(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873264
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/125 20060101AFI20210510BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G02B6/12 363
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-550698(P2019-550698)
(86)(22)【出願日】2018年2月14日
(65)【公表番号】特表2020-510881(P2020-510881A)
(43)【公表日】2020年4月9日
(86)【国際出願番号】CN2018076798
(87)【国際公開番号】WO2018166327
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】15/458,363
(32)【優先日】2017年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504161984
【氏名又は名称】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】チュンシュ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ジョン・グッドウィル
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/077527(WO,A1)
【文献】
特開平05−323138(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1588143(CN,A)
【文献】
米国特許第07469085(US,B1)
【文献】
米国特許第06636668(US,B1)
【文献】
Suzuki et al.,Integrated-Optic Ring Resonators with Two Stacked Layers of Silica Waveguide on Si,IEEE Photonics Technology Letters,米国,IEEE,1992年11月,Vol.4, No.11,pp.1256-1258
【文献】
辻 慎太朗,徳原 敬男,仲野 智紀,會田 田人,ナノインプリントとフォトリソグラフィを併用した積層型ポリマーマイクロリング光共振器の試作,第 60 回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,日本,応用物理学会,2013年 3月,30p-B3-8,05-112,URL,https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsap2013s/30p-B3-8/public/pdf?type=in
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26−6/27
6/30−6/34
6/36−6/40
6/42−6/43
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング光導波路と;
第1の光導波路と;を含み、
前記第1の光導波路は、前記第1の光導波路の第1の部分が前記リング光導波路の第2の部分に重なるように構成され、
前記第1の光導波路が、第1の屈折率を有し、前記リング光導波路が、第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率が前記第2の屈折率未満であり、
前記第1の光導波路の前記第1の部分が、重なり領域において前記リング光導波路の前記第2の部分に重なり、
前記重なり領域内で前記第1の光導波路と前記リング光導波路との間に介在する結合材料をさらに含み、前記結合材料が、前記第1の屈折率のものと前記第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する、マイクロリング共振器(MRR)。
【請求項2】
前記第1の光導波路が、ポリマー光導波路であり、前記リング光導波路が、シリコン光導波路である、請求項1に記載のMRR。
【請求項3】
前記第1の光導波路が、前記リング光導波路よりも高さが高く、前記第1の光導波路の前記第1の部分が、前記リング光導波路の前記第2の部分のための空間を提供するように構成される、請求項1又は2に記載のMRR。
【請求項4】
前記第1の光導波路及び前記リング光導波路が、水平絶縁体ベースの上にあり、前記第1の光導波路の前記第1の部分が、水平寸法において前記リング光導波路の前記第2の部分に重なる、請求項1から3の何れか一項に記載のMRR。
【請求項5】
前記第1の光導波路の前記第1の部分が、前記重なり領域において前記リング光導波路の前記第2の部分と接触している、請求項1に記載のMRR。
【請求項6】
前記重なり領域において、前記第1の光導波路の前記第1の部分と前記リング光導波路の前記第2の部分との間にギャップをさらに含む、請求項1に記載のMRR。
【請求項7】
第1の屈折率を有する第1の材料から形成された第1の光導波路と;
前記第1の光導波路に光学的に結合された複数(N個)のマイクロリング共振器(MRRs)であって;前記N個のMRRsの各々が、第2の屈折率を有する第2の材料から形成されたリング光導波路を含み、前記第1の屈折率が前記第2の屈折率未満である、複数のマイクロリング共振器と;を含み、
前記第1の光導波路の第1の部分が、前記N個のリング光導波路の各々の一部に重なり、
各重なり領域内で前記第1の光導波路と各リング光導波路との間に介在する結合材料をさらに含み、前記結合材料が、前記第1の屈折率のものと前記第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する、フォトニック回路。
【請求項8】
各リング光導波路が、異なる波長で共鳴するように構成される、請求項7に記載のフォトニック回路。
【請求項9】
前記第1の光導波路が、ポリマー光導波路であり、各MRRに関して、前記リング光導波路が、シリコン光導波路である、請求項7又は8に記載のフォトニック回路。
【請求項10】
前記第1の光導波路が、各リング光導波路よりも高さが高く、各MRRに関して、前記第1の光導波路の一部が、前記リング光導波路のための空間を提供するように構成される、請求項9に記載のフォトニック回路。
【請求項11】
水平絶縁体ベースをさらに含み、前記第1の光導波路及び各リング光導波路は、前記第1の光導波路の第1の部分が水平寸法において各リング光導波路の第2の部分に重なるように、前記水平絶縁体ベースの上にある、請求項7から10の何れか一項に記載のフォトニック回路。
【請求項12】
前記第1の光導波路の前記第1の部分が、重なり領域において各リング光導波路の前記一部に重なる、請求項7から11の何れか一項に記載のフォトニック回路。
【請求項13】
第1の光導波路と;
リング光導波路と;
前記第1の光導波路と前記リング光導波路との間の重なりの領域であって、前記第1の光導波路の第1の部分が、前記リング光導波路の第2の部分に重なる、領域と、を含み、
前記第1の光導波路が、第1の屈折率を有し、前記リング光導波路が、第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率が前記第2の屈折率未満であり、
前記重なりの領域内で前記第1の光導波路と前記リング光導波路との間に介在する結合材料をさらに含み、前記結合材料が、前記第1の屈折率のものと前記第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する、光学デバイス。
【請求項14】
水平絶縁体ベースをさらに含み、
前記第1の光導波路及び前記リング光導波路が、前記水平絶縁体ベースの上にあり;
前記第1の光導波路の前記第1の部分が、水平寸法において前記リング光導波路の前記第2の部分に重なる、請求項13に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、その全体において参照によって本明細書に組み込まれる、2017年3月14日に出願された米国特許出願第15/458,363号明細書からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、通信ネットワークの分野、特に、シリコンフォトニクス等のフォトニック集積回路(PIC)技術に関する。
【背景技術】
【0003】
光スイッチ及び調整可能光学フィルターは、現代のフォトニックネットワークにおいて有益な素子である。例えば、メトロネットワークを含む、再構成可能な波長分割多重(WDM)光学ネットワーク、受動光学ネットワーク(PON)、及び、高性能コンピューティングは、アドレス指定の形式を含む様々な目的に関して異なる波長を使用する。このように、多数の光学/フォトニックネットワークは、トランスポートリンクへ追加される又はそこからドロップされることになる波長の選択を可能にするデバイスを必要とする。光スイッチ及び調整可能フィルターはまた、分光器等の計装用途において有益である。従って、このようなデバイスのための構成要素として用いられ得る調整可能光学素子に関する必要性が存在する。
【0004】
低コスト、低出力であり、且つコンパクトサイズの光スイッチは、光クロスコネクト(OXC)、再構成可能な光アドドロップマルチプレクサー(ROADM)、及び他の光学ネットワーキングシステムにおける重要な構成要素である。例えば、シリコン−オン−インシュレーター(SOI)技術を利用する光集積回路(PIC)は、ハイスピード且つ小さい実装面積を提供し得る。シリコン−オン−インシュレーター(SOI)は、その比較的大きい熱光学係数、高い熱伝導率及び高いコントラストの屈折率に起因して光スイッチを開発するための有望な技術である。近年、様々な熱光学スイッチ構成がSOIプラットフォーム上で報告されている。
【0005】
フォトニック集積回路において製造される、マイクロリングとしても知られるマイクロリング共振器(MRRs)は、光ネットワークに関する波長調整可能フィルターを含む、様々な用途のために幅広く研究されている。マイクロリングは、典型的には円形であるが、原理的には任意の形状であり得る導波路ループである。マイクロリングは、1つ又は2つの輸送導波路と光学的に結合される。マイクロリングが単一の導波路に結合されるシナリオでは、それは、輸送導波路から波長のセットを除去するための機能を提供し、それゆえノッチフィルターとして機能する。マイクロリングが2つの輸送導波路に結合されるシナリオでは、輸送導波路は、マイクロリングへの/マイクロリングからの光に結合する。第1の導波路によって輸送される光が、リングに共鳴する波長を含む場合、そのとき、光の共鳴波長は、第1の輸送導波路からリング内に結合され得、第2の輸送導波路に結合されることになるリングの周りに伝搬する。リングに共鳴しない光の波長は、第1の輸送導波路の入力から第1の輸送導波路の出力へ通り抜けて、マイクロリングと実質的に相互作用しない。所望のバンドパス特性を有するフィルターは、輸送導波路を介在することによって又は介在することなく、互いに複数のマイクロリングを結合することによって形成され得る。
【0006】
しかしながら、さらに速度を増加させること、及びこのようなシステムのための、より小さい実装面積に関する要求が存在する。さらに、特にPIC内のMRRsの数が増加するときに、このような構成要素の光学損失を減少させるための必要性が存在する。さらに、ポリマー導波路がPICs内で用いられることもあることが知られる。ポリマー導波路は、3次元の自由形状製作を有する。ポリマー導波路の伝送損失はより小さいが、シリコン等の、より高い屈折率材料と比較して、低い光モード閉じ込めを有する。従って、単一モード光伝送を支えるためには、導波路コアとクラッドとの間の、より低い屈折率コントラストに起因して、ポリマー導波路の最小サイズは、シリコン導波路のものよりも大きい。さらに、ポリマー光導波路は、シリコン光導波路ほど効果的に旋回したり曲げることができない。従って、ポリマー導波路は伝送導波路として適切であり得る一方で、余分なサイズ及びより大きい旋回半径が、ポリマー導波路から形成されたMRRsを非実用的にさせる。
【発明の概要】
【0007】
従って、従来技術の一以上の制限に少なくとも部分的に対処するシステム及び方法に関する必要性が存在する。
【0008】
この背景情報は、本発明に関連する可能性があると出願人によって考えられる情報を明らかにするために提供される。如何なる先行情報が本発明に対する従来技術を構成することを認めることを必ずしも意図したものではなく、解釈されるべきでもない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様は、マイクロリング共振器(MRR)を提供する。このようなMRRは、リング光導波路及び光導波路を含み、光導波路は、光導波路の第1の部分がリング導波路の第2の部分に重なるように構成される。いくつかの実施形態では、光導波路は、第1の屈折率を有し、リング光導波路は、第2の屈折率を有し、第1の屈折率が第2の屈折率未満である。いくつかの実施形態では、光導波路は、ポリマー光導波路であり、リング光導波路は、シリコン光導波路である。いくつかの実施形態では、光導波路が、リング導波路よりも高さが高く、光導波路の第1の部分は、リング導波路の第2の部分のための空間を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、光導波路及びリング光導波路が、水平絶縁体ベースの上にあり、光導波路の第1の部分が、水平寸法においてリング光導波路の第2の部分に重なる。いくつかの実施形態では、光導波路の第1の部分が、重なり領域においてリング導波路の第2の部分に重なる。いくつかの実施形態では、光導波路の第1の部分が、重なり領域においてリング光導波路の第2の部分と接触している。いくつかの実施形態では、MRRは、重なり領域において、光導波路の第1の部分とリング光導波路の第2の部分との間にギャップをさらに含む。いくつかのこのような実施形態では、ギャップが、第1の屈折率のものと第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する屈折率整合材料によって満たされる。いくつかの実施形態では、MRRは、重なり領域内で光導波路とリング導波路との間に介在する結合材料をさらに含み、結合材料が、第1の屈折率のものと第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する。
【0010】
本開示の他の1つの態様は、フォトニック回路(PIC)を提供する。このようなPICは、第1の屈折率を有する第1の材料から形成された第1の光導波路を含む。このようなPICは、光導波路に光学的に結合された複数(N個)のマイクロリング共振器(MRRs)をさらに含む。N個のMRRsの各々が、第2の屈折率を有する第2の材料から形成されたリング光導波路を含み、第1の屈折率が第2の屈折率未満である。各MRRに関して、第1の光導波路の第1の部分が、N個のリング導波路の各々の一部に重なる。いくつかの実施形態では、各リング光導波路が、異なる波長で共鳴するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の光導波路が、ポリマー光導波路であり、各MRRに関して、リング光導波路が、シリコン光導波路である。いくつかの実施形態では、第1の光導波路が、各リング導波路よりも高さが高く、各MRRに関して、光導波路の一部が、リング光導波路のための空間を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、このようなPICは、水平絶縁体ベースをさらに含む。このような実施形態では、第1の光導波路及び各リング光導波路は、光導波路の第1の部分が水平寸法において各リング光導波路の第2の部分に重なるように、水平絶縁体の上にある。いくつかの実施形態では、光導波路の第1の部分が、重なり領域において各リング導波路の一部に重なる。いくつかの実施形態では、このようなPICは、各重なり領域内で光導波路と各リング導波路との間に介在する結合材料をさらに含み、結合材料が、第1の屈折率のものと第2の屈折率との間の第3の屈折率を有する。
【0011】
本開示の他の1つの態様は、光学デバイスを提供する。このような光学デバイスは第1の光導波路、リング光導波路、及び、第1の光導波路とリング光導波路との間の重なりの領域であって、第1の光導波路の第1の部分が、前記リング光導波路の第2の部分に重なる、領域、を含む。いくつかの実施形態では、第1の光導波路は、第1の屈折率を有し、リング光導波路は、第2の屈折率を有し、第1の屈折率が第2の屈折率未満である。いくつかの実施形態では、このような光学デバイスは、水平絶縁体ベースをさらに含む。このような実施形態では、第1の導波路及びリング導波路は、水平絶縁体ベースの上にあり、第1の導波路の第1の部分が、水平寸法においてリング導波路の第2の部分に重なる。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び優位点は、添付図面と組み合わされて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の方向性結合器に基づいたシリコンMRRを概略的に示す。
図1Aは、MRRの等角図を概略的に示し、
図1Bは、MRRの上面図を概略的に示す。
【
図2】本発明の実施形態に従うMRRを概略的に示す。
図2Aは、MRRの等角図を概略的に示し、一方で、
図2Bは、MRRの上面図を概略的に示す。
【
図3A】本発明の実施形態に従う、
図2Bの切断線3−3に沿ったMRRの断面を示す。
【
図3B】屈折率整合材料が、重なり領域内でポリマー光導波路とリング光導波路との間に介在する代替実施形態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に従う
図3Aの例に関する例の寸法を示す。
【
図5】より小さいポリマー導波路がリング導波路に部分的に重なり、2つの導波路の間のマルチモード結合を達成する、代替実施形態を示す。
【
図6】本発明の実施形態に従う、2つのリング導波路を含むMRRの例を示す。
【
図7】本発明に従う、マイクロリングベースのスイッチマトリックス等の、例のPICを示す。
【
図8】本発明の実施形態に従う、DWDMトランシーバーとして機能するPICの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を通して、同様の特徴は同様の参照符号によって識別されることに留意されたい。
【0015】
マイクロリング共振器(MRR)とも呼ばれるリング共振器(RR)は、他の1つの光導波路、及び実装に応じて、追加の光導波路と光学的に結合し得る光導波路リングである。例は、MRRが2つの光導波路に結合されると仮定して議論されることになるが、追加の光導波路がいくつかの実装(例えば、ノッチフィルター)に関して必要不可欠ではないことが理解されるべきである。
【0016】
図1は、従来の方向性結合器に基づいたシリコンMRRを概略的に示す。
図1Aは、MRRの等角図を概略的に示し、一方で、
図1Bは、MRRの上面図を概略的に示す。
図1Aは、シリカベース50上に3つのシリコン光導波路を含むMRR 1を示す。3つのシリコン導波路は、平行なシリコン導波路23と40との間に介在する円形リング導波路30を含む。MRRは、それぞれリング導波路30と、光導波路23及び40との間にギャップ25、35を有して構成されて、リング30と導波路23及び40との間でエバネッセント結合を可能にする。このようなMRRは、特定の波長に関して共鳴するように調整され得、導波路23における光が特定の波長に関して導波路40に結合され得るようになる。このような配置はしばしば、アド/ドロップマルチプレクサーの一部として用いられる。このような例では、シリコン導波路23は、伝送導波路としての役割を果たし、シリコン導波路40は、そこへMRRが調整される波長に関するドロップ導波路としての役割を果たす。方向性結合器は、所定の波長でゼロからユニティ(unity)までの任意の結合比率範囲によって設計され得る。結合比率は、波長、及び方向性結合器セクションでの導波路寸法によって変化した。いくつかのMRRsは、2x2マルチモード干渉(MMI)結合器を利用し、その場合では、ギャップ25、35がなく、マルチモードジョイントセクションが導波路23又は40によってリング導波路30に接続することが理解されるべきである。MMIベースのMRRsは、方向性結合器MRRsよりも多くの損失及び後方反射を有し得るが、MMIベースのMMRsは、より良い偏光耐性及び、より広いバンド幅という優位点を有し得る。
【0017】
このようなMRRは、リングの共鳴周波数をシフトするための一対の電極(図示されない)、及び電極を駆動するための駆動信号を受け取るための入力インターフェースを含む。MRRにおいてシフトする共鳴周波数は、電気光学効果(例えば、キャリア注入)又は熱光学効果によって提供され得る。従って、MRRsは、調整可能スイッチ及び他の光学素子において用いられ得る。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に従うMRR 10を概略的に示す。
図2Aは、MRRの等角図を概略的に示し、一方で、
図2Bは、MRRの上面図を概略的に示す。
図2Aは、シリカベース50上のポリマー光導波路20及びシリコン光導波路40を含むMRR 10を示す。デバイスは、導波路20と40との間に介在するリング光導波路30も含む。MRRは、リング導波路30と光導波路40との間にギャップ35を有して構成されて、リング30とシリコン導波路40との間で方向性結合を可能にする。しかしながら、ポリマー光導波路20とリング光導波路30との間にギャップがない。さらに、ポリマー光導波路20とリング光導波路30との間にMMI結合器の追加に関する必要性がない。むしろ、ポリマー光導波路20は、光ポリマー導波路20の第1の部分がリング導波路30の第2の部分に重なるように構成される。これは、
図3に示される断面において、より明らかであろう。このようなMRRは、特定の波長に関して共鳴するように調整され得、導波路20における光が特定の波長に関して導波路40に結合され得るようになる。このような配置は、以下で議論されることになるように、アド/ドロップマルチプレクサー又は他の光学素子の一部として用いられ得る。このような例では、ポリマー導波路20は、伝送導波路としての役割を果たし、シリコン導波路40は、そこへMRRが調整される波長に関するドロップ導波路としての役割を果たす。MRR 10の共鳴周波数シフトは、電気光学効果(例えば、キャリア注入)又は熱光学効果によって提供され得る。
【0019】
示される実施形態では、リング光導波路30は円形であるが、これは必須ではない。他のリング形状が利用され得る。1つのこのような例の形状は、スタジアム又は競馬場(一対の反対側で半円を有する矩形)である。さらに、示される実施形態は、リング導波路30と光導波路40との間の方向性結合を利用する一方で、MMI結合器が利用され得る。
【0020】
ポリマー光導波路は、シリコン光導波路よりも少ない光学損失に苦しむことを含む、いくつかの状況で有利な特性を有し、それらの使用をいくつかのタイプのPICsに関して有利にする。また、ポリマー導波路は、例えば3次元の自由形状製作を用いて、製造するのが、より容易であり得る。しかしながら、ポリマー導波路は、シリコン等の、より高い屈折率材料と比較して、より低い光モード閉じ込めを有し得る。従って、それらは、シリコン光導波路よりも大きくなる傾向にあり、それらを利用するPICsにおいて、より大きい実装面積をもたらす。さらに、ポリマー光導波路は、シリコン光導波路ほど効果的に旋回したり曲げることができない。従って、導波路コアとクラッドとの間のより低い屈折率コントラストに起因して、シリコン導波路とは対照的に、より大きな実装面積曲げ半径が、ポリマー導波路を利用するために必要とされ得る。従って、PIC内でポリマー及びシリコン光導波路の組み合わせを用いることが有利であり得る。例えば、このようなハイブリッドPICは、損失を減少させることが重要であるときにポリマー光導波路を用いることがあり、サイズ/実装面積又は曲率半径が重要であるときにシリコン光導波路を用いることがある。注目すべきは、ポリマーリング導波路がMRRを形成するために用いられ得る一方で、このようなポリマーリング導波路の曲率半径がかなり大きくなり、シリコンリング導波路をより効果的にさせることである。有利には、実施形態は、ポリマー光導波路とシリコンリング光導波路との間の効率的な結合を提供する。
【0021】
図2A及び2Bに示される実施形態では、MRR 10は、ポリマー光導波路20とリング導波路30との間に、重なりの領域38を含む。この重なり領域38では、ポリマー光導波路20の第1の部分は、リング導波路30の第2の部分に重なる。これは、
図3Aにおいて最もよく見られ得る。
【0022】
図3Aは、本発明の実施形態に従う、
図2Bの切断線3−3に沿ったMRRの断面を示す。この図では、高さは、垂直方向を指し、幅は水平方向を指す(長さは紙面に入る/出る方向である)。分かり得るように、ポリマー導波路20は、高さ及び幅の両方において、リング導波路30よりも大きい。実施形態は、この追加のサイズを使用して、リング導波路30がポリマー導波路20内に埋め込まれて(又は挿入されて)見える重なり領域38を含むことによってポリマー光導波路20とリング光導波路30との間の結合効率を改善する。注目すべきは、いくつかの実施形態において、リング導波路が、ポリマー導波路内に挿入され得ることである。他の実施形態では、PICを製造するための製造プロセスに応じて、リング導波路30は、製造の積層プロセスに起因して、ポリマー導波路20内に物理的に挿入される必要がないことがあり、ポリマー導波路がシリコン導波路にわたって堆積され得る。
【0023】
様々な実施形態が様々な材料を利用し得ることが理解されるべきである。例がポリマー伝送導波路及びシリコンリング導波路に関して与えられてきた一方で、このようなデバイスは、光導波路及びリング導波路を有するとして、より一般的に記載され得、光導波路がリング導波路の一部に重なる。実施形態は、第1の屈折率を有する光導波路、及び、第2の屈折率を有するリング光導波路によって議論され、第1の屈折率が第2の屈折率未満である。しかしながら、多くのタイプのポリマー導波路が存在するように、例は、2つのタイプの導波路間の屈折率差の範囲に関して議論されるであろう。範囲は、2つの材料に依存する。シリコン導波路とポリマー導波路との間の屈折率差の範囲のいくつかの非限定的な例は、材料に応じて、1.9から2.3であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、窒化ケイ素導波路及びポリマー導波路が用いられ得、窒化ケイ素導波路とポリマー導波路との間の屈折率差の範囲のいくつかの非限定的な例は、材料に応じて0.7から0.4であり得る。他の1つの例として、いくつかの実施形態では、ガラス導波路及びポリマー導波路が用いられ得、ガラス導波路とポリマー導波路との間の屈折率差の範囲のいくつかの非限定的な例は、0.1から0.3である。
【0024】
図3Bは、屈折率整合材料が、重なり領域60内でポリマー光導波路20とリング光導波路30との間に介在する代替実施形態を示す。示される実施形態では、結合材料は、ポリマー光導波路20とリング光導波路30との間の62で水平に介在し、また、65で垂直に介在する。いくつかの実施形態では、結合材料は、62、65のいずれか、両方、又はいずれでもない場所であり得る。屈折率整合材料は、ポリマー屈折率とシリコン屈折率のそれとの間の屈折率を有して、ポリマー光導波路20とリング光導波路30との間の結合を改善して、可能性のある後方反射を減少させる。
図4は、本発明の実施形態に従う
図3Aの例に関する例の寸法を示す。この例では、ポリマー光導波路は、高さ1.0μm、幅1.4μmである。リング導波路は、断面において、高さ220nmであり、幅500nmであり、断面の点では、ポリマー導波路内に埋め込まれたその断面幅の半分を有する。しかしながら、存在する寸法は単なる例であり、他の寸法が利用され得る。実施形態では、ポリマー光導波路は、1550nmで1.57の屈折率を有するポリマーコアSU−8、及び、1550nmで屈折率1.34を有するCytopクラッドを有する。注目すべきは、ポリマーコアのクラッドが示されないことである。いくつかの実施形態では、ポリマー光導波路のコアは、シリコン光導波路のコアに重なる。
【0025】
図5は、より小さいポリマー導波路580がリング導波路590に部分的に重なり、2つの導波路の間のマルチモード結合を達成する、代替実施形態を示す。この例では、ポリマー導波路は、リング導波路に対して同様の断面寸法を有する。このような実施形態は、重複領域、クラッド材料(図示されない)、ポリマーコア材料、及びシリコン導波路のサイズ等の要因が、同様のサイズのポリマー導波路を可能にするために用いられる場合に有用であり得る。
【0026】
他の実施形態が、カスケード式MRRsを利用し得る。
図6は、N次のMRRsが可能であり得るが、実施形態に従う、2つのリング導波路を含むMRRの例を示す。
図6は、シリコン光導波路540とポリマー光導波路520との間のシリコン光リング導波路532に隣接したシリコン光リング導波路531を示す。この例では、ポリマー光導波路520内の光信号は、リング及び導波路540を介してドロップされる波長λ
2を除いて導波路520を通過し得る。この例では、シリコン光リング導波路531は、λ
1として指定される波長の範囲で共鳴するように構成され、シリコン光リング導波路532は、λ
2として指定される波長の範囲で共鳴するように構成され、λ
2はλ
1のサブセットである。
図6はまた、単一オーダーの実施形態を含み得る、様々な実施形態において実施され得る代替特徴の結合を示す。第1に、上述したように、リング導波路は、円形である必要はなく、リング内で光がループすることが可能な他の形状が利用され得る。
図6に示される例では、シリコン光リング導波路531及びシリコン光リング導波路532は、スタジアム形状を有する。スタジアム形状は、2つの平行部分を有し、いずれの側で半円が2つの平行部分をリンクする。このような形状は、光結合が生じる、より大きな領域を可能にすることによって結合効率を増加させ得る。第2に、
図6はまた、ポリマー導波路がシリコン導波路に重なる量が変動し得ることを示す。
図4に示される例では、ポリマー導波路は、シリコン導波路の断面幅の半分に重なった。しかしながら、
図6は、ポリマー導波路520が、560でシリコン導波路531の断面幅全体に重なる例を示す。他の変形が、用いられる材料、光導波路サイズ、結合長さ、及び必要とされる結合の量等の要因に応じて、利用され得る。
【0027】
述べたように、上記の様々な実施形態に関して議論されたMRR構造は、様々なPIC構造内に集積され得る。
図7は、本発明に従う、マイクロリングベースのスイッチマトリックス等の、例のPICを示す。このような例では、共通のポリマー光導波路710は、λ
1λ
2λ
3…λ
nを含むWDM信号を運び、複数のMRRsが、個別の波長上でスイッチング機能を実行する。この例では、MRR720はλ
1をドロップし、MRR730はλ
2をドロップし、MRR740はλ
3をドロップし、MRR750はλ
nをドロップする。同様に、MRR790はλ
1をドロップし、MRR780はλ
2をドロップし、MRR770はλ
3をドロップし、MRR760はλ
nをドロップする。各MRRは、上記で議論したようなやり方で共通のポリマー光導波路710と結合するシリコンリング導波路を含む。言い換えると、共通のポリマー光導波路710は、MRRシリコンリング導波路の各々の一部に重なる。各MRRは、この例では単一波長を運ぶ、他の1つの光導波路へ各リングを結合する。例えば、MRR730は、共通のポリマー光導波路710によって重ねられる、シリコンリング導波路732を含む。MRR732は、λ
2で共鳴するように構成され、光導波路731へλ
2を効率的に結合する。光導波路731は、シリコン光導波路又は他の1つのポリマー光導波路であり得る。注目すべきは、各MRRが、ボックスとして示されて、各MRRが、リングが所望の波長で共鳴するように調整するための駆動信号を受け取るための入力及びチューナー等の、他の構成要素を含み得ることを概略的に表す。注目すべきは、各MRRが、特定の波長で共鳴するための異なる経路長を有するリング導波路を有し得、及び/又は、各々が、電気光学技術、熱光学技術又は他の方法を用いて共鳴波長を変えるように調整され得ることである。注目すべきは、いくつかの用途では、共通のポリマー光導波路710は、連続的でないことがあるが、例えばポリマーワイヤボンディングを用いて、光学的に結合された多数の導波路を有し得る。
【0028】
図8は、本発明の実施形態に従う、DWDMトランシーバーとして機能するPICの例を示す。このようなトランシーバーは、レシーバー801及びトランスミッター802を含む。レシーバー801及びトランスミッター802は、いくつかの実施形態では、別個のPICsとして実施され得る。トランシーバーは、ネットワークファイバー807からλ
1λ
2λ
3…λ
nを含むWDM信号を受け取り、且つネットワークファイバー807へλ
1λ
2λ
3…λ
nを含むWDM信号を送信し、それは、トランシーバーが、1つのファイバー上で送信し得、他の1つから受け取り得ると理解される。トランスミッター及びレシーバーの各々は、個別の波長上のアド/ドロップ機能のための複数のMRRsを含み得る。各MRRは、リングに結合された(シリコン又はポリマーであり得る)ドロップ光導波路を介して光検出器(PD)へ特定の波長をドロップするように調整され得る(図示されないチューナー及び駆動信号)。この例では、ポリマー光導波路805から、MRR820は、光導波路821を介してPD823へλ
1をドロップし、MRR830は、光導波路831を介してPD833へλ
2をドロップし、MRR840は、光導波路841を介してPD843へλ
3をドロップし、MRR850は、光導波路851を介してPD853へλ
nをドロップする。上述のように、ポリマー導波路805は、連続的なポリマー導波路であり得る、又は、例えばポリマーワイヤボンディングを介して一緒に光学的に結合されたポリマー導波路のセグメントから形成され得る。
【0029】
トランスミッター側では、各波長での光は、変調器としての役割を果たすMRRによって直接的に変調され得る。駆動信号は、変調されることになるデータストリームに応じて、シリコンリングの共鳴波長を修正することによってデータを変調する。従って、各MRRは、上記で議論されたように送信ポリマー導波路810に重なるシリコンリング導波路を含む。この例では、MRR860は、シリコンリング導波路861を含み、λ
1上の駆動ストリーム862に従ってデータを追加し、MRR870は、シリコンリング導波路871を含み、λ
2上への駆動ストリーム872に従ってデータを追加し、MRR880は、シリコンリング導波路881を含み、λ
3上への駆動ストリーム882に従ってデータを追加し、MRR890は、シリコンリング導波路891を含み、λ
n上への駆動ストリーム892に従ってデータを追加する。各MRRは、上記で議論したようなやり方で共通のポリマー光導波路810と結合するシリコンリング導波路を含む。言い換えると、共通のポリマー光導波路810は、MRRシリコンリング導波路861、871、881及び891の各々の一部に重なる。いくつかの実施形態では、各変調器及びフィルターに関するシリコンマイクロリングは、単一PICチップ上に製造され得る。ポリマー導波路は、PICチップの頂部上に製造され得る。このような共通のポリマー導波路を用いることは、各リングを相互接続するシリコン導波路を利用する同様の設計とは対照的に、挿入損失を低減し得る。上記で議論されたように、いくつかの場合では、共通のポリマー導波路は、単一構造を必要としないが、相互接続されたポリマー導波路のセクションとして製造され得る。
【0030】
PICが、1つより多いポリマー光導波路を含み得ることが理解されるべきである。
図7及び8に示される例は、追加の回路構成要素または複数の各回路部分を含むPICの一部を表し得ることが理解されるべきである。
【0031】
本開示は、特定の特徴及びその実施形態を参照して説明されてきたが、様々な修正及び組み合わせが本開示から逸脱することなくそれに対して為され得ることは明らかである。以上のように、明細書及び図面は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような開示の例示として単純に見なされるべきであり、本開示の範疇内に入る任意の及びすべての修正、変形、組み合わせ又は同等物を覆うと考えられる。