特許第6873434号(P6873434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873434循環水流を用いた廃プラスチック選別装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873434
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】循環水流を用いた廃プラスチック選別装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20210510BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20210510BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B29B17/00ZAB
   B03B5/28 Z
   B03B9/06
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-44204(P2019-44204)
(22)【出願日】2019年3月11日
(65)【公開番号】特開2020-146867(P2020-146867A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年9月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394008271
【氏名又は名称】日本シーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 眞
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−167835(JP,A)
【文献】 特開2003−164775(JP,A)
【文献】 特開2005−040691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
B03B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックの破砕片を、水と共に上向きの水流に投入し、その破砕片の比重の相違、破砕片の大きさの相違により廃プラスチックを種類別に選別する、循環水流を用いた廃プラスチック選別装置であって、
選別して沈降した廃プラスチックの破砕片を排出させる排出口(6)を具備した、略逆円錐形状の回収部(5)が下部に設けられた筒形状の外筒体(1)と、該外筒体(1)の内部に、隙間を設けて同じ軸方向になるように配置された、筒形状の内筒体(2)と、から成る選別装置本体(4)と、
前記内筒体(2)の上部に、該内筒体(2)の円周方向に沿って内壁(8)と外壁(9)が設けられ、該外壁(9)に、廃プラスチックの破砕片を放出させるスリット(15)が、該外壁(9)の下部の全円周方向に開けられた、トンネル状の円形二重壁(10)と、
前記円形二重壁(10)の上部に、仕切壁(12)を挟むようにそれぞれ取り付けられた、一方に廃プラスチックの破砕片を水と共に該円形二重壁(10)内に投入する破砕片投入口(13)と、他方に該円形二重壁(10)内を移動した水を回収する投入水回収口(14)と、
前記円形二重壁(10)内の上部において、前記破砕片投入口(13)と前記投入水回収口(14)の間に取り付けられた前記仕切壁(12)と、
前記内筒体(2)の下底面部の下方に配置された、一部に循環水供給口(17)が設けられた、略板状の循環水拡散板(3)と、
前記循環水拡散板(3)の循環水供給口(17)に水を供給し、前記外筒体(1)の上部に設けられた、循環水回収口(18)から循環する水を回収する水流循環装置(21)と、を備えた、ことを特徴とする循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【請求項2】
廃プラスチックの破砕片を水と共に前記破砕片投入口(13)に供給し、前記投入水回収口(14)から投入に用いた水を回収する破砕片供給装置(31)を更に備えた、ことを特徴とする請求項1に記載された循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【請求項3】
前記円形二重壁(10)を構成する内壁(8)に、傾斜壁(16)を円周方向に形成した、ことを特徴とする請求項1又は2に記載された循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【請求項4】
前記循環水供給口(17)は、前記循環水拡散板(3)の中心軸位置から偏心した位置に開けた、ことを特徴とする請求項1、2又は3の何れか1項に記載された循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【請求項5】
前記水流循環装置(21)に、循環させている水と共に輸送される廃プラスチックの破砕片を回収する破砕片回収装置(41)を更に設けた、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4の何れか1項に記載された循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【請求項6】
前記破砕片回収装置(41)は、装置本体(42)の一方の側面に投入口(43a)を有し、該装置本体(42)の他方の側面に循環水排出口(44)を有し、
前記装置本体(42)内に、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根(45)と、各固定羽根(46)の間を擦り抜ける回転羽根(46)とを設けた、ことを特徴とする請求項5に記載された循環水流を用いた廃プラスチック選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックを再資源化する技術に係り、特に循環している水流中に、いずれも比重1より大きい廃プラスチックの破砕片を投入して比重の相違、破砕片の大きさの相違により、プラスチックを種類別に選別し、それぞれを回収する循環水流を用いた廃プラスチック選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄されたプラスチック製品等の廃プラスチックは、容器リサイクル法に基づいて回収され、新しい製品の材料もしくは原料として利用する再資源化が行われている。回収された廃プラスチックは、人の手作業により分別されたのちにフレーク状に破砕・洗浄され、プラスチック等の種類別に選別されて再商品化される。再商品化する際の品質を保つためには選別の精度を高める必要があり、選別する際の技術としては、プラスチックの種類による比重の違いを利用して選別する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の特開2010−142759号「浮遊選別装置」には、液体を収容するための外側ケーシングと、前記外側ケーシング内に、前記外側ケーシングと連通するように配置される内側筒と、前記外側ケーシング内および/または前記内側筒内に設けられ、前記液体を攪拌するための水平回転可能な第1羽根と、前記内側筒内に設けられ、上下移動可能な第2羽根とを有する浮遊選別装置において、前記内側筒内に湿潤状態の発泡体を含む材料を投入して前記液体に浮遊させて、前記発泡体を選別する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−142759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の「浮遊選別装置」は、材料を内側筒内に投入するため比重が小さい小比重樹脂を第2選別室に移動させるのが困難であるという問題があった。また、小比重樹脂は溢れる液体の流れに乗せるようにして回収し、発泡体はへら状の上下移動羽根によって液体と共に掬い上げて回収する構成となっているため、回収した小比重樹脂や発泡体を液体と分離する工程が必要になり煩雑な作業になりやすいという問題を有していた。さらに、選別を行なう際には、浮遊選別装置に投入する前に材料を湿潤状態にする工程や液体の比重を調整する工程が必要であった。
【0006】
また、従来は比重1より大きい廃プラスチックの破砕片を選別する場合は、水以外の塩水等の重液を用いることが多かった。しかし、重液を用いて選別したプラスチックの破砕片には、この重液が付着しているため、それを洗浄する作業工程が必要になった。そのために廃プラスチックの再資源化のコストが高くなるという問題を有していた。
【0007】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、下方から上方へ循環する水流を利用して、いずれも比重1より大きい廃プラスチックの破砕片等を比重の相違と破砕片の大小の相違を利用してプラスチック等の種類ごとに選別し、更に回収することができる循環水流を用いた廃プラスチック選別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の選別装置は、廃プラスチックの破砕片を、水と共に上向きの水流に投入し、その破砕片の比重の相違、破砕片の大きさの相違により廃プラスチックを種類別に選別する、循環水流を用いた廃プラスチック選別装置であって、
選別して沈降した廃プラスチックの破砕片を排出させる排出口(6)を具備した、略逆円錐形状の回収部(5)が下部に設けられた筒形状の外筒体(1)と、該外筒体(1)の内部に、隙間を設けて同じ軸方向になるように配置された、筒形状の内筒体(2)と、から成る選別装置本体(4)と、
前記内筒体(2)の上部に、該内筒体(2)の円周方向に沿って内壁(8)と外壁(9)が設けられ、該外壁(9)に、廃プラスチックの破砕片を放出させるスリット(15)が、該外壁(9)の下部の全円周方向に開けられた、トンネル状の円形二重壁(10)と、
前記円形二重壁(10)の上部に、仕切壁(12)を挟むようにそれぞれ取り付けられた、一方に廃プラスチックの破砕片を水と共に該円形二重壁(10)内に投入する破砕片投入口(13)と、他方に該円形二重壁(10)内を移動した水を回収する投入水回収口(14)と、
前記円形二重壁(10)内の上部において、前記破砕片投入口(13)と前記投入水回収口(14)の間に取り付けられた前記仕切壁(12)と、
前記内筒体(2)の下底面部の下方に配置された、一部に循環水供給口(17)が設けられた、略板状の循環水拡散板(3)と、
前記循環水拡散板(3)の循環水供給口(17)に水を供給し、前記外筒体(1)の上部に設けられた、循環水回収口(18)から循環する水を回収する水流循環装置(21)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0009】
廃プラスチックの破砕片を水と共に前記破砕片投入口(13)に供給し、前記投入水回収口(14)から投入に用いた水を回収する破砕片供給装置(31)を、更に備えることができる。
前記円形二重壁(10)を構成する内壁(8)に、傾斜壁(16)を円周方向に形成することが好ましい。
前記循環水供給口(17)は、前記循環水拡散板(3)の中心軸位置から偏心した位置に開けることが好ましい。
【0010】
前記水流循環装置(21)に、循環させている水と共に輸送される廃プラスチックの破砕片を回収する破砕片回収装置(41)を更に設けることができる。
前記破砕片回収装置(41)は、装置本体(42)の一方の側面に投入口(43a)を有し、該装置本体(42)の他方の側面に循環水排出口(44)を有し、
前記装置本体(42)内に、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根(45)と、各固定羽根(46)の間を擦り抜ける回転羽根(46)とを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の選別装置では、廃プラスチックの破砕片を、選別装置本体(4)を構成する外筒体(1)と内筒体(2)との間において上向きの水流を用いて選別するので、各廃プラスチックの破砕片の比重に応じて緻密に選別できる。この水流は循環させた水を用いるため、水の無駄な使用を防止できる。破砕片を水と共に分離するため、風力選別装置のように処理の際に破砕片の粉末(塵芥)が飛散することがない。
また、廃プラスチックの破砕片の処理装置への投入(供給)の際にも、その輸送に水を利用しているので、破砕片同士が塊になることを防止できる。このときも水を循環させて利用しているので、水の無駄な使用を防止できる。更に、投入の際にも破砕片を水と共に輸送するため、ベルトコンベアによる処理のように、破砕片の粉末(塵芥)が飛散することがない。
【0014】
廃プラスチックの選別に利用する液体としては水のみを使用するため、再資源化としての作業工程が簡略できる。従来の重液を用いて廃プラスチックを選別する際の破砕片に付着した重液を洗浄する工程がなく、作業コストが低減する。
【0015】
円形二重壁(10)に傾斜壁(16)が形成されたものは、廃プラスチックの破砕片は、この傾斜壁(16)により、円周状に移動しながら、均一にスリット(15)から円周方向に放出されるので、外筒体(1)と内筒体(2)との間において上向き水流内に均一に拡散させることができる。
【0016】
破砕片を選別する水流は、循環水拡散板(3)の中心から循環水回収口(18)に対向した方向より偏心した位置に開けられた循環水供給口(17)から供給されるので、均等な上昇流が形成される。スリット(15)から水は放出されないので、破砕片を投入する水流と、上向きの水流とが干渉することがない。この上向きの水流を外筒体(1)と内筒体(2)との間に形成し、円滑な選別処理が可能になる。
【0017】
本発明の選別装置を用いた選別方法では、廃プラスチックの破砕片を、上昇する水流を用いて選別する。従来の比重の異なる重液を用いて選別するのと同様に、上昇させる水流の流速を相対的に可変することで対応することができる。
【0018】
更に、廃プラスチックの破砕片を投入する際に、水と共に投入する。この水流も循環させた水を用いる。このとき破砕片の粒子は、その自重によりスリット(15)から放出されるが、輸送に用いた水はスリット(15)から放出されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体を示す正断面図である。
図2】選別装置本体の平断面図である。
図3】選別装置本体の側断面図であり、図1に示す選別装置本体を軸周りに90度向きを回転させた状態である。
図4】円形二重壁の拡大図である。
図5】円形二重壁における破砕片と水との水流を示す説明斜視図である。
図6】循環水拡散板を示す選別装置本体の平断面図である。
図7】循環水拡散板を示す選別装置本体の正断面図である。
図8】本発明の廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体と水流循環装置と破砕片供給装置から成るプラントの一例を示す概略正面図である。
図9】廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の比重差により選別する状態の概略説明図である。
図10】廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の大きさの相違により選別する状態の概略説明図である。
図11】破砕片回収装置の変形例である層型破砕片回収装置を示す側断面図である。
図12】層型破砕片回収装置の固定羽根と回転羽根を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置は、上昇している水流に、廃プラスチックの破砕片を水と共に上方から投入し、破砕片の比重の相違、破砕片の大きさの相違により、プラスチック等を種類別に選別し、それぞれを回収する装置である。
【実施例1】
【0021】
<選別装置本体の構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体を示す正断面図である。
本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置は、外筒体1、内筒体2と循環水拡散板3から成る選別装置本体4と、これに水流循環装置21を備えた処理装置である。本発明の選別装置は、上向きの水流に、廃プラスチックの破砕片を水と共に上方から投入し、この破砕片の比重の相違により廃プラスチックを種類別に選別し、それぞれを回収する装置である。更に、破砕片の大きさの相違があるときにも、上向きの水流を用いることで廃プラスチックを種類別に選別することが可能である。
【0022】
選別装置本体4を構成する外筒体1は、略円筒形状の装置である。この外筒体1の下部には、略逆円錐形状の回収部5が設けられている。回収部5は、選別沈降した廃プラスチックの破砕片を回収する部分である。この回収部5には、沈降した廃プラスチックの破砕片を排出させる排出口6を具備している。
【0023】
外筒体1の内部において、円筒形状の内筒体2が隙間を設けて、それぞれの軸方向が同じになるように配置されている。この内筒体2と外筒体1の隙間に、水が循環するようになっている。図1に示すように、外筒体1の円周面と、内筒体2の円周面との間において、上向きに水が流れるようになっている。そのために外筒体1と内筒体2との間に、上昇水流が流れる空間が形成される形状が望ましい。但し、外筒体1と内筒体2とは、図示例のような正確な円筒形状に限定されない。例えば、多角形の筒状体でもよい。
【0024】
内筒体2は、本実施例では内部が空洞の装置を用いた。そこで、図示するように、外筒体1の上部から下方に向けた棒状体7を用いて、内筒体2を外筒体1に固定している。棒状体7を内筒体2の中心軸方向を貫通するように取り付けている。なお、内筒体2の固定手段は、この棒状体7に限定されない。但し、外筒体1と内筒体2との間において上向きに流れる水の水流と干渉せず、また上昇する破砕片、沈降する破砕片の動作に干渉しない構造が望ましい。
【0025】
<円形二重壁の構成>
図2は選別装置本体の平断面図である。図3は選別装置本体の側断面図であり、図1に示す選別装置本体を軸周りに90度向きを回転させた状態である。図4は円形二重壁の拡大図である。図5は円形二重壁における破砕片と水との水流を示す説明斜視図である。
内筒体2の上部に、内壁8と外壁9から成る略トンネル形状の円形二重壁10が設けられている。この円形二重壁10は分離処理する廃プラスチックの破砕片を水と共に上方から投入する部分になる。この円形二重壁10は、文字通り内筒体2の上底面部の形状に沿って設けられている。
更に、円形二重壁10の上面には、略円錐形状のカバー11を有する、このカバー11は、選別された比重の小さい廃プラスチックの破砕片と循環水を円滑に流れさせるための部材である。
【0026】
円形二重壁10の一部には、図4図5に示すように、仕切壁12を有する。円形二重壁10の上部において、この仕切壁12を挟むように破砕片投入口13と投入水回収口14が取り付けられている。破砕片投入口13は、廃プラスチックの破砕片を円形二重壁10内に投入する部分である。投入水回収口14は円形二重壁10を廃プラスチックの破砕片の輸送に用いた水を回収する部分である。仕切壁12に続いて、破砕片投入口13からの破砕片を円形二重壁10内に円滑に導く案内板12aを取り付けている。
【0027】
破砕片投入口13と投入水回収口14は、後述する破砕片供給装置31に接続されている。破砕片供給装置31は、廃プラスチックの破砕片を水と共に、この破砕片投入口13に供給し、投入水回収口14から輸送に用いた水を回収する装置である。
【0028】
この円形二重壁10の外壁9の下部には、図4図5に示すように、スリット15が円周方向に開けられている。このスリット15は、廃プラスチックの破砕片を内筒体2と外筒体1の空間に放出させる部分である。このとき破砕片は、その自重によりスリット15から放出されるが、輸送に用いた水はスリット15から放出されずそのまま回収される。このスリット15のクリアランス(C)より大きな塊は、内筒体2と外筒体1の空間に放出されない。または、破砕片投入口13から投入された破砕片が塊になっているときは、このスリット15部分で解(ほぐ)される。円形二重壁10のスリット15部分から、破砕片を広範囲に上昇水流に分散させることができれば、円形二重壁10は図示するような、360度の形態に限定されない。
【0029】
また、この円形二重壁10のスリット15のクリアランス(C)は、処理しようとする廃プラスチックの種類、破砕片の大きさに応じて自由に可変できるようになっている。大きな破砕片を処理するときは、それに応じたクリアランス(C)に設定する。逆に、粉砕物のような小さなものを処理するときは、これより小さいクリアランス(C)に設定する。
【0030】
円形二重壁10の内壁8に、傾斜壁16を円周方向に形成することができる。このような傾斜壁16を有する円形二重壁10内に投入された廃プラスチックの破砕片は、この傾斜壁16により、この円周状に移動しながら、スリット15から上向きの水流内に均一に拡散される。
【0031】
また、必要に応じて、傾斜壁16の形状は単純な傾斜面に限定されず、湾曲形状にしたもの、円周方向に波打つ状態にしたものと、種々の形状のものを用いることができる。
【0032】
円形二重壁10の外壁9と内壁8との間隔(d)は、図示例のように円周方向に同一間隔に設定する必要はない(図4参照)。破砕片投入口13の近くは間隔が広く、投入水回収口14に近づくに従って間隔が狭くなるようにすることができる。破砕片が多く含む投入水では、スリット15から徐々に拡散させ、投入水回収口14の近くでは、残っている破砕片をスリット15から押し出し易くして、拡散させるためである。
【0033】
<循環水拡散板の構成>
図6は循環水拡散板を示す選別装置本体の平断面図である。図7は循環水拡散板を示す分離装置本体の正断面図である。
内筒体2の下底面部の下方に循環水拡散板3が配置されている。この循環水拡散板3は、その一部に循環水供給口17が開けられている。この循環水供給口17は後述する水流循環装置21から水が供給される。この水が上向き水流を形成し、廃プラスチックの破砕片を主に比重毎に選別する。
【0034】
循環水拡散板3は、上述した内筒体2の外径と略同じ外径を有する略円板状の部材である。または内筒体2の外径よりやや大きな外径を有する略円板状の部材でもよい。このような外径に設定したのは、沈降する破砕片の回収部5までの降下を邪魔しないようにするためである。なお、循環水拡散板3の外周から、外筒体1の内側面との空間に上向き水流を生成すると共に、この循環水拡散板3の外周から沈降する破砕片を回収部5の排出口6まで収集することができる構成であれば、循環水拡散板3の形状は円板形状に限定されない。内筒体2の形状に合わせて、楕円形状、多角形状と種々に変更することが可能である。
【0035】
図7に示すように、内筒体2と外筒体1の内側面との空間で上向き水流に抗して、比重の大きい破砕片は沈降する。この比重の大きい破砕片は、循環水拡散板3の周縁を通過して略逆円錐形状の回収部5に到達する。その後沈降した破砕片を排出口6から排出させる。
【0036】
<廃プラスチック選別装置のプラント構成>
図8は本発明の廃プラスチック選別装置を構成する選別装置本体と水流循環装置と破砕片供給装置から成るプラントの一例を示す概略正面図である。
本発明の廃プラスチック選別装置のプラントの一例を図8に示す。本発明の廃プラスチック選別装置は、上述した選別装置本体4を中心に、水流循環装置21と破砕片供給装置31とから構成される。
【0037】
水流循環装置21は、選別装置本体4の循環水供給口17に水を供給し、外筒体1の上部から浮遊している廃プラスチックの破砕片と共に輸送に用いた水を、選別装置本体4の循環水回収口18から回収して、この選別装置本体4内の水を循環させる装置である。水流循環装置21は、ポンプ22と管路23とから構成されている。
【0038】
それぞれ回収した、比重の大きい粒子の破砕片を回収する装置と、比重の小さい粒子の破砕片を回収する装置とによりプラントが構成される。比重の大きい粒子の破砕片は、選別装置本体4の回収部5の排出口6から、スクリュウコンベア32を用いて上方へ運び、そこから所定の収集袋(図示せず)に回収する。
また、比重の小さい粒子の破砕片は、水流循環装置21に備えた、後述するような破砕片回収装置41を用いて、外筒体1の上部から、循環水により輸送され、又は浮遊している廃プラスチックの破砕片を水と共に回収する。このときも所定の収集袋(図示せず)に回収する。
【0039】
<廃プラスチック選別分離回収装置の動作説明1>
図9は廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の比重差により選別する状態の概略説明図である。
本発明の廃プラスチック選別装置を用いた選別方法は、先ず選別装置本体4の外筒体1と内筒体2との間に、水流循環装置21を用いて下方から水を供給して上向きの水流を生成する。この上向きの水流は循環水流である。
この上向きの水流に、比重の異なる廃プラスチックの破砕片が混在している状態で上方から廃プラスチックの破砕片を水と共に投入する。この破砕片には比重の小さい破砕片(粒子)(図示上は白い丸で表示)と、比重の大きい破砕片(粒子)が混在している(図示上は黒い丸で表示)。これが選別装置本体4の円形二重壁10のスリット15から上向き水流の中に投入される。比重の小さい破砕片(粒子)は水流の流れに乗って、浮遊する破砕片は外筒体1の上方で上昇水と共に回収する。
他方、上昇水流に抗して沈降する比重の大きい破砕片(粒子)は、外筒体1下部の回収部5で回収する。このように破砕片の比重の相違によりプラスチックを種類別に選別する。
【0040】
<上昇水の流速の可変>
本発明の廃プラスチック選別装置を用いた分選別方法は、例えば、その上昇水流の流速は、5cm/sの流速で上昇流速を生成する。このような緩慢な上昇水流に、廃プラスチックの破砕片を投入し、この流速の上昇水流に抗して沈降する破砕片は比重の大きい破砕片として回収部5に回収する。逆に、この流速の上昇水流に共に輸送される破砕片又は浮遊する破砕片は比重の小さい破砕片として回収する。
【0041】
例えば、上昇水流の5cm/sを基準流速とする。表1に示すように、混在する破砕片の分離境界(分級点)が小さい場合、例えば分級点が1.02、1.03又は1.04のように1に近い場合は、5cm/sより遅い流速(2cm/s〜5cm/s未満)の水を循環させることが好ましい。逆に、分級点が大きい場合、例えば分級点が1.06又は1.08のような場合は、5cm/sより早い流速(5cm/s〜7cm/s)の水を循環させることができる。なお、表1の分級点は一例であって、これらの数値に限定されないことは勿論である。
但し、複数種類の廃プラスチックが混在しているときは、標準の流速で選別することが望ましい。
【0042】
【表1】
【0043】
<廃プラスチック選別装置の動作説明2>
図10は廃プラスチック選別装置を用いて、破砕片の大きさの相違により選別する状態の概略説明図である。
本発明の廃プラスチック選別装置を用いた選別方法は、貯留水槽のような単純に比重差を利用して、沈降する破砕片と浮遊する破砕片とに選別する技術ではない。上向き水流において、この水流に抗して沈降する破砕片と、水流に流される破砕片、浮遊する破砕片とに選別する方法である。そこで、単純に比重の差のみに限定されず、図10に示すように、破砕片の大小、特にフィルム状の形態になる破砕片は比重が大きくても上昇することがある。
【0044】
例えば、表2に示すように、混在する破砕片の大きさが中程度の場合、大きさが5mmの場合は、5cm/sを基準流速とする。混在する破砕片が小さい場合、その大きさが2〜4mmの場合は、5cm/sより遅い流速(2cm/s〜5cm/s未満)の水を循環させることが好ましい。逆に、混在する破砕片が大きい場合、その大きさが6〜8mmの場合は、5cm/sより早い流速(5cm/s〜7cm/s)の水を循環させることができる。なお、表2の混在する破砕片の大きさの数値も一例であって、これらの数値に限定されないことは勿論である。
【0045】
【表2】
【0046】
<循環水と破砕片の投入位置が相対位置に配置>
図2の平面図と図3の側断面図に示すように、循環水供給口17は、循環水拡散板3の中心から偏心した位置に開けることが好ましい。破砕片を選別する水流が、循環水回収口18と対向した位置に開けられた循環水供給口17から供給されることで、この外筒体1と内筒体2の間の流路に均等に上昇流が生じる。そこで、廃プラスチックの破砕片について円滑な選別が可能になる。
【0047】
本発明は、上向き水流の中で、比重の小さい破砕片、又は水流の抵抗を受けやすい大きな破砕片が小さい破砕片と比較して相対的にこの上向き水流と共に、上方へ輸送されることで、混在する廃プラスチックの破砕片を選別するようになっている。そのために、この比重の小さいものと大きいものが混在している状態から徐々に選別するために、ある程度水の中で浮遊する時間と移動する距離が必要になる。循環水供給口17から供給される水(循環水)が、循環水回収口18に回収されるまである程度の時間が必要になるからである。
【0048】
<破砕片回収装置の変形例(層型破砕片回収装置)>
図11は破砕片回収装置の変形例である層型破砕片回収装置を示す側断面図である。図12は層型破砕片回収装置の固定羽根と回転羽根を示す平面図である。
破砕片回収装置の変形例である層型の破砕片回収装置41は、装置本体42の一方の側面に投入口43aを有し、装置本体42の他方の側面に循環水排出口44を有し、更に他の面に破砕片排出口43bを有し、この装置本体42内に、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根45と、各固定羽根45の間を擦り抜ける回転羽根46とを設けた破砕片を回収する装置である。投入口43aから投入した破砕片を、略コ字形状を有する複数枚の固定羽根45と、この回転羽根46の先端部分で捉え、そのまま破砕片排出口43bまで輸送させる。
特に、固定羽根45と回転羽根46とが層状に配置されているので、従来は困難であった綿状の破砕片も捉えることができる。単なる網状の回収装置に比べて、回収効率が高い。
【0049】
なお、本発明は、下方から上方へ循環する水流を利用して、廃プラスチックの破砕片等を比重の相違又は破砕片の大小の相違を利用してプラスチック等の種類ごとに選別し、更に回収することができる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の循環水流を用いた廃プラスチック選別装置は、家庭用廃棄プラスチック、廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具に限定されず、その他の産業機器を再資源化する際に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 外筒体
2 内筒体
3 循環水拡散板
4 選別装置本体
5 回収部
6 排出口
8 内壁
9 外壁
10 円形二重壁
12 仕切壁
13 破砕片投入口
14 投入水回収口
15 スリット
16 傾斜壁
17 循環水供給口
18 循環水回収口
21 水流循環装置
31 破砕片供給装置
41 破砕片回収装置
42 装置本体
43a 投入口
43b 破砕片排出口
44 循環水排出口
45 固定羽根
46 回転羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12