特許第6873432号(P6873432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873432バガス由来植物改良組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873432
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】バガス由来植物改良組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 5/00 20060101AFI20210510BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C05F5/00ZAB
   B09B3/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-237472(P2018-237472)
(22)【出願日】2018年12月19日
(65)【公開番号】特開2020-97508(P2020-97508A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2021年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518451415
【氏名又は名称】株式会社うふあがりファーム
(73)【特許権者】
【識別番号】512228347
【氏名又は名称】株式会社アミノ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】宮城 一也
【審査官】 小出 輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−12072(JP,A)
【文献】 特開平9−2885(JP,A)
【文献】 特開2001−104000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 5/00
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物改良組成物の製造方法であって、
バガス、第1の炭素源、および水を含む混合液を培養して得た種菌と、
第2の炭素源と、
水と
を培養することを包含する、方法。
【請求項2】
植物改良組成物の製造方法であって、
(1)バガス、第1の炭素源、および水を含む第1の混合液を培養して種菌を得る工程と、
(2)(1)で得られた種菌を、第2の炭素源と水とを含む第2の混合液を培養する工程と
を包含する、方法。
【請求項3】
前記第1の炭素源および第2の炭素源がそれぞれ廃糖蜜である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1の炭素源および第2の炭素源の糖度がそれぞれ約10〜約40%である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の混合物中の前記第1の炭素源の濃度が約0.04(v/v)%〜約4(v/v)%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2の混合物中の前記第2の炭素源の濃度が約20(v/v)%〜約40(v/v)%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記植物がサトウキビである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウキビ搾汁後の残渣から得られる植物改良組成物と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
サトウキビを搾汁した場合、全体の約25%が残渣となる。この残渣は、一般にバガスと称される。このバガスは、パルプや食品への転用技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、サトウキビ栽培を主産業とする北大東島などの離島では、より有効に現地においてバガスを有効利用する技術開発がなお望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の発明者らは、サトウキビ搾汁後の残渣であるバガスから、植物改良効果を奏する組成物が得られることを予想外に発見し、本発明を完成させた。
【0005】
さらに、本発明のバガス由来植物改良組成物は、バガスと糖蜜とを混合して種菌を培養し、それをさらに糖蜜と混合して再度培養するという2ステップで得ることができ、簡便な製造方法によって得ることができる。バガスと糖蜜というサトウキビ由来の成分のみによって得る点も有利であり得、特に離島での地産地消を考慮すると顕著である。
【0006】
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
植物改良組成物の製造方法であって、
バガス、第1の炭素源、および水を含む混合液を培養して得た種菌と、
第2の炭素源と、
水と
を培養することを包含する、方法。
(項目2)
植物改良組成物の製造方法であって、
(1)バガス、第1の炭素源、および水を含む第1の混合液を培養して種菌を得る工程と、
(2)(1)で得られた種菌を、第2の炭素源と水とを含む第2の混合液を培養する工程と
を包含する、方法。
(項目3)
前記第1の炭素源および第2の炭素源がそれぞれ廃糖蜜である、項目1または2に記載の製造方法。
(項目4)
前記第1の炭素源および第2の炭素源の糖度がそれぞれ約10〜約40%である、項目3に記載の製造方法。
(項目5)
前記第1の混合物中の前記第1の炭素源の濃度が約0.04(v/v)%〜約4(v/v)%である、項目1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
(項目6)
前記第2の混合物中の前記第2の炭素源の濃度が約20(v/v)%〜約40(v/v)%である、項目1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
(項目7)
前記植物がサトウキビである、項目1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において特に限定しない限り、廃糖蜜などの液体の濃度は容量パーセント濃度(v/v%)であり、塩などの個体の濃度は重量パーセント濃度(w/w%)である。
【0008】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0009】
本明細書において使用される用語「バガス」は、サトウキビから糖が製造される過程において、原料のサトウキビからジュースを抽出した後の残余繊維性材料をいう。
【0010】
本明細書において使用される用語「植物改良」または「植物の改良」とは、植物の育成および/または栽培における任意の好ましい改良をいう。この場合の改良としては、例えば、樹勢の回復、成長促進、葉色および/またはうまみ成分の増量、収量の増加、耐病性の改善、害虫耐性の改善、およびこれらの任意の組み合わせなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0011】
本明細書において使用される用語「植物改良組成物」とは、上記植物改良の効果を奏する組成物をいう。
【0012】
本明細書において使用される用語「肥料」とは、植物の栽培のために土壌に混入または散布される物質をいう。
【0013】
本明細書において使用される用語「炭素源」とは、発酵において乳酸菌が炭素源とし得る任意の物質をいう。このような炭素源としては、グルコース、ラクトース、マルトース、フルクトース、キシロースなどの糖類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、炭素源として、これらの糖類を含む廃糖蜜を用いてもよい。
【0014】
本明細書において使用される用語「廃糖蜜」とは、「糖蜜」ともいい、サトウキビやてん菜から蔗糖を生産する際に副成する、粘調質で黒褐色の液体をいう。蔗糖製造の際の副産物ではあるが、液体中にはスクロースを主とする約30%の糖分をはじめ、アミノ酸やビタミン類、ミネラルなどの栄養素を多く含む。本発明における廃糖蜜は、代表的には糖度約10〜約40%のものであり、好ましくは糖度約20〜約35%のものであり、より好ましくは糖度約25〜約30%のものである。また、本発明の廃糖蜜としてはアルコール発酵後のものを使用することもできる。アルコール発酵後の廃糖蜜を、アルコール発酵前の廃糖蜜と一緒に使用することもできる。アルコール発酵後の廃糖蜜の糖度は約2%〜約10%であり、好ましくは約3%〜約5%である。
【0015】
本明細書において使用される用語「糖度」とは、スクロースの含有量を重量百分率で表したものである。糖度は、当該分野で公知の任意の方法で測定することができ、例えば検糖計法によって測定することができる。検糖計としては、例えば、屈折検糖計、旋光検糖計などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において使用される用語「塩」とは、乳酸菌などの細菌の増殖に利用可能な任意の塩をいう。塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、および、塩化カルシウムが挙げられるがこれらに限定されない。なお、本発明における塩濃度の測定は、当該分野で周知の任意の方法によって行うことができ、例えばモール法によって行うことができる。
【0017】
本明細書において使用される用語「酵母」とは、「大部分の生活環を単細胞で経過する真菌類」をいう。代表的な酵母としては、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属に属する酵母、特にSaccharomyces cerevisiae、Saccharomyces ludwigii、およびSchizosaccharomyces pombeが挙げられるがこれらに限定されない。
【0018】
本明細書において使用される用語「約」とは、後に続く数値の±10%の範囲を意味する。
【0019】
(種菌の調製)
好ましくは、本発明において使用する種菌は、炭素源(例えば、廃糖蜜)、バガスおよび水の混合液、あるいはその希釈液もしくは濃縮液を培養することによって得られ得る。例えば炭素源として糖度が約30%の廃糖蜜を使用する場合、その廃糖蜜の濃度は、種菌の増殖に適切なように当業者が適宜決定することができ、好ましくは約0.04(v/v)%〜約4(v/v)%、より好ましくは約0.2(v/v)%〜約2(v/v)%、さらにより好ましくは約0.3(v/v)%〜約0.6(v/v)%、最も好ましくは約0.4(v/v)%である。好ましくは、本発明の種菌の培養には塩は使用しない。
【0020】
種菌の培養には適宜塩を使用してもよい。培養液に使用する塩は、好ましくは塩化ナトリウムである。乳酸菌液の調製のための塩濃度は、乳酸菌の増殖に適切なように当業者が適宜決定することができ、好ましくは約0.05(w/w)%〜約5(w/w)%、より好ましくは約0.1(w/w)%〜約2.5(w/w)%、さらにより好ましくは約0.2(w/w)%〜約1(w/w)%、最も好ましくは約0.4〜約0.7(w/w)%である。
【0021】
種菌の培養は、通常約20℃〜約40℃で行われ、好ましくは常温(約37℃)で行われる。培養時間は、所望の乳酸菌濃度が得られれば任意の時間でよいが、通常2週間以下、好ましくは1週間以下、行われる。種菌における所望の乳酸菌濃度は、約1×10個/ml以上、好ましくは約1×10個/ml以上、より好ましくは約1×10個/ml以上、特に好ましくは約4.8×107個/ml以上である。培養スケールは特に制限がないが、典型的には、1トンのタンクで行われる。曝気をすると、好気性菌(例えば、酢酸発酵菌)の増殖が盛んになり、乳酸菌の増殖を阻害するため、曝気は好ましくない。培養培地には、当該分野で公知の任意の他の栄養素を添加してもよい。
【0022】
使用することによって種菌の容量が低下した場合には、必要に応じて炭素源(例えば、廃糖蜜)(および必要であれば、当該分野で公知の任意の他の栄養素や塩)を添加して、さらに培養を続けることができる。例えば、種菌の容量が初期の容量の5分の1程度になった時点で、炭素源(例えば、廃糖蜜)および必要であれば、当該分野で公知の任意の他の栄養素を添加する。
【0023】
(混合液の発酵)
本発明の製造方法における発酵では、炭素源と上記種菌とを混合し、必要に応じて水分で希釈して得られる混合液を乳酸発酵させる。
【0024】
植物改良剤の製造においては、焼酎の廃液などのアミノ酸源を添加することが一般的に行われるが、本発明においては好ましくは焼酎の廃液は使用せず、より好ましくは種菌と炭素源と水によって製造される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、炭素源としては廃糖蜜が使用される。糖度が約30%の廃糖蜜を使用する場合、廃糖蜜の混合液中の濃度は、好ましくは約20(v/v)%〜約40(v/v)%、より好ましくは約25(v/v)%〜約35(v/v)%、最も好ましくは約30(v/v)%である。上記種菌における乳酸菌の増殖において使用される炭素源と、混合液の発酵において使用される炭素源とは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0026】
使用する種菌における乳酸菌の濃度は、約1×10個/ml以上、好ましくは約1×10個/ml以上、より好ましくは約1×10個/ml以上、特に好ましくは約3.5×109個/ml以上である。種菌の混合液中の濃度は、好ましくは約30(v/v)%〜約50(v/v)%、より好ましくは約35(v/v)%〜約45(v/v)%、最も好ましくは約40(v/v)%である。
【0027】
混合液への各成分の添加は、必ずしも一度に行う必要はない。また、複数に分けて添加する場合、異なるバッチの成分を添加してもよい。例えば、廃糖蜜を添加して混合物とする場合、第一のバッチ(例えば、より安価なアルコール発酵後のバッチ)の廃糖蜜と第二のバッチ(例えば、アルコール発酵を経ていないバッチ)の廃糖蜜とを用い、これらを順次添加して混合液としてもよい。
【0028】
培養時間は、所望の乳酸菌濃度が得られれば任意の時間でよいが、通常2週間〜1か月、好ましくは1週間〜2週間、行われる。
【0029】
上記の発酵後、ないし、さらなる密封保存後の発酵液のpHは、4.0未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3.0未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、または、2.5未満である。好ましい実施形態においては、発酵液のpHは3.6以下であり、特に好ましい実施形態においては、発酵液のpHは3.0〜3.6である。
【0030】
本発明の発酵に適した塩濃度の条件は、約0.25(w/w)%以上であり、代表的には約0.3(w/w)%以上である。例示的な塩濃度の条件は、約0.25(w/w)%〜約15(w/w)%、約0.25(w/w)%〜約10(w/w)%、約0.25(w/w)%〜約5(w/w)%、約0.25(w/w)%〜約0.7(w/w)%、約0.25(w/w)%〜約0.5(w/w)%、約0.3(w/w)%〜約15(w/w)%、約0.3(w/w)%〜約10(w/w)%、約0.3(w/w)%〜約5(w/w)%、約0.3(w/w)%〜約0.7(w/w)%、約0.3(w/w)%〜約0.5(w/w)%、約0.35(w/w)%〜約15(w/w)%、約0.35(w/w)%〜約10(w/w)%、約0.35(w/w)%〜約5(w/w)%、約0.35(w/w)%〜約0.7(w/w)%、約0.35(w/w)%〜約0.5(w/w)%、約0.4(w/w)%〜約15(w/w)%、約0.4(w/w)%〜約10(w/w)%、約0.4(w/w)%〜約5(w/w)%、約0.4(w/w)%〜約0.7(w/w)%、または約0.4(w/w)%〜約0.5(w/w)%である。好ましい実施形態において、塩濃度は、約0.35(w/w)%〜約0.5(w/w)%、より好ましくは約0.4(w/w)%〜約0.5(w/w)%、特に好ましくは約0.44〜0.49(w/w)%である。
【0031】
本発明における塩濃度の調整は、当該分野で公知の任意の手段によって行うことができる。例えば、本発明の塩濃度の調整手段としては、塩を添加すること、上記混合液の希釈に水、海水などを用いること、炭素源として使用される物質に塩が含まれる場合には、その炭素源(例えば、廃糖蜜)の濃度を調整すること、これらの任意の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
1つの実施形態において、混合液の発酵のために塩が添加され得る。塩濃度の調整のために添加される塩としては、乳酸菌の増殖に利用可能な当該分野で公知の任意の塩であり得る。好ましい塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態において、混合液の発酵のための塩の添加は、上記混合液の希釈に海水を用いることによって達成され得る。最終的に所望の塩濃度を達成するための海水の添加は、当業者が容易に行うことができる。例えば、海水の塩分濃度は約3.5%であるから、それに基づいて上記の好ましい塩濃度を達成するための添加量を決定することができる。
【0034】
(植物改良組成物の植物への適用)
本発明の製造方法によって得られる発酵液は、そのまま、あるいは、ろ過によって繊維等を除去し、さらに必要に応じて希釈することによって植物改良組成物とすることができる。一般的には、作物の生育段階において、300倍〜1000倍、好ましくは約500倍程度に希釈して適用する。
【0035】
本発明の植物改良組成物は、植物に直接適用することによって優れた効果を奏するが、必ずしも直接適用する必要はない。例えば、本発明の植物改良組成物は、植物の生長に使用する土壌ないし水に添加してもよい。好ましくは、本発明の植物改良組成物は、植物に直接適用されるものである。より好ましくは、本発明の植物改良組成物は葉面散布されるものである。例えば、以下の手法によって植物に本発明の植物改良組成物を適用することが可能である:
・灌水チューブまたはスプリンクラーでの散布(例えば、露地キャベツ)
・背負型噴霧器による散布(例えば、露地作物全般)
・乗用散布機による散布(例えば、露地作物全般)
・噴霧器・灌水による散布(例えば、露地作物全般)
直接適用する場合、栽培する植物の種類や乳酸菌濃度にもよるが、典型的には、本発明の植物改良組成物を、約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、または、約1000倍に希釈して使用する。このような希釈倍率は、栽培する植物の種類に基づいて、当業者が容易に決定することができる。例えば、サトウキビへの適用においては、本発明の植物改良組成物を約500倍に希釈して使用し得る。
【0036】
本発明の植物改良組成物は、特にサトウキビの成長促進に効果的であり得る。理論に束縛されることを意図しないが、バガスにサトウキビ成長に必要な成分が含まれており、それが本発明の製造方法によって効果的に抽出されていると考えられる。
【0037】
(菌数の計測)
本発明において使用する培養液および植物改良組成物中の菌数の測定は、周知の方法によって行うことが可能である。例えば、乳酸菌数の測定にはBCP培地法を用いることができる。酵母やカビ(Aspergillus属のものなど)の菌数の測定にはPDA培地法を用いることができる。
【0038】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1:種菌の調製)
本発明の混合液の発酵に使用する種菌液を以下のとおり調製した。
・以下を含む混合物を調製する:
海水 99.2L
糖蜜(廃糖蜜) 0.4L
バガス 0.4L
バガスは、サトウキビを回転ハンマーおよびシュレッダーによって細断し、四重圧搾機のロールで圧搾し、搾汁を分離することによって得た。
【0040】
上記混合物を、1トンのポリエチレンタンクに仕込み、曝気することなく、1週間培養した。表面に産膜酵母が発生した状態および/または炭酸ガスの発生を指標として、首尾よく種菌が増殖されたことを確認する。そこで、実際にpHを測定したところ3.6であった。このようにして得られた種菌中の乳酸菌の量は、発酵開始から約1週間の時点で4.8×107個/mlであった。
【0041】
(実施例2:混合液の発酵)
以下のとおり、実施例1で調製した種菌液を用いて、炭素源として廃糖蜜(糖度約32%)を用いて、1トンポリエチレンタンクにおいてそれぞれ混合液の発酵を行った。
・以下を含む混合物を調製する:
廃糖蜜 300L
種菌液 100L
これに600Lの海水を添加し、上記の混合物(1立米)を撹拌し、2週間発酵させた。表面に産膜酵母が発生した状態および/または炭酸ガスの発生を指標として、首尾よく混合液の発酵が行われたことを確認する。
【0042】
(実施例3:種々の植物への適用)
実施例2において得られた植物改良組成物を実際に植物に直接適用した場合の効果を以下に記載する。以下の実施例は、本発明の組成物の優れた植物改良効果を実証する実施例である。なお、4.0未満、特にpH3.0〜3.5の発酵液が特に植物改良効果が高かった。
【0043】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【0044】
本明細書中に記載された炭素源、種菌、糖度およびpHについての任意の数値範囲については、その全ての組み合わせが本明細書中に明示的に記載されたものとみなされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって、バガスを原料として、糖蜜と水とから製造できる植物改良組成物が提供される。したがって、本発明は、バガスの処理の分野と、植物栽培の分野とにおいて有用である。