(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[防眩層]
本発明の一実施形態の光学積層体は、山頂点の算術平均曲率Spcの絶対値が1.5mm
−1以下である表面凹凸形状を有する防眩層を含む。
【0013】
防眩層表面における山頂点の算術平均曲率Spcの絶対値は1.5mm
−1以下であればよく、例えば0.1〜1.5mm
−1であり、好ましくは0.5〜1.4mm
−1、さらに好ましくは0.8〜1.3mm
−1、より好ましくは1〜1.2mm
−1である。Spcの絶対値が大きすぎると、低屈折率層の追従性が低下し、防眩層の上に低屈折率層を積層しても反射防止性が向上しない。
【0014】
防眩層表面における算術平均高さSaは0.03μm以上であってもよく、例えば0.03〜0.1μm、好ましくは0.04〜0.09μm、さらに好ましくは0.05〜0.08μm、より好ましくは0.06〜0.075μmである。Saが小さすぎると、防眩性が低下する虞がある。
【0015】
防眩層表面における二乗平均平方根傾斜Sdqは0.007以下であってもよく、例えば0.001〜0.007、好ましくは0.003〜0.0068、さらに好ましくは0.005〜0.0065、より好ましくは0.006〜0.0063である。Sdqが大きすぎると、低屈折率層の追従性が低下し、防眩層の上に低屈折率層を積層しても反射防止性が向上しない虞がある。
【0016】
防眩層表面における界面の展開面積比Sdrが0.003%以下であってもよく、例えば0.0001〜0.003%、好ましくは0.0005〜0.0028%、さらに好ましくは0.001〜0.0025%、より好ましくは0.0015〜0.002%である。Sdrが大きすぎると、低屈折率層の追従性が低下し、防眩層の上に低屈折率層を積層しても反射防止性が向しない虞がある。
【0017】
本発明の一実施形態では、防眩層表面の凹凸形状において、前記範囲を有するSpcに対して、前記範囲のSa、SdqおよびSdrを組み合わせることにより、光散乱機能による防眩性と、低屈折率層に対する追従性とをバランス良く向上できる。
【0018】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、防眩層および後述する低屈折率層表面のSpc、Sa、SdqおよびSdrは、ISO 25178に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0019】
防眩層の屈折率は1.53以下であってもよく、例えば1.4〜1.53、好ましくは1.45〜1.53、さらに好ましくは1.48〜1.53、より好ましくは1.5〜1.53である。本発明では、防眩層の屈折率層が比較的低くても、反射防止性を向上できる。屈折率が高すぎると、光透過性基材との屈折率が大きくなり、反射光の干渉による縞模様が生じて視認性が低下する虞がある。
【0020】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、防眩層および後述する低屈折率層の屈折率は、JIS K7142に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0021】
防眩層は、後述する光透過性基材の少なくとも一方の面に積層されていればよいが、取り扱い性、機械的特性、生産性などの点から、基材層の一方の面(片面のみ)に積層されているのが好ましい。
【0022】
防眩層の厚み(平均厚み)は、例えば1〜20μm、好ましくは1.5〜10μm、さらに好ましくは2〜8μm、より好ましくは4〜7μmである。
【0023】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、各層の平均厚みは、光学式膜厚計を用いて、任意の10箇所を測定し、平均値を算出して求めることができる。
【0024】
防眩層は、前記特性および後述する光学積層体の特性を有していればよく、材質は特に限定されない。防眩層を構成する材質としては、透明な各種の有機材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂など)や無機材料(ガラス、セラミックス、金属など)から選択できるが、湿式スピノーダル分解による凹凸の形成が可能であり、前記表面凹凸形状を形成し易い点から、硬化性樹脂とポリマー成分とを含む硬化性組成物の硬化物が好ましい。
【0025】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよいが、生産性などの点から、光硬化性樹脂が好ましい。光硬化性樹脂(光硬化樹脂前駆体成分)は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化または架橋して樹脂を形成可能な化合物であり、フッ素非含有光硬化性樹脂とフッ素含有光硬化性樹脂とに大別できる。
【0026】
フッ素非含有光硬化性樹脂には、単量体、オリゴマー(または樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。
【0027】
単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなど]、2官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート]、3官能以上の多官能性単量体[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3〜6官能性単量体など]などが例示できる。これらのうち、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが汎用される。
【0028】
オリゴマーまたは樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性エポキシ(メタ)アクリレート]、ポリエステル(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ポリエステル(メタ)アクリレート]、ウレタン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性ウレタン(メタ)アクリレート]、シリコーン(メタ)アクリレート[2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性シリコーン(メタ)アクリレート]、重合性基を有する(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。
【0029】
これらのフッ素非含有光硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、防眩層の機械的特性の点から、2官能以上の多官能性単量体であってもよく、3官能以上の多官能性単量体が好ましく、3〜6官能性単量体[特に、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの3〜6の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート]がさらに好ましく、3〜5官能性単量体(特に4官能性単量体)がより好ましい。
【0030】
フッ素非含有光硬化性樹脂は、2官能以上の多官能性単量体(特に3〜5官能性単量体)を50質量%以上含むのが好ましく、80質量%以上含むのがさらに好ましく、90質量%以上含むのがより好ましい。フッ素非含有硬化性樹脂は、2官能以上の多官能性単量体のみであってもよい。
【0031】
フッ素含有光硬化性樹脂は、前記フッ素非含有光硬化性樹脂である単量体およびオリゴマーのフッ化物であってもよい。フッ素含有光硬化性樹脂としては、例えば、フッ化アルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ化(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ(メタ)アクリレート、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートなどが例示できる。フッ素含有光硬化性樹脂は、市販のフッ素系重合性レベリング剤であってもよい。
【0032】
これらのフッ素含有光硬化性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、(メタ)アクリロイル基を有するフルオロポリエーテル化合物、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、フッ素およびエステル含有ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0033】
光硬化性樹脂は、少なくともフッ素非含有光硬化性樹脂を含むのが好ましく、フッ素非含有光硬化性樹脂とフッ素含有光硬化性樹脂との組み合わせが特に好ましい。フッ素非含有光硬化性樹脂の割合は、光硬化性樹脂中50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0034】
フッ素非含有光硬化性樹脂とフッ素含有光硬化性樹脂とを組み合わせる場合、フッ素含有光硬化性樹脂の割合は、フッ素非含有光硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、さらに好ましくは0.3〜6質量部、より好ましくは0.4〜5質量部である。フッ素含有光硬化性樹脂の割合が少なすぎると、反射防止性が低下する虞があり、多すぎると、機械的特性が低下する虞がある。本発明では、意外なことに、一般的には表面張力を低下させるレベリング剤として使用されるフッ素化合物であるフッ素非含有光硬化性樹脂を配合することにより、防眩層の表面粗さを大きくすることができる。そのため、前記フッ素非含有光硬化性樹脂を適切な割合で配合することにより、低屈折率層と組み合わせて防眩性と反射防止性とを両立可能な防眩層の表面凹凸形状を形成できる。
【0035】
(ポリマー成分)
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、透明性が高く、スピノーダル分解により前述の表面凹凸形状を形成できれば特に限定されないが、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系重合体、有機酸ビニルエステル系重合体、ビニルエーテル系重合体、ハロゲン含有樹脂、ポリオレフィン(脂環式ポリオレフィンを含む)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル、セルロースカーバメート、セルロースエーテルなど)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリマー成分のうち、前述の表面凹凸形状を形成し易い点から、(メタ)アクリル系重合体とポリエステルとの組み合わせが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C
1−10アルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが例示できる。
【0038】
これらの(メタ)アクリル系重合体のうち、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C
1−6アルキル、特に、アクリル酸C
1−4アルキルを含む重合体が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、例えば0〜200℃、好ましくは30〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃である。
【0040】
ポリエステルとしては、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC
2−4アルキレンテレフタレートやポリC
2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、C
2−4アルキレンアリレート単位(C
2−4アルキレンテレフタレートおよび/またはC
2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば50質量%以上)として含むコポリエステルなど]などが例示できる。コポリエステルとしては、ポリC
2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C
2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC
2−4アルキレングリコール、C
6−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(フルオレン側鎖を有する9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C
6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独また共重合体も含まれる。ポリエステルは、変性されていてもよく、ポリエステル型ウレタンやポリエーテル型ウレタンにより変性されたウレタン変性ポリエステルであってもよい。
【0041】
これらのポリエステルのうち、非結晶性コポリエステル(例えば、C
2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)が好ましく、スピノーダル分解による相分離を促進できる点から、ウレタン変性ポリエステル(特にウレタン変性芳香族ポリエステルやウレタン変性共重合ポリエステル)が特に好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル系重合体とポリエステル(特に、ウレタン変性ポリエステル)との質量比は、(メタ)アクリル系樹脂/ポリエステル=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70、より好ましくは60/40〜40/60である。(メタ)アクリル系樹脂の割合が少なすぎると、前記凹凸形状を形成するのが困難となる虞があり、逆に多すぎても同様の虞がある。
【0043】
ポリマー成分の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは30〜100質量部、さらに好ましくは40〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部である。ポリマー成分の割合が少なすぎると、前記凹凸形状を形成するのが困難となる虞があり、逆に多すぎても同様の虞がある。
【0044】
(硬化剤)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂の種類に応じて、さらに硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類またはプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。
【0045】
光重合開始剤などの硬化剤の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0046】
硬化性組成物は、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
【0047】
(他の成分)
前記硬化性組成物は、硬化性樹脂、ポリマー成分および硬化剤に加えて、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、シランカップリング剤(例えば、チオール基を有するシランカップリング剤など)、レベリング剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などを含んでいてもよい。
【0048】
他の成分の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.01〜100質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.1〜10質量部(特に0.5〜5質量部)である。
【0049】
本発明の一実施形態では、前記硬化性組成物は、前記凹凸形状を容易に形成でき、かつヘイズも低減できる点から、粒子を実質的に含まないのが好ましく、粒子を含まないのが特に好ましい。
【0050】
[低屈折率層]
本発明の一実施形態では、前記防眩層の上に低屈折率層(反射防止層)がさらに積層されていてもよい。本発明の一実施形態では、前記防眩層表面の凹凸形状に対して、高い追従性で低屈折率層を積層できるため、反射防止性も向上でき、防眩性を高度に向上できる。
【0051】
低屈折率層表面における山頂点の算術平均曲率Spcの絶対値は1.5mm
−1以下であればよく、例えば0.1〜1.5mm
−1であり、好ましくは0.3〜1mm
−1、さらに好ましくは0.4〜0.8mm
−1、より好ましくは0.5〜0.7mm
−1である。Spcの絶対値が大きすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0052】
本発明の一実施形態では、防眩層の凹凸形状に対して高い追従性の低屈折率層を形成できるため、前記防眩層のSpcの絶対値と低屈折率層のSpcの絶対値との差は小さく、前記低屈折率層のSpcの絶対値は、前記防眩層のSpcの絶対値に対して0.3〜2倍であってもよく、例えば0.5〜1.5倍、好ましくは0.6〜1.2倍、さらに好ましくは0.8〜1.1倍、より好ましくは0.9〜1倍であってもよい。
【0053】
低屈折率層表面における算術平均高さSaは0.03μm以上であってもよく、例えば0.03〜0.1μm、好ましくは0.033〜0.08μm、さらに好ましくは0.035〜0.07μm、より好ましくは0.038〜0.05μmである。Saが小さすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0054】
前記防眩層のSaと低屈折率層のSaとの差も小さく、前記低屈折率層のSaは、前記防眩層のSaに対して0.3〜2倍であってもよく、例えば0.5〜1.5倍、好ましくは0.6〜1.2倍、さらに好ましくは0.8〜1.1倍、より好ましくは0.9〜1倍であってもよい。
【0055】
低屈折率層表面における二乗平均平方根傾斜Sdqは0.007以下であってもよく、例えば0.001〜0.007、好ましくは0.002〜0.006、さらに好ましくは0.0025〜0.005、より好ましくは0.003〜0.004である。Sdqが大きすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0056】
前記防眩層のSdqと低屈折率層のSdqとの差も小さく、前記低屈折率層のSdqは、前記防眩層のSdqに対して0.3〜2倍であってもよく、例えば0.5〜1.5倍、好ましくは0.6〜1.2倍、さらに好ましくは0.8〜1.1倍、より好ましくは0.9〜1倍であってもよい。
【0057】
低屈折率層表面における界面の展開面積比Sdrが0.003%以下であってもよく、例えば0.0001〜0.003%、好ましくは0.0002〜0.002%、さらに好ましくは0.0003〜0.0015%、より好ましくは0.0005〜0.001%である。Sdrが大きすぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0058】
前記防眩層のSdrと低屈折率層のSdqとの差も小さく、前記低屈折率層のSdrは、前記防眩層のSdrに対して0.2〜2倍であってもよく、例えば0.3〜1.5倍、好ましくは0.5〜1.2倍、さらに好ましくは0.6〜1.1倍、より好ましくは0.8〜1倍であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態では、低屈折率層表面の凹凸形状において、前記範囲を有するSpcに対して、前記範囲のSa、SdqおよびSdrを組み合わせることにより、光散乱機能による防眩性と、反射防止性とをバランス良く向上できる。
【0060】
低屈折率層の屈折率は1.37以上であってもよく、前記防眩層の屈折率よりも小さければ特に限定されないが、例えば1.37〜1.45、好ましくは1.37〜1.4、さらに好ましくは1.37〜1.39、より好ましくは1.37〜1.38である。屈折率が高すぎると、反射防止性が低下する虞がある。
【0061】
低屈折率層の厚み(平均厚み)は、例えば50〜300nm、好ましくは60〜150nm、さらに好ましくは80〜120nm、より好ましくは90〜110nmである。
【0062】
低屈折率層は、前記防眩層よりも低屈折率であり、かつ前記特性および後述する光学積層体の特性を有していればよく、材質は特に限定されないが、慣用の低屈折率層(または反射防止層)を利用できる。
【0063】
慣用の低屈折率層としては、例えば、特開2001−100006号公報、特開2008−58723号公報、WO2016/039125に記載の低屈折率層などが利用できる。低屈折率層は、低屈折率樹脂を含む組成物で形成されていてもよく、硬化性樹脂とフッ素含有化合物または低屈折率の無機フィラーとを含む組成物の硬化物で形成されていてもよい。
【0064】
低屈折率樹脂としては、例えば、メチルペンテン樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂などが例示できる。
【0065】
硬化性樹脂としては、例えば、防眩層の項で例示されたフッ素非含有光硬化性樹脂などが例示できる。
【0066】
フッ素含有化合物としては、例えば、防眩層の項で例示されたフッ素含有光硬化性樹脂などが例示できる。
【0067】
低屈折率層を形成する組成物中におけるフッ素含有化合物の割合は、例えば、組成物全体に対して1質量%以上であってもよく、例えば5〜90質量%であってもよい。
【0068】
低屈折率の無機フィラーとしては、例えば、前記特開2001−100006号公報に記載のフィラーなどが使用できるが、シリカやフッ化マグネシウムなどの低屈折率のフィラー、特にシリカが好ましい。シリカは、特開2001−233611号公報、特開2003−192994号公報などに記載されている中空シリカであってもよい。これらのうち、ヘイズの上昇を抑制でき、透明性を向上できる点から、中空シリカが好ましい。
【0069】
無機フィラー(特に、中空シリカ)の個数平均粒径は100nm以下、好ましくは80nm以下(例えば、10〜80nm)、さらに好ましくは20〜70nm程度である。
【0070】
低屈折率層を形成する組成物中における低屈折率の無機フィラー(特に、中空シリカ)の割合は、組成物全体に対して1質量%以上であってもよく、例えば、5〜90質量%である。また、低屈折率の無機フィラーは、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面改質されていてもよい。さらに、低屈折率の無機フィラーを含む組成物は、塗膜強度を向上させるために、他の無機フィラーを含んでいてもよい。
【0071】
低屈折率層を形成するための組成物も、防眩層の項で例示された硬化剤、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。好ましい態様および割合も防眩層と同様である。
【0072】
[光透過性基材]
光透過性基材は、透明材料で形成されていればよく、用途に応じて選択でき、ガラスなどの無機材料であってもよいが、強度や成形性などの点から、有機材料が汎用される。有機材料としては、例えば、セルロースエステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、(メタ)アクリル系重合体などが例示できる。これらのうち、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネートなどが汎用され、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましい。
【0073】
セルロースエステルとしては、セルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC
3−4アシレートなどが挙げられる。
【0074】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレートなどが挙げられる。
【0075】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネートなどが例示できる。
【0076】
これらのうち、機械的特性や透明性、光学的等方性などのバランスに優れる点から、TACなどのセルロースアセテートが好ましい。
【0077】
光透過性基材も、防眩層の項で例示された慣用の添加剤を含んでいてもよい。好ましい態様および割合も防眩層と同様である。
【0078】
光透過性基材は、1軸または2軸延伸フィルムであってもよいが、低複屈折であり、光学的に等方性に優れる点から、未延伸フィルムであってもよい。
【0079】
光透過性基材は、表面処理(例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理など)されていてもよく、易接着層を有していてもよい。
【0080】
光透過性基材の厚み(平均厚み)は、例えば5〜2000μm、好ましくは15〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μmである。
【0081】
[光学積層体の特性]
本発明の一実施形態の光学積層体は、0.5mm幅の光学櫛を用いて測定される透過像鮮明度が85%以下である。本発明では、防眩層表面が前記凹凸形状を有するとともに、光学積層体の透過像鮮明度を調整することにより防眩性を向上できる。
【0082】
前記光学積層体の前記透過像鮮明度(0.5mm幅の光学櫛)は85%以下であればよく、例えば30〜85%、好ましくは50〜83%、さらに好ましくは60〜82%、より好ましくは70〜80%である。透過像鮮明度が高すぎると、防眩性が低下する。
【0083】
透過像鮮明度とは、フィルムを透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、フィルムからの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、フィルムが透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
【0084】
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
【0085】
すなわち、Cの値が100%に近づく程、防眩フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
【0086】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、透過像鮮明度は、JIS K7105に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0087】
本発明の一実施形態では、光学積層体は、透明性に優れている。前記光学積層体のヘイズは5%以下(特に1%以下)であってもよく、例えば0.01〜1%、好ましくは0.05〜0.8%、さらに好ましくは0.1〜0.5%、より好ましくは0.2〜0.4%である。本発明の好ましい一実施形態では、このようにヘイズが低いにも拘わらず、防眩性も向上できる。
【0088】
前記光学積層体の全光線透過率は、例えば70%以上(例えば70〜100%)、好ましくは90〜99%、さらに好ましくは92〜98%、より好ましくは93〜97%である。全光線透過率が低すぎると、透明性が低下する虞がある。
【0089】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ヘイズおよび全光線透過率は、JIS K7136に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0090】
低屈折率層を積層した光学積層体は反射防止性に優れている。低屈折率層を積層した光学積層体の視感反射率は、低屈折率層側から測定したとき、1.7以下であればよいが、反射防止性の点から、1.4以下が好ましい。好ましい前記視感反射率の範囲は0.01〜1.4程度の範囲から選択でき、例えば0.05〜1.3、好ましくは0.1〜1.2、さらに好ましくは0.2〜1.1、より好ましくは0.3〜1である。視感反射率が高すぎると、反射光によって視認性が低下する。
【0091】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、視感反射率は、JIS Z8722に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0092】
低屈折率層を積層した光学積層体において、分光反射率の極小値を示す波長は、例えば380〜780nm、好ましくは400〜700nm、さらに好ましくは450〜650nm、より好ましくは500〜600nmである。
【0093】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、分光反射率は、JIS Z8722に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0094】
前記光学積層体は、前記防眩層、前記低屈折率層に加えて、慣用の機能層として、偏光層、屈折率調整層、粘着層などと組み合わせてもよい。
【0095】
前記光学積層体の厚み(平均厚み)は、例えば3〜2000μm、好ましくは5〜1000μm、さらに好ましくは10〜500μmである。
【0096】
[光学積層体の製造方法]
前記光学積層体の製造方法としては、前記表面凹凸形状を有する防眩層を形成するための防眩層形成工程を含んでいればよい。防眩層形成工程は、前記表面凹凸形状を有する防眩層を形成できればよく、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。
【0097】
慣用の方法としては、例えば、粒子を用いて凹凸形状を形成する方法(例えば、粒子の形状に追従させて凸部を形成する方法など)、湿式スピノーダル分解により相分離させて表面に凹凸形状を形成する方法(相分離可能な樹脂成分を含む硬化性組成物の前記樹脂成分を相分離させた後に硬化する方法)、表面に凹凸形状を有する型を用いて転写する方法、切削加工によって凹凸形状を形成する方法(例えば、レーザーなどを利用した切削加工など)、研磨によって凹凸形状を形成する方法(例えば、サンドブラスト法やビーズショット法など)、エッチングによって凹凸形状を形成する方法などが挙げられる。
【0098】
これらの方法のうち、生産性などの点から、湿式スピノーダル分解により相分離させて表面に凹凸形状を形成する方法が好ましい。湿式スピノーダル分解による相分離を利用する方法では、相分離可能な樹脂成分および溶媒を含む組成物の液相から、溶媒を乾燥などにより蒸発または除去する過程で、濃度の濃縮に伴って、スピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)による相分離が生じさせることにより、防眩層表面における目的の凹凸形状(相分離構造による凹凸形状)を形成してもよい。
【0099】
相分離可能な樹脂成分の組み合わせとしては、前記防眩層の項で例示された光硬化性樹脂同士の組み合わせ、前記光硬化性樹脂と前記防眩層の項で例示されたポリマー成分(熱可塑性樹脂)との組み合わせ、前記ポリマー成分同士の組み合わせのいずれであってもよいが、防眩層表面に目的の凹凸形状を形成し易い点から、硬化性樹脂(例えば、3〜5の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと、フッ素含有光硬化性化合物との組み合わせなど)と、(メタ)アクリル系重合体(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)と、ポリエステル(例えば、ウレタン変性ポリエステルなど)との組み合わせが好ましい。
【0100】
湿式スピノーダル分解で用いられる溶媒としては、樹脂成分の種類および溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(例えば、光硬化性樹脂、ポリマー成分、硬化剤など)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類[メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など]、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類が好ましい。
【0101】
組成物中の溶質(光硬化性樹脂、ポリマー成分、硬化剤など)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば1〜80質量%、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜40質量%である。
【0102】
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0103】
前記組成物を流延または塗布した後、乾燥させて溶媒を蒸発させてもよい。乾燥は、自然乾燥であってもよいが、溶媒の沸点に応じて、例えば30〜200℃程度の範囲から選択でき、防眩層の表面に目的の凹凸形状を形成し易い点から、好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは70〜90℃、より好ましくは75〜85℃の温度で乾燥させてもよい。
【0104】
乾燥後は、光照射して硬化させることにより光学積層体が得られる。光照射は、光硬化性樹脂の種類などに応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な光源は、通常、紫外線照射装置である。
【0105】
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを利用できる。照射光量(積算光量としての照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なり、例えば10〜10000mJ/cm
2、好ましくは20〜5000mJ/cm
2、さらに好ましくは30〜3000mJ/cm
2である。光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0106】
相分離を利用する方法としては、例えば、特開2007−187746、特開2008−225195、特開2009−267775、特開2011−175601、特開2014−85371、特開2014−92657、特開2014−98771、特開2016−161859、特開2017−219622号公報記載の方法なども利用できる。
【0107】
前記光学積層体が低屈折率層を有する場合、前記光学積層体の製造方法は、防眩層の上に低屈折率層を積層する低屈折率層形成工程をさらに含む。
【0108】
低屈折率層を積層する方法としても、慣用の方法を利用でき、低屈折率層を形成する組成物を溶媒に溶解または分散した塗工液を塗布して乾燥する方法を利用でき、前記組成物が光硬化性樹脂を含む場合は、防眩層と同様の方法で乾燥後に硬化することができる。塗布方法および乾燥方法は、好ましい態様も含め、防眩層と同様である。
【0109】
溶媒としては、前記防眩層の湿式スピノーダル分解で用いられる溶媒を利用できる。前記溶媒のうち、イソプロパノール(2−プロパノール)などのアルコール類が好ましい。
【0110】
組成物中の溶質(樹脂成分、無機フィラーなど)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で0.1〜50質量%程度の範囲から選択でき、防眩層の表面に目的の凹凸形状を形成し易い点から、例えば1〜3質量%、好ましくは1.5〜3質量%、さらに好ましくは1.8〜3質量%、より好ましくは2〜3質量%である。
【0111】
[表示装置]
前記光学積層体は、防眩性に優れるため、種々の表示装置、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイなどに利用でき、特に、高精細のLCDや有機ELディスプレイとして有用である。
【0112】
詳しくは、LCDは、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型LCDであってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型LCDであってもよい。反射型LCDでは、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型LCDでは、前記反射部材から前方の光路内に前記光学積層体を配設できる。例えば、前記光学積層体は、表示ユニットの前面(視認側前面)などに配設または積層でき、特に、コリメートバックライトユニットを有し、かつプリズムシートを有さないLCDの前面に配設してもよい。
【0113】
透過型LCDにおいて、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源、発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。なお、通常、導光板の裏面には、光源からの光を出射面側へ反射させるための反射部材が配設されている。このような透過型LCDでは、通常、光源から前方の光路内に、前記光学積層体を配設でき、例えば、表示ユニットの前面などに前記光学積層体を配設または積層できる。
【0114】
有機ELディスプレイにおいて、有機ELは、各画素ごとに発光素子が構成されており、この発光素子は、通常、金属などの陰電極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層/ITOなどの陽電極/ガラス板や透明のプラスチック板などの基板で形成されている。有機ELディスプレイにおいても、前記光学積層体を光路内に配設してもよい。
【実施例】
【0115】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例および比較例で用いた原料およびフィルムの詳細ならびにコート液の調製方法は以下の通りであり、実施例および参考例で得られた光学積層体は以下の方法で評価した。
【0116】
[原料]
アクリル系重合体:大成ファインケミカル(株)製「8KX−077」
ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂:東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)UR−3500」
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETRA):ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」
重合性基を有するフッ素系化合物:(株)ネオス製「フタージェント602A」
光開始剤:IGM Resins社製「Omnirad184」
セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」
中空シリカ含有コート剤:日揮触媒化成(株)製「P−5062」
アクリル微粒子を含むコート剤:日本化工塗料(株)製「FA−3155M」
クリアハードコート剤1:日本化工塗料(株)製「FA−3155クリア」
クリアハードコート剤2:荒川化学工業(株)製「Z7503」。
【0117】
[防眩層の厚み]
光学式膜厚計を用いて、実施例および比較例で得られた積層体における任意の10箇所を測定し、平均値を算出した。
【0118】
[表面形状]
ISO 25178に準拠して、光学式表面粗さ計((株)日立ハイテクサイエンス製「バートスキャンR5500G」)を用いて、表面(防眩層表面または反射防止層表面)について、走査範囲2.5mm四方、走査回数2回の条件で、算術平均高さSa、二乗平均平方根傾斜Sdq、界面の展開面積比Sdr、山頂点の算術平均曲率Spcを測定した。
【0119】
[ヘイズおよび全光線透過率]
ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製、HM−150L2)を用いて、フィルムの凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置し、JIS K7136に準拠して測定した。
【0120】
[透過像鮮明度]
写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM−1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。
【0121】
[分光反射率および視感反射率Y]
JIS Z8722に準拠して分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス製「U−3900H」)を用いて測定した。フィルムは反射防止層の反対面を市販の黒色アクリル板に光学糊で貼り付け、裏面からの反射ができるだけ影響しないようにしたものを測定した。
【0122】
[防眩性]
得られたフィルムを市販の黒色アクリル板に光学糊で貼り付け、三波長蛍光灯を照らしたときの反射像を目視で確認し、以下の基準で評価した。
【0123】
◎:反射像のボケが強く、蛍光灯とその外側の境界線が全く区別できない
○:反射像がボケているが、蛍光灯とその外側の境界線を少し区別できる
△:反射像のボケが少なく、蛍光灯とその外側の境界線を殆ど区別できる
×:反射像がボケておらず、蛍光灯とその外側の境界線を完全に区別できる。
【0124】
[屈折率]
JIS K7142に準拠して、屈折率計(メトリコン社製「Metriconモデル2010プリズムカプラー」)を用いて、23℃において、407nm、633nm(He−Neレーザー)、826nmの条件で屈折率を測定し、589nmの屈折率を算出した。
【0125】
実施例1
アクリル系重合体26質量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂24質量部、PETRA82質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.5重量部、光開始剤1質量部をメチルエチルケトン231質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、TACフィルム上に流延した後、90℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約4μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し(積算光量約100mJ/cm
2照射、以下同様)、防眩フィルムを得た。
【0126】
実施例2
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を実施例1で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層(低屈折率層)を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は561nmであった。
【0127】
実施例3
アクリル系重合体26質量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂24質量部、PETRA82質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.5質量部、光開始剤1質量部をメチルエチルケトン231質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約4μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0128】
実施例4
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を実施例3で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は558nmであった。
【0129】
実施例5
アクリル系重合体20質量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂24質量部、PETRA82質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.25質量部、光開始剤1質量部をメチルエチルケトン231質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約4μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0130】
実施例6
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を実施例5で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は574nmであった。
【0131】
実施例7
アクリル系重合体20質量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂24質量部、PETRA82質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.1質量部、光開始剤1質量部をメチルエチルケトン231質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、TACフィルム上に流延した後、70℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約4μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0132】
実施例8
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を実施例7で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は567nmであった。
【0133】
実施例9
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール20質量部とを混合した溶液を実施例7で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は388nmであった。
【0134】
実施例10
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール10質量部とを混合した溶液を実施例7で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は389nmであった。
【0135】
参考例1
アクリル系重合体27質量部、ウレタン変性共重合ポリエステル樹脂24質量部、クリアハードコート剤2を151質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.1質量部、光開始剤1質量部をメチルエチルケトン161質量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#14を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0136】
参考例2
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を参考例1で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は554nmであった。
【0137】
参考例3
アクリル微粒子を含むコート剤50質量部、クリアハードコート剤1を100質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.1質量部を混合した。この溶液を、ワイヤーバー#8を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0138】
参考例4
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を参考例3で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は585nmであった。
【0139】
参考例5
アクリル微粒子を含むコート剤50質量部、クリアハードコート剤1を50質量部、重合性基を有するフッ素系化合物0.1質量部を混合した。この溶液を、ワイヤーバー#8を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0140】
参考例6
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール33質量部とを混合した溶液を参考例5で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#5を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は508nmであった。
【0141】
参考例7
クリアハードコート剤1を100質量部と重合性基を有するフッ素系化合物0.1質量部とを混合した。この溶液を、ワイヤーバー#8を用いて、TACフィルム上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成させた。そして、大気下でコート層に、高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩フィルムを得た。
【0142】
参考例8
中空シリカ含有コート剤100質量部と2−プロパノール11質量部とを混合した溶液を参考例7で作製したフィルムの凹凸を有する面にワイヤーバー#4を用いて流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて反射防止層を形成させた。そして、窒素雰囲気下で高圧水銀ランプからの紫外線を約5秒間照射してUV硬化処理し、防眩/反射防止フィルムを得た。380nm〜780nmの範囲で分光反射率が極小値を示す波長は531nmであった。
【0143】
実施例1〜10で得られた防眩フィルムおよび防眩/反射防止フィルムの評価結果を表1に示し、参考例1〜8で得られた防眩フィルムおよび防眩/反射防止フィルムの評価結果を表2に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
表1の結果から明らかなように、実施例の防眩フィルムおよび防眩/反射防止フィルムは、防眩性が高く、ヘイズも小さい。実施例2、4、6および8〜9の防眩/反射防止フィルムは視感反射率も低い。