(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873421
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】アルギン酸ビーズの作製装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/08 20060101AFI20210510BHJP
C12N 11/04 20060101ALN20210510BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20210510BHJP
C08J 3/12 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
B01J2/08
!C12N11/04
!A23L5/00 C
!C08J3/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-245926(P2016-245926)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-89608(P2018-89608A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】309043768
【氏名又は名称】テクノ環境機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592157098
【氏名又は名称】ラボテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517113118
【氏名又は名称】佐々木 慧
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恵
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 琢平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慧
【審査官】
小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−186446(JP,A)
【文献】
特開平03−270727(JP,A)
【文献】
実開昭63−103733(JP,U)
【文献】
特開2005−043304(JP,A)
【文献】
特開平07−275690(JP,A)
【文献】
特開2001−333745(JP,A)
【文献】
特開昭62−032882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/08
B05B 1/02
A23L 5/00
C08J 3/075、3/12
C12N 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、アルギン酸ナトリウム、微生物または食品添加物、所定の温度で加熱可能な加熱器、所定の撹拌速度で撹拌可能な撹拌機、及び、温度センサーを有し、原材料ゾルを作製する混合溶解部と、水及び塩化カルシウムを貯留し、アルギン酸大玉ビーズの製品取り出しカゴを出し入れ自在に内設するビーズ作製水槽と、混合溶解部からビーズ作製水槽へ原材料ゾルを送給する送給ポンプと混合溶解部の混合溶解容器内から吸引した原材料ゾルをビーズ作製水槽の上方の空間で落下させる注入ノズルと、を備え、注入ノズルに、注入ノズル内を流動する原材料ゾルを所定の長さに分離する分離手段を配設し、
前記分離手段が、流入ノズルに空気を供給するコンプレッサーと、前記注入ノズル内部に空気を噴射させる噴射部と、コンプレッサーと噴出部との間に配設し、流動する空気を所定のタイミングで噴出および遮断する電磁弁を備え、
前記アルギン酸大玉ビーズの径の大きさによって、前記注入ノズルにおける、前記注入ノズルに取り付けた前記噴射部の位置と前記注入ノズルの原材料ゾルを落下させる開口部の位置との間隔を変えることを特徴とするアルギン酸大玉ビーズ作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微生物の担持体やゼリー状食品などの大玉ビーズの作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ビーズとして、人工イクラと呼ばれる直径5ミリメートル程度のものが食品や理科教材として広く用いられており、また、直径10から20ミリメートルの大粒の光合成細菌ビーズ等が、一般的に手作りが主流である。特許文献1では、光合成細菌NAT株をアルギン酸ナトリウムに固定化し、直径が約1cmになるよう調整したアルギン酸ビーズの使用例が示されているが、製造方法に関する記載は無い。また、特許文献2では、イクラ様人工魚卵の製造方法として、アルギン酸ナトリウムを含有する水溶液をカルシウム塩水またはマグネシウム塩水溶液中に滴下して食品成形体を得ると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−172544
【特許文献2】特開平9−94078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルギン酸ビーズの大きな球を作るには、球形の椀型にアルギン酸ナトリウム溶液を入れて、揺らしながら少しずつ塩化カルシウム溶液等に触れさせる必要があり、量産が困難という問題があった。
【0005】
特許文献1では、光合成細菌NAT株をアルギン酸ナトリウムに固定化し、直径が約1cmになるよう調整したアルギン酸ビーズの使用例が示されているが、作製装置に関しての記載はないので、一般的な手作りであると推定され、大量生産が期待できないという問題があった。
【0006】
特許文献2では、生の天然イクラの食感が得られるイクラ様人工魚卵の製造方法が示されているが、アルギン酸ナトリウムを含有する水溶液をカルシウム塩水またはマグネシウム塩水溶液中に滴下して食品成形体を得ると記載されており、これでは直径5ミリメートル程度の大きさのものしかできないので、直径10ミリ以上の大粒のものができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、アルギン酸ビーズの、少なくとも直径10ミリから20ミリメートル程度の大きな球の量産を可能にするアルギン酸大玉ビーズの作製装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1の発明
であるアルギン酸大玉ビーズ作製装置は、水、アルギン酸ナトリウム、微生物または食品添加物、所定の温度で加熱可能な加熱器、所定の撹拌速度で撹拌可能な撹拌機、及び、温度センサーを有し、原材料ゾルを作製する混合溶解部と、水及び塩化カルシウムを貯留し、アルギン酸大玉ビーズの製品取り出しカゴを出し入れ自在に内設するビーズ作製水槽と、混合溶解部からビーズ作製水槽へ原材料ゾルを送給する送給ポンプと混合溶解部の混合溶解容器内から吸引した原材料ゾルをビーズ作製水槽の上方の空間で落下させる注入ノズルと、を備え、注入ノズルに、注入ノズル内を流動する原材料ゾルを所定の長さに分離する分離手段を配設し
、前記分離手段が、流入ノズルに空気を供給するコンプレッサーと、前記注入ノズル内部に空気を噴射させる噴射部と、コンプレッサーと噴出部との間に配設し、流動する空気を所定のタイミングで噴出および遮断する電磁弁を備え、前記アルギン酸大玉ビーズの径の大きさによって、前記注入ノズルにおける、前記注入ノズルに取り付けた前記噴射部の位置と前記注入ノズルの原材料ゾルを落下させる開口部の位置との間隔を変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、アルギン酸ナトリウムに微生物や食品添加物等の原材料を混合し、互いに溶解し合った前記原材料ゾル50の粘度を高めることによって、前記注入ノズル17内に保持可能な前記原材料ゾル50の設定量を多く取ることを可能にし、前記圧縮空気よって前記原材料ゾル50を吐き出す前記原材料ゾル50量を所定の量に調整することができ、所定の量に増やすことができる。そして、前記ビーズ作製水槽18の前記原材料ゾル50は前記固化液中に落下し没すると、液圧と前記原材料ゾル50固化の過程で起こる表面収縮によって球形に変化しながら固化するので、アルギン酸ビーズ52を大きく作製することができる。
【0010】
請求項
1記載の発明によれば、前記注入ノズル17に設けた前記圧縮空気の噴出部の位置を越えて、前記原材料ゾル50が設定量注入されたら、前記注入ノズル17内で長い丸紐状に繋がった前記原材料ゾル50を所定のタイミングで前記圧縮空気が切断し、同時に前記ビーズ作製水槽18の固化液中に、所定の直径を有するビーズとなる丸紐状の前記原材料ゾルの切れ端51を吐出することができる。
【0011】
ビーズの直径は30ミリメートル程度まで大きくすることができる。
【0012】
本発明によれば、大学等で手作りされて科学実験等に用いられている直径10ミリから20ミリの光合成細菌ビーズ等の作製の自動化が可能になり、量産も可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、例えば水質改善などに有効な微生物の球形担持体を大きくして担持量を増やすことによって、効果の持続期間を延長することが可能となる。
【0014】
更に、本発明によれば、食品として直径5ミリ程度の人工イクラだけではなく、甘辛、様々な味、様々な色、様々な大きさの食用ゼリーボールの量産が可能となる。
【0015】
ゼリーボールには食用以外にも、園芸肥料、土質改良材、養魚飼料など様々な用途がある。
【0016】
更に、本発明によれば、学術研究用の多種の微生物の担持試料の作製が極めて能率的に行われ、従来は大きな手間がかかることによって避けられていた実験が実施されることによって、新たな有用微生物の発見や効果の確認実験などの研究に寄与することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】アルギン酸大玉ビーズの作製装置の概要図である。
【
図2】アルギン酸大玉ビーズの作製装置の圧縮空気のフロー図である。
【
図4】(a)小さいビーズの注入ノズルの実施例を示す斜視図である。
【
図4】(b)中間の大きさのビーズの注入ノズルの実施例を示す斜視図である。
【
図4】(c)大きいビーズの注入ノズルの実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明であるアルギン酸大玉ビーズ作製装置は、
図1または
図3に示すように、水と、アルギン酸ナトリウムと、微生物または食品添加物と、所定の温度で加熱可能な加熱器12と、所定の撹拌速度で撹拌可能な撹拌機13と、温度計14とを有し、原材料ゾル50を作製する混合溶解部10aと、水と、塩化カルシウムとを貯留し、アルギン酸大玉ビーズ52の製品取り出しカゴ19を出し入れ自在に内設するビーズ作製水槽18と、前記混合溶解部10aから前記ビーズ作製水槽18へ原材料ゾルを送給する送給ポンプ16と、前記混合溶解部10aの混合溶解容器11内から吸引した原材料ゾル50を前記ビーズ作製水槽18の上方の空間で落下させる注入ノズル17と、前記混合溶解部10a、前記送給ポンプ16及び前記ビーズ作製水槽18を制御する制御部と、を備え、前記注入ノズル17に、注入ノズル17内を流動する原材料ゾル50を所定の長さに分離する分離手段を配設している。また、混合溶解部10a、送給ポンプ16、分離手段の圧力調節計25と電磁弁26を制御する制御部を備えている。
【0019】
また、
図2又は
図4に示すように、前記分離手段が注入ノズル17に空気21を供給するコンプレッサー22と、注入ノズル17内部に空気を噴射させる噴射部と、コンプレッサー22と噴出部との間に配設し、流動する空気を所定のタイミングで噴出および遮断する電磁弁26を備えている。
【0020】
次にアルギン酸大玉ビーズ作製装置の構成要素について説明する。まず、混合溶解部10aについて説明する。
図1に示すように、前記混合溶解部10aは混合溶解容器11と加熱器12と撹拌機13と温度センサー14と吸引ノズル15とで構成されている。混合溶解容器11内には、水、アルギン酸ナトリウム、微生物または食品添加物が貯留されている。
【0021】
前記混合溶解容器11は前記加熱器12の上にあって、前記撹拌機13と前記温度センサー14と前記吸引ノズル15が取り付けられている。
【0022】
温度センサー14により原材料ゾル50の温度を計測し、原材料ゾル50が所定の粘度になるように、所定の温度に上昇するまで加熱器12により加熱し、所定の温度に到達したら加熱を停止させる制御をし、原材料ゾル50を所定の温度で所定の時間保持する制御をする。
【0023】
攪拌機13は、原材料ゾル50が所定の粘度になるように、所定の回転速度で所定の時間で撹拌する制御をする。
【0024】
次に、原材料ゾル50の搬送経路について説明する。前記搬送経路は、前記混合溶解部10aの吸引ノズル15と、送給ポンプ16と、ビーズ作製水槽18上部に配設された注入ノズル17と、それらを連結するチューブとで構成されている。
【0025】
前記吸引ノズル15は、筒状であって、所定の粘度を有する原材料ゾル50を供給できるものであればよい。
【0026】
送給ポンプ16は、安定して一定量を送給できるものであればよく、定量ポンプが望ましい。
【0027】
注入ノズル17は、ビーズ作製水槽18の上部の空間に垂下され、最下端に吐出口を設け、最下端の上部近傍に分離手段の空気を噴射させる噴射部を設けている。
【0028】
次に、分離手段について説明する。分離手段は、空気21を圧送するコンプレッサー22と、コンプレッサーの下流に設けたバッファタンク23と、バッファタンク23に連結したドレンコック24と、バッファタンク23の下流に設けた電磁弁26と、バファタンク23と電磁弁26の中間に設けた圧力調節計25と、電磁弁26の下流に設けた空気を噴射させる噴射部とを備える。
【0029】
前記分離手段は、注入ノズル17内を一定速度で一定量流動し所定の粘度を有する略棒状体の原材料ゾル50を所定の長さに瞬時に分離出来るように、コンプレッサー22の定格を選択し、バッファタンク23の容量を設定し、電磁弁26及び圧力調整計25の空気圧を制御する。
【0030】
また、
図4に示すように、注入ノズル17の噴射部の配置の形態は、ビーズの大きさに対応して末端からの噴射部の位置を、ビーズの径を大きくする場合は
図4(c)に示すように注入ノズル末端の開口部からの距離を長く、ビーズの径を小さくする場合は
図4(a)に示すように注入ノズル末端の開口部からの距離を短く、ビーズの径を中間の大きさにする場合は
図4(b)に示すように注入ノズル末端の開口部からの距離を所定の長さにする。
【0031】
外気から注入ノズル17までの圧縮空気の経路は、空気21、コンプレッサー22、バッファタンク23、圧力調節計25、電磁弁26を経て注入ノズル17に至る。
【0032】
次に、ビーズ作製水槽18について説明する。ビーズ作製水槽18の中には取り出し自在の製品取り出しカゴ19が内設され、水槽の外部には排水口35が取り付けられている。また、ビーズ作製水槽18内には、水及び塩化カルシウムが貯留されている。
【0033】
次に、使用方法について説明する。前記混合溶解容器11に水を入れて、前記加熱器12の上に置き、前記撹拌機13と前記温度センサー14と前記吸引ノズル15を取り付け、原材料ゾル50に適した所定の温度、所定の撹拌速度と撹拌時間を設定し、タッチパネル31で「自動」を押して自動運転すると、加熱と撹拌を開始し、原材料ゾル50の水温が設定温度に達したら、アルギン酸ナトリウムを少しずつ投入し、アルギン酸ナトリウムを溶解させる。
【0034】
溶解した前記アルギン酸ナトリウム溶液を約8時間経過後、前記タッチパネル31で再スタートし、所定の温度に達したら、微生物や食品添加物等の原材料を少しずつ投入し、これで原材料ゾル50が生成される。
【0035】
前記原料ゾル50は、送給ポンプ16によって吸引ノズル15から吸い上げられて、ビーズ作製水槽18上部に配設された注入ノズル17に送り込まれる。
【0036】
一方、ビーズ作製水槽18については、ビーズ作製水槽18内に水を入れ、塩化カルシウムを加えて手動で撹拌溶解しておく。これでビーズ作製水槽の固化液の用意ができたので、タッチパネル31で「自動」を押すと、注入ノズル17内を一定速度で一定量流動し所定の粘度を有する略棒状体の原材料ゾル50を分離手段の空気の噴射部からの空気の噴射により瞬時に所定の長さに分離し、アルギン酸大玉ビーズ52を自動的に作製することができる。
【0037】
前記注入ノズル17の中の前記原材料ゾル50は、前記注入ノズル17の途中に設けた配管口から噴入する圧縮空気によって、筒状ノズルの内面を略棒状に満たす前記原材料ゾル50の紐の端末部から正確な長さ、言い換えれば正確な体積の位置で空圧切断し、切断片を固化液中に吐出する。この作動が自動的に繰り返される。
【0038】
前記固化液中に吐出され落下した前記原材料ゾル50の切断片は、前記固化液中で表層部から固化収縮を始め、表面張力に依って、丸棒状から球状に形状変化しつつ固化が進行する。
【0039】
ゼリー状に固化したアルギン酸大玉ビーズは、前記製品カゴで回収される。
【符号の説明】
【0040】
10 アルギン酸大玉ビーズの作製装置の概要図
10a 混合溶解部
11 混合溶解容器
12 加熱器
13 撹拌機
14 温度センサー
15 吸引ノズル
16 送給ポンプ
17 注入ノズル
18 ビーズ作製水槽
19 製品取り出しカゴ
20 アルギン酸大玉ビーズの作製装置の圧縮空気のフロー図
21 空気
22 コンプレッサー
23 バッファタンク
24 ドレンコック
25 圧力調節計
26 電磁弁
27a 小ぶりな大玉ビーズ作製ノズル
27b 標準的な大玉ビーズの作製ノズル
27c 特大ビーズの作製ノズル
30 実施例を示す装置本体正面図
31 タッチパネル
32 電源スイッチ
33 温度調節器
34 送給ポンプ速度調節器
35 排水口
40 実施例を示すビーズ作製ノズルの斜視図
50 原材料ゾル
51 原材料ゾルの切断片
52 アルギン酸大玉ビーズ