特許第6873248号(P6873248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873248透過側へアクセスしない多孔質材料混合ガス完全性試験
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873248
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】透過側へアクセスしない多孔質材料混合ガス完全性試験
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20210510BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01N15/08 A
   B01D65/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-537155(P2019-537155)
(86)(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公表番号】特表2020-508438(P2020-508438A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】US2017062518
(87)【国際公開番号】WO2018156223
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2019年8月22日
(31)【優先権主張番号】62/461,920
(32)【優先日】2017年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジグリア,サルバトーレ
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−504732(JP,A)
【文献】 特開2013−226542(JP,A)
【文献】 特開2002−045661(JP,A)
【文献】 特開平04−142445(JP,A)
【文献】 特開2007−108178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/08
B01D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料の完全性試験の方法であって、
試験される多孔質材料を準備するステップであって、前記多孔質材料は上流側とろ液側とを有する、ステップと、
前記多孔質材料を湿潤させるために使用される液体中に、異なる透過性を有する少なくとも第1および第2のガスを含むガス流を準備するステップと、
前記ガス流を前記多孔質材料の前記上流側に導入するステップと、
前記第1および第2のガスを前記多孔質材料に通して流すステップと、
前記多孔質材料の前記上流側を出る保持流中の前記第1および第2のガスのうちの少なくとも一方の濃度を測定するステップと、
測定された濃度を所定濃度と比較するステップと、を含み、
前記測定濃度と前記所定濃度との間の差異が、前記多孔質材料が不完全であることを示しており、
保持流の流量は、濃度測定装置の流量に従って設定される、方法。
【請求項2】
前記第1のガスが酸素であり、前記第2のガスが窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のガスが酸素であり、前記濃度を測定するステップにおいて、前記ガスのうちの1つの前記濃度が酸素分析計で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質材料が滅菌グレードのフィルタである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質材料が膜を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/461,920号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、その全体において参照により本明細書において援用される。
【0002】
本明細書に開示される実施形態は、一般に、多孔質媒体の完全性試験方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、バイオテクノロジー、化学、エレクトロニクス、医薬品、飲食産業の分野において、水性媒体の高純度ろ過には、高度の分離が可能であるだけでなく、環境、被ろ過媒体、および生じたろ液の汚染を防止するのに役立つ高機能フィルタモジュールを使用する必要がある。これは、細菌やウイルスなど危険なことが多い望ましくない有機体だけでなく、ダストや埃などの環境汚染物質がプロセス流および最終製品に混入するのを防止するように設計されている。完全性試験は、ろ過に関与する多孔質材料の無菌性および/または保持能力が損なわれないことを確保するために、重要なプロセスろ過用途の基本的要件である。
【0004】
例えば、FDAのガイドラインは、使用前およびろ過後にフィルタモジュールの完全性試験を推奨している。通常、この試験を最初に蒸気滅菌後に実施して、フィルタが損傷していないことを保証し、したがって、細心の注意を払って、フィルタの無菌性、すなわちろ液の無菌性が損なわれていないことを保証しなければならない。処理後、フィルタの完全性試験をその場で再度実施し、使用中にフィルタが損傷したかどうかを検出する。この情報を使用して、処理直後に潜在的な問題をオペレータに警告し、迅速に是正措置を講じることができる。さらに、FDAガイドラインは、完全性試験文書にバッチ製品記録に含めることを要求している。
【0005】
粒子チャレンジ試験、液体−液体ポロメトリ試験、拡散試験、バブルポイント試験、気体−液体拡散試験およびトレーサ成分を測定する拡散試験を含めて、多孔質材料の保持能力を損なう可能性がある大きすぎる孔または欠陥の存在を検出するための様々な完全性試験の方法がある。粒子チャレンジ試験などこれらの試験のいくつかは破壊的であることから、使用前試験として使用することはできない。気体−液体拡散試験は、これらの試験における固有のバックグラウンドノイズのため、小さな欠陥を検出するための感度が不足していることが多い。液体−液体ポロメトリ試験およびバブルポイント試験は、適切な公称孔径を有する膜が設置されていることの保証には有用であるが、少数の小さな欠陥を特定するための感度が不足している。
【0006】
二成分ガス試験もまた、技術分野で知られており、異なる透過性の2つのガスを湿潤フィルタの液体層に通過させる。この試験により、単一ガス拡散試験および他の完全性試験と比較して、欠陥検出感度の改善が可能になる。フィルタの上流(入口)側で一定の組成を維持するために、膜の上流側の二成分ガス対の掃引流が使用される。入口ガスの圧力を上昇させることによって、フィルタの上流側と下流側との間の圧力差を確立させる。次に、フィルタの下流(透過)側のガス(速い透過ガスに富む)の濃度を測定し、この測定値を完全なフィルタからの既知の期待値と比較する。期待値からの逸脱は、試験対象のフィルタに欠陥があることを示している。
【0007】
二成分ガス試験は、技術分野において説明されている。上記の通り、技術分野において説明されている試験は、フィルタの下流側でのガス濃度測定に依存する。しかしながら、フィルタ自体は、ろ液側に入ることからあらゆる潜在的汚染物質を保持するので、汚染導入の可能性を排除するために、フィルタ下流側への外部アクセスを制限することが望ましい場合が多い。拡散流法またはバブルポイント法に基づく自動完全性試験機では、通常、フィルタの上流側のみにアクセスし、圧力減衰法を用いて、フィルタの完全性が評価される。
【0008】
上流側ガスの特性を測定することの別の利点は、下流側とは異なり、フィルタを湿潤させるために使用される流体中でガスが飽和しないことである。特に結露が発生した場合、湿潤用流体(大抵は水)で、飽和したガス中の蒸気が、流量測定または組成測定を妨げる可能性がある。二成分ガス試験における上流ガスはしばしば高圧であるが、測定のために、サンプリングされたガスをより低い圧力に絞ることができ、それによってサンプリングされたガスの凝縮リスクを排除することができる。
【0009】
従来技術の別の欠点は、透過ガスのサンプルサイズまたはサンプリング速度がフィルタを横切るガスの拡散流量によって制限されることである。この制限は、プロセスに設備を追加し複雑さを増すことによって、ある程度克服することができる。
【0010】
従来の慣例に従って、多孔質材料の完全性を評価することは、
a)多孔質材料を液体で湿潤させること、
b)多孔質材料の第1の表面を2つ以上のガスを含むガス混合物と接触させることであって、混合物中のガスの少なくとも1つは、混合物中の他のガスと比較して液体中で異なる透過性を有すること、
c)ガス混合物が多孔質材料を透過するように、多孔質材料の第1の表面に圧力を加えること、
d)多孔質材料の第2の表面に近接した領域に透過したガス混合物中のガスの少なくとも1つの定常状態濃度を測定すること、
e)定常状態濃度を所定濃度と比較することを含み、
定常状態濃度と所定濃度との差異は、不完全な多孔質材料を示す。別の従来の方法は、透過側ガスを再循環させてサンプリング時間を加速するものであり、これも透過側のガス混合物の濃度を評価することに依存している。
【0011】
ガス濃度測定のために多孔質材料の下流(透過)側を評価することは、いくつかの理由で問題となる可能性がある。1つの問題は、フィルタのろ液(生成物)側に汚染物質の導入可能性を回避することが望ましい場合がしばしばあるということである。例えば、滅菌グレードのフィルタでは、ろ過の開始直前にろ液側で無菌性を維持することが不可欠である。したがって、ろ過前にフィルタを完全性試験する場合、ろ液側へのアクセスは望ましくない。この理由から、気体―液体拡散完全性試験において、フィルタを横切る拡散流量を判定するために、上流側圧力低下法がしばしば使用される。
【0012】
二成分ガス完全性試験における透過ガスは、通常、フィルタを湿潤させるために使用される流体(一般に水)で飽和している。湿潤用流体の蒸気で飽和したガスは凝縮を起こしやすく、蒸気(凝縮したかどうかに関わりなく)によってガスの濃度測定および流量測定が妨げられる可能性がある。蒸気と凝縮が流量測定および濃度測定に及ぼす影響を回避するために、例えば、乾燥剤の使用によって、蒸気濃度を低減することができる。しかしながら、乾燥剤の添加は、追加費用、複雑さ、および容積の増加などそれ自体の欠点を有する。
【0013】
透過側からの濃度測定に伴う別の問題は、サンプリング速度が膜を横切る拡散流量によって制限されることである。ガス濃度を測定するために使用される機器(例えば酸素分析計)では、正確な結果を得るために、最小の流量またはサンプルサイズが必要とされる。拡散流量が比較的低い場合、サンプルサイズまたは流量は、濃度測定にとって十分ではない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記に照らして、多孔質材料の二成分ガス完全性試験の利点を提供する一方、フィルタの上流側のみにアクセスしてフィルタの完全性を評価することが必要な、フィルタ完全性試験方法に関する要望が存在する。上流側からのサンプリングには、サンプリング速度を容易に制御できるという追加の利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
先行技術の問題は、本明細書に開示された実施形態によって対処され、当該の実施形態には、試験中の多孔質材料の透過側からサンプリングする必要性を排除する多孔質材料完全性試験の方法が含まれる。ある実施形態では、ガス組成測定のためにフィルタの上流側のみがアクセスされる。いくつかの実施形態では、フィルタの完全性を評価するために保持(非透過)ガスの組成が使用される。完全性試験により、多孔質材料の保持能力を損なう可能性がある大きすぎる孔または欠陥の存在を検出することができる。サンプル流量は、透過流量とは無関係に所望の値に設定することができる。
【0016】
ある実施形態では、多孔質材料は滅菌グレードのフィルタ、すなわちASTM F838−15aによる10cfu/cmのチャレンジレベルでB.デミニュータ(diminuta)を保持することができるフィルタである。
【0017】
ある実施形態では、完全性試験は、迅速で、感度が高く、非破壊的で、安価で、環境に無害で、しかも実施が容易である。これにより、多孔質材料またはエレメントの完全性について感度が高く信頼性の高い評価が得られる。
【0018】
測定されるガスはその露点近くにはないため、凝縮の可能性および流れや濃度測定の妨げになる可能性が最小限に抑えられている。サンプル流は、透過流量とは無関係に所望の値に設定することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、多孔質材料の完全性試験の方法は、
試験される多孔質材料を準備するステップであって、多孔質材料は、上流側とろ液側とを有する、ステップと、
多孔質材料を湿潤させるために使用される液体中に異なる透過性を有する少なくとも第1および第2のガスを含むガス流を準備するステップと、
ガス流を多孔質材料の上流側に導入するステップと、第1および第2のガスを多孔質材料に流すステップと、
多孔質材料の上流側を出る保持流中の第1および第2のガスの少なくとも一方の濃度を測定するステップと、
測定濃度を所定濃度と比較するステップと、
を含み、測定濃度と所定濃度との間の差異は、多孔質材料が不完全であることを示す。
【0020】
本開示をさらによく理解するために、参照により本明細書に援用される添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】二成分ガス完全性試験における流れ構成の概略図である。
図2】ある特定の実施形態による完全性試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態をさらに詳細に説明する前に、用語をいくつか定義する。
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記の(the)」は、前後関係がそうでないことを明白に示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
多孔質単層もしくは多孔質膜、多孔質多層物、または複数の多孔質膜などの多孔質材料について言及している場合、本明細書で使用される「完全な」という表現は、欠陥のない多孔質材料を意味する。
【0024】
多孔質単層または多孔質膜、多孔質多層物、および複数の多孔質膜などの多孔質材料について言及している場合、本明細書で使用される「不完全な」という表現は、欠陥のある多孔質材料を意味する。多孔質層または多孔質膜における欠陥の非限定的な例には、大きすぎる孔、多層エレメントを形成するために一緒に結合された複数の多孔質層または多孔質膜の間の不適切な結合(例えば、層間剥離または分離)、および多孔質層または多孔質膜上の欠陥などが列挙されるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「多孔質材料」という表現は、1つ以上の多孔質膜、シート、ロッド、ディスク、チューブ、層、フィルタ、フィルタエレメント、ろ過媒体、容器、シリンダ、カセット、カートリッジ、カラム、チップ、ビーズ、プレート、モノリス、中空糸、およびそれらの組合せを含むことができるが、これらに限定されない。多孔質材料は、プリーツ状、平坦状、らせん状に巻かれたもの、およびそれらの組合せとすることができる。それは単層または多層の膜装置であってもよい。膜は対称でも非対称であることができる。多孔質材料は、入口と出口とを有することができるハウジング内に収容できる。それは、感染性生物およびウイルス、ならびに環境有害物質および環境汚染物質などの汚染物質を含めて、望ましくない物質のろ過のために使用できる。多孔質材料は任意の適切な材料から構成することができ、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えば、ナイロン、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、フルオロカーボン、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス繊維、ポリカーボネート、セラミック、および金属が挙げられるが、これらに限定されない。混入物質を含めて、望ましくない物質のろ過のために使用できる。
【0026】
本明細書で開示される実施形態は、多孔質単層材料、多層構造を有する多孔質材料、多孔質膜およびフィルタを含めた多孔質材料の完全性試験方法を含む。多孔質材料は、供給側または入口側および透過側または出口側を備えるハウジング内にあり得る。
【0027】
ここで図1を参照すると、二成分ガス完全性試験におけるフロー構成が概略的に示されている。二成分ガス試験では、成分のうちの1つが第2の成分より液体充填膜層を横切って速く透過する少なくとも2つの成分を有する供給(入口)ガス流がある。供給流は膜の上流側に入る。速く透過する成分が枯渇している保持流は、膜の上流側から出る。速い透過成分が富化されている透過流は、膜の下流側から出る。図1において、Qは供給(入口)流量、Qは保持流量、Qは透過流量、Xは供給流中の速く透過する成分のモル分率、Xは保持流中の速く透過する成分のモル分率、yは透過流中の速い透過成分のモル分率である。
【0028】
従来、膜フィルタの完全性は、透過流の濃度を測定することによって評価される。完全なフィルタの場合、速い透過ガスの濃度は予測範囲内にあるべきである(理論的または経験的に決定される)。入口側から透過側への漏えいにより透過濃度が変化し、速い透過ガスの濃度と期待値との差異は、漏えいまたは不完全な膜フィルタであるという合図である。
【0029】
しかしながら、二成分ガス試験は定常状態プロセスであるので、本明細書に開示された実施形態によれば、透過ガスの濃度は上流の測定のみで決定することができる。透過物の組成は、質量バランスによって得ることができる。
【0030】
【数1】
【0031】
このようにして、上流入口および上流出口の流量および濃度のみを測定することによって、膜フィルタの完全性を評価することができる。(不完全なフィルタを示す)漏えいの存在により、透過ガスは入口ガスで希釈される(速い透過成分で富化された透過ガスは入口側ガスと混合される)ので、透過ガス中の速い透過成分の濃度は減少する。ガスが膜の両側で完全に混合される系では、完全な膜の透過側のガス組成は次式で与えられる。
【0032】
【数2】
ここで、αは遅いガスの透過率に対する速いガスの透過率の比、Prは供給圧力に対する透過圧力の比(P/P)、θは膜を透過した供給ガスの割合(Q/Qまたは(Q−Q)/Q)である。上記の3つの式を使用して、完全なフィルタ内の透過流および保持流の予測組成を計算することができる。フィルタ入口側からフィルタ透過側へ漏えいがある場合、透過濃度は以下の式に従って減少する。
【0033】
【数3】
ここで、yp、niは不完全な透過濃度、Qは漏えい率である。
【0034】
いくつかの実施形態では、測定濃度と比較される所定濃度は、完全な多孔質材料または装置から予測される濃度である。所定濃度は、与えられた温度および圧力で、完全な(すなわち、欠陥のない)湿潤多孔質材料を通って拡散するように計算されたガスの濃度であってもよいし、与えられた温度および圧力で、完全な湿潤多孔質材料を通って拡散されたガスの実際の濃度であってもよい。
【0035】
ある実施形態では、多孔質材料を液体で飽和させることによって、多孔質材料を液体(湿潤用液体)で湿潤させる。適切な液体としては、水、イソプロピルアルコール、およびイソプロピルアルコールと水の混合物が挙げられる。他の液体もまた使用することができるが、コストおよび/または利便性により、理想的ではない場合がある。
【0036】
完全性試験を実施するのに適した温度は、約4℃〜約40℃、好ましくは約22〜24℃の範囲である。適切な供給圧力は、約15psia〜約100psia、好ましくは約40〜70psiaの範囲である。
【0037】
ある実施形態では、圧縮空気を介して利用可能な、酸素および窒素などの低コストの二成分ガス対などの複数のガスが、試験を実施するための入口ガスとして使用される。各ガスの適量は特に限定されない。ガスは、多孔質材料を湿潤させるために使用される液体を通る異なる透過速度を有していなければならない。ガス混合物における遅い透過ガスに対する速い透過ガスの比は、組成測定の容易さ、膜を通るガス流量、および経済的理由など多数の要因による影響を受ける。空気の場合、組成は周囲条件によって一定である。乾燥基準での空気の組成は、Oが20.95%、Nが78.09%、Arが0.93%、COが0.04%、および微量の他のガスである。
【0038】
例1
上流側二成分ガス試験の実験装置を図2に示す。試験したフィルタは、MilliporeSigma社製の10インチプリーツカートリッジフォーマットの滅菌グレードPVDFフィルタ(CVGL Durapore(R)カートリッジフィルタ10インチ0.22μm)であった。空気(主に酸素および窒素からなる)は、その低コスト、容易な入手可能性、および安全使用により、使用するのに便利な供給ガスである。この試験では、21.38%のOと残りがNの合成空気混合物を使用した。酸素は、Nの約2倍の速度で水を透過するので、透過ガスは酸素富化されると予測され、保持ガスは窒素富化されると予測される。フィルタを水で湿潤させ、入口ガスを40psigでフィルタに導入した。透過ガスは大気に排出された。絞り弁を使用して質量流量計を使用して測定された保持流量を制御した。酸素濃度は、酸素分析計(Servomex model 4100)を用いて測定された。保持側試験については、酸素分析計の流量として適した保持流量を約88sccmに一定に保った。
【0039】
従来技術の二成分ガス試験によって、明らかに完全(合格)、ぎりぎり不完全(ぎりぎり不合格)、および明らかに不完全(不合格)であると以前に判断された3つの装置を、上記説明および図2に従って試験した。完全性の結果は、下記の表1にまとめられている。
【0040】
【表1】
【0041】
本明細書に開示された実施形態の方法および従来技術の方法は、3つのフィルタ全てについて一致した。従来技術の方法では、θが<<1%に設定されているので、予測積算濃度は変化しない。θがゼロに近づくと、yはθの関数として漸近極限に近づき、xはxに近づく。このことは、式2〜3から証明することができる。従来技術の方法では、θが小さいとき(Q、Q、またはQの変動から生じる)θの変動がyの測定に及ぼす影響は最小限に抑えられるので、yがθの影響を受けにくい領域で運用することが好ましい。入口側試験では、Q(この例では88sccm)は固定され、θは変動することができる。したがって、θが変化するにつれて、xは式2〜3に従って変化する。予測積算濃度は、α=2.1、Pr=0.27およびQとQの測定値に基づいたθを用いて計算された。
【0042】
完全性試験の完了後、表1に挙げられた各カートリッジは、参照により本明細書で援用されているASTM F 838−05に記載されている方法を用いて、細菌保持について試験された。フィルタの保持性能は、次のように定義された対数減少値(LRV)で定量化できる。
【0043】
【数4】
ここで、CとCは、それぞれ入口流内とろ液流内の細菌濃度である。フィルタ77は、完全に保持性であり(ろ液内に細菌は見つからなかった)、LRVは>11.2を有すると判断された。フィルタ17はLRV7.8を有し、フィルタ14はLRV5.4を有した。したがって、細菌保持試験は完全性試験の結果と合致した。
【0044】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、当業者であれば、本明細書に記載された実施形態に加えて、本開示の他の様々な実施形態および本開示に対する改変は、上記説明および添付図面から明らかであろう。したがって、このような他の実施形態および改変は、本開示の範囲内にあるものとする。さらに、本開示は、特定の目的のために特定の環境における特定の実施という状況で本明細書に記載されてきたが、当業者であれば、その有用性はそれらに限定されず、しかも本開示が任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施され得ることが分かるであろう。したがって、以下に説明される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全範囲および精神を考慮して解釈すべきである。
図1
図2