特許第6873394号(P6873394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873394
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】風呂装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20210510BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 1/30 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A47K3/00 K
   F24H1/00 602L
   A47K3/00 M
   A47K3/00 E
   C02F1/30
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-234686(P2016-234686)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-89088(P2018-89088A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】浜岡 益生
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 史朗
(72)【発明者】
【氏名】堤 明
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−051856(JP,A)
【文献】 特開2014−057786(JP,A)
【文献】 特開2017−156059(JP,A)
【文献】 特開平08−089977(JP,A)
【文献】 特開平04−048991(JP,A)
【文献】 特開2001−198415(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0063852(KR,A)
【文献】 米国特許第04563780(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00、
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の湯水を前記浴槽に接続された湯水循環路を介して除菌及び/又は濾過処理用の湯水処理部に導き、かつこの湯水処理部を利用して処理された湯水を前記浴槽に戻す湯水処理動作を可能とする循環ポンプと、
所定の入浴対応現象及び出浴対応現象を検出可能な検出手段と、
この検出手段によって前記出浴対応現象が検出されたときに、前記湯水処理動作を開始させる制御を実行可能な制御部と、
を備えている、風呂装置であって、
前記浴槽への湯張り後において、最初の前記入浴対応現象又は前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された時点から所定の第1の時間が経過する迄の期間は、前記出浴対応現象が検出されたとしても前記循環ポンプは駆動されず、前記湯水処理動作が実行されない湯水処理禁止期間とされ
前記湯水処理禁止期間が経過した後において、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された場合には、前記湯水処理動作が開始される一方、そうでない場合には、前記湯水処理動作の開始が保留され、その後に前記出浴対応現象が検出された時点で、前記湯水処理動作が開始され、
前記湯水処理動作の開始が保留された後において、前記出浴対応現象が検出されない状況が所定の第2の時間以上継続した場合には、前記湯水処理動作は実行されることなく、前記入浴対応現象及び前記出浴対応現象の検出動作が終了するように構成されていることを特徴とする、風呂装置。
【請求項2】
浴槽の湯水を前記浴槽に接続された湯水循環路を介して除菌及び/又は濾過処理用の湯水処理部に導き、かつこの湯水処理部を利用して処理された湯水を前記浴槽に戻す湯水処理動作を可能とする循環ポンプと、
所定の入浴対応現象及び出浴対応現象を検出可能な検出手段と、
この検出手段によって前記出浴対応現象が検出されときに、前記湯水処理動作を開始させる制御を実行可能な制御部と、
を備えている、風呂装置であって、
前記制御部は、前記浴槽への湯張り後における入浴者数を判断可能であり、かつ前記湯張り後から前記入浴者数が所定の人数に達する迄の期間は、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出されたとしても前記循環ポンプは駆動されず、前記湯水処理動作が実行されない湯水処理禁止期間とされ
前記湯水処理禁止期間が経過した後において、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された場合には、前記湯水処理動作が開始される一方、そうでない場合には、前記湯水処理動作の開始が保留され、その後に前記出浴対応現象が検出された時点で、前記湯水処理動作が開始され、
前記湯水処理動作の開始が保留された後において、前記出浴対応現象が検出されない状況が所定の第2の時間以上継続した場合には、前記湯水処理動作は実行されることなく、前記入浴対応現象及び前記出浴対応現象の検出動作が終了するように構成されていることを特徴とする、風呂装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の風呂装置であって、
前記湯水処理部は、除菌灯を備え、かつこの除菌灯及び前記循環ポンプがともに駆動オンとされることにより、前記湯水処理動作として、前記浴槽の湯水の除菌処理動作が可能とされている、風呂装置。
【請求項4】
請求項3に記載の風呂装置であって、
前記除菌処理動作中において、前記入浴対応現象が検出されたときには、前記循環ポンプが駆動オフとされて前記除菌処理動作が中断される一方、前記除菌灯については駆動オン状態が維持され、
前記除菌処理動作の中断時において、前記出浴対応現象が検出されたときには、前記循環ポンプが駆動オンとされて、前記除菌処理動作が再開される構成とされている、風呂装置。
【請求項5】
請求項に記載の風呂装置であって、
前記除菌処理動作の中断時において、前記除菌灯の駆動オン状態が所定の第3の時間以上継続したときには、前記除菌灯は駆動オフとされるように構成されている、風呂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の湯水の除菌処理及び/又は濾過処理を図ることが可能とされた風呂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の風呂装置の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載された風呂装置は、浴槽に接続された湯水循環路、この湯水循環路に設けられた循環ポンプ、除菌処理部、及び浴室内における人の存否を検出するための人感センサを備えている。前記循環ポンプが駆動されると、浴槽の湯水が除菌処理部に送られ、かつこの除菌処理部によって除菌処理が施された湯水が浴槽に戻される。循環ポンプ及び除菌処理部は、浴室から入浴者が退出したことが人感センサを利用して検出されたときに、駆動オンとされる。
このような構成によれば、入浴者が入浴を終えて浴室を退出した直後に、浴槽の湯水の除菌処理を開始させることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、前記従来技術においては、人が入浴後に浴室から退出する都度、除菌処理動作が開始されている。このため、複数人が順次入浴する場合には、入浴した人数と同数だけ除菌処理動作も繰り返し実行される。このような動作制御は、浴槽の湯水の衛生状態を優れたものにする観点からすると好ましいものの、入浴者の数が多い場合には、除菌処理動作回数も多くなり、そのランニングコストが多くなる他、除菌灯の使用寿命が短くなるといった不具合も招く(除菌灯はオン・オフ回数が多いほど、及び累積点灯時間が長いほど、使用寿命が短くなるのが一般的である)。また、たとえば一人目の入浴者が入浴を終えただけでは、浴槽の湯水が多くの雑菌類を含まない綺麗なままである場合も多く、このような場合にも除菌処理を一律に行なうことは、効率が良いとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−51856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、浴槽の湯水の除菌などの処理が無駄に多く実行されることを回避しつつ、ユーザが浴槽の湯水を衛生に優れた状態で利用し得るようにすることが可能な風呂装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される風呂装置は、浴槽の湯水を前記浴槽に接続された湯水循環路を介して除菌及び/又は濾過処理用の湯水処理部に導き、かつこの湯水処理部を利用して処理された湯水を前記浴槽に戻す湯水処理動作を可能とする循環ポンプと、所定の入浴対応現象及び出浴対応現象を検出可能な検出手段と、この検出手段によって前記出浴対応現象が検出されたときに、前記湯水処理動作を開始させる制御を実行可能な制御部と、を備えている、風呂装置であって、前記浴槽への湯張り後において、最初の前記入浴対応現象又は前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された時点から所定の第1の時間が経過する迄の期間は、前記出浴対応現象が検出されたとしても前記循環ポンプは駆動されず、前記湯水処理動作が実行されない湯水処理禁止期間とされ、前記湯水処理禁止期間が経過した後において、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された場合には、前記湯水処理動作が開始される一方、そうでない場合には、前記湯水処理動作の開始が保留され、その後に前記出浴対応現象が検出された時点で、前記湯水処理動作が開始され、前記湯水処理動作の開始が保留された後において、前記出浴対応現象が検出されない状況が所定の第2の時間以上継続した場合には、前記湯水処理動作は実行されることなく、前記入浴対応現象及び前記出浴対応現象の検出動作が終了するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
ここで、本発明でいう「入浴対応現象」とは、人が入浴する場合にこれに対応して生じ、かつその現象が検出されたときには浴室に入浴者が存在する可能性が高いと考えられる現象である。たとえば、浴室に設置された人感センサによって人の存在が検出される現象、浴槽への湯水供給がなされていないにも拘わらず浴槽の水位が上昇する現象、あるいは浴室の照明がオンにされる現象などが該当する。
本発明でいう「出浴対応現象」とは、人が出浴する場合にこれに対応して生じ、かつその現象が検出されたときには浴室に入浴者が不在である可能性が高いと考えられる現象である。たとえば、浴室に設置された人感センサによって人が検出された後に、人が非検出となる現象、浴槽への湯水供給が実行されることなく浴槽の水位が上昇した後に、浴槽の水位が元の水位に復帰し、かつその状態が所定時間以上継続する現象、あるいは浴室の照明がオフにされる現象などが該当する。
【0010】
本発明の前記した構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、浴槽への湯張り後に一人が入浴(最初の入浴)を終え、出浴したとしても、このことのみを条件として湯水処理動作が開始されることはなく、最初の入浴対応現象又は出浴対応現象が検出された時点から所定の第1の時間が経過する迄の湯水処理禁止期間を過ぎなければ、湯水処理動作は開始されない。この湯水処理禁止期間中に、たとえば二人目、あるいは三人目の人が入浴したとしても、湯水処理動作は開始されないこととなる。このようなことから、前記従来技術とは異なり、入浴者の数と同数だけ湯水処理動作が頻繁に実行されることはなく、湯水処理動作の回数を少なくすることによって、ランニングコストを低減することが可能となる。湯水処理動作として、除菌灯を用いた除菌処理動作を行なわせる場合には、除菌灯の使用寿命を長くする効果も得られることとなる。
また、たとえば一人目の人が入浴を終えたとしても、その後直ちに湯水処理動作が開始されないケースが生じ得るが、一人目の入浴者が入浴を終えただけでは、浴槽の湯水が多くの雑菌類を含まない場合が多いため、浴槽の湯水を衛生的なものとする上で、とくに不具合を生じるようなこともない。
さらに、湯水処理禁止期間(所定の第1の時間)のタイムカウント基準時は、最初の入浴対応現象又は出浴対応現象が検出された時点とされており、入浴によって浴槽の湯水が実際に汚れる虞があることを前提条件として湯水処理禁止期間についてのタイムカウントが開始される。このため、湯水処理動作が開始される時期を実際の入浴状況に適切に対応させることが可能となる。たとえば、本発明とは異なり、第1の時間のカウント開始時期が、浴槽への湯張り時であると、その後誰も入浴していない状況下で湯水処理禁止期間が経過するといった事態を生じる虞があるが、本発明によれば、そのような虞もない。
【0011】
本発明の第2の側面により提供される風呂装置は、浴槽の湯水を前記浴槽に接続された湯水循環路を介して除菌及び/又は濾過処理用の湯水処理部に導き、かつこの湯水処理部を利用して処理された湯水を前記浴槽に戻す湯水処理動作を可能とする循環ポンプと、所定の入浴対応現象及び出浴対応現象を検出可能な検出手段と、この検出手段によって前記出浴対応現象が検出されたときに、前記湯水処理動作を開始させる制御を実行可能な制御部と、を備えている、風呂装置であって、前記制御部は、前記浴槽への湯張り後における入浴者数を判断可能であり、かつ前記湯張り後から前記入浴者数が所定の人数に達する迄の期間は、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出されたとしても前記循環ポンプは駆動されず、前記湯水処理動作が実行されない湯水処理禁止期間とされ、前記湯水処理禁止期間が経過した後において、前記出浴対応現象が前記検出手段によって検出された場合には、前記湯水処理動作が開始される一方、そうでない場合には、前記湯水処理動作の開始が保留され、その後に前記出浴対応現象が検出された時点で、前記湯水処理動作が開始され、前記湯水処理動作の開始が保留された後において、前記出浴対応現象が検出されない状況が所定の第2の時間以上継続した場合には、前記湯水処理動作は実行されることなく、前記入浴対応現象及び前記出浴対応現象の検出動作が終了するように構成されていることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、本発明の第1の側面により提供される風呂装置と同様に、浴槽への湯張り後に一人が入浴(最初の入浴)を終え、出浴したとしても、このことのみを条件として湯水処理動作が開始されることはない。所定の人数が入浴しない限りは、湯水処理動作は開始されない。したがって、入浴者の数よりも湯水処理動作の回数を少なくし、ランニングコストを低減することが可能となる。除菌灯を用いた除菌処理動作を行なわせる場合には、除菌灯の使用寿命を長くすることもできる。
また、所定の人数が入浴を終える迄は、湯水処理動作が開始されないこととなるが、入浴者数が少ない間は、浴槽の湯水が多くの雑菌類を含まない場合が多いため、浴槽の湯水を衛生的なものとする上で、とくに大きな不具合はない。
さらに、湯水処理禁止期間は、本発明の第1の側面により提供される風呂装置とは異なり、時間で規定されておらず、入浴者の数が所定数に達する迄の期間とされているため、より実情に沿ったタイミングで湯水処理動作を効率よく実行させることができるといった利点も得られる。
【0014】
また、本発明の第1および第2の側面により提供される風呂装置の構成によれば、人が入浴していない状況で湯水処理動作を適切に実行することが可能である。前記構成とは異なり、人が入浴している際に、湯水処理動作が実行されるべく循環ポンプが駆動されると、たとえば湯水循環路に設けられている水位センサを利用した浴槽の水位測定が困難になるなどの不具合を生じる虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を無くすことも可能である。
【0016】
さらに本発明の第1および第2の側面により提供される風呂装置の構成によれば、湯水処理動作の開始が保留された後に、なんらかの事情により出浴に対応する所定現象が検出されない場合に、湯水処理動作の保留状態、及び入浴対応現象や出浴対応現象を検出する動作が、異常に長引いた状態で無駄に実行されることを回避することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記湯水処理部は、除菌灯を備え、かつこの除菌灯及び前記循環ポンプがともに駆動オンとされることにより、前記湯水処理動作として、前記浴槽の湯水の除菌処理動作が可能とされている。
【0018】
このような構成によれば、簡易な構造の装置構成により浴槽の湯水の除菌処理動作を適切に行なうことが可能である。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記除菌処理動作中において、前記入浴対応現象が検出されたときには、前記循環ポンプが駆動オフとされて前記除菌処理動作が中断される一方、前記除菌灯については駆動オン状態が維持され、前記除菌処理動作の中断時において、前記出浴対応現象が検出されたときには、前記循環ポンプが駆動オンとされて、前記除菌処理動作が再開される構成とされている。
【0020】
このような構成によれば、除菌処理動作中に入浴がなされるようなことがあった場合には、循環ポンプが駆動オフとされるために、浴槽の水位の検出を伴う風呂自動保温動作などを適切に実行することが可能となる。また、除菌処理動作を中断する際であっても、除菌灯については駆動オン状態が維持されており、除菌処理動作を再開する際には循環ポンプを駆動させるだけでよいため、除菌灯の駆動オン・オフの切り替え頻度を少なくすることができる。したがって、除菌灯の使用寿命を長くする上で、より好ましいものとなる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記除菌処理動作の中断時において、前記除菌灯の駆動オン状態が所定の第3の時間以上継続したときには、前記除菌灯は駆動オフとされるように構成されている。
【0022】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、除菌処理動作の中断時は、人が入浴している最中である可能性が高く、この際に除菌灯が長時間にわたって連続して駆動オン状態とされると、除菌灯の熱によって湯水循環路の湯水が比較的高温に加熱され、かつこの加熱された湯水が浴槽に供給されることにより入浴者に違和感を与える虞がある。これに対し、前記構成によれば、除菌灯の熱によって湯水循環路の湯水が高温に加熱されることを防止し、前記した虞を解消することが可能である。
【0023】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る風呂装置の一例を示す説明図である。
図2図1に示す風呂装置において実行される動作制御の一例を示すフローチャートである。
図3図1に示す風呂装置において実行される動作制御の他の例を示すフローチャートである。
図4図1に示す風呂装置において除菌処理動作が実行される場合の動作制御の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1に示す風呂装置Aは、浴室BR内に設置された浴槽1、この浴槽1に接続された湯水循環路5、この湯水循環路5を構成する外部配管5a,5bを介して浴槽1に接続された給湯装置WH、湯水循環路5の途中に設けられた循環ポンプP1、除菌灯40を利用して構成された除菌処理部4、給湯装置WHの浴室リモコン70に組み込まれた人感センサSa、及び給湯装置WHの動作制御を実行する制御部7を備えている。同図において、符号90は、給湯装置WHの外装ケースである。
【0027】
給湯装置WHは、たとえば瞬間式ガス給湯装置であり、浴槽1への自動湯張り機能、風呂追い焚き機能、給湯栓60などへの一般給湯機能を備えていることに加え、浴槽1の湯水の除菌処理動作も可能である。
【0028】
具体的には、この給湯装置WHにおいては、入水口20から入水路2に流入した湯水が熱交換器30に送られてバーナ31により加熱される。この加熱された湯水は、流路22を経て混合弁23に到達し、バイパス流路21を流れてくる非加熱の湯水と所定の混合比で混合されることにより温度調整される。給湯栓60への一般給湯は、混合弁23を通過した湯水が一般給湯用出湯路6を流れることにより行なわれる。
【0029】
浴槽1への自動湯張り動作は、風呂給湯用出湯路50に設けられた開閉弁V1が開状態とされることにより、混合弁23を通過した湯水が風呂給湯用出湯路50から湯水循環路5に流れ込むことにより行なわれる。湯水循環路5は、浴槽1のアダプタ10に接続された外部配管5a,5bに、給湯装置WHの内部配管5c,5d、及び風呂追い焚き用の熱交換器33が接続された構成である。風呂追い焚き動作においては、循環ポンプP1が駆動オンとされ、浴槽1の湯水が湯水循環路5を介して熱交換器33に送り込まれてバーナ34により加熱されてから浴槽1に戻される。
【0030】
湯水循環路5には、浴槽1の水位を判断するための水位センサSb(圧力センサ)が設けられている。この水位センサSbは、湯水循環路5内の静水圧(浴槽1の湯水の水頭圧に対応)を検出するセンサであり、この検出された圧力値に基づいて、制御部7において浴槽1の水位が判断される。風呂装置Aにおいては、浴室リモコン70において、たとえば自動運転スイッチがオンとされると、前記した自動湯張り動作を完了した後に、風呂保温モードに移行する。この風呂保温モードにおいては、浴槽1の湯水温度を所望の設定温度に維持するとともに、その湯量を所定範囲の水位に維持する制御がなされる。したがって、この風呂保温モードでは、必要に応じて浴槽1への注水又は注湯が行なわれるが、その注水量又は注湯量を予め決定する必要があるため、事前に浴槽1の水位が判断される。
【0031】
除菌処理部4は、湯水循環路5の途中位置に接続され、かつ内部に湯水が流通するように設けられたハウジング41内に、除菌灯40が収容された構成である。除菌灯40は、たとえば紫外線ランプであり、ハウジング41内を流通する湯水に直接接触しないように紫外線透過性を有する適当なカバー体(不図示)によって覆われて保護されている。
浴槽1の湯水の除菌処理動作は、除菌灯40及び循環ポンプP1の双方を駆動オンとし、浴槽1の湯水を湯水循環路5に流出させて除菌処理部4のハウジング41内に送り込むことにより湯水の除菌を図り、かつこの除菌を終えた湯水を浴槽1に戻す動作である。
【0032】
人感センサSaは、浴室BR内における人の存否を検出するためのセンサであって、たとえば人体から発せられる熱(赤外線)を検知可能であり、既述したように、浴室リモコン70に組み込まれ、かつその検出信号を制御部7に送信可能とされている。この人感センサSaは、本発明でいう「所定の入浴対応現象及び出浴対応現象を検出可能な検出手段」の構成要素の一例に相当する。
【0033】
本実施形態においては、人感センサSaによって人の存在が検出される現象が、本発明でいう入浴対応現象に相当し、その後に人の存在が非検出となる現象が、本発明でいう出浴対応現象に相当する。
ただし、検出処理の確実化を図るべく、好ましくは、人感センサSaによって人の存在が検出された時点で、直ちにその旨を確定させるのではなく、人の存在が検出される状態がたとえば3秒以上など、所定時間以上継続した場合に、人が存在する旨(入浴のための浴室への入室がある旨)を確定させるように構成される。同様に、人感センサSaによって人の存在が非検出になった時点で、直ちにその旨を確定させるのではなく、人の存在が非検出の状態がたとえば5分など、所定時間以上継続した場合に、人が存在しない旨(入浴者が出浴し、浴室外に退室した旨)を確定させるように構成される。
【0034】
制御部7は、マイクロコンピュータを用いて構成されており、この制御部7に通信接続された浴室及び台所のリモコン70,71のスイッチ操作、ならびに人感センサSaによる人の存在の検出の有無などに対応し、給湯装置WHの各部の動作制御やデータ処理を実行する。リモコン70,71には、複数の操作スイッチ72が設けられているが、これら複数の操作スイッチ72のいずれかは、風呂運転モードとして、除菌処理制御モードを設定するための操作スイッチ72とされている。前記除菌処理制御モードが設定された際に
は、制御部7の制御によって後述するような動作制御が実行される。
【0035】
次に、前記した風呂装置Aの作用について説明する。併せて、制御部7による動作制御の例について、図2図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0036】
前記した除菌処理制御モードの設定時において、浴槽1への湯張りがなされ、かつその後に浴室に人が入ることによって、人感センサSaによってその人の存在が検出(初回の検出)されると、湯水処理禁止期間が開始され、かつタイマセットがなされる(S1:YES,S2:YES,S3,S4)。ここで、前記湯水処理禁止期間は、人感センサSaによる人の存在が非検出になったとしても循環ポンプP1の運転を禁止する期間である。また、除菌灯40も駆動オンにはされない。
【0037】
次いで、前記タイマセット時から所定の第1の時間が経過してタイムアップになると、前記湯水処理禁止期間は解除される(S5:YES,S6)。すると、その時点で人感センサSaによる人の存在が非検出であれば、その時点で循環ポンプP1及び除菌灯40がともに駆動オンとされて除菌処理動作が実行され、またそうでない場合であっても、その後に入浴者が浴室から退室することによって人感センサSaによる人の存在が非検出になると、その時点で除菌処理動作が実行される(S7:YES,S8)。
なお、前記第1の時間は、たとえば60分程度であるが、これに限定されない。好ましくは、前記第1の時間は、リモコン70,71を操作するなどしてユーザが適宜増減変更可能とされる。この点については、後述する他の時間(第2ないし第4の時間など)も同様である。
【0038】
このような動作制御によれば、浴槽1への湯張り後に一人が入浴を終え、出浴したとしても、このことのみを条件として除菌処理動作が開始されることはなく、湯水処理禁止期間を過ぎなければ、除菌処理動作は開始されない。たとえば、二人目が入浴し、かつ出浴したとしても、その時期が湯水処理禁止期間中であれば、除菌処理動作は開始されないこととなる。したがって、入浴者の数と同数だけ除菌処理動作が頻繁に実行されることはなく、循環ポンプP1の運転回数や除菌灯40の点灯回数や点灯時間を少なくすることによってランニングコストを低減することが可能となる。また、除菌灯40の使用寿命を長くする効果も得られる。
【0039】
前記した動作制御によれば、たとえば一人目の入浴が終了し、その出浴があったとしても、除菌処理動作が開始されない場合があるが、一人の入浴のみであれば、浴槽1の湯水はさほど汚れず、雑菌類も少ない場合が殆どであると考えられる。したがって、浴槽1の湯水がとくに不衛生になることもない。また、前記した湯水処理禁止期間(所定の第1の時間)をタイムカウントするためのタイマセットは、入浴のための入室が検出された時期とされているため、たとえば誰も入浴していない状況下で湯水処理禁止期間が終了するといった事態を生じないようにすることも可能である。
【0040】
前記とは異なり、ステップS7において、人の存在が検出されず、その状態が所定の第2の時間以上継続した場合には、制御部7は人感センサSaを利用した人の存在の有無の検出動作を終了し、かつ除菌処理動作を開始させることなく、除菌処理動作の制御を終了する(S7:NO,S9:YES,S10)。このことにより、人感センサSaを利用した人の存在の有無の検出動作が、長時間にわたって不必要に実行されないこととなり、省エネなどを図ることができる。前記第2の時間は、たとえば120分程度とされる。
【0041】
本実施形態の風呂装置Aにおいては、前記したような動作制御に代えて、又は加えて、図3に示すような動作制御も実行可能とされている。
【0042】
図3のフローチャートにおいては、図2のフローチャートと同一内容のステップについては、図2のフローチャートと同一のステップ番号を付しており、その重複説明は適宜省略する。図3に示す動作制御においては、図2に示すステップS4,S5に代えて、ステップS4’,S5’が実行されるように構成されており、これ以外は図2の動作制御と同様である。
【0043】
図3の動作制御においては、湯水処理禁止期間が設定された後に、入浴者の人数を判断する処理が制御部7により実行される(S4’)。入浴者の人数は、人感センサSaによる人の存在の検出、非検出の回数をカウントすることにより判断することが可能である。次いで、入浴者の人数が所定の人数に達すると判断された場合には、その時点で湯水処理禁止期間が解除される(S5’ :YES,S6)。その後は、図2のステップS7以降のステップと同様な制御が実行される。
【0044】
前記した動作制御によれば、所定の人数が入浴することによって湯水処理禁止期間を経過しない限りは、除菌処理動作は開始されない。したがって、入浴者の数よりも除菌処理動作の回数を少なくし、ランニングコストを低減することが可能となる。除菌灯40の点灯回数も少なくなるため、除菌灯の使用寿命を長くすることも可能である。
また、所定の人数が入浴を終える迄は、除菌処理動作が開始されないが、入浴者数が少ない間は、浴槽1の湯水が多くの雑菌類を含まない場合が多いと考えられ、浴槽1の湯水が不衛生になるといった不具合も生じないようにすることが可能である。
なお、好ましくは、前記の「所定の人数」については、リモコン70,71を操作するなどして、ユーザが適宜変更できるようにされる。
【0045】
風呂装置Aにおいて、除菌処理動作が実行される場合には、図4に示すような動作制御が実行される。
【0046】
すなわち、循環ポンプP1及び除菌灯40がともにオンとされ、除菌処理動作が実行されている場合において、人感センサSaによる人の検出(入室の検出)がない状態が継続し、かつこの継続状態が所定の第4の時間以上になると、循環ポンプP1及び除菌灯40がともに駆動オフとされ、除菌処理動作が終了する(S21:YES,S22:YES,S30)。第4の時間は、除菌処理動作を行なう上で好ましいと考えられる時間であり、たとえば45分程度とされる。
【0047】
一方、前記とは異なり、除菌処理動作中に人感センサSaによる人の検出(入室の検出)があった場合には、除菌処理動作が中断され、かつタイマセットがなされる(S22:NO,S23:YES,S24,S25)。ここで、前記除菌処理動作の中断は、循環ポンプP1を駆動オフとすることにより行なわれるが、除菌灯40については駆動オン状態のままとされる。
なお、ステップS24の除菌処理動作の中断に際し、この除菌処理動作の中断回数が所定回数(たとえば、2回目)に達した場合には、除菌灯40を循環ポンプP1と同様に駆動オフとする制御を行なうように構成することもできる。このことにより、除菌灯40の使用寿命の長期化などを図る上で、より好ましいものにすることが可能である。
【0048】
次いで、その後に入浴者が浴室から退室することなく、所定の第3の時間がタイムアップ状態になった場合には、除菌灯40は駆動オフとされる(S26:YES,S27)。第3の時間は、前記した第4の時間よりも短い時間である。除菌処理動作の中断時には、除菌処理部4のハウジング41内に湯水が滞留しており、この湯水が除菌灯40の熱によって比較的高温に加熱される虞がある。このような湯水が、浴槽1に流れ込むと、入浴者に違和感を与える。これに対し、本実施形態によれば、前記第3の時間が経過した時点で除菌灯40が駆動オフとされるため、ハウジング41内の湯水が除菌灯40の熱によって
高温に加熱されることは適切に防止され、前記した違和感を生じないようにすることが可能である。
なお、ステップS27において、除菌灯40を駆動オフにした後であっても、人の存在の有無の検出を続行し、かつ第4の時間がタイプアップする前に人の存在の検出がなくなったときには、除菌処理が再開されるように構成することも可能である。
【0049】
前記した除菌処理動作の中断時おいて、入浴者が浴室から退室することが検出された場合には、除菌処理動作が再開される(S28:YES,S29)。したがって、除菌処理動作を適切なタイミングで継続し、浴槽1の湯水を衛生な状態にすることが可能となる。除菌処理動作の中断は、循環ポンプP1及び除菌灯40のうち、循環ポンプP1のみが駆動オフとされることにより行なわれているため、除菌灯40の駆動オン・オフの切り替え頻度を少なくすることが可能である。このことにより、除菌灯40の使用寿命をより長くする効果が得られることとなる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る風呂装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0051】
上述の実施形態においては、湯水処理禁止期間が、最初の入浴対応現象(浴槽への湯張り後の最初の入室)が検出されたときから開始されているが、これに代えて、最初の出浴対応現象(浴室からの退室など)が検出されたときから開始されるように構成することも可能である。
【0052】
本発明でいう入浴対応現象及び出浴対応現象の定義、及び具体例については、先に述べたとおりであるが、先に述べた具体例に限定されない。したがって、本発明でいう検出手段としては、人感センサ以外の装置・機器類を用いることができる。たとえば浴室の照明のオン・オフに基づいて人の存在を制御部が判断するような場合には、この制御部自体も、本発明でいう検出手段の構成要素に該当する。
なお、人感センサを用いる場合、この人感センサは、熱感知方式のものに限らず、浴室に人が存在するか否かを判断し得るものであればよく、その具体的な方式や種類などは限定されない。また、人感センサは、複数用いることも可能である他、浴室リモコンに組み込まれていない状態で設置することも可能である。
【0053】
本発明においては、湯水処理禁止期間の終了後において実行される除菌処理(湯水処理)は、複数回繰り返してもよい。また、本発明においては、風呂保温モードが解除されたときには、除菌処理制御モードを終了させることができる。
【0054】
本発明でいう湯水処理部は、除菌灯を備えたものに限らず、他の除菌処理手段を備えた構成とすることができる。また、除菌処理用の湯水処理部に代えて、又は加えて、湯水の濾過処理用の機器又は部材を用いて、浴槽の湯水を清浄化するようにされた構成とすることも可能である。すなわち、本発明でいう湯水処理部は、湯水濾過部として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
A 風呂装置
BR 浴室
WH 給湯装置
P1 循環ポンプ
Sa 人感センサ
1 浴槽
4 除菌処理部(湯水処理部)
40 除菌灯
5 湯水循環路
7 制御部
図1
図2
図3
図4