(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カムシャフトを前記シリンダヘッドに取り付けて当該カムシャフトを回転させることで前記バルブを駆動し、当該バルブのリフト量を測定することで前記カムプロファイルを測定することを特徴とする請求項1又は2のバルブクリアランス調整方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、各図で同一又は対応部分には同一符合を付すことで重複した説明を省略する。本発明のバルブクリアランス調整方法は、カムプロファイルのリフト量を利用してバルブクリアランスを簡単かつ正確に調整するものである。
【0011】
(シリンダヘッドの概略)
図1は、本発明のバルブクリアランス調整方法を適用可能なSOHC式シリンダヘッド100の概略図である。ピストン10が収容されたシリンダブロック20の上に、吸気バルブ30と排気バルブ40を有するシリンダヘッド100が取り付けられている。バルブステム31、41の先端部にはリテーナ32、42が取り付けられ、このリテーナ32、42が弁ばね33、43によって閉弁方向に付勢されている。
【0012】
シリンダヘッド100の中央部に吸排気弁用のカムシャフト50が配設されている。このカムシャフト50は吸気弁用のカム山51と排気弁用のカム山52を有し、カムシャフト50の駆動力を左右のロッカーアーム60、70を介して吸排気弁のバルブステム31、41に伝達するように構成されている。
【0013】
左右のロッカーアーム60、70の夫々の中央部が、シリンダヘッド100に支持された支軸80によって揺動可能に支持されている。そして各ロッカーアーム60、70の中央側一端部下面の被押圧部61、71がカムシャフト50に当接している。ロッカーアーム60、70の外側他端部にはバルブステム31、41に向けてアジャストスクリュー90が螺合され、このアジャストスクリュー90がロックナット91で固定されている。
(カムプロファイル)
【0014】
図2Aは前述したカムシャフト50のカムプロファイルの一例を示したものである。同図の横軸はカムシャフト50の回転角(deg)を示し、縦軸はベースサークルからのリフト量(μm)を示す。
【0015】
このカムプロファイルは、カムシャフト50をシリンダヘッド100に取り付けた状態でカムシャフトを回転駆動手段で1回転(360°)させ、これによりバルブを駆動(開閉)して当該バルブのリフト量を検出することで測定することができる。後述する
図2Bは、カムシャフト50をシリンダヘッド100に取り付けた状態で、暫定バルブクリアランスC
Oを与えて測定したカムプロファイルである。
【0016】
カムシャフト50は、その粗材シャフトを加工機に搬入した後、ジャーナルとカム山の表面をCADデータに基いて加工(粗加工、研磨、仕上)することで製造される。製造されたカムシャフト50のカム山は、ジャーナルの回転方向基準に対する角度誤差とカム面自体の加工誤差を含む。
【0017】
しかし、ベースサークルを基準とした所定量以上のリフト量が得られる角度範囲C〜Eは、カム山の本体部分を構成してカムプロファイルの中心的位置を占める。このため、当該角度範囲C〜Eに対するカムプロファイル各部(回転角θ,リフト量μm)までの相対位置関係は、殆ど誤差がないと考えられる。
【0018】
本発明は、このようにカム山の本体部分に対するカムプロファイル各部(回転角θ,リフト量μm)までの殆ど誤差がない相対位置関係に着目して、バルブクリアランスを簡単かつ正確に調整する。すなわち、
図2Aのカムプロファイルは、ベースサークルと、カム山と、両者間を滑らかに繋ぐランプで構成されている。バルブクリアランスは当該ランプの範囲内に設定される。図示例はベースサークル(〜32°)、ランプ(32°〜49°)、カム山(49°〜180°)の角度範囲であるものとする。
【0019】
ここで、ベースサークルを基準(バルブリフト量=ゼロ)とした場合の、バルブリフト量が例えば2000μm以上となる角度範囲を図のカムプロファイルから求めると、CEの角度範囲(87°〜147°)になる。このようなカム山の本体部分は、カムプロファイルにおいて中心的な位置を占める。このため、当該本体部分CE(87°〜147°)基準とした、所定のリフト量(μm)が得られる所定位置(θ)までの相対角度は、カムシャフト50のCADデータを精度良く反映したものとなる。
【0020】
バルブリフト量が2000μm以上の場合は角度範囲CE(87°〜147°)となるが、バルブリフト量が3000μm以上ではより狭い角度範囲となり、バルブリフト量が4000μm以上ではカム山頂部のごく狭い角度範囲になる。このように角度範囲が狭くなると、当該角度範囲の両端のプロファイル曲線の傾斜変化が大きくなり、横軸の回転角(deg)に対する縦軸のリフト量(μm)の測定サンプリング数が少ないと、角度範囲の誤差が大きくなる可能性がある。
【0021】
この反対に、バルブリフト量が2000μmよりも少ない例えば300μm以上の場合は、両端にランプ区間を部分的に含んだより広い角度範囲になる。そうすると両端のカムプロファイル曲線の傾斜が小さくなって同様に角度範囲の誤差が大きくなる可能性がある。
【0022】
そこで、カム山の本体部分の適当な角度範囲を定めるためのバルブリフト量は、最大リフト量(位置Dの4800μm)の望ましくは30〜60%、より望ましくは40〜50%がよい。前記バルブリフト量2000μmは最大リフト量4800μmの42%に相当する。
【0023】
(バルブクリアランスの調整方法)
カムプロファイルのリフト量が例えば130μmとなる角度は、カムシャフト50のCADデータにより、カム山本体部分CEの上り側87°の位置Cから39°だけ遡った位置B(回転角48°)にある。この位置Bはランプ区間(32°〜49°)を回転角で94%だけ登った位置にある。
【0024】
バルブクリアランスを130μmに調整する場合、カムシャフト50を回転駆動手段で回転して位置B(回転角48°)のカム面にロッカーアーム60、70の一端の被押圧部61、71を当接させる。この状態でアジャストスクリュー90を締め付けてロックナット91で固定することでバルブクリアランスの調整を完了する。
【0025】
このように、本発明によればバルブ毎のカムプロファイルの測定が一回だけで済む。またアジャストスクリュー90のピッチ寸法公差に関係なく正確なバルブクリアランスの調整を簡単に行うことができる。
【0026】
バルブクリアランスは130μmから増減調整することも可能である。130μmよりも小さくする場合は、カムプロファイルのリフト量が130μmよりも少ない位置(
図2Aの位置Aの近傍)にカムシャフト50を回転駆動手段で回転し、そのカム面にロッカーアーム60、70の一端の被押圧部61、71を当接させる。そしてアジャストスクリュー90を締め付けてロックナット91で固定する。
【0027】
この反対にバルブクリアランスを130μmよりも大きくする場合は、カムシャフト50を逆方向に回転してランプ区間の限界(49°)に近いカム面にロッカーアーム60、70の一端の被押圧部61、71を当接させる。そして前記と同様にアジャストスクリュー90の締め付けとロックナット91の固定を行う。
【0028】
次に、前述したバルブクリアランス調整方法を
図3A、
図3B、
図4の実施形態によりさらに具体的に説明する。
図3Aは
図1の吸気バルブ30のバルブクリアランス調整を例にして、当該調整に使用する治具の具体例を示したもので、200はクリアランス調整治具、300はバルブリフト量測定治具、400はプッシャである。
図3Bは
図3Aのプッシャ400に代えてプラー500を配設したもので、その他は
図3Aと同じである。
【0029】
クリアランス調整治具200は、アジャストスクリュー90を回転するビット210と、ロックナット91を回転するため当該ビット210の外周に同軸に配置されたソケット220と、これらを回転する回転機構230を有する。クリアランス調整治具200は図外のロボット等によって保持され、吸気バルブ30の上方所定位置に位置決めされる。
【0030】
バルブリフト量測定治具300は、バルブリテーナ32の上面に当接可能なプローブ爪310を有し、図外のロボット等によって所定位置に位置決めされる。そして、カムシャフト50を回転駆動手段で回転させた時の吸気バルブ30の上下動ストロークがプローブ爪310で検知される。
【0031】
なお、プローブ爪310を当接させる位置はバルブリテーナ32の上面に限られない。すなわち、シリンダヘッド100とシリンダブロック20を
図1のように結合する前に、シリンダヘッド100単体でバルブリフト量を測定する場合は、吸気バルブ30の下面にプローブ爪310を直接当接させてバルブリフト量を測定することも可能である。このように吸気バルブ30にプローブ爪310を直接当接させることで、測定精度を向上することができる。
【0032】
図3Aのプッシャ400は図外のロボット等によって保持されて矢印P方向でロッカーアーム60の一端部上面を押圧可能とされている。そしてプッシャ400を矢印P方向に押圧することで、ロッカーアーム60の一端部下面の被押圧部61をカムシャフト50に当接させる。
【0033】
一方、
図3Bのプラー500はその先端部にL字状の係合部510を有し、当該係合部510をロッカーアーム60の他端部下面に係合させた状態で矢印P方向に引っ張ることで、ロッカーアーム60の一端部下面の被押圧部61をカムシャフト50に当接させる。矢印P方向に引っ張る力の大きさは、弁ばね33の付勢力でロッカーアーム60に作用するモーメントと同等のモーメントが生じる大きさとするのがよい。これにより、弁ばね33の付勢力で変形するロッカーアーム60の撓みを考慮したバルブクリアランスの設定が可能になる。
【0034】
バルブクリアランスの調整は、まず
図3A又は
図3Bのようにカムシャフト50を回転駆動手段で適宜回転し、ベースサークルを基準として前述したバルブクリアランス130μmに対応するリフト量が得られる回転角Bにする。これにより、回転角Bに対応するカム面(
図3A又は
図3Bのカムシャフト50の上面)がロッカーアーム60の被押圧部61に対向する。
【0035】
この対向状態でプッシャ400を使用して当該カム面にロッカーアーム60の被押圧部61を当接させる。これによりロッカーアーム60は支軸80を中心として左側に揺動し、反対側のアジャストスクリュー90の先端部とバルブステム31との間に隙間C
Oが形成される。この隙間C
Oが調整前のバルブクリアランスである。この状態でアジャストスクリュー90をビット210で締め付けて隙間C
Oをゼロにする。
【0036】
アジャストスクリュー90をビット210で締め過ぎると吸気バルブ30が開いてしまう。そうするとバルブクリアランスが過小になる。アジャストスクリュー90をビット210で締め付ける限界は、吸気バルブ30の開弁ストロークが開始しようとする瞬間である。
【0037】
この開弁の瞬間はバルブリフト量測定治具300のプローブ爪310で精度良く検出することができ、その検出信号によってビット210を駆動する回転機構230を自動停止することができる。アジャストスクリュー90の締め付けを停止した後、ロックナット91でアジャストスクリュー90を固定することでバルブクリアランスの調整を完了する。
【0038】
カムプロファイルの測定は、
図3A又は
図3Bの状態、すなわちカムシャフト50をシリンダヘッド100に取り付けた状態で行う。すなわち、
図3A又は
図3Bのようにカムシャフト50をシリンダヘッド100に取り付けた状態で、前述したバルブリフト量測定治具300を使用することで、
図2Bのカムプロファイルを取得することができる。
【0039】
カムプロファイルの測定の際、シリンダヘッド100とシリンダブロック20は必ずしも
図1のように結合している必要はない。シリンダヘッド100単体でもカムプロファイルの測定は可能である。但し、シリンダヘッド100をシリンダブロック20に結合すると、その結合に使用したボルトの締め付けトルクによっては測定カムプロファイルに影響が出る可能性があるので、シリンダブロック20と結合した状態での測定が望ましい。
【0040】
またカムプロファイルの測定の際、バルブリフト量測定治具300のプローブ爪310のストローク方向が、吸気バルブ30のバルブステム31の軸線と、できるだけ平行になるように測定治具300を配置する。この平行度が狂うと、
図2Bのカムプロファイルのリフト量が全体的に少なくなる。但し、当該平行度に関わらず、プローブ爪310のストロークはバルブリフト量に比例したものとなるから、カム山CEの角度範囲(87°〜147°)を正確に取得可能である。
【0041】
図2Bのカム山の高さは、
図2Aのカム山の高さよりも、暫定的に与えたバルブクリアランスC
Oの分だけ低くなっている。しかし、
図2Bのカムプロファイルでも、斜線で示すようにカム山の本体部分CE(87°〜147°)を検出可能であるから、バルブクリアランス130μmに対応するリフト量が得られるカムシャフト50の回転角θ
V(位置B)を同定可能である。すなわち、位置Bは必ずしも直接的に検出可能である必要はない。回転角θ
V(位置B)を同定した後は、前述と同様の方法でバルブクリアランスの調整を行うことができる。
【0042】
(フローチャート)
次に、
図4を参照してバルブクリアランス調整方法を説明する。ステップS1でワーク(シリンダヘッドを搭載したシリンダブロック)をバルブクリアランス調整ラインに搬入する。ここでは、シリンダブロック20の各気筒のピストンが上死点ないし下死点に位置するようにクランクシャフトの回転角が規制され、かつタイミングベルトが外された状態で運ばれてくるものとする。
【0043】
ステップS2でクランクシャフトを回転駆動手段で90°回転する。これはカムプロファイルを測定する際にバルブ30、40がピストン10に当たらないようにするためである。そしてステップS3でカムシャフト50を数回転して可動部分を馴染ませる。
【0044】
ステップS4で、クリアランス調整治具200をバルブ上方の所定位置にセットし、ステップS5でカムシャフト50を回転駆動手段で360°回転させる。これにより吸気バルブ30が上下動し、バルブリフト量測定治具300によるカムプロファイルの測定が行われる。
【0045】
ステップS6で、バルブリフト量測定治具300による測定結果に基いてカムシャフト50の回転角θ
Vを同定する。この回転角θ
Vは、カムプロファイルを示す前述の
図2A又は
図2Bの位置Bから求められるもので、バルブクリアランス130μmに対応するリフト量が得られる角度である。
【0046】
ステップS7でカムシャフト50を回転駆動手段で回転して、回転角θ
Vのカム面(ランプ区間のカム面)をロッカーアーム60の被押圧部61に対向させ、プッシャ400を使用してロッカーアーム60の被押圧部61を対向カム面に当接させる。そしてステップS8でアジャストスクリュー90をクリアランス調整治具200のビット210で回転してバルブクリアランスをゼロにする。
【0047】
ステップS9で、調整治具200のソケット220を回転することでロックナット91を締め付け、アジャストスクリュー90を固定する。これでバルブクリアランスの調整を完了する。
【0048】
(DOHC式シリンダヘッド)
以上、SOHC式シリンダヘッドを例にバルブクリアランス調整方法について説明したが、本発明のバルブクリアランス調整方法は、
図5に示す非直打式のDOHC式シリンダヘッドにも適用可能である。
【0049】
以下
図5を簡単に説明すると、左右一対のカムシャフト50と、吸気バルブ30及び排気バルブ40との間にロッカアーム160、170が配設されている。このロッカアーム160、170の基端はロッカアームピボット180に支持され、先端は吸気バルブ30及び排気バルブ40の各バルブステム頭頂部にそれぞれ対向するように延在している。
【0050】
ロッカアーム160、170の基端と先端の中間位置には、カムシャフト50にそれぞれ対向するように被押圧部としてのローラ161、171が回転自在に支持されている。そしてカムシャフト50の回転に応じてロッカアーム160、170をその基端を中心として先端側を揺動し、吸気バルブ30と排気バルブ40を開閉弁するように構成されている。
【0051】
ロッカアーム160、170の基端には、カムシャフト50のベースサークルとロッカアーム160、170のローラ161、171との間に形成されるバルブクリアランスを調整するため、アジャストスクリュー190とロックナット191が設けられている。このアジャストスクリュー190を前述と同様の方法で回転することでバルブクリアランスの調整を行うことができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば
図3A、
図3Bの実施形態ではクリアランス調整治具200、バルブリフト量測定治具300、プッシャ400を使用してバルブクリアランスの調整をしたが、これら治具を他の同等の機能を有する1又は2以上の治具に代替することでもバルブクリアランスを調整可能である。