特許第6873223号(P6873223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873223抗腫瘍活性を有するベンゾ−N−ヒドロキシアミド化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873223
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】抗腫瘍活性を有するベンゾ−N−ヒドロキシアミド化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 259/10 20060101AFI20210510BHJP
   C07D 209/20 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 213/56 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 213/643 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 215/12 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 317/60 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 409/12 20060101ALI20210510BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/443 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C07C259/10CSP
   C07D209/20
   C07D213/56
   C07D213/643
   C07D215/12
   C07D233/64 106
   C07D317/60
   C07D405/12
   C07D409/12
   C07D417/12
   A61K31/166
   A61K31/167
   A61K31/277
   A61K31/36
   A61K31/381
   A61K31/405
   A61K31/4164
   A61K31/427
   A61K31/44
   A61K31/4406
   A61K31/443
   A61K31/47
   A61P35/00
   A61P35/04
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-502731(P2019-502731)
(86)(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公表番号】特表2019-522674(P2019-522674A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2017067850
(87)【国際公開番号】WO2018015292
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】102016000074606
(32)【優先日】2016年7月18日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】591279294
【氏名又は名称】イタルファルマコ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ITALFARMACO SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア スティブナッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ サンドローネ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ モデーナ
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ サムエレ ポッツィ
(72)【発明者】
【氏名】バルバラ ヴェルガーニ
(72)【発明者】
【氏名】マリア ラッタンツィオ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ マスカーニ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ステインクーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ フォッサーティ
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102180826(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103172540(CN,A)
【文献】 特表2013−508349(JP,A)
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry,2015年,Vol.23,pp.6258-6270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
nは、0、1または2であり、
Aは、Hであるか、または単環式もしくは二環式の炭素環であり、前記炭素環は、任意選択で部分的にまたは完全に不飽和であり、炭素原子を含み、任意選択でN、SまたはOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
1およびR2は、独立して、−H、−OH、−OMe、−CN、−NH2、−NO2、−Cl、−COOH、−ハロゲン、−CF3、−N(Ra)2、直鎖または分岐のC1〜C4アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アルコキシ、アリールオキシ、スルホニルアミノおよび−CH2N(CH2CH32を含む群から選択され、ただし、AがHの場合、R1およびR2は存在せず、
Raは、直鎖または分岐のC1〜C3アルキルであり、
Xは、CまたはNであ
3およびR4は、独立して、−H、−OMe、−OPh、−NO2、−NMe2、−NH2、−ハロゲン、−CF3、−N(Ra)2、直鎖または分岐のC1〜C4アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アルコキシ、アリールオキシおよびスルホニルアミノを含む群から選択されるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成してい
の化合物ならびにその薬学的に許容される塩および立体異性体から選択される化合物。
【請求項2】
nは、0、1または2であり、
Aは、Hであるか、または単環式もしくは二環式の炭素環であり、前記炭素環は、任意選択で部分的にまたは完全に不飽和であり、炭素原子を含み、任意選択でN、SまたはOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
1およびR2は、独立して、−H、−OH、−OMe、−CN、−NH2、−NO2、−Cl、−COOH、および−CH2N(CH2CH32を含む群から選択され
Xは、CまたはNであ
3およびR4は、独立して、−H、−OMe、−OPh、−NO2、−NMe2、および−NH2を含む群から選択されるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成してい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nは1であり、XはCであり、
1およびR2は、独立して、−H、−Clまたは−OMeであり、
3およびR4は、独立して、−H、NMe2であるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成してい、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド(1D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(2D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(4D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(5D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド(7D);
− (E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)−N−[(1R)−2−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−1−インダン−2−イル−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(8D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−4−フェニル−ブタンアミド(9D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(10D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(2−ナフチル)プロパンアミド(11D);
− (E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)−N−[2−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(12D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(13D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−キノリル)プロパンアミド(14D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(15D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(16D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−アミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(17D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(18D);
− (2S)−3−(4−シアノフェニル)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(19D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−2−[[(E)−3−(4−ニトロフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−フェニル−プロパンアミド(20D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−イミダゾール−5−イル)プロパンアミド(21D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(22D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(23D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(24D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(ベンゾチオフェン−3−イル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(25D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−チアゾール−4−イル−プロパンアミド(26D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−4−フェニル−ブタンアミド(27D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(28D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(4−シアノフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(29D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド(30D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド(31D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(32D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(4−クロロフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(33D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(34D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(35D);
− 4−[(2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−3−オキソ−プロピル]安息香酸(36D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(3,4−ジクロロフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(37D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(38D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(39D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(40D);
− (E)−N−[2−[[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]メチルアミノ]−2−オキソ−エチル]−3−フェニル−プロパ−2−エンアミド(41D);
− (E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−N−[2−[[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]メチルアミノ]−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(43D);
− (2S)−3−[4−(ジエチルアミノメチル)フェニル]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(45D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−[4−(ジエチルアミノメチル)フェニル]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(46D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(2−ナフチル)−2−[[(E)−3−(6−フェノキシ−3−ピリジル)プロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(47D)
のうちから選択される、化合物。
【請求項5】
立体異性体型はtrans型である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含む医薬。
【請求項7】
がんの予防および/またはがんの処置のための、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
結腸直腸がん、肺がん、脳がん、前立腺がん、もしくは婦人科がん、または血液悪性腫瘍の予防および/または処置のための、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
転移性疾患、再発性疾患および薬剤耐性疾患の予防および/または処置のための、請求項6に記載の医薬。
【請求項10】
治療有効量の少なくとも1つの請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物を、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項11】
経腸経路、非経口経路、経口経路、局所経路、または吸入経路による投与に適切な、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
液剤または固形剤の形態の、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
カプセル剤、錠剤、コーティング錠剤、散剤、顆粒剤、クリーム剤または軟膏剤の形態の、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基にα,β−不飽和カルボニル部分を担持するα−アミノ酸性スキャホールドを有する、新規のベンゾ−N−ヒドロキシアミド化合物およびその医薬組成物に関する。
【0002】
分子は抗腫瘍活性を有し、特にがん幹細胞に対して活性となる。
【背景技術】
【0003】
現在のがん処置を受けた一部の患者において、部分的または完全ながんの退縮は達成できる。しかし、このような初期応答は、ほとんどの場合再発を伴い、再発性のがんはさらなる処置に対する耐性を有する。したがって、再発に対抗する治療アプローチの発見が、がんの薬を進歩させるために必須である。悪性度、薬物感受性、ならびに転移の可能性および再発の原因に関して、がん細胞は個々の患者においてさえ極めて不均質である。実際に、腫瘍誘発性および転移性が高いがん幹細胞または腫瘍始原細胞と称される超悪性がん細胞は、様々な腫瘍型のがん患者から単離されている。さらに、このような幹細胞性が高いがん細胞は、従来の化学療法および放射線に対する耐性を有する。
【0004】
したがって、がん幹細胞を標的とする特異的な療法の開発は、がん患者の生存および生活の質の改善にとって、特に転移性疾患を有する患者にとっての頼みの綱である。
【0005】
特許文献1は、α−アミノアシル部分を含有し、炎症誘発性サイトカイン産生、特にTNFαに対する阻害活性を有する、ヒドロキサム酸誘導体を開示する。このような化合物は、炎症性疾患、およびTNFαまたは他の炎症誘発性サイトカインの過剰産生を特徴とする他の障害の処置に有用である。さらに化合物は、ヒト肝細胞癌の細胞株Hep−G2のインビトロ試験において細胞傷害活性を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7635788号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY− VCH, 127−133, 2008
【非特許文献2】Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009
【非特許文献3】Prodrug approach: an effective solution to overcome side−effects, Patil S.J., Shirote P.J., International Journal of Medical and Pharmaceutical Sciences, 2011,1−13
【非特許文献4】Carbamate Prodrug Concept for Hydroxamate HDAC Inhibitors, Jung, Manfred et al., ChemMedChem, 2011, 1193−1198
【非特許文献5】Berg et al. “Pharmaceutica salts”, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1−19
【非特許文献6】Botchkina Cancer Genom Proteom 6, 19−30, 2009
【非特許文献7】Yeung PNAS 107, 3722−3727, 2010
【発明の概要】
【0008】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術分野の全ての用語、表記および他の専門用語は、本開示が属する当業者により一般的に理解される意味を有するように意図されている。いくつかの場合、一般的に理解される意味を有する用語は、明確にするため、および/または容易に参照するため本明細書で定義される。ゆえに、本明細書でのこのような定義に含まれるものは、当技術分野で一般に理解されることと実質的な差を提示すると解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書の用語「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を指す。
【0010】
本明細書の用語「C1〜C4アルキル」は、1つから4つの炭素原子を含有する分岐または直鎖の炭化水素を指す。C1〜C4アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルが挙げられる。
【0011】
用語「アリール」は、本明細書で芳香族の単環式および多環式炭素環を指し、多環式炭素環の個別の炭素環は、縮合していてもよいし、または単結合を介して互いに結合していてもよい。適切なアリール基としては、限定されないが、フェニル、ナフチルおよびビフェニルが挙げられる。
【0012】
本明細書の用語「アリールオキシ」は、O−アリール基を指し、「アリール」は上で定義される。
【0013】
本明細書の用語「アルコキシ」は、O−アルキル基を指し、「アルキル」は上で定義される。
【0014】
本明細書の用語「アリールアルキル」は、本明細書で定義されるアルキルラジカルに結合した本明細書で定義されるアリールラジカルを指す。
【0015】
本明細書の用語「アリールカルボニル」は、−C(O)−アリールを指し、「アリール」は上で定義される。
【0016】
本明細書の用語「複素環」は、飽和または不飽和であり、炭素原子およびN、OおよびSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子からなる4、5、6、7または8員の単環を指し、ここで窒素および硫黄ヘテロ原子が任意選択で酸化されていてもよく、任意選択で窒素ヘテロ原子が四級化されていてもよい。複素環は、結合により安定な構造が生じるのであれば、いずれのヘテロ原子または炭素原子と結合していてもよい。この用語はまた、上述の複素環のいずれかがアリールまたは他の複素環と縮合されたあらゆる二環系も含む。複素環が芳香族の複素環である場合、それは「ヘテロ芳香環」と定義することができる。
【0017】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」は、オープンエンドな用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈することができ、「から本質的になる」、「から本質的になること」、「からなる」または「からなること」という用語を担保するものとしても考慮され得る。
【0018】
用語「から本質的になる」、「から本質的になること」は、本発明の基礎となる新規の特性に実質的に影響する他の成分および/またはステップを含まない(つまり任意選択の賦形剤を含み得る)ことを意味する、セミクローズドな用語として解釈され得る。
【0019】
用語「からなる」、「からなること」はクローズドな用語として解釈され得る。
【0020】
本明細書の用語「薬学的に許容される塩」は、塩を形成した化合物の生物学的効果および特性を有し、哺乳動物、好ましくはヒトに投与する場合に副作用を起こさないこれらの塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機または有機の塩であってもよく、薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、炭酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、パモ酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、およびパラトルエンスルホン酸塩が挙げられる。薬学的に許容される塩のさらなる情報は、本明細書に参照として組み込まれる非特許文献1において見出すことができる。
【0021】
本明細書の用語「生理学的に許容される賦形剤」は、それ自身のいかなる薬理学的効果を欠き、哺乳動物、好ましくはヒトに投与した場合に副作用を起こさない物質を指す。生理学的に許容される賦形剤は当技術分野で周知であり、例えば本明細書に参照として組み込まれる非特許文献2において開示される。
【0022】
本明細書の用語「異性体」は、構造異性体(structural isomer)(または構造異性体(constitutional isomer))(すなわち、互変異性体)、ならびに立体異性体(または空間異性体)、すなわちジアステレオ異性体およびエナンチオマーを指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、アミノ基にα,β−不飽和カルボニル部分を担持するα−アミノ酸性スキャホールドを有する、ベンゾ−N−ヒドロキシアミド化合物が、腫瘍細胞およびスタミナル腫瘍細胞の増殖に対する高い阻害活性を示すことが見出されている。これらの化合物は、特に、がん幹細胞に対して活性であり、ヒトの新生物の処置に有用となる。
【0024】
本発明は、式(I):
【0025】
【化1】
【0026】
(式中、
nは、0、1または2であり、
Aは、存在しないか、または単環式もしくは二環式の炭素環であり、前記炭素環は、任意選択で部分的にまたは完全に不飽和であり、炭素原子を含み、任意選択でN、SまたはOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
1およびR2は、独立して、−H、−OH、−OMe、−CN、−NH2、−NO2、−Cl、−COOH、−ハロゲン、−CF3、−N(Ra)2、直鎖または分岐のC1〜C4アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アルコキシ、アリールオキシ、スルホニルアミノおよび−CH2N(CH2CH32を含む群から選択され、
Raは、直鎖または分岐のC1〜C3アルキルであり、
Xは、CまたはNであってもよく、
3およびR4は、独立して、−H、−OMe、−OPh、−NO2、−NMe2、−NH2、−ハロゲン、−CF3、−N(Ra)2、直鎖または分岐のC1〜C4アルキル、アリール、アリールアルキル、アリールカルボニル、アルコキシ、アリールオキシおよびスルホニルアミノを含む群から選択されるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成していてもよい)
の化合物ならびにその薬学的に許容される塩、異性体およびプロドラッグを提供する。
【0027】
本発明の化合物は、異なる異性体型:cis型およびtrans型で存在し得る。
【0028】
好ましい異性体型はtrans型である。
【0029】
本発明の化合物は、1つまたは複数のキラル中心(不斉炭素原子)を含有し、ゆえにエナンチオマー型および/またはジアステレオ異性体型として存在することができ、単独でまたは互いに混合したあらゆる光学異性体は、本発明の範囲内にある。
【0030】
式(I)の化合物のプロドラッグは本発明に含まれる。このようなプロドラッグは、化合物(I)の生体可逆性誘導体である。それらは薬理学的に不活性な誘導体であり、インビボでの代謝的変換を受けて、本発明の一般式において含まれる活性化合物をもたらし得る。多くの異なるプロドラッグは当技術分野で公知である[非特許文献3、非特許文献4]。
【0031】
式(I)の一部の化合物は、1つまたは複数の塩基性部分または酸性部分を提示し、これは、従来の化学的方法、有機酸もしくは無機酸、有機塩基もしくは無機塩基による化合物の一般的な処置、またはイオン交換クロマトグラフィーにより、塩が形成され得る。薬学的に許容される塩の例としては、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、または酢酸、マレイン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸などの有機酸から誘導されるものが挙げられる。薬学的に許容される塩のさらなる例としては、限定されないが、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩基から誘導されるものが挙げられる。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。これらの調製は、Bergらによって、非特許文献5に詳細に記載されている。
【0032】
好ましい化合物の1つのクラスは、
nは、0、1または2であり、
Aは、存在しないか、または単環式もしくは二環式の炭素環であり、前記炭素環は、任意選択で部分的にまたは完全に不飽和であり、炭素原子を含み、任意選択でN、SまたはOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、
1およびR2は、独立して、−H、−OH、−OMe、−CN、−NH2、−NO2、−Cl、−COOH、および−CH2N(CH2CH32を含む群から選択され、
Xは、CまたはNであってもよく、
3およびR4は、独立して、−H、−OMe、−OPh、−NO2、−NMe2、および−NH2を含む群から選択されるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成していてもよい、式(I)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、異性体およびプロドラッグを含む。
【0033】
好ましくは、Aは、存在しないか、またはフェニル、ナフチル、ピリジル、インダニル、キノリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、ベンゾチオフェニルを含む群から選択される単環式または二環式の炭素環である。
【0034】
より好ましい別のクラスの化合物は、
nは1であり、XはCであり、
1およびR2は、独立して、−H、−Clまたは−OMeであり、
3およびR4は、独立して、−H、NMe2であるか、またはR3およびR4は、ヘテロ五環部分(−OCH2O−)を共に形成していてもよい、式(I)の化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、異性体およびプロドラッグを含む。
【0035】
以下の式(I)の化合物は、特に好ましい:
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド(1D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(2D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(4D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(5D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド(7D);
− (E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)−N−[(1R)−2−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−1−インダン−2−イル−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(8D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−4−フェニル−ブタンアミド(9D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(10D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(2−ナフチル)プロパンアミド(11D);
− (E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)−N−[2−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(12D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(13D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−キノリル)プロパンアミド(14D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(15D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(16D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−アミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(17D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(18D);
− (2S)−3−(4−シアノフェニル)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(19D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−2−[[(E)−3−(4−ニトロフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−フェニル−プロパンアミド(20D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−イミダゾール−5−イル)プロパンアミド(21D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(22D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,5−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(23D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(3−ピリジル)プロパンアミド(24D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(ベンゾチオフェン−3−イル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(25D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−チアゾール−4−イル−プロパンアミド(26D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−4−フェニル−ブタンアミド(27D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(28D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(4−シアノフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(29D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド(30D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(1H−インドール−3−イル)プロパンアミド(31D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(32D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(4−クロロフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(33D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(34D);
− (2S)−3−(4−アミノフェニル)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(35D);
− 4−[(2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−[4−(ヒドロキシカルバモイル)アニリノ]−3−オキソ−プロピル]安息香酸(36D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−(3,4−ジクロロフェニル)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド(37D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(38D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(39D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(4−ジメチルアミノフェニル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(40D);
− (E)−N−[2−[[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]メチルアミノ]−2−オキソ−エチル]−3−フェニル−プロパ−2−エンアミド(41D);
− (E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−N−[2−[[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]メチルアミノ]−2−オキソ−エチル]プロパ−2−エンアミド(43D);
− (2S)−3−[4−(ジエチルアミノメチル)フェニル]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(45D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−3−[4−(ジエチルアミノメチル)フェニル]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]プロパンアミド;2,2,2−トリフルオロ酢酸(46D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(2−ナフチル)−2−[[(E)−3−(6−フェノキシ−3−ピリジル)プロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(47D)
以下の式(I)の化合物は、なお特に好ましい:
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド(1D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−(4−メトキシフェニル)−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(2D);
− (2S)−2−[[(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エノイル]アミノ]−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−プロパンアミド(4D);
− (2S)−N−[4−(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]−3−フェニル−2−[[(E)−3−フェニルプロパ−2−エノイル]アミノ]プロパンアミド(5D)
【0036】
本発明の化合物は、当業者に公知の方法を使用して調製し得る。
【0037】
本発明の化合物を合成するために使用する全ての出発物質、構成要素、試薬、酸、塩基、溶媒および触媒は、市販されている。
【0038】
式(I)の化合物は、固相合成法(スキーム1)および溶液合成法(スキーム2)の両方により調製し得る。いくつかの場合、保護種において化合物を合成する必要があり、脱保護のために1つまたは複数のステップを追加する必要がある。
【0039】
反応は、HPLCまたはLC−MS解析によりモニタリングする。
【0040】
最終生成物は、一般に、分取HPLC−MSクロマトグラフィー、または充填済みの逆相カートリッジでのSPEにより精製される。
【0041】
固相合成法(Solid Phase Synthesis)
式(I)の化合物は、スキーム1にしたがうSPSにより合成できる。
【0042】
HATU、HOAtおよびDIPEAでの古典的な活性化の後、N−fmoc−4−アミノ安息香酸をヒドロキシルアミンワン樹脂(Wang resin)に充填する。樹脂をDMF中ピペリジン20%の溶液で15分間、処置することにより、Fmoc脱保護を実施する。次いで、HATU、HOAtおよびDIPEAでの活性化の後、fmoc−アミノ酸を芳香族アミンにカップリングする。別のfmoc脱保護ステップに続いて、活性化した桂皮酸誘導体で樹脂を処置することにより、最終的にアミノ基をアシル化する。DCM中TFA50%の溶液で処置することにより、樹脂からの生成物を切断する。
【0043】
最終生成物は、通常、分取LC−MSクロマトグラフィー、または充填済みのC18カートリッジでのSPEにより精製される。
【0044】
【化2】
【0045】
溶液相合成法
式(I)の化合物はまた、スキーム2に示される、古典的な溶液の合成方法により調製される。当業者に公知の方法の1つを使用して、アミドの製造を実施できる。例えば、HATUおよびDIPEAでのカルボキシ部分の活性化の後、Fmoc−アミノ酸は、4−アミノ安息香酸エチルと反応させる。得られる化合物Aは、DMF中のピペリジン20%で処置することにより脱保護し、次いで、活性化した桂皮酸誘導体と反応することでアシル化して、中間体Bを得る。最終のヒドロキサム酸化合物は、以下の異なる合成経路で得ることができる。エステル中間体をヒドロキシルアミンおよびメタノール中のNaOHで処置することにより、直接的なヒドロキシルアミノリシスを実施することが可能である。
【0046】
さもなければ、エステル基をNaOHで加水分解し、次いで、HATUを介する活性化の後、ヒドロキシルアミンと反応することにより、得られたカルボン酸をヒドロキサム酸に変換することが可能である。
【0047】
いくつかの場合、取扱いがより容易な化合物の精製を実施するために、カルボン酸をヒドロキサメートの保護形態に変換するのが好ましい。この場合、最終化合物は、メタノール中のTFA溶液で脱保護することにより得られる。
【0048】
【化3】
【0049】
(式中、A、R1、R2、R3、R4およびXは上で報告された同じ意味を有する)
分取HPLC−MSクロマトグラフィー
【0050】
質量分析計検出器(ZQ200)を搭載したWaters社の分取HPLCシステムを使用して精製を実施した。R1、R2、R3およびR4基の性質に応じて、3つの異なる方法を精製に使用する。
【0051】
粗生成物をDMSO中に溶解した。溶液を0.45μmPTFE薄膜を通してろ過し、分取システムに注入した。予想される分子イオン([M+H]+)に関連するピークに応じた画分を収集し、乾燥するまで濃縮した。
【0052】
試験条件:
・カラム:Waters社のSunFire(商標)Prep C18 OBD(商標)5□m、19×100mm
・溶媒A H2
・溶媒B ACN
・溶媒C H2O中の1%ギ酸
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
MS法:
・セントロイドES+イオン化、
・スキャン時間 30分
・m/zスキャン 100〜1000
・コーン電圧 15V
・ソース温度 150℃
・脱溶媒温度 280℃
【0057】
固相抽出法
事前に充填済みの逆相SPEカートリッジ(Phenomenex Strata C18−E、55mm、70A)で精製を実施する。
【0058】
粗生成物をDMF中に溶解し、カートリッジに充填した。R1、R2、R3およびR4基の性質に応じて、異なる割合でACN/水の混合物に生成物を溶出した。HPLC純度域が85%超を示す溶出画分を収集し、乾燥するまで濃縮した。
【0059】
本発明の化合物は、ナノモルオーダーのIC50値で、インビトロでのがん幹細胞の増殖に対する高い阻害活性を示した。
【0060】
また、インビボ研究を行って、例えば実施例7に記載されるように腫瘍のサイズおよび重量を低減する化合物の能力をモニタリングした。
【0061】
これらの化合物は、したがって、がんの予防および/またはがんの処置において、単独で、または他の抗腫瘍薬と共に使用され得る。
【0062】
本発明の化合物は、好ましくは、結腸直腸がん、肺がん、脳がん、前立腺がん、もしくは婦人科がんなどの固形腫瘍、または血液悪性腫瘍の予防および/または処置に有用である。
【0063】
本発明の化合物は、特にがん幹細胞に対して活性である。したがって、化合物は、好ましくは、転移性疾患、再発性疾患および薬剤耐性疾患の予防および/または処置に有用である。
【0064】
本発明は、したがって、治療有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体およびプロドラッグを、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物も提供する。
【0065】
このような組成物は、経腸もしくは非経口投与に適切な液剤、または固形剤であってもよく、例えば、経口投与のためのカプセル剤、錠剤、コーティング錠剤、散剤もしくは顆粒剤の形態であってもよいし、または例えばクリーム剤もしくは軟膏剤などの皮膚投与、または吸入投与に適切な形態であってもよい。
【0066】
本発明により提供される医薬組成物は、公知の方法を使用して調製され得る。
【0067】
以下の実施例は、しかしそれを限定することなく、本発明をさらに説明することを目的とする。
【実施例】
【0068】
下記の略語を、以下の実施例において使用する。
ACN アセトニトリル
Boc tert−ブチルオキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
Et2O ジエチルエーテル
ES エレクトロスプレー
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニル
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HPLC 高圧縮液体クロマトグラフィー
LC−MS 質量分析計を搭載したHPLCシステム
MeOH メタノール
PTFE ポリテトラフルオロエチレン
RT 室温
SPE 固相抽出法
SPS 固相合成法
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
【実施例1】
【0069】
(化合物4D)
(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−フェニルプロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミドの合成
【0070】
【化4】
【0071】
ステップA:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0072】
【化5】
【0073】
3gのFmoc−L−フェニルアラニン(7.74mmol、1当量)を15mlのDMF中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。HATU(3.84g、1.3当量)およびDIPEA(1.75ml、1.3当量)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。次いで、4−アミノ安息香酸エチル(1.40g、1当量)を添加し、混合物をRTで1時間撹拌した。HPLC解析により反応をモニタリングした。反応が完了した場合、溶液を水(150ml)中に注いだ。沈殿した白色の固体をろ過し、乾燥した。4gの純生成物を得た。
【0074】
ステップB:(S)−4−(2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0075】
【化6】
【0076】
ステップAで得られた化合物を、Fmoc保護を除去するために、THF中、RTで一晩、4.6mlのDEA(6当量)で処置した。THFを除去し、固体が生成されるまで残渣をn−ヘキサン中に溶解した。溶媒を除去し、生成物を新しいn−ヘキサンで2回洗浄した。2.2gの生成物を得た。
【0077】
ステップC:(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0078】
【化7】
【0079】
(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エン酸(430mg、1当量)を、5mlのDMF中に溶解し、0℃まで冷却し、HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)を添加した。30分後、ステップBで得られた700mgの化合物を添加した。反応混合物をRTにし、1時間撹拌した。次いで、溶液を水(50ml)中に注ぎ、生成物をEtOAcで抽出した。酸性化後、溶媒を蒸発し、粗生成物をシリカゲルカラムで精製した。
【0080】
ステップD:(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸
【0081】
【化8】
【0082】
ステップCで得られた600mgの化合物を、30mlのEtOH/THF1:2中に溶解した。NaOH 1N(3当量)を溶液に添加し、反応混合物を還流で4時間撹拌した。溶媒を除去し、粗製物を水中に溶解した。溶液をHCl 6Nで酸性化し、生成物の沈殿を観察した。ろ過した固体をEt2Oで縣濁し、ろ過した。
【0083】
ステップE:(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−フェニルプロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミド
【0084】
【化9】
【0085】
ステップDで得られた400mgの化合物(1当量)を2.5mlのDMFを溶解した。氷浴で冷却後、HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)を添加し、混合物を1時間撹拌した。最終的に、NH2OH 3MのDMF(3当量)中溶液を添加し、反応混合物をRTで4時間撹拌した。次いで、混合物を水中に注ぎ、沈殿した固体をろ過し、ジオキサン中に懸濁し、混合物を撹拌し、加温した。最終生成物をろ過により得た。
【実施例2】
【0086】
(化合物5D)
(S)−4−(2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミドの合成
【0087】
【化10】
【0088】
ステップA:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0089】
【化11】
【0090】
3gのFmoc−L−フェニルアラニン(7.74mmol、1当量)を15mlのDMF中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。HATU(3.84g、1.3当量)およびDIPEA(1.75ml、1.3当量)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。次いで、4−アミノ安息香酸エチル(1.40g、1当量)を添加し、混合物をRTで1時間撹拌した。HPLC解析により反応をモニタリングした。反応が完了した場合、溶液を水(150ml)中に注いだ。沈殿した白色の固体をろ過し、乾燥した。4gの純生成物を得た。
【0091】
ステップB:(S)−4−(2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0092】
【化12】
【0093】
ステップAで得られた化合物を、Fmoc保護を除去するために、THF中、RTで一晩、4.6mlのDEA(6当量)で処置した。THFを除去し、固体が生成されるまで残渣をn−ヘキサン中に溶解した。溶媒を除去し、生成物を新しいn−ヘキサンで2回洗浄した。2.2gの生成物を得た。
【0094】
ステップC:(S)−4−(2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0095】
【化13】
【0096】
ステップBで得られた900mgの生成物(1当量)をDCM(25ml)中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。TEA(1当量)を添加した。最終的に、塩化シンナモイルの溶液を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応が完了した後、水、HCl 1Nおよび水中のNaHCO35%で溶液を洗浄した。有機相をCaCl2で乾燥、ろ過し、蒸発した。トルエン/EtOHの混合物を移動相として使用して、粗製物をシリカゲルカラムで精製した。
【0097】
ステップD:(S)−4−(2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸
【0098】
【化14】
【0099】
ステップCで得られた(S)−4−(2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル(400mg、1当量)をTHF/EtOHの混合物中に溶解し、NaOH 1N(3当量)で1時間処置した。溶媒を除去し、粗製物を水中に溶解した。溶液を濃HClで酸性化した。固体を形成、ろ過し、次のステップで使用した。
【0100】
ステップE:4−((S)−2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)−N−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ベンズアミド
【0101】
【化15】
【0102】
ステップDで得られた400mgの化合物(1当量)を2.5mlのDMFを溶解した。氷浴で冷却後、HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)を添加し、混合物を1時間撹拌した。最終的に、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(3当量)を添加し、反応混合物をRTで4時間撹拌した。次いで、混合物を水中に注ぎ、沈殿した固体をろ過し、DCM/MeOH/NH325:1:0.1の混合物を移動相としてシリカゲルカラムで精製した。
【0103】
ステップF:(S)−4−(2−シンナムアミド−3−フェニルプロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミド
【0104】
【化16】
【0105】
ステップEで得られた化合物(200mg、1当量)をMeOH(50ml)中に溶解し、TFA(1.5ml)で処置した。反応混合物をRTで終夜、撹拌した。溶媒および過度のTFAを蒸発により除去し、粗製物をEt2O中に懸濁し、ろ過した。120mgの純生成物を得た。
【実施例3】
【0106】
(化合物5DZ)
(S,Z)−N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−2−(3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)ベンズアミドの合成
【0107】
【化17】
【0108】
ステップA:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−3−フェニルアクリルアミド)安息香酸エチル
【0109】
【化18】
【0110】
3gのFmoc−L−フェニルアラニン(7.74mmol、1当量)を15mlのDMF中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。HATU(3.84g、1.3当量)およびDIPEA(1.75ml、1.3当量)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。次いで、4−アミノ安息香酸エチル(1.40g、1当量)を添加し、混合物をRTで1時間撹拌した。HPLC解析により反応をモニタリングした。反応が完了した場合、溶液を水(150ml)中に注いだ。沈殿した白色の固体をろ過し、乾燥した。4gの純生成物を得た。
【0111】
ステップB:(S)−4−(2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0112】
【化19】
【0113】
ステップAで得られた化合物を、Fmoc保護を除去するために、THF中、RTで終夜、4.6mlのDEA(6当量)で処置した。THFを除去し、固体が生成されるまで残渣をn−ヘキサン中に溶解した。溶媒を除去し、生成物を新しいn−ヘキサンで2回洗浄した。2.2gの生成物を得た。
【0114】
ステップC:(S,Z)−4−(3−フェニル−2−(3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)安息香酸エチル
【0115】
【化20】
【0116】
(Z)−3−フェニルアクリル酸(1当量)を5mlのDMF中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)を添加し、反応混合物を1時間撹拌した。次いで、ステップBで得られた(S)−4−(2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル(1当量)を添加し、混合物をRTで終夜、撹拌した。HPLC解析により反応をモニタリングした。反応が完了した場合、溶液を水中に注いだ。粗製物をEtOAcで抽出し、トルエン/EtOAc6:4の混合物を移動相として使用してシリカゲルカラムで精製した。
【0117】
ステップD:(S,Z)−4−(3−フェニル−2−(3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)安息香酸
【0118】
【化21】
【0119】
ステップCで得られた(S,Z)−4−(3−フェニル−2−(3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)安息香酸エチル(250mg、1当量)をTHF/EtOHの混合物中に溶解し、NaOH 1N(3当量)で24時間処置した。溶媒を除去し、粗製物を水中に溶解した。粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、トルエン/EtOAcの混合物で溶出した。
【0120】
ステップE:4−((S)−3−フェニル−2−((Z)−3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)−N−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ベンズアミド
【0121】
【化22】
【0122】
ステップDで得られた200mgの化合物(1当量)を1mlのDMFを溶解した。氷浴で冷却後、HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)を添加し、混合物を1時間撹拌した。最終的に、O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ヒドロキシルアミン(1当量)を添加し、反応混合物をRTで4時間撹拌した。次いで、混合物を水中に注ぎ、沈殿した固体をろ過し、EtOAc/トルエン7:3の混合物を移動相としてシリカゲルカラムで精製した。
【0123】
ステップF:(S,Z)−N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−2−(3−フェニルアクリルアミド)プロパンアミド)ベンズアミド
【0124】
【化23】
【0125】
ステップEで得られた化合物(110mg、1当量)をMeOH(25ml)中に溶解し、TFA(1ml)で処置した。反応混合物をRTで4時間撹拌した。溶媒および過度のTFAを蒸発により除去し、粗製物をEt2O中に懸濁し、ろ過した。80mgの純生成物を得た。
【実施例4】
【0126】
(化合物1D)
(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミドの合成
【0127】
【化24】
【0128】
ステップA:(S)−4−(2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0129】
【化25】
【0130】
3gのFmoc−L−フェニルアラニン(7.74mmol、1当量)を15mlのDMF中に溶解し、溶液を0℃に冷却した。HATU(3.84g、1.3当量)およびDIPEA(1.75ml、1.3当量)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。次いで、4−アミノ安息香酸エチル(1.40g、1当量)を添加し、混合物をRTで1時間撹拌した。HPLC解析により反応をモニタリングした。反応が完了した場合、溶液を水(150ml)中に注いだ。沈殿した白色の固体をろ過し、乾燥した。4gの純生成物を得た。
【0131】
ステップB:(S)−4−(2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0132】
【化26】
【0133】
ステップAで得られた化合物を、Fmoc保護を除去するために、THF中、RTで終夜、4.6mlのDEA(6当量)で処置した。THFを除去し、固体が生成されるまで残渣をn−ヘキサン中に溶解した。溶媒を除去し、生成物を新しいn−ヘキサンで2回洗浄した。2.2gの生成物を得た。
【0134】
ステップC:(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−フェニルプロパンアミド)安息香酸エチル
【0135】
【化27】
【0136】
(E)−3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)プロパ−2−エン酸(430mg、1当量)を、5mlのDMF中に溶解し、0℃まで冷却し、HATU(1.3当量)およびDIPEA(1.3当量)と反応した。30分後、ステップBで得られた700mgの化合物を添加した。反応混合物をRTにし、1時間撹拌した。次いで、溶液を水(50ml)中に注ぎ、生成物をEtOAcで抽出した。酸性化後、溶媒を蒸発し、粗生成物をシリカゲルカラムで精製した。
【0137】
ステップD:(S,E)−4−(2−(3−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)アクリルアミド)−3−(4−メトキシフェニル)プロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミド
【0138】
【化28】
【0139】
MeOH中、ステップDで得られた化合物の溶液を氷浴で冷却した。ヒドロキシルアミン50%の水(15当量)およびNaOH 1N(10当量)中溶液を添加し、反応混合物をRTで1時間撹拌した。次いで、溶液をHCl 1Nで中和した。沈殿を観察した。純生成物を単純ろ過により得た。
【実施例5】
【0140】
(化合物7D)
(S,E)−4−(2−(3−(2,5−ジメトキシフェニル)アクリルアミド)−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド)−N−ヒドロキシベンズアミドの合成
【0141】
【化29】
【0142】
ステップA:ヒドロキシルアミンワン樹脂への(9H−フルオレン−9−イル)メチル(4−ヒドロキシカルバモイル)フェニル)カルバメートの充填
【0143】
【化30】
【0144】
Activotec社のPLS4×6有機合成装置を使用して空のSPEプラスチックフィルターチューブ中で反応を実施した。
【0145】
DCMおよびDMFでの樹脂の膨潤後、4−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)安息香酸(4当量)、HATU(4当量)、HOAt(4当量)およびDIPEA(8当量)のDMF中溶液を添加した。反応混合物をRTで終夜、振とうした。次いで、樹脂をろ過し、DMFおよびDCMで洗浄した。
【0146】
ステップB:第1のカップリング
【0147】
【化31】
【0148】
ステップAからの樹脂(200mg、1当量)をDMFで膨潤し、次いでろ過した。DMF中ピペリジン20%の溶液での30分間の樹脂の二重処置によりFmoc脱保護を行った。溶液をろ別し、樹脂をDMFで洗浄した。(S)−2−((((9H−フルオレン−9−イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)−3−(4−((tert−ブチルオキシカルボニル)オキシ)フェニル)プロパン酸(4当量)、HATU(4当量)、HOAt(4当量)およびDIPEA(8当量)のDMF中溶液を樹脂に添加した。反応混合物をRTで終夜、振とうした。樹脂をろ過し、DMFおよびDCMで洗浄した。
【0149】
ステップC:第2のカップリング
【0150】
【化32】
【0151】
ステップBからの樹脂(1当量)をDMFで膨潤し、次いでろ過した。DMF中ピペリジン20%の溶液での30分間の樹脂の二重処置によりFmoc脱保護を実施した。溶液をろ別し、樹脂をDMFで洗浄した。DMF中の(E)−3−(2,5−ジメトキシフェニル)アクリル酸(4当量)、HATU(4当量)、HOAt(4当量)およびDIPEA(8当量)の溶液を樹脂に添加した。反応混合物をRTで終夜、振とうした。樹脂をろ過し、DMFおよびDCMで洗浄した。
【0152】
ステップD:切断
【0153】
【化33】
【0154】
DCM中のTFA50%で、RTで30分処置することにより、樹脂から生成物を切断した。本ステップの間、Boc保護もまた除去した。
【0155】
粗生成物をSPEカートリッジで精製した。
【実施例6】
【0156】
実施例5に記載された手順を使用して以下の化合物を調製した。
【0157】
【表4-1】
【0158】
【表4-2】
【実施例7】
【0159】
インビトロ細胞傷害活性
本発明の化合物は、金属キレート部分、ベンゾヒドロキサメート、α−アミノ酸性のN−アシル化中心コア、およびアシル部分でのα,β−不飽和の存在を特徴とする、式(I)の小分子である。この特定の構造的な特徴は、がん幹細胞株、ならびにインビトロおよびインビボの両方でがん生物学において広く使用されるようされるヒト結腸直腸癌の細胞株であるHCT116細胞(ATCC CCL−247)に対して高い阻害活性の要因となり得る(非特許文献6、非特許文献7)。
【0160】
細胞傷害活性を以下の通り評価した:
− Pre−B白血病の細胞株697を細胞2×105個/ウェルで播種した。
− 結腸癌の細胞株のHCT116、HT29およびCOLO2015を、それぞれ4×103、4×103および細胞10×103個/ウェルで播種した。
− ヒトの一次腎細胞を2つの別々の実験で1.5×103および6.5×103で播種した。
− ヒトPBMCを細胞5×105個/ウェルで播種した。
− 結腸がんの幹細胞(CSC)を3×103で播種した。
【0161】
試験する化合物を24時間後に添加し、72時間(697細胞株では48時間)インキュベーションした。分子の濃度を10000nMから1.5nMまで(697細胞株では10000から1nMまで)の範囲とした。製造者の指示にしたがってミトコンドリアの機能性を測定する、CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega社)を使用して、化合物の細胞傷害活性を評価した。結腸がんの幹細胞に対して、CellTiter−Glo Luminescent cell viability assay(Promega社)で生存性を決定した。
【0162】
697細胞株で実施した細胞傷害性の一次スクリーニングにおいて、化合物Dの活性は、飽和化合物と同様か、飽和化合物より高かった。
【0163】
HCT116細胞での本発明の不飽和化合物の増殖阻害活性は、先行技術、特許文献1の飽和類似体により呈されるものより30から80倍であるが、幹細胞と少なくとも同様か幹細胞より3.5から40倍である(表1を参照)。特に、本発明の化合物は全て、HCT116細胞での先行技術の飽和類似体より活性となる。
【0164】
2つの他の結腸がんの細胞株、HT29(ATCC HTB38)およびColo205(ATCC CCL222)での、ならびに結腸がんの幹細胞(CSC)でのさらなるアッセイにより、化合物の細胞傷害性を確定した(表2および3を参照)。健康なドナーから単離したヒトの一次腎細胞および末梢血の単核細胞(PBMC)に対する細胞傷害活性は、腫瘍細胞の細胞傷害性と比較して低かったことに価値がある(表4を参照)。
【0165】
実施例3にしたがって調製したcis型は、HCT116細胞でのtrans型より弱くなる。
【0166】
さらに、cis型は、化学的にtransより安定しない。力劣化試験において、trans型での化合物は全て、高温(80℃で15日間)で、低いpH(pH2で15日間)であっても高い安定性を示すが、cis類似体は80℃でより安定せず、pH2で確実により安定しなかった。
【0167】
【表5】
【0168】
【表6】

【0169】
任意の用量での化合物の活性を、阻害対ビヒクル処置対照(=0)の百分率として計算する。GraphPad Prismプログラムを使用して阻害用量/応答曲線からIC50を外挿する。
【0170】
【表7】

【0171】
【表8】

【0172】
インビボ抗腫瘍活性
本発明の化合物はまた、ヒトHTC116結腸直腸癌の細胞株をCD1ヌード雌マウスに皮下注射(sc)した、結腸がんの異種移植モデルにおいてインビボ活性を示した(表5を参照)。
【0173】
雌のCD−1ヌードマウス(5週齢、体重20から22g)を、Italfarmaco Research Centreの動物舎で飼育した。マイクロアイソレーターケージでマウスを維持し、標準条件下で無菌食および水を供給した。
【0174】
動物の右側腹部における7×106HCT116細胞のsc注射により異種移植片を生成した。
【0175】
ノギスでの測定により腫瘍サイズを決定し、以下の式にしたがって腫瘍体積を計算した:
腫瘍体積(mm3)=(w2×l)/2
(式中、「w」は癌の幅であり、「l」は癌の長さであり、単位はmmである)
【0176】
腫瘍の成長は、週に3回の体積の測定で分かった。
【0177】
処置が開始した時である移植の後、3週間で腫瘍塊は測定できるサイズに達した。
【0178】
2つの基準化合物、桂皮ヒドロキサム酸のパノビノスタットおよび5−FUもまた、実験に使用した。先の実験にしたがって、または文献に記載される通り、MTDで化合物を投与した。表5に示す通り、本発明の化合物は腫瘍のサイズおよび体積を低減することができ、それらの活性は2つの基準化合物のそれと比較できた。
【0179】
注目すべきは、基準化合物5−FUでの処置は、処置の終わりに著しい白血球減少(70.4%)を引き起こし、一方で化合物4Dは、同等の有効性(腫瘍の低減が5−FUで得られた61%と比較して54%)を示したが、顕著な白血球減少(23.7%)ははるかに少なかった。
【0180】
さらに、血小板減少および体重減少は、処置の終わりに観察されなかったが、これは効果的な用量で、本発明の化合物の対象が本動物モデルにおいて有利な治療域を呈したことを示した。
【0181】
本発明の化合物は、ヒトS9画分をヒト血漿中でインキュベーションした場合、良好なインビトロ代謝安定性を示す。それらはまた、前臨床種における予備研究において良好な薬物動態プロファイルを示す。
【0182】
【表9】