特許第6873419号(P6873419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873419
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】移動式観覧席および搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/12 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   E04H3/12 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-235515(P2016-235515)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-91048(P2018-91048A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】508144819
【氏名又は名称】マルソル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松谷 二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 明彦
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3178815(JP,U)
【文献】 特開2009−280339(JP,A)
【文献】 実開昭55−088452(JP,U)
【文献】 特開2008−075390(JP,A)
【文献】 実開昭59−011723(JP,U)
【文献】 特開平11−125019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/12
B65G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に接するベース上に人を収容するスペースが設けられた観覧席と、この観覧席に連結して観覧席を搬送する搬送装置とによって構成され、
前記観覧席のベースに係合部が設けられ、
前記搬送装置は、梃子棒と、この梃子棒の長さ方向の中間部に取り付けられて支点部を形成する車輪とを備え、前記梃子棒は下端の作用部に前記観覧席の係合部に脱着可能に係合される連結部を有し、上端の力点部に把持部が形成されていることを特徴とする移動式観覧席。
【請求項2】
前記観覧席の係合部がベースから突出する突起であり、前記突起に係合される搬送装置の連結部が前記突起に外嵌めされる筒状のカラーである請求項1に記載の移動式観覧席。
【請求項3】
前記突起とカラーに連通する孔が穿設され、この孔に係止ピンを挿入することによって観覧席と搬送装置の連結姿勢が保持される請求項2に記載の移動式観覧席。
【請求項4】
前記搬送装置は、梃子棒の支点部に該梃子棒の傾斜姿勢を支持するプレートが取り付けられ、このプレートに車輪が取り付けられている請求項3に記載の移動式観覧席。
【請求項5】
前記プレートの端部が下方に傾斜してペダルが形成されている請求項4に記載の移動式観覧席。
【請求項6】
前記観覧席のベースが四角形であり、前記ベースの四隅に係合部が設けられ、それぞれの係合部に搬送装置が連結される請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の移動式観覧席。
【請求項7】
孔を有する係合部が設けられた重量物に連結して搬送する搬送装置であり、
下端部に前記重量物の係合部に脱着可能に係合される作用部を有し、上端部を把持部とする梃子棒が、その長さ方向の中間部の支点部に取り付けられた車輪に支持されており、
前記作用部が、前記重量物の係合部と作用部を係合させて前記梃子棒で重量物を持ち上げた状態で前記係合部の孔に連通する孔を有し、
さらに、連通させた前記重量物の係合部の孔と前記作用部の孔に挿入する係止ピンを有することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外競技場、体育館、多目的ホール等の所要位置に搬送されて設置される移動式観覧席、および観覧席等の重量物を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動可能な観覧席としては、観覧席に車輪や履帯等の搬送手段を取り付けたものが知られている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1に記載された移動式観覧席は、台車上に観覧席を設けて車輪をモーターで駆動し、グラウンドに敷設したガイドに沿って前後方向に移動させる構造である。特許文献2に記載された移動式観覧席は、階段式の観覧席が重合されて収納される観覧席であり、観覧席の支持脚構造体に一対の回転輪とこれらの回転輪に巻き掛けた履帯とによる無限軌道機構を取り付けて観覧席の出し入れを行う構造である。特許文献3に記載された移動式観覧席も階段式観覧席を重合させて収納する構造であり、観覧席の出し入れのために支持フレームにローラが取り付けられている。特許文献4に記載された移動式観覧席は、観覧席の下部フレームに一対のスプロケットを取り付けて無端チェーンを巻き掛けて観覧席を前後に移動させる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−125019号公報
【特許文献2】特開2001−262848号公報
【特許文献3】特開2000−282698号公報
【特許文献4】特開昭62−32147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に記載された移動式観覧席は、いずれも観覧席と移動手段が一体であり、観覧席を所定位置に設置した後も観覧席は移動手段によって支持されている。このため、観覧席の荷重が移動手段、例えば、車輪、履帯の回転輪と係合している部分に集中し、しかも観覧席の荷重が長時間これらの部分に集中するので、設置面の芝生等が傷み易いという問題点があった。また、移動手段が常時観覧席を支えているので、移動手段は傷み易く、高い強度が求められる。さらに、設置面に敷設したガイドに車輪を係合させた観覧席は移動範囲がガイドの設置範囲内に限られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、観覧席を自由に移動させることができ、かつ所定位置に設置した観覧席の荷重を集中させない構造の移動式観覧席を提供し、さらに重量物の搬送に用いる搬送装置の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[7]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]設置面に接するベース上に人を収容するスペースが設けられた観覧席と、この観覧席に連結して観覧席を搬送する搬送装置とによって構成され、
前記観覧席のベースに係合部が設けられ、
前記搬送装置は、梃子棒と、この梃子棒の長さ方向の中間部に取り付けられて支点部を形成する車輪とを備え、前記梃子棒は下端の作用部に前記観覧席の係合部に脱着可能に係合される連結部を有し、上端の力点部に把持部が形成されていることを特徴とする移動式観覧席。
【0009】
[2]前記観覧席の係合部がベースから突出する突起であり、前記突起に係合される搬送装置の連結部が前記突起に外嵌めされる筒状のカラーである前項1に記載の移動式観覧席。
【0010】
[3]前記突起とカラーに連通する孔が穿設され、この孔に係止ピンを挿入することによって観覧席と搬送装置の連結姿勢が保持される前項2に記載の移動式観覧席。
【0011】
[4]前記搬送装置は、梃子棒の支点部に該梃子棒の傾斜姿勢を支持するプレートが取り付けられ、このプレートに車輪が取り付けられている前項3に記載の移動式観覧席。
【0012】
[5]前記プレートの端部が下方に傾斜してペダルが形成されている前項4に記載の移動式観覧席。
【0013】
[6]前記観覧席のベースが四角形であり、前記ベースの四隅に係合部が設けられ、それぞれの係合部に搬送装置が連結される前項1〜5のうちのいずれか1項に記載の移動式観覧席。
【0014】
[7]係合部が設けられた重量物に連結して搬送する搬送装置であり、
下端部に前記重量物の係合部に脱着可能に係合される作用部を有し、上端部を把持部とする梃子棒が、その長さ方向の中間部の支点部に取り付けられた車輪に支持されていることを特徴とする搬送装置。
【発明の効果】
【0015】
上記[1]に記載の移動式観覧席によれば、観覧席の係合部に搬送装置の梃子棒の作用部となる連結部で連結し、てこの原理を利用して小さい力で観覧席を持ち上げることができる。持ち上げた観覧席は車輪を走行させて所望の設置場所まで搬送し、搬送装置を外して観覧席のみがその場所に設置される。設置された観覧席の荷重は設置面に接するベースに分散されるので、設置面の損傷を最小限にとどめることができる。
【0016】
前記搬送装置は観覧席の搬送時にのみ使用する。前記搬送装置は使用時間が短いので傷みや劣化が少ない。なかでも車輪は観覧席の荷重が集中して傷み易い部分であるが、搬送中の短い時間に荷重を受けるに過ぎないので車輪の傷みや劣化が少ない。また、取り外した搬送装置は別の観覧席の搬送に使用できるので、複数の観覧席を順次搬送して設置することで、少ない台数の搬送装置で大規模の観覧席を構築できる。
【0017】
上記[2]に記載の移動式観覧席は、観覧席と搬送装置の連結手段が突起とこの突起に外嵌めされる筒状のカラーであるから、連結作業が容易である。
【0018】
上記[3]に記載の移動式観覧席では、突起とカラーに連通する孔に係止ピンを挿入することによって、観覧席と搬送装置の連結姿勢を安定して保持することができる。
【0019】
上記[4]に記載の移動式観覧席によれば、プレートによって梃子棒を任意の角度の傾斜姿勢に支持して搬送装置の操作性を高めることができる。
【0020】
上記[5]に記載の移動式観覧席によれば、ペダルに足を掛けて把持部を操作することができ、搬送装置の操作性を高めることができる。
【0021】
上記[6]に記載の移動式観覧席では、四角形の観覧席のベースの四隅に搬送装置を連結することによって観覧席の持ち上げ姿勢が安定するので、安全に搬送することができる
上記[7]に記載の搬送装置によれば、梃子棒の作用部を重量物に連結し、この原理を利用して小さい力で重量物を持ち上げ、車輪を走行させて搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の移動式観覧席の斜視図である。
図2】観覧席の分解斜視図である。
図3】観覧席の突起の位置を示す要部平面図である。
図4A】サイドフレームの突起の周辺を示す拡大図である。
図4B】サイドフレームの突起の周辺を示す拡大図である。
図5】搬送装置の斜視図である。
図6A図1の要部拡大図である。
図6B図6Aにおける6B−6B線断面図である。
図7】観覧席と搬送装置の連結手順を示す模式的説明図である。
図8】観覧席と搬送装置の配置図である。
図9A】搬送装置における他の連結部を示す斜視図である。
図9B】搬送装置におけるさらに他の連結部を示す斜視図である。
図10】観覧席の他の態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜8に、本発明の移動式観覧席の一実施形態を示す。図示例の移動式観覧席1は、4台の5人掛けベンチをひな壇状に設けた観覧席10と、2種類各2台で合計4台の搬送装置100、101とにより構成されている。前記観覧席10は運動用グラウンド等の屋外やホールなどの屋内の所要位置に搬送されて設置される。
【0024】
以下の説明において、観覧席10における前後左右の方向は、観覧席10に着席した人の前後左右の方向とし、搬送装置100、101における前後左右の方向は、搬送装置100、101の操作者の前後左右の方向とする。
[観覧席]
図1および図2に示すように、観覧席10は、各種の支柱と梁等のビーム材で組まれた骨組みに、座板40、踏み板50、側面柵60および背面柵70が取り付けられている。
【0025】
前記観覧席10の骨組みの構造は以下のとおりである。
【0026】
設置面に接する左サイドフレーム11aおよび右のサイドフレーム11b上に、前方から後方に向かって順に高さが高くなる支柱12a、12b、12c、12dが立設され、同じ高さの左右の支柱12a、12b、12c、12dがこれらの支柱12a、12b、12c、12dと同じ高さに配置された前面梁13a、13b、13c、13dで連結されている。また、前後の支柱12aと12bは低い方の支柱12aと同じ高さに配置された側面梁14aで連結され、高い方の左右の支柱12bは側面梁14aと同じ高さに配置された後面梁15aで連結されている。即ち、支柱12a、前面梁13a、側面梁14a、後面梁15aの上面は同じ高さである。さらに、前記前面梁13aと後面梁15aとが、これらの上面よりも低い位置に配置された2本のつなぎ材16によって連結されている。同様に、支柱12bと支柱12cが前面梁13b、側面梁14b、後面梁15bによって連結され、前面梁13bと後面梁15bとがつなぎ材16によって連結されている。同様に、支柱12cと支柱12dが前面梁13c、側面梁14c、後面梁15cによって連結され、前面梁13cと後面梁15cとがつなぎ材16によって連結されている。
【0027】
前記前面梁13a、13b、13c、13dのそれぞれの上面に座板取り付け用の4個の円形孔17が形成されている。前記側面梁14a、14b、14cのそれぞれの上面に側面柵取り付け用の2個の円形孔18が形成されている。また、最後部の左右の支柱12dから後方に突出する態様で柵受け部材19が設けられ、最後部の前面梁13dの中央部において後方に突出する態様で2個の棚受け部材20が設けられている。前記棚受け部19、20は上面に開口する円形孔が設けられている。
【0028】
図2図4Bに示すように、前記左サイドフレーム11aの内側面の前方部および後方部に、右サイドフレーム11bに向かって水平方向に突出する円柱形の突起30、31が形成されている。同様に、前記右サイドフレーム11bの内側面の前方部および後方部に、左サイドフレーム11aに水平方向に向かって突出する円柱形の突起31、30が形成されている。前記突起30、31には上下方向に貫通する孔32が設けられている。
【0029】
前記観覧席10が設置面に接地するのは左右のサイドフレーム11a、11bであり、これらが各種ビーム材で連結されることにより平面視四角形のベースが形成されている。そして、搬送装置100、101を連結する突起30、31が四角形のベースの四隅に設けられている。前記突起30、31は本発明における観覧席のベースに設けられた係合部に対応する。
【0030】
上述した骨組みに40および踏み板50が取り付けられ、さらに要すれば側面柵60および背面柵70が取り付けられる。なお、図2は、4個の座板40のうちの1個のみを記載し、3個の踏み板50のうちの1個のみを記載している。
【0031】
前記座板40は前後方向の両端にリップ部付フランジを有するチャンネル材からなり、なり、下面に前面梁13a、13b、13c、13dの4個の円形孔17に対応する位置に円柱形の棒状の差込部41が突設されている。前記座板40は各前面梁13a、13b、13c、13dの円形孔17に差込部41を差し込むことによって脱着自在に取り付けられる。4枚の座板40を4つの高さの異なる前面梁に13a、13b、13c、13dに取り付けることによって4段のベンチが形成される。
【0032】
なお、前記座板40は、左右方向の寸法が前面梁13a、13b、13c、13dとほぼ同じ寸法に形成されて各段に1つの長ベンチを形成しているが、右側2つの円形孔17と左側2つの円形孔17のそれぞれに短い座板を取り付けて中央に通路を設けることもできる。
【0033】
前記踏み板50は、平面寸法が前面梁13a、13b、13c、側面梁14a、14b、14cおよび後面梁15a、15b、15cで囲まれる空間の平面寸法に対応し、前記空間に落とし込んだ踏み板50をつなぎ材16で受けて支持することによって床面が形成される。また、前記踏み板50の厚みは前面梁13a、13b、13c、側面梁14a、14b、14cおよび後面梁15a、15b、15cの上面からつなぎ材16の上面までの距離に等しく、踏み板50の上面と各梁13a、13b、13c、14a、14b、14c、15a、15b、15cの上面は面一となる。
【0034】
前記側面柵60は下端に側面梁14a、14b、14cの2つの円形孔18に対応する棒状の差込部61を有している。前記側面梁14a、14b、14cの円形孔18に側面柵60の差込部61を差し込むことによって側面柵60が取り付けられる。図1、2は右側の側面梁14a、14b、14cにのみ側面柵60を取り付けた状態を示している。
【0035】
前記観覧席10は複数台を左右に並べて設置することができる。このとき、隣接する観覧席10は側面柵60を取り付けずに床面を連続させることも、側面柵60を取り付けて個々の観覧席10で区切ることもできる。
【0036】
前記背面柵70は下端に棚受け部材19、20の孔に対応する棒状の差込部71を有している。前記棚受け部材19、20の孔に背面柵70の差込部71を差し込むことによって側面柵70がを取り付けられる。図1は2個の背面柵70を取り付けた状態を示している。
【0037】
また、前記突起30、31(係合部)はネジ止め等によって左右のサイドフレーム11a、11b(ベース)に脱着可能に取り付けることもできる。
【0038】
なお、本発明における観覧席とは、座板や椅子等によって座席を設けたものだけでなく、ベース上に人を収容するスペースが設けられたもの全てを指す。例えば、平台や階段も本発明の観覧席に該当する。また、観覧席に種々の付属品を追加することも自由である。図10は、前面梁13a、13cに座板40の代わりにテーブル43を取り付け、柵受け部材19を利用して屋根45を取り付けた例である。前記屋根45は支柱46の先端に回動自在に取り付けられている。前記屋根45は、不使用時は支柱46に沿って収納されており、使用時は座席側または座席の反対側のどちらに向けてもアーム47で支持することができる。かかる移動可能な屋根45は、観覧者用屋根(鎖線)として使用する他、観覧席の背面をグラウンドに向けて設置して監督席等の屋根(実線)として利用できる。また、前記屋根45の材料としては、ターポリンのような折りたたみ可能なシートや波板等の軽量材が好ましく用いられる。
[搬送装置]
前記観覧席10の搬送には、観覧席10の突起30、31の突出方向に対応する2種類の搬送装置100、101を用いる。
【0039】
図5は前記突起30に連結する搬送装置100を示している。
【0040】
前記搬送装置100は、前記観覧席10を持ち上げる梃子棒110と、この梃子棒110の長さ方向の中間部にプレート120を介して取り付けられた車輪130とを備えている。前記梃子棒110は下端部が作用部であり上端部が力点部であり、操作者は力点部側に立って作用部を見る方向で操作するので、搬送装置100の前後方向は梃子棒の110の下端部のある方向が前であり、上端部のある方向が後ろである。また、操作者の左右の方向が搬送装置100の左右である。
【0041】
前記梃子棒110はほぼ水平に配置されたプレート120の一端側において該プレート120を斜めに貫通し、前記プレート120に取り付けられた車輪130によって傾斜姿勢で支持されている。前記車輪130は梃子棒110の支点部である。前記梃子棒110の下端に、梃子棒110と直交して水平方向に開口する円筒形のカラー111が取り付けられている。前記カラー111は梃子棒110から左側に大きく突出して、観覧席10の突起30に外嵌めにより係合される連結部112となされている。前記連結部112には、突起30の孔31に連通する孔113が穿設されている。一方、前記梃子棒110の上端部は略垂直に屈曲して把持部114となされている。前記車輪130は、水平面内で旋回して走行方向が制限されないキャスタであるが、旋回を止めて走行方向を規制することもできる。前記車輪130は全てキャスタでもよいが、安定して搬送するには搬送方向前方にキャスタを配置し、後方側に固定輪を配置するのが好ましい。前記プレート120は他端側(車輪側)が下向きに傾斜してペダル121となされ、このペダル121の下端部にコの字形の足掛かり122が取り付けられている。また、前記梃子棒110とプレート120とが交わる隅部に三角形の補強板123が取り付けられて、梃子棒110の傾斜姿勢を安定させている。前記把持部114は梃子棒110の力点部であり、前記車輪130は梃子棒110の支点部である。
【0042】
また、前記搬送装置100は、連結部112の孔113および観覧席10の突起30、31の孔32に挿入するもので、持ち上げた状態に保持する係止ピン140を備えている。前記係止ピン140はチェーン141でプレート120の端部に繋がれている。
【0043】
前記突起31に連結する搬送装置101は、カラー111の右側が連結部112となされていることを除いて前記搬送装置100と同じ構造である。
【0044】
図8に示すように、観覧席10の前側と後側に各2台の前記搬送装置100、101が配置され、それぞれの搬送装置100、101の後方に操作者が立つ。即ち、操作者から見て右側に突出する突起30には左側に連結部112を有する搬送装置100を連結し、操作者から見て左側に突出する突起31には右側に連結部112を有する搬送装置101を連結する。図6Aおよび図6Bはに右サイドフレーム11bの後方の突起31に連結された搬送装置101の要部を示している。
【0045】
なお、図示例の搬送装置100、101は突起30、31の突出方向に応じて左右を使い分けているが、梃子棒の左右両側にカラーを突出させて左右両側に連結部を形成すれば左右兼用の搬送装置となる。
[観覧席の搬送と設置]
前記観覧席10と搬送装置100、101の連結、観覧席10の搬送および設置について、図6A〜8を参照しつつ説明する。なお、図7は、右サイドフレーム11bの後方の突起31と搬送装置101との連結例を示している。
(1)図7の右側図
観覧席10は地面Gに置かれ、サイドフレーム11bが接地している。搬送装置101の梃子棒110を前方に傾けて、カラー111を下げて連結部112を観覧席10の突起31の高さに合わせ、連結部112を突起31に外嵌めする。これにより、搬送装置101が観覧席10に仮連結される。
(2)図7の中央図
搬送装置101のペダル121の足掛かり122に足を掛け、梃子棒110の把持部114を手前に引き、てこの原理により、車輪130を支点として梃子棒110の作用部である連結部112を上げる。これにより観覧席10が地面Gから持ち上げられる。てこの原理により、人力の小さい力で重量の観覧席10を持ち上げることができる。
(3)図7の左側図
観覧席10を持ち上げた状態で、梃子棒110の連結部112の孔113と観覧席10の突起31の孔32を連通させて係止ピン140を挿入する(図6A図6B参照)。前記係止ピン140の挿入により連結部112の空回りを阻止して連結状態を安定して保持できる。
前記突起30、31に連結部112を外嵌めする連結構造はビス留めなどの締結作業を必要とせず、連結作業を簡単に行える、また、突起30、31と連結部112に連通する孔32、113に係止ピン140の差し込むという簡単作業で連結力を高めることができる。
(4)図8
他の3箇所の突起30、31にも同じ要領で搬送装置100、101を連結して観覧席10を四隅で持ち上げる。観覧席10持ち上げた状態で、搬送装置100、101の梃子棒の把持部114を掴んで引っ張りあるいは押して車輪130を走行させて設置位置まで搬送する。前記車輪130は自在車輪であるからどの方向にも走行可能であるが、車輪130の旋回を止めて一定方向に走行させることもできる。
(5)観覧席10を設置場所まで搬送したら、搬送装置100、101の係止ピン140を抜いて搬送装置100、101の連結部112と観覧席10の突起30、31の連結保持を解除する。連結を解除すると、観覧席10の自重で下がって着地する。そして、梃子棒110の連結部112の突起30、31から外して観覧席10から搬送装置100、101を取り外す。
【0046】
観覧席10の使用が終われば、同じ要領で搬送装置100、101を取り付けて保管場所に搬送して搬送装置100、101を取り外す。
【0047】
搬送中の観覧席10は持ち上げられて搬送装置100、101の車輪130のみが接地しているが、観覧席10の設置後は左右のサイドフレーム11a、11bの下面で接地する。搬送中の観覧席10の荷重は車輪130に集中するが、設置後は車輪130よりも広い面積のサイドフレーム11a、11bに荷重が分散される。このため、芝生や床面等の設置面の損傷を最小限にとどめることができる。
【0048】
前記搬送装置100、101は観覧席10の搬送時にのみ使用し、前記観覧席10の設置中および保管中は使用しない。前記搬送装置100、101は使用時間が短いので傷みや劣化が少ない。なかでも車輪130は観覧席10の荷重が集中して傷み易い部分であるが、搬送中の短い時間に荷重を受けるに過ぎないので傷みや劣化が少ない。また、取り外した搬送装置100、101は別の観覧席10の搬送に使用できるので、複数の観覧席10を順次搬送して設置することで、少ない台数の搬送装置100、101で大規模の観覧席を構築できる。
【0049】
前記突起30、31の突出方向は図示例の水平方向に限定されず、上方や斜め上方に突出する突起も本発明の技術的範囲に含まれる。ただし、水平方向の突起30、31に対してはカラー111(連結部112)をスライドさせて係合できるので、連結作業が簡単であり、好ましい突出方向である。なお、本発明における観覧席と搬送装置の連結手段は突起とカラーの組み合わせに限定されず、他の連結手段に変更することができる。他の連結手段として、観覧席に設けた突起(係合部)と、この突起を下からすくい上げる連結部の組み合わせを例示できる。図9Aは、梃子棒110の先端に突起をすくい上げるブロック形の連結部150を取り付けた例である、前記連結部150の上面には、円柱状の突起30、31(図4Aおよび図4B参照)に対応する断面半円形の溝151が設けられ、溝底に突起30、31の孔32に連通する孔152が穿たれている。前記連結部150をスライドさせて溝151に突起30、31を嵌め込み、下からすくい上げるようにして観覧席を持ち上げ、突起30、31と連結部150連通する孔32、151に係止ピン140の差し込む。また、図9Bは上面がフラットな連結部155であり、前記連結部155の先端にはすくい上げた突起30、31の落下を防ぐ凸部156が形成され、上面には突起30,31の孔32に連通して係止ピン140を挿入する孔157が設けられている。
【0050】
上述したように、突起をすくい上げるタイプの連結部では、突起の形状と連結部の形状の組み合わせに制限が少なく汎用性が高い。勿論、図示した円柱形以外の形状の突起を前記連結部150、155ですくい上げることもできる。すくい上げるタイプの連結部において連結状態の安定性を高める方法として、図9Aの連結部150のように突起30、31の形状に対応する溝151を挙げることができる。また、図9Bの溝151の無い連結部155でも係止ピン140を用いることで連結状態を安定させることができる。
【0051】
前記車輪130はプレート120を介することなく梃子棒110に直接取り付けることも可能である。しかし、図示例のようなプレート120を用いればプレート120に対する梃子棒110の取り付け角度によって梃子棒110を任意の角度の傾斜姿勢に支持することができ、連結部112を観覧席10の突起30、31に近づけ、把持部114を握り易い高さになるように傾斜角度を設定することによって、搬送装置100、101の操作性を高めることができる。また、プレート120の後方部をペダル121として利用でき、ペダル121に足を掛けて把持部114を引くと力を入れ易いといった操作性を高める効果もある。搬送装置の車輪の数は限定されず、複数の車輪を並列または直列に取り付けることができる。
【0052】
また、本発明は、1つの観覧席に連結する搬送装置の数を定めるものではなく、観覧席の寸法や重量に応じて自由に増減できる。図示例の観覧席10はベースが四角形であり、四隅に搬送装置100、101を連結して観覧席10を持ち上げると観覧席10の持ち上げ姿勢が安定するので、安全に搬送することができる。もとより、観覧席はベースに係合部が設けられていれば搬送装置を連結できるので、観覧席の形態や座席数は限定されない。一つの観覧席に連結する搬送装置の数や連結位置は観覧席の形態や重量等応じて適宜設定できる。また、観覧席の安定搬送に適した連結位置に係合部を設けると設置後に係合部が邪魔になる場合は、脱着可能な係合部を採用して搬送後に係合部を取り外すようにすることもできる。
【0053】
さらに、前記搬送装置は観覧席以外の重量物の搬送にも使用できる。搬送される重量物に突起等の係合部があれば搬送装置の連結部に係合させることができるので、図示例の観覧席と同様に、てこの原理で重量物を持ち上げて車輪の走行によって搬送することができる。前記重量物として、球技のゴール、機械類、舞台、階段等を例示できる。また、前記ゴールにおいて設置面に接するべースに対応するのはゴールポストであり、ゴールポストに係合部を設けて搬送装置を連結することになる。しかし、ゴールポストに係合部が突出していると、例え競技の妨げにならない位置に取り付けたとしても危険であり好ましくない。このような場合は、係合部をネジ止め等によって脱着可能にしておき、搬送時に係合部を取り付けるようにする。その他の重量物も同様であり、設置後に邪魔になる場合は脱着自在の係合部を用いる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は観覧席等の重量物の搬送に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1…移動式観覧席
10…観覧席
11a左サイドフレーム(ベース)
11b右サイドフレーム(ベース)
30、31…突起(係合部)
32…孔
100、101…搬送装置
110…梃子棒
111…カラー(作用部)
112…連結部
113…孔
114…把持部(力点部)
120…プレート
121…ペダル
130…車輪(支点部)
140…係止ピン
G…設置面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10