(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープ、および前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、および、前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を有するテープ剥離機構を備え、部品供給位置で前記部品収納部から前記部品を供給するフィーダ装置と、
前記テープ剥離刃が前記ボトムテープと前記カバーテープとの間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定部と、
前記剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合に、前記キャリアテープの先端を一旦前記テープ剥離刃の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施するリカバリ機能部と、を備え、
前記リカバリ機能部は、
変更可能なリカバリ実施条件の中に、前記キャリアテープの先端が前記テープ剥離刃に再度当接するときのリカバリ繰り出し速度を含み、
前記剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された都度、前記リカバリ繰り出し速度を次第に遅くするリカバリ速度決定部を含む、
部品実装機。
前記部品実装機は、前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルをもつ実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置を備え、
前記剥離開始判定部は、
前記実装ヘッドに設けられて前記基板の位置基準マークを撮像するカメラと、
前記テープ剥離刃から前記部品供給位置までの範囲に前記カメラを移動させて前記キャリアテープを撮像し、撮像した画像を画像処理して剥離が開始されたか否かを判定する画像判定部と、を含んで構成された、請求項1に記載の部品実装機。
前記繰り出し速度決定部は、前記剥離開始判定部により剥離が開始されたと判定されたときの前記リカバリ繰り出し速度を、同じ種類の次の前記キャリアテープの剥離開始時の繰り出し速度とする請求項1または2に記載の部品実装機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.実施形態の部品実装機1の全体構成)
本発明の実施形態の部品実装機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。
図1は、実施形態の部品実装機1の全体構成を示す平面図である。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬入出するX軸方向、紙面下側の後方から紙面上側の前方に向かう方向がY軸方向である。部品実装機1は、基板搬送装置2、複数のフィーダ装置3、部品移載装置4、部品カメラ5、および制御装置6などが機台9に組み付けられて構成されている。基板搬送装置2、各フィーダ装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5は、制御装置6から制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
【0011】
基板搬送装置2は、基板Kを装着実施位置に搬入し位置決めし搬出する。基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、およびバックアップ装置などで構成されている。一対のガイドレール21、22は、機台9の上面中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行して機台9に組み付けられている。一対のガイドレール21、22の向かい合う内側に、図略の無端環状の一対のコンベアベルトが並設されている。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kの向かい合う2辺の縁を戴置した状態で輪転して、基板Kを機台9の中央部に設定された装着実施位置に搬入および搬出する。装着実施位置の下方に、図には見えないバックアップ装置が配設されている。バックアップ装置は、基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。これにより、部品移載装置4が装着実施位置で装着動作を行えるようになる。
【0012】
複数のフィーダ装置3は、それぞれ部品を順次供給する。複数のフィーダ装置3は、幅方向寸法が小さな扁平形状であり、機台9の上面のパレット台91上に並べて装備される。各フィーダ装置3は、本体部31、本体部31の後部に設けられたテープリール39、本体部31の前端付近の上部に設けられた部品供給位置32などを有している。テープリール39には、キャリアテープ8(
図3〜
図6参照)が巻回保持されている。このキャリアテープ8が所定ピッチずつ繰り出され、部品が収納状態を解除されて部品供給位置32に順次供給される。フィーダ装置3は、本発明のフィーダ装置の一実施形態であり、その詳細な構成は後述する。
【0013】
部品移載装置4は、複数のフィーダ装置3の各部品供給位置32から部品を吸着採取し、位置決めされた基板Kまで搬送して装着する。部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構を構成する一対のY軸レール41、42およびY軸スライダ43、実装ヘッド44、ノズルツール45、吸着ノズル46、ならびに基板カメラ47などで構成されている。一対のY軸レール41、42は、機台9の両方の側面寄りに配置されて、前後方向(Y軸方向)に延在している。Y軸レール41、42上に、Y軸スライダ43が移動可能に装架されている。Y軸スライダ43は、図略のY軸ボールねじ機構によってY軸方向に駆動される。
【0014】
実装ヘッド44は、Y軸スライダ43に移動可能に装架されている。実装ヘッド44は、図略のX軸ボールねじ機構によってX軸方向に駆動される。ノズルツール45は、実装ヘッド44に交換可能に保持される。ノズルツール45は、部品を吸着して基板Kに装着する吸着ノズル46を1本または複数本有する。基板カメラ47は、ノズルツール45と並んで実装ヘッド44に設けられている。基板カメラ47は、基板Kに付設された位置基準マークを撮像して、基板Kの正確な位置を検出する。
【0015】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とフィーダ装置3との間の機台9の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ5は、実装ヘッド44がフィーダ装置3から基板K上に移動する途中で、吸着ノズル46に吸着されている部品の状態を撮像する。部品カメラ5の撮像データによって部品の吸着姿勢の誤差や回転角のずれなどが判明すると、制御装置6は、必要に応じて部品装着動作を微調整し、装着が困難な場合には当該の部品を廃棄する制御を行う。
【0016】
制御装置6は、機台9に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置6は、基板Kに装着する部品の種類および装着順序、当該の部品を供給するフィーダ装置3などを指定した装着シーケンスを保持している。制御装置6は、基板カメラ47および部品カメラ5の撮像データ、ならびに図略のセンサの検出データなどに基づき、装着シーケンスにしたがって部品装着動作を制御する。また、制御装置6は、生産完了した基板Kの生産数や、部品の装着に要した装着時間、部品の吸着エラーの発生回数などの稼動状況データを逐次収集して更新する。制御装置6は、オペレータに情報を表示するための表示部や、オペレータによる入力設定を行うための入力部を備えている。
【0017】
制御装置6は、本発明の繰り出し速度決定部の機能を果たす。さらに、制御装置6は、後述する処理フローを実行して、剥離開始判定部、リカバリ機能部、およびリカバリ速度決定部の機能の一部を果たす。
【0018】
(2.実施形態のフィーダ装置3の詳細な構成)
次に、実施形態のフィーダ装置3の詳細な構成について説明する。
図2は、実施形態のフィーダ装置3の側面図である。フィーダ装置3は、本体部31の後端の中間高さ付近にテープ挿入口33を有している。テープ挿入口33から本体部31の前端上部に向けて繰り出しレール34が配設されている。繰り出しレール34の前端付近の上面に、部品供給位置32が設定されている。部品供給位置32の後方に、テープ剥離機構7が配設されている。テープ剥離機構7の後方の繰り出しレール34の上側に、テープ検出センサ36が配設されている。テープ検出センサ36は、センサ配設位置におけるキャリアテープ8の有無を検出する。
【0019】
部品供給位置32の前後の繰り出しレール34の下側に、第1および第2スプロケット351、352が回転可能に軸承されている。第1および第2スプロケット351、352の歯は、繰り出しレール34に形成された溝から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84(
図3〜
図6参照)に嵌入する。第1および第2スプロケット351、352は、図略の前側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能になっている。
【0020】
繰り出しレール34のテープ挿入口33に近い後方寄りの下側に、第3および第4スプロケット353、354が回転可能に軸承されている。第3および第4スプロケット353、354の歯は、繰り出しレール34に形成された溝から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84に嵌入する。第3および第4スプロケット353、354は、図略の後側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能になっている。繰り出しレール34、第1〜第4スプロケット351〜354、ならびに、前側および後側サーボモータなどにより、テープ繰り出し機構が構成されている。
【0021】
フィーダ装置3のテープ挿入口33の後方には、キャリアテープ8の巻回されたテープリール39が回転可能に支承されている。テープ装填作業で、オペレータは、テープリール39からキャリアテープ8の先端を引き出して、テープ挿入口33から第4スプロケット354まで挿入する。すると、第3および第4スプロケット353、354が正転駆動され、キャリアテープ8が繰り出される。キャリアテープ8の先端が第2スプロケット352まで到達すると、第1および第2スプロケット351、352が正転駆動され、キャリアテープ8が部品供給位置32まで繰り出される。これが、キャリアテープ8の自動装填機能である。フィーダ装置3が有する自動装填機能により、2本のキャリアテープ8を接続するスプライシング作業は不要となっている。
【0022】
また、第1〜第4スプロケット351〜354が逆転駆動されると、キャリアテープ8は手前側に戻され、最終的には、第4スプロケット354の後方まで排出される。これが、キャリアテープ8の自動排出機能である。キャリアテープ8が装填された後には、第1〜第4スプロケット351〜354がピッチ送りで正転駆動される。これにより、キャリアテープ8は、部品供給位置32で順次部品を供給する。
【0023】
(3.テープ剥離機構7の構成および剥離動作)
次に、テープ剥離機構7の構成について説明する。
図3は、テープ剥離機構7の構成および剥離動作を説明する平面図である。また、
図4は、
図3中のキャリアテープ8のみを示した平面図である。
図3および
図4において、キャリアテープ8を構成するカバーテープ81は、便宜的にハッチングを付して示されている。また、接着部85、86および部品89は、便宜的に黒塗りで示されている。
図5は、
図4のC−C矢視方向のキャリアテープ8の断面図である。
図6は、
図4のD−D矢視方向のキャリアテープ8の断面図であり、カバーテープ81の折り返し状態が示されている。
【0024】
図4〜
図6に示されるように、キャリアテープ8は、カバーテープ81およびボトムテープ82からなる。ボトムテープ82は、概ね一定厚さの紙製テープに加工が施され、底面に薄いフィルムテープが貼られて形成されている。ボトムテープ82のテープ幅方向の中央から一方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数の矩形状の部品収納部83が設けられている。各部品収納部83に、それぞれ部品89が収納保持されている。ボトムテープ82の他方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数のスプロケット孔84が穿設されている。
【0025】
ボトムテープ82の上面には、薄いフィルム製のカバーテープ81(
図3、
図4にハッチングで示す)が剥離可能に接着されている。詳述すると、ボトムテープ82の部品収納部83と一方の側縁との間に、テープ長さ方向に延びる接着部85(
図3、
図4に黒塗りで示す)が設定されている。また、ボトムテープ82の部品収納部83とスプロケット孔84との間にも、テープ長さ方向に延びる接着部86(
図3、
図4に黒塗り示)が設定されている。2つの接着部85、86に対して、カバーテープ81の両縁に近い部分が接着されている。カバーテープ81は、その幅寸法がボトムテープ82よりも小さく、部品収納部83を覆うが、スプロケット孔84を覆わない。
【0026】
図3に示されるように、テープ剥離機構7は、2枚の側板77、78、第1テープガイド71、第2テープガイド72、テープ剥離刃73、および、テープ折返し板74などで構成されている。第1テープガイド71および第2テープガイド72は、薄板状の部材であり、繰り出しレール34の上側に離隔して平行に配設される。第1テープガイド71および第2テープガイド72と繰り出しレール34との離隔寸法は、キャリアテープ8の厚みよりもわずかに大きい。キャリアテープ8は、この離隔寸法の間を通過する。
【0027】
第1テープガイド71の後部は、2枚の側板77、78の間に架け渡されて全幅を占めている。第1テープガイド71の前部は、他方の側板78寄りに配置されている。第1テープガイド71の前方寄りに、キャリアテープ8のスプロケット孔84を目視可能とする長円状のスプロケット孔窓711が形成されている。第1テープガイド71のその他の複数位置にも、キャリアテープ8を目視可能とする符号略の切欠き窓が形成されている。第1テープガイド71の上面に、位置基準となる位置マーク715が付設されている。
【0028】
第2テープガイド72は、第1テープガイド71の前方寄りに並んで配置され、一方の側板77に取り付けられている。第2テープガイド72は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。第2テープガイド72の上面に、位置基準となる位置マーク725が付設されている。第1テープガイド71と第2テープガイド72との間に、前後方向に延びる開口部75が形成されている。開口部75の前側は、第1および第2テープガイド71、72の間で幅方向に狭く開口しており、部品供給位置32まで通じている。開口部75の後側は、第1テープガイド71と一方の側板77との間に形成され、幅方向に広く開口している。
【0029】
テープ剥離刃73は、一方の側板77から幅方向に張り出して取り付けられており、開口部75の後側に配置されている。テープ剥離刃73は、先端の幅が狭くかつ上下に薄く、後尾の幅が広くかつ上下に厚く形成されている。テープ剥離刃73は、先端が後方を向いてキャリアテープ8に対向するように配置されている。さらに、テープ剥離刃73は、配設高さが調整されて、その先端がボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入するようになっている。
【0030】
テープ折返し板74は、テープ剥離刃73の後尾に連なり、一方の側板77から幅方向に張り出して配設されている。テープ折返し板74は、第1テープガイド71および第2テープガイド72の上側に離隔して平行に配置される。テープ折返し板74は、カバーテープ81を折り返して部品収納部83を開放できるように、テーパ形状の側縁741をもち、テープ剥離刃73から離れる前方に向かって徐々に拡幅されている。テープ折返し板74と第1テープガイド71との離隔寸法は、カバーテープ81の折り返しが良好に行われるように調整されている。テープ折返し板74は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。
【0031】
次に、テープ剥離機構7の剥離動作について説明する。テープ剥離機構7に向かってキャリアテープ8の先端が繰り出されてくると、キャリアテープ8の先端とテープ剥離刃73とが対向する。そして、さらにキャリアテープ8が繰り出されてテープ剥離刃73に当接すると、テープ剥離刃73は、ボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入し、両テープ82、81の間を進行する。本実施形態において、テープ剥離刃73は、一方の接着部85を剥離し、他方の接着部86を剥離しない。このため、カバーテープ81は、一方の接着部85が剥離され、他方の接着部86が接着された状態で繰り出される。
【0032】
カバーテープ81は、開口部75の後側から前側へと進むにつれ、テープ剥離刃73の側面に沿って、他方の接着部86の上方に立ち上がってゆく。さらに、カバーテープ81は、テープ折返し板74のテーパ形状の側縁741に沿って、他方の側板78の方向に折り返されてゆく。最終的に、カバーテープ81は、部品供給位置32において
図6に示される折り返し状態となる。これにより、部品収納部83の上部が開放されて、部品89の吸着が可能になる。部品89が吸着された後、キャリアテープ8は、カバーテープ81がボトムテープ82に接着されたままの状態で、フィーダ装置3の前方へ排出される。
【0033】
次に、キャリアテープ8と種類の異なるエンボスキャリアテープ8Cについて例示説明する。
図7は、エンボスキャリアテープ8Cを幅方向に切断した断面図である。エンボスキャリアテープ8Cも、カバーテープ81およびボトムテープ82Cからなる。ボトムテープ82Cは、多少の厚さを有する樹脂製テープを用いて形成されている。ボトムテープ82Cのテープ幅方向の中央から一方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで膨張加工が施されて部品収納部83Cが形成されている。エンボスキャリアテープ8Cにおいて、カバーテープ81、スプロケット孔84、および2つの接着部85、86は、キャリアテープ8と同様である。したがって、エンボスキャリアテープ8Cは、キャリアテープ8と互換性を有して、フィーダ装置3に装填される。
【0034】
ここで、キャリアテープ8の厚さは、部品89の高さに応じて、複数種類の中から適宜選定される。相対的に厚いキャリアテープ8Aはコシが強く、換言すると機械的な剛性が高い。相対的に薄いキャリアテープ8Bは、厚いキャリアテープ8Aよりもコシが弱く、エンボスキャリアテープ8Cよりもコシが強い。エンボスキャリアテープ8Cは、コシがもっとも弱く、換言すると機械的な剛性が低い。キャリアテープ8A、8B、8Cのコシの強弱は、その形状、材質、厚さ、および幅寸法などによって定まる。
【0035】
キャリアテープ8A、8B、8Cのコシの強弱は、剥離開始の成功率に影響する。一般的に、キャリアテープ8A、8B、8Cのコシが強いと剥離開始の成功率が高くなり、コシが弱いと剥離開始の成功率が低くなりがちである。また、コシが弱いエンボスキャリアテープ8Cでも、剥離開始時の繰り出し速度Vを小さくしてやれば、剥離開始の成功率は向上する。
【0036】
(4.繰り出し速度決定部およびテープ繰り出し機構の機能、作用)
次に、実施形態のフィーダ装置3において、制御装置6が果たす繰り出し速度決定部の機能について説明する。制御装置6は、複数のフィーダ装置3にそれぞれ装填されるキャリアテープ8A、8B、8Cの種類、および部品89の種類を一括して管理している。制御装置6は、複数種類のキャリアテープ8A、8B、8Cの形状、材質、厚さ、および幅寸法に応じて、キャリアテープ8A、8B、8Cの先端がテープ剥離刃73に当接する剥離開始時の繰り出し速度Vを決定する。
【0037】
実施形態において、制御装置6は、厚いキャリアテープ8Aの繰り出し速度Vを大きな繰り出し速度VHとし、薄いキャリアテープ8Bの繰り出し速度Vを中くらいの繰り出し速度VMとする。また、制御装置6は、エンボスキャリアテープ8Cの繰り出し速度Vを小さな繰り出し速度VLとする。
【0038】
図8は、制御装置6により決定された剥離開始時の繰り出し速度VH、VM、VLに基づいて、テープ繰り出し機構が速度調整を行う様子を示した図である。
図8の横軸には、キャリアテープ8A、8B、8Cの先端の位置が示されている。すなわち、後方から前方へと順番に、減速開始位置、剥離位置、部品供給位置32、および停止位置が示されている。減速開始位置として、例えば、テープ検出センサ36の配設位置を例示できる。剥離位置は、テープ剥離刃73の後方を向いた先端の位置を表している。停止位置は、キャリアテープ8A、8B、8Cの先端と最初の部品収納部83、83Cとの距離だけ部品供給位置32から前方に進んだ位置である。
【0039】
図8の縦軸には、キャリアテープ8A、8B、8Cの繰り出し速度が示されている。
図8に示される3本の速度曲線のうち実線は厚いキャリアテープ8Aを示し、一点鎖線は薄いキャリアテープ8Bを示し、破線はエンボスキャリアテープ8Cを示している。キャリアテープ8A、8B、8Cの種類に関係なく先端が減速開始位置に到達するまで、テープ繰り出し機構は所定の大きな繰り出し速度V1を用いる。そして、先端が減速開始位置を越えると、キャリアテープ8A、8B、8Cの種類に応じて、繰り出し速度が変化する。
【0040】
すなわち、厚いキャリアテープ8Aでは、先端が減速開始位置を越えても所定の繰り出し速度V1は殆ど減速されず、剥離位置で大きな繰り出し速度VHとなる。その後、先端が剥離位置を越えると大きな繰り出し速度VHは減速され、キャリアテープ8Aの先端は停止位置に停止する。薄いキャリアテープ8Bでは、先端が減速開始位置を越えると所定の繰り出し速度V1が減速され、剥離位置で中くらいの繰り出し速度VMとなる。エンボスキャリアテープ8Cでは、先端が減速開始位置を越えると所定の繰り出し速度V1が大きく減速され、剥離位置で小さな繰り出し速度VLとなる。したがって、テープ繰り出し機構は、薄いキャリアテープ8Bおよびエンボスキャリアテープ8Cに対し、本発明の繰り出し速度減速部として機能する。
【0041】
一方、従来技術においては、キャリアテープ8A、8B、8Cの種類に関係なく、剥離開始時の繰り出し速度Vは、所定の繰り出し速度V1のままとされていた。これに対し実施形態のフィーダ装置3では、コシが中程度に強いキャリアテープ8B、およびコシが弱いエンボスキャリアテープ8Cの剥離開始の繰り出し速度Vが中くらいまたは小さな繰り出し速度VM、VLに減速されるので、剥離開始の成功率が従来技術よりも高くなる。
【0042】
なお、制御装置6は、部品89の特徴、例えば部品89の単価に基づいて、剥離開始時の繰り出し速度Vを決定してもよい。仮に、剥離の開始に失敗すると、キャリアテープ8A、8B、8Cの先端から数個の範囲の部品89が使用できなくなって、損失の発生するおそれがある。したがって、部品89の単価が高い場合に、剥離開始時の繰り出し速度Vを小さめに決定して慎重を期すことにより、経済的な損失を低減できる。例えば、厚いキャリアテープ8Aであっても部品89の単価が高い場合に、制御装置6は、中くらいの繰り出し速度VMを採用してもよい。
【0043】
(5.実施形態のフィーダ装置3の態様および効果)
実施形態のフィーダ装置3は、複数の部品収納部83、83Cにそれぞれ部品89を収納したボトムテープ82、82C、およびボトムテープ82、82Cに接着されて部品収納部83、83Cを覆うカバーテープ81からなるキャリアテープ8、8A、8B、8Cを繰り出し速度で繰り出すテープ繰り出し機構と、キャリアテープ8、8A、8B、8Cが繰り出されるにつれボトムテープ82、82C、とカバーテープ81との間を進行して剥離を行うテープ剥離刃73を有するテープ剥離機構7とを備え、部品供給位置32で部品収納部83、83Cから部品89を供給するフィーダ装置3であって、複数種類のキャリアテープ8、8A、8B、8Cの性状および収納された部品89の特徴の少なくとも一方に応じて、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端がテープ剥離刃73に当接する剥離開始時の繰り出し速度Vを決定する繰り出し速度決定部(制御装置6の機能)をさらに備えた。
【0044】
これによれば、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの種類に応じで剥離開始時の繰り出し速度Vを3段階(VH、VM、VL)で調整でき、剥離開始の成功率を高めることができる。さらに、剥離に失敗してオペレータがリカバリ作業を行う機会が減少するので、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの使用開始時の作業効率が高められる。また、剥離の開始が難しくて従来使用できなかったキャリアテープも使用できるようになるので、供給できる部品の種類の幅が拡がる。
【0045】
さらに、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの性状は、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの形状、材質、厚さ、および幅寸法を含み、部品89の特徴は、部品89の単価を含む。これによれば、剥離開始の成功率に影響するキャリアテープ8、8A、8B、8Cのコシの強さなどを考慮して剥離開始時の繰り出し速度Vを適正に調整できるので、剥離開始の成功率を顕著に高めることができる。また、部品89の損失などを考慮して、剥離開始時の繰り出し速度Vを適正に調整できるので、経済的な損失を低減できる。
【0046】
さらに、繰り出し速度決定部は、薄いキャリアテープ8Bおよびエンボスキャリアテープ8Cの先端がテープ剥離刃73の手前の減速開始位置に到達するまで所定の大きな繰り出し速度V1を用い、キャリアテープ8B、8Cの先端が減速開始位置からテープ剥離刃73まで進む間に所定の繰り出し速度V1を剥離開始時の中くらいまたは小さな繰り出し速度VM、VLまで減速する。これによれば、キャリアテープ8B、8Cの先端が減速開始位置に到達するまで大きな繰り出し速度V1を用いて自動装填の所要時間を短縮する効果と、剥離開始時の中くらいまたは小さな繰り出し速度VM、VLにより剥離開始の成功率を高める効果とを両立できる。
【0047】
なお、簡易な方法として、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの種類に関係なく、減速開始位置に到達するまでの所定の大きな繰り出し速度V1を、剥離開始時の中くらいまたは小さな繰り出し速度VM、VLまで減速してもよい。この方法でも、総合的に見て剥離開始の成功率を高めることができる。一方、精密な方法として、剥離開始時の繰り出し速度Vを、実施形態で説明した3段階の繰り出し速度VH、VM、VLよりも多段階、例えば10段階に切り替えるようにしてもよい。
【0048】
(6.剥離開始判定部、リカバリ機能部、およびリカバリ速度決定部の機能)
次に、実施形態の部品実装機1において構成される剥離開始判定部、リカバリ機能部、およびリカバリ速度決定部の機能について説明する。実施形態の部品実装機1は、テープ剥離機構7の剥離開始の成否を迅速に判定するとともに、剥離の開始に失敗したときに自動でリカバリ動作を行ってオペレータのリカバリ作業を軽減することを目標としている。これを実現するために、制御装置6は、剥離開始判定部、リカバリ機能部、およびリカバリ速度決定部の機能を含んだ処理フローを実行する。
【0049】
制御装置6は、剥離開始判定部として、テープ剥離刃73がボトムテープ82、82Cとカバーテープ81との間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する。また、制御装置6は、リカバリ機能部として、剥離が開始されなかったと判定された場合に、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端を一旦テープ剥離刃73の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施する。制御装置6の処理フローについて、以降に詳述する。
【0050】
図9は、剥離開始判定部、リカバリ機能部、およびリカバリ速度決定部の機能を含んだ制御装置6の処理フローを説明する図である。なお、処理フローの一部は、オペレータによって実行される。
図9の第1工程S1で、オペレータは、変更可能なリカバリ実施条件を設定する。リカバリ実施条件は、リカバリ動作の実施回数nの上限を定めた指定回数N、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端を戻すときの戻し量Lおよび戻し速度Vb、ならびにキャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端を再度繰り出すときのリカバリ繰り出し速度Vrを含む。リカバリ実施条件は、全てのフィーダ装置3に共通に設定されてもよく、フィーダ装置3ごとに個別に設定されてもよい。
【0051】
次の第2工程S2で、オペレータは、段取り作業の一環でフィーダ装置3をパレット台91にセットする。続いて、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの装填作業が行われる。初回の装填作業では、オペレータがフィーダ装置3にテープリール39をセットして、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端をテープ挿入口33に挿入し、以降はフィーダ装置3の自動装填機能による。これにより、キャリアテープ8の先端が部品供給位置32の前方の停止位置まで装填される。
【0052】
次の第3工程S3で、制御装置6は、実装ヘッド44の基板カメラ47、およびソフトウェアにより実現された画像判定部を用いて、剥離開始判定部の処理を実施する。具体的に、制御装置6は、テープ剥離刃73から部品供給位置32までの範囲に基板カメラ47を移動させてキャリアテープ8を撮像し、撮像した画像を画像処理して剥離が開始されたか否かを判定する。基板カメラ47が撮像する撮像位置として、例えば、
図3に示されるテープ剥離刃73の撮像位置P1およびP2、スプロケット孔窓711の撮像位置P3、および部品供給位置32の撮像位置P4の4箇所を設定できる。これらの撮像位置P1〜P4は、位置マーク715、725が参照されることで、正確に位置決め制御される。なお、基板カメラ47は、上記した4箇所の撮像位置P1〜P4の複数をまとめて撮像してもよく、個別に撮像してもよい。
【0053】
基板カメラ47は、撮像位置P1〜P4においてキャリアテープ8を撮像するが、実際にはカバーテープ81を撮像するケース、ボトムテープ82を撮像するケース、およびキャリアテープ8以外のテープ剥離機構7の構成部材を撮像するケースが生じる。この3ケースは、例えば、画像の輝度の違いにより判別できる。そして、判別内容に基づいて、制御装置6は、剥離が開始されたか否かを判定できる。なお、本願出願人は、4箇所の撮像位置P1〜P4の画像の輝度の違いにより剥離が開始されたか否かを判定する技術の詳細を、特願2014−189203号に出願済みである。
【0054】
次の第4工程S4で、制御装置6は、剥離の開始が判定されたときに処理フローの実行を第5工程S5に進め、そうでないときに処理フローの実行を第11工程S11に進める。第5工程S5で、制御装置6は、吸着ノズル46による部品89の吸着および装着を制御して、基板Kの実生産を開始し、継続する。実生産を継続してゆくと、第6工程S6でキャリアテープ8、8A、8B、8Cが終端まで繰り出されて部品切れになる。すると、オペレータは、新しいテープリール39を準備して、第2工程S2に戻る。
【0055】
また、第11工程S11で、リカバリ動作の実施回数nが指定回数N未満のとき、制御装置6は、処理フローの実行を第12工程S12に進める。実施回数nが指定回数Nに達しているとき、制御装置6は、剥離開始の失敗が解消されないリカバリ不成功時と判断して、処理フローの実行を第15工程S15に進める。
【0056】
第12工程S12で、制御装置6は、リカバリ速度決定部として機能し、剥離が開始されなかったと判定された都度、リカバリ繰り出し速度Vrを剥離開始時の繰り出し速度Vから次第に遅くする。例えば、制御装置6は、1回目のリカバリ動作で、リカバリ繰り出し速度Vrを剥離開始時の繰り出し速度Vの90%の大きさとし、2回目以降では、80%、70%、60%と、10%刻みで次第に遅くする。
【0057】
次の第13工程S13は、剥離開始に失敗し、かつ、リカバリ動作の実施回数nが指定回数N未満のときに行われるキャリアテープ8、8A、8B、8Cの戻し処理である。制御装置6は、テープ繰り出し機構を逆方向に駆動するように制御し、第1工程S1で設定された戻し速度Vbを用いて、キャリアテープ8を設定された戻し量Lだけ手前側に戻す。
【0058】
次の第14工程S14で、制御装置6は、リカバリ動作の実施回数nを1だけカウントアップして、処理フローの実行を第2工程S2に戻す。第14工程S14から戻ったときの第2工程S2で、オペレータは関与せず、制御装置6は、キャリアテープ8の自動装填機能を働かせる。すなわち、制御装置6は、第12工程S12で決定されたリカバリ繰り出し速度Vrを用いて、キャリアテープ8を戻し量Lだけ再度繰り出すように制御する。この後、第3工程S3以降が繰り返される。本発明のリカバリ機能部は、第11工程S11、第13工程S13、第14工程S14、および第2工程S2によって実現されている。
【0059】
また、リカバリ不成功時の第15工程S15で、制御装置6は、テープ排出部に相当する自動排出機能を働かせる。これにより、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端がテープ挿入口33の付近まで排出される。次の第16工程S16で、制御装置6は、フィーダエラーを表示してオペレータに報知する。
【0060】
なお、制御装置6は、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの初回の装填作業で剥離が開始されたと判定されたときの繰り出し速度Vを、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの種類とセットにして記憶する。また、制御装置6は、リカバリ動作によって剥離が開始されたと判定されたときのリカバリ繰り出し速度Vrを、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの種類とセットにして記憶する。そして、同じ種類の次のキャリアテープ8、8A、8B、8Cを装填するときに、制御装置6は、剥離開始時の繰り出し速度Vとして、記憶した繰り出し速度Vまたは記憶したリカバリ繰り出し速度Vrを用いる。
【0061】
(7.実施形態の部品実装機1の態様および効果)
実施形態の部品実装機1は、実施形態のフィーダ装置3と、部品供給位置32で部品89を吸着して基板に装着する吸着ノズル46をもつ実装ヘッド44、および実装ヘッド44を駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置4と、テープ剥離刃73がボトムテープ82、82Cとカバーテープ81との間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定部と、剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合に、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端を一旦テープ剥離刃73の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施するリカバリ機能部と、を備えた。
【0062】
これによれば、部品実装機1は、剥離開始判定部とリカバリ機能部とを備えるので、仮に剥離に失敗しても自動的にリカバリ動作が行われて、剥離開始の成功率がさらに高められる。
【0063】
さらに、剥離開始判定部は、実装ヘッド44に設けられて基板Kの位置基準マークを撮像する基板カメラ47と、テープ剥離刃73から部品供給位置32までの範囲に基板カメラ47を移動させてキャリアテープ8、8A、8B、8Cを撮像し、撮像した画像を画像処理して剥離が開始されたか否かを判定する画像判定部と、を含んで構成されている。これによれば、既存の基板カメラ47と制御装置6のソフトウェアとを組み合わせて剥離開始判定部を構成でき、センサなどを追加しなくてよいので、コストの上昇が抑制される。
【0064】
さらに、リカバリ機能部は、変更可能なリカバリ実施条件の中に、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端がテープ剥離刃73に再度当接するときのリカバリ繰り出し速度Vrを含み、剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された都度、リカバリ繰り出し速度Vrを剥離開始時の繰り出し速度Vから次第に遅くするリカバリ速度決定部を含む。これによれば、リカバリ繰り出し速度Vrが次第に遅くなるので、リカバリ動作によって剥離開始に成功する場合が増加して、剥離開始の成功率を顕著に高めることができる。
【0065】
さらに、繰り出し速度決定部は、剥離開始判定部により剥離が開始されたと判定されたときのリカバリ繰り出し速度Vrを、同じ種類の次のキャリアテープ8、8A、8B、8Cの剥離開始時の繰り出し速度Vとする。これによれば、繰り出し速度決定部は、繰り出し速度Vについての学習機能を備える。つまり、繰り出し速度決定部は、剥離開始に成功した実績のある適正な繰り出し速度Vをキャリアテープ8、8A、8B、8Cの種類ごとに保持して、初回の装填作業から適正な繰り出し速度Vを用いることができる。
【0066】
(8.実施形態の応用および変形)
なお、実施形態のフィーダ装置3において、減速開始位置は、テープ検出センサ36の配設位置に限定されない。例えば、減速開始位置をテープ検出センサ36よりも前方に設定し、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端がテープ検出センサ36から一定距離だけ進んでから減速を開始してもよい。また例えば、減速開始位置をテープ検出センサ36よりも後方に設定し、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの先端が第4スプロケット354から一定距離だけ進んだ時点で減速を開始してもよい。
【0067】
また、実施形態の部品実装機において、剥離開始判定部は、キャリアテープ8、8A、8B、8Cの装填作業後に吸着ノズル46が部品89の吸着に成功したことを以って、剥離開始の成功と判定してもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。