特許第6873299号(P6873299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873299粘着剤層付き偏光フィルムおよびインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873299
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光フィルムおよびインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210510BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20210510BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   G02F1/1333
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-119256(P2020-119256)
(22)【出願日】2020年7月10日
(62)【分割の表示】特願2019-509989(P2019-509989)の分割
【原出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-187365(P2020-187365A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-63990(P2017-63990)
(32)【優先日】2017年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌邦
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−528447(JP,A)
【文献】 特開2013−253202(JP,A)
【文献】 特開2009−35722(JP,A)
【文献】 特開2011−252948(JP,A)
【文献】 特開2012−247574(JP,A)
【文献】 特開2015−199942(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119664(WO,A1)
【文献】 特開2013−105154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G06F 3/041
G06F 3/044
G09F 9/30
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と偏光フィルムを有する粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムが、前記偏光フィルム、アンカー層、前記粘着剤層をこの順で有し、
前記アンカー層は導電ポリマー、並びに、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレングリコールのバインダーから選ばれる1種または2種以上を含有し、前記粘着剤層は帯電防止剤を含有し、
前記アンカー層は、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、
前記粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、
前記粘着剤層は、溶液重合により得られた(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤により形成されたものであり、
前記アンカー層と前記粘着剤層との投錨力が、10N/25mm以上であり、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルム。
(但し、前記aは、前記偏光フィルムに、前記アンカー層、前記粘着剤層がこの順に設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。)
【請求項2】
前記帯電防止剤が、無機カチオンを有するイオン性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止剤が、有機カチオンを有するイオン性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項4】
前記イオン性化合物が、フッ素含有アニオンを含有することを特徴とする請求項2または3に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項5】
前記バインダー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項6】
電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層、前記液晶層を両面で挟持する第1透明基板および第2透明基板、並びに、前記第1透明基板と第2透明基板との間にタッチセンサーおよびタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有するインセル型液晶セルを有するインセル型液晶パネルに用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、導電層を介することなく、前記インセル型液晶セルの視認側に配置され、
前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層は、前記粘着剤層付き偏光フィルムの偏光フィルムと前記インセル型液晶セルとの間に配置され、
前記粘着剤層付偏光フィルムが、前記偏光フィルム、アンカー層、前記粘着剤層をこの順で有し、
前記アンカー層は導電ポリマー、並びに、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレングリコールのバインダーから選ばれる1種または2種以上を含有し、前記粘着剤層は帯電防止剤を含有し、
前記アンカー層は、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、
前記粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、
前記粘着剤層は、溶液重合により得られた(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤により形成されたものであり、
前記アンカー層と前記粘着剤層との投錨力が、10N/25mm以上であり、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とするインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム。
(但し、前記aは、前記偏光フィルムに、前記アンカー層、前記粘着剤層がこの順に設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。)
【請求項7】
前記帯電防止剤が、無機カチオンを有するイオン性化合物であることを特徴とする請求項6に記載のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項8】
前記帯電防止剤が、有機カチオンを有するイオン性化合物であることを特徴とする請求項6に記載のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項9】
前記イオン性化合物が、フッ素含有アニオンを含有することを特徴とする請求項7または8に記載のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項10】
前記バインダー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂およびアクリル系樹脂から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付き偏光フィルム、インセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム、液晶セル内部にタッチセンシング機能が取り込まれているインセル型液晶セルおよび前記インセル型液晶セルの視認側に粘着剤層付偏光フィルムを有するインセル型液晶パネルに関する。さらには前記液晶パネルを用いた液晶表示装置に関する。本発明のインセル型液晶パネルを用いたタッチセンシング機能付の液晶表示装置は、モバイル機器等の各種の入力表示装置として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、一般的にはその画像形成方式から液晶セルの両側に偏光フィルムが粘着剤層を介して貼り合されている。また、液晶表示装置の表示画面にタッチパネルを搭載するものが実用化されている。タッチパネルとしては、静電容量式、抵抗膜式、光学方式、超音波方式あるいは電磁誘導式等の種々の方式があるが静電容量式が多く採用されるようになってきている。近年では、タッチセンサー部として静電容量センサーを内蔵した、タッチセンシング機能付液晶表示装置が用いられている。
【0003】
一方、液晶表示装置の製造時、前記粘着剤層付偏光フィルムを液晶セルに貼り付ける際には、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層から離型フィルムを剥離するが、前記離型フィルムの剥離により静電気が発生する。また、液晶セルに貼り付けた偏光フィルムの表面保護フィルムを剥離する際や、カバーウィンドウの表面保護フィルムを剥離する際にも静電気が発生する。このようにして発生した静電気は、液晶表示装置内部の液晶層の配向に影響を与え、不良を招くようになる。静電気の発生は、例えば、偏光フィルムの外面に帯電防止層を形成することにより抑えることができる。
【0004】
一方、タッチセンシング機能付液晶表示装置における静電容量センサーは、その表面に使用者の指が接近したときに、透明電極パターンと指とが形成する微弱な静電容量を検出するものである。上記透明電極パターンと使用者の指との間に、帯電防止層のような導電層を有する場合には、駆動電極とセンサー電極の間の電界が乱れ、センサー電極容量が不安定化してタッチパネル感度が低下して、誤作動の原因となる。タッチセンシング機能付液晶表示装置では、静電気発生を抑制するとともに、静電容量センサーの誤作動を抑えることが求められる。例えば、前記課題に対して、タッチセンシング機能付液晶表示装置において、表示不良や誤作動の発生を低減するため、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1011Ω/□の帯電防止層を有する偏光フィルムを液晶層の視認側に配置することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−105154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の帯電防止層を有する偏光フィルムによれば、ある程度の静電気発生を抑制することができる。しかし、特許文献1では、帯電防止層の配置箇所が、静電気により表示不良を起こす液晶セルの位置よりも離れているため、粘着剤層に帯電防止機能を付与する場合に比べて効果的でない。また、インセル型液晶セルでは、特許文献1に記載の液晶セルの透明基板上にセンサー電極を有する、所謂オンセル型液晶セルに比べて帯電しやすいことがわかった。また、インセル型液晶セルを用いたタッチセンシング機能付液晶表示装置では、偏光フィルムの側面に導通構造を設けることにより、側面からの導通性を付与することができるが、帯電防止層が薄い場合には、側面の導通構造との接触面積が小さいため、十分な導電性が得られず導通不良が起こることが分かった。一方、帯電防止層が厚くなると、タッチセンサー感度が低下することが分かった。
【0007】
一方、帯電防止機能が付与された粘着剤層は、前記偏光フィルムに設けた帯電防止層よりも静電気発生を抑制して、静電気ムラを防止するうえでは有効である。しかし、粘着剤層の帯電防止機能を重要視して、粘着剤層の導電機能を高めるとタッチセンサー感度が低下することが分かった。特に、インセル型液晶セルを用いたタッチセンシング機能付液晶表示装置では、タッチセンサー感度が低下することが分かった。また、導電機能を高めるために粘着剤層に配合された帯電防止剤は、加湿環境下(加湿信頼性試験後)において、偏光フィルムとの界面に偏析したり、粘着剤層が白濁する問題が生じることが分かった。
【0008】
本発明は、粘着剤層付き偏光フィルム、インセル型液晶セルおよびその視認側に適用されるインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム、前記粘着剤層付き偏光フィルムを有するインセル型液晶パネルであって、アンカー層と粘着剤層間の密着性に優れ、安定した帯電防止機能とタッチセンサー感度を満足することができる、インセル型液晶パネルを提供することを目的とする。また、本発明は前記インセル型液晶パネルを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤層付き偏光フィルム、インセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルム、及び、インセル型液晶パネルにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、粘着剤層と偏光フィルムを有する粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムが、前記偏光フィルム、アンカー層、前記粘着剤層をこの順で有し、
前記アンカー層は導電ポリマーを含有し、前記粘着剤層は帯電防止剤を含有し、
前記アンカー層は、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、
前記粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする。
但し、前記aは、前記偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。
【0011】
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、前記帯電防止剤が、無機カチオンを有するイオン性化合物であることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、前記イオン性化合物が、フッ素含有アニオンを含有することが好ましい。
【0013】
また、本発明のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルムは、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層、前記液晶層を両面で挟持する第1透明基板および第2透明基板、並びに、前記第1透明基板と第2透明基板との間にタッチセンサーおよびタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有するインセル型液晶セルを有するインセル型液晶パネルに用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、前記インセル型液晶セルの視認側に配置され、
前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層は、前記粘着剤層付き偏光フィルムの偏光フィルムと前記インセル型液晶セルとの間に配置され、
前記粘着剤層付偏光フィルムが、前記偏光フィルム、アンカー層、前記粘着剤層をこの順で有し、
前記アンカー層は導電ポリマーを含有し、前記粘着剤層は帯電防止剤を含有し、
前記アンカー層は、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、
前記粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、かつ、
前記粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする。
但し、前記aは、前記偏光フィルムに前記粘着剤層を設けられ、かつ、前記粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。
【0014】
本発明のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルムは、前記帯電防止剤が、無機カチオンを有するイオン性化合物であることが好ましい。
【0015】
本発明のインセル型液晶パネル用粘着剤層付き偏光フィルムは、前記イオン性化合物が、フッ素含有アニオンを含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明のインセル型液晶パネルは、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層、前記液晶層を両面で挟持する第1透明基板および第2透明基板、並びに、前記第1透明基板と第2透明基板との間にタッチセンサーおよびタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有するインセル型液晶セルと、
前記インセル型液晶セルの視認側の第1透明基板の側に、第1粘着剤層を介して配置された粘着剤層付偏光フィルムを有するインセル型液晶パネルにおいて、
前記粘着剤層付偏光フィルムが、前記第1偏光フィルム、アンカー層、前記第1粘着剤層をこの順で有し、
前記アンカー層は導電ポリマーを含有し、前記第1粘着剤層は帯電防止剤を含有し、
前記アンカー層は、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、
前記第1粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、かつ、
前記第1粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする。
但し、前記aは、前記第1偏光フィルムに前記第1粘着剤層を設けられ、かつ、前記第1粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの第1偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の第1粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き第1偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の第1粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。
【0017】
本発明のインセル型液晶パネルは、前記帯電防止剤が無機カチオンを有するイオン性化合物であることが好ましい。
【0018】
本発明のインセル型液晶パネルは、前記イオン性化合物がフッ素含有アニオンを含有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置は、前記インセル型液晶パネルを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインセル型液晶パネルにおける視認側の粘着剤層付偏光フィルムは、アンカー層には導電性ポリマー、粘着剤層には帯電防止剤を含有しており帯電防止機能が付与されているため、インセル型液晶パネルにおいて、アンカー層と粘着剤層のそれぞれの側面で導通構造を設けた場合には導通構造と接触することができ、かつアンカー層と粘着剤層がそれぞれ所定範囲の厚さを有することで、接触面積を十分に確保することができる。そのため、アンカー層と粘着剤層のそれぞれの層の側面での導通が確保されて、導通不良による静電気ムラの発生を抑制することができる。
【0021】
また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、アンカー層と粘着剤層のそれぞれの層の表面抵抗値が所定範囲に制御し、かつ、前記(第1)粘着剤層側の加湿前後の表面抵抗値の変動比についても所定範囲になるように制御することで、タッチセンサー感度が低下することがなく、アンカー層と粘着剤層の表面抵抗値を低下させて所定の帯電防止機能を付与することができる。また、粘着剤層の表面抵抗値を所定の範囲に制御することで、帯電防止剤の使用量を抑えつつ、帯電防止性が得られ、かつ、白濁を抑制でき、有用である。そのため、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、良好な帯電防止機能を有しながら、タッチセンサー感度を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のインセル型液晶パネルの視認側に用いる粘着剤層付偏光フィルムの一例を示す断面図である。
図2】本発明のインセル型液晶パネルの一例を示す断面図である。
図3】本発明のインセル型液晶パネルの一例を示す断面図である。
図4】本発明のインセル型液晶パネルの一例を示す断面図である。
図5】本発明のインセル型液晶パネルの一例を示す断面図である。
図6】本発明のインセル型液晶パネルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<粘着剤層付偏光フィルム>
以下に本発明を、図面を参酌しながら説明する。本発明のインセル型液晶パネルの視認側に用いる粘着剤層付偏光フィルムAは、図1に示すように、第1偏光フィルム1、アンカー層3、第1粘着剤層2をこの順で有する。また、前記第1偏光フィルム1のアンカー層3を設けていない側には表面処理層4を有することができる。図1では、本発明の粘着剤層付偏光フィルムAが、表面処理層4を有する場合を例示している。前記粘着剤層2により、図2に示すインセル型液晶セルB1の視認側の透明基板41の側に配置される。なお、図1には記載していないが、本発明の粘着剤層付偏光フィルムAの第1粘着剤層2にはセパレータを設けることができ、第1偏光フィルム1には表面保護フィルムを設けることができる。
【0024】
<第1偏光フィルム>
第1偏光フィルムは、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0025】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
【0026】
また、偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば前記厚みは1〜7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため、耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0027】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。
【0028】
前記偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好適である。
【0029】
<第1粘着剤層>
本発明のインセル型液晶パネルを構成する前記第1粘着剤層は、厚さが5〜100μm、表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、前記第1粘着剤層が帯電防止剤を含有することを特徴とする。
【0030】
前記第1粘着剤層の厚さは、耐久性確保と側面の導通構造との接触面積確保の観点から5〜100μmであり、5〜50μmであるのが好ましく、さらに10〜35μmであるのが好ましい。
【0031】
また、前記第1粘着剤層の表面抵抗値は、帯電防止機能とタッチセンサー感度の観点から、1.0×1010〜1.0×1012Ω/□であり、1.0×1010〜8.0×1011Ω/□であるのが好ましく、さらに2.0×1010〜6.0×1011Ω/□であるのが好ましい。なお、第1粘着剤層の表面抵抗値を前記範囲内に調整することで、粘着剤層に使用する帯電防止剤の使用量を抑えることになり、粘着剤層中に帯電防止剤の使用量に起因する白濁やアンカー層との密着性低下を抑制でき、好ましい態様となる。
【0032】
本発明のインセル型液晶パネルは、前記第1粘着剤層側の表面抵抗値の変動比(b/a)が、5以下であることを特徴とする。但し、前記aは、前記第1偏光フィルムに前記第1粘着剤層を設けられ、かつ、前記第1粘着剤層にセパレータが設けられた状態の粘着剤層付きの第1偏光フィルムを作製した直後に前記セパレータを剥離した際の第1粘着剤層側の表面抵抗値を、前記bは、前記粘着剤層付き第1偏光フィルムを60℃×95%RHの加湿環境下に120時間投入し、さらに40℃で1時間乾燥させた後に、前記セパレータを剥離した際の第1粘着剤層側の表面抵抗値を、それぞれ示す。前記変動比(b/a)が5を超える場合、加湿環境下における粘着剤層とアンカー層から構成される層の帯電防止機能を低下させることになる。前記変動比(b/a)は5以下であり、4.5以下であることが好ましく、4以下であるのがより好ましく、さらには0.4〜3.5であるのが好ましく、0.4〜2.5であることが最も好ましい。
【0033】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおける第1粘着剤層側の表面抵抗値は、初期値(室温放置条件:23℃×65%RH)、及び、加湿後(例えば、60℃×95%RHで120時間放置後)の帯電防止機能を満足し、かつ、タッチセンサー感度を低下させて、加湿や加熱環境下での耐久性を低下させないように、2.0×10〜1.0×1011Ω/□に制御されるのが好ましい。前記表面抵抗値は、前記アンカー層および第1粘着剤層(単体)の表面抵抗値をそれぞれ制御することにより調整することができる。前記表面抵抗値は6.0×10〜8.0×1010Ω/□であるのがより好ましく、さらには8.0×10〜6.0×1010Ω/□であるのが好ましい。
【0034】
第1粘着剤層を形成する粘着剤としては、各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0035】
前記アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0036】
(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。
【0037】
また、粘着特性、耐久性、位相差の調整、屈折率の調整等の点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートを共重合モノマーとして用いることができる。
【0038】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0039】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドやN−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、N−アクリロイルモルホリン等のスクシンイミド系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドやN−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミドやN−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー、等も改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0040】
さらに改質モノマー(共重合モノマー)として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー等も使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマー(共重合モノマー)として、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0043】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、その割合は、60〜90重量%が好ましく、65〜88重量%がより好ましく、さらには70〜85重量%が好ましい。アルキル(メタ)アクリレートを主成分として使用することにより、粘着特性に優れ、好ましい。
【0044】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、前記共重合モノマーの全構成モノマー中の重量比率は、10〜40重量%が好ましく、12〜35重量%がより好ましく、さらには15〜30重量%であるのが好ましい。
【0045】
これら共重合モノマーの中でも、接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーは併用することができる。これら共重合モノマーは、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等は分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。ヒドロキシル基含有モノマーはリワーク性の点で好ましく、またカルボキシル基含有モノマーは耐久性とリワーク性を両立させる点で好ましい。
【0046】
前記共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その割合は、0.01〜15重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましく、さらには0.1〜5重量%が好ましい。また、前記共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含有する場合、その割合は、0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましく、さらには0.2〜1重量%が好ましい。
【0047】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が100万〜250万であることが好ましい。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は120万〜200万であるのが好ましい。重量平均分子量が100万以上であると、耐熱性の点で好ましい。また、重量平均分子量が250万よりも大きくなると粘着剤が硬くなりやすい傾向があり、剥がれが発生しやすくなる。また、分子量分布を示す、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、1.8〜10であるのが好ましく、さらには1.8〜7であり、さらには1.8〜5であるのが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が10を超える場合には耐久性の点で好ましくない。なお、重量平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求められる。
【0048】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0049】
<帯電防止剤>
第1粘着剤層の形成に用いられる帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、イオン性界面活性剤、導電性ポリマー、導電性微粒子等の帯電防止性を付与できる材料が挙げられる。これら中でも、ベースポリマーとの相溶性、粘着剤層の透明性の点から、イオン性化合物が好ましい。
【0050】
イオン性界面活性剤としては、カチオン系(例えば、4級アンモニウム塩型、ホスホニウム塩型、スルホニウム塩型等)、アニオン系(カルボン酸型、スルホネート型、サルフェート型、ホスフェート型、ホスファイト型等)、両性イオン系(スルホベタイン型、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリウムベタイン型等)またはノニオン系(多価アルコール誘導体、β−シクロデキストリン包接化合物、ソルビタン脂肪酸モノエステル・ジエステル、ポリアルキレンオキシド誘導体、アミンオキシド等)の各種界面活性剤が挙げられる。
【0051】
導電性ポリマーとしては、ポリアニリン系、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリキノキサリン系等のポリマーがあげられるが、これらのなかでも、ポリアニリン、ポリチオフェン等が好ましく使用される。特にポリチオフェンが好ましい。
【0052】
導電性微粒子としては、酸化スズ系、酸化アンチモン系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系等の金属酸化物があげられる。これらのなかでも酸化スズ系が好ましい。酸化スズ系のものとしては、たとえば、酸化スズの他、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化スズ、タングステンドープ酸化スズ、酸化チタン−酸化セリウム−酸化スズの複合体、酸化チタン−酸化スズの複合体等があげられる。微粒子の平均粒径は1〜100nm程度、好ましくは2〜50nmである。
【0053】
さらに前記以外の帯電防止剤として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然グラファイト、人造グラファイト、チタンブラックや、カチオン型(4級アンモニウム塩等)、両性イオン型(ベタイン化合物等)、アニオン型(スルホン酸塩等)またはノニオン型(グリセリン等)のイオン導電性基を有する単量体の単独重合体若しくは前記単量体と他の単量体との共重合体、4級アンモニウム塩基を有するアクリレートまたはメタクリレート由来の部位を有する重合体等のイオン導電性を有する重合体;ポリエチレンメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをアクリル系樹脂等にアロイ化させたタイプの永久帯電防止剤を例示できる。
【0054】
また、イオン性化合物としては、無機カチオンアニオン塩、及び/または、有機カチオンアニオン塩を好ましく用いることができ、特に無機カチオンアニオン塩を用いることが好ましい態様である。無機カチオンを含むイオン性化合物(無機カチオンアニオン塩)は、有機カチオンアニオン塩と比較して、使用した場合に、アンカー層と粘着剤層間の密着性(投錨力)の低下が抑制でき、より好ましい。なお、本発明でいう、「無機カチオンアニオン塩」とは、一般的には、アルカリ金属カチオンとアニオンから形成されるアルカリ金属塩を示し、アルカリ金属塩は、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。また、本発明でいう、「有機カチオンアニオン塩」とは、有機塩であって、そのカチオン部が有機物で構成されているものを示し、アニオン部は有機物であっても良いし、無機物であっても良い。「有機カチオンアニオン塩」は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。また、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、フッ素含有アニオンを使用するものが、帯電防止機能の点から好ましい。
【0055】
<アルカリ金属塩>
アルカリ金属塩のカチオン部を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0056】
アルカリ金属塩のアニオン部は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン部としては、例えば、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)NS(CFSO、PF、CO2−、や下記一般式(1)乃至(4)、
(1):(C2n+1SO (但し、nは1〜10の整数)、
(2):CF(C2mSO (但し、mは1〜10の整数)、
(3):S(CFSO (但し、lは1〜10の整数)、
(4):(C2p+1SO)N(C2q+1SO)、(但し、p、qは1〜10の整数)、及び、(FSOで表わされるもの等が用いられる。特に、フッ素原子を含むアニオン部は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。無機塩を構成するアニオン部としては、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、AsF、SbF、NbF、TaF、(CN)、等が用いられる。フッ素原子を含むアニオンの中でも、フッ素含有イミドアニオンが好ましく、その中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンであることが好ましい。特に、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンは、比較的少量添加で優れた帯電防止性を付与でき、粘着特性を維持して加湿や加熱環境下での耐久性に有利となり、好ましい。
【0057】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC、KOS(CFSOK、LiOS(CFSOK等が挙げられ、これらのうちLiCFSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON、Li(CFSOC等が好ましく、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CSON等のフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、特にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムが好ましい。
【0058】
また、アルカリ金属の無機塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
【0059】
<有機カチオンアニオン塩>
本発明で用いられる有機カチオンアニオン塩は、カチオン成分とアニオン成分とから構成されており、前記カチオン成分は有機物からなるものである。カチオン成分として、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0060】
アニオン成分としては、例えば、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、(CN)、CSO、CCOO、((CFSO)(CFCO)NS(CFSO、や下記一般式(1)乃至(4)、
(1):(C2n+1SO (但し、nは1〜10の整数)、
(2):CF(C2mSO (但し、mは1〜10の整数)、
(3):S(CFSO (但し、lは1〜10の整数)、
(4):(C2p+1SO)N(C2q+1SO)、(但し、p、qは1〜10の整数)、及び、(FSOで表わされるもの等が用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン(フッ素含有アニオン)は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。フッ素原子を含むアニオンの中でも、フッ素含有イミドアニオンが好ましく、その中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンであることが好ましい。特に、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンは、比較的少量添加で優れた帯電防止性を付与でき、粘着特性を維持して加湿や加熱環境下での耐久性に有利となり、好ましい。
【0061】
また、イオン性化合物としては、前記無機カチオンアニオン塩(アルカリ金属塩)、有機カチオンアニオン塩の他に、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩が挙げられる。これらイオン性化合物は単独でまたは複数を併用することができる。
【0062】
前記粘着剤、帯電防止剤の使用量は、それらの種類にもよるが、得られる第1粘着剤層の表面抵抗値が1.0×1010〜1.0×1012Ω/□になるように制御される。例えば、粘着剤のベースポリマー(例えば、(メタ)アクリル系ポリマー)100重量部に対して、帯電防止剤(例えば、イオン性化合物の場合)0.05〜8重量部の範囲で用いるが好ましい。帯電防止剤を前記範囲内で用いることは、帯電防止性能の向上させるうえで好ましい。一方、8重量部を超えると、粘着剤層や前記粘着剤層を含むインセル型液晶パネルを加湿条件下の曝した場合、帯電防止剤の析出・偏析や粘着剤層が白濁する問題が生じる恐れがあり、好ましくない。また、アンカー層と粘着剤層間の密着性(投錨力)が低下する恐れもあり、加湿や加熱環境下で発泡・剥がれなどが生じ、耐久性が十分ではなくなる場合があり、好ましくない。さらには、帯電防止剤は、0.1重量部以上が好ましく、さらには0.2重量部以上であるのが好ましい。耐久性を満足させる上では、6重量部以下で用いるのが好ましく、さらには4重量部以下で用いるのが好ましい。
【0063】
また、第1粘着剤層を形成する粘着剤組成物には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有することができる。ベースポリマーとして、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを用いる場合には、架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0064】
架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、さらには0.01〜3重量部が好ましく、さらには0.02〜2重量部が好ましく、さらには0.03〜1重量部が好ましい。
【0065】
また、第1粘着剤層を形成する粘着剤組成物には、シランカップリング剤、その他の添加剤を含有することができる。例えば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。これら添加剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下、さらには3重量部以下、さらには1重量部以下の範囲で用いるのが好ましい。
【0066】
<アンカー層>
本発明のインセル型液晶パネルを構成する前記アンカー層は、導電ポリマーを含有し、厚さが0.01〜0.5μm、表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□であることを特徴とする。
【0067】
前記アンカー層の厚さは、表面抵抗値の安定性及び粘着剤層との密着性、導通構造との接触面積確保による帯電防止機能の安定性の観点から0.01〜0.5μmであり、0.01〜0.4μmであるのが好ましく、さらに0.02〜0.3μmであるのが好ましい。
【0068】
また、前記アンカー層の表面抵抗値は、帯電防止機能とタッチセンサー感度の観点から、1.0×10〜1.0×1010Ω/□であり、1.0×10〜8.0×10Ω/□であるのが好ましく、さらに2.0×10〜6.0×10Ω/□であるのが好ましい。特に、前記アンカー層が導電性(帯電防止性)を有することで、粘着剤層単独で帯電防止性を付与する場合に比べて、帯電防止機能が優れ、前記粘着剤層に使用する帯電防止剤の使用量を少量に抑えることも可能となり、帯電防止剤の析出・偏析や加湿環境下での白濁等の外観の不具合や、耐久性の観点で好ましい態様となる。また、インセル型液晶パネルを構成する粘着剤層付き第1偏光フィルムの側面に導通構造を設ける場合に、アンカー層が導電性を有することで、粘着剤層単独で帯電防止性を付与する場合に比べて、帯電防止層(導電層)として、導通構造との接触面積を確保でき、帯電防止機能が優れるため好ましい。
【0069】
前記導電性ポリマーは、光学特性、外観、帯電防止効果および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から好ましく使用される。特に、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーが好ましく使用される。導電性ポリマーは有機溶剤可溶性、水溶性、水分散性のものを適宜使用可能だが、水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーが好ましく使用される。水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーは帯電防止層を形成する際の塗布液を水溶液または水分散液として調製でき、前記塗布液は非水系の有機溶剤を用いる必要がなく、前記有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑えることができるためである。なお、水溶液または水分散液は、水のほかに水系の溶媒を含有できる。たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類があげられる。
【0070】
また、前記ポリアニリン、ポリチオフェン等の水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーは、分子中に親水性官能基を有することが好ましい。親水性官能基としては、たとえばスルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、四級アンモニウム塩基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、またはそれらの塩等があげられる。分子内に親水性官能基を有することにより水に溶けやすくなったり、水に微粒子状で分散しやすくなり、前記水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーを容易に調製することができる。なお、ポリチオフェン系ポリマーを用いる際は、通常、ポリスチレンスルホン酸を併用する。
【0071】
水溶性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリアニリンスルホン酸(三菱レーヨン社製、ポリスチレン換算による重量平均分子量150000)等があげられる。水分散性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリチオフェン系導電性ポリマー(ナガセケムテック社製、商品名:デナトロンシリーズ)等があげられる。
【0072】
また、アンカー層の形成材料としては、前記導電性ポリマーとともに、導電性ポリマーの皮膜形成性、光学フィルムへの密着性の向上等を目的に、バインダー成分を添加することもできる。導電性ポリマーが水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーの水系材料の場合には、水溶性もしくは水分散性のバインダー成分を用いる。バインダーの例としては、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等があげられる。特にポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらバインダーは1種または2種以上を適宜その用途に合わせて用いることができる。
【0073】
導電性ポリマー、バインダーの使用量は、それらの種類にもよるが、得られるアンカー層の表面抵抗値が1.0×10〜1.0×1010Ω/□になるように制御する。
【0074】
<表面処理層>
表面処理層は、第1偏光フィルムのアンカー層を設けない側に設けることができる。表面処理層は、第1偏光フィルムに用いられる透明保護フィルムに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。前記表面処理層としては、ハードコート層、防眩処理層、反射防止層、スティッキング防止層などを設けることができる。
【0075】
前記表面処理層としては、ハードコート層であることが好ましい。ハードコート層の形成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱または放射線により硬化する材料を用いることができる。前記材料としては、熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の放射線硬化性樹脂があげられる。これらのなかでも、紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よく硬化樹脂層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。これら硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系、メラミン系等の各種のものがあげられ、これらのモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。加工速度の早さ、基材への熱のダメージの少なさから、特に放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂が好ましい。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも前記官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、光重合開始剤が配合されている。
【0076】
また、前記表面処理層としては、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。その他、表面処理層としては、スティッキング防止層等が挙げられる。
【0077】
前記表面処理層には、帯電防止剤を含有させることにより導電性を付与することができる。帯電防止剤としては前記例示のものを用いることができる。
【0078】
<その他の層>
本発明の粘着剤層付偏光フィルムには、前記の各層の他に、第1偏光フィルムのアンカー層を設ける側の表面に、易接着層を設けたり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施したりすることができる。
【0079】
<インセル型液晶セル、及び、インセル型液晶パネル>
以下に、インセル型液晶セルB、及び、インセル型液晶パネルCを説明する。
【0080】
(インセル型液晶セルB)
図2乃至図6に示すように、インセル型液晶セルBは、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層20、前記液晶層20を両面で挟持する第1透明基板41および第2透明基板42を有する。また前記第1透明基板41と第2透明基板42との間にタッチセンサーおよびタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有する。
【0081】
前記タッチセンシング電極部は、図2図3図6に示すように、タッチセンサー電極31およびタッチ駆動電極32により形成することができる。ここで言うタッチセンサー電極とは、タッチ検出(受信)電極のことを指す。前記タッチセンサー電極31およびタッチ駆動電極32は、それぞれに独立して各種パターンにより形成することができる。例えば、インセル型液晶セルBを平面とする場合に、それぞれX軸方向、Y軸方向に独立して設けられた形式により、直角に交差するようなパターンで配置することができる。また、図2図3図6では、前記タッチセンサー電極31は、前記タッチ駆動電極32よりも前記第1透明基板41の側(視認側)に配置されているが、前記とは逆に、前記タッチ駆動電極32を、前記タッチセンサー電極31よりも前記第1透明基板41の側(視認側)に配置することもできる。
【0082】
一方、前記タッチセンシング電極部は、図4図5に示すように、タッチセンサー電極およびタッチ駆動電極を一体化形成した電極33を用いることができる。
【0083】
また、前記タッチセンシング電極部は、前記液晶層20と前記第1透明基板41または第2透明基板42の間に配置することができる。図2図4は、前記タッチセンシング電極部が、前記液晶層20と前記第1透明基板41の間(前記液晶層20よりも視認側)に配置されている場合である。図3図5は、前記タッチセンシング電極部が、前記液晶層20と前記第2透明基板42の間(前記液晶層20よりもバックライト側)に配置されている場合である。
【0084】
また、前記タッチセンシング電極部は、図6に示すように、前記液晶層20と第1透明基板41との間にはタッチセンサー電極31を有し、前記液晶層20と第2透明基板42との間にはタッチ駆動電極32を有することができる。
【0085】
なお、前記タッチセンシング電極部における駆動電極(前記タッチ駆動電極32、タッチセンサー電極およびタッチ駆動電極を一体化形成した電極33)は、液晶層20を制御する共通電極を兼ねて用いることができる。
【0086】
インセル型液晶セルBに用いられる液晶層20としては、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層が用いられる。液晶層20としては、例えばIPS方式の液晶層が好適に用いられる。その他、液晶層20としては、例えばTN型やSTN型、π型、VA型等の液晶層を任意なタイプのものを用いることができる。前記液晶層20の厚さは、例えば1.5μm〜4μm程度である。
【0087】
上記のように、インセル型液晶セルBは、液晶セル内にタッチセンサーおよびタッチ駆動の機能に係るタッチセンシング電極部を有し、液晶セルの外部にはタッチセンサー電極を有していない。即ち、インセル型液晶セルBの第1透明基板41よりも視認側(インセル型液晶パネルCの第1粘着剤層2より液晶セル側)には導電層(表面抵抗値は1×1013Ω/□以下)は設けられていていない。なお、図2乃至図6に記載のインセル型液晶パネルCでは、各構成の順序を示しているが、インセル型液晶パネルCには適宜に他の構成を有することができる。液晶セル上(第1透明基板41)にはカラーフィルター基板を設けることができる。
【0088】
前記透明基板を形成する材料は、例えば、ガラス又はポリマーフィルムが挙げられる。前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート等が挙げられる。前記透明基板がガラスにより形成される場合、その厚みは、例えば0.1mm〜1mm程度である。前記透明基板がポリマーフィルムにより形成される場合、その厚みは、例えば10μm〜200μm程度である。上記透明基板は、その表面に易接着層やハードコート層を有することができる。
【0089】
タッチセンシング電極部を形成する、タッチセンサー電極31(静電容量センサー)、タッチ駆動電極32、またはタッチセンサー電極およびタッチ駆動電極を一体化形成した電極33は、透明導電層として形成される。前記透明導電層の構成材料としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、マグネシウム、タングステン等の金属およびこれら金属の合金等が挙げられる。また、前記透明導電層の構成材料としては、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、ジルコニウム、カドミウムの金属酸化物が挙げられ、具体的には酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムおよびこれらの混合物等からなる金属酸化物が挙げられる。その他、ヨウ化銅等からなる他の金属化合物等が用いられる。前記金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子の酸化物を含んでいてもよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0090】
前記タッチセンシング電極部に係る電極(タッチセンサー電極31、タッチ駆動電極32、タッチセンサー電極およびタッチ駆動電極を一体化形成した電極33)は、通常は、第1透明基板41および/または第2透明基板42の内側(インセル型液晶セルB内の液晶層20側)に常法により透明電極パターンとして形成することができる。上記透明電極パターンは、通常、透明基板の端部に形成された引き回し線(不図示)に電気的に接続され、上記引き回し線は、コントローラIC(不図示)と接続される。透明電極パターンの形状は、櫛形状の他に、ストライプ形状やひし形形状等、用途に応じて任意の形状を採用することができる。透明電極パターンの高さは、例えば10nm〜100nmであり、幅は0.1mm〜5mmである。
【0091】
(インセル型液晶パネルC)
本発明のインセル型液晶パネルCは、図2乃至6に示すように、インセル型液晶セルBの視認側に粘着剤層付偏光フィルムAを有し、その反対側に第2偏光フィルム11を有することができる。前記粘着剤層付偏光フィルムAは前記インセル型液晶セルBの第1透明基板41の側に、導電層を介することなく前記第1粘着剤層2を介して配置されている。一方、前記インセル型液晶セルBの第2透明基板42の側には、第2偏光フィルム11が第2粘着剤層12を介して配置されている。前記粘着剤層付偏光フィルムAにおける第1偏光フィルム1、第2偏光フィルム11は、液晶層20の両側で、それぞれの偏光子の透過軸(または吸収軸)が直交するように配置される。
【0092】
第2偏光フィルム11としては、第1偏光フィルム1で説明してものを用いることができる。第2偏光フィルム11は第1偏光フィルム1と同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0093】
第2粘着剤層12の形成には、第1粘着剤層2で説明した粘着剤を用いることができる。第2粘着剤層12の形成に用いる粘着剤としては、第1粘着剤層2と同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。第2粘着剤層12の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0094】
また、インセル型液晶パネルCにおいて、前記粘着剤層付偏光フィルムAの前記アンカー層3および第1粘着剤層2の側面には、導通構造50を設けることができる。導通構造50は前記アンカー層3および第1粘着剤層2の側面の全部に設けられていてもよく、一部に設けられていてもよい。前記導通構造を一部に設ける場合には、側面での導通を確保するため、前記導通構造は前記側面の面積の1面積%以上、好ましくは3面積%以上の割合で設けられているのが好ましい。なお、上記の他に、図2に示すように、第1偏光フィルム1の側面に導通材料51を設けることができる。
【0095】
前記導通構造50により、前記アンカー層3および第1粘着剤層2の側面から、他の好適な箇所に電位を接続することによって、静電気発生を抑制することができる。導通構造50、51を形成する材料としては、例えば銀、金または他の金属ペースト等の導電性ペーストが挙げられ、その他、導電性接着剤、任意の他の好適な導電材料を用いることができる。導通構造50は、前記アンカー層3および第1粘着剤層2の側面から伸びる線形状で形成することもできる。導通構造51についても同様の線形状で形成することができる。
【0096】
その他、液晶層20の視認側に配置される第1偏光フィルム1、液晶層20の視認側の反対側に配置される第2偏光フィルム11は、それぞれの配置箇所の適性に応じて、他の光学フィルムを積層して用いることができる。前記他の光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差フィルム(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは1層または2層以上用いることができる。
【0097】
(液晶表示装置)
本発明のインセル型液晶パネルを用いた液晶表示装置(タッチセンシング機能内蔵液晶表示装置は)、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたもの等の液晶表示装置を形成する部材を適宜に用いることができる。
【実施例】
【0098】
以下に、製造例、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下の「初期値」(室温放置条件)とは、23℃×65%RHで放置した状態の値であり、「加湿後」とは、60℃×95%RHの加湿環境下で120時間投入し、更に、40℃で1時間乾燥させた後に測定した値を示す。
【0099】
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。分子量分布(Mw/Mn)についても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0100】
(偏光フィルムの作成)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、けん化処理した厚さ25μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを、もう一方の面に、コロナ処理した厚さ13μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを、それぞれ紫外線硬化型アクリル系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作製した。
【0101】
上記偏光フィルムのアンカー層形成面側(シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム面側)に易接着処理としてコロナ処理(0.1kw、3m/min、300mm幅)を実施した。
【0102】
(アンカー層の形成材の調製)
固形分で、ウレタン系ポリマーを30〜90重量%、およびチオフェン系ポリマーを10〜50重量%含む溶液(商品名:デナトロンP−580W、ナガセケムテックス(株)製)8.6部、オキサゾリン基含有アクリルポリマーを10〜70重量%、およびポリオキシエチレン基含有メタクリレートを10〜70重量%含む溶液(商品名:エポクロスWS−700、(株)日本触媒製)1部、及び、水90.4部を混合し、固形分濃度が0.5重量%のアンカー層形成用塗布液を調製した。
【0103】
(アンカー層の形成)
前記アンカー層形成用塗布液を上記偏光フィルムの片面(コロナ処理面側)に、乾燥後の厚みが表1に示す厚さになるように塗布し、80℃で2分間乾燥してアンカー層を形成した。
【0104】
(アクリル系ポリマー1の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)73.3部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)21部、N−ビニルピロリドン(NVP)5部、アクリル酸(AA)0.3部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)0.4部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)160万、Mw/Mn=3.8のアクリル系ポリマー1の溶液を調製した。
【0105】
(アクリル系ポリマー2の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)77部、フェノキシエチルアクリレート(PEA)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)170万、Mw/Mn=3.4のアクリル系ポリマー2の溶液を調製した。
【0106】
(粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、表1に示す使用量(固形分、有効成分)で、イオン性化合物を配合し、さらにイソシアネート架橋剤(三井化学社製、タケネートD160N、トリメチロールプロパンヘキサメチレンジイソシアネート)0.1部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、ナイパーBMT)0.3部およびγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403)0.2部を配合して、各実施例、及び、比較例で使用するアクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0107】
表1中に記載のイオン性化合物の略語は、以下のとおりである。
Li−TFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、三菱化学マテリアル社製、アルカリ金属塩
TBMA−TFSI:トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、三菱マテリアル社製、イオン液体(有機カチオンアニオン塩)
EMI−FSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、第一工業製薬社製、イオン液体(有機カチオンアニオン塩)
【0108】
(粘着剤層の形成)
次いで、上記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが表1に示す厚さになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。前記粘着剤層は、アンカー層を形成された偏光フィルムに転写した。
【0109】
<実施例1〜6、比較例1〜5、及び、参考例1>
上記で得られた偏光フィルムの片面(コロナ処理面側)に、表1に示す組み合わせにより、アンカー層と粘着剤層を順次に形成して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0110】
なお、比較例6では、粘着剤組成物の調製に、イオン性化合物を配合しなかった。
【0111】
上記実施例および比較例で得られた、アンカー層、粘着剤層、及び、粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
【0112】
<投錨力(密着性)>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを25mm幅×50mm長さに切断した。これの粘着剤層面と50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム表面にインジウム−酸化錫を蒸着ざせた蒸着フィルムの蒸着面とが接するように貼り合わせた。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部を手で剥離し、粘着剤層がポリエチレンテレフタレートフィルム側に付着しているのを確認してから、引張試験機(島津製作所社製,オートグラフAG−1)を用いて、180°剥離、引張速度300mm/minにて室温雰囲気下(25℃)にて、偏光フィルムと粘着剤層、もしくは、アンカー層と粘着剤層との投錨力(密着性)(N/25mm)を測定した。
【0113】
前記投錨力としては、好ましくは、10N/25mm以上であり、より好ましくは、15N/25mm以上であり、更に好ましくは18N/25mm以上である。投錨力が10N/25mm未満であると、密着性が弱く、粘着剤層付き偏光フィルムの取扱い時に端部で糊欠けや糊汚れが生じたり、耐久性で剥れが生じたり、液晶表示装置を落下させた際に剥離したりする不具合等が生じ、問題となる。
【0114】
<表面抵抗値(Ω/□):導電性>
(i)アンカー層の表面抵抗値は、粘着剤層を形成する前のアンカー層付の偏光フィルムのアンカー層側表面について測定した(表1参照)。
(ii)粘着剤層の表面抵抗値は、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層表面について測定した(表1参照)。
(iii)粘着剤層側の表面抵抗値は、得られた粘着剤層付偏光フィルムからセパレータフィルムを剥がした後、粘着剤層表面の表面抵抗値を測定した(表2参照)。
測定は、三菱化学アナリテック社製MCP−HT450を用いて行った。(i)は印加電圧10Vで10秒間測定した後の値であり、(ii)、(iii)は印加電圧250Vで10秒間測定した後の値である。
なお、表2の変動比(b/a)は、「初期値」の表面抵抗値(a)と、「加湿後」の表面抵抗値(b)から算出された値(少数点第2位の四捨五入値)である。
また、帯電防止機能の低下やタッチセンサー感度の低下が生じるおそれが少ない指標として、変動比の小さな値が好ましことを下記基準で評価した。なお、実用上問題となる評価結果は、×である。
(評価基準)
◎:変動比が0.3を超え、2以下。
〇:変動比が0.1を超え、0.3以下、または、2を超え、5以下。
×:変動比が0.1以下、または、5を超える。
【0115】
<ESD試験>
実施例1〜6および比較例1〜6は、粘着剤層付偏光フィルムからセパレータフィルムを剥がした後、図3に示すように、インセル型液晶セルの視認側に貼り合わせた。
次に、貼り合せた偏光フィルムの側面部に5mm幅の銀ペーストを偏光フィルム、アンカー層、粘着剤層の各側面部を覆うように塗布し、外部からのアース電極と接続した。
参考例1は、粘着剤層付偏光フィルムからセパレータフィルムを剥がした後、オンセル型液晶セルの視認側(センサー層)に貼り合わせた。
前記液晶表示パネルをバックライト装置上にセットし、視認側の偏光フィルム面に静電気放電銃(Electrostatic discharge Gun)を印加電圧12kVにて発射して、電気により白ヌケした部分が消失するまでの時間を測定し、これを「初期値」として、下記の基準で判断した。また、「加湿後」についても、「初期値」と同様に、下記の基準で判断した。なお、実用上問題となる評価結果は、×である。
(評価基準)
◎:3秒以内。
〇:3秒を超え、10秒以内。
×:10秒を超える。
【0116】
<TSP感度>
実施例1〜6および比較例1〜6は、インセル型液晶セル内部の透明電極パターン周辺部の引き回し配線(不図示)をコントローラIC(不図示)と接続し、参考例1、は、オンセル型液晶セル視認側の透明電極パターン周辺部の引き回し配線をコントローラICと接続して、タッチセンシング機能内蔵液晶表示装置を作製した。タッチセンシング機能内蔵液晶表示装置の入力表示装置を使用している状態で、目視観察を行い、誤作動の有無を確認した。
〇:誤作動なし。
×:誤作動あり。
【0117】
<加湿白濁試験>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを50mm×50mmのサイズに切断し、セパレータフィルムを剥がした後、アルカリガラス(松浪硝子社製、厚みは1.1mm)に粘着剤層表面を貼り合せた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを白濁試験用の測定サンプルとした。前記測定用サンプルを60℃×95%RHの環境に120時間投入した後、室温下に取り出して10分後のヘイズ値を測定した。なお、ヘイズ値は、村上色彩技術研究所社製のヘイズメーターHM150を用いて測定した。
(評価基準)
○:ヘイズ10以下で、実用上問題のないレベル
×:ヘイズ10を超え、実用上問題のあるレベル
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
上記表1及び表2の評価結果より、全ての実施例において、密着性、帯電防止性、静電気ムラの抑制、タッチセンサー感度、及び、加湿白濁防止性に優れることが確認できた。一方、比較例では、アンカー層や粘着剤層の表面抵抗値が所定範囲に含まれなかったため、全ての評価について満足できるものは得られなかった。特に、比較例5においては、アンカー層の厚みが厚く、所定範囲を下回る表面抵抗値となり、タッチセンサー感度異常による誤作動が起り、また、比較例6においては、粘着剤層に帯電防止剤を配合しなかったため、静電気ムラが生じ、導通不良により、白ヌケの消失に時間を要することが確認された。なお、参考例1では、オンセル型液晶セルに対して適用した場合にタッチセンサー感度の低下が確認された。
【符号の説明】
【0121】
A 粘着剤層付偏光フィルム
B インセル型液晶セル
C インセル型液晶パネル
1、11 第1、第2偏光フィルム
2、12 第1、第2粘着剤層
3 アンカー層
4 表面処理層
20 液晶層
31 タッチセンサー電極
32 タッチ駆動電極
33 タッチ駆動電極兼センサー電極
41、42 第1、第2透明基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6