(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873320
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】エンジニアリング電流密度を高めた積層型高温超伝導線材
(51)【国際特許分類】
H01B 12/06 20060101AFI20210510BHJP
H01L 39/24 20060101ALI20210510BHJP
C01G 1/00 20060101ALI20210510BHJP
C01G 1/02 20060101ALI20210510BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
H01B12/06
H01L39/24 D
C01G1/00 S
C01G1/02
H01F6/06 140
【請求項の数】40
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-512781(P2020-512781)
(86)(22)【出願日】2018年5月11日
(65)【公表番号】特表2020-523769(P2020-523769A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】US2018032271
(87)【国際公開番号】WO2018231396
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年12月18日
(31)【優先権主張番号】15/593,835
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519400139
【氏名又は名称】アメリカン スーパーコンダクター コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルピック、マーティン ダブリュー.
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/081097(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/151233(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/06
C01G 1/00
C01G 1/02
H01F 6/06
H01L 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型超伝導体線材であって、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する第1の高温超伝導体層と、
前記第1の高温超伝導体層の前記第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層と、
前記第1の高温超伝導体層の前記第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層と、
前記第1の導電性キャップ層を覆い付着された第1の積層体層と、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する安定化材層であり、前記安定化材層の前記第1の表面が前記第2の導電性キャップ層を覆い付着される、安定化材層と、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する第2の高温超伝導体層と、
前記第2の高温超伝導体層の前記第1の表面を覆い物理的に直接接触している第3の導電性キャップ層と、
前記第2の高温超伝導体層の前記第2の表面を覆い物理的に直接接触している第4の導電性キャップ層と、
前記第4の導電性キャップ層を覆い付着された第2の積層体層と
を備え、
前記安定化材層の前記第2の表面が、前記第3の導電性キャップ層を覆い付着され、
前記積層型超伝導体線材の第1の端部に沿って配置され前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第1のフィレットと、前記積層型超伝導体線材の第2の端部に沿って配置され前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第2のフィレットとを備える、積層型超伝導体線材。
【請求項2】
前記第1及び第2の高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物をそれぞれ含む、請求項1に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項3】
前記第1、第2、第3及び第4の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含む、請求項1に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項4】
前記第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含む、請求項1に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項5】
前記第1及び第2の積層体層が、前記第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有する、請求項3に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項6】
前記第1及び第2の積層体層の前記幅が、前記第1及び第2の高温超伝導体層の前記幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きい、請求項5に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項7】
前記安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む、請求項1に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項8】
前記第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第1の表面に付着され、前記第4の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第2の表面に付着され、前記第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第1の導電性キャップ層に付着され、前記第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第4の導電性キャップ層に付着され、前記第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成される、請求項1に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項9】
前記エポキシは、前記エポキシを導電性、熱伝導性又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料をドープされている、請求項8に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項10】
積層型超伝導体線材であって、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する高温超伝導体層と、
前記高温超伝導体層の前記第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層と、
前記高温超伝導体層の前記第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層と、
前記第1の導電性キャップ層を覆い付着された第1の積層体層と、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する安定化材層であり、前記安定化材層の前記第1の表面が前記第2の導電性キャップ層を覆い付着される、安定化材層と、
前記安定化材層の前記第2の表面を覆い付着された第2の積層体層と
を備え、
前記積層型超伝導体線材の第1の端部に沿って配置され前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第1のフィレットと、前記積層型超伝導体線材の第2の端部に沿って配置され前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第2のフィレットとを備える、積層型超伝導体線材。
【請求項11】
前記高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物を含む、請求項10に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項12】
前記第1及び第2の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含む、請求項10に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項13】
前記第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含む、請求項10に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項14】
前記第1及び第2の積層体層が、前記第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有する、請求項13に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項15】
前記第1及び第2の積層体層の前記幅が、前記第1の高温超伝導体層の前記幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きい、請求項14に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項16】
前記安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む、請求項10に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項17】
前記第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第1の表面に付着され、前記第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第1の導電性キャップ層に付着され、前記第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第2の表面に張り合わせられ、前記第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成される、請求項10に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項18】
前記エポキシは、前記エポキシを導電性、熱伝導性又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料がドープされている、請求項17に記載の積層型超伝導体線材。
【請求項19】
積層型超伝導体線材を作る方法であって、
第1の二軸テクスチャ付き基板を覆い物理的に直接接触している第1の表面を有する第1の高温超伝導体層と、前記第1の超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層とを有する第1の超伝導体インサートを準備するステップと、
第2の二軸テクスチャ付き基板の第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の表面を有する第2の高温超伝導体層と、前記第2の超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層とを有する第2の超伝導体インサートを準備するステップと、
安定化材層の第1の表面に前記第1の超伝導体インサートの前記第1の導電性キャップ層を付着させ、前記安定化材層の前記第1の表面とは反対側の安定化材層の第2の表面に前記第2の超伝導体インサートの前記第2の導電性キャップ層を付着させるステップと、
前記第1の超伝導体層の前記第1の表面を露出させるために前記第1の超伝導体層から前記第1の二軸テクスチャ付き基板を除去し、前記第2の超伝導体層の前記第1の表面を露出させるために前記第2の超伝導体層から前記第2の二軸テクスチャ付き基板を除去するステップと、
前記第1の超伝導体層の前記第1の表面に第3の導電性キャップ層を付着し、前記第2の超伝導体層の前記第1の表面に第4の導電性キャップ層を付着するステップと、
前記第3の導電性キャップ層に第1の積層体層を付着し、前記第4の導電性キャップ層に第2の積層体層を付着するステップと
を含み、
前記第1及び第2の積層体層を付着する前記ステップが、前記積層型超伝導体線材の第1の端部に沿って前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第1のフィレットを配置するステップと、前記積層型超伝導体線材の第2の端部に沿って前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第2のフィレットを配置するステップとを含む、方法。
【請求項20】
前記第1及び第2の高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物をそれぞれ含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板が、ハステロイ又はニッケル合金のうちの一方をそれぞれ含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板が、少なくとも1つのバッファ層をそれぞれさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第1、第2、第3及び第4の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀の層及び銅の層をそれぞれ含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2の積層体層が、前記第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記第1及び第2の積層体層の前記幅が、前記第1及び第2の高温超伝導体層の前記幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きい、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第1の表面に付着され、前記第4の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第2の表面に付着され、前記第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第1の導電性キャップ層に付着され、前記第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第2の導電性キャップ層に付着され、前記第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記除去した第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板のうちの一方を覆い直接接触している表面を有する高温超伝導体層をそれぞれ有する2つの超伝導体インサートを作製するために、前記第1及び第2の超伝導体層から除去した前記第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板を再使用するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
積層型超伝導体線材を作る方法であって、
第1の表面及び前記第1の表面とは反対側の第2の表面を有する高温超伝導体層を有する超伝導体インサートを準備するステップであり、前記第1の表面が二軸テクスチャ付き基板を覆い直接接触しており、第1の導電性キャップ層が前記超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している、超伝導体インサートを準備するステップと、
安定化材層の第1の表面に前記超伝導体インサートの前記第1の導電性キャップ層を付着させるステップと、
前記第1の超伝導体層の前記第1の表面を露出させるために前記第1の超伝導体層から前記二軸テクスチャ付き基板を除去するステップと、
前記超伝導体層の前記第1の表面に第3の導電性キャップ層を付着させるステップと、
前記第2の導電性キャップ層に第1の積層体層を付着させ、前記安定化材層の第2の表面に第2の積層体層を付着させるステップと
を含み、
前記第1及び第2の積層体層を付着させる前記ステップが、前記積層型超伝導体線材の第1の端部に沿って前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第1のフィレットを配置するステップと、前記積層型超伝導体線材の第2の端部に沿って前記第1の積層体層及び前記第2の積層体層に接続された第2のフィレットを配置するステップとを含む、方法。
【請求項31】
前記高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記二軸テクスチャ付き基板が、ハステロイ又はニッケル合金のうちの一方を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記二軸テクスチャ付き基板が、少なくとも1つのバッファ層をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1及び第2の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀の層及び銅の層をそれぞれ含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記第1及び第2の積層体層が、前記高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記第1及び第2の積層体層の前記幅が、前記高温超伝導体層の前記幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きい、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第1の表面に付着され、前記第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記第1の導電性キャップ層に張り合わせられ、前記第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して前記安定化材層の前記第2の表面に張り合わせられ、前記第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成される、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記除去した二軸テクスチャ付き基板と重なりを覆い直接接触している表面を有する高温超伝導体層を有する超伝導体インサートを作製するために、前記第1の超伝導体層から除去した前記二軸テクスチャ付き基板を再使用するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い意味でいうと長さの長い高温超伝導(「HTS)線材に関し、特にエンジニアリング電流密度を高めたHTS線材に係るものである。
【背景技術】
【0002】
HTS材料(77Kの液体窒素温度よりも高い温度で超伝導特性を維持できる材料)の発見以来、HTS材料を使用する様々なエンジニアリング用途を開発するための努力が行われている。薄膜超伝導デバイス及び線材では、YBa
2CuO
7−y(以降、Y123又はYBCOと呼ぶ)の良く知られている基本組成のイットリウム、バリウム、銅及び酸素を含んでいる酸化物超伝導体を利用するデバイスの製造で最も発展しており、この酸化物超伝導体は、軍用、高エネルギー物理学用、材料加工用、交通用、及び医療使用のためのケーブル、モータ、発電機、同期進相機、変圧器、電流制限器、及び磁石システムを含め、多くの用途にとって依然として好ましい材料である。
【0003】
一般に被覆導体又は第二世代(2G:Second Generation)線材と呼ばれるこれらのYBCO材料に基づくHTS線材は、ロール−ツー−ロール生産ラインを使用して77K及び自己場で3MA/cm
2以上の臨界電流密度、J
c、を有する数百メートル以上の連続する長さで製造されている。基板及び安定化材材料の厚さを考慮すると、8KA/cm
2を超えるエンジニアリング電流密度(J
e)が、長尺で実現されている。
【0004】
様々な電力用途に対してHTS線材をより望ましく作り続けるために、エンジニアリング電流密度を高めることが非常に重要である。HTS層が上に配置される1つ又は複数のバッファ層をともなう基板を有する2G線材の構造が長く確立されており高性能2G線材に必要であるので、興味の中心は、J
cを高めること、J
eを高めることに置かれている。結果として、J
eの増加は、HTS 2G線材の全断面積が基板及び安定化材層の厚さのために安定なままであるので幾分か穏やかである。
【0005】
加えて、ニッケル・タングステン(Ni5W)などのHTS線材で使用されるある種の基板は、磁気的性質を有し、AC用途では最適な電気的性能よりも劣るという結果になっている。努力は、磁性のより小さな材料(例えば、Ni9W)を使用することにより係る基板の磁気的性質を低下させることに集中しているが、同等の総合的な電気的性能特性を維持する際の難題が存続している。
【0006】
そのため、エンジニアリング電流密度を高めたHTS線材並びにAC用途において電気的性能を改善したHTS線材に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0062098号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エンジニアリング電流密度を高めたHTS線材を作製することが本発明の目的である。
【0009】
AC用途において電気的性能を改善したHTS線材を作製することが本発明のさらなる目的である。
【0010】
テクスチャ付き基板が線材製造プロセスにおいて除去され、別のHTS線材を作製するためにこの除去したテクスチャ付き基板を再使用可能であるHTS線材を作製することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様では、本発明は、積層型超伝導体線材アセンブリを含み、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する第1の高温超伝導体層と、第1の高温超伝導体層の第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層とを備える。第1の高温超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層と、第1の導電性キャップ層を覆い付着された第1の積層体層とがある。また、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する安定化材層であって、安定化材層の第1の表面が第2の導電性キャップ層を覆い付着される、安定化材層がある。また、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する第2の高温超伝導体層と、第2の高温超伝導体層の第1の表面を覆い物理的に直接接触している第3の導電性キャップ層とがある。さらに、第2の高温超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第4の導電性キャップ層と、第4の導電性キャップ層を覆い付着された第2の積層体層とがある。安定化材層の第2の表面が、第3の導電性キャップ層を覆い付着され、積層型超伝導体線材アセンブリの第1の端部に沿って配置され第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第1のフィレットが含まれる。積層型超伝導体線材アセンブリの第2の端部に沿って配置され第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第2のフィレットがある。
【0012】
本発明の他の態様では、下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれてもよい。第1及び第2の高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物をそれぞれ含んでもよい。第1、第2、第3及び第4の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有することがある。第1及び第2の積層体層の幅が、第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きいことがある。安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含んでもよい。第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第1の表面に付着されてもよく、第4の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第2の表面に付着されてもよく、第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第1の導電性キャップ層に付着されてもよく、第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第4の導電性キャップ層に付着されてもよく、第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成されてもよい。エポキシが、エポキシを導電性、熱伝導性又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされてもよい。
【0013】
別の態様では、本発明は、積層型超伝導体線材アセンブリを特徴づけ、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する高温超伝導体層を備える。高温超伝導体層の第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層がある。また、高温超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層と、第1の導電性キャップ層を覆い付着された第1の積層体層とがある。第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する安定化材層であって、安定化材層の第1の表面が第2の導電性キャップ層を覆い付着される、安定化材層と、安定化材層の第2の表面を覆い付着された第2の積層体層とがさらに含まれる。積層型超伝導体線材アセンブリの第1の端部に沿って配置され第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第1のフィレットと、積層型超伝導体線材アセンブリの第2の端部に沿って配置され第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第2のフィレットとが含まれる。
【0014】
本発明のさらに他の態様では、下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれてもよい。高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物を含んでもよい。第1及び第2の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有することがある。第1及び第2の積層体層の幅が、第1の高温超伝導体層の幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きいことがある。安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含んでもよい。第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第1の表面に付着されてもよく、第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第1の導電性キャップ層に付着されてもよく、第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第2の表面に張り合わせられてもよく、第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成されてもよい。エポキシが、エポキシを導電性、熱伝導性、又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされてもよい。
【0015】
1つの態様では、本発明は、積層型超伝導体線材を作る方法を含む。本方法は、第1の二軸テクスチャ付き基板を覆い物理的に直接接触している第1の表面を有する第1の高温超伝導体層と、第1の超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第1の導電性キャップ層とを有する第1の超伝導体インサートを準備するステップを含む。本方法はまた、第2の二軸テクスチャ付き基板の第1の表面を覆い物理的に直接接触している第1の表面を有する第2の高温超伝導体層と、第2の超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している第2の導電性キャップ層とを有する第2の超伝導体インサートを準備するステップを含む。本方法はまた、安定化材層の第1の表面に第1の超伝導体インサートの第1の導電性キャップ層を付着し、安定化材層の第1の表面とは反対側の安定化材層の第2の表面に第2の超伝導体インサートの第2の導電性キャップ層を付着するステップを含む。本方法は加えて、第1の超伝導体層の第1の表面を露出させるために第1の超伝導体層から第1の二軸テクスチャ付き基板を除去し、第2の超伝導体層の第1の表面を露出させるために第2の超伝導体層から第2の二軸テクスチャ付き基板を除去するステップを含む。本方法は、第1の超伝導体層の第1の表面に第3の導電性キャップ層を付着し、第2の超伝導体層の第1の表面に第4の導電性キャップ層を付着するステップと、第3の導電性キャップ層に第1の積層体層を付着し、第4の導電性キャップ層に第2の積層体層を付着するステップとをさらに含む。第1及び第2の積層体層を付着するステップが、積層型超伝導体線材アセンブリの第1の端部に沿い第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第1のフィレットを配置するステップと、積層型超伝導体線材アセンブリの第2の端部に沿い第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第2のフィレットを配置するステップとを含む。
【0016】
本発明の他の態様では、下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれてもよい。第1及び第2の高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板が、ハステロイ又はニッケル合金のうちの一方をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板が、少なくとも1つのバッファ層をそれぞれさらに含んでもよい。第1、第2、第3及び第4の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀の層及び銅の層をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有することがある。第1及び第2の積層体層の幅が、第1及び第2の高温超伝導体層の幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きいことがある。安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含んでもよい。第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第1の表面に付着されてもよく、第4の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第2の表面に付着されてもよく、第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第1の導電性キャップ層に付着されてもよく、第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第2の導電性キャップ層に付着されてもよく、第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成されてもよい。本方法はまた、除去した第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板のうちの一方を覆い直接接触している表面を有する高温超伝導体層をそれぞれ有する2つの超伝導体インサートを作製するために、第1及び第2の超伝導体層から除去した第1及び第2の二軸テクスチャ付き基板を再使用するステップを含んでもよい。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、積層型超伝導体線材を作る方法を含み、本方法は、第1の表面及び第1の表面とは反対側の第2の表面を有する高温超伝導体層を有する超伝導体インサートを準備するステップを含む。第1の表面が二軸テクスチャ付き基板を覆い直接接触し、第1の導電性キャップ層が超伝導体層の第2の表面を覆い物理的に直接接触している。本方法は、安定化材層の第1の表面に超伝導体インサートの第1の導電性キャップ層を付着するステップと、第1の超伝導体層の第1の表面を露出させるために第1の超伝導体層から二軸テクスチャ付き基板を除去するステップとを含む。本方法はまた、超伝導体層の第1の表面に第3の導電性キャップ層を付着するステップと、第2の導電性キャップ層に第1の積層体層を付着し、安定化材層の第2の表面に第2の積層体層を付着するステップとを含む。第1及び第2の積層体層を付着するステップが、積層型超伝導体線材アセンブリの第1の端部に沿い第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第1のフィレットを配置するステップと、積層型超伝導体線材アセンブリの第2の端部に沿い第1の積層体層及び第2の積層体層に接続された第2のフィレットを配置するステップとを含む。
【0018】
本発明のさらなる態様では、下記の特徴のうちの1つ又は複数が含まれてもよい。高温超伝導体層が、希土類−アルカリ土類−銅酸化物を含んでもよい。二軸テクスチャ付き基板が、ハステロイ又はニッケル合金のうちの一方を含んでもよい。二軸テクスチャ付き基板が、少なくとも1つのバッファ層をさらに含んでもよい。第1及び第2の導電性キャップ層が、銀又は銀合金又は銀の層及び銅の層をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含んでもよい。第1及び第2の積層体層が、高温超伝導体層の幅よりも大きい幅を有することがある。第1及び第2の積層体層の幅が、高温超伝導体層の幅よりも0.01と2mmとの間だけ大きいことがある。安定化材層が、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含んでもよい。第2の導電性キャップ層が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第1の表面に付着されてもよく、第1の積層体が、エポキシ又ははんだを介して第1の導電性キャップ層に張り合わせられてもよく、第2の積層体が、エポキシ又ははんだを介して安定化材層の第2の表面に張り合わせられてもよく、第1及び第2のフィレットが、エポキシ又ははんだから形成されることがある。本方法は、除去した二軸テクスチャ付き基板を覆い直接接触している表面を有する高温超伝導体層を有する超伝導体インサートを作製するために、第1の超伝導体層から除去した二軸テクスチャ付き基板を再使用するステップをさらに含んでもよい。
【0019】
さらなる特徴、利点、及び本発明の実施例を、下記の詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲の検討から明らかにすることができる。その上、前述の本開示の概要及び下記の詳細な説明は、例示的であり権利を主張する本開示の範囲をさらに限定することなくさらなる説明を提供するものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】先行技術の2G HTS線材の構成の図である。
【
図2】RABiTS/MODプロセスにより
図1の2G HTS線材を製造するための先行技術のリール−ツー−リール・プロセスの図である。
【
図3】この発明の実施例による両面HTS線材を製造するためのリール・ツー・リール・プロセスの図である。
【
図4】
図3のリール・ツー・リール・プロセスにしたがって製造した両面HTS線材の断面図である。
【
図5】この発明の別の実施例による片面HTS線材を製造するためのリール・ツー・リール・プロセスの図である。
【
図6】
図5のリール・ツー・リール・プロセスにしたがって製造した片面HTS線材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先行技術のHTS線材10の例示的な構成が、
図1に描かれている。この構成では、HTS線材10は、基板16を覆って配置され基板により支持された多結晶超伝導体層12を含み、これらの間には1つ又は複数のバッファ層14がある。基板16は、任意の適した金属含有材料から形成することができる柔軟な金属箔を含む。1つの実施例によれば、柔軟な金属基板は、ニッケル・タングステン合金などの、ニッケル含有合金である。
【0022】
基板16は、超伝導体層12に転写されるテクスチャを含むことができる。本明細書において説明されるように、テクスチャは、結晶面配列を含んでいるマイクロ構造を呼ぶ。超伝導体層内の高度な結晶面配列は、多結晶超伝導体層12が単結晶のような性能を示すことを可能にする。テクスチャ付き基板16を、上に説明した他の層のうちの1つをともなう柔軟な金属膜とすることができる。或いは、テクスチャ付き基板16を、被覆導体内の別の層とすることができる。
【0023】
テクスチャ付き基板16を、任意の適切なプロセスにより作製ずることができる。1つの実施例によれば、テクスチャ付き基板16を、圧延支援型二軸テクスチャ付き基板(RABiTS:rolling-assisted biaxially textured substrate)プロセスにより作製することができる。RABiTSプロセスは、圧延支援型プロセスによる二軸テクスチャ付き金属箔の作製を含む。少なくとも1つの酸化物バッファ層14を次いで、金属基板と同じ二軸テクスチャ付きマイクロ構造を示している酸化物バッファ層とともに、テクスチャ付き金属基板16の上に設ける。二軸テクスチャ付き高温超伝導体層12を次いで、酸化物バッファ層14を覆って堆積する。酸化物バッファ層14は、膜から超伝導体層への金属の拡散を防止する。
【0024】
別の実施例によれば、テクスチャ付き基板を、イオン−ビーム支援型堆積(IBAD:ion-beam assisted deposition)を利用するプロセスにより作製することができる。IBADプロセスは、テクスチャを付けていない金属箔の表面へのテクスチャ付きセラミック・バッファ層のイオン−ビーム支援型堆積を含む。超伝導体層を次いで、テクスチャ付きセラミック・バッファ層を覆って堆積する。追加のバッファ層を、テクスチャ付きセラミック・バッファ層と超伝導体層との間及び/又は金属膜とテクスチャ付きセラミック・バッファ層との間に設けることができる。IBAD被覆導体は、金属膜基板、テクスチャ付きセラミック酸化物バッファ層、酸化物バッファ層、超伝導体層、金属保護層、及び安定化材層を含む。
【0025】
超伝導体層を、任意の適したプロセスにより被覆導体構造の基板を覆って堆積することができる。1つの実施例によれば、超伝導体層を、有機金属堆積プロセスにより堆積することができる。別の実施例によれば、超伝導体層を、パルス・レーザ堆積(PLD:pulsed laser deposition)、反応性共蒸着(RCE:reactive co-evaporation)、有機金属化学気相堆積(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)、電子線堆積、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)、又はスパッタリング・プロセスにより堆積することができる。超伝導体層は、任意の適切な厚さを有することができる。1つの実施例によれば、超伝導体層は、1μmよりも大きな厚さを有する。別の実施例では、超伝導体層は、約1μmから約2μmの範囲内の厚さを有する。いくつかの実施例によれば、超伝導体は、約5μm未満の厚さを有することができる。
【0026】
本分野において知られているように、HTS線材10はまた、超伝導体層12の上に配置されたAg層などの金属保護層18a及びこの金属層18aの上に配置された安定化材層20aを含むことができる。HTS線材10はまた、バッファ層14が配置される表面とは反対側の基板16の表面の上に配置されたAg層などの金属保護層18bを含むことができる。安定化材層20bを、金属層18bの上に配置することができる。保護層及び安定化材層を、本明細書では組み合わせでキャップ層と呼ぶことができる。
【0027】
保護金属層(又はキャップ層)18a/18bを、超伝導体層/基板を保護する目的で超伝導体層14及び基板16を覆って堆積し、任意の適した金属含有材料とすることができる。1つの実施例によれば、保護金属層は銀層である。保護層は、任意の適切な厚さを有することができる。1つの実施例によれば、保護層は、3μmの厚さを有する。別の実施例によれば、保護層は、約1μmの厚さを有する。別の実施例によれば、保護層は、約0.5μmの厚さを有する。
【0028】
1つの実施例によれば、安定化材層20a/20bは、任意の適した金属含有材料を含むことができ、25μmよりも大きな厚さを有することができる。別の実施例では、安定化材層は、10から25μmの厚さを有することができる。別の実施例では、安定化材層は、約0.5μmの厚さを有することができる。1つの実施例では、安定化材層は、銅である。他の実施例では、安定化材層は、ステンレス鋼、真鍮、又は任意の他の適した金属含有材料である。1つの実施例では、安定化材層の幅は、HTS層12の厚さと同じである。別の実施例では、安定化材層の幅は、HTS層12の幅よりも大きい。別の実施例では、安定化材層は、HTS線材10のすべての側面の周りを包むことができる。
【0029】
超伝導体層12を、任意の適切な超伝導体から形成することができる。1つの実施例によれば、超伝導体層を、希土類金属−アルカリ土類金属−遷移金属−酸化物超伝導体とすることができる。1つの実施例によれば、超伝導体層12は、一般式:
(RE)Ba
2Cu
3O
7−δ
を有する超伝導体を含有することができ、ここで、REは、少なくとも1種の希土類金属を含み、0≦δ≦0.65である。別の実施例によれば、超伝導体層は、一般式:
(RE)Ba
2Cu
3O
7
を有する超伝導体を含有することができ、ここで、REは、少なくとも1種の希土類金属を含む。1つの実施例では、REはイットリウムを含むことができ、一般式YBa
2Cu
3O
7(YBCO)の超伝導体層を生成することがある。超伝導体層が便利さのためにYBCO超伝導体層として本明細書では呼ばれるだろうが、この出願において論じる方法は、他の適切な超伝導体材料に同等に当てはまる。いくつかのケースでは、REを、2種以上の希土類金属の混合物とすることができる。
【0030】
超伝導体層12はまた、主希土類金属に加えてドーパントを含むことができる。ドーパントは、希土類金属であってもよい。1つの実施例によれば、YBCO超伝導体層は、ジスプロシウム・ドーパントを含むことができる。ドーパントは、主希土類金属に対して75%までの量で存在することができる。1つの実施例によれば、主希土類金属の少なくとも約1%であり多くとも約50%の量で存在する。別の実施例によれば、ドーパントを、Zr、Nb、Ta、Hf又はAuなどの遷移金属とすることができる。ドーパントは、単一又は混合金属酸化物を形成するように超伝導体内の他の元素と組み合わせられることがある。
【0031】
1つの実施例では、HTS線材10を、その長さに沿って多数のストリップへと区切ることができる。区切ることを、レーザ切断、ロール・スリッティング又は打抜加工を含め任意の適切な手段により行うことができる。その上、HTS線材10がその長さに沿って多数のストリップへと区切られた後で、下記に説明するように、ストリップを次いで、安定化材層20aと20bの外側表面上の積層体同士の間に挟むことができる。
【0032】
積層体並びに安定化材層20aと20bを含むことにより、HTS線材構造は、好適に機械的に強化され、HTS層12が電気的に安定化されるようにHTS層12からの電気的経路を設けられている。これゆえ、例えば、HTS電力ケーブルにおけるなどの電力用途において直接的に利用されるように構成される。ある種のケースでは、望まれるものすべてが、積層体層のない
図1のHTS線材構造を含むいわゆる「インサート」線材である。下記に説明されるように、この発明によるHTS線材は、プロセスの開始点としてHTSインサート(金属の少ない層18b及び安定化材20b)から構築される。
【0033】
図2には、テンプレート用のRABiTS基板及びYBCO層用のMODプロセスを使用して、HTS線材10、
図1、などの超伝導線材を作製するためのロール−ツー−ロール製造プロセス30が示されている。プロセスは、基板16、
図1、などの基板を作製するためのプロセス・ステップ32における基板圧延及びテクスチャ・アニーリングを含み、バッファ層堆積及びバッファ層のスパッタ・バッファ堆積が、それぞれステップ34と36に示され、これが
図1のバッファ層14などのバッファ層を作製する。ステップ38、40と42において、HTS層(例えば、HTS層12、
図1)を、溶液系の(RE)BCO前駆物質を用いてバッファ処理した基板を被覆することにより堆積し、この前駆物質が分解され、(RE)BCO層が成長する。次に、ステップ44において、Ag保護層(例えば、層18a/18b、
図1)を、HTS層及び基板の上に堆積し、ステップ46のところには、実行した酸素添加熱処理がある。プロセスにおける任意選択のステップは、イオン照射ステップ48であり、これを、特に印加した磁場において、電気的性能を向上させるためにHTS層内のミクロ構造をピンニングする一様な分布を生成するために使用することができる。このプロセス・ステップは、本明細書に援用されている米国特許出願公開第2017/0062098号にさらに十分に説明されている。プロセスのステップ50においては、
図1の安定化材層20a/20bなどの安定化材層を堆積し、それぞれステップ52と54のところのスリッティング及び積層体の貼り付けが続く。
【0034】
他のプロセスがテンプレート、YBCO堆積、又は安定化のために使用されるときには、
図2に描かれた個々のプロセス・ステップを、置き換えることができることが理解される。
【0035】
上に説明した基本的なHTS線材製造プロセスを使用して、追加の/異なる処理ステップをこの発明にしたがって組み込むことができ、エンジニアリング電流密度を高めたHTS線材並びにAC用途における電気的性能を向上させたHTS線材を作製することができる。追加の処理ステップ及びHTS線材構成を、下記の
図3〜
図7に関して説明する。
【0036】
図3には、この発明のある実施例による連続リール・ツー・リール・プロセス60が、それぞれHTSインサート線材10aと10bを搬送するリール62と64を含むように描かれており、これらのHTSインサート線材は、(金属層18b及び安定化材20bを除いて)
図1に関して上に説明したHTSインサート線材と同等であってもよい。安定化材材料70を搬送する追加のリール68がある。1つの実施例では、安定化材材料70は、任意の適した金属含有材料を含むことができ、10μmよりも大きな厚さを有することがある。別の実施例では、安定化材層は、1から2μmの厚さを有することがある。1つの実施例では、安定化材層は銅である。他の実施例では、安定化材層70は、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む。プロセス60が連続プロセスであるように示されているが、プロセスは、代わりに2つ以上の個別のステップを使用して実行されることがあることに留意されたい。
【0037】
HTSインサート線材10aは、そのキャップ層72aが安定化材材料70の上面に面するようにリール62を払い出される。HTSインサート線材10bは、そのキャップ層72bが安定化材材料70の底面に面するようにリール64を払い出される。キャップ層72aと72bとは反対側の表面が、それぞれ、HTSインサート線材10aと10bの基板層74aと74bである。基板層74a/74bはまた、1つ又は複数のバッファ層を含むことができる。HTSインサート線材10aと10bは、安定化材70の両側に設置され、3つの材料が接合装置76を通って送られ、この接合装置76は、両面HTS線材構造80を作製するために、Sn系のはんだ材料の薄い層を介して安定化材70の反対側表面に2つのHTSインサート線材10a/10bを接合する。別の実施例では、エポキシを導電性、熱伝導性、又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされることがある薄いエポキシが、安定化材70の反対側表面にHTSインサート10a/10bを張り合わせるために使用される。
【0038】
両面HTS線材構造80は、剥離装置82へと導入され、バッファ層を含んでいる基板層74aと74bが各線材10aと10bから離され又は剥離されて、HTS層75aと75bを露出させる。剥離プロセスは、2つのHTSインサート・ストリップ10aと10bが安定化材70に張り合わせられるときに、複合ストリップ80内の最も弱い界面が、HTSインサート・ストリップ10aと10b内のHTS層と酸化物バッファ層との間であるという事実に依存する。この界面は、<1MPaの非常に低い剥がれ応力又はへき開応力を有する。複合ストリップ80が剥離装置82へ送られるときには、剥離したインサート74aと74bは、安定化材90の表面に対して5から85度の間の角度で剥がれることにより安定化材90のそれぞれの側のHTS層75aと75bから分離される。代替の実施例では、インサート74aと74bが、複合ストリップ80を加熱することにより安定化材90のそれぞれの側のHTS層75aと75bから分離されるので、インサート74aと74bの間に追加の応力の導入によって、剥離を助長することができる。別の実施例では、複合ストリップ80を冷却することによって、剥離を助長することができる。剥離プロセスは、米国、コロラド州アスペンでのCoated Conductors For Applications 2016(CCA2016)会議において、2016年9月13日の「Reacent Progress on SuNAM‘s Coated Concuctor Development; Performance, Price & Utilizing ways“という名称の韓国、SuNAM Co.LTDにより行われた発表で説明された。
【0039】
剥離された基板74aと74bは、連続プロセス60の一部としてリール84と86に集められ、複合線材構造90を残す。複合線材構造90は、安定化材70に付着されたキャップ層72aと72b、及び露出し安定化材70から外に向かって面しているHTS層75aと75を含む。新しいHTS層を上に成長させるためのテンプレートとして剥離されバッファ処理した基板74aと74bを再使用することができ、以前に使用され剥離された基板を有するHTS線材を、連続プロセス60を通して送ることができ、この発明によるHTS線材を作製することができるようにもう1度剥離されることに留意されたい。1つの実施例では、金属基板16が新たなHTS層を成長させるためのテンプレートとして使用される前に、最上部の二軸テクスチャ付き酸化物バッファ層14を、金属基板16の上に再堆積することができる。1つの実施例では、最上部バッファ層14は、CeO
2である。
【0040】
キャップ層を、複合線材構造90のHTS層75aと75bの外側表面の上に堆積する。キャップ層は、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含むことができる。銅の層と組み合わせた銀の層のケースでは、2つの堆積ステップを使用するはずである。1つの実施例では、銀層を真空堆積法により堆積することができ、銅層を電気化学堆積プロセスにより堆積することができる。銀層及び銅層の実例を、銅層20aと組み合わせた銀層18aとして、先行技術の
図1に示している。
【0041】
プロセスにおける任意選択のステップは、イオン照射ステップ48、
図2、であり、特に印加された磁場において、電気的性能を改善するためにHTS層内のミクロ構造をピンニングする一様な分布を生成するために使用することができる。1つの実施例では、イオン照射ステップ48を、銀又は銀合金層170の堆積の前に導入することができる。代替の実施例では、イオン照射ステップ48を、銀又は銀合金層170の堆積の後で導入することができる。
【0042】
キャップ層を有する複合線材構造93が、線材スリッタ94に送られ、線材スリッタ94は、例えば、積層装置99へと送られる複数の個別の細いHTS線材95へとレーザ・スリッタを使用して線材構造93を細長く切る。積層装置99は、本発明の実施例にしたがって、複数の複合二重HTS層線材100を形成するために細長く切ったHTS線材95の上側表面及び下側表面の上にそれぞれリール97と98から送られた積層体96aと96bを配置する。
【0043】
1つの実施例では、積層装置99は、複合線材構造95に積層体を接着させるためはんだの層を形成するはんだ槽である。積層体層は、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含むことができることに留意されたい。また、積層体層は、0.01と2mmとの間だけHTS層よりも大きい幅を有することができる。
【0044】
代替の実施例では、積層装置99は、エポキシを介してそれぞれのキャップ層に積層体層96a/96bを接着し、このエポキシは、エポキシを導電性、熱伝導性又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされてもよい。
【0045】
図4に示したような二重HTS層線材100の横断面の模式図は、はんだ又はエポキシ層102aにより安定化材70の上側表面に接着された銀/銅キャップ層72aによりキャップされたHTS層75aの第1の表面を含む。やはり示されたものは、はんだ又はエポキシ層102bにより安定化材70の下側表面に接着された銀/銅キャップ層72bによりキャップされたHTS層75bの第1の表面である。キャップ層104aによりキャップされたHTS層75aの、第1の表面とは反対側の第2の表面が、はんだ又はエポキシ106aにより積層体96aに接着された。キャップ層104bによりキャップされたHTS層75bの、第1の表面とは反対側の第2の表面が、はんだ又はエポキシ106bにより積層体96bに接着された。積層装置99、
図3、による積層プロセス中に、はんだ又はエポキシ・フィレット108aと108bを、積層体96aと96bを機械的且つ電気的に接続している複数の線材100の各々の長さ及び端部に沿って配置する。
【0046】
はんだを使用する代わりに、HTS線材のキャップ層に積層体を接着させるためにエポキシを塗るように、積層装置99を構成することができることに留意すべきである。その上、そのケースでは、HTS線材の長さ及び端部に沿ったフィレット108a/108Bが、やはりエポキシから形成される。このエポキシは、エポキシを導電性、熱伝導性、又は導電性且つ熱伝導性基板にさせる材料でドープされてもよい。
【0047】
図4から明らかなように、基板/バッファ層74aと74bは、
図3に示したような剥離プロセスのために二重HTS層線材100上には存在しない。結果として、非剥離線材70と同じ薄板寸法で同じHTSインサート幅で構築された二重層HTS線材100のI
cは2倍になる。二重HTS層線材100の厚さは、各HTS層74aと74bについて基板とバッファ層との厚さの差プラス2つの薄板層の厚さ及び安定化材層70の厚さだけ減少する。このことが、それゆえ、このような標準単一HTS層非剥離線材に対して二重HTS層100のエンジニアリング電流密度、J
e、の増加をもたらす。また重要な記録に値するものは、最終線材製品から強磁性基板を排除することにより、強磁性の磁性基板を利用している線材に関係する電気的性能問題が排除される。
【0048】
1.2μm厚のHTS層、75μm厚の基板、150nm厚のバッファ層、及び12x0.05mmの寸法を有する薄板を含んでいる10mm幅のHTSインサートを含む標準HTS線材は、77K、自己場で約350Aの最小臨界電流(I
c)を有する。このことが、約155A/mm
2の最小J
eという結果をもたらす。25nm厚の安定化材ストリップとともに同じ開始HTSインサート及び薄板から作製された新たな二重層線材100、
図4、は、77K、自己場で約700Aの最小I
cを有することができる。このことが、約400A/mm
2への最小J
eの増加という結果をもたらす。
図5には、
図1に関して上に説明したHTSインサート線材と同等であってもよいHTSインサート線材154を搬送する単一リール152を含むこの発明の別の実施例による連続リール・ツー・リール・プロセス150が示されている。プロセス150が連続プロセスとして示されているが、プロセスは、代替で、2つ以上の個別のステップを使用して実行されてもよいことに留意すべきである。
【0049】
安定化材材料158を搬送する追加のリール156がある。1つの実施例では、安定化材材料158は、任意の適した金属含有材料を含むことができ、25μmよりも大きな厚さを有することがある。別の実施例では、安定化材は、10から25μmの厚さを有することがある。1つの実施例では、安定化材は銅である。他の実施例では、安定化材層158は、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属を含む。
【0050】
HTSインサート線材154は、そのキャップ層160が安定化材材料158の上面に面するようにリール152を払い出される。キャップ層160の反対側の表面は、HTSインサート線材154の基板162である。基板162はまた、1つ又は複数のバッファ層を含むことができる。安定化材158 4の一方の側のHTSインサート線材154は、接合装置164を通って送られ、この接合装置は、片面HTS線材構造166を作製するために、Sn系のはんだ材料の薄い層を介して安定化材158にHTSインサート154を接合する。
【0051】
別の実施例では、エポキシを導電性、熱伝導性、又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされることがある薄いエポキシが、片面HTS線材構造166を作製するために安定化材158にHTSインサート154を張り合わせるために使用される。
【0052】
片面HTS線材構造166は、剥離装置168へと導入され、バッファ層を含んでいる基板層162がHTS線材152から離され又は剥離されて、HTS層170を露出させる。剥離された基板162は、連続プロセス150の一部としてリール172に集められ、複合線材構造174を残す。複合線材構造174は、安定化材158に付着されたキャップ層160、及び露出し安定化材層158から外に向かって面しているHTS層170を含む。新しいHTS層を上に成長させるためのテンプレートとして、剥離されバッファ処理された基板162を再使用することができ、以前に使用され剥離された基板を有するHTS線材を、連続プロセス150を通して送ることができ、この発明によるHTS線材を作製することができるようにもう1度剥離されることに留意されたい。1つの実施例では、金属基板16が新たなHTS層を成長させるためのテンプレートとして使用される前に、最上部二軸テクスチャ付き酸化物バッファ層14を、金属基板16の上に再堆積することができる。1つの実施例では、最上部バッファ層14は、CeO
2である。
【0053】
複合線材構造174は、HTS層170の最上部にキャップ層を作製するために金属槽176へと送られる。キャップ層は、銀又は銀合金又は銀層及び銅層をそれぞれ含むことができる。銅の層と組み合わせた銀の層のケースでは、2つの別々の槽が使用されるはずである。銀層及び銅層の実例が、銅層20aと組み合わせた銀層18aとして、先行技術の
図1に示されている。
【0054】
プロセスにおける任意選択のステップは、イオン照射ステップ48、
図2、であり、特に印加された磁場において、電気的性能を改善するためにHTS層内のミクロ構造をピンニングする一様な分布を生成するために使用することができる。1つの実施例では、イオン照射ステップ48を、銀又は銀合金層170の堆積の前に導入することができる。代替の実施例では、イオン照射ステップ48を、銀又は銀合金層170の堆積の後で導入することができる。
【0055】
キャップ層を有する複合線材構造178が、線材スリッタ180へ送られ、線材スリッタ180は、例えば、積層装置184へと送られる複数の個別の細いHTS線材182へとレーザ・スリッタを使用して線材構造178を細長く切る。積層装置184は、複数の複合片面HTS層線材190を形成するために細長く切られたHTS線材182の上側表面及び下側表面の上にそれぞれリール187と189から送られた積層体層186と188を配置する。
【0056】
1つの実施例では、積層装置184は、複合線材構造182に積層体を接着させるためにはんだの層を形成するはんだ槽である。積層体層は、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、銀合金、ニッケル合金、及び鉄合金の群から選択される金属をそれぞれ含むことができることに留意されたい。また、積層体層は、0.01と2mmとの間だけHTS層よりも大きい幅を有することができる。
【0057】
代替の実施例では、積層装置184は、エポキシを介してそれぞれのキャップ層に積層体層186/188を接着させ、このエポキシは、エポキシを導電性、熱伝導性又は導電性且つ熱伝導性にさせる材料でドープされてもよい。
【0058】
片面HTS層線材190の横断面模式図が、はんだ又はエポキシ層192により安定化材158の上側表面に接着されたHTS層170の第1の銀/銅キャップ層160を含むように
図6に示されている。やはり示されたものは、HTS層170上の第2の銀/銅キャップ層194である。キャップ層194は、はんだ又はエポキシ層198により積層体186に接着される。安定化材158の第1の表面とは反対側の第2の表面上に、積層体188がはんだ又はエポキシ層200により付着される。積層装置184、
図5、による積層プロセス中に、はんだ又はエポキシ・フィレット202と204が、積層体186と188を機械的且つ電気的に接続している複数の線材190の各々の長さ及び端部に沿って配置される。
【0059】
図4から明らかなように、基板/バッファ層162は、
図5に示したような剥離プロセスのために片面HTS層線材190上には存在しない。結果として、片面HTS層線材190の厚さは、約75μmの基板とバッファ層厚さ及び約25μmの安定化材層厚さについて、基板及びバッファ層の厚さと安定化材層厚さとの間の差だけ減少し、これが、50μmの厚さ減少の大きさになる。このことが、それゆえ、同じ薄板寸法を使用する非剥離線材を使用しているこのような片面層構造に対して片面HTS層190のエンジニアリング電流密度、J
e、の[[非剥離HTS線材厚さ]/[非剥離HTS線材厚さ−50μm]]x100%の量までの増加をもたらす。また、上に説明したように、最終線材製品内の基板を排除することにより、磁性基板を通常利用している線材では、磁性基板に関係する電気的性能問題が克服される。
【0060】
1.2μm厚のHTS層、75μm厚の基板と150nm厚のバッファ層、及び4.4x0.15mmの寸法を有する薄板を含んでいる4mm幅のHTSインサートを含む標準HTS線材は、77K、自己場で150Aの最小臨界電流(I
c)を有することができる。このことが、85A/mm
2の最小J
eという結果をもたらす。25nm厚の安定化材ストリップとともに同じ開始HTSインサート及び薄板から作製された新たな単一層190、
図6、は、150AのI
2を有することができる。このことが、約100A/mm
2の最小J
eという結果をもたらす。
【0061】
本発明の好ましい実施例が、本明細書において示され説明されてきているが、様々な修正を、本発明の独創的な着想から逸脱せずに本発明に行うことができる。したがって、本発明が例示として限定ではなく説明されていることを理解されたい。他の実施例は、別記の特許請求の範囲の範囲内である。