特許第6873230号(P6873230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873230シール要素を備えたケーブル定着具、そのようなケーブル定着具を含むプレストレスシステム、及びシースを持つ細長要素を設置し緊張力を与えるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873230
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】シール要素を備えたケーブル定着具、そのようなケーブル定着具を含むプレストレスシステム、及びシースを持つ細長要素を設置し緊張力を与えるための方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/80 20060101AFI20210510BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20210510BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20210510BHJP
   E04C 5/10 20060101ALI20210510BHJP
   E04C 5/12 20060101ALI20210510BHJP
   E04B 1/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   E02D5/80 Z
   E01D1/00 G
   E01D19/12
   E04C5/10
   E04C5/12
   E04B1/06
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-509550(P2019-509550)
(86)(22)【出願日】2017年8月16日
(65)【公表番号】特表2019-526723(P2019-526723A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】IB2017054975
(87)【国際公開番号】WO2018033865
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2020年3月3日
(31)【優先権主張番号】16185017.7
(32)【優先日】2016年8月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511226524
【氏名又は名称】ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】アンナン・ラシ
(72)【発明者】
【氏名】グネーギ・アドリーアン
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス・モラル・ハビエル
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08065845(US,B1)
【文献】 特開2002−309776(JP,A)
【文献】 特表2016−524663(JP,A)
【文献】 米国特許第07856774(US,B1)
【文献】 特開昭63−265054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
E01D 1/00
E01D 19/12
E04B 1/06
E04C 5/10
E04C 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シース付き部(5a)と、シースなしの部(5b)と、を備える細長要素(5)を収容する長手軸方向の少なくとも1つの管路(6)であって、細長要素の走行部の近位にて、第1管路端部(3)と、固定装置(12)を備える第2管路端部(1)との間に延在する管路(6)と、
細長要素(5)が管路(6)内に存在するときに、管路(6)の内壁(29)に沿って位置可能で、管路(6)の内壁(29)と細長要素(5)との間にシールを提供するシール要素(26)であって、弾性材料からなるシール要素(26)と、
管路(6)のシール要素(26)を収容し、細長要素(5)の管路(6)内での軸方向変位の間、シール要素(26)をくぼみ部(27)内で保持する、環状又は円筒状のくぼみ部(27)を備える、管路(6)の内壁(29)と、
第2管路端部(1)及びシール要素(26)の間の管路(6)内の領域(11a)に位置する停止要素(9)であって、停止要素(9)は管路(6)の内面の一部を形成する径方向の内面を備え、停止要素(9)の非圧縮状態において停止要素(9)の内径(DT2)はシール要素(26)の外形(DS1)より小さい、停止要素(9)と、
を備える、ケーブル定着具であって、
停止要素(9)は、シール要素(26)に対面する端部を有し、端部は肩部(9a)を画定し、停止要素(9)では、シール要素(26)と停止要素とを受ける領域(11a、27)は、管路(6)内にて長手軸方向で互いに隣り合って、細長要素(5)の軸方向変位の間、シール要素(26)が肩部(9a)に当接してシール要素(26)が停止要素(9)と隣り合う長手軸位置にくることが可能であり、停止要素(9)に対する細長要素(5)の軸方向変位は、細長要素(5)のシース付き部(5a)の端部が肩部(9a)に当接するところまで可能となり、これにより軸方向管路(6)における細長要素(5)の当接位置を作り出すことを特徴とする、
ケーブル定着具。
【請求項2】
当接位置において、シース付き部(5a)のシース付き端部が、少なくとも半径方向外向きの突出部(5e)を形成するように変形され、くぼみ領域(27)の容積が形成される、それによって、半径方向外向きの突出部(5e)は、変形したシース付き端部(5e)によって半径方向外向きに圧縮されるシール要素(26)によって少なくとも部分的に囲まれ、それによって変形されたシース付き端部(5e)は軸方向管路(6)のくぼみ領域(27)の内側で機械的に定着される、請求項1に記載のケーブル定着具。
【請求項3】
シール要素(26)を含むくぼみ領域(27)の容積が、当接位置までの細長要素(5)の軸方向変位中の変位したシース(5c)の容積の3倍と、圧縮されていないシール要素(26)の容積とを合わせた値の以下であって、
Π/4×(LR)×((DR)−(D2))≦3×(Π/4×(A1×((D1)−(D2))+LS×((DS1)−(DS2)))である、請求項2に記載のケーブル定着具。
【請求項4】
くぼみ領域(27)が管路(6)と長手方向に同軸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項5】
肩部が、停止要素(9)の位置における管路(6)の狭窄部(9’)によって形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項6】
停止要素(9)が管路(6)内に配置されたブッシュによって形成され、肩部(9a)がシール要素(26)に面するブッシュの端面と、管路(6)との間に形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項7】
シール要素(26)を受けるくぼみ領域(27)の外径(DR)がブッシュ(9)の外径(DT1)と区別されるが値が等しい、請求項6に記載のケーブル定着具。
【請求項8】
停止要素(9)が、管路(6)内に配置された管(9”)によって形成され、管(9”)が固定装置(12)まで延在し、肩部(9a)は、シール要素(26)に面する管(9”)の端面と管路(6)との間に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項9】
シール要素(26)が、第2の管路端(1)とシール要素(26)との間の管路(6)の内壁(29)の全ての直径以下の半径方向外側寸法を有する圧縮状態まで弾性的に変形可能であり、シール要素(26)は、くぼみ領域(27)内に取り外し可能に配置された、請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項10】
複数の軸方向管路(6)を備え、各管路(6)は、シース付き部分(5a)とシースなしの部(5b)とを有するケーブルのストランド(5)を個々に収容し、各管路(6)は、シール要素(26)と、シール要素(26)を収容するための環状又は円筒形のくぼみ領域(27)と、停止要素(9)と、を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のケーブル定着具。
【請求項11】
細長要素(5)を形成する少なくとも1つのテンドンを含み、テンドンは、その両端にシースなしの部(5b)を有し、テンドンの2つの端部を緊張下で定着する2つのケーブル定着具を備え、2つのケーブル定着具のうちの少なくとも一方は、請求項1から10のいずれか一項に記載のケーブル定着具である、プレストレスを与えるシステム。
【請求項12】
テンドンがシース(5c)内に配置された裸ストランドを含み、シース(5c)がシース(5c)と裸ストランドの間の相対移動を制限するように裸ストランドの外面に接着していて、ストランドのシース付き部分(5a)の長さをLとすると、−20℃から+40℃の典型的な使用温度範囲における温度影響下のシース(5c)及び裸ストランド間の相対移動量はL/2000未満である、請求項11に記載のプレストレスを与えるシステム。
【請求項13】
テンドンがシース(5c)内に配置されたストランドを備え、シース(5c)は、ストランドの規格XP A35−037−1のD3項(タイプSC)に準拠した長さ300mmのシース試料で測定したときの1000Nの裸ストランド上の滑りに対して最小摩擦抵抗を有する、請求項11又は12に記載のプレストレスを与えるシステム。
【請求項14】
底部と頂部とを備える風力発電機であって、底部と頂部との間に、請求項12又は13に記載のプレストレスを与えるシステムを少なくとも1つ備える風力発電機。
【請求項15】
シース付きの走行部(5a)と、
第1のシースなし端部と
シース付きの走行部(5a)を第1のシースなし端部との間に挟んで第1のシースなし端部に対向する第2のシースなし端部(5b)と
を備えるシース付き細長要素(5)を設置し緊張する方法であって、シース付き細長要素(5)のシース(5c)は、第1のシースなし端部の隣にある第1シース端部と第2のシースなし端部(5b)の隣にある第2シース端部とを備え、当該方法は、次の工程、即ち
少なくとも第2のシースなし端部(5b)に、細長要素の走行部に近位の第1管路端部(3)と第2管路端部(1)との間に延在する長軸方向管路(6)を設ける工程であって、長軸方向管路(6)は、シール要素(26)と、停止要素(9)とを備え、停止要素(9)はシール要素(26)と第2管路端部(1)との間に設けられ、シール要素(26)及び停止要素(9)は細長要素の通路を画定し、停止要素(9)の内径(DT2)は、非圧縮状態でシール要素(26)の外径(DS1)より小さい、長軸方向管路(6)を設けることと、
少なくとも第2のシースなし端部(5b)に、第2のシースなし端部(5b)の最端部を、第1管路端部(3)に導入し、第2のシースなし端部(5b)の最端部を第2管路端部(1)まで軸方向変位する工程と、
第1のシースなし端部の最端部をケーブルアンカーに固定する工程と、
細長要素(5)を緊張状態とするため、少なくともシース(5c)の第2シース端部が停止要素(9)の肩部(9a)に当接するまで、第2管路端部(1)から、第2のシースなし端部(5b)の最端部を引っ張ることであって、この引っ張りにより長軸方向管路(6)内に細長要素(5)の当接位置を作る、第2のシースなし端部(5b)の最端部を引っ張る工程と、
第2管路端部(1)について、緊張状態とした細長要素(5)の第2のシースなしの端部(5b)の最端部を固定する工程と、
を備え、
肩部(9a)が、シール要素(26)に面する停止要素(9)の端部に画定され、シール要素(26)及び停止要素(9)を受ける領域(11a、27)は長軸方向において管路(6)内で互いに隣り合い、細長要素(5)の引っ張り工程及び軸方向変位の間、シール要素(26)が肩部(9a)に当接してシール要素(26)が停止要素(9)に隣接する長手方向の位置にくることが可能である、シースを施した細長要素(5)を設置して緊張することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤー、ロープ、ストランド、テンドン、ステー又はケーブルのような張力をかけられるように設計された長手方向構造要素を、例えば定着(アンカレッジ)するために使用されるようなケーブル定着具の分野に関する。特に、排他的ではないが、本発明は、そのような定着具における個々のケーブルストランドのための個々のシール構成に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の有利点を説明するために、(外部)ポストテンション(又はPT)ケーブルを使用してプレストレスを与える用途を参照する。しかしながら、この用途は限定的なものではなく、本発明の基礎をなす原理は、橋梁、建築物、屋根、マスト、塔(支柱)又は類似の構造物等の中で引張力を伝達するのに使用される任意の種類の引張ケーブル、又はワイヤー、ロープ、ストランド及びテンドンのような同様の要素に、適用してもよいことを理解されたい。
【0003】
本発明による定着具の可能な用途として、細長要素は、外部ポストテンション(又はPT)ケーブルであり、これは典型的には、橋桁、建築物及び駐車構造用のスラブや梁部材に使用されるものである。各ケーブルは、一般に、防錆グリース又はワックスで被覆され、押出成形されたプラスチック保護シースで覆われている7本のワイヤーのより線からなるモノストランドテンドンで形成されている。
【0004】
また、本発明による定着(技術)は、ステーケーブルに使用されてもよい。ステーケーブルは、よく知られているように、橋梁床版を支持するために使用され得るものであり、橋梁支柱に固定された上部定着部と下部定着部との間で緊張状態に保持されることがあるものである。
【0005】
ケーブル1本は、各ストランドが複数(例えば7本)の鋼線を有し、1単位12本の複数単位(複数ダース)又は1単位20本の複数単位(複数スコア)のストランドを備えるものとしてもよい。各ストランドは通常各定着部内に個別に保持され、定着部では、例えば、アンカーブロックの円錐形の穴に着座される、先細の円錐形のくさびを使用して、ストランドが動かないようにすることもある。ストランドの引張は、油圧ジャッキを使用して、ケーブル端部のいずれか一方から行うことがある。個々のストランドの状態は通常、腐食又は機械的劣化を検出するために定期的に監視される。そのような劣化が特定のストランドに発見されると、その特定のストランドの張力は解除されて、ケーブルから取り外され、新しいストランドと交換され、交換された新しいストランドに引張りを行うことがある。そのような交換作業が行われるときは、新しいストランドが水分の浸入に対して再び確実にシール(密封、水密処理)されるように、細心の注意を払わなければならない。
【0006】
引張ケーブルを使用する外部ポストテンションシステム(PTシステム)の他の非限定的な用途は、引張ステーケーブルが鉛直かわずかに傾斜されたコンクリート製風力発電機に関する。この場合では、構造の完成後にケーブルを取り付けて、テンドンの最下端で支柱の基礎に垂直方向のプレストレス力を伝達できるようにする。
【0007】
本願と同一出願人による特許文献1では、個々のストランド及び対応する個々のシール要素を他のストランドのシールに影響を及ぼすことなく交換及び再シールできるように、各ストランドに対する個々のシール構成の提供が提案された。提案された定着技術は、ストランドを収容する管部の窪んだ領域内のそれぞれに適所に保持された個々のシール要素を使用する。この窪んだ領域は、シール要素がストランドの管部に沿って正しい位置に留まることを保証する。この定着を介してストランドを交換するとき、古いストランドを取り外して新しいストランドを挿入するときに、新しいストランドがその被覆されていない部分ではなくその被覆部分でシール要素によって囲まれるように新しいストランドを配置するように注意しなければならない。引張り後、固定部の内側のストランドの被覆されていない部分を囲む空洞にグリース又はワックス又はゲルを注入することによってケーブルの露出端部を保護可能である。このような従来技術では、新しいストランドのかなり正確な長さに沿ってシース部分を事前に正確に除去しなければストランドを容易に交換することができず、これは装着及び設置後の制御中の特定のステップを意味する。また、そのようなケーブル定着部は、定着部内にストランド端部を固定した後、緊張操作の終了時及びさらなる全寿命の間にストランドのシース部がシール要素を越えて突出するのに十分な固定長さを必要とする。全ての設置公差、温度の影響、及びクリープを考慮した場合でも、シースで被覆したストランドの鋼製品のフランス規格XP A35−037−1の第3.2.2項(タイプSC)に準拠した、保護され保護された接着ストランドの使用は、熱膨張による違いにもかかわらず、熱影響又はクリープによるワイヤーとシース間の残留移動を制御可能である。より線のスチールワイヤーとより線のプラスチックシースの間の係数は、通常の動作温度範囲、すなわち約−20°Cから+40°Cまでを考慮した場合、ケーブル長の公差にはまだ十分な余裕が必要である。施工中、いくつかの構成では、必要とされる最小の長さは、定着手段を、構造内に容易に収容可能範囲を超えて大きくかつ重くし、施工の工程をより困難にする。
【0008】
特許文献2は、テンドンのシースのない部分と係合する一対のくさびを有する別の定着技術に関し、シース定着部は、シースの周りで一対のくさびに隣接して配置される。シースロック部の内壁から半径方向内向きに延在するいくつかの固定リブが、テンドンを固定するためにシースと係合する。テンドンのシース部の周りに配置されたシールは、アンカー部材に形成された間隙の端部(トランペット)を液密に閉鎖し、これは定着構造を含む。このシールは特別な形状をしていて、その第1の端部はシース定着部の先端部を収容し、その第2の端部は液密シールのために半径方向内側に延在する。この配置は、テンドンとシールの両方の、容易で安全な設置又は交換を可能にする解決策を提供してない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/191568号
【特許文献2】米国特許第8065845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の定着技術の上記の課題と他の課題との少なくとも一方を克服することである。とりわけ、本発明の目的は、ストランド(より線)のシース付き(被覆)部分の周りのシール部の安全な位置決め、及び安全なシール効果を得るために、組み立てと、設置との少なくとも一方が容易なケーブル定着具を提供することである。特に、本発明は、アンカー長の短縮が可能な定着具(アンカー)及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、これらの目的は請求項1に記載のケーブル定着具によって達成される。
【0012】
このような構成では、応力が加わっている間のシース端部の端部位置、すなわち管部内でのストランドの引張りは、シース端部を停止要素の肩部に当接させることによって正確に分かる。これにより、ストリッピング中及びストランドの装着中に、ストランドの被覆されていない部分の長さを正確に制御することとは無関係に、安全で迅速かつ確実な引っ張り操作が提供される。
【0013】
本明細書では、ストランドは、シースストランドの意味での単鎖である(シースは一般にプラスチックシース、特にPEシースである)。より一般的には、本発明は、コアとシースとを備える任意の細長要素に関する。好ましくは、細長要素は、シース内に配置されたストランドを備えるテンドンである。
【0014】
好ましくは、くぼみ領域の容積は、当接位置において、少なくとも部分的にシール要素によって囲まれる半径方向外向きの突出部を形成するようにシース部分のシース端部が変形され、それによって変形によって外向きに半径方向に圧縮される。これにより、変形したシース端部は、軸方向管部内のくぼみ領域の内側に機械的に定着される。
【0015】
また、停止要素はその肩位置に剛性端部を提供し、その上でシース端部に当接し、ストランドをさらに引っ張ると、シースの端部部分にしわが付く。シース部分のシース端部のこの変形は、シール特性を向上させる膨らみを形成する。驚くべき効果として、この外側への膨らむシースの端部の変形は、高圧縮シール要素と高圧縮シース部との組み合わせによって、シースの変形した端部と定着具のくぼみ領域との間に一次定着又は係止機能をもたらす。
【0016】
さらに、このロック機能は、くぼみ領域にロックされているシース端部と定着具にロックされているワイヤーとの間の熱的な相対移動を非常に制限する。この状況は、従来技術の定着具に対して定着具の長さを短くすることを可能にする。コスト削減に加えて、定着具の長さの短さにより、そのようなケーブル定着具に、ケーブルの端部で利用可能なスペースが小さいいくつかの構造を装備できるようになる。
【0017】
請求項15に記載される、本発明による、シース付きの走行部と、第1のシースなし端部と、第2のシースなし端部とを備えるシース付き細長要素を設置し緊張する方法において、シース付き細長要素は、第1のシースなし端部の隣にある第1シース端部と第2のシースなし端部の隣にある第2シース端部を持つシースを備え、当該方法は以下の工程を含む。
−少なくとも第2のシースなしの端部に、細長要素の走行部に近位の第1管路端部と第2管路端部との間に延在する長軸方向管路を設けることであって、長軸方向管路は、シール要素と、停止要素とを備え、停止要素はシール要素と第2管路端部との間に設けられ、シール要素及び停止要素は細長要素の通路を画定し、停止要素の内径は、非圧縮状態でシール要素の外径より小さい、長軸方向管路を設けること。
−少なくとも第2のシースなしの端部に、第2のシースなしの端部の最端部を、第1管路端部に導入し、第2のシースなしの端部の最端部を長軸に沿って第2管路端部まで変位すること。
−第1のシースなしの端部の最端部をケーブルアンカーに固定すること。
−細長要素を緊張状態とするため、少なくともシース付きの端部の第2のシース付きの端部が肩部に当接するまで、第2管路端部から、第2のシースなしの端部の最端部を引っ張ることであって、この引っ張りにより長軸方向管路内に細長要素の当接位置を作る、第2のシースなしの端部の最端部を引っ張ること。
−第2管路端部について、細長要素の第2のシースなしの端部の最端部を固定すること。
【0018】
停止要素の肩に当接することによって、シース端部の第2のシース端は自動的に正しい位置にくる。第2のシースなし端部の端部を第2の管部端部からさらに引っ張ることによって、上述したように、また以下でさらに詳細に説明するように、ロック機能を作り出せる。
【0019】
本発明は、例として与えられ、図面によって示される実施形態の説明を用いてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ケーブル定着具に定着されたケーブルを概略断面図で示す。
図2】ケーブル定着具の正面図の一例を概略的に示す図である。
図3】第1の引っ張り工程後の、本発明による定着具の一例の断面図を示す。
図4】緊張前の図3の部分Vの断面図の拡大部分を示す。
図5図3のV部分の断面図の拡大部分、すなわち第1の引っ張り工程後の拡大部分を示す。
図6図6は、第2の引っ張り工程後の図3の部分Vの断面図の拡大部分を示す。
図7】本発明で使用するためのシール要素の一例の断面図を示す。
図8】本発明で使用するための停止要素の一例の断面図を示す。
図9】代替実施形態についての図4と同様の図を示す。
図10】別の代替実施形態についての図4と同様の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図は、説明の目的のためだけに提供されている。図は、本発明の根底にある特定の原理の理解の一助となることが意図されていて、図が、求められる保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。異なる図面において同じ参照番号が使用されている場合、それら共通の参照番号は同じ又は対応する特徴を指すことが意図されている。しかしながら、異なる参照番号の使用は、それらの番号が指す複数の特徴の間のいかなる特定の相違を必ずしも示すものではない。
【0022】
本明細書において、「内径」及び「外径」は、対応する要素の半径方向寸法に関する表現であり、「半径方向」は、軸方向又は主方向に対して直交する方向である。当該要素が円形ではない場合、「内径」及び「外径」という表現も適用され、対応する要素の最大横寸法として理解されたい。
【0023】
図1は、作用中のケーブル定着具の一般的な概略断面図を示す。複数のストランド5(より線5)は、アンカーブロック11内の軸方向管部6を通って通され、固定装置、例えば円錐形くさび12によって適所に保持される。アンカーブロック11は、ケーブルによって支持されるか又は緊張されることになる構造体4(例えば、橋梁の床版の一部又は風力発電機の基礎部)内に保持される。ケーブルの様々なストランド5は、カラー(締結)要素13によって一緒に束ねられた状態で示されていて、カラー要素13からストランド5はケーブルの主走行部分8に進む。参照符号7はケーブル及び固定部の主長手方向軸7を示す。参照番号3は、走行部8に近いほうの、定着具の出口端としての第1の端部を示し、一方、参照番号1は、ケーブルの走行部8から離れるほうの、定着具の第2の端部を示す。管部6は、第1の管部端部3と第2の管部端部1との間に延在する。好ましくは、管部6はケーブル定着具の全長に沿って延在する。
【0024】
図2は、走行部8に近い端部3から見た、図1に示されたもののような定着具の正面図を示し、ストランド5は省略されている。図2は特に、定着具が作用しているときに、ストランド5が通過している管部6のアレイ配置の例を示す。図2では、43本のストランド管部6が示されているが、他の配置及び他の数の管部6及びストランド5を使用してもよい。ストランド5は、定着具の長さにわたって延在する円筒形の管部6内に収容され、定着具内で可能な限り互いに接近するように保たれて、各ストランド5の主長手方向軸7又は定着具からのずれは、最小化される。
【0025】
図3から図6は、本発明に従って装備された応力端部(ストレスエンド)定着具又は能動端部(アクティブエンド)定着具の一例を示す。
【0026】
能動端部定着具は、アンカーブロック11(アンカーヘッドともいう)を貫通して形成された管部6を備える。アンカーブロック11は、例えば硬鋼であっても、又はケーブル内の大きな軸方向緊張力(引張力)を支えるのに適した他の材料であってもよい。ストランド5は、アンカーブロック11の対応する円錐形の穴に円錐形のくさび12などの固定装置によって管部6内の適所に保持される。図3は、管部6が定着具の応力端部を通ってどのように延在しているかを示す。この応力端部は、ケーブルのストランドが緊張される、ケーブル端部、すなわち定着具の近位端1である。
【0027】
支承板又は分割シム10は、ケーブルによって支持と緊張との少なくとも一方をされることになる橋梁床版のような構造4の支承面に対して、定着具を軸方向に位置決めできるようにするものである。また、一実施形態では、さらに後述するように、くぼみ領域27を容易に画定するために、端部板部材20がアンカーブロック11と支承板10との間に配置される。また、図示されていない別の実施形態では、端部板部材20は存在しない。
【0028】
端部板部材20は、厚さを変更可能で、管部6の占有する(そして管部6の内壁に画定される)容積を除いて、コンクリート又はグラウト又はプラスチック材料などの十分に剛性の材料(図示せず)で充填された剛性の遷移部管などの延長部材と共に取り付けられてもよい。管部6の占有部分は、当該剛性材料を貫通する。実施例に示されている(複数の)管部6は、実質的に直線状であり、そして軸方向としても参照されるケーブルの主長手方向について、複数の管部6は互いに実質的に平行に延在する。
【0029】
ステーケーブルストランド5は、典型的にはポリエチレン(PE)のような保護されたポリマー材料のシースが設けられ(被覆され)、シース部5cは、ストランドが定着されるべきストランドの領域(シースなしの部5b)において除去可能である。図3から図5では、ストランド5のシース付き部5aは、クロスハッチング又は塗りつぶしなしによって剥ぎ取り領域又はシースなしの部5bと区別されている。シースなしの部5a(5b)は、裸ワイヤー5dを示すために縞を付してある。D1はシース付き部5a(シース付きストランド5)の外径であり、D2はシースなしの部5b(裸ストランド5)の外径である。
【0030】
定着部に定着されるべきストランド5は、ストランド5が定着管部6に挿入される前に、ストランド5の端部領域においてそれらのポリマーシース5cから取り除かれる。これは、くさび12が、シース5cの代わりに、ストランド5のシースなしの部5aの裸鋼を直接把持できるようにするためである。ストランド5がアンカーブロック11の管部6を通って引っ張られて完全に引っ張られた後に、シース5cの端部が埋め込み物の間の所定の位置に正しく配置されるように、十分なシース5cを各ストランド5から剥がさなければならない。以下でさらに説明されるように、シース5cがシール要素26によって囲まれるように、埋め込み点(アンカーくさび12がストランドを把持する所)及び支承プレート10を支持する。
【0031】
図4から図6でより明確に分かるように、アンカーブロック11は、管部6の一部を形成するその各穴の拡大部分11aを画定する。穴のこの拡大部分11aは、端板20に向かい接触しているアンカーブロック11の表面の領域に窪みを形成する。その拡大部分11aには、剛性ブッシュ(ブッシング)によって形成された停止要素9が挿入されている。図8に示すように、この剛性ブッシュ9は、外径DT1及び内径DT2を有する環状部分である。言い換えれば、停止要素9はチャンネル6内に配置されたブッシュによって形成され、肩部9aはシール要素26に面するブッシュの端面とチャンネル6との間に形成されることが好ましい。このブッシュは、好ましくは硬質プラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリオキシメチレン(POM)のような硬質ブッシュである。
【0032】
ブッシュによって形成された停止要素9、すなわちアンカーブロック11とは別の部分の使用の代替として、図9に示されている別の変形例は、アンカーブロック11内で管部6の一部を形成する、孔又は端部9’の縮小した直径である。そのような状況では、管部6のこのような局所的な狭窄では、アンカーブロック11とは別の部分によって形成される停止要素はない。ここでは、管部6の(図9では、シール要素26に対向しアンカーブロック11の一端側に位置する)狭窄部それ自体が停止要素9を形成する。
【0033】
図10に示すように、ブッシュによって形成された停止要素9の使用に対する別の可能な代替案では、停止要素9は管9”によって形成され、これもまたアンカーブロック11から分離した部分であり、管部6内に配置されてある。管9”は、固定装置(円錐形くさび12)まで延在する。そのような状況では、肩部9aは、シール要素26に面する管9”の端面と管部6との間に形成される。
【0034】
これら全ての場合において、停止要素9は、くぼみ領域27に面する肩部9aを画定する。この肩部9aは、シース5cを保持するための停止部(ストッパ)を形成し、ブッシュ9の前側(又は管部6の狭窄部又は管9”の前側)に形成される。図4から図6に関連してさらに詳細に説明されるように、ストランド5がアンカーブロック11の管部6を通って引っ張られ、十分に緊張されると、シース5cの端部は肩部9aに対向して、すなわち停止要素9及びシール要素26の間に位置することとなる。
【0035】
また、停止要素9は、非圧縮状態ではその直径DT2がシール要素26の外径DS1よりも小さいので、シール要素26が停止要素9内に押し込まれることは不可能である。シール要素26及び停止要素9は、シール要素26の内径DS2が停止要素9の内径DT2よりも小さいものとして選択できるが、いずれの場合もシール要素26の内径DS2及び停止要素9の内径は両方とも、シースなしの部5b(裸ストランド5)の外径D2よりも大きいものとする。ストランド部分の外形は完全な円形ではないので、D2はワイヤーパターン、すなわち裸ストランドの円形エンベロープとして定義される。
【0036】
また、図4図5及び図6においてより明確に見られるように、端部板部材20は、シール要素26を収容及び保持するために、管部6と長手方向に同軸の環状又は円筒形のくぼみ領域27を画定する。この構成では、このシール要素26は、水分が定着部の近位(第1)端部3から定着部内に入るのを防ぎ、定着部の離れた端部1から管部6に導入された任意の充填剤が定着部から漏れるのを防ぐ。
【0037】
図7に示すように、このシール要素26は、非圧縮状態では、外径DS1、内径DS2及びその長さLSを有する、環状部分である。好ましくは、シール要素26を受容するくぼみ領域27の外径DRは、ブッシュ9の外径DT1よりも小さいか、又は外形DT1と等しい値である。くぼみ領域27の長さ、すなわち軸方向の延在範囲は、LRであるとする。
【0038】
好ましくは、シール要素26を含むくぼみ領域27の容積は、細長要素5の当接位置までの軸方向変位中に変位されたシース5cの容積に非圧縮シール要素26の容積を加えた値の3倍以下である。すなわち、次式が適用される。
Π/4×(LR)×((DR)−(D2))≦3×(Π/4×(A1×((D1)−(D2)))+)LS×((DS1)−(DS2)))
【0039】
また、好ましくは、シール要素26を含むくぼみ領域27の容積は、細長要素5の当接位置までの軸方向変位中に変位されたシース5cの容積に、非圧縮シール要素26の容積を加えた値の1.5倍以下である。すなわち、次式が適用される。
Π/4×(LR)×((DR)−(D2))≦1.5×(Π/4×(A1×((D1)−(D2)))+)LS×((DS1)−(DS2)))
【0040】
図4図5及び図6に見られるように、シール要素26を受けるくぼみ領域27と停止要素9を受ける領域11aとは、管部6内で互いに長手方向で隣接している。これにより、定着具の離れた端部1に向かう、細長要素5の管部6内での変位(図5及び図6の上部の大きな矢印を参照)中に、シール要素26は、停止要素9に隣接する長手方向位置に配置され得る。シール要素26が肩部9aに当接している、図5及び図6に示すようなシール要素26のこの長手方向の位置は、シールの所定の軸方向位置に対応し、これは本発明のケーブル定着具の態様によって容易に得られる。好ましくは、シール要素26は肩部9aと同軸である。
【0041】
また、好ましくは、くぼみ領域27の容積は、肩部9aに対するシースの当接位置(図6参照)において、外径方向突出部を形成するようにシース付き部分5aの端部が変形するように作られる。それによって、シール要素26によって少なくとも部分的に囲まれ、それによって変形されたシース端部5eによって半径方向外向きに圧縮され、それによって変形されたシース端部5eは軸方向管部6のくぼみ領域27の内側に機械的に定着される。換言すれば、シール要素26は、ブッシュ9の直前に配置されている。シース5の端部位置は、ブッシュ9へのその当接によって画定される。
【0042】
図10に示す変形例では、端部板部材20がない。この状況では、アンカーブロック11は、定着具の第1の端部3(図10の底部)に向かう方向にさらに軸方向に延在し、くぼみ領域27を画定する。この変形は、図4から図6の実施形態にも適用可能であり、すなわち、アンカーブロック11は、図4から図6及び図9に示される端部板部材20が一体となった部品を形成する。端部板部材20のないこの変形例が図4から図6の実施形態に適用されるとき、それは穴の拡大部分11aがアンカーブロック(管部6の端部分)にくぼみ領域を形成していることを意味する。このくぼみ領域は、停止要素9に加えてシール要素26も受ける。
【0043】
図示されていない変形形態では、管9”を有する図10の実施形態はまた、アンカーブロック11とは別体の部材を形成する端部板部材を備え、この端部板部材は、図10ではアンカーブロック11の底部に対応し、肩部9aの軸方向位置から始まる。
【0044】
好ましくは、テンドンはシース5c内に配置された裸のストランドを備える。
【0045】
好ましくは、−20℃から+40℃以下の範囲の典型的な使用温度範囲内の温度影響の下では、シース5cと裸ストランドとの間の相対移動をL/2000未満に制限するように、シース5cは裸ストランドの外面に付着している。ここで、Lは、シース付きストランド部分(5a)の長さである。例えば、シース5cは、裸ストランドの輪郭のついた外面に幾何学的に噛み合って、裸ストランドに接着する。換言すれば、これは、フランス規格XP A35−037−3:2003の7.5.3.4にさらに説明されているように、特定の最小力まで相対移動が起こらないストランドとのシース5cの付着があることを意味する。
【0046】
好ましくは、シース5cは、高強度鋼ストランドのフランス規格XP A35−037−1の第D3項(SC型)に従って長さ300mmのシースサンプルについて測定したときに、ストランド5上での滑りに対する最小摩擦抵抗が1000Nであるものである。
【0047】
これら3つの定義は、接着保護され被覆されたストランド5といわれるタイプの被覆ストランドに対応し、そして「緊密に押し出されたモノストランド」として定義することもできる。この種の被覆ストランドは、例えば裸ストランドのまわりに直接シースを押し出すことによって得られる。運動、より正確には裸ストランドとシース5cとの間の自由運動はなく、裸ストランドとシース5cとの熱膨張係数の差によるその運動は、例えば、約18/2000、すなわち1℃当たり15.10−5のPEシースの熱係数に基づき、被覆ストランド部分の長さ2000°mmに対して18mmであろう。
【0048】
図4から図6に示すように、このような構成では、ストランドの自由端がケーブルの遠端側1から引っ張られると、図5にみられる第1の段階において、シース端はシール要素26内に入り、その後肩部9aに突き当たる。第1の段階は、くぼみ領域27の長さLR以上長さA1でのケーブルの第1の引っ張りに相当する。この第1の引っ張りの長さA1はまた、シース端部と肩部9aとの間の初期距離(図4参照)にも相当する。したがって、図5の状況は、シース6cの端部の変形も膨らみもない、管部6内のストランド5の当接位置を示す。
【0049】
次に、引っ張り操作の第2段階では、引っ張り長さの合計はA2であり(図6参照)、シース5cはワイヤー5dの周りにしわが生じて、平均的な半径D1´である半径方向外向きに突出する部分を有する変形したシース端部5eを形成する。言い換えれば、第2のシースなしの端部5bの最端部の引っ張り工程は、第2のシースの端部にしわがついた後に停止され、それによって第2のシース端部の最端部は肩部9aに対して軸方向に圧縮される。
【0050】
また、好ましくは、第2のシースなし端部の最端部の引っ張り工程は、第2のシースの端部にしわがついた後に停止され、それによって第2のシース端部の半径方向の拡大は、シール要素26の外側半径方向延長部5eを形成し、くぼみ領域27の位置において管部6の内壁29のシール要素26に及ぼす内側半径方向圧力を形成する。
【0051】
この半径方向外向きの突出部はシール要素に対して圧縮され、それによって図6に見られるように圧縮されたシール要素26’を形成する。この圧縮シール要素26’は、初期内径DS2よりも大きい外径DR、内径D1’(変形シース端部26’の平均外径D1’に対応する)、及び長さLS’を有する。この状況は、シール要素26のさらなる圧縮が可能であり、それ故、定着具のシール特性を向上する。また、シースが膨らんで圧縮されているので、温度変化中又は材料のクリープによる管部内でのシースの残留変位が回避される。これにより、短い定着でもシースがシール領域から出てしまうことが回避される。
【0052】
本明細書等に記載されるケーブル定着具は、図示されるように、それが複数の軸方向管部6と、各軸方向管部6において、シール要素26と、シール要素26と停止要素9とを収容する環状又は円筒形のくぼみ領域27とを備えるプレストレスシステムに好ましく適用される。各管部6は、シース付きの部5a及びシースなしの部5bを有するケーブルのストランド5を個別に収容する。
【0053】
応力端部定着具は、一般に、ケーブルの(作業において)よりアクセスしやすい端部に配置され、ストランドが個々に所望の緊張力を受けるまで、例えば油圧ジャッキによってストランドは、定着具を通って引っ張り可能である。
【0054】
外装部5aが定着の最終形状においてシール要素26の通路の内側に確実に突出するために、最初に、シースなしの部5bが、肩部9aと定着具の後面(第2の端部1)との間の距離よりも短いことを保証すれば十分である。肩部9aと定着具の後面(第2の端部1)との間の距離は、すなわち、アンカーブロック11の自由端に加えて油圧ジャッキによるストランドの把持を可能にするためにアンカーブロック11の自由端から突出して残されるストランドに必要な初期余剰長さを加えた長さである。緊張中にストランド5をさらになんらか引っ張ると、肩部9aに当接したときにシース5cにしわが生じる。
【0055】
本発明による定着具を用いると、能動的端部定着のための典型的な長さは大幅に短縮される。例えば、従来技術の能動型端部定着具の典型的な長さは、シール要素26から定着具の第2の端部1、すなわち固定ブロック11の自由端まで500mmから1000mmの範囲の値である。本発明の典型的な長さは、50mmから300mmの範囲の値である。
【0056】
シース付きストランド5が能動端部定着具に嵌め込まれたら、ストランド5の裸部分5bを大気中の湿気の腐食作用から保護することが重要である。この理由のために、シール要素26は、弾性圧縮下で、管部6の内面とストランド5のシース5cの外面との間の狭めた空間27’内に嵌め込まれる。この狭めた空間27’は、変形したシース端部5eのより大きい半径方向の広がりにより、減少した厚さ、すなわち減少した内径を有する、シース5cの周りのくぼみ領域27の環状部分に対応する。
【0057】
充填材を形成する保護ワックス、グリース、ポリマー又は他の保護物質もまた、空間51に注入又は導入され得る。空間51は、ストランド5と管部6の壁との間に半径方向に画定され、そしてアンカーブロック11から停止要素9(9’又は9”)まで(すなわち、図3図4から図6図9及び図10の上部に示すように)軸方向に画定される。この充填材料は、この空間51の軸方向延在部全体に沿って、又はこの空間51の軸方向延在部に沿った限られた部分のみに沿って存在することがある。好ましくは、この充填材料は、この空間51内で停止要素9(9’又は9”)まで存在する。このような充填材料を用いる場合、シール要素26が、充填材料を空間51内に保持しながら、空間51内への湿気の侵入に対するバリアとしても機能するようにしてもよい(図示せず)。
【0058】
示されていなくても、本発明によるケーブル定着具は、「行き止まり」定着具としても知られている「受動端」定着具にも適用される。そのような受動端部定着具は、ストランド5の端部が緊張力を受けているとき、及びそれらがケーブルの他方の端部、すなわち応力を加えている端部から引っ張られている間に単に保持するために使用される。従来技術のこのような受動端部定着具は、ストランドの軸方向の移動と、ストランドが引っ張られるにつれて定着具を通るストランドに関連する寸法の公差に対応する必要がないので、能動端部定着具よりも著しく短くすることができるという点で、能動端部定着具とは異なる。ストランドは、シースが停止要素の肩部9aに当接するまで単に定着具内に押し込まれる。これは、図5に示されるように、第1の引っ張り工程の終わりに相当する。
【0059】
本発明に従って構成された定着具を用いると、能動的端部定着のケーブルアンカーの長さは短くなり、従来技術の受動的端部定着具と同じ範囲内にある。
【0060】
一実施形態では、本発明の定着具は、ケーブルの受動端部定着にのみ使用され、ケーブルの能動端部定着には使用されない。
【0061】
別の実施形態では、本発明の定着具は、ケーブルの能動端部定着にのみ使用され、同じケーブルの受動端部定着には使用されない。
【0062】
さらに別の実施形態では、本発明の定着具は、ケーブルの両端に、すなわち受動端部定着及び能動端部定着に使用される。
【0063】
より一般的には、本発明はまた、細長要素5を形成する少なくとも1つのテンドンを含み、テンドンはその両端にシースなしの部5bを有し、テンドンの2つの端部を緊張下で定着するための2つのケーブル定着具に関する。2つのケーブル定着具のうちの少なくとも1つが、上述のように本発明によるケーブル定着具である。2つのケーブル定着具の他方は、上述の本発明によるケーブル定着具、又は他の任意のタイプのケーブル定着具であってもよい。
【0064】
本出願はまた、底部と頂部とを含み、底部と頂部との間に、上述の少なくとも1つのプレストレスシステムを備える風力発電機(すなわち風力タービンの支持マスト)に関する。
【0065】
風力発電機の主塔の垂直ケーブルの場合、防食用ストランド充填物質をより液化する主塔内部の暖かい又は高温の環境では、特にケーブルの動的運動下で充填物質が漏えいする危険性が存在する。本発明による定着具の改善されたシール特性により、主塔の下端部における防食製品の漏出をより良好に防止可能である。また、前述のように、本発明のような定着具は、裸ストランドとそのシースとの間、及びストランドとシール要素26を備えた管部部分との間のより良好な機械的定着を作り出す。
【0066】
一実施形態によれば、シール要素26は、圧縮状態に弾性変形可能であり、この場合、シール要素26は、第2の管部端部1と第2の管部端部1との間で管部6の内壁29の全直径以下の半径方向外寸法を有する。シール要素26とシール要素26とは、くぼみ領域27内に取り外し可能に配置されている。この構成により、ストランドとシール要素の両方を、信頼性のある相対位置で簡単に交換可能な方法によって、対応するストランドを保守又は制御作業中に再設置又は検査可能である。シール26と同様に、シール26を交換した後、離れた端部1から注入することにより、空間51内でオプションである充填材料を容易に交換してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 足場の2番目の(遠隔)端(走行部分から遠隔)
2 足場のボディ
3 固定部の最初の(近位)端(走行部分の出口端)
4 構造
5 ストランド
5a ストランドのシース付き部
5b ストランドのシースなしの部
5c シース
5d ワイヤー
5e 外側に半径方向に突出する変形したシース付き端部
D1 シース付き部5aの外径(シース付きストランド5)
D2 シースなしの部5bの外径(裸ストランド5)
6 定着管路
7 ケーブルの主縦軸
8 ケーブルの主走行部
9 停止要素(ブッシュ)
9’ 停止要素(溝部6の狭窄部)
9” 停止要素(管部)
9a 肩部
DT1 停止要素の外径
DT2 停止要素の内径
10 調整リング又は分割シム
11 アンカーブロック
11 穴の拡大部分
12a 円錐状くさび
13 カラー要素
20 端部板部材
26 シール要素
DS1 シール要素の非圧縮状態における外径
DS2 シール要素の非圧縮状態における内径
LS 非圧縮状態のシール要素の長さ
LS’ 圧縮状態のシール要素の長さ
26’ 圧縮シール要素
D1’ 圧縮シール要素の平均外径
27 くぼみ領域
27’ 狭めた空間部
LR くぼみ領域の長さ
DR くぼみ領域の外径
29 内壁
A1 当接部までの引っ張り長さ(最初の引っ張り長さ)
A2 シース付き端部5eが変形するまでの長さ(第2の引っ張りの長さ)
51 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10