特許第6873414号(P6873414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873414
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/17 20060101AFI20210510BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01T1/17 E
   G01T1/17 A
   G01T1/24
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-201173(P2017-201173)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-74423(P2019-74423A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】作村 拓人
(72)【発明者】
【氏名】中江 保一
(72)【発明者】
【氏名】松下 一之
【審査官】 山本 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−009503(JP,A)
【文献】 特表2014−535039(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/063586(WO,A1)
【文献】 特開2008−229102(JP,A)
【文献】 特開2005−324015(JP,A)
【文献】 特表2002−543393(JP,A)
【文献】 特開2013−201649(JP,A)
【文献】 特開2014−228441(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0235940(US,A1)
【文献】 特開2014−020925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 −1/16
1/167−7/12
G01N 27/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線強度データの外周補正を可能にする処理装置であって、
一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、一様な強度分布が検出されるはずであるという仮定のもとで本来検出されるはずのX線強度データからの増加分をその外側の単位領域へ拡張すべき拡張分としたとき、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出する算出部と、
前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データをその外側の単位領域へ分配する分配機能を生成する第1の機能生成部と、を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、内側の単位領域で検出されたX線強度データに対する前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データの比を用いて前記拡張率を算出することを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記内側の単位領域で検出されたX線強度データとして、内側に配置された特定範囲の単位領域で検出されたX線強度データの平均値を用いることを特徴とする請求項2記載の処理装置。
【請求項4】
前記一様なX線照射を検出した強度分布を前記分配機能で補正して得られた強度分布に対して、一様性補正機能を生成する第2の機能生成部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の処理装置。
【請求項5】
前記分配機能を用いて、測定により検出された強度分布を外周補正する補正部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の処理装置。
【請求項6】
前記補正部は、乱雑さを与えて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データを分配することを特徴とする請求項5記載の処理装置。
【請求項7】
前記補正部は、一様性補正機能を用いて、前記外周補正をした強度分布を一様性補正することを特徴とする請求項5または請求項6記載の処理装置。
【請求項8】
前記測定により検出された強度分布は、単結晶の回折測定で得られたデータであることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の処理装置。
【請求項9】
X線強度データの外周補正を可能にする方法であって、
一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、一様な強度分布が検出されるはずであるという仮定のもとで本来検出されるはずのX線強度データからの増加分をその外側の単位領域へ拡張すべき拡張分としたとき、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出するステップと、
前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データをその外側の単位領域へ分配する分配機能を生成するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
X線強度データの外周補正を可能にするプログラムであって、
一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、一様な強度分布が検出されるはずであるという仮定のもとで本来検出されるはずのX線強度データからの増加分をその外側の単位領域へ拡張すべき拡張分としたとき、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出する処理と、
前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データをその外側の単位領域へ分配する分配機能を生成する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線強度データの外周補正を可能にする処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体のセンサ層の背面に縦横にピクセルがタイリングされ、そのピクセルの背面に読み出しチップが設けられたハイブリッド型ピクセルアレイ検出器が開発されている。例えばピクセルサイズが100μmほどで構成された検出器は高い位置分解能を有しており、回折X線の測定には有効である。
【0003】
このようなハイブリッド型ピクセルアレイ検出器では、ノイズ対策またはリーク電流対策のために外周部にガードリングのパターンを形成するのが一般的である(特許文献1参照)。その構造のためX線の検出面では電界に沿って外側に感度域が広がり、ピクセルがタイリングされた領域はこの感度域より狭くなる。そして、センサ層内の外周部の電界が歪んでいるため、外周部の等電位面は曲面である(非特許文献1参照)。結果として外周部のピクセルは検出面の広い面積をカバーしており、検出面上のピクセル位置より外側の信号がピクセルに入る。
【0004】
一方、これまでに読み出しチップ間のギャップにより計数値が他の位置の計数値に比べて異なる傾向が生じるという現象に対して、仮想ピクセルを設定し、乱雑さを与えて計数値を仮想ピクセルに分配するアルゴリズムが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−57281号公報
【特許文献2】特開2017−9503号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Juan Pablo Balbuena Valenzuela, ”Development of innovative silicon radiation detectors - TDX”, P115-116
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにハイブリッド型ピクセルアレイ検出器では、検出面上のピクセル位置より外側の信号がピクセルに入るため、外周部の強度補正が必要となる。また、検出器を並べて大面積化しようとすると、検出器の外周部分が不感領域となってしまいギャップが生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外周部の強度分布の歪みを補正可能にする処理装置および方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の処理装置は、X線強度データの外周補正を可能にする処理装置であって、一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出する算出部と、前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データを外側の単位領域へ分配する分配機能を生成する第1の機能生成部と、を備えることを特徴としている。
【0010】
このように、一様なX線照射をしたときの強度分布に基づいて外周補正を可能にすることで、外周側の強度分布の歪みを補正可能にできる。その結果、X線強度データの検出領域を拡大できる。そして、複数の検出器を合わせてモジュール化したときに検出器間の検出不能なギャップを低減できる。
【0011】
(2)また、本発明の処理装置は、前記算出部が、内側の単位領域で検出されたX線強度データに対する前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データの比を用いて前記拡張率を算出することを特徴としている。これにより、外周側に特有の電位勾配により生じる歪みを補正可能にできる。
【0012】
(3)また、本発明の処理装置は、前記算出部が、前記内側の単位領域で検出されたX線強度データとして、内側に配置された特定範囲の単位領域で検出されたX線強度データの平均値を用いることを特徴としている。これにより、信頼の高いデータを用いて外周部の歪みを測る基準を生成できる。
【0013】
(4)また、本発明の処理装置は、前記一様なX線照射を検出した強度分布を前記分配機能で補正して得られた強度分布に対して、一様性補正機能を生成する第2の機能生成部を更に備えることを特徴としている。このように外周補正後に一様性補正を行うことで、1回の一様性補正で効率的に補正機能を生成できる。
【0014】
(5)また、本発明の処理装置は、前記分配機能を用いて、測定により検出された強度分布を外周補正する補正部を更に備えることを特徴としている。これにより、外周側の強度分布の歪みを補正できる機能を用いて測定データを補正できる。
【0015】
(6)また、本発明の処理装置は、前記補正部が、乱雑さを与えて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データを分配することを特徴としている。これにより、分配に自然な統計変動を与えることができ、単位領域の境界付近における分配の影響を低減することができる。
【0016】
(7)また、本発明の処理装置は、前記補正部が、一様性補正機能を用いて、前記外周補正をした強度分布を一様性補正することを特徴としている。これにより、外周補正および一様性補正を行うことができる。
【0017】
(8)また、本発明の処理装置は、前記測定により検出された強度分布が、単結晶の回折測定で得られたデータであることを特徴としている。これにより、拡張された広い範囲で同時に単結晶の複数の回折スポットを測定することができる。
【0018】
(9)また、本発明の方法は、X線強度データの外周補正を可能にする方法であって、一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出するステップと、前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データを外側の単位領域へ分配する分配機能を生成するステップと、を含むことを特徴としている。これにより、外周部の強度分布の歪みを補正可能にできる。その結果、X線強度データの検出領域を拡大でき、モジュール化したときに検出器間の検出不能なギャップを低減できる。
【0019】
(10)また、本発明のプログラムは、X線強度データの外周補正を可能にするプログラムであって、一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出する処理と、前記拡張率に基づいて、前記外周側の単位領域で検出されたX線強度データを外側の単位領域へ分配する分配機能を生成する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。これにより、外周部の強度分布の歪みを補正可能にできる。その結果、X線強度データの検出領域を拡大でき、モジュール化したときに検出器間の検出不能なギャップを低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、X線検出器の外周部の強度分布の歪みを補正可能にする。その結果、X線強度データの検出領域を拡大できる。そして、複数の検出器を合わせてモジュール化したときに検出器間の検出不能なギャップを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のX線検出システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】検出器モジュールおよびX線データ処理装置の構成を示すブロック図である。
図3】X線検出器の構成を示す断面図である。
図4】検出器モジュールの一部の構成を示す側面図である。
図5】本発明の処理装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の補正機能の生成方法を示すフローチャートである。
図7】(a)、(b)それぞれX線検出器の外周部におけるピクセルと拡張率の一例を示す模式図である。
図8】(a)、(b)それぞれX線検出器の外周部におけるピクセルと拡張率の一例を示す模式図である。
図9】(a)、(b)それぞれ補正前および補正後のX線画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
(システム全体の構成)
図1は、X線検出システム10の構成の一例を示す概略図である。図1に示すようにX線検出システム10は、X線源20、試料S、検出器モジュール50および処理装置200で構成されている。
【0024】
X線源20は、例えば、陰極であるフィラメントから放射された電子束を対陰極であるロータターゲットに衝突させてX線を発生させる。X線源20から放射されるX線は、いわゆるポイントフォーカスのX線ビームである。
【0025】
ロータターゲットの外周面には、例えば、MoまたはCuのような金属が設けられている。Moターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるMoKα線(波長0.711Å)を含むX線が放射される。Cuターゲットに電子が衝突したとき、特性線であるCuKα線(波長1.542Å)を含むX線が放射される。
【0026】
試料Sは、試料支持装置により支持されている。検出器モジュール50は、例えば試料Sで回折された回折X線または蛍光X線を検出する。処理装置200は、検出された計数値を処理し、検出結果を出力する。検出器モジュール50および処理装置200の詳細については、後述する。
【0027】
(検出器モジュールの構成)
図2は、検出器モジュール50および処理装置200の構成を示すブロック図である。検出器モジュール50は、X線の検出面に平行に整列された複数のX線検出器100を備えている。X線検出器100は、例えばフォトンカウンティング方式のピクセルアレイ型の2次元半導体検出器であり、X線の入射側にX線受光用のセンサ層110、その背面にはROIC層160を備えている。なお、X線検出器100は、2次元半導体検出器に限られず、1次元半導体検出器であってもよい。
【0028】
センサ層110で生じた信号はROIC層160で読み出される。ROIC層160は、複数のピクセル120、分別回路130、カウンタ部140、カウンタ読み出し回路150を有している。センサ層110に対し、複数のピクセル120が2次元的にアレイ化されてタイリングされており、一律の形状で原則規則的に配列されている。分別回路130は、複数のピクセル120の個々に接続されており、さらにはカウンタ部140が、分別回路130の個々に接続されている。カウンタ読み出し回路150は、各カウンタ部140に接続されている。なお、ピクセルは検出の単位領域であって、ストリップであってもよい。
【0029】
分別回路130は、ピクセル120のパルス信号をX線波長ごとに分別して出力する。カウンタ部140は、分別回路130によって波長毎に分別された信号のそれぞれの個数を計数する。カウンタ部140は、例えば、分別回路130によって分別された数のパルス信号をそれぞれカウントできるように分別数と同じ数のカウンタ回路を内蔵する。カウンタ読み出し回路150の出力信号は、エネルギーの閾値により分離されたX線の強度分布データとして処理装置200に通信線を通して伝送される。なお、データは、無線や媒体によって処理装置200に伝達されてもよい。
【0030】
処理装置200は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)、サーバまたは回路で構成されており、PCであることが好ましい。PCは、例えば、演算制御するためのCPU、データを記憶するためのメモリ、メモリ内の所定領域に記憶されたシステムソフト、およびメモリ内の他の所定領域に記憶されたアプリケーションプログラムソフト、等によって構成されている。
【0031】
処理装置200には、ユーザの入力を受け付ける入力部300としてキーボード等が接続されている。また、処理装置200には、ディスプレイやプリンタ等の出力部400が接続されている。出力部400は、処理装置200からの指示に従って測定結果を出力する。
【0032】
(センサ層および強度分布の歪み)
図3は、センサ層110の構成を示す断面図である。図3に示す例では、センサ層110は、入射層115、N層117、Nバルク層118およびP層119を備えている。入射層115は、X線が入射する表面を被覆する層である。N層117は不純物の多いN型半導体、Nバルク層118は不純物の少ないN型半導体、P層は不純物の多いP型半導体で形成されている。Nバルク層118が有感領域を形成しており、この層に入射したX線により信号が生じ、各P層は生じた信号をピクセル120に伝達する。センサ層110の表面の中央であれば、X線が入射した位置のピクセル120に信号が伝達される。
【0033】
しかし、センサ層110の外周部にはガードリング125が形成されており、ガードリング125はセンサ層110の外周側を囲って形成されている。その構造のためNバルク層118内で外周部の電界が歪んでおり、外周部の等電位面は入射層115方向に凸な曲面を形成している。そして、入射層115では、電界に沿ってピクセル120の投影領域の外側に感度域が広がっている。図3では、一点鎖線は、等電位面を示しており、この一点鎖線に示されるような電位勾配が起きているため、結果的に破線で示すように外周部のピクセル120がカバーする感度域が増え、そのままでは外周部のX線の強度分布が歪んで検出される。
【0034】
したがって、ピクセルに入ってくるピクセルより外側の信号に対し外周補正が必要となる。その場合、上記のようにこのままでは強度分布が歪むが、この感度域のX線の強度分布を適正に補正できれば、むしろ検出領域を外周側に拡張できる。しかし、単なる強度補正ではX線画像が歪む。これに対し、画像サイズの拡張をすれば適正に補正されたX線画像が得られる。例えば、1ピクセルを一辺100μmの正方形で構成した場合、感度域を300μm分外側に拡張できるということになれば3ピクセル分の位置精度が向上する。なお、強度分布の補正方法の詳細は後述する。
【0035】
センサ層110が厚いほど高エネルギーのX線の感度が向上するため、上記の補正は、センサ層110が厚いほど効果が顕著になる。例えば、厚さ300μmより厚さ1mmのX線検出器の方が補正すべき歪みが大きくなる。センサ層の厚さが300μm以上ある場合には1ピクセル以上のずれが生じるため、特に外周補正の効果が高い。
【0036】
(検出器間のギャップ)
検出領域を外周側に拡張できるということは、複数のX線検出器100を合わせてモジュール化したときに検出器間の検出不能なギャップを低減できることを意味する。図4は、検出器モジュール50の一部の構成を示す側面図である。図4は、X線検出器100を整列して配置したときの検出器間を部分的に拡大している。図4に示すように、X線検出器100を2台並べて、基板170上に配置すると端部が互いに当たるのを防止するため、互いのセンサ層110に隙間を空けて設けられている。その結果、ピクセル間ではd1の隙間が空いている。これを上記のように外周部の感度領域を拡張することで、検出領域の隙間をd2にまで縮めることができる。すなわち、物理的なピクセルの配置よりも実際には感度領域を広くとれるので隙間を狭くできる。
【0037】
(処理装置の構成)
図5は、処理装置200の構成を示すブロック図である。処理装置200は、測定データ管理部210、算出部220、第1の機能生成部230、第2の機能生成部240、記憶部250および補正部260を備えており、X線の強度分布の外周補正を可能にする。外周補正は、X線強度データの測定と同時(リアルタイム)に処理できる。
【0038】
測定データ管理部210は、X線検出器100でピクセルごとに検出された計数値を受け取り、管理する。例えば、測定データ管理部210は、ピクセル120の番地(i,j)に関連付けて、そのピクセルで検出されたX線の計数値を記憶する。
【0039】
算出部220は、一様なX線照射を検出した強度分布に基づいて、外周部のピクセルで検出されたX線強度データの拡張率を算出する。本来一様なX線を照射した場合には一様な強度分布が得られるはずであるという仮定に基づいて外周部のピクセルで生じる強度の増加分を外周側への拡張分と考えて拡張率を算出する。なお、X線強度データは、2次元検出器で検出されたデータであることが好ましいが、1次元検出器で検出されたものであってもよい。したがって、計算対象となる強度分布のデータは、1方向または2方向に整列する複数のピクセルで検出されたX線強度データである。
【0040】
算出部220は、内側のピクセルで検出されたX線強度データに対する外周側のピクセルで検出されたX線強度データの比を用いて拡張率を算出することが好ましい。これにより、外周部に特有の電位勾配により生じる歪みを補正可能にできる。なお、内側のピクセルとは、外周部における電界の歪みの影響を受けない中央寄りの位置のピクセルを指す。
【0041】
算出部220は、内側のピクセルで検出されたX線強度データとして、内側に配置された特定範囲のピクセルで検出されたX線強度データの平均値を用いることが好ましい。例えば、中央付近のピクセルのX線強度データを用いることができる。これにより、信頼の高いデータを用いて外周部の歪みを測る基準を生成できる。
【0042】
第1の機能生成部230は、拡張率に基づいて、外周側のピクセルで検出されたX線強度データを外側のピクセルへ分配する分配機能を生成する。分配機能は、具体的には各ピクセルに対するX線強度データを変換するためのテーブルで特定でき、テーブルとして記憶できる。このように、一様なX線照射をしたときの強度分布に基づいて外周補正を可能にすることで、外周部の強度分布の歪みを補正可能にできる。その結果、X線強度データの検出領域を拡大できる。
【0043】
第2の機能生成部240は、一様なX線照射を検出した強度分布を分配機能で補正して得られた強度分布に対して、一様性補正機能を生成する。このように外周補正機能に加えて一様性補正の機能を追加できる。一様性補正機能は、具体的には各ピクセルに対するX線強度データを変換するためのテーブルで特定でき、テーブルとして記憶できる。この結果、X線強度データの分配後、1回の一様性補正で効率的に補正できる。なお、球面補正機能の生成を加えてもよい。
【0044】
記憶部250は、分配機能および一様性補正機能を記憶する。分配機能は、分配前のピクセルの位置およびX線強度データの入力に対して分配後のピクセルの位置およびX線強度データを出力する。具体的には分配を可能にするための変換テーブルであることが好ましい。また、外周付近にあるピクセルについてのみ変換可能にしてもよい。分配前のピクセルは実体ピクセルのみで構成され、分配後のピクセルは実体ピクセルのみならず外周部に設けられた仮想ピクセルを含む。一様性補正機能は、分配後のピクセル位置およびX線強度データの入力に対して、各ピクセルの位置およびそのX線強度データを一様性補正したデータを出力する。
【0045】
補正部260は、分配機能を用いて測定により検出された強度分布を外周補正する。これにより、外周側の強度分布の歪みを補正できる機能を用いて測定データを補正できる。測定により検出されたX線強度データは、単結晶の回折測定で得られたデータであることが好ましい。これにより、広い範囲で同時に単結晶の複数の回折スポットを測定することができる。粉末だと強度補正で影響はないが、単結晶の場合には検出面を広げられるという効果が発揮できる。
【0046】
また、補正部260は、外周補正がなされたデータに対して一様性補正を行う一様性補正部を更に備えることが好ましい。このように外周補正後に一様性補正を行うことで効率的に補正できる。
【0047】
また、補正部260は、乱雑さを与えて、外周側のピクセルで検出されたX線強度データを分配することが好ましい。これにより、分配に自然な統計変動を与えることができ、ピクセルの境界付近における分配の影響を低減することができる。
【0048】
また、補正部260は、乱雑さとして、計数値を分割するときの境界にその計数値の標準偏差に比例する数値を最大幅とするずれを与えることが好ましい。これにより、ピクセルごとに計数値に応じた適度な乱雑さを与えることができる。すなわち、実体ピクセルの計数値の平方根に一定の係数を掛けた数値に−1以上1以下の乱数を掛けてずれを算出するのが好ましい。このような算出により、容易に乱雑さを与えた計数値を算出できる。
【0049】
具体的には次のような分配比を算出することができる。例えば計数値を2/3の領域と1/3の領域に分配する際に、以下のように面積比率に標準偏差に比例するランダムなずれσを与える。これにより、計数値に乱雑性を与えて標準偏差を拡大するとともに、総計数を保存することができる。なお、数式(1)の2/√nの2は一定の係数であり、測定ごとに値をかえてもよい。
【数1】
【0050】
(補正機能の生成方法)
図6は、補正機能の生成方法を示すフローチャートである。まず、X線検出器に対して一様なX線を照射する(ステップS1)。得られた強度分布のうち外周側の単位領域で検出されたX線強度データの拡張率を算出する(ステップS2)。拡張率を用いて外周側の単位領域で検出されたX線強度データを外側の単位領域へ分配する機能を生成する(ステップS3)。一様照射の強度分布を外周補正したデータを用いて一様性補正の機能を生成する(ステップS4)。得られた外周補正と一様性補正の補正機能を記憶する(ステップS5)。このようにして測定された強度分布に対し外周補正および一様性補正を行うことができる。なお、処理装置200のこれらの機能は、メモリおよびプロセッサにより実現可能である。
【0051】
(外周補正の原理)
外周補正の分配機能の原理を説明する。まず、簡単のため1次元検出器での分配を考える。このとき最も外側のピクセルでのX線強度データが中央付近のピクセルのX線強度データのn倍である場合、その強度比からずれている距離が分かる。それにより、強度の勾配を持たせて仮想ピクセルにX線強度データを分配できる。例えば10000になるはずの強度が11500だったら、そのピクセルは外側に1.15伸びていると仮定し、強度の分配をすることができる。この場合0.15分を外側のピクセルに分配し、分配されたピクセルの強度が外側に1.25伸びていると仮定できるとすれば、0.15と0.25はさらに外側のピクセルに分配される。これを繰り返せば、分配機能を決定できる。
【0052】
次に、2次元検出器の場合を説明する。図7(a)、(b)は、それぞれX線検出器の外周部におけるピクセルと拡張率の一例を示す模式図である。図7(a)に示す例では、実線で描かれたピクセルが実体ピクセル120を示している。また、破線で描かれたピクセルは、仮想ピクセル520を示している。測定により得られる強度分布のデータでは、実体ピクセル120にそのX線強度データが対応しており、仮想ピクセル520のデータは存在しない。仮想ピクセル520は感度域が及ぶ範囲まで仮想的に設けられる。
【0053】
図7(a)に示す例では、一様なX線を照射した際の各実体ピクセル120に対するX線強度データがA、B、C、D、D+α、D+β、E、E+α、F、Jで表されている。これらのデータについては、例えばJ=1倍(基準)、F=1.5倍、E=2倍、D=2.5倍、C≒1.5×1.5倍、B≒2×2倍、A≒2.5×2.5倍としてデータを拡張し分配することができる。なお、配置の対称性から一様照射に対して同じ強度値になる場合には同じ記号でX線強度データが表されている。
【0054】
なお、一様照射は、理想的には単位面積あたりの計数が等しくなる照射をいい、「対称性により同じ強度値になる」とは、この理想的な場合を指す。各ピクセルの倍率を実際に求める際には、統計誤差が生じるが、十分に大きな計数で測定を行い、統計誤差が十分小さくなる条件で倍率を決定すればよい。すなわち、測定の結果、収束する値を推定でき、上記の例の同じ記号で表されるピクセルの値は同じになる。このような値の決定方法は、一様性補正で係数を決定する際にも行われている。
【0055】
図7(b)では、図7(a)で示された実体ピクセル120の強度分布をもとに一点鎖線で示す拡張ピクセル530の大きさを決定している。このようにして計算された拡張ピクセル530は実体ピクセル120および仮想ピクセル520と重複する。この重複分に応じたX線強度データを実体ピクセル120および仮想ピクセル520へ分配する分配方法を決めることができる。このような分配機能は、例えばテーブルによって特定することができ、テーブルのデータとして記憶できる。
【0056】
(アーチ形の拡張ピクセル)
図8(a)、(b)は、それぞれX線検出器の外周部におけるピクセルと拡張率の一例を示す模式図である。図8(b)の曲線の一点鎖線で示すように、有感領域の等電位面が検出面側に凸な曲面であることに基づいて角に近い拡張ピクセル630(図8(b)の例では角に近い4つの区画)をアーチ形に見積もることもできる。この場合には角側に歪んだ曲線で区画された拡張ピクセル630と重複する実体ピクセル120および仮想ピクセル520にX線強度データを分配する分配機能を生成できる。なお、上記の曲線の形状は、センサ層110内に生じる電界に基づいてあらかじめ決定できる。
【0057】
(実施例)
上記の方法を用いて実際にX線画像を撮影し、外周補正を行った。図9(a)、(b)は、それぞれ補正前および補正後のX線画像を示す図である。図中のX線画像ではいずれも斜めの直線として現れた強度分布が測定されている。それぞれ強度分布として現れた直線の中央寄りの部分をもとに強度分布の境界に沿って外周側へ基準の直線L1、L2を伸ばした。その結果、図9(a)に示すように、補正前のX線画像では、外周部の領域C1において直線L1から強度分布の境界が乖離しており、強度分布が歪んでいることが分かる。一方、図9(b)に示すように、補正後のX線画像では、外周部の領域C2において直線L2と強度分布の境界が一致したままであり、外周補正により強度分布の歪みが補正されたことが分かる。
【符号の説明】
【0058】
10 X線検出システム
20 X線源
S 試料
50 検出器モジュール
100 X線検出器
110 センサ層
115 入射層
117 N
118 Nバルク層
119 P
120 ピクセル(実体ピクセル)
125 ガードリング
130 分別回路
140 カウンタ部
150 カウンタ読み出し回路
160 ROIC層
200 処理装置
210 測定データ管理部
220 算出部
230 第1の機能生成部
240 第2の機能生成部
250 記憶部
260 補正部
300 入力部
400 出力部
520 仮想ピクセル
530、630 拡張ピクセル
図1
図2
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図7
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図9