(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873148
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】シャワーシステム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20210510BHJP
G01K 11/12 20210101ALI20210510BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
A47K3/28
G01K11/12 A
F16K11/07 F
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-544021(P2018-544021)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-500983(P2019-500983A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】US2016033140
(87)【国際公開番号】WO2017082960
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】14/937,587
(32)【優先日】2015年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518160827
【氏名又は名称】アクア・ビュー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUA VIEW INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ガス・サーシー
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0168266(US,A1)
【文献】
米国特許第04700884(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0104114(US,A1)
【文献】
独国実用新案第29608844(DE,U1)
【文献】
特開2012−176208(JP,A)
【文献】
特表2011−500990(JP,A)
【文献】
実開昭63−032659(JP,U)
【文献】
特開2013−124519(JP,A)
【文献】
実開昭62−070879(JP,U)
【文献】
特開平05−180454(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3152121(JP,U)
【文献】
特開2011−089297(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3052344(JP,U)
【文献】
米国特許第05913614(US,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0076184(KR,A)
【文献】
国際公開第2007/019648(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0266961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
F16K 11/07
G01K 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーシステムであって、
温水源と、
冷水源と、
前記温水源から温水を受け入れるとともに前記冷水源から冷水を受け入れる流入口及び、流出口を有するよう構成され、前記流出口で可変の割合にて前記温水及び前記冷水の水の混合を生成するべく作動可能な混合バルブと、
前記混合バルブよりも下流側で、前記混合バルブの前記流出口と流体連通する流入口を有し、前記混合バルブの流出口から受け入れた水を、第一ダイバーターバルブ流出口及び第二ダイバーターバルブ流出口のうちの一つに選択的に導くべく作動可能なダイバーターバルブと、
サーモクロミック要素を含む導管であって、該導管が、前記混合バルブの前記流出口から前記水の混合を受け入れるよう構成されるとともに配置された流入口を含み、前記水の混合が所定の遷移温度に達するに応じて前記サーモクロミック要素が第一色から第二色へ変化するよう構成された導管と、
前記第一ダイバーターバルブ流出口と流体接続されたシャワーヘッドと、
前記第二ダイバーターバルブ流出口を、前記冷水源及び前記温水源のうちの一つに流体接続する戻し導管と
を備えるシャワーシステム。
【請求項2】
前記導管が、前記ダイバーターバルブよりも上流側に位置する請求項1に記載のシャワーシステム。
【請求項3】
前記導管が、前記第二ダイバーターバルブ流出口よりも下流側に位置する請求項1に記載のシャワーシステム。
【請求項4】
前記サーモクロミック要素が、PVC材料及びサーモクロミック顔料からなる請求項1に記載のシャワーシステム。
【請求項5】
混合バルブを備えるタイプの水道システムであって、前記混合バルブが、水源から水流を、前記混合バルブよりも下流側の分配装置へ運ぶよう作動可能であり、
サーモクロミック要素を含む導管であって、該導管が前記混合バルブよりも下流側に流体接続されており、該導管が前記混合バルブから前記水流を受け入れるよう構成されるとともに配置された流入口を含み、前記サーモクロミック要素が所定の温度に達した前記水流の可視表示を与えるよう構成された導管と、
前記混合バルブと前記分配装置との間に流体接続されて、前記水流を、前記分配装置に、又は前記水源へ戻すように、選択的に導くよう作動可能なダイバーターバルブと
を備えるシステム。
【請求項6】
前記導管が、前記ダイバーターバルブよりも上流側に位置する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記導管が、前記ダイバーターバルブよりも下流側に位置する請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記サーモクロミック要素が、PVC材料及びサーモクロミック顔料からなる請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
混合バルブを含む水道システムであり、前記混合バルブが、冷水及び温水の調整可能な水の混合を、水源から流出管を通して水の分配装置へ運ぶよう作動可能であり、前記流出管が、前記混合バルブを前記水の分配装置に流体接続するものであり、当該システムが、
前記混合バルブよりも下流側の流出管に接続されて、前記水の混合を前記混合バルブから受け入れ、第一位置と第二位置との間で作動可能なダイバーターバルブであって、当該ダイバーターバルブが、前記第一位置で、前記水の混合を前記水の分配装置へ導くとともに、前記第二位置で、前記水の混合を、戻し導管により前記水源へ導くダイバーターバルブと、
サーモクロミック要素、流出口及び流入口を含む導管であって、前記流入口が、それよりも下流側の混合バルブと流体接続されて、そこから前記水の混合を受け入れるものであり、前記水の混合が所定の遷移温度に達するに応じて前記サーモクロミック要素が第一色から第二色へ変化するよう構成された導管と
を備えるシステム。
【請求項10】
前記導管が、前記ダイバーターバルブよりも上流側に位置する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記導管が、前記ダイバーターバルブよりも下流側に位置する請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記サーモクロミック要素が、PVC材料及びサーモクロミック顔料からなる請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記ダイバーターバルブの前記第一位置が第一回転位置であり、前記ダイバーターバルブの前記第二位置が第二回転位置である請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記ダイバーターバルブの前記第一位置が第一軸方向位置であり、前記ダイバーターバルブの第二位置が第二軸方向位置である請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記導管が、陸部及び溝部で構成される内壁部を有する請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記サーモクロミック要素が、前記流入口と前記流出口との間にあり、内面を有し、
前記導管が、前記流入口と前記流出口との間に位置して前記流入口と前記流出口との間に前記サーモクロミック要素の前記内面を含む流路を画定する壁部を含む請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記導管が、
実質的に同一直線上に配置された前記流入口及び前記流出口を画定し、軸を規定する主要部と、
前記流入口及び前記流出口により規定される前記軸と垂直で、前記流入口及び前記流出口の両方と流体連通し、開口端部を有する中空の分岐部と
を備え、
前記サーモクロミック要素が、前記分岐部の前記開口端部に近接して固定され、内面を有し、
前記分岐部の内部構造が、前記流入口と前記流出口との間に、前記サーモクロミック要素の前記内面により部分的に画定される流路をもたらすべく構成された請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
前記内部構造が壁部を備え、前記壁部が、軸方向に前記分岐部を通って、前記流入口及び前記流出口を画定する共有壁部から、前記分岐部の前記開口端部で又はその近傍で終了する自由端部へ延び、それにより、前記壁部の前記自由端部と前記サーモクロミック要素の前記内面との間に隙間が画定されて、流入口から、前記壁部の前記自由端部と前記サーモクロミック要素の前記内面との間の前記隙間を通って、前記流出口へ至る流路が画定される請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2015年11月10日に出願された米国出願第14/937587号から優先権を主張するものであり、その開示の全体を、参照によりここに組み込む。
【0002】
この開示は、第一側面では、サーモクロミック器具を用いて水温の視覚表示を与える家庭用配管システム、特にシャワーシステムに関するものであり、これにより、水は、所定の温度に達するまで貯水槽へ再循環するとともに、所定の温度に達するまでシャワーヘッドから流出することが許容され得る。本開示はまた、第二側面では、家庭用配管システムで、そのようなシステム内のサーモクロミック器具の使用により節水する方法に関するものである。第三側面では、本開示は、前述のシステム及び方法で使用するサーモクロミック器具に関するものである。第四側面では、本開示は、そのような器具でサーモクロミック特性を示すポリ塩化ビニル(PVC)の成形に関するものである。
【背景技術】
【0003】
移動性用途(レクリエーション・ビークル、トレーラー、ボート、船等)のシャワーシステムは通常、限られた容量の新鮮な水の貯水槽又はタンクから水を用いる。水は、加圧下でタンクからシャワーヘッドへ向かい、その際に水の一部は、加熱装置を通って温水になり、また一部は、加熱装置を迂回して冷水になる。それらの温水及び冷水は、シャワーヘッドより上流側の混合バルブにより、可変割合で混合される。加熱装置は、多くの移動性用途では、電動又は、プロパンを動力源とするものであり、シャワーが使用される直前のみ稼働され得る。また、シャワー配管のレイアウトに応じて、加熱装置とシャワーヘッドとの間に多量の冷水が存在し得る。いずれにしても、十分な温水が所望の温度でシャワーに供給できるようになる前に、多量の水がシャワーヘッドを通って流れることがある。この「非加熱」の流れは単純に下水管を通り、無駄になる。それ故に、新鮮な水のタンクを、より頻繁に満たす必要があるか(これは実現可能ではないことが多いが)、又は、船もしくは車両における水消費量を、多くのユーザーが不便もしくは不快を感じ得るレベルに制限することが必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、「非加熱」の水の流れを再利用するために新鮮な水のタンクもしくは貯水槽に戻し、水を所定の温度に達したときにだけシャワーヘッドに向かわせる構造が希求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、一側面において、シャワーシステム又は、家庭用水道もしくは配管システムであって、非加熱水の供給源と、前記供給源からの当該水の一部を加熱する加熱構造と、非加熱水と加熱水を可変の割合で混合するよう作動する混合バルブと、混合された加熱水と非加熱水を分配するよう構成された分配装置と、所定の温度に達した当該混合水の可視表示を与えるよう構成された前記混合バルブと前記分配装置との間の熱インジケータと、水流を、前記分配装置に、又は前記供給源に戻すべく選択的に向けるよう作動可能な手動作動ダイバーターバルブとを備えるものである。
【0006】
典型的な実施形態では、前記熱インジケータが、サーモクロミック材料の継手もしくは要素であり、当該継手もしくは要素、又はその一部は、それを通る水流が所定の温度に達するときに、迅速かつ明確な色の変化を経験して変化し、その後、水の流れが中断したとき、又は水温が所定の温度より低下したときに、元の色に戻る。サーモクロミック材料は好ましくは、サーモクロミック顔料を含むポリマーである。一の実施形態では、前記ポリマーはポリ塩化ビニル(PVC)である。
【0007】
典型的な実施形態では、家庭用配管もしくは水道システムは、たとえば陸上車両(RV、トレーラー)又は、水上船(ボート、船)のような移動性用途シャワーシステムである。移動性システムにおける水源は典型的には、車両もしくは船に搭載された新鮮な水の貯水槽である。水の加熱装置は、貯水槽に流体連通されて内部もしくは外部のいずれかに加熱要素を有する温水タンクとすることができる。加熱要素は選択的に、温水が必要なときに稼働するか、又は、温水タンク内の水の温度が所定の温度より低下したときにサーモスタットで稼働するものとすることができる。そのようなシステムでは、温水タンクからの加熱水は、混合バルブにて可変の割合で、貯水槽からの冷水と混合されるが、これは従来の設計であり、ここでは、シャワーヘッドの性質上、混合バルブから分配装置へと流れる混合水の温度は、ユーザーの要望に応じて選択される。シャワーヘッドに達する前に、混合水は、たとえば先述したサーモクロミック型等の熱インジケータを通って流れ、混合バルブから流出する水が所望の温度に達したときにユーザーに注意を喚起する。熱インジケータを通って流れた後、水は、手動で作動可能なダイバーターバルブに流れるが、このダイバーターバルブは、戻し導管を介して水が貯水槽に戻る第一位置と、水がシャワーヘッドに向けられる第二位置との間で選択的に移動することができる。したがって、ダイバーターバルブは、熱インジケータがそれを通って流れる水の所定の温度を示唆するまでその第一位置に維持され、又はそこに移動することができ、その後、ダイバーターバルブはその第二位置に移動することができる。
【0008】
第二側面によれば、本開示は、家庭用水システムで節水する方法に関するものであり、これは、貯水槽、前記貯水槽と流体接続された水の加熱装置、前記貯水槽及び前記水の加熱装置より流れの下流側でそれに流体接続された混合バルブ、ならびに、前記混合バルブより下流側で流体接続された分配ユニットを有するタイプのものである。この方法は、(a)前記混合バルブから流出する水の温度の視覚表示を与えること、(b)所定の水温に達するまで、水を前記混合バルブから前記貯水槽に戻すように導くこと、ならびに、(c)所定の水温に達したとき、水を前記混合バルブから前記分配ユニットに導くことを備える。本開示の実施形態によれば、水温の前記視覚表示は、前記混合バルブより下流側のサーモクロミック器具もしくは導管により与えられる。
【0009】
第三側面によれば、この開示は、前述のシステムで使用するサーモクロミック継手もしくは要素に関するものであり、ここでは、前記継手もしくは要素の少なくとも一部が、たとえばサーモクロミックポリマー材料等のサーモクロミック材料からなり、これは、好ましくはPVCであって、事前に選択し又は事前に決定した最低温度に達した器具を通る液体の流れに応じて迅速に色が変化するものとして選択されたサーモクロミック顔料と、硬化前に混合させたものである。いくつかの実施形態では、サーモクロミック継手もしくは要素は導管を含み、その少なくとも一部はサーモクロミック材料からなり、混合バルブと分配ユニットとの間の当該システムに流体接続される。他の実施形態では、サーモクロミック継手は、混合バルブの流出口に流体接続されるよう構成された流入口と、ダイバーターバルブの流入口に流体接続されるよう構成された流出口と、前記流入口と前記流出口との間の蛇行流路を構築するよう構成された内側壁部と、前記蛇行流路内に配置されてサーモクロミック色の変化をユーザーに表示する可視のサーモクロミック要素とを備える。
【0010】
他の側面によれば、本開示は、サーモクロミックポリマー及び、それを製造する方法に関するものである。概して、ポリマーは、所定の温度の流体との接触に応じて、迅速で著しい色の変化を経験する性質のために選択されたサーモクロミック顔料を含むPVC組成物を備える。当該顔料は、押出もしくはモールディング及びPVCの硬化に先立って、PVCが液体状態である間にペレット乾燥等でPVCと混合され、サーモクロミック器具を成形する。PVCに添加される顔料の量及び、PVCの最高処理温度は、所望のサーモクロミック特性を維持するべく制御される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の側面に従う節水型移動性用途シャワーシステムの典型的な実施形態の半概略図である。
【
図2】本開示の側面に従う節水型移動性用途シャワーシステムの典型的な実施形態の簡易図である。
【
図3】本開示の側面に従う節水型シャワーシステムの他の典型的な実施形態の簡易図である。
【
図4】本開示の側面に従うサーモクロミック継手の典型的な実施形態の断面図である。
【
図5】本開示に従う節水型シャワーシステムで使用することのできるダイバーターバルブの典型的な実施形態を、第一位置におけるダイバーターバルブについて示す部分断面正面図である。
【
図6】
図5のダイバーターバルブを、第二位置におけるダイバーターバルブについて示す部分断面正面図である。
【
図7】本開示の側面に従う、固定もしくは常設用途の節水型シャワーシステムの典型的な実施形態の半概略図である。
【
図8】本開示の側面に従うサーモクロミック継手もしくは要素で使用される典型的なPVC化合物の物理特性を示す表(「表1」)である。
【
図9】
図9A及び
図9Bはそれぞれ、本開示の側面に従うサーモクロミック継手の他の典型的な実施形態の断面図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照すると、
図1には、本開示の側面に従う移動性用途の節水型シャワーシステム10が示されている。システム10は、たとえば、RVもしくはトレーラーのような陸上車両で、又はボートもしくは船のような水上船で使用することに適したものである。システム10は、水(通常は新鮮な水)で満たされるよう構成された一定容積の水の貯水槽もしくはタンク12を用いる。ポンプ14(典型的には電動)は、タンク12からタンク流出管へと水を汲み上げるものであるところ、このタンク流出管は、従来型の水の加熱装置18へ水を導く第一分岐部16aと、冷水管22を経由して混合バルブ20の第一流入口19に流体接続された第二分岐部16bとを有する。タンク12内の水は一般に周囲温度であり、この開示の目的で「冷」水と称することがある。温水管24は、加熱水を加熱装置18から混合バルブ20の第二流入口23に導く。水は通常、加熱装置18内で約120°F〜160°F(49℃〜71℃)に加熱されるが、これより高い温度に達することもある。それ故に、加熱水は、この開示の目的で「温」水と称することがある。それにより、混合バルブ20(シャワーで一般に使用される任意の従来設計のもの)は、タンク12及び加熱装置18のそれぞれから加圧下で冷水及び温水を受け入れ、それらの流れを適切な割合で混合して、流出口25に所望の温度の混合水流れをもたらす。
【0013】
従来型のシャワーシステムでは、流出管26は、混合水流れを、混合バルブ流出口25から水の分配装置30に運ぶよう構成される。
図1〜3及び7に示す実施形態では、分配装置30はシャワーヘッドであり、以降はそのように称する。但し、本開示の他の側面では、分配装置は、温水及び冷水の調整可能な混合を分配するシンク蛇口、又は、温水浴槽もしくはスパにおける水流入口とすることができる。この開示に従うシステム10では、熱インジケータ32(詳細は後述する)は、混合バルブ20より下流側の流出管26内に配置されている。熱インジケータ32は、後述するが、「T」継手として構成される器具であり、流出管26内の水の温度が所定の温度に達したときに、シャワーユーザー(図示せず)に視覚表示を与える。
【0014】
図1に示すように、ダイバーターバルブ34は、熱インジケータ34とシャワーヘッド30との間で、流出管26内に配置されており、これは、熱インジケータ32より下流側である(後述するように、ダイバーターバルブの代替的な位置は、熱インジケータより上流側である)。ダイバーターバルブ34には、後述するが、流出管26内の水が、シャワーヘッド30に到達する前に、戻し導管36を通ってタンク12へ迂回して戻る「戻り」位置がある。流出管26内での所望の水温が熱インジケータ32によって示唆されたとき、ダイバーターバルブ34はユーザーによって、水が流出管26からシャワーヘッド30へ流れることを許容する「シャワー」位置へ移動されることが可能である。
【0015】
図1に示すように、シャワーヘッド30及び熱インジケータ32を除き、システム10の先述した部品の全ては、耐力壁、仕切り壁もしくは隔壁とすることができる壁部Wの背後に位置する。混合バルブ20は、壁部Wの前に配置された操作ハンドル38等により稼働され、またそれに作動可能に接続される。同様に、ダイバーターバルブ34は、壁部Wの前に配置されたダイバーターバルブ・アクチュエータ40に作動可能に接続される。
【0016】
動作の際には、ダイバーターバルブ34が「戻り」位置にあるとき、ユーザーは、混合バルブ20を、「閉鎖」位置(典型的には従来型の混合バルブである。)から、貯水槽もしくはタンク12からの冷水と加熱装置14からの温水との流出管26内の混合流れをもたらす位置に移動させることにより、シャワーをオンにして、ユーザーが望むシャワー温水を実現する。この混合流れは、ダイバーターバルブ34及び戻し導管36を通って、貯水槽もしくはタンク12に戻される。流出管26内の水が所定の温度に達したことを、熱インジケータ32が(たとえば、後述するように色の変化等により)示すとき、ユーザーは、ダイバーターバルブ34を、それの「シャワー」位置に移動させ、それにより、流出管26からの水をシャワーヘッド30へ導く。ユーザーはもちろん、その後、流出管26内に導かれる混合における温水と冷水の割合を変化させることにより、シャワー水温を更に調整するため、混合バルブ20を作動させることができる。
【0017】
図2に、シャワーシステム10の特定の実施形態を示す。この実施形態は、「原型設備」(“original equipment”)の用途により適したものであり、ここでは、シャワーシステムは、設置に先立ち、この開示に従って構成される。但し、これは、予め設置されたシャワーシステムがこの開示に従って変更される据付け用途にも適する場合がある。
図2に示すように、壁部Wの背後に位置する上記の部品の全ては、仮想線で示されている。この図では、混合バルブは、第一(冷水)流入口21、第二(温水)流入口23及び、流出口25を有するものである。この実施形態では、シャワーヘッド30は、可撓性ホース42によって流出管26に流体接続されている。熱インジケータ32は、ダイバーターバルブ34より上流側の流出管26内に位置し、これはすなわち、ダイバーターバルブ34は、
図1と同様に、熱インジケータ32とシャワーヘッド30との間にある。
図2に示すように、ダイバーターバルブ34は、当業界で広く知られているロータリー型であって、アクチュエータ40により稼働されるものであり、このアクチュエータ40は、ユーザーがダイバーターバルブを先に述べた第一位置と第二位置との間で移動させるべく回転させることができるデュアルとして構成される。
【0018】
図3に、この開示に従うシャワーシステムの他の実施形態を示し、これは符号10’として示されている。この実施形態は、据付け用途により適したものであり、ここでは、予め設置されたシャワーシステムが、この開示の特徴を組み込むように変更される。
図3の実施形態は、熱インジケータ、ダイバーターバルブ及びダイバーターバルブ・アクチュエータの位置及び構成を除いて、
図2のものと本質的に同じである。特に、この実施形態は、流出管26’の下流端部に流体接続された流入口44と、シャワーヘッドホース42’に流体接続された第一流出口46と、チューブ状の熱インジケータ32’の上流端部に流体接続された第二流出口48とを有するダイバーターバルブ34’を含むものである。熱インジケータ32’の下流端部は、戻し導管36’によって水のタンク12と流体接続される。したがって、この実施形態では、流出管26’は、ダイバーターバルブ34’の流入口44で終了する下流端部を有するが、熱インジケータ32’は、ダイバーターバルブ34’よりも下流側に位置し、ダイバーターバルブ34’の第二流出口48を戻し導管36’に接続する短い導管として構成される。より詳細について後述するように、ダイバーターバルブ34’は、直動型の「プッシュプル」バルブとすることが有利であり、これは、水が流入口44から第一流出口46を通ってシャワーヘッドホース42’へと流れる第一軸方向位置と、水が流入口44から第二流出口48を通って戻し導管36’へと流れる第二軸方向位置とを有する。ダイバーターバルブ34’は、ダイバーターバルブ34’をその第一位置と第二位置との間で移動させるべくユーザーが作動可能なプッシュプル・ノブ50に作動可能に接続される。
【0019】
図4に、
図1及び2に示すタイプの熱インジケータ32を示す。上述したように、熱インジケータ32は、「T」継手として構成される器具であって、流入口54及び流出口56を画定する主要部52を有し、これらの流入口54及び流出口56は、実質的に同一直線上に配置されて軸Aを規定する。「T」継手は、流入口54及び流出口56により規定される軸Aと垂直な中空の分岐部もしくはステム58を含み、これは、流入口54及び流出口56の両方と連通する。分岐部もしくはステム58は、いくつかの実施形態では、
図4に示すようにドームキャップとして構成されることが有利なサーモクロミック要素62により閉塞される開口端部60を有する。サーモクロミック要素62は、分岐部58の開口端部60に永久に固定され、又は、図示のように、ねじ連結部64によりそれに固定され得る。壁部もしくは仕切り壁66は、軸方向に、流入口54及び流出口56を画定する共有壁部68から、分岐部もしくはステム58の中心を通って、分岐部もしくはステム58の開口端部60で又はその近傍で終了する自由端部70へと延びるものであり、ここでは、壁部66の自由端部70と、サーモクロミック要素62の内面との間に、隙間が画定される。したがって、流体(たとえば水)の流路は、
図4に矢印で示すように、「T」継手内で、流入口54から壁部66の第一側部に沿って、壁部66の自由端部70とサーモクロミック要素62の内面との間の隙間を通り、その後、壁部66の第二側部に沿って流出口56に至るように画定される。この流路は、流体を、流入口54からサーモクロミック要素62の内面に接触するように導き、ここでは、その方向の変化とともに、その流れの速度が僅かに減少し、それにより、サーモクロミック要素62のサーモクロミック材料が、後述するように、流体の温度に反応することができる。
【0020】
上述した熱インジケータ32の「T」継手は、サーモクロミック要素62を除いて、適切なプラスチック、たとえばポリ塩化ビニル(PVC)からなるものとすることが有利であり、又は、銅、スチール又はアルミニウムのパイプからなるものとすることもできる。サーモクロミック要素62は、いかなる場合も、未硬化の液体状態のままでのPVCへのサーモクロミック顔料の混合により、サーモクロミック特性を与えるPVCからなるものであり、この点についての詳細は後述する。サーモクロミックPVCは、少なくとも所定の遷移温度を有する流体媒体に接触することにより、比較的迅速で著しい色の変化を経験するよう設計される。言い換えれば、サーモクロミックPVCからなる流体接触部品もしくは要素は、接触流体が所定の遷移温度に達するまでは第一色を維持し、その温度でサーモクロミック部品もしくは要素(たとえば
図4に示すドームキャップ62)は、第一色とは知覚可能に異なる第二色に変化する。接触流体が所定の遷移温度未満に冷えた場合、サーモクロミック要素は、元の(第一)温度に戻る。色の変化が起こる所定の遷移温度は、PVCの密度、使用されるサーモクロミック顔料の種類及び、PVC内での当該顔料の濃度を含む多くの要因により決定される。
【0021】
図9A及び9Bに、
図3に示すシステム10’のチューブ状のサーモクロミック要素もしくは継手32’の典型的な実施形態を示す。この実施形態では、サーモクロミック特性を有するPVCは、適切な長さの導管80内で(押出等により)成形される。導管80は、流入口(上流側)端部81a及び、流出口(下流側)端部81bを有する。チューブ状の継手もしくは要素は、滑らかで連続的な内壁面からなるものとすることができ、その内壁面を、
図9A及
び9Bに示すような複数のリブもしくは
陸部82で形成することが特に有利であることが解かった。これは、リブ構造が、リブもしくは
陸部82間の薄いチューブ状壁部を可能にし、これにより、導管80を通って導管材料に流れる流体(たとえば水)からより効果的に熱を移動させて、リブもしくは
陸部82間の相対的に薄い壁部領域もしくは溝
部84でのサーモクロミック反応を促進させるからである。また、
陸部82と溝
部84との間の色の変化の異なる速度は、少なくとも一時的に、ストライプの明確なパターン86(
図9b)をもたらし、これは、ある程度の色覚異常のある人を含む多くの人に視覚的により印象を与える。
陸部もしくはリブ82は、溝
部84の対応する形状で、図示のような軸方向(長手方向)とすることができ、又は、螺旋状とすることができ、それにより、遷移温度の到達により螺旋パターンをもたらす。典型的な実施形態では、チューブ状の要素80は、0.840インチ(2.13cm)の外径、リブもしくは
陸部82での0.602インチ(15.3mm)の壁厚み、溝
部84での0.060インチ(1.5mm)の壁厚みを有するものとすることができる。
【0022】
様々なサーモクロミック材料が知られているが(たとえば、https://en.wikipedia.org/wiki/Thermochromism参照)、出願人は、本開示のような家庭用配管に適したものがこれまでに開発されていないと考えている。この開示に従う典型的なサーモクロミックPVC材料は、表1(
図8)に示す物理特性を有するPVC化合物を含んでなるものである。このPVC化合物が未硬化の液体状態である間に、サーモクロミック顔料をPVCに混合する。典型的な実施形態では、当該顔料は、Avon Lake、OhioのPolyOne Corporationにより、「Oncolor FX Thermochromic Blue to Nat(CC10221081)」の商品名で上市されているタイプもしくは適切な同等のもの、http://www.hali-pigment.com/html_products/Thermochromic-pigment -21.htmlに大まかに示されているもの(その構成を参照によりここに組み込む。)、また、Fort St. Lucie、FLのQCR Solutions Corp.及び、Gardena、CAのMatsui International Co.,Inc.から入手可能なもの(後者は「CHROMICOLOR」(登録商標)の商品名)である。かかる顔料は、乾燥ペレットとして与えられることが好ましく、そして、好ましくは、3%〜5%の減量処理率(let down ratio)(LDR)で顔料のマスターバッチ20%〜25%を生成した後、145kgのPVC当たり約1kgの顔料の濃度で、液体PVCに混合される。その後、PVCは、適切なサーモクロミック部品もしくは要素(たとえば、
図2のシステム10で用いられるような
図4に示す「T」継手のドームキャップ62又は、
図9に関連して上述したような
図3の実施形態のシステム10’のチューブ状の熱インジケータ32’)の形状に(たとえばモールディングもしくは押出により)成形され、その後、既知の硬化方法で硬化される。
【0023】
サーモクロミック部品もしくは要素に成形された後、PVCのサーモクロミック特性を維持するために重要なことは、硬化を含む製造プロセスの間に、PVCが約320°F(160℃)の温度を超えないようにすることである。但し、低圧で処理された場合は、約400°F(204℃)以下の温度が許容されることがある。その結果として得られる組成物は、約91°F(およそ32.5℃)の遷移温度で、第一色(青)から第二色(白)へ変化する。他の適切なサーモクロミック顔料を用いること、PVCにおける顔料の濃度を変えること、又は、PVCの物理特性を変えることにより、異なる遷移温度、色又は、色の強度を与えることができる。
【0024】
図5及び6に、
図3の実施形態に関連して上述したプッシュプル・ダイバーターバルブ34’の典型的な実施形態を示す。ダイバーターバルブ34’は、上述したように、流出管26’の下流端部に流体接続されるよう構成された流入口44と、シャワーヘッドホース42’と流体接続されるよう構成された第一流出口46と、チューブ状の熱インジケータ32’の上流端部と流体接続されるよう構成された第二流出口48とを含む。ダイバーターバルブ34’はさらに内側チャンバー72を含むものであり、これは、第一内部通路74を介して流入口44と連通するとともに、第二内部通路76を通って第一流出口46と連通し、また、第三内部通路78を通って第二流出口48と連通する。環状バルブシート80は、内側チャンバー72から第一流出口46の入り口に設けることが有利である。ディスク状バルブ要素82は、バルブシャフト84によりプッシュプル・アクチュエータ・ノブ50に接続されるものであって、内側チャンバー72を画定する内側壁部とスライド可能にシール係合するべく構成される。この目標を達成するため、いくつかの実施形態では、バルブ要素82の外周の周囲に、シールOリング86又はそれに類似するものを設けることが有利である。
【0025】
上述したように、ダイバーターバルブ34’は、第一位置と第二位置との間で作動可能なものである。第一位置(
図5)では、水を流入口44から第一流出口46へと導く。第一位置では、ノブ50は外側に向けて直線的に引っ張られて、バルブ要素82がシャフト84を介して、バルブシート80から変位する第一位置に引っ張られ、それにより、流入口44から、第一内部通路74、内側チャンバー72及び第二内部通路を通って第一流出口46に至る流路をもたらす。それと同時に、バルブ要素82は、内側チャンバー72内に位置し、内側チャンバー72から第二流出口48への第三内部通路78を閉塞させる。したがって、水は、シャワーヘッドホース42’に導かれて(
図3)、戻し導管36’から遮断される。
【0026】
ダイバーターバルブ34’(
図6)の第二位置では、水を流入口44から第二流出口48へと導く。第二位置では、ノブ50は内側に向けて直線的に押し込まれ、それにより、バルブ要素がシャフト84を介して、バルブシート80に向けて付勢されて、内側チャンバー72から第一流出口46への第二内部通路76を閉ざし、この一方で、流入口44から、第一内部通路44、内側チャンバー72及び第三内部通路78を通って第二流出口48へ至る流路を開く。したがって、水は、(チューブ状の熱インジケータ32’を介して)戻し導管36’に導かれ、シャワーヘッドホース42’から遮断される。
【0027】
図7に、本開示の側面に従う、たとえば都市給水から水を受け入れる建物内などにおける非移動性用途で用いるシャワーシステム100の典型的な実施形態の簡略化した半概略図を示す。システム100では、都市送水管(図示せず)に連結された家庭用水道管102から供給される。いくらかの水は、従来の態様で温水タンク104に導かれる。冷水取水管106は、家庭用送水管102から水を受け入れ、その水を、従来型の混合バルブ108の冷水流入口(図示せず)に導く。タンク104からの温水は、加圧下で(たとえば電気ポンプ110により)温水管112に導かれ、これは、温水を、混合バルブ108の温水流入口(図示せず)へ導く。
【0028】
上述したように、混合バルブ108は、温水と冷水の混合を調整して、使用により望ましい温度を実現するべく作動可能なものである。その後、混合水は流出管114、そしてダイバーターバルブ116に導かれる。混合バルブ108とダイバーターバルブ116との間で流出管114内には、サーモクロミック熱インジケータ118が配置されており、これは、
図4に示す先述の「T」継手タイプとすることが有利であり、又は、
図3に示すチューブ状タイプとすることができる。ダイバーターバルブ116は、
図2で先に示したようなロータリータイプのもの、又は、
図3、5及び6に示す先述の直動「プッシュプル」タイプのものとすることができる。いずれにしてもダイバーターバルブ116は、水を、(シャワーヘッド導管122を介して)シャワーヘッド120に、又は、水を温水タンク104へ戻す戻し導管124に導くよう選択的に作動可能である。上述の移動性用途の実施形態では、熱インジケータ118は、(著しい色の変化により)流出管114内の水の混合物の温度が所定の遷移温度に達したことの視覚表示を与えるように、サーモクロミック的に作動し、それにより、ユーザーは、所定の遷移温度に達するまで、ダイバーターバルブを水が戻し導管124に迂回する位置に維持することができ、その温度に達したとき、ダイバーターバルブ116は、水をシャワーヘッド120に導くよう作動され得る。
【0029】
図7のシステム100は、任意の「閉ループ」温水路を含み、これは、多くの現代住宅や他の建物での使用が増大しているタイプのものである。そのような閉ループ路では、混合バルブ108に導かれない任意の温水が、温水管112から、戻し導管124と連通するバイパス管126により、温水タンク104へ戻って再循環する。閉ループ温水路の利点は、温水が混合バルブで、ほとんど待機なしで、それによってほとんど又は全く無駄な水なしですぐに利用可能ということにある。この利点は、少なくともある程度において、温水ポンプ110を多かれ少なかれ連続的に動作させることの必要性により相殺されて、より多くの電気を使用する。しかしながら、サーモクロミック熱インジケータ118を使用することにより、ポンプ110は、「オンデマンド」でのみ作動するよう変更され、それにより電力消費量を減らすことができる。このようにしてユーザーは、ポンプ110を、シャワーの使用のために必要な場合だけ稼働させることができる。温水をタンク104から混合バルブへと運ぶことにある程度の時間がかかり得る間、ダイバーターバルブ116は、熱インジケータが所望の水温に達したことを示すまで、戻し導管124を介して水をタンクに再循環させるよう作動されることが可能である。その温度でのみ、使用者は、ダイバーターバルブ116を操作して、水をシャワーヘッド120に導き、それにより電力だけでなく水も節約することができる。