(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873190
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】選択的なレーザ焼結装置又はレーザ溶融装置を露光制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20210510BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210510BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20210510BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20210510BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20210510BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210510BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-104310(P2019-104310)
(22)【出願日】2019年6月4日
(62)【分割の表示】特願2017-525577(P2017-525577)の分割
【原出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2019-137075(P2019-137075A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】102014016679.1
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン・フローリアーン
(72)【発明者】
【氏名】リッペルト・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンドフェルダー・ヨハンナ
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−313067(JP,A)
【文献】
特表2007−536598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B29C 64/153
B29C 64/268
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体を製造するためのレーザー焼結又はレーザー溶融装置(1)であって、
構造プラットフォーム(4)を有する前記装置(1)のプロセスチャンバ(2)、
薄い層の形態の構造材料(6)を塗布するように構成された、前記構造プラットフォーム(4)に隣接して配置されたコーティング装置(5)、
前記構造プラットフォーム(4)に隣接して配置された複数のスキャナ(8a、8b)のそれぞれに放射(9)のビームを向けるように構成された1つ又は複数の放射源(10)であって、前記複数のスキャナ(8a,8b)のそれぞれは、前記1つ又は複数の放射源(10)から前記放射(9)をプロセス制御して同時に構造材料層(11)に向け、前記構造材料層(11)の対応する部分を同時に照射して固化するために別々に作動されるように構成される、1つ又は複数の放射源(10)、
それぞれ個々の前記スキャナ(8a、8b)に関連する前記1つ又は複数の放射源(10)の照射時間、及び/又はそれぞれ個々の前記スキャナ(8a、8b)によって検出された照射面を、照射の段階において別々に検出して、電子的なメモリ(21)にメモリするように構成された電子的な捕捉ユニット(20)、
個々の前記スキャナ(8a、8b)の照射時間、及び/又は個々の前記スキャナ(8a、8b)の照射面の値を互いに比較するように構成された電子的な比較装置(22)、並びに
前記比較装置(22)の出力部に接続されているとともに、個々の前記スキャナ(8a、8b)の照射時間の値又は照射面の値が異なる場合に、それぞれ個々の前記スキャナ(8a、8b)の照射時間及び/又は照射面が平面に関してできる限り一致されるように、それぞれ個々の前記スキャナ(8a,8b)によって照射されるべき表面範囲の新たな設定を演算するプロセス装置(23)、
を備えた装置。
【請求項2】
上部スキャンフィールド(31)、境界(30)、及び下部スキャンフィールド(32)が、前記複数のスキャナ(8a、8b)のそれぞれによって規定可能であり、前記境界が前記上部スキャンフィールド(31)と前記下部スキャンフィールド(32)との間に位置する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
後続の照射通過時に生じる前記各スキャナ(8a,8b)のための照射時間が少なくともほぼ同一であるように、1つ又は複数の構造材料層(11)の固化後に前記境界(30)が動的に適合される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のスキャナ(8a、8b)のそれぞれに対する前記上部スキャンフィールド(31)及び前記下部スキャンフィールド(32)のそれぞれの大きさが、前記スキャナ(8a、8b)の読み取り可能な制御データに基づいて決定される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記装置のオペレータが、前記複数のスキャナ(8a、8b)のそれぞれに対して、前記上部スキャンフィールド(31)及び前記下部スキャンフィールド(32)のそれぞれの大きさを設定することを可能にするように適合されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記上部スキャンフィールド(31)と前記下部スキャンフィールド(32)とに対して段階的に前記境界(30)を調整するように適合されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記境界(30)が直線である、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のスキャナ(8a、8b)のそれぞれに対する照射時間又は照射面の比較により、前記境界(30)の変位が生じない場合には、前記境界(30)の位置に変動をもたらすように適合される、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のスキャナ(8a、8b)のうちの少なくとも1つが、前記複数のスキャナ(8a、8b)のうちの別のスキャナ(8a,8b)のスキャンフィールド(31,32)において、照射部分の応力を低減した予備露光を行うように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記予備露光の露光時間が、スキャンフィールド境界の変位に影響を有さないように適合されている、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の、三次元的な物体を製造するための選択的なレーザ焼結装置又はレーザ溶融装置を露光制御するための方法に関するものである。さらに、本発明は、請求項9による、方法を実行するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、三次元的な物体を構造材料の選択的な照射によって製造することが可能なレーザ焼結装置又はレーザ溶融装置を複数のスキャナによって実行することが特許文献1から知られている。スキャナは、構造フィールドの上方に配置されているとともに、固定されているか、又は可動に、すなわち構造フィールド範囲の上方で部分的に走行可能に配置されることが可能である。
【0003】
このような多重スキャン設備においては、構造フィールドの各部分に別々のスキャナが割り当てられているか、又はこれらスキャナが、少なくとも部分的にも、露光の手間が時間に関して又は平面に関して、対応してよりわずかに露光させるべき隣接する構造フィールド部分における露光の手間よりも大幅に大きい場合に当該他のスキャナに割り当てられた構造フィールド範囲の露光時に他のスキャナを支持するために、この他のスキャナに割り当てられている構造フィールド部分を露光させることが可能であるように設けられているか、若しくは形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014005916号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、構造工程の最適化と、特に対象について必要な構造時間の短縮とを可能にする方法及びこの方法を実行するための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1の特徴の組合せによって解決され、方法の有利な発展形成は従属請求項2〜8にある。
【0007】
本発明による方法に従って、まず、それぞれ個々のスキャナの照射時間及び/又はこの個々のスキャナによって捕捉される照射面が第1のステップにおいて個別に補足されメモリされる。照射時間の捕捉は、例えば放射源からの放射エネルギーを通過させるシャッタの開口信号によって検出されることができるが、他の捕捉可能性、スキャナの起動時に電子的にメモリされることが可能な時間信号が提供される例えば感光性の要素又はこれに類するものも考えられる。
【0008】
照射面の捕捉は、所定の期間における照射画像の捕捉によって写真技術的に、又は検出された照射時間及びスキャナ偏差に頼ることによって、同様に異なる態様で行うことができ、その結果、照射された構造フィールド部分がその照射された大きさに関して算出されることが可能である。
【0009】
第2のステップでは、補足され、メモリされた照射時間の値及び照射面の値が互いに電子的に比較される。このことは、対応する適切なプロセッサ又はコンピュータ内に統合された比較装置によって行われる。
【0010】
照射時間又は照射面が互いに異なることが確認されると、次の層又は次の層部分のために、それぞれ個々のスキャナのための照射時間ができる限り近似し、及び/又はそれぞれ個々のスキャナの照射面が互いにできる限り一致するように、それぞれ個々のスキャナによって照射されるべき粉体層の表面範囲の新たな分割が設定される。
【0011】
この方法は、構造プロセス中に変化する照射幾何形状に対して迅速かつ適当に反応されることができるように反復的に、すなわち繰り返し行われる。スキャンフィールドの分割は、それぞれ1つ又は複数の層の固化後に、後続の各照射通過において、各スキャナのために生じる露光時間が少なくともほぼ同一であるように適合される。操作者が、構造過程の開始前に、スキャナの読み取り可能な制御データに基づき、各スキャナのためのスキャンフィールドの大きさの予備調整を行うことが可能である。当然、操作者が、構造工程中にほぼ手動でスキャン符号の反復的な一致、及び例えば熱的な理由又はこれに類するものに基づき意図的にスキャンフィールドの変位に介入することも可能である。
【0012】
本発明による方法が「混合方法」として実行可能であること、すなわち例えば照射時間及び照射面が測定され、例えば本発明による一致を達成するために第2のスキャナの照射面と比較される第1のスキャナの照射時間に基づき、この第1のスキャナによって照射される面が推定されることが提案される。
【0013】
2つのスキャナのスキャンフィールドの間の境界は直線であり得る。ただし、構造フィールドの上方で2つより多くのスキャナが用いられていれば、スキャンフィールド間の他の境界経過も選択することが有利であり得る。
【0014】
全てのスキャナについて照射時間及び/又は照射面の比較によりスキャンフィールド境界の変位が生じなければ、表面上の縞模様の形成を防止するために、スキャンフィールド間の境界を変動させることが非常に有利である。
【0015】
本発明による制御は、異なるスキャナのスキャンフィールド間の境界を最適に調整するものである。溶融面及び位置の変更が構造過程全体を越えて大きく層から層へ、しかし多くの場合比較的小さいことによって、制御は、スキャンフィールド境界の小さなインクリメンタルな適合によって、構造時間が構造過程全体を越えて理論的な最小値へ近似されることができるようになっている。
【0016】
本発明を図面における有利な実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】方法を実行するための装置の本質的な構成要素の概略的な図である。
【
図2】スキャンフィールド適合のための図示であり、
図2aには(第1の)層nが図示され、
図2bには別の層n+1が図示され、
図2cには層n+2が図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に図示された装置1は、本質的な構成要素としてプロセスチャンバ2を含んでおり、このプロセスチャンバ内には、高さ調整可能な構造プラットフォーム4を有する構造コンテナ3が配置されている。構造プラットフォーム4の上方にはコーティング装置5が配置されており、このコーティング装置によって、配量チャンバ7からの構造材料6が、構造コンテナ3の範囲において、薄い層の形態で塗布されることが可能である。構造コンテナ3の上方では、プロセスチャンバ2内に複数のスキャナ8a,8bが配置されており、これらスキャナによって、構造材料層11を選択的に固化させるために、放射源10のレーザの形態の放射9がプロセス制御されて構造材料層11へ向けられている。
【0019】
装置の上記構成要素は本発明にとって本質的な構成要素のみであり、当然、このようなレーザ焼結設備又はレーザ溶融設備は、本発明の範囲では説明する必要がない多数の別の構成要素を含んでいる。
【0020】
さらに、装置は電子的な捕捉ユニット20を備えており、この電子的な捕捉ユニットを介して、各スキャナ8についての照射時間及び/又は放射ステップにおいてスキャナ8によって捕捉される照射面が個別に捕捉されることができるとともに、電子的なメモリ21にメモリされることが可能である。
【0021】
メモリ21には電子的な比較装置22が接続されており、この比較装置によって、個々のスキャナ8のメモリされた照射時間の値を互いに比較することができる。比較装置22にはプロセス装置23が接続されており、このプロセス装置は、個々のスキャナ8の照射時間の値が異なる場合に、それぞれ個々のスキャナ8の照射時間(又は照射面)が平面に関してできる限り一致されているように、それぞれ個々のスキャナ8によって露光されるべき表面範囲の新たな設定が演算される。
【0022】
さらに、
図1には、ディスプレイ26を有する入力装置25が更に図示されており、この入力装置を介して、操作者がレーザ焼結装置又はレーザ溶融装置1の構造プロセスに介入することが可能である。
【0023】
図示の実施例では、放射源10の放射9がビームスプリッタ15を介してガイドされ、スキャナ8a,8bへ至るように、そこからプロセスチャンバ2の上部範囲におけるウィンドウ16を貫通することが見て取れる。
【0024】
捕捉ユニット20は、スキャナ又はこれらの手前に接続された光学的なスイッチ(シャッタ)において、複数のセンサ要素を含んでおり、これらセンサ要素は、スキャナ8の照射時間を捕捉するとともに、比較されるべき照射時間の値T1及びT2としてメモリ21内に保存する。これらの値は、プロセッサによってスキャナの作動最適化を可能とするために、比較装置22において互いに比較される。
【0025】
一方で、照射時間の捕捉が照射面の捕捉によって置換又は補足され得ること、並びに電子的なシステムのメモリ及び比較部が装置を動作させるためのものであることができるとともにコンピュータ又はプロセッサに統合されることが可能であることは、当業者にとって周知である。
【0026】
図2a〜
図2cには、個々のスキャナ8a,8bに関するスキャンフィールド31,32あるいは照射面の最適化がどのように最適化されるかが詳細に示されている。
【0027】
まず、
図2aには、スキャンフィールド32の溶融されるべき面がスキャンフィールド31の溶融されるべき面よりも大きい状態が図示されている。この理由により、スキャンフィールド31とスキャンフィールド32の間の境界30が下方へ変位することが合目的であり、その結果、
図2bによる次の層n+1において既にスキャンフィールド31,32の近似が行われている。
【0028】
この過程は、実際にスキャンフィールド31,32が同一の大きさとなるまで、すなわち露光時間tA,tBが互いに一致するまで繰り返され、その結果、両スキャナ8a,8bは、少なくとも大部分において同一に負荷されている。
【0029】
照射時間が互いに一致するため、照射時間又はスキャンフィールドの大きさの比較測定によってスキャンフィールド間の境界30が変位する必要がなければ、部材における縞模様の形成を防止するために、スキャンフィールド間の境界30の変動がなされる。
【符号の説明】
【0030】
1 装置
2 プロセスチャンバ
3 構造コンテナ
4 構造プラットフォーム
5 コーティング装置
6 構造材料
7 配量チャンバ
8 スキャナ
9 放射
10 放射源
11 構造材料層
15 ビームスプリッタ
20 捕捉ユニット
21 メモリ
22 比較装置
23 プロセッサ装置
25 入力装置
26 ディスプレイ
30 境界
31 スキャンフィールド
32 スキャンフィールド