【実施例1】
【0021】
<選別装置本体の構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体を示す正断面図である。
本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置は、外筒体1、内筒体2と循環水拡散板3から成る選別装置本体4と、これに水流循環装置21を備えた処理装置である。本発明の選別装置は、上向きの水流に、廃プラスチックの破砕片を水と共に上方から投入し、この破砕片の比重の相違により廃プラスチックを種類別に選別し、それぞれを回収する装置である。更に、破砕片の大きさの相違があるときにも、上向きの水流を用いることで廃プラスチックを種類別に選別することが可能である。
【0022】
選別装置本体4を構成する外筒体1は、略円筒形状の装置である。この外筒体1の下部には、略逆円錐形状の回収部5が設けられている。回収部5は、選別沈降した廃プラスチックの破砕片を回収する部分である。この回収部5には、沈降した廃プラスチックの破砕片を排出させる排出口6を具備している。
【0023】
外筒体1の内部において、円筒形状の内筒体2が隙間を設けて、それぞれの軸方向が同じになるように配置されている。この内筒体2と外筒体1の隙間に、水が循環するようになっている。
図1に示すように、外筒体1の円周面と、内筒体2の円周面との間において、上向きに水が流れるようになっている。そのために外筒体1と内筒体2との間に、上昇水流が流れる空間が形成される形状が望ましい。但し、外筒体1と内筒体2とは、図示例のような正確な円筒形状に限定されない。例えば、多角形の筒状体でもよい。
【0024】
内筒体2は、本実施例では内部が空洞の装置を用いた。そこで、図示するように、外筒体1の上部から下方に向けた棒状体7を用いて、内筒体2を外筒体1に固定している。棒状体7を内筒体2の中心軸方向を貫通するように取り付けている。なお、内筒体2の固定手段は、この棒状体7に限定されない。但し、外筒体1と内筒体2との間において上向きに流れる水の水流と干渉せず、また上昇する破砕片、沈降する破砕片の動作に干渉しない構造が望ましい。
【0025】
<円形二重壁の構成>
図2は選別装置本体の平断面図である。
図3は選別装置本体の側断面図であり、
図1に示す選別装置本体を軸周りに90度向きを回転させた状態である。
図4は円形二重壁の拡大図である。
図5は円形二重壁における破砕片と水との水流を示す説明斜視図である。
内筒体2の上部に、内壁8と外壁9から成る略トンネル形状の円形二重壁10が設けられている。この円形二重壁10は分離処理する廃プラスチックの破砕片を水と共に上方から投入する部分になる。この円形二重壁10は、文字通り内筒体2の上底面部の形状に沿って設けられている。
更に、円形二重壁10の上面には、略円錐形状のカバー11を有する、このカバー11は、選別された比重の小さい廃プラスチックの破砕片と循環水を円滑に流れさせるための部材である。
【0026】
円形二重壁10の一部には、
図4と
図5に示すように、仕切壁12を有する。円形二重壁10の上部において、この仕切壁12を挟むように破砕片投入口13と投入水回収口14が取り付けられている。破砕片投入口13は、廃プラスチックの破砕片を円形二重壁10内に投入する部分である。投入水回収口14は円形二重壁10を廃プラスチックの破砕片の輸送に用いた水を回収する部分である。仕切壁12に続いて、破砕片投入口13からの破砕片を円形二重壁10内に円滑に導く案内板12aを取り付けている。
【0027】
破砕片投入口13と投入水回収口14は、後述する破砕片供給装置31に接続されている。破砕片供給装置31は、廃プラスチックの破砕片を水と共に、この破砕片投入口13に供給し、投入水回収口14から輸送に用いた水を回収する装置である。
【0028】
この円形二重壁10の外壁9の下部には、
図4と
図5に示すように、スリット15が円周方向に開けられている。このスリット15は、廃プラスチックの破砕片を内筒体2と外筒体1の空間に放出させる部分である。このとき破砕片は、その自重によりスリット15から放出されるが、輸送に用いた水はスリット15から放出されずそのまま回収される。このスリット15のクリアランス(C)より大きな塊は、内筒体2と外筒体1の空間に放出されない。または、破砕片投入口13から投入された破砕片が塊になっているときは、このスリット15部分で解(ほぐ)される。円形二重壁10のスリット15部分から、破砕片を広範囲に上昇水流に分散させることができれば、円形二重壁10は図示するような、360度の形態に限定されない。
【0029】
また、この円形二重壁10のスリット15のクリアランス(C)は、処理しようとする廃プラスチックの種類、破砕片の大きさに応じて自由に可変できるようになっている。大きな破砕片を処理するときは、それに応じたクリアランス(C)に設定する。逆に、粉砕物のような小さなものを処理するときは、これより小さいクリアランス(C)に設定する。
【0030】
円形二重壁10の内壁8に、傾斜壁16を円周方向に形成することができる。このような傾斜壁16を有する円形二重壁10内に投入された廃プラスチックの破砕片は、この傾斜壁16により、この円周状に移動しながら、スリット15から上向きの水流内に均一に拡散される。
【0031】
また、必要に応じて、傾斜壁16の形状は単純な傾斜面に限定されず、湾曲形状にしたもの、円周方向に波打つ状態にしたものと、種々の形状のものを用いることができる。
【0032】
円形二重壁10の外壁9と内壁8との間隔(d)は、図示例のように円周方向に同一間隔に設定する必要はない(
図4参照)。破砕片投入口13の近くは間隔が広く、投入水回収口14に近づくに従って間隔が狭くなるようにすることができる。破砕片が多く含む投入水では、スリット15から徐々に拡散させ、投入水回収口14の近くでは、残っている破砕片をスリット15から押し出し易くして、拡散させるためである。
【0033】
<循環水拡散板の構成>
図6は循環水拡散板を示す選別装置本体の平断面図である。
図7は循環水拡散板を示す分離装置本体の正断面図である。
内筒体2の下底面部の下方に循環水拡散板3が配置されている。この循環水拡散板3は、その一部に循環水供給口17が開けられている。この循環水供給口17は後述する水流循環装置21から水が供給される。この水が上向き水流を形成し、廃プラスチックの破砕片を主に比重毎に選別する。
【0034】
循環水拡散板3は、上述した内筒体2の外径と略同じ外径を有する略円板状の部材である。または内筒体2の外径よりやや大きな外径を有する略円板状の部材でもよい。このような外径に設定したのは、沈降する破砕片の回収部5までの降下を邪魔しないようにするためである。なお、循環水拡散板3の外周から、外筒体1の内側面との空間に上向き水流を生成すると共に、この循環水拡散板3の外周から沈降する破砕片を回収部5の排出口6まで収集することができる構成であれば、循環水拡散板3の形状は円板形状に限定されない。内筒体2の形状に合わせて、楕円形状、多角形状と種々に変更することが可能である。
【0035】
図7に示すように、内筒体2と外筒体1の内側面との空間で上向き水流に抗して、比重の大きい破砕片は沈降する。この比重の大きい破砕片は、循環水拡散板3の周縁を通過して略逆円錐形状の回収部5に到達する。その後沈降した破砕片を排出口6から排出させる。
【0036】
<廃プラスチック選別装置のプラント構成>
図8は本発明の廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体と水流循環装置と破砕片供給装置から成るプラントの一例を示す概略正面図である。
本発明の廃プラスチック選別装置のプラントの一例を
図8に示す。本発明の廃プラスチック選別装置は、上述した選別装置本体4を中心に、水流循環装置21と破砕片供給装置31とから構成される。
【0037】
水流循環装置21は、選別装置本体4の循環水供給口17に水を供給し、外筒体1の上部から浮遊している廃プラスチックの破砕片と共に輸送に用いた水を、選別装置本体4の循環水回収口18から回収して、この選別装置本体4内の水を循環させる装置である。水流循環装置21は、ポンプ22と管路23とから構成されている。
【0038】
それぞれ回収した、比重の大きい粒子の破砕片を回収する装置と、比重の小さい粒子の破砕片を回収する装置とによりプラントが構成される。比重の大きい粒子の破砕片は、選別装置本体4の回収部5の排出口6から、スクリュウコンベア32を用いて上方へ運び、そこから所定の収集袋(図示せず)に回収する。
また、比重の小さい粒子の破砕片は、水流循環装置21に備えた、後述するような破砕片回収装置41を用いて、外筒体1の上部から、循環水により輸送され、又は浮遊している廃プラスチックの破砕片を水と共に回収する。このときも所定の収集袋(図示せず)に回収する。
【0039】
<廃プラスチック選別分離回収装置の動作説明1>
図9は廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の比重差により選別する状態の概略説明図である。
本発明の廃プラスチック
選別装置を用いた選別方法は、先ず選別装置本体4の外筒体1と内筒体2との間に、水流循環装置21を用いて下方から水を供給して上向きの水流を生成する。この上向きの水流は循環水流である。
この上向きの水流に、比重の異なる廃プラスチックの破砕片が混在している状態で上方から廃プラスチックの破砕片を水と共に投入する。この破砕片には比重の小さい破砕片(粒子)(図示上は白い丸で表示)と、比重の大きい破砕片(粒子)が混在している(図示上は黒い丸で表示)。これが選別装置本体4の円形二重壁10のスリット15から上向き水流の中に投入される。比重の小さい破砕片(粒子)は水流の流れに乗って、浮遊する破砕片は外筒体1の上方で上昇水と共に回収する。
他方、上昇水流に抗して沈降する比重の大きい破砕片(粒子)は、外筒体1下部の回収部5で回収する。このように破砕片の比重の相違によりプラスチックを種類別に選別する。
【0040】
<上昇水の流速の可変>
本発明の廃プラスチック
選別装置を用いた分選別方法は、例えば、その上昇水流の流速は、5cm/sの流速で上昇流速を生成する。このような緩慢な上昇水流に、廃プラスチックの破砕片を投入し、この流速の上昇水流に抗して沈降する破砕片は比重の大きい破砕片として回収部5に回収する。逆に、この流速の上昇水流に共に輸送される破砕片又は浮遊する破砕片は比重の小さい破砕片として回収する。
【0041】
例えば、上昇水流の5cm/sを基準流速とする。表1に示すように、混在する破砕片の分離境界(分級点)が小さい場合、例えば分級点が1.02、1.03又は1.04のように1に近い場合は、5cm/sより遅い流速(2cm/s〜5cm/s未満)の水を循環させることが好ましい。逆に、分級点が大きい場合、例えば分級点が1.06又は1.08のような場合は、5cm/sより早い流速(5cm/s〜7cm/s)の水を循環させることができる。なお、表1の分級点は一例であって、これらの数値に限定されないことは勿論である。
但し、複数種類の廃プラスチックが混在しているときは、標準の流速で選別することが望ましい。
【0042】
【表1】
【0043】
<廃プラスチック選別装置の動作説明2>
図10は廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の大きさの相違により選別する状態の概略説明図である。
本発明の廃プラスチック
選別装置を用いた選別方法は、貯留水槽のような単純に比重差を利用して、沈降する破砕片と浮遊する破砕片とに選別する技術ではない。上向き水流において、この水流に抗して沈降する破砕片と、水流に流される破砕片、浮遊する破砕片とに選別する方法である。そこで、単純に比重の差のみに限定されず、
図10に示すように、破砕片の大小、特にフィルム状の形態になる破砕片は比重が大きくても上昇することがある。
【0044】
例えば、表2に示すように、混在する破砕片の大きさが中程度の場合、大きさが5mmの場合は、5cm/sを基準流速とする。混在する破砕片が小さい場合、その大きさが2〜4mmの場合は、5cm/sより遅い流速(2cm/s〜5cm/s未満)の水を循環させることが好ましい。逆に、混在する破砕片が大きい場合、その大きさが6〜8mmの場合は、5cm/sより早い流速(5cm/s〜7cm/s)の水を循環させることができる。なお、表2の混在する破砕片の大きさの数値も一例であって、これらの数値に限定されないことは勿論である。
【0045】
【表2】
【0046】
<循環水と破砕片の投入位置が相対位置に配置>
図2の平面図と
図3の側断面図に示すように、循環水供給口17は、循環水拡散板3の中心から偏心した位置に開けることが好ましい。破砕片を選別する水流が、循環水回収口18と対向した位置に開けられた循環水供給口17から供給されることで、この外筒体1と内筒体2の間の流路に均等に上昇流が生じる。そこで、廃プラスチックの破砕片について円滑な選別が可能になる。
【0047】
本発明は、上向き水流の中で、比重の小さい破砕片、又は水流の抵抗を受けやすい大きな破砕片が小さい破砕片と比較して相対的にこの上向き水流と共に、上方へ輸送されることで、混在する廃プラスチックの破砕片を選別するようになっている。そのために、この比重の小さいものと大きいものが混在している状態から徐々に選別するために、ある程度水の中で浮遊する時間と移動する距離が必要になる。循環水供給口17から供給される水(循環水)が、循環水回収口18に回収されるまである程度の時間が必要になるからである。
【0048】
<破砕片回収装置の変形例(層型破砕片回収装置)>
図11は破砕片回収装置の変形例である層型破砕片回収装置を示す側断面図である。
図12は層型破砕片回収装置の固定羽根と回転羽根を示す平面図である。
破砕片回収装置の変形例である層型の破砕片回収装置41は、装置本体42の一方の側面に投入口43aを有し、装置本体42の他方の側面に循環水排出口44を有し、更に他の面に破砕片排出口43bを有し、この装置本体42内に、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根45と、各固定羽根45の間を擦り抜ける回転羽根46とを設けた破砕片を回収する装置である。投入口43aから投入した破砕片を、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根45と、この回転羽根46の先端部分で捉え、そのまま破砕片排出口43bまで輸送させる。
特に、固定羽根45と回転羽根46とが層状に配置されているので、従来は困難であった綿状の破砕片も捉えることができる。単なる網状の回収装置に比べて、回収効率が高い。
【0049】
なお、本発明は、下方から上方へ循環する水流を利用して、廃プラスチックの破砕片等を比重の相違又は破砕片の大小の相違を利用してプラスチック等の種類ごとに選別し、更に回収することができる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。