特許第6873401号(P6873401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873401
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】汚物流しユニット
(51)【国際特許分類】
   A47K 17/00 20060101AFI20210510BHJP
   E03D 11/14 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A47K17/00
   E03D11/14
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-122401(P2017-122401)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5058(P2019-5058A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊博
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小関 剛
(72)【発明者】
【氏名】河内 邦博
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−178460(JP,A)
【文献】 特開2006−291569(JP,A)
【文献】 特開2017−040142(JP,A)
【文献】 実開昭62−026479(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第02644791(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00−17/02
E03D 1/00−13/00
A61F 5/44
A47G 29/00−29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工肛門や人工膀胱を装着した使用者の汚物を洗浄するための汚物流しユニットであって、
建物側の壁面に取り付けられ且つ建物側の排水設備に接続される排水ソケットと、
上記壁面に固定される壁受部と、
上記壁面に向かって、ほぼ水平方向に取り付けられる汚物流し本体とを有し、
この汚物流し本体は、
ボウル部と、
上記ボウル部の背面側に配置され且つ上記ボウル部から延びる排水管路の下流端を水平方向に向けて形成した排水口部と、
上記排水口部の外周に取りつけられ且つ上記排水ソケットとの間でシールを形成するシール部材と、
上記ボウル部の背面側に形成された背面側壁部と、
上記汚物流し本体を取り付けるときに上記壁受部上に載せられるように上記背面側壁部に形成された背面側取付部と、を備え、
上記壁受部は、上記汚物流し本体の上記排水口部を上記排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けるときに、上記汚物流し本体の上記背面側取付部を載せる載置部と、上記載置部よりも前方側において上記背面側取付部の落下を防止する落下防止部と、を備えていることを特徴とする汚物流しユニット。
【請求項2】
上記載置部は、上記壁面から前方側に水平方向に延びる請求項1に記載の汚物流しユニット。
【請求項3】
上記落下防止部は、前後方向の断面においてU字形状に形成され、その前部の上端は、上記載置部以下の高さに配置される請求項1又は2に記載の汚物流しユニット。
【請求項4】
上記汚物流し本体の上端は、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者が立った状態で人工肛門や人工膀胱の汚物を上記汚物流し本体に排出しやすい高さに設けられ、且つ上記汚物流し本体の下端は、床から250mm以上の高さに設けられる請求項1乃至3の何れか1項に記載の汚物流しユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚物流しユニットに係り、特に、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者がそれらを洗浄するための汚物流しユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているようなオストメイト用汚物流しが知られている。オストメイト用汚物流しは、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者(オストメイト)がそれらを洗浄するための汚物流しとして多目的トイレや病院等の施設において用いられている。オストメイト用汚物流しは、トイレの壁面に取付けられ、壁面から使用者側に突出するボウル部を備えている。オストメイト用汚物流しのボウル部は、使用者が人工肛門や人工膀胱を洗浄でき、さらに汚物をボウル部に廃棄できるように、前側に比較的大きく開口されている。従って、オストメイト用汚物流しの重心位置は壁面よりもやや前側に位置する。ボウル部の下部には、封水を形成する封水部と、封水部の下流側の排水口とが形成される。この排水口が建物側の壁面の排水ソケットと接続され、汚物が建物側の排水配管に排出される。
【0003】
このようなオストメイト用汚物流しは、いわゆるバックハンガーにより壁面に取付られた後、ボルト等により固定されていた。従来、特許文献2及び3に記載されているように、壁掛け式の小便器や手洗器を壁面に取付けるためのバックハンガーが知られている。また、特許文献4に記載されているように、壁掛式大便器を壁面に固定するためのボルトが知られている。従来のバックハンガーを用いてオストメイト用汚物流しを壁面に取付ける場合、汚物流し本体の背面側の取付部をバックハンガーの上方からバックハンガー上に引っ掛けた状態とした上で、汚物流し本体を壁面に対して斜めに傾けた状態で保持し、バックハンガー上部を支点として、汚物流し本体の下部を壁面に対して傾けながら近づける。このとき、汚物流し本体の排水口を、斜めに傾けた状態から横向きに近づけた状態に移行しながら、壁面の排水ソケットに挿入していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178460号公報
【特許文献2】特開2016−56525号公報
【特許文献3】特開2003−265338号公報
【特許文献4】特許5403216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多目的トイレなどのトイレ空間を利用しやすくするために、上述した特許文献1に示すようなオストメイト用汚物流しの、上端の高さを保ちながら、下端を上げることで、車いすに乗った使用者の足先が当たらないようにして使い勝手を良くし、小型化することが検討されている。
しかしながら、オストメイト用汚物流しの高さ方向の小型化を進めるとき、バックハンガー上部と排水口との距離が近くなる。これにより、バックハンガー上部を支点として、汚物流し本体の下部を壁面に対して斜めに近づける際に、排水口が比較的斜めに傾けた状態のまま排水ソケットに挿入されることとなる。このとき、排水口と排水ソケットとの間をシールするシール部材がめくれる又はずれる等してシール部材の取付不良を生じさせるという課題が生じることとなった。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、壁面に仮置きの支えを形成し、汚物流し本体の背面側の取付部を仮置きの支え上に配置し、汚物流し本体の全体及びその排水口を水平方向に移動させて壁面に取付けることを検討した。この結果、排水口を排水ソケットに水平方向に挿入することにより、シール部材を良好に取付できることが見いだされた。
しかしながら、汚物流し本体が壁面に固定される前の仮置き状態において、オストメイト用汚物流しの重心位置が前側にあるため、汚物流し本体が前側に倒れるように傾いて汚物流し本体の背面側の取付部とバックハンガー上部とが外れ、汚物流し本体が落下してしまう可能性がある課題が新たに生じた。
特に、汚物流し本体は重量が比較的大きく、汚物流し本体を施工者が壁面に取付ける作業が比較的困難となるので、シール部材の取付不良を生じさせることを防ぐこと及び汚物流し本体が落下してしまうことを防ぐことが施工時の重要な課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、シール部材が斜め方向に排水ソケットに挿入されることにより、シール部材の取付状態が不良となって漏水を引き起すことを防ぐことができるとともに汚物流し本体が壁受部から外れて落下し、自身が破損する又は床材を破損させることを防ぐことができる汚物流しユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者の汚物を洗浄するための汚物流しユニットであって、建物側の壁面に取り付けられ且つ建物側の排水設備に接続される排水ソケットと、上記壁面に固定される壁受部と、上記壁面に向かって、ほぼ水平方向に取り付けられる汚物流し本体とを有し、この汚物流し本体は、ボウル部と、上記ボウル部の背面側に配置され且つ上記ボウル部から延びる排水管路の下流端を水平方向に向けて形成した排水口部と、上記排水口部の外周に取りつけられ且つ上記排水ソケットとの間でシールを形成するシール部材と、上記ボウル部の背面側に形成された背面側壁部と、上記汚物流し本体を取り付けるときに上記壁受部上に載せられるように上記背面側壁部に形成された背面側取付部と、を備え、上記壁受部は、上記汚物流し本体の上記排水口部を上記排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けるときに、上記汚物流し本体の上記背面側取付部を載せる載置部と、上記載置部よりも前方側において上記背面側取付部の落下を防止する落下防止部と、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、汚物流し本体の背面側取付部を載置部までほぼ水平方向に取付けることができ、且つ汚物流し本体の排水口部を排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。これにより、汚物流し本体の排水口部が排水ソケットに対して傾けられた状態で挿入されることを抑制することができる。よって、シール部材が斜め方向に排水ソケットに挿入されることによりシール部材の取付状態が不良となって漏水を引き起こすことを防ぐことができる。さらに、汚物流し本体を水平方向に容易に施工することができる。
また、本発明によれば、汚物流し本体の排水口部を排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けるときに、汚物流し本体の背面側取付部を壁受部の載置部に載せた状態から、汚物流し本体が自身の重心により前向きに傾いて壁受部から外れて落下することを、落下防止部により防止することができる。従って、汚物流し本体が壁受部から外れて落下し、自身が破損する又は床材を破損させることを防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記載置部は、上記壁面から前方側に水平方向に延びる。
このように構成された本発明においては、載置部が壁面から前方側に水平方向に延びるので、汚物流し本体の背面側取付部を、壁受部の載置部に載せた状態でほぼ水平方向に移動させながら取付けることができる。よって、本発明によれば、汚物流し本体の排水口部を排水ソケットに向かってより確実にほぼ水平方向に移動させることができ、シール部材の傾きやずれをより生じにくくすることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記落下防止部は、前後方向の断面においてU字形状に形成され、その前部の上端は、上記載置部以下の高さに配置される。
このように構成された本発明においては、汚物流し本体の背面側取付部を、落下防止部の上端を乗り越えるように一端上方に移動させた後に壁受部の載置部上まで下降させることなく、汚物流し本体の背面側取付部を、落下防止部の上端の上方を通過して載置部上までほぼ水平方向に移動させるのみで取付けることができる。従って、本発明によれば、汚物流し本体の排水口部が排水ソケットに対して傾けられた状態で挿入されることをより確実に防ぐとともに、汚物流し本体の排水口部を排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記汚物流し本体の上端は、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者が立った状態で人工肛門や人工膀胱の汚物を上記汚物流し本体に排出しやすい高さに設けられ、且つ上記汚物流し本体の下端は、床から250mm以上の高さに設けられる。
このように構成された本発明においては、汚物流し本体の上端は、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者が立った状態で人工肛門や人工膀胱の汚物を上記汚物流し本体に排出しやすい高さに設けられ、且つ汚物流し本体の下端が床から250mm以上の高さに設けられるような、高さ方向の比較的コンパクトな汚物流しユニットが形成される。本発明によれば、このような小型化された汚物流しユニットについて、汚物流し本体の排水口部を排水ソケットに向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚物流しユニットによれば、シール部材が斜め方向に排水ソケットに挿入されることにより、シール部材の取付状態が不良となって漏水を引き起すことを防ぐことができるとともに汚物流し本体が壁受部から外れて落下し、自身が破損する又は床材を破損させることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による汚物流しユニットを示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態による汚物流しユニットの汚物流し本体を壁面及び排水ソケットに取り付けた状態において、汚物流し本体、排水ソケット及び壁受部を中央断面により示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による汚物流しユニットの壁受部の斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による汚物流しユニットの汚物流し本体を、壁面及び排水ソケットに取り付ける前の状態において、汚物流し本体、排水ソケット及び壁受部を中央断面により示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態による汚物流しユニットの汚物流し本体を、壁面及び排水ソケットに取り付ける途中の状態において、汚物流し本体、排水ソケット及び壁受部を中央断面により示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による汚物流しユニットを説明する。まず、図1及び図2により、本発明の一実施形態による汚物流しユニットの基本構造について説明する。
【0015】
汚物流しユニット1は、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者の汚物を洗浄するためのオストメイト用の汚物流しユニットである。汚物流しユニット1は、汚物流し本体2と、汚物流し本体2の上部の壁面Wに設けられた水栓装置4と、壁面Wに設けられた水栓装置4の操作部6と、壁面Wに設けられた液体石鹸供給器8と、壁面Wに設けられた鏡10と、汚物流し本体2の洗浄動作を開始させる洗浄操作部12と、トイレットペーパーを配置するペーパーホルダ14とを備えている。
【0016】
水栓装置4は、給水源からの水を吐水することができる一般的な水栓装置である。操作部6は、使用者の操作により水栓装置4からの吐水の吐水量及び吐水温度を調節するようになっている。
【0017】
汚物流し本体2は、自身の最下部が床面Gから浮かされた状態となるように背後の壁面Wに沿って取付けられる壁掛け式の汚物流しである。また、汚物流し本体2は、後述する排水トラップ管路が壁面Wに設置された配水ソケットに接続される壁排水タイプの汚物流しである。汚物流し本体2は、表面に釉薬層が形成された陶器製である。
【0018】
汚物流し本体2は、前方側に形成されたボウル部16と、後方上部に形成された導水路18と、前方側の外周を形成するスカート部20とを備えている。
さらに、汚物流し本体2の後方上部には、導水路18に連通する洗浄水タンク(図示せず)が設けられている。洗浄水タンクは、給水源から供給される洗浄水を貯留し、使用者の洗浄操作部12の操作により洗浄水タンクの排水弁が開閉され、洗浄水を導水路18に供給するようになっている。本実施形態においては、洗浄水タンク以外にフラッシュバルブにより洗浄水を供給するものであっても良い。このようなフラッシュバルブは、給水源(図示せず)と連通し、フラッシュバルブ内には、給水弁(図示せず)が設けられており、使用者の洗浄操作部12の操作により給水弁が開閉されるようになっている。
【0019】
ボウル部16は、ボウル形状の汚物受け面22と、汚物受け面22の下方に形成された溜水部24とを備えている。ここで、ボウル部16には、汚物受け面22の後方側に後壁26が設けられている。
【0020】
ボウル部16の前方から見て後方側の中央部の少し右側に、吐水口28が形成される(図1参照)。吐水口28は、導水路18から供給される洗浄水をボウル部16内の汚物受け面22上に吐水する。この吐水口28は、汚物受け面22内を旋回しながら流下する旋回流を形成するようになっている。
【0021】
スカート部20は、汚物流し本体2の外装を構成する。汚物流し本体2のスカート部20の上端20bは、例えば前方側の上端20bは、人工肛門や人口膀胱を装着した平均的な身長の大人の使用者が立った状態で人工肛門や人工膀胱の汚物を汚物流し本体に排出しやすいと想定される所定高さ、例えば使用者の下腹部の下端程度の所定高さに設けられる。汚物流し本体2のスカート部20の上端20bは、例えば、650mm〜750mmの範囲の高さに設けられる。スカート部20の下端20aは、例えば前方側の下端20aは、車いすに乗った使用者の足先が当たらないように床面Gから250mm以上の高さに設けられる。また、スカート部20の下端20aは、例えば、200mm〜400mmの範囲の高さに設けられる。よって、汚物流しユニット1は、汚物流し本体2の上端20bの高さが使用者の使いやすいある程度の所定高さに維持されるとともに汚物流し本体2の下端20aの高さが比較的高い位置に形成されるので、高さ方向において比較的コンパクトに形成され小型化されている。
【0022】
図2に示すように、汚物流し本体2は、汚物を排出するための排水トラップ管路30を備えている。この排水トラップ管路30は、ボウル部16の汚物受け面22の底部に設けられた入口32と、この入口32から汚物受け面22を形成する後壁26の背面に沿って斜め後方に上昇して延びる上昇管路34と、この上昇管路34に連設され水平方向に延びる排水口部36と、を備えている。
【0023】
汚物流し本体2は、さらに、ボウル部16の背面側に形成された背面側壁部38と、汚物流し本体2を取り付けるときに後述する壁受部46上に載せられるように背面側壁部38に形成された背面側取付部40と、を備えている。
【0024】
背面側壁部38は、ボウル部16の背面側において左右方向に延びる壁面を形成している。背面側壁部38には、ボルトBを通す溝部38aが形成され、溝部38aに通されたボルトBとナットNとを締結することにより、汚物流し本体2を壁面Wに強固に固定できるようになっている。
背面側取付部40は、排水口部36よりも上方且つ背面側壁部38の上部から下方に垂れ下がる壁を形成している。汚物流し本体2を取り付けるときに、背面側取付部40の下端部を、壁受部46上の載置部50に載せることができる。
【0025】
汚物流しユニット1は、さらに、壁面Wに取り付けられる排水ソケット42と、排水口部36の外周に取りつけられるシール部材44と、壁面Wにボルト(図示せず)により固定される壁受部46と、を備えている。
【0026】
排水ソケット42は、管状の排水路を形成する。排水ソケット42は、壁面Wから前方且つ水平方向に延びる筒状の取付部48を備えている。排水ソケット42の取付部48は、この取付部48内に排水口部36が挿入されて取りつけられた状態において、排水口部36と接続される。排水ソケット42は、その下流端において建物側の排水設備に接続され、汚物を含む洗浄水を外部へ排出するようになっている。
【0027】
シール部材44は、排水口部36が排水ソケット42の取付部48内に挿入されて取りつけられた状態において、排水口部36と排水ソケット42との間でシールを形成する。シール部材44は、ゴム等の弾性部材により形成され、円筒状部材の外周からさらに外側に突出する環状のひだを備えている。円筒状部材の外周に沿ってひだは2つ並んで配置されている。排水口部36が取付部48内に挿入された状態で、このひだが潰れながら排水口部36と取付部48との間の隙間をシールする。
【0028】
壁受部46は、汚物流し本体2を壁面Wに取付けるいわゆるバックハンガーの機能を有する。壁受部46は、汚物流し本体2の排水口部36を壁面Wの排水ソケット42に向かってほぼ水平方向に取り付けるときに、汚物流し本体2の背面側取付部40を載せる載置部50と、載置部50よりも前方側において背面側取付部40の落下を防止する落下防止部52と、を備えている。
【0029】
載置部50は、平板状に形成され、壁面Wから前方側に水平方向に延びる。
落下防止部52は、載置部50の前部から下がった位置に底部52bを形成し、底部の前端に縦壁52cを形成している。よって、落下防止部52は、前後方向の断面においてU字形状を形成している。落下防止部52の縦壁52cの上端52aは、載置部50の高さと同じ高さに形成されている。好ましくは、この上端52aは、載置部50以下の高さに配置される。
【0030】
次に、図2図4及び図5により、本発明の一実施形態による汚物流しユニット1の汚物流し本体2の壁面W、排水ソケット42及び壁受部46への取付工程を説明する。
【0031】
図4に示すように、壁面Wには、壁受部46がボルト(図示せず)により固定される。排水ソケット42が壁面Wに取り付けられる。排水ソケット42の取付部48は壁面Wから水平方向に突出される。
【0032】
汚物流し本体2が、壁面Wに取付けられる前の状態まで準備される。汚物流し本体2の背面側壁部38の溝部38aに通されたボルトBが壁面Wに向けられた状態でナットNにより固定されている。排水口部36の外周には、シール部材44が取り付けられる。
【0033】
次に、図5に示すように、汚物流し本体2全体が壁面Wに向かってほぼ水平方向に移動される。汚物流し本体2の排水口部36が排水ソケット42の取付部48内にほぼ水平方向に挿入され、排水口部36と取付部48とが取り付けられる(図2参照)。このとき、シール部材44は、全体としてほぼ均等に挿入方向に対して後方側に倒れるとともに押しつぶされる。従って、シール部材44が傾いてずれたりその一部がめくれたりすることを防ぐとともに、排水口部36と取付部48との間の隙間を均等にシールすることができる。
【0034】
また、図5に示すように、汚物流し本体2全体が水平方向に移動される際に、背面側取付部40の下端部を、壁受部46の落下防止部52の上方を通過させながら、載置部50上に進めることができる。このように、背面側取付部40の下端部は、載置部50上までほぼ水平方向のみの移動で移動させることができる。汚物流し本体2を上下方向にほぼ移動させることなく背面側取付部40を載置部50上に仮置きする。
【0035】
図2に示すように、背面側取付部40が載置部50上に仮置きされた状態で、背面側壁部38から延びるボルトBを壁面Wの裏側のナットNにより壁面Wに強固に固定する。このように汚物流し本体2を壁面Wに強固に固定される前の段階において、汚物流し本体2の背面側取付部40を壁受部46の載置部50に載せた状態から、汚物流し本体2が自身の重心により前向きに傾き、背面側取付部40が載置部50から外れた場合にも、落下防止部52により汚物流し本体2が床面に落下することを防止することができる。
【0036】
本実施形態による汚物流しユニット1によれば、汚物流し本体2の背面側取付部40を載置部50までほぼ水平方向に取付けることができ、且つ汚物流し本体2の排水口部36を排水ソケット42に向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。これにより、汚物流し本体2の排水口部36が排水ソケット42に対して傾けられた状態で挿入されることを抑制することができる。よって、シール部材44が斜め方向に排水ソケット42に挿入されることによりシール部材44の取付状態が不良となって漏水を引き起こすことを防ぐことができる。さらに、汚物流し本体2を水平方向に容易に施工することができる。
また、本発明によれば、汚物流し本体2の排水口部36を排水ソケット42に向かってほぼ水平方向に取り付けるときに、汚物流し本体2の背面側取付部40を壁受部46の載置部50に載せた状態から、汚物流し本体2が自身の重心により前向きに傾いて壁受部46から外れて落下することを、落下防止部52により防止することができる。従って、汚物流し本体2が壁受部46から外れて落下し、自身が破損する又は床材を破損させることを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態による汚物流しユニット1によれば、載置部50が壁面Wから前方側に水平方向に延びるので、汚物流し本体2の背面側取付部40を、壁受部46の載置部50に載せた状態でほぼ水平方向に移動させながら取付けることができる。よって、本発明によれば、汚物流し本体2の排水口部36を排水ソケット42に向かってより確実にほぼ水平方向に移動させることができ、シール部材44の傾きやずれをより生じにくくすることができる。
【0038】
次に、本実施形態による汚物流しユニット1によれば、汚物流し本体2の背面側取付部40を、落下防止部52の縦壁52cの上端52aを乗り越えるように一端上方に移動させた後に壁受部46の載置部50上まで下降させることなく、汚物流し本体2の背面側取付部40を、落下防止部52の縦壁52cの上端52aの上方を通過して載置部50上までほぼ水平方向に移動させるのみで取付けることができる。従って、本発明によれば、汚物流し本体2の排水口部36が排水ソケット42に対して傾けられた状態で挿入されることをより確実に防ぐとともに、汚物流し本体2の排水口部36を排水ソケット42に向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。
【0039】
また、本実施形態による汚物流しユニット1によれば、汚物流し本体2の上端20bは、人工肛門や人工膀胱を装着した使用者が立った状態で人工肛門や人工膀胱の汚物を汚物流し本体2に排出しやすい高さに設けられ、且つ汚物流し本体2のスカート部20の下端20aが床面Gから250mm以上の高さに設けられるような、高さ方向の比較的コンパクトな汚物流しユニット1が形成される。本発明によれば、このような小型化された汚物流しユニット1について、汚物流し本体2の排水口部36を排水ソケット42に向かってほぼ水平方向に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 汚物流しユニット
2 汚物流し本体
16 ボウル部
20 スカート部
20a 下端
36 排水口部
38 背面側壁部
40 背面側取付部
42 排水ソケット
44 シール部材
46 壁受部
50 載置部
52 落下防止部
52a 上端
G 床面
W 壁面
図1
図2
図3
図4
図5