囲である。式R
f−(CO)N(R
4)−CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3のいくつかの更に特定のフッ素化シランとしては、限定するものではないが、F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−CONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3[式中、aは4〜20の範囲の変数である]及びCF
3OC
2F
4OC
2F
4OCF
2CONHC
3H
6Si(OEt)
3が挙げられる。式
R
f−[(CO)N(R
4)−CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2のより具体的な例は、式
【化2】
の化合物であり、式中、n及びmは、それぞれ、約9〜10の範囲の変数である。
【0092】
R
fがペルフルオロアルカンの一価又は二価の基であるいくつかの特定のフッ素化シランは、式R
f−(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3、又は式R
f−[(CH
2)
k−CH
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はこれらの混合物である。変数kは、上に定義されたものと同一である。更に具体的なフッ素化シランは、式R
f−(CH
2)
2−Si(R
2)
3、又は式R
f−[(CH
2)
2−Si(R
2)
3]
2のもの、又はこれらの混合物である。
【0093】
上記のフッ素化シラン化合物は、先に引用した米国特許出願公開第2013/021680号に記載されているような、標準的な技法を使用して合成できる。
【0094】
いくつかの実施形態では、疎水性層を形成するために使用されるシラン化合物は、式(II)のものである。
R
1L[Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
(II)
式(II)において、基R
1は脂肪族又は芳香族炭化水素基である。Lは、共有結合又は二価の有機結合基、例えば、ウレタン基である。各R
2は、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。各R
3は、独立して、非加水分解性基である。各変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。変数yは、1又は2に等しい整数である。
【0095】
式(II)中の変数yが1に等しい場合、R
1基は一価であり、式(II)は式(IIa)に等しい。
R
1LSi(R
2)
3−x(R
3)
x
(IIa)
【0096】
式(II)中の変数yが2に等しい場合、R
1基は二価であり、式(II)は式(IIb)に等しい。
(R
3)
x(R
2)
3−xSiLR
1LSi(R
2)
3−x(R
3)
x
(IIb)
好適な二価基として、アルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
記載されたシラン化合物はそれぞれ、式−Si(R
2)
3−x(R
3)
xである少なくとも1つの基を有する。各基R
2は、独立して、ヒドロキシル基又は加水分解性基である。各基R
3は、独立して、非加水分解性基である。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。シラン化合物は、R
1が一価の場合は単一のシリル基、R
1が二価の場合は2つのシリル基を有する。
【0098】
いくつかの実施形態では、R
1は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有する(例えば、直鎖又は分枝鎖)アルキル基又はアルキレン基であり、例えば、最大40個の炭素原子、最大35個の炭素原子、最大30個の炭素原子、最大25個の炭素原子、最大20個の炭素原子、最大15個の炭素原子、又は最大10個の炭素原子を有し得る。好適なアリール及びアリーレンのR
1基は、多くの場合、6〜18個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。アリール基のいくつかの例は、フェニル、ジフェニル、及びナフチルである。アリーレン基のいくつかの例は、フェニレン、ジフェニレン、及びナフチレンである。
【0099】
R
1が炭化水素基であるシラン化合物の例としては、限定するものではないが、C
10H
21−Si(OC
2H
5)
3、C
18H
37−Si(OC
2H
5)
3、C
18H
37−Si(Cl)
3、C
8H
17−Si(Cl)
3、及びCH
3−Si(Cl)
3、(CH
3O)
3Si−C
8H
16−Si(OCH
3)
3、(C
2H
5O)
3Si−C
2H
4−Si(OC
2H
5)
3、(CH
3O)
3Si−CH
2CH(C
8H
17)−Si(OCH
3)
3、C
6H
5−Si(OCH
3)
3、C
6H
5−Si(Cl)
3、C
10H
7−Si(OC
2H
5)
3、及び(CH
3O)
3Si−C
2H
4−C
6H
4−C
2H
4−Si(OCH
3)
3が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、R
1は、少なくとも5、6、7、又は8個の炭素原子を有する(例えば、直鎖又は分枝鎖)アルキル基又はアルキレン基である。この種の化合物は、概ね、炭化水素潤滑剤との使用に好ましい。上記のシラン化合物のいくつかに加えて、好適なシラン化合物としては、トリアコンチルジメチルクロロシラン及び13−(クロロジメチルシリルメチル)−ヘプタコサンが挙げられる。
【0101】
別の実施形態では、疎水性化合物は、上述のように、アルキレン基を含むジオールとイソシアナト官能性アルキルトリアルコキシシランとの反応生成物である。1つの好適なジオールは、下図のPRIPOL 2033である。
【化3】
【0102】
二量体ジオール(dimer diol)のOH基は、基−L[Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
yに変換され、式中、Lはウレタン結合である。
【0103】
式−Si(R
2)
3−x(R
3)
xの各基において、1つ、2つ、又は3つのR
2基が存在してもよい。R
2基は、多孔質層に含まれる焼結(例えば、シリカ)粒子と反応するための反応部位である。つまり、加水分解性基又はヒドロキシル基は、焼結(例えば、シリカ)粒子の表面と反応して、シラン化合物を多孔質層に共有結合させ、その結果、−Si−O−Si−結合を形成する。好適な加水分解性R
2基は、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、又はハロ基を含む。好適なアルコキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。好適なアリールオキシ基は、多くの場合、例えばフェノキシのように、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキルオキシ基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリール基を有する。例示的なアラルキルオキシ基は、アルコキシ基に共有結合されるフェニル基を有する、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基を有する。好適なハロ基は、クロロ、ブロモ、又はヨードであってもよいが、多くの場合、クロロである。好適なアシルオキシ基は、R
bがアルキル、アリール、又はアラルキルである、式−O(CO)R
bのものである。R
bに好適なアルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。R
bに好適なアリール基は、多くの場合、例えばフェニルのように、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。R
bに好適なアラルキル基は、多くの場合、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
2基が存在するとき、それらは、同じであっても異なってもよい。多くの実施形態では、各R
2はアルコキシ基又はクロロである。
【0104】
式のそれぞれの基に存在するR
2基が3つ未満の場合、少なくとも1つのR
3基が存在する。R
3基は、非加水分解性基である。多くの非加水分解性基は、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基である。好適なアルキル基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するものを含む。好適なアリール基は、多くの場合、例えばフェニル又はビフェニルのように、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。好適なアラルキル基は、多くの場合、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。複数のR
3基が存在するとき、それらの基は、同じであっても異なってもよい。多くの実施形態では、各R
3基はアルキル基である。
【0105】
いくつかの実施形態では、シラザン化合物を使用して疎水性層を形成する。シラザンは、共有結合で結合したケイ素原子及び窒素原子の直鎖又は分枝鎖を有するケイ素及び窒素のヒドリドである。シラザンは、シロキサンの−O−が−NH−に置き換わった類似体である。好適なシラザン化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS);1,1,3,3−テトラメチルジシラザン;2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン;1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン;及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシラザンが挙げられる。
【0106】
水(例えば、蒸気)の存在下で、シラザンは、式(III)の式を有する化合物を生成する。
R
1[Si(R
2)
3−x(R
3)
x]
y
(III)
式中、R
1及びR
3は、独立して、非加水分解性基であり、R
2はヒドロキシルであり、xは2であり、yは1である。典型的な実施形態では、R
1及びR
3は、独立して、水素、C
1〜C
4アルキル(例えば、メチル、エチル)又はフェニルである。
【0107】
その他の実施形態では、疎水性材料はシラノール末端ポリジメチルシロキサン又はヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。
【0108】
いくつかの実施形態では、疎水性材料は、一般的に長鎖アルキル又はアルキレン基を含まないC
1〜C
4アルキル基を含むシラン又はシロキサン化合物を、シリコーン潤滑剤と共に含む。
【0109】
疎水性材料は、多くの場合、焼結無機酸化物多孔質層の表面処理において、未希釈形態で使用され得る。別の方法としては、材料は、1つ以上の有機溶媒及び/又は1つ以上の他の任意の構成要素と混合されてもよい。
【0110】
好適な有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノール等の脂肪族アルコール;例えば、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン;例えば、エチルアセテート及びメチルホルメート等のエステル;例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)等のエーテル;例えば、ヘプタン、デカン、及び他のパラフィン系(すなわち、オレフィン系)溶媒等のアルカン;例えば、ペルフルオロヘキサン及びペルフルオロオクタン等のペルフルオロ化炭化水素;例えば、ペンタフルオロブタン等のフッ素化炭化水素;例えば、メチルペルフルオロブチルエーテル及びエチルペルフルオロブチルエーテル等のヒドロフルオロエーテル;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、多くの場合、脂肪族アルコール類、ペルフルオロ化炭化水素類、フッ素化炭化水素類、ヒドロフルオロエーテル類、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、表面処理組成物は、脂肪族アルコール類、ヒドロフルオロエーテル類、又はこれらの組み合わせを含有する。他の実施形態では、炭化水素層コーティング組成物は、ヒドロフルオロエーテル類又はこれらの組み合わせを含有する。
【0111】
市販のいくつかの好適なフッ素化溶媒としては、例えば、3M Company(Saint Paul,MN)から商品名3M NOVEC ENGINEERED FLUID(例えば、3M NOVEC ENGINEERED FLUID7100、7200DL、及び7500)で市販されているものが挙げられる。
【0112】
疎水性コーティング組成物は、多くの場合、疎水性コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.1重量%の疎水性材料を溶解又は懸濁することができる量の有機溶媒を含有する。いくつかの実施形態では、疎水性材料(例えば、シラン)化合物は、コーティング組成物に、少なくとも0.5重量%かつ20、15、又は10重量%以下の量で存在する。
【0113】
疎水性(例えば、シラン)化合物を含むコーティング組成物は、他の任意の化合物を含んでもよい。例えば、架橋剤を添加してもよい。先に引用したRiddleらの米国特許出願公開第2014/0120340号及び米国特許出願公開第2013/0216820号に更に記載されているように、架橋剤は、典型的には、シラン化合物上に複数のシリル基が存在するときに添加される。
【0114】
焼結多孔質層の表面を疎水性化合物でコーティングし、存在する溶媒を蒸発させた後、表面処理された焼結無機酸化物粒子の多孔質層に潤滑剤をコーティングし、それによって表面処理された多孔質層の孔に潤滑剤を浸透させる。浸透は、その孔が潤滑剤で飽和されることを意味する。更に、潤滑剤は、表面張力、毛管力、ファンデルワールス力(例えば、吸引)、又はこれらの組み合わせによって孔内の適所に保たれる。
【0115】
スプレー塗布システム構成要素の撥性表面層は、典型的には、潤滑剤を孔内の適所に保持する力を超える力に曝されない。したがって、いくつかの実施形態では、撥性表面層は、かかる構成要素内での液体(例えば、塗料)の混合が、潤滑剤を多孔質層の孔内に保持する力よりも小さい混合力で行われる(手での混合等)、液体(例えば、塗料)収容容器、ライナー、及び蓋に好適である。
【0116】
浸透潤滑剤は、(例えば、表面処理された)多孔質層上に噴霧又ははけ塗りされてもよい。一実施形態では、潤滑剤は、(例えば、表面処理された)多孔質層を有する構成要素を含む容器に、充填又は部分的充填することによって適用される。その後、余分な浸透液体が容器から除去される。潤滑剤を浸透させるその他の方法としては、スピンコーティングプロセス及び(例えば、表面処理された)多孔質層上への潤滑剤の濃縮が挙げられる。潤滑剤は、潤滑剤と1種類以上の揮発性液体との溶液を(例えば、上記の方法のいずれかにより)付着させ、上記1種類以上の揮発性液体を蒸発させることによっても適用できる。これらの方法のいずれかで、余分な潤滑剤は、機械的に除去する(例えば、固体物体又は流体で表面から押出す)か、他の多孔質材料を用いて表面から吸収するか、重力若しくは遠心力によって除去するか、洗浄液(例えば、水又は塗料)を用いて余分な潤滑剤を除去してもよい。
【0117】
潤滑剤は、概ね、コーティングされた構成要素の使用温度で液体である。周囲使用温度は−40℃〜45℃の範囲をとり得るが、使用温度は、最も一般的には40°F〜120°Fの範囲である。典型的な実施形態では、潤滑剤は、室温(例えば、25℃)で液体である。典型的な実施形態では、単一の潤滑剤が利用される。しかしながら、潤滑剤の混合物、特に同じ化学的分類内の混合物も使用してもよい。
【0118】
「液体」は、その潤滑剤が、使用温度で少なくとも約0.1、0.5、又は1mPasかつ10
7mPas以下の動的(剪断)粘度を有することを意味する。典型的な実施形態では、動的粘度は10
6、10
5、10
4、又は10
3mPas以下である。本明細書に記載の動的粘度の値は、1sec
−1の剪断速度で測定した値を指す。
【0119】
潤滑剤は、一般的に水への溶解性がないか、微溶性しかなく、例えば、0.01g/L又は0.001g/L以下の溶解度を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、潤滑剤の境界における表面張力は、20℃で好ましくは≦50mN/mであり、特に5〜45mN/mの範囲であり、特に表面から撥かれる液体が水性液体である場合、具体的には10〜40mN/mの範囲である。
【0121】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、炭化水素流体である。好適な潤滑剤としては、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に10〜約20個の炭素原子を有する飽和炭化水素等の低分子量炭化水素、例えば、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、及びヘキサデカンが挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は分枝状C3〜C50炭化水素、例えば、ポリイソブテン又は鉱油である。かかる材料は、分子量及び分枝に応じて、液体、高粘度液体、又は固体であり得る。
【0123】
炭化水素潤滑剤は、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有するアルカノール及びジオール、例えば、3−オクタノール、1−デカノール、2−デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、2−ヘキサデカノール、2−へキシルデカノール、及び2−オクチル−1−ドデカノールの場合のように、任意に置換基を含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、ペルフルオロ炭化水素(ペルフルオロアルカンとも呼ばれる)、ポリフルオロエーテル、及びポリフルオロポリエーテルのようなフッ素化流体である。ペルフルオロ炭化水素は、典型的には少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子、特に10〜40個の炭素原子を有し、例えば、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロエイコサン、及びペルフルオロテトラコサンである。好適なペルフルオロポリエーテルは、DuPontからKRYTOXの商品名で入手できる。その他の好適なペルフルオロポリエーテルは、Sigma−Aldrichから、分子量約1500〜約3500amuの範囲で入手でき、例えば、商品名FOMBLIN Yで入手できる。
【0125】
その他の好適な潤滑剤としては、シリコーン流体が挙げられる。シリコーンは、概ね、直鎖状、分枝状、又は環状のポリジメチルシロキサン、又はポリメチルヒドロシロキサンである。これらは、種々の有機末端基又は側鎖を有してもよい。シリコーン潤滑剤は、Rhodia、Gelest、及びFischer Scientificから市販されている。
【0126】
本明細書に記載の物品を製造する方法は、概ね、構成要素を提供する工程と、構成要素の表面上に表面処理された多孔質層を形成する工程であって、この多孔質層が焼結無機酸化物(例えば、シリカ)粒子を含む工程と、表面処理された多孔質層の孔に潤滑剤を浸透させる工程と、を含む。表面処理された多孔質層を形成する方法は、典型的には、液体媒体中に分散された複数の無機酸化物粒子を構成要素の表面にコーティングする工程を含む。かかるコーティングは、本明細書でゾルとも呼ばれる。無機酸化物ナノ粒子の焼結は、ゾルが強酸若しくは塩基を含有する場合にはゾルの乾燥中に起こる可能性があり、又は上記のように、無機酸化物粒子は、熱焼結されてもよい。焼結後、多孔質層は、(例えば、連続する)三次元ネットワークを形成するように配置された複数の焼結粒子を含有する。
【0127】
疎水性化合物は、液体媒体(例えば、水性及び/又は有機溶媒)中に分散され、コーティング組成物として多孔質層に塗布されてもよい。疎水性コーティング組成物は、任意の好適な塗布方法を使用して多孔質層に塗布されてもよい。塗布方法は、多くの場合、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、払拭、ロールコーティング、はけ塗り、スプレッディング、フローコーティング等、又はこれらの組み合わせによってコーティング層を形成することを伴う。あるいは、疎水性化合物は、蒸着によって多孔質層に塗布されてもよい。
【0128】
疎水性コーティング組成物は、典型的には室温(典型的には、15℃〜30℃の範囲又は20℃〜25℃の範囲)で多孔質層に塗布される。あるいは、多孔質層は、疎水性コーティング組成物の塗布の前に、高温、例えば、40℃〜200℃の範囲、50℃〜175℃の範囲、又は60℃〜150℃の範囲に予熱されてもよい。得られたコーティングを、乾燥し、次いで周囲温度(例えば、15℃〜30℃の範囲又は20℃〜25℃の範囲)又は高温(例えば、40℃〜200℃の範囲、50℃〜175℃の範囲、又は50℃〜100℃の範囲)で、硬化が起こるのに十分な時間、硬化してもよい。
【0129】
典型的には、疎水性層コーティングは、硬化後、疎水性層が多孔質層を覆って形成されるように、構成要素上の多孔質層に塗布される。つまり、多孔質層は、構成要素と疎水性層との間に位置付けられる。疎水性層は、厚さが単層以上であってもよい。単層を超える厚さの場合、疎水性層は、典型的には総厚の一部であり、概ね、数ナノメートルから50、75又は100nmまでの範囲であってもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、方法は、多孔質層内の焼結(例えば、シリカ)粒子の表面をシラン化合物と反応させることによって疎水性化合物を多孔質層に結合する工程を更に含む。シラン化合物は、反応性シリル基及び疎水性基の両方を含有する。
【0131】
多孔質層に塗布した後、疎水性コーティング組成物は、乾燥され、熱及び/又は湿気に曝露されることによって硬化され得る。硬化によって、シラン化合物が多孔質層に付着される。硬化によって、シラン化合物と多孔質層中の焼結された(例えば、シリカ)粒子との間に−Si−O−Si−結合が形成される。得られた疎水性層は、多孔質層を介して構成要素に付着される。
【0132】
架橋剤がコーティング組成物に含まれる場合、これらの材料は、シラン化合物上の任意の残存する反応性シリル基と反応することができる。湿気硬化は、室温(例えば、20℃〜25℃)から約80℃又はそれ以上までの範囲の温度で実施できる。湿気硬化時間は、数分(例えば、80℃以上等の高温で)〜数時間(例えば、室温又は室温付近等の低温で)の範囲であり得る。
【0133】
シラン化合物の多孔質層への付着のためには、一般的には十分な水が存在して上記の加水分解性基の加水分解を引き起こし、その結果−Si−O−Si−基を形成するための縮合が生じる(それによって硬化が生じ得る)ことができる。水は、例えば、構成要素表面上に吸収された炭化水素層コーティング組成物中、又は周囲雰囲気中に存在し得る。典型的には、コーティング方法が、室温にて、含水雰囲気中(例えば、相対湿度が約30%〜約50%の雰囲気)で実行される場合、十分な水が存在し得る。シラン化合物は、多孔質層内の酸焼結された(例えば、シリカ)粒子の表面と化学反応を起こして、疎水性層を形成し得る。
【0134】
液体(例えば、塗料)撥性表面が、上記のように、多孔質層の孔に浸透した潤滑剤を含む場合、外側の露出面は、主に液体潤滑剤である。多孔質層の一部の構造体は、液体潤滑剤を通って突出し、外側の露出面上に存在する場合がある。しかしながら、外側の露出面は主に液体潤滑剤である。この実施形態では、典型的には、顕微鏡で決定できるように、表面積の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%以上が液体潤滑剤である。それ故、撥かれる水性液体(例えば、塗料)は液体潤滑剤と接触し、液体潤滑剤によって撥かれる。
【0135】
他の実施形態では、スプレー塗布システム構成要素の液体(例えば、塗料)撥性表面は、潤滑剤浸透面ではない。むしろ、外側の露出面は、主に固体の液体(例えば、塗料)撥性材料である。この実施形態では、表面積の50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.005、0.001%未満が液体潤滑剤である。むしろ、外側の露出面の少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%以上が、固体の撥液材料である。それ故、撥かれる水性液体(例えば、塗料)は固体撥液材料と接触し、固体撥液材料によって撥かれる。
【0136】
固体の液体(例えば、塗料)撥性材料は、概ね、スプレー塗布システム構成要素の使用温度で固体であり、この温度は一般的に40°F〜120°Fの範囲である。典型的な実施形態では、固体の液体(例えば、塗料)撥性材料は、室温(例えば、25℃)で固体である。したがって、固体の液体(例えば、塗料)撥性材料は、25℃より高い、120°Fより高い、及び120°Fより高い融解温度(示差走査熱量測定で測定したときの吸熱ピーク)を有する。いくつかの実施形態において、固体の液体(例えば、塗料)撥性材料は、200℃以下の融解温度を有する。典型的な実施形態では、単一の固体の液体(例えば、塗料)撥性材料が利用される。しかしながら、撥液性表面がコーティング組成物によって提供される場合、コーティング組成物は、固体の液体(例えば、塗料)撥性材料の混合物を含んでもよい。
【0137】
図8を参照すると、物品200は、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーとフルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン「PDMS」)材料とを含む液体(例えば、塗料)撥性表面253を備える基材又は構成要素210(例えば、ライナー、液体収容容器、又は蓋)を備えるスプレー塗布システムの構成要素である。外側露出面(例えば、層)253におけるフルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の濃度は、典型的には、基材210に隣接する(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダー層251内のフルオロケミカル材料の濃度よりも高い。後述するように、一実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面(例えば、層)は、有機溶媒と、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーと、フルオロケミカル化合物等のフルオロケミカル材料;及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料とを含むコーティング組成物を、基材210にコーティングすることによって提供され得る。
図9を参照すると、物品300は、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料を含む液体(例えば、塗料)撥性表面(例えば、層)353を備える基材又は構成要素310(例えば、ライナー、液体収容容器、又は蓋)を備えるスプレー塗布システムの構成要素である。外側露出面(例えば、層)353におけるフルオロケミカル材料び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の濃度は、典型的には、基材310の中心近くのフルオロケミカル及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の濃度よりも高い。一実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面353は、熱加工されて基材310をライナー、液体収容容器、又は蓋等の構成要素に成形するポリマー材料中に、フルオロケミカル化合物等のフルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料を、溶融添加剤として含むことによって、提供され得る。
【0138】
図10を参照すると、物品400は、フルオロポリマー層、シロキサン(例えば、PDMS)層、又はフッ素化基とシラン若しくはシロキサン基との両方を含むポリマー451を含む液体(例えば、塗料)撥性表面453を備える基材又は構成要素410(例えば、ライナー、液体収容容器、又は蓋)を備えるスプレー塗布システムの構成要素である。後述するように、一実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面453は、有機溶媒とフルオロポリマー及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)ポリマーとを含むコーティング組成物を基材410にコーティングすることによって提供され得る。フッ素及び/又はシロキサン含有量は、典型的には、フルオロポリマー層及び/又はシロキサン層の厚さ全体を通して同一である。別の実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面453は、基材410をフルオロポリマー層及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)ポリマー層451と共にシート状に共押出し、このシートをライナー、液体収容容器、又は蓋に熱加工することによって、提供され得る。
【0139】
図11を参照すると、物品500は、フルオロポリマー及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)ポリマーを含むスプレー塗布システムの基材又は構成要素510、例えば、ライナー、液体収容容器、又は蓋である。フッ素及び/又はシロキサン含有量は、典型的には、構成要素の厚さ全体を通して同一である。構成要素の内面及び外面は、典型的には、フルオロポリマー及び/又はシロキサンポリマーを含む。一実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面は、フルオロポリマーをライナー、液体収容容器、又は蓋等の構成要素に熱加工することによって提供され得る。別の実施形態では、液体(例えば、塗料)撥性表面は、シロキサンポリマー又はフッ素化基とシラン若しくはシロキサン基との両方を含むポリマーを、ライナー、液体収容容器、又は蓋等の構成要素に熱加工することによって提供され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、撥液性表面の(例えば、フッ素化)固体材料はフルオロポリマーである。
【0141】
一般的に知られるフルオロポリマーの一分類は、テフロン(商標)PTFE樹脂又は別の言い方をすると、モノマーテトラフルオロエチレン(構造CF
2=CF
2を有する「TFE」)の重合によって調製されるポリテトラフルオロエチレンポリマーである。テフロン(商標)PTFE樹脂は、結晶性材料として記載される。結晶性PTFE樹脂は、典型的には、約2.2g/cm
3の密度を有する。
【0142】
テフロン(商標)PTFEは、水との後退接触角が少なくとも90°である、及び/又は表面の水との前進接触角と後退接触角との差が10未満であるような撥液性表面をもたらさない。更に、テフロン(商標)PTFEは、(例えば、水性)塗料撥性表面を提供しない(実施例に記載の試験方法によって測定した場合)。
【0143】
しかしながら、出願人は、他のフルオロポリマー、例えば、TFEのコポリマーが、表面の水との前進接触角と後退接触角との差が10未満であり、(例えば、水性)塗料撥性表面を提供するような撥液性表面をもたらし得ることを見出した。TFEのコポリマーは、TFEと少なくとも1つの他のコモノマーとの重合単位を含む。それ故、コポリマーはターポリマーを含む。
【0144】
本明細書に記載のような所望の液体(例えば、塗料)撥性をもたらすことが見出された1つの好適なフルオロポリマーは、非晶質フルオロプラスチックとして特徴付けることができる。かかるフルオロポリマーは、TFEの重合単位と複素環式フッ化炭素モノマーの重合単位とを含むコポリマーである。複素環式フッ化炭素モノマーは、典型的には、ジオキソールモノマーの場合のように、酸素原子を含む。一実施形態では、非晶質フルオロポリマーは、下に図示するように、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルジオキソール(例えば、Dupontから商品名テフロン(商標)AFで市販されているペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD))とのコポリマーであり、
【化4】
式中、nはペルフルオロアルキルジオキソールの重合単位の数であり、mはTFEの重合単位の数である。この非晶質フルオロポリマーは、結晶性PTFEよりも低い密度を有する。密度は、典型的には、2.1、2.0、1.9、又は1.8g/cm
3未満である。いくつかの実施形態では、密度は少なくとも1.65、1.66、又は1.67g/cm
3から最大1.75、1.76、1.77、又は1.78g/cm
3までの範囲である。
【0145】
本明細書に記載のような所望の液体(例えば、塗料)撥性をもたらすことが見出された別の好適なフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン(構造CF
2=CF−CF
3を有する「HFP」)とのコポリマーである。かかるフルオロポリマーは、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)とも記載される。FEPは、以下の一般式を有し、
【化5】
式中、nはTFEの重合単位の数であり、mはHFPの重合単位の数である。フッ素化プロピレンの量は、典型的には、少なくとも1、2、3、4、又は5重量%であり、最大10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20重量%にまで及び得る。
【0146】
FEPは、典型的には、従来の射出成形及びスクリュー押出技法を用いて溶融加工が可能である。このフルオロポリマーは、少なくとも250、255、又は260℃、最大280℃にまで及ぶ融点、並びに少なくとも2.10又は2.15、最大2.20g/cm
3までの範囲の密度を有する。典型的な実施形態では、密度は結晶性PTFEよりも小さく、すなわち、2.17又は2.18g/cm
3以下である。フッ素化エチレンプロピレンは、Dupontから商標名「TEFLON FEP」及びDaikinから「NEOFLON FEP」で販売されている。
【0147】
TFEのその他のフルオロポリマーコポリマーは、水素及び特に−CH
2−基を更に含む。例えば、いくつかのフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンTFE、HFP、及びフッ化ビニリデン(構造CH
2=CF
2を有する「VDF」)の共重合によって調製される。かかるコポリマーは、次式によって表すことができ、
【化6】
式中、mはTFEの重合単位の数であり、nはHFPの重合単位の数であり、lはVDFの重合単位の数である。
【0148】
しかしながら、VDFの重合単位の数が19モル%の場合、かかるTFEコポリマーは本明細書に記載のような所望の液体(例えば、塗料)撥性をもたらさないことが見出された。したがって、かかるテトラフルオロエチレンコポリマーは、概ね、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1モル%未満のVDFの重合単位を含む。
【0149】
その他の実施形態では、(例えば、塗料)撥液性表面は、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料と(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーとを含む。典型的な実施形態では、非フッ素化ポリマーバインダーの大部分は、上記のような所望の撥性をもたらす十分な量のフルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料と組み合わされる。
【0150】
典型的な実施形態では、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の量は、少なくとも約0.05、0.1、0.25、0.5、1.5、2.0又は2.5重量%であり、いくつかの実施形態では、少なくとも約3.0、3.5、4.0、4.5又は5重量%である。フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の量は、典型的には、フルオロケミカル材料と非フッ素化ポリマーバインダーとの合計の50、45、40、35、30、25、20、15、又は10重量%以下である。それ故、かかるフルオロケミカル材料含有ポリマー材料のフッ素含有量は、先に記載されたフルオロポリマーよりもはるかに少ない。低フッ素含有量のポリマー材料が、実質的に高いフッ素含有量を有するフルオロポリマーの液体(例えば、塗料)撥性に匹敵し、又はそれよりも改良された液体(例えば、塗料)撥性をもたらし得ることは、驚くべき結果である。
【0151】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカル材料は、次式IV:
(R
f−L−P)
nA
[R
fはフッ素化基であり、
Lは、独立して、有機二価結合基であり、
Pは、独立して、カテナリーの二価ヘテロ原子含有カルボニル部分であり、
Aは、炭化水素部分であり、
nは、典型的には、1〜3の範囲である]によって表される化合物又は化合物の混合物を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、nは好ましくは2である。フルオロケミカル材料が化合物の混合物を含む場合、nが2であるフルオロケミカル化合物の重量濃度は、典型的には、nが2ではない(例えば、n=1又はn=3)場合の画分のそれぞれよりも大きい。更に、nが2である場合の濃度は、典型的には、化合物の混合物の少なくとも50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、若しくは95重量%又はそれ以上である。他の実施形態では、フッ素化材料は、n=2である単一化合物であり得る。
【0153】
フッ素化基R
fは、典型的には、少なくとも3又は4個の炭素原子、典型的には12、8、又は6個以下の炭素原子を含有するフルオロアルキル基である。フルオロアルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであり得る。典型的な実施形態では、フルオロアルキル基は、好ましくはオレフィン性不飽和を含まない。いくつかの実施形態では、各末端フッ素化基は、少なくとも50、55、60、65、又は70重量%〜78重量%のフッ素を含有する。そのような末端基は、典型的にはペルフルオロ化されている。いくつかの実施形態では、化合物の混合物の少なくとも50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、又は95重量%以上について、R
fは、CF
3(CF
2)
3−又は換言すればC
4F
9−である。他の実施形態では、フッ素化材料は、R
fがCF
3(CF
2)
3−である単一化合物であり得る。別の実施形態において、フッ素化基R
fは、ペルフルオロエーテル又はペルフルオロポリエーテル等のペルフルオロヘテロアルキル基である。有機二価結合基Lは、共有結合、ヘテロ原子(例えば、O又はS)、又は有機部分であってよい。有機二価結合基は、典型的には、20個以下の炭素原子を含有し、任意に酸素、窒素、若しくは硫黄含有基又はこれらの組み合わせを含有する。Lは、典型的には、活性水素原子を含まない。L部分の例としては、直鎖、分枝鎖、又は環状のアルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシ、チオ、スルホニル、アミド、及びこれらの組み合わせ、例えば、スルホンアミドアルキレンが挙げられる。以下は、好適な有機二価結合基の代表的リストである。
−SO
2N(R’)(CH
2)
k−
−CON(R’)(CH
2)
k−
−(CH
2)
k−
−(CH
2)
kO(CH
2)
k−
−(CH
2)
kS(CH
2)
k−
−(CH
2)
kSO
2(CH
2)
k−
−(CH
2)
kOC(O)NH−
−(CH
2)SO
2N(R’)(CH
2)
k−
−(CH
2)
kNR’−
−(CH
2)
kNR’C(O)NH−
【0154】
このリストについて、各kは、独立して、1〜12の整数である。R’は、水素、フェニル、又は1〜約4個の炭素原子のアルキル(好ましくは、メチル)である。いくつかの実施形態では、kは6、5、4、3、又は2以下である。いくつかの実施形態において、結合基は、少なくとも14g/モル(−CH
2−の場合)、又は少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、又は110g/モルの分子量を有する。結合基の分子量は、典型的には350g/モル以下であり、いくつかの実施形態では、300、250、200、又は150g/モル以下である。
【0155】
上記の部分、Aは、直鎖、分枝鎖、環状の炭化水素又はこれらの組み合わせであり得る。典型的なA部分としては、4〜50個の炭素原子を有するアルキレン、アルケン、アリーレン、及びアラルキレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、Aは、好ましくは飽和炭化水素部分、換言すれば、平均で少なくとも4、6、8、10、12、14、16、又は18個の炭素原子を有するアルキレン基(すなわち、nが2又は3のとき)又はアルキル基(すなわち、nが1のとき)である。いくつかの実施形態において、アルキレン基又はアルキル基は、平均で45、40、35、30、25又は20個以下の炭素原子を有する。典型的な実施形態では、Aは、ジカルボン酸又は脂肪酸の炭化水素部分である。
【0156】
二価のカルボニル部分Pは、典型的にはジカルボン酸又は脂肪酸の残基であり、したがってカルボニルオキシ(−C(O)O−)又は換言すればエステル基である。
【0157】
フルオロケミカル材料は、米国特許第6171983号に記載のような、当該技術分野において既知の種々の方法によって調製できる。フルオロケミカルは、最も典型的には、フッ素化アルコールをジカルボン酸又は脂肪酸でエステル化することによって調製される。特に、脂肪酸が出発材料として使用される場合、得られるフルオロケミカル材料は、典型的には化合物の混合物を含有する。
【0158】
好適なジカルボン酸としては、上記のA基を提供するアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。ジカルボン酸の誘導体、例えば、ハロゲン化物及び無水物も使用できる。
【0159】
好適な不飽和脂肪酸としては、例えばパルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、リシノール酸(rinoleic acid)、ガドレイン酸、エルカ酸(eracic acid)又はこれらの混合物が挙げられる。重合脂肪酸は、フルオロケミカル材料が平均で30、35、40、45又は50個の炭素原子を有するように多数の炭素原子を含有し得る。
【0160】
好適な飽和脂肪酸としては、カプリル酸、CH
3(CH
2)
6COOH;カプリン酸、CH
3(CH
2)
8COOH;ラウリン酸、CH
3(CH
2)
10COOH;ミリスチン酸、CH
3(CH
2)
12COOH;パルミチン酸、CH
3(CH
2)
14COOH;ステアリン酸、CH
3(CH
2)
16COOH;アラキジン酸、CH
3(CH
2)
18COOH;ベヘン酸、CH
3(CH
2)
20COOH;リグノセリン酸、CH
3(CH
2)
22COOH;及びセロチン酸、CH
3(CH
2)
24COOHが挙げられる。
【0161】
有用なフッ素含有モノアルコールの代表例としては、R
fが上記のようなフッ素化基である以下のものが挙げられる。
【表1】
【0162】
その他のフッ素含有モノアルコールは、参照により本明細書に援用される米国特許第6586522号に記載されている。
【0163】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカル材料の調製に有用な一官能性フルオロ脂肪族アルコールとしては、米国特許第2,803,656号(Ahlbrecht et al.)に記載のN−アルカノールペルフルオロアルキルスルホンアミドが挙げられ、これは一般式R
fSO
2N(R)R
1CH
2OH[式中、R
fは3〜6個、好ましくは4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、R
1は1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基であり、Rは水素原子又は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、好ましくはメチルである]を有する。いくつかの実施形態では、R
1は、8、7、6、5、4、3又は2個以下の炭素原子を有するアルキレン基である。これらの一官能性アルコールは、ハロヒドリンの酢酸エステルと、対応するペルフルオロアルキルスルホンアミドのナトリウム又はカリウム塩との反応によって調製できる。
【0164】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカル化合物は、次式
C
4F
9SO
2N(CH
3)(CH
2)
kOC(O)−A−C(O)O(CH
2)
kN(CH
3)SO
2C
4F
9 (IVa)
又は、
C
4F
9SO
2N(CH
3)(CH
2)
kOC(O)−A (IVb)
[式中、k及びAは、既に記載したとおりである]のうちの1つを有する。
【0165】
別の実施形態において、フルオロケミカル材料は、参照により本明細書に援用される米国特許第6753380号に記載のようにエステル化合物又はオリゴマーを含む。エステル化合物及びオリゴマーは、次式:
R
fQO−[C(O)R
1C(O)OR
2O]
n[C(O)R
1C(O)]m−OQRf (V)
(RfQO−がフッ素化アルコールから誘導され、−OR
2O−がフッ素化ポリオールから誘導され、−C(O)R
1C(O)−がジカルボン酸から誘導される場合)、
R
fQC(O)−[OR
2OC(O)R
1C(O)]
n[OR
2O]
m−(O)CQR
f (VI)
(RfQC(O)−がフッ素化酸から誘導され、−C(O)R
1C(O)−がジカルボン酸から誘導され、−OR
2O−がフッ素化ポリオールから誘導される場合)で表されてもよく、
式V〜VIのそれぞれにおいて、
nは、数字1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10から選択される数字又は範囲であり、
mは1であり、
R
fは、上記のように、フッ素化基であり、
Qは二価結合基であり、
R
1は、多価(例えば、二価)炭化水素部分であり、
R
2は、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロヘテロアルキル基、又はこれらの混合物等の側鎖フッ素化基R
fを有する二価の有機基である。
【0166】
R
1は、直鎖、分枝鎖、若しくは環状炭化水素又はこれらの組み合わせであり得る。典型的なR
1部分としては、4〜50個の炭素原子を有するアルキレン、アルケン、アリーレン、及びアラルキレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、R
1は、好ましくは飽和炭化水素部分、換言すれば、平均で少なくとも4、6、8、10、12、14、16、又は18個の炭素原子を有するアルキレン基(すなわち、nが2又は3のとき)又はアルキル基(すなわち、nが1のとき)である。いくつかの実施形態において、アルキレン基又はアルキル基は、平均で45、40、35、30、25又は20個以下の炭素原子を有する。典型的な実施形態では、R
1は、ジカルボン酸又はジオールの炭化水素部分である。別の実施形態において、炭化水素部分は、1つ以上のヘテロ原子又はその他の置換基を更に含み得る。
【0167】
単一化合物に加えて、一般式に対応する化合物及びオリゴマーの混合物が表され得ることが理解されるであろう。混合物の場合、m及びnは非整数値の平均であり得る。化合物及びオリゴマーの混合物は、低濃度(例えば、化合物又はオリゴマーの5、4、3、2、又は1重量%未満)の他の化合物及びオリゴマーを含んでもよい。例えば、混合物は、mが0であり、単位nの末端酸素原子が水素に結合して、当該単位がヒドロキシル基又は酸基で終端している種を含んでもよい。
【0168】
Qは、典型的には、上記のような、有機二価結合基Lである。
【0169】
式Vに示すように、R
1は、典型的にはポリアシル化合物の残基であるのに対し;R
2は典型的にはポリオールの残基である。この実施形態では、フルオロケミカルエステルオリゴマーは、典型的には、1つ以上のフッ素化ポリオール(例えば、FBSEE−C
4F
9SO
2N(C
2H
4OH)
2)、1つ以上のポリアシル化合物(例えば、ジカルボン酸)及び1つ以上の一官能性フッ素含有化合物(例えば、MeFBSE−C
4F
9SO
2N(CH
3)CH
2CH
2OH)の縮合反応生成物を含む。
【0170】
式Vの1つの代表的な化合物は次のように表される:
【化7】
[nは1〜10の範囲である]。
【0171】
他の代表的な化合物は、米国特許第6753380号に記載されている。
【0172】
ポリオールで、フルオロケミカルエステル組成物の調製に使用するのに好ましいのは、平均ヒドロキシ官能数が1より大きい(好ましくは約2〜3;最も好ましくは約2、ジオールが最も好ましい)ポリオールである。ヒドロキシル基は第一級又は第二級であることができ、第一級ヒドロキシル基はこれらのより大きな反応性のために好ましい。
【0173】
好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、R
fSO
2N(CH
2CH
2OH)
2、例えば、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;R
fOC
6H
4SO
2N(CH
2CH
2OH)
2;R
fSO
2N(R
’)CH
2CH(OH)CH
2OH、例えば、C
6F
13SO
2N(C
3H
7)CH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CON(CH
2CH
2OH)
2;R
fCON(CH
2CH
2OH)
2;CF
3CF
2(OCF
2CF
2)
3OCF
2CON(CH3)CH2CH(OH)CH2OH;R
fOCH
2CH(OH)CH
2OH、例えば、C
4F
9OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH
2SC
3H
6OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH
2SC
3H
6CH(CH
2OH)
2;R
fCH
2CH
2SCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH
2SCH(CH
2OH)CH
2CH
2OH;R
fCH
2CH
2CH
2SCH
2CH(OH)CH
2OH、例えば、C
5F
11(CH
2)
3SCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH
2CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH、例えば、C
5F
11(CH
2)
3OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH
2CH
2OC
2H
4OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH(CH
3)OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
f(CH
2)
4SC
3H
6CH(CH
2OH)CH
2OH;R
f(CH
2)
4SCH
2CH(CH
2OH)
2;R
f(CH
2)
4SC
3H
6OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2CH(C
4H
9)SCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH;R
fCH2CH(OH)CH
2SCH
2CH
2OH;R
fCH
2CH(OH)CH
2SCH
2CH
2OH;R
fCH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH
2OH;R
fCH
2CH(OH)CH
2OH;((CF
3)
2CFO(CF
2)
2(CH
2)
2SCH
2)
2C(CH
2OH)
2;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH
2CF
2OC
2F
4O(CF
2)
4OC
2F
4OCF
2CH
2OH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH
2CF
2CF
2O(CF
2)
4OCF
2CF
2CH
2OH);Poly−3−Fox(商標)(Omnova Solutions,Inc.(Akron,Ohio)より入手可能)等のフッ素化オキセタンの開環重合によって調製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(Newell et al)に記載されているような少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物とのフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;及びペルフルオロポリエーテルジオール、例えば、Fomblin(商標)ZDOL(HOCH
2CF
2O(CF
2O)
8〜12(CF
2CF
2O)
8〜12CF
2CH
2OH、Ausimontより入手可能)[式中、R
fは、上記のようにペルフルオロアルキル基等のフッ素化基である]が挙げられる。
【0174】
好ましいフッ素化ポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;Poly−3−Fox)(商標)(Omnova Solutions,Inc.(Akron Ohio)から入手可能)等のフッ素化オキセタンの開環重合により調製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(Newell et al.)に記載されているような、フッ素化有機基置換エポキシドと少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物との開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;Fomblin(商標)ZDOL(HOCH
2CF
2O(CF
2O)
8−12(CF
2CF
2O)
8−12CF
2CH
2OH、Ausimontより入手可能)等のペルフルオロポリエーテルジオール;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH
2CF
2OC
2F
4O(CF
2)
4OC
2F
4OCF
2CH
2OH);及び1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH
2CF
2CF
2O(CF
2)
4OCF
2CF
2CH
2OH)が挙げられる。
【0175】
少なくとも1つのフッ素含有基を含む、より好ましいポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH
2CF
2CF
2O(CF
2)
4OCF
2CF
2CH
2OH)が挙げられる。
【0176】
好適な非フッ素化ポリオールには、少なくとも1つの脂肪族部分、ヘテロ脂肪族部分、脂環式部分、ヘテロ脂環式部分、芳香族部分、複素環式芳香族部分、又はポリマー部分を含むものが挙げられる。
【0177】
非フッ素化ポリオールとしては、例えば、1,2−エタンジオール;1,2−プロパンジオール;3−クロロ−1,2−プロパンジオール;1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);2−エチル−1,3−プロパンジオール;2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール;1,5−ペンタンジオール;2−エチル−1,3−ペンタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,2−、1,5−、及び1,6−ヘキサンジオール;2−エチル−1,6−ヘキサンジオール;ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,8−オクタンジオール;ビシクロ−オクタンジオール;1,10−デカンジオール;トリシクロ−デカンジオール;ノルボルネンジオール;並びに1,18−ジヒドロキシオクタデカン等のアルキレングリコールが挙げられる。
【0178】
R
1は、典型的には、ポリアシル化合物(複数可)の残基である。ポリアクリル化合物は、典型的にはカルボン酸、又はその誘導体である。好適なジカルボン酸としては、上記のR
1基を提供するアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。
【0179】
有用なフッ素含有一官能性化合物には、次式の化合物:
R
f−Q’ (VII)
[式中、
R
fは、フッ素化基、好ましくは上記のようなフルオロアルキル又は(例えば、C4)ペルフルオロアルキル基であり、
Q’は、(ポリアシル化合物の)末端アシル基又は(ポリオールの)ヒドロキシル基に対して反応性がある官能基を含む部分である]が挙げられる。
【0180】
化合物R
fQ’が、ポリオール又はアシル化合物と反応して末端部分R
fQ−を提供することは理解されよう。
【0181】
R
fQ’は、典型的には上記のフッ素含有モノアルコールを含む。種々のフッ素含有モノアルコールは、上記の米国特許第6753380号にも記載されている。
【0182】
フルオロケミカル一官能性化合物RfQ’は、フッ素含有モノカルボン酸、又はその誘導体を含んでもよい。種々のフッ素含有モノカルボン酸は、上記の米国特許第6753380号に記載されている。
【0183】
所望であれば、(例えば、低濃度の)非フッ素化一官能性化合物、例えばモノアルコール(複数可)又はモノカルボン酸(複数可)を使用できる。
【0184】
別の実施形態において、フルオロケミカル材料は、米国特許第6803109号に記載のようにウレタン化合物又はオリゴマーを含む。ウレタン化合物及びオリゴマーは、次式:
R
fQO−C(O)NHR
1NHC(O)−OQRf (VIII)
(R
fQO−がフッ素化アルコールから誘導され、−C(O)NHR
1NHC(O)−がジイソシアネートから誘導される場合)、又は
R
fQO−[C(O)NHR
1NHC(O)OR
2O]
n[C(O)NHR
1NHC(O)]m−OQRf (IX)
(R
fQO−がフッ素化アルコールから誘導され、−OR
2O−がフッ素化ポリオールから誘導され、−C(O)NHR
1NHC(O)−がジイソシアネートから誘導される場合)によって表されてもよく、
式VIII及びIXにおいて、
nは、数字1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10から選択される数字又は範囲であり、
mは1であり、
R
fは、上記のように、フッ素化基であり、
Qは、上記のような二価結合基であり、
R
1及びR
2は、上記のとおりである。
【0185】
単一化合物に加えて、一般式に対応する化合物及びオリゴマーの混合物が表され得ることが理解されるであろう。混合物の場合、m及びnは非整数値の平均であり得る。化合物及びオリゴマーの混合物は、低濃度(例えば、化合物又はオリゴマーの5、4、3、2、又は1重量%未満)の他の化合物及びオリゴマーを含んでもよい。例えば、混合物は、mが0であり、単位nの末端酸素原子が水素に結合して、当該単位がヒドロキシル基で終端している種を含んでもよい。
【0186】
代表的な化合物は、参照により本明細書に援用される米国特許第6803109号に記載されている。
【0187】
式IXに示すように、フルオロケミカルウレタンオリゴマーは、典型的には、1つ以上のフッ素化ポリオール(例えば、FBSEE−C
4F
9SO
2N(C
2H
4OH)
2、1つ以上のポリイソシアネート化合物、及び1つ以上の一官能性フッ素含有化合物(例えば、MeFBSE−C
4F
9SO
2N(CH
3)CH
2CH
2OH))の縮合反応生成物を含む。
【0188】
別の実施形態において、フッ素含有ポリオールは、ジイソシアネートによって鎖延長され得、これは次にR
1を含むポリオールと反応する。この実施形態では、オリゴマーは次式:
R
fQO−[C(O)NHZR
2ZNHC(O)OR
1O]
n[C(O)NHZR
2ZNHC(O)]m−OQRf (X)
[式中、n、m、Rf、R
1、及びR
2は上記と同じであり、
−C(O)NHZR
2ZNHC(O)−は、鎖延長したフッ素含有ポリオールの残基であり、Zは、C4〜C6炭化水素(例えばアルキレン)等のジイソシアネートの残基である]を有する。
【0189】
ウレタン化合物及びオリゴマーの調製に有用なフッ素化ポリオールは、上記と同じである。
【0190】
種々のポリイソシアネート化合物が、ウレタン化合物及びオリゴマーの調製に有用である。ポリイソシアネート化合物は、概ね、多価の脂肪族、脂環式若しくは芳香族部分(R
1)を含み得る多価有機基に結合したイソシアネート基;又はビウレット、イソシアヌレート、若しくはウレトジオンに結合した多価の脂肪族、脂環式若しくは芳香族部分、又はこれらの混合物、を含む。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、平均で2個のイソシアネート(−NCO)基を含有する。2個の−NCO基を含有する化合物は、好ましくは、−NCO基が結合している、二価の脂肪族基、脂環式基、芳香脂肪族基、又は芳香族基を含む。直鎖脂肪族の二価の基が好ましい。
【0191】
好適なポリイソシアネート化合物の代表例としては、イソシアネート官能性誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、例えば、尿素、ビウレット、アロファネート、イソシアネート化合物の二量体及び三量体(ウレトジオン及びイソシアヌレート等)、並びにこれらの混合物が挙げられる。脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族ポリイソシアネート等のあらゆる好適な有機ポリイソシアネートを、単独であるいは2つ以上の混合物として用いてよい。脂肪族ポリイソシアネート化合物は、一般的に芳香族化合物よりも良好な光安定性を提供する。一方で、芳香族ポリイソシアネート化合物は、一般的に脂肪族ポリイソシアネート化合物よりも経済的で、ポリオールに対する反応性が高い。好適な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、TDIとトリメチロールプロパンとの付加体(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)からDesmodur(商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレート三量体(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)からDesmodur(商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0192】
有用な脂環式ポリイソシアネート化合物の例としては、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI、Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)からDesmodur(商標)Wとして市販されている)、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(Bayerから入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0193】
有用な脂肪族多官能性イソシアネート化合物の例としては、例えば、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ジイソシアネート二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)からのDesmodur(商標)N−100及びN−3200)、HDIのイソシアヌレート(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)からDesmodur(商標)N−3300及びDesmodur(商標)N−3600として入手可能)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンとのブレンド(Desmodur(商標)N−3400としてBayer Corporation(Pittsburgh,PA)から入手可能)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0194】
有用な芳香脂肪族ポリイソシアネートの例としては、例えば、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)−フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)−フェニルイソシアネート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0195】
好ましいポリイソシアネートとしては、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0196】
有用なフルオロケミカル一官能性化合物としては、次式:
R
f−Q” (XI)
[式中、
R
fは、フッ素化基、好ましくは上記のような(例えば、C4)ペルフルオロアルキル基のフルオロアルキルであり、
Q”は、末端イソシアネート基又はヒドロキシル基に対して反応性がある官能基を含む部分である]のものが挙げられる。
【0197】
化合物R
fQ”が反応して末端部分R
fQ−を提供することは理解されよう。有用な反応性官能基Q”の例は、上記の米国特許第6803109号に記載されている。
【0198】
R
fQ”は、典型的には、上記のフッ素含有モノアルコールを含む。種々のフッ素含有モノアルコールは、上記の米国特許第6803109号にも記載されている。
【0199】
所望であれば、(例えば、低濃度の)非フッ素化一官能性化合物、例えばモノアルコール(複数可)又はモノカルボン酸(複数可)を使用できる。
【0200】
式V、VI、IX、及びXの材料は、末端フッ素化(例えば、C4ペルフルオロアルキル)基及び側鎖フッ素化(例えば、C4ペルフルオロアルキル)基を含むフッ素化オリゴマー又はポリマーとして特徴付けることができる。式IV、V、VI、VIII、IX、及びXの材料は、典型的には、平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する連続するアルキレン(又は式IVの場合にはアルキル)基も有する。
【0201】
フッ素化オリゴマーは、少なくとも1500又は2000g/モルの分子量(Mn)を有してもよい。フッ素化オリゴマーは、典型的には、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに、10,000、9000、8000、又は7000g/モル以下の分子量(Mn)を有する。フッ素化ポリマーは、典型的には、10,000、15,000、又は20,000g/モルよりも大きい分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態において、フッ素化ポリマーの分子量は、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィーで測定したときに、50,000、40,000又は30,000g/モル以下である。
【0202】
いくつかの実施形態において、撥性表面又はコーティングは、フルオロケミカル化合物(例えば、式IV又はVIII〜Xのもの)及びフルオロケミカルオリゴマー(例えば、式I、II、V、及びVIのもの)の両方を含む。フルオロケミカル化合物とフルオロケミカルオリゴマーとの重量比は、1:10〜10:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、重量比は1:4〜4:1の範囲である。他の実施形態において、重量比は1:3〜3:1の範囲である。他の実施形態において、重量比は1:2〜2:1の範囲である。
【0203】
いくつかの典型的な実施形態において、フルオロケミカル材料は、6個を超える炭素原子を有するフッ素化基を2%未満含む。更に、フルオロケミカル材料は、典型的には4個を超える炭素原子を有するフッ素化基を25%未満含む。好ましい実施形態において、上記のフルオロケミカル材料は、少なくとも8個の炭素原子を有するフッ素化(例えば、フルオロアルキル)基R
fを含まない。いくつかの実施形態において、フルオロケミカル材料は、少なくとも5、6、又は7個の炭素原子を有するフッ素化(例えば、フルオロアルキル)基R
fを含まない。いくつかの実施形態において、撥性表面又は撥性コーティングは、少なくとも8個の炭素原子を有するフッ素化(例えば、フルオロアルキル)基R
fを含まない。いくつかの実施形態において、撥性表面又撥性コーティングは、少なくとも5、6、又は7個の炭素原子を有するフッ素化(例えば、フルオロアルキル)基R
fを含まない。
【0204】
本明細書に記載の式に従うフルオロケミカル化合物は、化学式[RSiO
3/2]
n[式中、Rはフルオロアルキル又はその他のフッ素化有機基を含む]を有するフルオロアルキルシルセスキオキサン材料ではない。本明細書に記載の式に従うフルオロケミカル化合物は、(例えば、ビニル末端)ポリジメチルシロキサンでもない。典型的な実施形態では、フルオロケミカル材料は、ケイ素原子(silicone atom)及びシロキサン結合を含まない。
【0205】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカル材料(例えば、添加剤)は、少なくとも25重量%のフッ素含有量を有する。いくつかの実施形態では、フルオロケミカル材料のフッ素含有量は、少なくとも26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、又は37重量%、典型的には58、57、56、55、54、53、52、51、又は50重量%以下である。
【0206】
他の実施形態では、(例えば、塗料)撥液性表面は、シロキサン(例えばPDMS)材料を含む。いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、25℃において、及び40°F(4.44℃)〜130°F(54.4℃)の範囲の温度において、液体(例えば、潤滑剤)ではなく固体である。典型的な実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、フッ素化基を含まず、したがってフッ素原子を含まない。しかしながら、他の実施形態では、主にシロキサン(例えば、PDMS)の材料は、1つ以上のフッ素化基を更に含んでもよい。同様に、主にフルオロケミカルの材料は、1つ以上のシロキサン(例えば、シラン又はシロキサン)基を更に含んでもよい。フルオロケミカル材料又はシロキサン(例えば、PDMS)材料を使用することが最も一般的であるが、かかる材料の組み合わせを使用することもできる。
【0207】
いくつかの実施形態において、非フッ素化ポリマーバインダー又は熱加工可能なポリマーの大部分は、本明細書に記載の所望の撥性を提供するのに十分な量のシロキサン(例えば、PDMS)材料と組み合わされる。
【0208】
いくつかの実施形態において、シリコーン材料は、ポリシロキサン主鎖、より典型的にはポリジメチルシロキサン主鎖を有する化合物、オリゴマー又はポリマーである。ポリシロキサン主鎖は、炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基等の他の側鎖基を更に含んでもよい。シリコーン材料は、典型的には、架橋ネットワークを形成するシリコーン材料が得られるビニル基又はその他の重合性基を含まない。
【0209】
いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料(例えば、オリゴマー又はポリマー)は、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95重量%のポリジメチルシロキサン主鎖を含む。シロキサン(例えば、PDMS)材料は、より長鎖の側鎖炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基を、シロキサン(例えば、PDMS)材料の少なくとも5、10、15、20、25、30、又は35重量%の量で更に含んでもよい。
【0210】
シロキサン(例えば、PDMS)オリゴマーは、GPCで測定したときに少なくとも1500又は2000g/モルの分子量(Mn)を有してもよい。シロキサンオリゴマーは、典型的には10,000、9000、8000、又は7000g/モル以下の分子量(Mn)を有する。シロキサン(例えば、PDMS)ポリマーは、典型的には10,000、15,000、又は20,000g/モルより大きい分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態において、シロキサンポリマーの分子量は、100,000、75,000、又は50,000g/モル以下である。
【0211】
いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、より長鎖の側鎖炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基を含み、より長鎖の炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基は、平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、より長鎖の側鎖炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基を含み、より長鎖の炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基は、平均で20個より多い、例えば、少なくとも25、30、35、又は40個の炭素原子を有する。より長鎖の側鎖炭化水素(例えば、好ましくはアルキル)基は、典型的には平均で75、70、65、60、又は50個以下の炭素原子を有する。
【0212】
いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、アルキルジメチコンとして特徴付けることができる。アルキルジメチコンは、平均で少なくとも8、10、又は12個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状アルキル基を少なくとも1つ含む、ラウリルジメチコン等であり、次のように表される。
【化8】
【0213】
いくつかの実施形態において、アルキルジメチコンは、平均で少なくとも14、16、又は18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状アルキル基を少なくとも1つ含む、セチルジメチコン及びステアリルジメチコン等である。
【0214】
これらの材料は、末端アルキル(C1〜C4、典型的にはメチル)シラン基及び側鎖(例えば、直鎖)アルキル基を有する(例えば、直鎖)ポリシロキサン主鎖を有することを特徴とする。
【0215】
好ましいアルキルジメチコンは、典型的には次の構造:
【化9】
[式中、(a+b+c)の合計は、約100〜1000、例えば、約200〜500、又は約300〜400であり、a対(b+c)の合計の比は、約99.9:0.1〜80:20、又は約99:1〜85:15、又は約99:1〜90:10、又は約99:1〜92:8、又は約98:2〜93:7、又は約又は約98:2〜94:6であり、R
1は、20〜50個の炭素原子、例えば、約22〜46個の炭素原子、又は約24〜40個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基であり、R
2は、2〜16個の炭素、例えば、約4〜16個、又は約5〜12個、又は約6〜10個、又は約8個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル若しくはアルカリル基であり、構造は、ランダム、ブロック、又はブロック状構造である]を有する。いくつかの実施形態では、上記のa対(b+c)の比は、R
1及びR
2基中の炭素数と併せて、約50重量%より多くのジメチルシロキサン(a)単位、又は実施形態では、約60重量%より多くのジメチルシロキサン単位を有するアルキルジメチコンをもたらす。いくつかの実施形態では、cは0である。いくつかの実施形態では、(a+b+c)の合計は、約300〜400であり、a対(b+c)の合計の比は、約98:2〜94:6である。実施形態では、アルキルジメチコンは、その2つ以上の種のブレンドであり、該種は、(a+b+c)の合計に関して、a対(b+c)の合計の比に関して、cの値に関して、又は2つ以上の当該パラメータにおいて、異なる。いくつかの実施形態において、アルキルジメチコンは、ランダム構造である。いくつかの実施形態では、R
1は、直鎖アルキル基である。いくつかの実施形態では、R
2は、直鎖アルキル基である。
【0216】
式XIIのアルキルジメチコン材料は、末端アルキル(C1〜C4、典型的にはメチル)シラン基及び複数の側鎖(例えば、直鎖)アルキル基を有する(例えば、直鎖)ポリシロキサン主鎖を有することを特徴とする。
【0217】
ジメチコンの合成方法は、当該技術分野において既知である。例えば、参照により本明細書に援用される、米国特許第9,187,678号を参照されたい。
【0218】
アルキルジメチコンの構造は、一般に好ましくは直鎖構造であるが、かかる構造は、合成又は購入したとき、ある量(例えば、少量)の分枝を含み得ることは当業者によって理解されるであろう。そのような分岐は、当業者によって理解される用語を使用して、「T」及び「Q」官能基と呼ばれる。本明細書における実施形態のうちのいずれにおいても、実質的に直鎖のアルキルジメチコン構造は、ある量のT分岐、Q分岐、又は両方を含むことができる。
【0219】
いくつかの実施形態において、シロキサン(例えば、アルキルジメチコン)材料は、少なくとも140又は150°F〜170、175、又は180°Fの範囲の融解温度(例えば、DSCで測定したときの吸熱ピーク)を有する。
【0220】
種々の有機ポリマーバインダーを使用できる。フッ素化有機ポリマーバインダーも使用できるが、フッ素化有機ポリマーバインダーは、一般的に、非フッ素化バインダーよりもかなり高額である。更に、非フッ素化有機ポリマーバインダーは、スプレー塗布システムのポリマー構成要素(例えば、収容容器、ライナー、又は蓋)に対してより良好な接着を示し得る。
【0221】
好適な非フッ素化バインダーとしては、例えば、ポリスチレン、アタクチックポリスチレン、アクリル(すなわち、ポリ(メタ)アクリレート)、ポリエステル、ポリウレタン(ポリエステル型熱可塑性ポリウレタン「TPU」を含む)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。熱加工してスプレー塗布システムの構成要素(例えば、収容容器、ライナー、又は蓋)を製造できるポリマー材料の多くは、後述するように、(例えば、有機溶媒)コーティング組成物の非フッ素化有機ポリマーバインダーとして使用できる。しかし、典型的な実施形態では、非フッ素化有機ポリマーバインダーは、構成要素のポリマー材料とは異なる材料である。いくつかの実施形態において、有機ポリマーバインダーは、典型的には、水との後退接触角が90、80、又は70°未満である。したがって、バインダーは、典型的にはシロキサン(例えば、PDMS)材料ではない。
【0222】
いくつかの実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、比較的高い分子量を有する、フィルムグレード樹脂である。フィルムグレード樹脂は、撥かれる液体(例えば、塗料)中に存在し得る有機溶媒中で、より耐久性があり、より溶解しにくい可能性がある。他の実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、より低い分子量のフィルム形成樹脂であり得る。フィルム形成樹脂は、液体(例えば、塗料)収容容器又はライナーに対する適合性により優れ、折り畳み性に影響する可能性が低い可能性がある。粘度及びメルトフローインデックスは、分子量の指標である。(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーの混合物も使用してよい。
【0223】
いくつかの実施形態では、フィルムグレードの(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、典型的には、200℃/5kgで少なくとも1、1.5、2、2.5、3、4、又は5g/10分から200℃/5kgで最大20、25、又は30g/10分までの範囲のメルトフローインデックスを有する。メルトフローインデックスは、ASTM D−1238に従って測定できる。(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーの引張り強度は、典型的には、少なくとも40、45、50、55、又は60MPaである。更に、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、10%又は5%未満の低い破断点伸びを有し得る。引張り及び伸び特性は、ASTM D−638に従って測定できる。
【0224】
他の実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、フィルムグレードポリマーよりも低い分子量及び低い引張り強度を有する。一実施形態では、400°F(204℃)における(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーの溶融粘度(ASTM D−1084−88により測定したとき)は、約50,000〜100,000cpsの範囲である。別の実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーの分子量(Mw)は、典型的には少なくとも約1000、2000、3000、4000、又は5000g/モルから最大10,000、25,000、50,000、75,000、100,000、200,000、300,000、400,000、又は500,000g/モルまでの範囲である。いくつかの実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、少なくとも5、10、又は15MPaから最大25、30又は35MPaまでの範囲の引張り強度を有する。他の実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、少なくとも40、45、又は50MPaから最大75又は100MPaまでの範囲の引張り強度を有する。いくつかの実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、最大25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900若しくは1000%又はそれ以上の破断点伸びを有する。いくつかの実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、少なくとも50、60、70、又は80から最大100までの範囲のショアA硬度を有する。
【0225】
いくつかの実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、コーティングされた基材又は物品の使用温度に適合するように選択される。
【0226】
この実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、DSCで測定できるガラス転移温度(Tg)が、0℃又は32°Fである。いくつかの実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、20°F、10°F、0°F、−10°F、−20°F、−30°F、−40°F、−50°F、−60°F、−70°F、又は−80°F未満のガラス転移温度(Tg)を有する。いくつかの実施形態において、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、少なくとも−130℃のTgを有する。(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーの選択は、撥性表面の耐久性に寄与し得る。
【0227】
典型的な実施形態では、非フッ素化有機ポリマーバインダーは、最も外側の表面層へのフルオロケミカル材料(例えば、化合物)の移行を妨げ得ることから、フルオロケミカル材料との化学(例えば、共有)結合を形成しない。同様に、非フッ素化有機ポリマーバインダーは、典型的には、最も外側の表面層へのシロキサン(例えば、PDMS)材料の移行を妨げ得ることから、シロキサン(例えば、PDMS)材料との化学結合を形成しない。
【0228】
いくつかの実施形態では、(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーは、アルキド樹脂の場合のように、硬化性ではない。アルキド樹脂は、脂肪酸及びその他の構成成分の添加によって変性されたポリエステルである。アルキド樹脂は、ポリオールとジカルボン酸又はカルボン酸無水物から誘導される。アルキドは、大部分の市販「油性」塗料及びコーティングの最も一般的な樹脂又は「バインダー」である。
【0229】
いくつかの実施形態では、非フッ素化ポリマーバインダーの選択は、所望の液体(例えば、塗料)撥性をもたらすフルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の濃度に影響し得る。例えば、バインダーが800〜5000kg/モルの分子量を有するアタクチックポリスチレンの場合、所望の液体(例えば、塗料)撥性を得るためのフルオロケミカル材料の濃度は、2.5重量%よりも大きいことが確認された。したがって、いくつかの非フッ素化ポリマーバインダーに関して、フルオロケミカル材料の濃度は、フルオロケミカル材料及び(例えば、非フッ素化)ポリマーバインダーの総量の少なくとも3、3.5、4、又は5重量%であってもよい。
【0230】
フルオロポリマー、又はフルオロケミカル材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含む組成物を、種々の有機溶媒に溶解、懸濁、又は分散して、基材又はスプレー塗布システムの構成要素上に組成物をコーティングする際に使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。同様に、シロキサン(例えば、PDMS)ポリマー、又はシロキサン(例えば、PDMS)材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含む組成物を、種々の有機溶媒に溶解、懸濁、又は分散して、基材又はスプレー塗布システムの構成要素上に組成物をコーティングする際に使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。有機コーティング組成物は、典型的には、コーティング組成物の重量に対して少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の有機溶媒又はそれ以上を含有する。コーティング組成物は、典型的には、コーティング組成物の総重量に対して少なくとも約0.01%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%,6%、7%、8%、9%、10%、15%又はそれ以上の固形分のフルオロポリマー又は(例えば、非フッ素化)有機ポリマーバインダーとフルオロケミカル材料及び/若しくはシロキサン(例えば、PDMS)材料とを含有する。しかし、コーティング組成物は、更に固体量の多い、例えば、20、30、40、又は50重量%の固形分の濃縮物として提供されてもよい。好適な溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、塩化炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、少なくとも50重量%以上の水及び有機共溶媒を含む水性の懸濁液、エマルション、又は溶液である。
【0231】
コーティング組成物は、そのような含有が液体(例えば、塗料)撥性を損なわないという条件で、1種類以上の添加剤を含有してもよい。
【0232】
コーティング組成物は、例えば、噴霧、パディング、浸漬、ロールコーティング、はけ塗り、又は染着等の標準的な方法(所望により、任意の残っている水又は有機溶媒を除去するために処理済基材を乾燥する工程が続く)により、基材又は構成要素に塗布することができる。基材は、後で液体(例えば、塗料)収容容器、ライナー又は蓋に熱成形することができるシート物品の形態であってもよい。適切な大きさの平坦な基材をコーティングするとき、確実に基材を均一にコーティングするため、ナイフコーティング又はバーコーティングを使用してもよい。
【0233】
有機コーティング組成物の含水量は、好ましくは1000、500、250、100、50ppm未満である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は低い相対湿度、例えば、25℃で40%、30%又は20%未満で基材に塗布される。
【0234】
コーティング組成物は、所望の撥性を達成するために十分な量で塗布することができる。250、300、350、400、450、又は500nmから最大1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5ミクロンまでの範囲の薄いコーティングが、所望の撥性をもたらし得る。しかしながら、より厚いコーティング(例えば、最大約10、15、20ミクロン又はそれ以上)もまた使用することができる。より厚いコーティングは、比較的高濃度の固体を含有するコーティング組成物のより厚い単層を基材に塗布することによって、得ることができる。より厚いコーティングは、逐次の層を基材に塗布することによっても得ることができる。
【0235】
別の実施形態では、フルオロケミカル及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料を、熱加工可能な(例えば、熱可塑性)ポリマーと組み合わせ、次いで表面層、基材、又は液体(例えば、塗料)撥性収容容器、ライナー若しくは蓋等の構成要素へと溶融加工してもよい。この実施形態では、フルオロケミカル材料は、典型的には表面に移行して、フルオロケミカル材料及び熱加工可能なポリマーの総量に対して、フルオロケミカル材料の濃度が高い表面層を形成する。更に、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、典型的には表面に移行して、シロキサン材料及び熱加工可能なポリマーの総量に対して、シロキサン材料の濃度が高い表面層を形成する。
【0236】
典型的な実施形態では、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の量は、少なくとも約0.05、0.1、0.25、0.5、1.5、2.0又は2.5重量%であり、いくつかの実施形態では、少なくとも約3.0、3.5、4.0、4.5又は5重量%である。フルオロケミカル又はシロキサン材料の量は、典型的には、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料(溶融添加剤)と熱加工可能なポリマーとの合計の25、20、15、又は10重量%以下である。
【0237】
溶融加工によってポリマーブレンドを作製するため、フルオロケミカル材料又はシロキサン材料を、例えば、ペレット、顆粒、粉末、又はその他の形態の熱加工可能なポリマーと混合し、次いで、例えば、型成形又は溶融押出等の既知の方法によって溶融加工してもよい。フルオロケミカル材料は、ポリマーと直接混合することができ、又は、ポリマーの中におけるフルオロケミカル材料の「マスターバッチ」(濃縮物)の形態でポリマーと混合することができる。同様に、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、熱加工可能なポリマーと直接混合することができ、又は、ポリマー中におけるシロキサン(例えば、PDMS)材料の「マスターバッチ」(濃縮物)の形態でポリマーと混合することができる。所望される場合には、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料の有機溶液を、粉末状又はペレット状のポリマーと共に混合し、その後、乾燥し(溶媒を除去するため)、続いて溶融加工することができる。あるいは、押出又は型成形して物品にする直前に、フルオロケミカル及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)組成物をポリマー溶融物に添加して混合物を生成するか、溶融ポリマーの流れに注入してブレンドを作製してもよい。
【0238】
いくつかの実施形態では、溶融加工可能な(例えば、熱可塑性)ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、又はポリアクリレートである。熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリオレフィン、1種類以上のポリオレフィンの混合物若しくはブレンド、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンコポリマーの混合物、又は少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのポリオレフィンコポリマーとの混合物である。
【0239】
熱可塑性ポリマーは、より好ましくは、ポリマー単位又はコポリマー単位が、エチレン、プロピレン若しくはブチレン又はこれらの混合物であるポリオレフィンポリマー又はコポリマーである。したがって、ポリオレフィンは、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン又はこれらのブレンド若しくはコポリマーである。その他のポリオレフィンとしては、ポリ−α−オレフィン、及びそのコポリマー(低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、及びポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー等)、並びに非オレフィン含有物(つまり、オレフィンではないモノマーに由来する含有物)を有するポリオレフィンコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態で用いられるポリオレフィンポリマーの非オレフィン含有物には、特に限定されないが、例えば、1〜5重量%のアクリル酸又はメタクリル酸官能基(酸官能基ナトリウム塩、亜鉛塩、又はカルシウム塩を含む)、1〜5重量%の無水物官能基(無水マレイン酸、又は対応する開環カルボン酸塩官能基等)、及び同様のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、非ポリオレフィン含有物を含むポリオレフィンのブレンドは、目的レベルの非オレフィン含有物を提供するために、さまざまな比でポリオレフィンとブレンドされる。
【0240】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、90〜140℃の範囲である融点を有するポリエチレン、例えば、Chevron Phillipsから商品名「MarFlex 1122 Polyethylene」で入手可能なものである。
【0241】
フルオロケミカル及び/又はシロキサン溶融添加剤は、室温(例えば、25℃)及びスプレー塗布システム構成要素の使用温度(一般的に40°F〜120°Fの範囲である)において概ね固体である。フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン(例えば、PDMS)材料並びに熱加工可能なポリマーは、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン材料が、典型的には混合物の溶融加工温度で融解されるように選択される。いくつかの実施形態において、フルオロケミカル材料及び/又はシロキサン材料は、200、190、180、170、又は160℃以下の融解温度を有する。
【0242】
ポリマーフィルムの形成に、押出を使用してもよい。フィルム用途において、フィルム形成ポリマーは、回転する1本又は複数のスクリューによって押出機内を運ばれる際に同時に溶融及び混合され、その後スロット又はフラットダイを通して押出され、例えば、そこでフィルムは当業者に既知の種々の技法によってクエンチされる。フィルムは、フィルムを高温で延伸又は伸長することによって、任意にクエンチの前に配向される。
【0243】
成形物品は、上記のように溶融押出機から溶融ポリマーを金型内にプレス又は射出し、金型内でポリマーが固化することによって、製造される。典型的な溶融成形技法としては、射出成形、吹込み成形、圧縮成形及び押出成形が挙げられ、これらは当業者に周知である。成形物品は、次いで、金型から取り出され、任意に、ポリマー添加剤の物品表面への移行をもたらすために熱処理される。
【0244】
溶融加工後に、焼きなまし工程を実行して撥性の発現を向上させることができる。焼きなまし工程は、典型的にはポリマーの融解温度よりも低温又は高温で、十分な時間実施される。焼きなまし工程は、任意とすることができる。
【0245】
TFEコポリマーも、フルオロポリマーの融解温度よりも高い温度で、液体(例えば、塗料)撥性の収容容器、ライナー又は蓋等のスプレー塗布システムの構成要素へと熱加工することができる。
【0246】
潤滑剤が浸透した多孔質層及び本明細書に記載のその他の(例えば、固体の)液体(例えば、塗料)撥性材料のような撥性表面層を、多種多様な有機又は無機構成要素上に提供することができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、異なる構成要素は異なる固体材料でコーティングされる。他の実施形態では、構成要素の一部の表面は、1種類の固体の液体(例えば、塗料)撥性材料を含み、表面の別の部分は、異なる種類の固体材料を含んでもよい。同様に、構成要素の一部の表面は、1種類の固体の液体(例えば、塗料)撥性材料を含み、表面の別の部分は、多孔質層の孔に浸透した潤滑剤を含んでもよい。
【0248】
典型的な実施形態では、液体(例えば、塗料)と通常接触するスプレー塗布システムの構成要素(例えば、収容容器、ライナー又は蓋)の全表面が、本明細書に記載の液体(例えば、塗料)撥性表面を含む。他の実施形態では、液体(例えば、塗料)と通常接触するスプレー塗布システムの構成要素(例えば、収容容器、ライナー又は蓋)の表面の一部のみが、本明細書に記載の液体(例えば、塗料)撥性表面を含む。この後者の実施形態は、液体(例えば、塗料)撥性表面のない構成要素と比較して、なおも有益である。
【0249】
構成要素に好適なポリマー材料としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート又はさまざまな(メタ)アクリレートのコポリマー)、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシポリマー(例えば、ホモポリマー又はポリジアミン若しくはポリジチオールを伴うエポキシ付加ポリマー)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びそのコポリマー又はポリプロピレン及びそのコポリマー)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、フッ素化ポリマー、セルロース材料、それらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0250】
いくつかの実施形態では、透過率の増大が所望される場合、ポリマー構成要素は、透明であってもよい。用語「透明」は、可視スペクトル(400〜700ナノメートルの範囲の波長)で少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の入射光を透過することを意味する。透明な構成要素は、有色でも無色でもよい。
【0251】
好適な無機基材としては、金属及びガラス等のケイ質材料が挙げられる。好適な金属は、例えば、純金属、金属合金、金属酸化物、及び他の金属化合物を含む。金属の例としては、クロム、鉄、アルミニウム、銀、金、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、スズ、鋼(例えば、ステンレス鋼又は炭素鋼)、真鍮、これらの酸化物、これらの合金、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
多孔質層と浸透した潤滑剤との組み合わせ、及び本明細書に記載のその他の(例えば、固体)材料は、コーティングされた表面を疎水性にし得る。用語「疎水性の」及び「疎水性」は、その上で水又は水性液体の液滴が少なくとも50°、少なくとも60°、少なくとも70°、少なくとも80°、少なくとも90°、少なくとも95°、又は少なくとも100°の前進及び/又は後退水接触角を示す表面を指す。
【0253】
いくつかの実施形態では、基材又は構成要素の撥性表面の水との前進及び/又は後退接触角は、液体(例えば、塗料)撥性表面のない基材又は構成要素と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、35、40°増大し得る。いくつかの実施形態では、水との後退接触角は、少なくとも45、50、55、60、又は65°増大し得る。
【0254】
いくつかの実施形態では、表面処理及び浸透した潤滑剤、並びに本発明に記載のその他の(例えば、固体)材料は、少なくとも105、110、又は115°の水との前進及び/又は後退接触角を示す表面を提供する。水との前進及び/又は後退接触角は、典型的には135、134、133、132、131、又は130°以下であり、いくつかの実施形態では、129、128、127、126、125、124、123、122、121、又は120°以下である。撥液性表面層の水との前進及び/又は後退接触角間の差は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50°であり得る。好ましくは、表面処理された疎水性潤滑剤の浸透した多孔質表面、及び本明細書に記載のその他の(例えば、固体)材料の水との前進接触角と後退接触角との間の差は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1°以下である。水との前進及び/又は後退接触角間の差が増大するにつれて、平坦表面から(例えば、水又は塗料の)液滴が滑り又は転がり落ちるために必要な傾斜角が増大する。当業者は、水との接触角を測定するときは、脱イオン水を使用することを理解する。
【0255】
基材又は構成要素の液体(例えば、塗料)撥性表面の接触角は、水の代わりに、他の液体でも評価できる。例えば、塗料は、多くの場合、2−n−ブトキシエタノールを含むことから、液体(例えば、塗料)撥性表面の、10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水との溶液との接触角も重要となり得る。いくつかの実施形態では、かかる2−n−ブトキシエタノール溶液との前進接触角は、少なくとも45、56、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70°であり、いくつかの実施形態では、少なくとも75又は80°である。いくつかの実施形態では、かかる2−n−ブトキシエタノール溶液との後退接触角は、少なくとも40、45、50、55、60、65、又は70°である。いくつかの実施形態では、基材又は構成要素の液体(例えば、塗料)撥性表面の、10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水との溶液との前進及び/又は後退接触角は、100、95、90、85、80、又は75°以下である。
【0256】
別の実施形態では、基材又は構成要素の液体(例えば、塗料)撥性表面のヘキサデカンとの接触角は、少なくとも45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、又は75°である。ヘキサデカンとの前進接触角は、典型的には少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、又は84°である。典型的な実施形態では、ヘキサデカンとの後退又は前進接触角は、85又は80°以下である。
【0257】
多孔質層と浸透した潤滑剤との組み合わせ及び本明細書に記載のその他の(例えば、固体)材料を使用して、種々の基材の(例えば、水性)液体撥性を付与又は増強することができる。
【0258】
用語「水性」は、少なくとも50、55、60、65、又は70重量%の水を含有する液体媒体を意味する。液体媒体は、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100重量%の水のような、更に大量の水を含有してもよい。液体媒体は、水と1種類以上の水溶性有機共溶媒との、水性液体媒体が単一の相を形成するような量の混合物を含んでもよい。水溶性有機共溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−メトキシエタノール、(2−メトキシメチルエトキシ)プロパノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ−2−エチルへキシルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)、2−エチルへキシルベンゾエート、及びケトン又はエステル溶媒が挙げられる。有機共溶媒の量は、コーティング組成物の全液体の50重量%を超えない。いくつかの実施形態では、有機共溶媒の量は、45、40、35、30、25、20、15、10又は5重量%の有機共溶媒を超えない。したがって、水性という用語は、(例えば、蒸留)水並びに塗料のような水性溶液及び分散体を包含する。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の水性(例えば、塗料)の「そのままスプレーできる(ready to spray)」分散体、例えば、塗料は、少なくとも5、10,又は15重量%の固形分を含み、残りは水性液体媒体であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の水性(例えば、塗料)の「そのままスプレーできる」分散体、例えば、塗料は、少なくとも20、25、30、又は35重量%の固形分を含み、残りは水性液体媒体であってもよい。更に、いくつかの実施形態では、水性(例えば、塗料)分散体は、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85重量%の固形分を含み、残りは水性液体媒体である濃縮物であってもよい。濃縮物は、概ね希釈されて、水性(例えば、塗料)の「そのままスプレーできる」分散体が調製される。
【0260】
いくつかの実施形態では、多孔質層及び浸透した潤滑剤、並びに本明細書に記載のその他の(例えば、固体)材料は、スプレー塗布システムの使用後、又は撥性表面を指定された時間(例えば、30秒〜5分)垂直に保持した後で水性液体(例えば、塗料)を目視(顕微鏡なしで)判定して、撥性表面積の40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、又は1%以下が塗料などの水性試験液体を含むような程度の水性液体撥性を付与することができる。
【0261】
いくつかの実施形態では、潤滑剤の浸透した多孔質層、及び本明細書に記載のその他の(例えば、固体)材料は、残留水性液体(例えば、塗料)の質量が0.01g/cm
2、0.005g/cm
2、0.001g/cm
2、又は0.0005g/cm
2以下であるような程度の撥液性を付与することができる。
【0262】
塗料撥性は、本明細書に記載の試験方法のいずれか1つ又は組み合わせに従って、試験塗料を使用して、評価してよい。PPG ENVIROBASE HIGH PERFORMANCE T409、SIKKENS AUTOWAVE、SPIES HECKER PERMAHYD HI−TEC BASE COAT 480、及びGLASURIT ADJUSTING BASE 93−E3等の種々の水性自動車用塗料が、本明細書に記載の表面によって撥かれることが確認された。他に特記のない限り、本明細書に記載の試験方法に従って塗料撥性を判定するための試験塗料は、PPG Industries(Pittsburgh PA)から入手可能な、90重量%のENVIRONBASE HIGH PERFORMANCE T409 DEEP BLACKと10重量%のENVIRONBASE HIGH PERFORMANCE T494 PAINT THINNERとを含有する仕様に混合したPPG Envirobase自動車用塗料又は3M(St.Paul,MN)から入手可能なものであった。
【0263】
液体(例えば、塗料)撥性表面は、好ましくは、液体(例えば、塗料)撥性が、十分な量の時間(例えば、(例えば、使い捨ての)液体(例えば、塗料)収容容器又はライナーが使用される通常の持続時間)にわたって維持される耐久性を有する。いくつかの実施形態において、液体(例えば、塗料)撥性は、表面摩耗試験(実施例に記載の試験方法による)の後に維持される。いくつかの実施形態において、液体(例えば、塗料)撥性は、表面摩耗試験後に、ある程度低下する場合があるが、なお高い撥性を維持する。したがって、表面摩耗試験後の接触角又は塗料撥性は、上記の基準に適合する。
【0264】
本明細書に記載のスプレー塗布システムは、塗料のような、水性液体混合物の塗布に利用できる。
【0265】
本明細書で使用するとき、用語「塗料」は、上記の水性液体媒体と、その水性液体媒体中に分散されたポリマー(例えば、ラテックス)バインダーと、を有する組成物を指す。塗料に使用される一般的なポリマーバインダーとしては、アクリル系ポリマー、アルキドポリマー、ウレタンポリマー、エポキシポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、(例えば、下塗り)塗料は、アクリル系ポリマーとアルキドポリマーとの組み合わせを含んでもよい。他の実施形態では、(例えば、クリアコート)塗料は、「そのままスプレーできる」組成物の場合、ヘキサメチレンイソシアネートオリゴマー及び/又はシクロヘキシルイソシアネートオリゴマーを約20〜40重量%の範囲の濃度で含んでもよい。
【0266】
二酸化チタン、シリカ、カーボンブラック等の不透明化顔料、又はその他の着色剤(すなわち、黒又は白以外の顔料又は染料)の不在下では、塗料は「クリアコート」として特徴付けられてもよい。不透明化顔料を更に含むが、着色顔料を含まない塗料は、プライマーとして特徴付けられてもよい。更に、不透明化顔料及び着色剤の両方を更に含む塗料は、下塗りとして特徴付けられてもよい。
【0267】
クリアコートは概ね不透明化顔料及び着色剤を含まないのに対し、プライマー及び下塗りは、典型的には、少なくとも10、15、20、25又は30重量%以上の二酸化チタン等の不透明化顔料を含む。下塗りは、種々の濃度で着色剤を更に含む。いくつかの実施形態では、塗料は5〜25重量%の着色剤を含む。
【0268】
液体媒体は、比較的低濃度の揮発性有機溶媒を含んでもよい。例えば、水性艶消し建築用塗料、水性自動車用プライマー、及び水性クリアコートの揮発性有機物含有量は、典型的には、250グラム/リットル以下であり、いくつかの実施形態では、200グラム/リットル、150グラム/リットル、100グラム/リットル、又は50グラム/リットル以下である。VOC含有量は、更に高くてもよく、特に自動車用下塗りでは、少なくとも275、300、又は325グラム/リットルから最大500グラム/リットルまでの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、VOC含有量は450又は425グラム/リットル以下である。非VOCと呼ばれる塗料は、典型的には、5グラム/リットル以下の揮発性有機溶媒を含有してもよい。本明細書で使用するとき、VOCは、101.3kPaの標準大気圧で測定したときに250℃以下の沸点を有する任意の有機化合物である。
【0269】
着色顔料(複数可)の濃度が増すにつれて、かかる着色顔料(複数可)の溶解及び分散を目的として存在する(例えば、揮発性)有機溶媒の濃度も増大し得る。更に、(例えば、揮発性)有機溶媒は、塗料の粘度を低下させるためにも使用できる。粘度は、選択した薄め液のレベルと共に変動するであろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、「そのままスプレーできる」塗料の20℃における粘度は、50〜100cpsの範囲である。
【0270】
塗料は、アルコール(例えば、アルキレングリコールアルキルエーテル)のような水溶性有機溶媒を含んでもよい。例えば、塗料は、171℃(340°F)の沸点を有する2−ブトキシエタノール(エチレングリコールモノブチルエーテル);171℃(340°F)の沸点を有するブトキシプロパン−2−オール(プロピレングリコールn−ブチルエーテル);230℃(446°F)の沸点を有する2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル);及びこれらの組み合わせを含んでもよい。塗料は、かかるアルコールの1種類以上を、少なくとも5重量%から最大10、15、20、又は25重量%までの範囲の総濃度で含んでもよい。
【0271】
塗料は、「除外」溶媒、すなわち、環境化学者により、地表レベルのオゾン(スモッグ)を生じないと特徴付けされ得るその他の溶媒を更に含んでもよい。代表例としては、アセトン、酢酸エチル、第三級酢酸ブチル(TBAc)、及びイソプロパノールが挙げられる。
【0272】
本明細書に記載のスプレー塗布システムを使用して塗料のような水性液体混合物を塗布する場合、その方法は、同じ又は異なる塗料組成物の1回を超えるコーティングを塗布する工程を含んでもよい。例えば、一実施形態では、方法は、プライマー又はシーラーの1回以上のコーティングを塗布する工程を含んでもよい。別の実施形態では、方法は、(例えば、着色された)下塗りの1回以上のコーティングを塗布する工程を含んでもよい。別の実施形態では、方法は、クリアコートの1回以上のコーティングを塗布する工程を含んでもよい。方法は、プライマー、シーラー、下塗り、及び/又はクリアコートの組み合わせを塗布する工程を含んでもよい。方法は、プライマー、シーラー及びクリアコートよりも実質的に高額である(例えば、自動車用)下塗りとの使用に特に有利である。
【0273】
いくつかの実施形態では、3〜4回のコーティングを(例えば、自動車パネルに)塗布してもよく、その各コーティング、又は換言すれば「1回のウェットコートで構築されるフィルム」は、厚さが0.80〜1.0milの範囲である。これを乾燥すると、約0.10〜0.20milの範囲で構築される乾燥フィルムが製造できる。
【0274】
いくつかの実施形態では、この方法の各コーティングは、水性塗料を利用する。他の実施形態では、少なくとも1つのコーティングは有機溶媒系塗料、すなわち、水と共に単一相を形成しない場合がある有機溶媒を50重量%より多く含む塗料であってもよい。有機溶媒系塗料は、典型的には、いかなる水も含有しない。例えば、溶媒系クリアコートは、有機極性及び非極性溶媒、例えば、キシレン、アセトン、ナフサ、アルキルベンゼン、トルエン、ヘプタン−2−オン等を、少なくとも50重量%、又は60重量%から最大約75重量%以上の範囲の全有機溶媒濃度で含有してもよい。
【0275】
1つの具体化された方法において、溶媒系クリアコートは、乾燥した水性下塗りに塗布される。
【0276】
塗料が有機溶媒を含む場合、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)は、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)が塗料の有機溶媒(複数可)に対して溶解性がないか、微溶性しかなく、例えば、0.01グラム/リットル又は0.001グラム/リットル以下の溶解度を有するように選択されてもよい。更に、塗料が有機溶媒を含む場合、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、又はフルオロポリマーは、塗料の有機溶媒に対して溶解性がないか、微溶性しか示さないように、例えば、0.01グラム/リットル又は0.001グラム/リットル以下の溶解度を示すように、選択されてもよい。
【0277】
別の方法として、又は微溶性と組み合わせて、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)並びに非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、及び/又はフルオロポリマーは、塗料及び塗料塗布方法との適合性があるように選択されてもよい。同様に、シロキサン(例えば、PDMS)材料は、塗料及び塗料塗布方法と適合性があるように選択されてもよい。潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料及び/又はフルオロポリマーは、塗料中に更に高い濃度、すなわち、0.01グラム/リットルより多く、又は0.1グラム/リットルより多く、又は0.25グラム/リットルより多く、又は0.5グラム/リットルより多く存在してもよく、なおも塗料及び塗料塗布方法との適合性を有し得る。いくつかの実施形態では、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料及び/又はフルオロポリマーは、塗料添加剤として機能してもよく、塗料中に約0.5グラム/リットルから塗料の1、1.5、2、2.5、又は3重量%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0278】
潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、及び/又はフルオロポリマーの塗料との適合性を判定するために種々のアプローチをとることができる。
【0279】
1つのアプローチでは、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)は、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)が塗料の表面に移行しないような、塗料との十分な(例えば、化学的)適合性があってもよい。これは、1つの主表面における乾燥塗料の潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)の濃度を、乾燥塗料の下又は反対側の主表面層と比較することによって評価できる。乾燥塗料の反対側の主表面層が実質的に同じ濃度(より高い濃度を有する主表面と比較して10、5又は1%未満の差)の潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)を含む場合、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)は、化学的に適合性があると特徴付けることができる。同様に、乾燥塗料の反対側の主表面層が実質的に同じ濃度(より高い濃度を有する主表面と比較して10、5又は1%未満の差)の非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、及び/又はフルオロポリマーを含む場合、かかる材料は、塗料との化学的適合性があると特徴付けることができる。
【0280】
別のアプローチでは、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)は、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)が、塗装された基材の層間接着に影響しないような、塗料との十分な適合性があってもよい。これは、テープ試験による接着測定の標準試験方法(ASTM D3359−09)に従って評価できる。クロスハッチ接着性が、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)不在の同じ塗料の対照と比較して実質的に同じである場合、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)の存在は、層間接着に影響しないと特徴付けることができる。典型的には、ASTM D3359−09に従うクロスハッチ接着試験の後で、90、95、又は100%の塗料が保持される。同様に、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、及び/又はフルオロポリマーは、その存在が、塗装された基材の層間接着に影響しないような、塗料との十分な適合性があってもよい。
【0281】
更に別のアプローチでは、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、及び/又はフルオロポリマーは、潤滑剤(又は潤滑剤と疎水性層との組み合わせ)、非フッ素化ポリマーバインダー、フルオロケミカル材料、シロキサン(例えば、PDMS)材料、及び/又はフルオロポリマーが塗料の塗布方法に影響しないような、塗料との十分な適合性があってもよい。例えば、同じ塗料の追加コーティングは、上記のように、十分なフィルム厚で均一に塗布され得る。更に別の実施例では、異なる塗料(例えば、乾燥した下塗りに塗布されたクリアコート)の追加コーティングは、上記のように、十分なフィルム厚で均一に塗布され得る。塗装されたパネル又は基材全体に均一性がないことは、典型的には、塗料の塗布中に「フィッシュアイ」若しくはその他の不適合性関連のコーティング不良の発生を観察することによって、又は塗布した塗料が乾燥した後に測定され得る不均一な光沢及び/若しくは色によって、視覚的に検出することができる。
【0282】
構成要素(例えば、液体収容容器、ライナー、又は蓋)の撥液性表面は、上記実施形態の材料のうちの1つ又はこのような材料の任意の好適な組み合わせによって提供することができる。例えば、構成要素(例えば、ライナー)は、熱加工可能なポリマー及びフルオロケミカル溶融添加剤を含んでもよく、フルオロケミカル材料及び非フッ素化有機バインダーのコーティングを更に含んでもよい。更に、構成要素の1つは、別の構成要素と異なる実施形態の材料を有してもよい。例えば、蓋は、テフロン(商標)AFを含んでもよいのに対し、ライナーは熱加工可能なポリマー及びシロキサン又はフルオロケミカル溶融添加剤を含む。
【0283】
特記のない限り、以下の定義が本発明に適用される。
【0284】
端点による任意の数範囲の引用は、いずれも、その範囲の端点、その範囲内の全ての数、及び述べられた範囲内の任意のより狭い範囲を含むことを意味する。
【0285】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、「少なくとも1つの」と交換可能に使用され、記載されている要素のうちの1つ以上を意味する。
【0286】
用語「及び/又は(and/or)」は、一方又は両方を意味する。例えば、表現「A及び/又はB」は、A、B、又はAとBとの組み合わせを意味する。
【0287】
用語「アルキル」は、アルカンの基である一価の基を指し、直鎖状、分枝状、環状、二環状又はそれらの組み合わせである基が挙げられる。アルキル基は通常、1〜30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を含有する。
【0288】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。アルキレン基は、典型的には、1〜30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0289】
用語「アルコキシ」は、アルキル基に直接結合するオキシ基を有する一価の基を指す。
【0290】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である1価の基を指す。アリールは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和、又は飽和であってもよい。アリール基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0291】
用語「アリーレン」は、芳香族かつ炭素環式である、二価の基を指す。アリーレンは、少なくとも1つの芳香環を有し、芳香環に縮合される1つ以上の更なる炭素環式環を有することができる。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和、又は飽和であってもよい。アリーレン基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0292】
用語「加水分解性基」は、大気圧の条件下で1〜10のpHを有する水と反応し得る基を指す。加水分解性基は、多くの場合、反応の際に、ヒドロキシル基に変換される。ヒドロキシル基は、多くの場合、更に反応を受ける。典型的な加水分解性基は、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アシルオキシ、又はハロを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、多くの場合、この用語はシリル基のケイ素原子に結合した1つ以上の基に関連して用いられる。
【0293】
用語「アリールオキシ」は、アリール基に直接結合されるオキシ基を有する一価の基を指す。
【0294】
用語「アラルキルオキシ」は、アラルキル基に直接結合されるオキシ基を有する一価の基を指す。同等に、それは、アリール基で置換されたアルコキシ基であることが考慮され得る。
【0295】
用語「アシルオキシ」は、式−O(CO)R
b[式中、R
bは、アルキル、アリール、又はアラルキルである]の一価の基を指す。R
bに好適なアルキル基は、多くの場合、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。多くの場合、好適なアリールR
b基は、例えばフェニルのように、6〜12個の炭素原子を有する。R
bに好適なアラルキル基は、多くの場合、例えばフェニル等の6〜12個の炭素原子を有するアリールで置換される、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有する。
【0296】
用語「ハロ」は、フルオロ、ブロモ、ヨード、又はクロロ等のハロゲン原子を指す。ハロ基は、反応性シリルの一部であるとき、多くの場合、クロロである。
【0297】
用語「シリル」は、式−Si(R
c)
3[式中、Rcは、ヒドロキシル、加水分解性基、又は非加水分解性基である]の一価の基を指す。多くの実施形態では、シリル基は、「反応性シリル」基であり、これは、シリル基がヒドロキシル基又は加水分解性基である少なくとも1つのR
c基を含有することを意味する。いくつかの反応性シリル基は、式−Si(R
2)
3−x(R
3)
x[式中、各基R
2は独立してヒドロキシル基又は加水分解性基であり、各基R
3は独立して、非加水分解性基である]で表される。変数xは、0、1、又は2に等しい整数である。
【0298】
用語「非加水分解性基」は、大気圧の条件下で1〜10のpHを有する水と反応することができない基を指す。典型的な非加水分解性基は、アルキル、アリール、及びアラルキルを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、多くの場合、この用語はシリル基のケイ素原子に結合した1つ以上の基に関連して用いられる。
【0299】
用語「フッ素化」は、炭素原子に結合する少なくとも1個のフッ素原子を含有する基又は化合物を指す。炭素−水素結合がないペルフルオロ化基は、フッ素化基のサブセットである。
【0300】
用語「ペルフルオロ化基」は、全てのC−H結合がC−F結合で置換された基を指す。例としては、ペルフルオロポリエーテル、ペルフルオロエーテル、又はペルフルオロアルカンの一価又は二価の基が挙げられる。
【0301】
用語「ペルフルオロエーテル」は、C−H結合の全てがC−F結合で置換されるエーテルを指す。それは、酸素原子と連結された2つのペルフルオロ化基(例えば、ペルフルオロアルキレン及び/又はペルフルオロアルキル)を有する基又は化合物を指す。つまり、単一の連結された酸素原子が存在する。ペルフルオロ化基は、飽和又は不飽和であってもよく、直鎖、分枝鎖、環式、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0302】
用語「ペルフルオロポリエーテル」は、C−H結合の全てがC−F結合で置換されるポリエーテルを指す。それは、酸素原子と連結された3つ以上のペルフルオロ化基(例えば、ペルフルオロアルキレン及び/又はペルフルオロアルキル)を有する基又は化合物を指す。つまり、2個以上の連結された酸素原子が存在する。ペルフルオロ化基は、飽和又は不飽和であってもよく、直鎖、分枝鎖、環式、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0303】
用語「ペルフルオロアルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキルを指す。つまり、C−H結合の全てがC−F結合で置換される。
【0304】
用語「ペルフルオロアルカン」は、全てのC−H結合がC−F結合で置換されたアルカンを指す。
【0305】
用語「粒塊」とは、電荷又は極性によってまとまる場合があり、かつより小さい構成要素に分解可能である、一次粒子間の弱い会合を意味する。
【0306】
用語「一次粒径」とは、1個の(非凝集、非粒塊)粒子の平均直径を指す。
【0307】
粒子に関する用語「凝集体」とは、得られた外表面積が個別の構成要素の計算された表面積の合計より有意に小さくてもよい、強く結合した、又は融合した粒子を指す。凝集体を一体に保持する力は、例えば、共有結合、又は焼結若しくは複雑な物理的もつれに起因するものなどの強い力である。したがって、凝集体は、個別の一次粒子のような、それよりも小さい実体へと分解し得ない。
【0308】
以下の実施例によって、本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例で列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。
【0309】
本発明は、以下の実施形態を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0310】
実施形態1は、水との前進接触角と後退接触角との差が10未満である撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0311】
実施形態2は、上記撥液性表面がフルオロケミカル材料の表面層を含む、実施形態1の構成要素である。
【0312】
実施形態3は、上記撥液性表面層が非フッ素化有機ポリマーバインダーを更に含む、実施形態1又は2の構成要素である。
【0313】
実施形態4は、上記フルオロケミカル材料が次式:
(R
f−L−P)
nA
[R
fは、フッ素化基であり、
Lは、独立して有機二価結合基であり、
Pは、カテナリーの二価ヘテロ原子含有カルボニル部分、例えば、−C(O)O−であり、
Aは、炭化水素部分であり、
nは、典型的には1〜3の範囲である]を有する化合物である、実施形態3の構成要素である。
【0314】
実施形態5は、Lが4〜40個の炭素原子を含む炭化水素部分である、実施形態4の構成要素である。
【0315】
実施形態6は、Lが−SO
2N(CH
3)(CH
2)
n−[式中、nは1〜4の範囲である]である、実施形態1〜5の構成要素である。
【0316】
実施形態7は、上記フルオロケミカル材料の少なくとも50重量%について、R
fがCF
3[CF
2]
3−である、実施形態1〜6の構成要素である。
【0317】
実施形態8は、上記炭化水素部分が飽和アルキレン部分である、実施形態1〜7の構成要素である。
【0318】
実施形態9は、上記フルオロケミカル材料が少なくとも25重量%のフッ素含有量を有する、実施形態1〜8の構成要素である。
【0319】
実施形態10は、nが平均で少なくとも2である、実施形態1〜9の構成要素である。
【0320】
実施形態11は、上記炭化水素部分が平均で25個以下の炭素原子を有する、実施形態1〜10の構成要素である。
【0321】
実施形態12は、上記非フッ素化有機ポリマーバインダーが、ポリスチレン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリ塩化ビニルから選択される、実施形態1〜11の構成要素である。
【0322】
実施形態13は、上記フルオロケミカル材料が上記非フッ素化ポリマーバインダーとの共有結合を形成しない、実施形態1〜12の構成要素である。
【0323】
実施形態14は、上記撥液性表面がフルオロポリマーを含む、実施形態1〜13の構成要素である。
【0324】
実施形態15は、上記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマーである、実施形態14の構成要素である。
【0325】
実施形態16は、上記コポリマーが2.18g/cm
3未満の密度を有する、実施形態15の構成要素である。
【0326】
実施形態17は、上記フルオロポリマーが複素環式フッ化炭素基の重合単位を含む、実施形態1〜16の構成要素である。
【0327】
実施形態18は、上記複素環式フッ化炭素基が酸素原子を含む、実施形態17の構成要素である。
【0328】
実施形態19は、上記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルジオキソールとのコポリマーである、実施形態1〜18の構成要素である。
【0329】
実施形態20は、上記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーである、実施形態1〜19の構成要素である。
【0330】
実施形態21は、上記フルオロポリマーが19モル%未満のフッ化ビニリデンの重合単位を更に含む、実施形態1〜20の構成要素である。
【0331】
実施形態22は、上記構成要素が熱加工可能なポリマーとフルオロケミカル材料溶融添加剤(fluorochemical material melt additive)とを含む、実施形態1又は2の構成要素である。
【0332】
実施形態23は、上記フルオロケミカル材料溶融添加剤が、実施形態4〜11のいずれか1つ又は組み合わせに従う、実施形態22の構成要素である。
【0333】
実施形態24は、スプレー塗布システムの構成要素であって、この構成要素は撥液性表面層を含み、この撥液性表面層が多孔質層と多孔質層の孔に浸透した潤滑剤とを含む、構成要素である。
【0334】
構成要素25は、上記構成要素が液体収容容器、液体収容容器ライナー、液体収容容器若しくはライナー用の蓋、又はこれらの組み合わせである、実施形態1〜24の構成要素である。
【0335】
実施形態26は、上記構成要素が熱可塑性ポリマー材料を含む、実施形態1〜25の構成要素である。
【0336】
実施形態27は、上記構成要素が取り外し可能な液体収容容器ライナーである、実施形態1〜26の構成要素である。
【0337】
実施形態28は、上記構成要素が折り畳み可能な液体収容容器又はライナーである、実施形態1〜27の構成要素である。
【0338】
実施形態29は、上記スプレー塗布システムが重力供給式スプレーガンを更に含む、実施形態1〜28の構成要素である。
【0339】
実施形態30は、上記撥液性表面層が、少なくとも5、10、15、20、又は25g/リットルの揮発性有機溶媒を有する水性塗料を撥く、実施形態1〜29の構成要素である。
【0340】
実施形態31は、上記揮発性有機溶媒が水溶性である、実施形態30の構成要素である。
【0341】
実施形態32は、上記有機溶媒が1種又は複数のアルコールを含む、実施形態1〜31の構成要素である。
【0342】
実施形態33は、上記有機溶媒がアルキレングリコールアルキルエーテルを含む、実施形態1〜32の構成要素である。
【0343】
実施形態34は、上記有機溶媒が2−ブトキシエタノール、ブトキシプロパン−2−オール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、及びこれらの混合物を含む、実施形態1〜33の構成要素である。
【0344】
実施形態35は、スプレー塗布システムの使用後に、又は塗料撥性評価のための試験方法3若しくは5に従って、残留水性塗料の質量が0.01g/cm
2以下であるような撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0345】
実施形態36は、水との後退接触角が90°〜135°の範囲である撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0346】
実施形態37は、10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水とを含有する溶液との後退接触角が少なくとも40又は45°であるような撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0347】
実施形態38は、撥液性表面を垂直に方向付けた(orientated vertically)ときに塗料の液滴が表面から滑り落ちる撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0348】
実施形態39は、実施形態1〜34のいずれか1つ又は組み合わせを更なる特徴とする、実施形態35〜38の構成要素である。
【0349】
実施形態40は、スプレーガンと、スプレーガンに取り付けられた液体収容容器と、任意に液体収容容器用のライナーと、
液体収容容器及び/又はライナー用の蓋と、含むスプレー塗布システムであって、少なくとも上記液体収容容器及び/又はライナーは、多孔質層及びその多孔質層の孔に浸透した潤滑剤を含む撥液性表面層又は実施形態1〜24による撥液性表面を備える、スプレー塗布システムである。
【0350】
実施形態41は、撥液性表面が、シラン又はシロキサン材料を含む表面層を備える、実施形態1〜40の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0351】
実施形態42は、撥液性表面が、潤滑剤浸透面ではない、実施形態1〜41の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0352】
実施形態43は、撥液性表面が固体撥液性材料を含む、実施形態1〜42の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0353】
実施形態44は、シロキサン材料が、ポリシロキサン主鎖及び平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する炭化水素側鎖を含む、実施形態1〜43の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0354】
実施形態45は、構成要素の少なくとも撥液性表面が、熱加工可能なポリマーとシロキサン(例えば、PDMS)材料溶融添加剤とを含む、実施形態1〜44の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0355】
実施形態46は、撥液性表面が、テーバー線形摩耗試験機(Taber Linear Abraser)により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性である、実施形態1〜45の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0356】
実施形態47は、撥液性表面が、少なくとも1500g/モルのMnを有するフルオロケミカル材料を含む、実施形態1〜46の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0357】
実施形態48は、フルオロケミカル材料が、50,000g/モル以下のMnを有する、実施形態1〜47の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0358】
実施形態49は、フルオロケミカル材料が、200℃以下の融解温度を有する、実施形態1〜48の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0359】
実施形態50は、撥液性表面が、平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する末端ペルフルオロアルキル基、側鎖ペルフルオロアルキル基、及び連続するアルキレン基を含むフルオロケミカル材料を含む、実施形態1〜49の構成要素又はスプレー塗布システムである。
【0360】
実施形態51は、水との後退接触角が90°〜135°の範囲であって固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含む撥液性表面を備え、当該撥液性表面はテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性である、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0361】
実施形態52は、固体撥液性材料がシロキサン材料を含む、実施形態51の構成要素である。
【0362】
実施形態53は、撥液性表面が、少なくとも1500g/モルのMnを有するフルオロケミカル材料を含む、実施形態51の構成要素である。
【0363】
実施形態54は、フルオロケミカル材料が、50,000g/モル以下のMnを有する、実施形態53の構成要素である。
【0364】
実施形態55は、フルオロケミカル材料が、200℃以下の融解温度を有する、実施形態53の構成要素である。
【0365】
実施形態56は、撥液性表面が、平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する末端ペルフルオロアルキル基、側鎖ペルフルオロアルキル基、及び連続するアルキレン基を含むフルオロケミカル材料を含む、実施形態51及び53〜55の構成要素である。
【0366】
実施形態57は、水との後退接触角が90°〜135°の範囲であって固体撥液性シロキサン材料を含む撥液性表面を備える、スプレー塗布システムの構成要素である。
【0367】
実施形態58は、シロキサン材料が、シロキサン主鎖及び平均で少なくとも8、10、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を有する炭化水素側鎖を含む、実施形態52又は57の構成要素である。
【0368】
実施形態59は、スプレー塗布システムの構成要素であって、水との後退接触角が90°〜135°であって固体撥液性フルオロケミカル材料を含む撥液性表面を備え、固体撥液性フルオロケミカル材料は、少なくとも1500g/モルのMn及び50,000g/モル以下のMn又は200℃以下の融解温度を有する、構成要素である。
【0369】
実施形態60は、上記非フッ素化有機ポリマーバインダーが、ポリスチレン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びポリ塩化ビニルから選択される、実施形態51〜59の構成要素である。
【0370】
実施形態61は、構成要素の少なくとも撥液性表面が、熱加工可能なポリマーとシロキサン材料溶融添加剤とを含む、実施形態51、52、57、58の構成要素である。
【0371】
実施形態62は、構成要素の少なくとも撥液性表面が、熱加工可能なポリマーとフルオロケミカル材料溶融添加剤とを含む、実施形態51、53〜56、及び59の構成要素である。
【0372】
実施形態63は、液体収容容器、液体収容容器ライナー、液体収容容器若しくはライナー用の蓋、又はこれらの組み合わせである、実施形態51〜62の構成要素である。
【0373】
実施形態64は、熱可塑性ポリマー材料を含む、実施形態51〜63の構成要素である。
【0374】
実施形態65は、取り外し可能な液体収容容器ライナーである、実施形態63又は64の構成要素である。
【0375】
実施形態66は、折り畳み可能な液体収容容器又はライナーである、実施形態63〜65の構成要素である。
【0376】
実施形態67は、スプレー塗布システムが重力供給式スプレーガンを更に含む、実施形態51〜66の構成要素である。
【0377】
実施形態68は、撥液性表面層が、少なくとも5、10、15、20、又は25g/リットルの揮発性有機溶媒を有する水性塗料を撥く、実施形態51〜67の構成要素である。
【0378】
実施形態69は、上記揮発性有機溶媒が水溶性である、実施形態68の構成要素である。
【0379】
実施形態70は、揮発性有機溶媒が1種又は複数のアルコールを含む、実施形態68又は69の構成要素である。
【0380】
実施形態71は、揮発性有機溶媒がアルキレングリコールアルキルエーテルを含む、実施形態68又は69の構成要素である。
【0381】
実施形態72は、揮発性有機溶媒が2−ブトキシエタノール、ブトキシプロパン−2−オール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、及びこれらの混合物を含む、実施形態71の構成要素である。
【0382】
実施形態73は、スプレー塗布システムの構成要素であって、残留塗料(retained paint:残留した塗料)の質量が0.01g/cm
2以下である撥液性表面を備え、撥液性表面が、
a)固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含み、撥液性表面はテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性であり、
b)固体シリコーン撥液性材料を含み、又は
c)少なくとも1500g/モルのMn及び50,000g/モル以下のMn若しくは200℃以下の融解温度を有する固体フルオロケミカル撥液性材料
を含む、構成要素である。
【0383】
実施形態74は、スプレー塗布システムの構成要素であって、構成要素は、撥液性表面の水との前進接触角と後退接触角と間の差が15又は10未満である撥液性表面を備え、
撥液性表面は、
a)固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含み、撥液性表面はテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性であり、
b)固体シリコーン撥液性材料を含み、又は
c)少なくとも1500g/モルのMn及び50,000g/モル以下のMn若しくは200℃以下の融解温度を有する固体フルオロケミカル撥液性材料
を含む、構成要素である。
【0384】
実施形態75は、スプレー塗布システムの構成要素であって、構成要素は10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水とを含有する溶液との後退接触角が少なくとも40°である撥液性表面を備え、
撥液性表面は、
a)固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含み、撥液性表面はテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性であり、
b)固体シリコーン撥液性材料を含み、又は
c)少なくとも1500g/モルのMn及び50,000g/モル以下のMn若しくは200℃以下の融解温度を有する固体フルオロケミカル撥液性材料
を含む、構成要素である。
【0385】
実施形態76は、スプレー塗布システムの構成要素であって、構成要素は、垂直に方向付けたときに塗料の液滴が表面から滑り落ちる撥液性表面を備え、
撥液性表面は、
a)固体撥液性材料と非フッ素化有機ポリマーバインダーとを含み、撥液性表面はテーバー線形摩耗試験機により摩耗サイクルを15サイクル/分で2回施した後に撥液性であり、
b)固体シリコーン撥液性材料を含み、又は
c)少なくとも1500g/モルのMn及び50,000g/モル以下のMn若しくは200℃以下の融解温度を有する固体フルオロケミカル撥液性材料
を含む、構成要素である。
【0386】
実施形態77は、撥液性表面又は構成要素が、実施形態51〜72のいずれか1つ又は組み合わせで更に特徴付けられる、実施形態73〜76の構成要素である。
【0387】
実施形態78は、スプレーガンと、スプレーガンに取り付けられた液体収容容器と、任意に液体収容容器用のライナーと、液体収容容器及び/又はライナー用の蓋と、を含むスプレー塗布システムであって、少なくとも液体収容容器及び/又はライナーが実施形態51〜77に記載の撥液性表面を備える、スプレー塗布システムである。
【0388】
多孔質層と浸透した潤滑剤とを含む、撥液性表面の実施例
【表2】
【0389】
試験方法
IRデータは、Nicolet6700シリーズFT−IR分光計(Thermo Scientific(Waltham,MA))を使用して得た。
【0390】
水接触角の測定方法
水接触角は、Rame−Hartゴニオメータ−(Rame−Hart Instrument Co.(Succasunna,NJ))を使用して測定した。前進角(θ
adv)及び後退角(θ
rec)は、シリンジを用いて水を、静止液滴へ、又は静止液滴から、供給して測定した(液滴体積約5μL)。測定は、各表面上の2つの異なる点で行い、報告する測定値は、各試料について4つの値の平均である(各液滴について、左側及び右側の測定値)。
【0391】
塗料撥性評価の試験方法1
試験表面をPPG Envirobase塗料に浸漬し、一晩静置した。次いで、試験基材を塗料から取り出し、5分間垂直に保持して、コーティングから塗料が潜在的に流れ落ちるようにした。その後も塗料によって被覆されている表面の割合(百分率で表示)を、目視検査によって推測した。
【0392】
ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)シランの合成
HFPOシランは、式F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−CONH(CH
2)
3Si(OCH
3)
3[式中、変数aは4〜20の範囲である]の化合物である。この材料は、HFPO−COOCH
3(20g、0.01579モル)及びNH
2CH
2CH
2CH
2−Si(OCH
3)
3(2.82g、0.01579モル)を、N
2 雰囲気下で、電磁撹拌棒、窒素(N
2)入口、及び還流冷却器を備えた100mL3つ口丸底フラスコに仕込むことによって調製した。反応混合物を75℃で12時間加熱した。反応を赤外(IR)分光法によって監視し、エステルピークが消失した後、得られた透明で粘稠な油状物を更に8時間真空下で保持し、そのまま使用した。
【0393】
α−ωヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)シランの合成
α,ωHFPOジメチルエステルCH
3OC(O)−HFPO−C(O)OCH
3は、米国特許第7,718,264号の調製第26番に類似した方法によって調製した。
【0394】
出発ジオールHOCH
2CH
2NHC(O)−HFPO−C(O)NHCH2CH2OHは、100g(0.0704モル、1420MW)の上記の二価のα,ωHFPOジメチルエステル(CH
3OC(O)−HFPO−C(O)OCH
3)及び11.18g(0.1831モル)のエタノールアミンを用いて、米国特許第7,718,264号の調製第27番に類似した手順によって調製した。
【0395】
撹拌棒を備えた30mLジャーに、10g(0.006766モル、1478MW)のHOCH
2CH
2NHC(O)−HFPO−C(O)NHCH
2CH
2OH及び2.78g(0.013532当量)のGeniosil GF−40、及びDBTDLの10%MEK溶液75マイクロリットルを仕込んだ。ジャーをシールし、75℃の浴中に置き、磁気撹拌しながら2時間加熱した。2時間の終了時点で、反応のFTIR分析により、約2265cm
−1に残留−NCOのピークがなく、生成物(CH
3O)
3Si(CH
2)
3NHC(O)OCH
2CH
2NHC(O)−HFPO−C(O)NHCH2CH2OC(O)NH(CH
2)
3Si(OCH
3)
3が得られたことが示された。
【0396】
ダイポーダルヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)シランの合成
出発ジオールHFPO−CONHCH[CH
2OH]
2は、撹拌棒を備えた500mLの丸底に、100g(0.0704モル、1420MW)のHFPO−C(O)OCH
3及び8.34g(0.0915モル)の2−アミノ−1,3−プロパンジオールを仕込み、75℃で2時間加熱することによって調製した。この反応に200gのメチル−t−ブチルエーテルを加え、黄色の油(おそらく未反応の2−アミノ−1,3−プロパンジオール)が反応から分離された。次いで、黄色の油は加えずに、反応を分液漏斗に注いだ。反応を20mLの2N HCl水溶液で洗浄し、一晩放置して分離させた。有機層を20mLの1N水酸化アンモニウムで洗浄し、30分放置して分離させ、20mLの水で洗浄し、30分放置して分離させ、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、最大95℃で約1.5時間濃縮して、ジオールHFPO−CONHCH[CH
2OH]
2を得た。
【0397】
撹拌棒を備えた30mLジャーに、12.79g(0.0086モル)のHFPO−CONHCH[CH
2OH]
2及び2.78g(0.013532当量)のGeniosil GF−40、並びにDBTDLの10%MEK溶液75マイクロリットルを仕込み、シールし、75℃の浴中に置いて、磁気撹拌しながら約24時間加熱した。2時間の終了時点で、反応のFTIR分析により、約2265cm
−1に残留−NCOのピークがなく、生成物HFPO−CONHCH[CH
2OC(O)NH(CH
2)
3Si(OCH
3)
3]
2が得られたことが示された。
【0398】
二量体ジオールシランの合成
撹拌棒を備えた25mLジャーに、10g(570MW、285MW、0.0351当量)のPripol 2033、7.20g(205.29MW、0.0351モル)のGeniosil GF−40、及びDBTDLの10%MEK溶液100マイクロリットルを仕込んだ。このジャーをシールし、75℃の浴中に置き、磁気撹拌しながら2時間加熱した。2時間の終了時点で、反応のFTIR分析は、約2265cm
−1に残留−NCOのピークを示さなかった。
【0399】
調製例1〜13(PE1〜PE13)
PE1コーティング配合物の調製は、最初にNALCO 1115の分散体を、適量の蒸留(DI)水を添加することによって固形分5重量%まで希釈した。次いで、1M HNO
3触媒を上記の希釈分散体に添加し、分散体のpHを2に調節した。
【0400】
PE2〜PE16コーティング配合物は、シリカ、シリカ/アルミナ、又はアルミナ分散体を変更したことを除き、PE1と同じ方法で調製した。AEROSIL 200を含有するPE6〜PE8コーティング配合物は、AEROSIL 200を、NALCO 1115の希釈分散体に所望の比で添加し、固形分を(DI水の添加により)5重量%に調節することによって調製した。
【0401】
PE17及びPE18は、シリカ分散体を変更し、HNO
3触媒の代わりにDBU触媒をシリカ分散体に添加して、分散体のpHを12に調節したことを除き、PE1と同じ方法で調製した。PE10及びPE11コーティング配合物は、更に0.05重量%のDS−10界面活性剤を含有した。
【0402】
PE19及びPE20コーティング配合物は、DBU又はHNO
3を配合物に添加しなかったことを除き、それぞれPE18及びPE−19と同じ方法で調製した。
【0403】
PE21コーティング配合物は、AEROSIL 200粉末を、固形分が5重量%に達するまで蒸留水に添加することによって調製した。この配合物は、更に0.05重量%のDS−10界面活性剤を含有した。
【0404】
PE22コーティング配合物の調製は、最初にNALCO 8676の分散体を、適量の蒸留(DI)水を添加することによって固形分5重量%まで希釈した。次いで、DS−10界面活性剤を、配合物が0.05重量%のDS−10界面活性剤を含有するまで添加した。
【0405】
下の表1に、PE1〜PE23のコーティング配合物をまとめる。
【表3】
【0406】
次いで、PE1〜PE23コーティング配合物を、PETフィルム(PE1〜PE19)又はスライドガラス(PE20〜23)上に、マイヤーロッド4番(PE1〜PE16、PE18〜PE23)又はマイヤーロッド25番(PE17)(それぞれ湿潤厚さ約9.1マイクロメートル又は57.1マイクロメートルに対応する)を用いて、コーティングした。
【0407】
PETフィルム上にコーティングされた試料全てを、3〜10分間空気乾燥し、次いで150℃のオーブン内に10分間置いて粒子を焼結した。コーティングされた基材は、熱的焼きなましの間にカールする傾向があったことから、コーティングされた基材の縁部の上にスライドガラスを置いて、基材がカールするのを防いだ。
【0408】
コーティングされたスライドガラスは、3〜10分間空気乾燥し、550℃の炉内に1時間置いて粒子を熱焼結し、次いで、室温まで冷却した。
【0409】
次いで、多孔質層でコーティングされたPE1〜PE23試料に、表面改質処理を施した。いくつかの実施形態では、種々の反応種を使用して、以下のように疎水性層を形成した。HFPOシランで処理するため、HFE 7100(98重量%)及びIPA(1.5重量%)中に0.5重量%のHFPOシランを含む溶液を、コーティングされたPE1〜PE23試料上に滴下し、試料を一晩放置して溶媒を蒸発させた。
【0410】
コーティングされたPE3試料をHMDSで処理するため、コーティングされた試料を、5mLのHMDSが入ったバイアルと共に、封止した真空デシケータ内に置いて一晩静置した。
【0411】
コーティングされたPE3又はPE7試料を13−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、又は二量体ジオールシランで処理するため、1重量%の所望のシラン、9重量%の脱イオン水、及び90重量%のイソプロパノールを含む溶液を、一晩撹拌した。コーティングされたPE3又はPE7試料をこの溶液に浸し、一晩自然乾燥した。
【0412】
コーティングされたPE3をトリメトキシ(オクタデシル)シラン、ダイポーダルHFPOシラン、又はα−ωHFPOシランで処理するため、98%IPA:H
2O(95:5v/v)中に2重量%の所望のシランをに含む溶液を一晩撹拌した。コーティングされたPE3試料を、この溶液に浸し、一晩自然乾燥した。
【0413】
THV221で処理するため、THV221の0.1重量%MEK溶液を、コーティングされたPE7試料上に滴下し、試料を一晩放置して溶媒を蒸発させた。
【0414】
実施例24〜66(EX24〜EX66)及び比較例A〜E(CE.A〜CE.E)
EX24〜EX66の試料は、種々の潤滑剤を、上記の表面処理された多孔質PE1〜PE23試料に浸透させることによって調製した。これは、潤滑剤が広がって表面処理された多孔質層の全体が覆われるまで、所望の潤滑剤をPE1〜PE23試料上に滴下し、その後、試料を垂直に一晩保持して、余分な潤滑剤が流れ去るようにすることで実施した。
【0415】
下の表2に、コーティング配合物、疎水性表面処理剤、及び潤滑剤、並びに測定した水接触角をまとめる。
【表4】
【0416】
潤滑剤浸透試料(EX24〜EX51)の全てについて、前進接触角と後退接触角との間の差は10°未満であり、接触した水滴の軽快な動きと一致する。対照的に、比較例は、10°を超える水接触角ヒステリシスを特徴とし、滴下運動への抵抗がより大きいことを示す。CE.Bは、接触した水滴が瞬時に多孔質層上に広がることから、前進接触角と後退接触角との間に差がないことを特徴とすることに留意されたい。しかし、この薄く広がった水は、傾けることで容易に除去されなかった。これは、CE.Bが撥水性ではないことを意味する。下の表3に、種々の実施例の塗料撥性(試験方法1による)をまとめる。
【表5】
【0417】
CE.A及びEX34を、顕微鏡で観察した。CE.Aでは、塗料が表面全体に均一に配置された。EX34では、数滴の塗料が表面積の10%未満を覆ったことを除き、表面に塗料が存在しなかった。
【0418】
塗料撥性評価のための試験方法2−潤滑剤浸透多孔質表面層あり又はなしの約4cm×4cmのPETフィルム片を、上記のようにして調製し、初期質量を測定した。PPG Envirobase塗料を、上記のフィルム片上に、表面全体が塗料で覆われるまで、ピペットで移した。次いで、この塗装されたフィルム試料を、5分間垂直に向けて塗料が表面から流れ落ちるようにした。塗料が流れた後のフィルム片の質量を測定し、表面上に残った塗料残渣の質量を決定した。塗料が流れた後のフィルム片は、目視検査も行い、塗料でコーティングされたままのフィルム表面の割合(百分率で表示)を推定した。この試験の結果は以下のとおりである。
【表6】
【0419】
実施例31−スプレー塗布システム構成要素上の撥液表面層
熱成形低密度ポリエチレン(LDPE)PPS(商標)ライナー(400mL)は、3M製であった。
【0420】
ライナーは、最初に、Diener instrument(Atto Version 1 Model)を用い、ポンプでチャンバを0.2mbarまで減圧し、出力をフル(読取値100)に設定し、空気を流量35±25NI/時に設定し、ライナーの内側を5分間プラズマ処理することで、エアプラズマ処理した。
【0421】
ライナーをプラズマチャンバから取り出し、直ちに5重量%のPE5(上記のとおり)の多孔質コーティング配合物を、ピペットを用いてライナーの内側に塗布した。ライナーを手で回転させて、コーティング配合物で完全に湿潤し、容器を逆さまにひっくり返すことで余分なコーティングを排出した。次いで、コーティングされたライナーを75℃で15分間乾燥した。
【0422】
疎水性層を、上記のHFPOシラン溶液を用いて、同じ方法で多孔質層に塗布した。溶媒を、一晩蒸発させた。
【0423】
次いで、Fomblin Y 14/6潤滑剤を、同じ方法で、内面の約1/3が潤滑剤で被覆されるまで、表面処理された多孔質層上にコーティングした。次いで、潤滑剤が広がって孔に浸透するように、ライナーをローラー上に30分間置いた。ライナーをローラーから外し、垂直に約3週間保持して、余分な潤滑剤が流れ落ちるようにすると、ライナーは撥性の内表面を有した。
【0424】
塗料撥性評価の試験方法3:
上記の撥性内表面を有するライナー及び撥性内表面のない同じライナーである比較ライナー(CE.F)をそれぞれ秤量した。70gのPPG Envirobase自動車用塗料を、撥性内表面を有するライナー及び撥性内表面のない同じライナーである比較ライナー(CE.F)内に注いだ。ライナーを手で振盪及び回転し、塗料が容器の側壁の全てに確実に触れるようにした。次いで、塗料をライナーから注ぎ出し、ライナーを逆さまにして5分間(撥性内面を有するライナー)又は約3時間(CE.F)置き、更に多くの塗料を排出させた。ライナーをそれぞれ再秤量し、残留塗料の質量を計算した。試験結果は以下のとおりであった。
【表7】
*(0.022−0.005)/0.022×100%
【0425】
撥液性表面の追加実施例
材料
下記の実施例で使用した全てのフルオロケミカル化合物、非フッ素化バインダー及びフルオロポリマーは、25℃及び40°F(4.44℃)〜130°F(54.4℃)の範囲の温度で固体である。
【表8】
【0426】
フルオロケミカル化合物1(FC−1)の合成
MEFBSE(C
4F
9SO
2N(CH
3)C
2H
4OH)(357当量を有するフルオロケミカルアルコール)は、本質的に米国特許第2,803,656号(Ahlbrecht,et al.)の実施例1に記載の手順を用いて、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド(PBSF)をメチルアミンと反応させてMEFBSA(C
4F
9SO
2N(CH
3)H)を生成した後、エチレンクロロヒドリンと反応させることによって2段階で生成した。
【0427】
次いで、フルオロケミカル1を、米国特許第7,396,866号(Jariwala et al.)に記載のプロトコルを用いて、次のようにMEFBSEをオクタデカン二酸で2:1のモル比でエステル化することによって調製した。3つ口丸底フラスコに、25g(0.0793モル)のEmerox 118(Cognis Corporation(Cincinnati,Ohio))、56.7g(0.159モル)のMEFBSE、100gのトルエン及び1g(0.007モル)の70重量%メタンスルホン酸溶液を加えた。フラスコの内容物を、ディーン−スタークトラップ及び凝縮器を用いて112℃で12時間還流した。次いで、溶液を80℃に冷却した。この溶液に、1.08g(0.007モル)のトリエタノールアミンを添加し、溶液を80℃で1時間撹拌した。次いで、このトルエン溶液を、75gの温水(80℃)で3回洗浄した。最後の洗浄の後、有機底層を蒸留してトルエンを除去した。フラスコに残った残留物は、ジエステル生成物であり、これをジャーに注ぎ入れ、室温まで冷却して結晶化させた。
【化10】
【0428】
フルオロケミカル化合物2(FC−2)の合成
フルオロケミカル2は、長鎖炭化水素酸(Unicide 350、C25平均)、及びMEFBSE(C
4F
9SO
2N(CH
3)C
2H
4OH)をフルオロケミカル1の合成と同じ方法でエステル化することによって生成した。
【化11】
【0429】
塗料撥性評価の試験方法4:
1滴の(例えば、PPG Envirobase)塗料(約0.2mL)を、試料(7.5cm×5.0cmのコーティングされたスライドガラス)の(例えば、撥性表面の)中央部分に21℃で塗布した。試料(例えば、スライドガラス)を直ちに垂直に方向付けた。塗料の液滴がスライドガラスを滑り落ちた場合は「合格」、そうでない場合は「不合格」と表記した。
【0430】
塗料撥性評価の試験方法5:
試料の非撥性表面全体(すなわち、7.5cm×5.0cmのスライドガラスのコーティングされていない側)を、3M Companyから商品名「SCOTCH−BLUE PAINTERS TAPE」で入手したテープでマスキングした。次いで、試料(スライドガラス)を、21℃にて、(例えば、PPG Envirobase)塗料に3.5cmの深さまで10分間浸漬した(換言すれば、コーティングした表面の約半分を浸漬した)。試料(スライドガラス)を希釈塗料から取り出し、30秒間垂直に方向付け、マスキングテープを外した。次いで、浸漬したコーティングされた表面に残った塗料を目視で推測し、残留塗料被覆率の百分率で表した。
【0431】
塗料撥性評価の試験方法6:
十分なサイズ(2.8×3.2cm)の試料を秤量した。試料の非撥性表面(すなわち、コーティングされていない側)全体を、テープ「SCOTCH−BLUE PAINTERS TAPE」でマスキングした。試料の撥性表面を、(例えば、PPG Envirobase)塗料に21℃にて10分間完全に浸漬した(例えば、30g)。次いで、試料を塗料から取り出し、マスキングテープを外し、試料をバインダークリップを用いて1分間垂直に方向付けた。試料の底縁をペーパータオルに接触させ、材料の底縁沿いに溜まっている可能性のある塗料を吸い取った。各試料の重量を再度測定し、面積当たりの残留塗料の量を計算した。コーティングされた表面に残った塗料を目視で推測し、残留塗料被覆率の百分率で表した。
【0432】
調製例32〜56(PE32〜56PE)
ポリマーバインダー及びフッ素化添加剤を含有するPE32〜PE56コーティング溶液を調製し、下記の実施例(EX)及び比較例(CE)で使用した。
【0433】
PE32〜PE56コーティング溶液を調製するため、2gのFC−2又はFC−1粉末及び48gのMEK又はMIBK溶媒をジャーに添加した。この混合物に、固体粉末が溶解して見えなくなるまで、撹拌及び60℃への加熱を行った。この高温のコーティング溶液を、適切な比で、60℃のバインダーポリマーのMEK又はMIBK溶液と混合した。次いで、このポリマーバインダー/フッ素化添加剤溶液を室温まで冷却した。コーティング溶液の組成物を以下にまとめる。
【表9】
【0434】
実施例CE57〜CE81
スライドガラス(7.5×5.0cm、厚さ0.1cm、Fisherより入手)をアセトンで洗浄し、WYPALLペーパータオルで拭いて乾燥させた。洗浄したスライドガラスを平坦な表面上に置き、約0.5mLの各コーティング組成物を、洗浄したスライドガラス上に、52番マイヤーロッドを用いて均一にコーティングし、21℃で約2時間乾燥した。これにより、最初は約133ミクロンで、溶媒蒸発後は5ミクロンのコーティングが得られる。
【0435】
CE82は、コーティングなしの基材として使用したePlastics(San Diego,CA)から入手した裸のPTFEシートであった。
【0436】
試料を、上記の試験方法を用いて、72時間後の塗料撥性について評価した。
【0437】
水接触角及び塗料撥性は次のように評価された。
【表10】
【0438】
比較例83〜84(CE83〜CE84)及び実施例85〜86(EX85〜EX86)
CE83は、その内壁にいかなるコーティング溶液も塗布せずに「そのまま」使用したLDPE PPSの400mL容器であった。
【0439】
CE84を調製するため、EX85及びEX86コーティング溶液を、スプレーガン塗料容器の内壁にピペットを使用して次のように塗布した。最初にLDPE PPS容器の底をコーティング溶液で湿潤し、周囲条件下で溶媒を自然蒸発させた。次いで、容器を90°傾け、ピペットを使用して容器の内側壁のストリップをコーティングした。次に、容器を手で回転させて、内側壁全体をコーティング溶液で完全に湿潤した。容器を逆さまにひっくり返すことによって余分なコーティング溶液を排出し、溶媒を周囲条件下で少なくとも30分間蒸発させた。塗料撥性は、試験方法3に従って次のように判定された。
【表11】
【0440】
EX85のライナーを、PPG Envirobase塗料を噴霧するためのスプレー塗布装置と共に使用し、続いて、PPG Industries,Inc.から商品名HIGH VELOCITY CLEARCLOAT DC3000として入手したクリアコートをコーティングした。塗料は、十分なフィルム厚で均一に塗布できた。塗料塗布中の「フィッシュアイ」若しくはその他の不適合性関連のコーティング不良並びに/又は不均一な光沢及び/若しくは色の証拠はなかった。
【0441】
比較例87(CE87)
CE87は、「Earlex L0190”1 quart(946mL)PTFE Coated Metal Paint Container」(Home Depot USA Inc.(Atlanta,GA)から入手)の底から切り取った試料であった。この切り取り試料は、2.8cm×3.2cmの寸法の矩形であった。塗料撥性及び水接触角は、次のように評価された。
【表12】
【表13】
【0442】
実施例88
Norton(商標)FEPビーカーライナーは、Welch Fluorocarbon,Inc.(Dover NH)から入手した。塗料撥性及び水接触角は、次のように評価された。
【表14】
【表15】
【0443】
実施例91(EX91)
EX91は、ピペットでPE41溶液をライナー内に移し、溶液が容器の内部全体を濡らすまでライナーを回転することによってPPSライナーの表面をコーティングして調製した。次いで、コーティングした容器を回転して逆さまにし、余分なコーティング溶液を排出し、この逆さまの位置で室温にて2時間乾燥した。次いで、コーティングしたライナーの一部を側面から切り取り、塗料撥性試験に使用した。塗料撥性は、4種類の塗料で、試験方法6に従って評価した。
【0444】
PPG Envirobase塗料は、上記と同じであった。その他の塗料は、以下のとおりであった。
Spies Hecker:70体積%のWT389 Platinum Silver Permahyd Hi−TEC Base Coat 480と30体積%のHi−TEC WT6050
Glasurit:50体積%のJet Black 90−1250 Base Coatと50体積%の90 Adjusting Base 93−E3
Sikkens:70体積%のJet Black Autowave 391096と30体積%のAutowave WB 391196
【0445】
試験結果は以下のとおりであった。
【表16】
注:「<0.001」の試料は、実験用天秤の精度が変化を測定できるほど十分に高くなかったため、このように記載されている。
【0446】
比較例92(CE92)及び実施例93〜95(EX93〜EX95)
CE92は、いかなる処理も行っていないPPSライナーの側面からの切断片であった。切断試料の寸法は、5cm×5cmであった。
【0447】
EX93〜EX95は、260℃〜280℃の範囲の温度でFC1とMarflex 1122を所望の比(EX93〜EX95の場合、それぞれ0.1、0.5、5重量%のFC1)で溶融混練した後、混合物をCloeren Incorporated(Eau Claire,WI)から入手した8”ダイを取り付けた同方向回転18MM2軸押出機(Leistritz(Germany)から入手)を用いて、厚さ40mil(約1mm)のフィルムに押出しすることによって調製した。次いで、押出したフィルムを110℃で5分間焼きなましし、5cm×5cmの寸法に切断して、次のように水接触角及び塗料撥性試験を行った。
【表17】
【0448】
焼きなましされたフィルムがない状態で、厚さ40mil(約1mm)のフィルムを使い捨てライナーに熱成形した。ライナーは、ライナー材料の組成を除き、市販のPPS(商標)ライナーと実質的に同じであった。10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水とを含有する溶液を脱イオン水の代わりに使用した水との接触角試験用に、側面から試験片を切り取った。この結果は以下のとおりであった。
【表18】
【0449】
上記のように調製した数例の実施例及び比較例を、10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水とを含有する溶液を脱イオン水の代わりに使用したことを除き、上記と同じ方法で、その接触角を試験した。
【表19】
【0450】
実施例100(EX100)−シロキサン溶融添加剤を用いたフィルムの調製
シロキサン溶融添加剤(アルキルジメチコン)は、米国特許第9,187,678号の実施例14に記載のとおりに合成した。アルキルジメチコンを、190℃に保った25mm二軸押出機を用いて15重量%の負荷でNA217000 LDPE(Lyondell Basell(Houston,TX))に配合した。アルキルジメチコンを、加熱したギアポンプ及び移送ラインを用いて、120℃の液体として押出機に送った。このマスターバッチ溶融物を、撚合せダイを通じて冷却水浴中に押出し、13.6Kg/時の速度でペレット化した。
【0451】
この15重量%アルキルジメチコンマスターバッチペレットを、次いで、LDPE中に3重量%のアルキルジメチコンを含むペレット混合物が得られる比で、NA217000 LDPEペレットと混和した。この3重量%のアルキルジメチコン混合物を、次の手順を使用して、厚さ2milのPETフィルム(両側をプライマー処理済、3M Company)の両側に、逐次的に押出コーティングした。ペレットブレンドは、単一の供給ホッパーを介して、20lbs/時の速度で、500°Fの温度で作動する押出機及びダイに供給された。この複合材押出物は、ドロップダイ開口部を出てニップまで約10cm移動し、そこで複合材はプライマー処理したPETと接触し、ゴム及びスチールローラーを備える2本のロールニップを通って固化した。アルキルジメチコン/LDPE層は、層の固化を促進するために使用した平滑なチルドスチールロールと接触した。ライン速度は50ft/分で、1milの押出層厚さを得た。最終的なフィルム構造物は、LDPE中に3重量%のアルキルジメチコンを含む厚さ1milの層の間に挟まれた厚さ2milのPETフィルムからなった。
【0452】
フルオロケミカルポリエステル添加剤(FC−3)の合成
攪拌棒、加熱器、及びディーンスタークトラップを備えた丸底反応フラスコに、オクタデカン二酸(ODDA、30g、0.095モル)、FBSEE(27.5g、0.071モル)、MeFBSE(17.01g、0.048モル)、トルエン(100g)及びメタンスルホン酸(1g)を添加した。得られた混合物を115℃で15時間還流した。所望の量の水(3g)が回収されたら、温度を80℃に下げた。次いでK
2CO
3(2〜3g)を添加し、混合物を更に30分間撹拌した。FTIR分析は、ヒドロキシルピークが全く存在しないことを示した。混合物を熱濾過し、溶媒を回転蒸発により除去した。GPC及びポリスチレン標準を使用して分子量を測定し、Mn約2800g/モル及びMw約5400g/モルと決定された。
【化12】
【0453】
コーティング溶液の調製:
1つのフラスコ内で、Estane 5703(5g)をMEK(95g)に添加し、この混合物をEstaneが溶解するまで撹拌した。別のフラスコで、FC−3(5g)とMEK(95g)との混合物を撹拌し、フルオロケミカルが溶解するまで65℃に加熱した。上記の5重量%の溶液19gを高温(65℃)の5重量%のFC−3溶液1gと混合することによってコーティング溶液を調製した。
【0454】
EX101〜EX102
(Estane 5703/FC−3)コーティング溶液を、13番マイヤーロッド(RD Specialties)を用いてPETフィルム(3M Company)に適用した。コーティングされたPETフィルムを、21℃で少なくとも30分(EX101)又は110℃で10分間(EX102)のいずれかで乾燥した。
【0455】
EX103
(Estane 5703/FC−3)コーティング溶液(約5mL)を、ピペットを用いてライナーの内側に適用した。ライナーを手で回転させて、コーティング配合物で完全に湿潤し、容器を逆さまにひっくり返すことで余分なコーティングを排出した。次いで、コーティングされたライナーを21℃で少なくとも2時間乾燥した。
【0456】
EX100〜102の接触角を、上記と同じ方法で測定した。EX100〜102の塗料撥性を、試験方法4と同じ方法(スライドガラス上に材料がコーティングされていなかったため、フィルムの表面を直接試験したことを除く)で評価した。結果は以下のとおりであった。
【表20】
【0457】
EX100〜102の塗料撥性も、上記の試験方法2に従って評価した。結果は以下のとおりであった。
【表21】
【0458】
EX100〜102の塗料撥性も、上記の試験方法6に従って、4cm×4cmの試料サイズを用いて評価した。結果は以下のとおりであった。
【表22】
【0459】
EX103の塗料撥性を、試験方法3に従って評価した。コーティングされたライナーを、10分後及び60分後にそれぞれ再秤量し、残留塗料の質量を計算した。この試験の結果は以下のとおりであった。
【表23】
【0460】
表面摩耗試験
十分なサイズ(例えば、6cm×2cm)の試料を調製し、テ−バー摩耗試験機(Taber Industries 5750線形摩耗試験機)に取り付けた。クロックメーター用摩擦布(Testfabrics,Inc.からのAATC Crockmeter Square)を、ゴムバンドで摩耗試験機のヘッドに取り付けた。摩耗試験機のヘッドの上に追加のおもりは置かなかった。サイクル速度を15サイクル/分に設定し、各基材に摩耗サイクルを2回施した(換言すれば、摩耗試験機のヘッドが2回前後した)。
【0461】
この表面摩擦を受けた後、10重量%の2−n−ブトキシエタノールと90重量%の脱イオン水とを含有する溶液との接触角及び塗料撥性を試験した。
【表24】
【0462】
摩耗後のEX100〜102の撥性も、上記のように水との接触角を測定することによって評価した。結果は以下のとおりであった。
【表25】
【0463】
摩耗後のEX100〜102の塗料撥性は、上記のPPG塗料を使用して、4cm×4cmの試料の代わりに2.2cm×3.2cmの基材を使用したことを除き、試験方法2に従っても評価した。結果は以下のとおりであった。
【表26】
【0464】
摩耗後のEX100〜102の塗料撥性は、上記のPPG塗料を使用して、4cm×4cmの試料の代わりに2.2cm×3.2cmの基材を使用したことを除き、試験方法6に従ってもまた評価した。結果は以下のとおりであった。
【表27】