特許第6873507号(P6873507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6873507電子冷却結露防止システム及びその結露防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873507
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】電子冷却結露防止システム及びその結露防止方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/04 20060101AFI20210510BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F25D21/04 K
   F25D11/00 101W
   F25D11/00 101B
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-556362(P2019-556362)
(86)(22)【出願日】2018年8月2日
(65)【公表番号】特表2020-518779(P2020-518779A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】CN2018098217
(87)【国際公開番号】WO2019109649
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】201711290069.2
(32)【優先日】2017年12月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512265766
【氏名又は名称】東莞市升微机電設備科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】夏可瑜
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/042553(WO,A1)
【文献】 特開2001−091123(JP,A)
【文献】 特開2002−174479(JP,A)
【文献】 特開2008−198671(JP,A)
【文献】 米国特許第06308519(US,B1)
【文献】 特開2005−155983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/04
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストチャンバを含む電子冷却結露防止システムであって、更に、
冷却及び/又は加熱に用いられるものであって、少なくとも1組設けられ、各々がテストチャンバのチャンバ壁にそれぞれ装設され、且つ、一端部がテストチャンバの外部に位置して放熱するとともに、他方の部位がテストチャンバのチャンバ壁又はチャンバ内に固定される電子冷却片と、
電子冷却片の温度を検出するために用いられるものであって、各電子冷却片におけるチャンバ寄りの内側部位、又は、全電子冷却片が共有するチャンバ寄りの内側部位、又は、チャンバ壁、又は、電子冷却片におけるチャンバ内の放熱片に装設される温度センサと、
テストチャンバ内部の温度及び湿度を検出するために用いられるものであって、テストチャンバの内部に装設される温湿度センサと、
電子冷却片の運転及び/又は停止を制御するために用いられるものであって、各々に対応する電子冷却片に一対一となるよう電気的に接続されるか、全ての電子冷却片に一対複数となるよう電気的に接続される冷却片制御ユニットと、
温度センサ、温湿度センサ及び冷却片制御ユニットに電気的に接続され、温湿度センサが収集したテストチャンバ内部の温度及び湿度に基づいてテストチャンバ内の空気の露点値を算出するものであって、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片の動作数又は電子冷却片の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニットを制御し、前記予め定められた閾値は、温度センサが収集した電子冷却片の温度T1又は電子冷却片の温度T1+n℃とし、0<n≦10である主制御装置、を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記主制御装置は、温湿度センサが収集したテストチャンバ内部の温度及び湿度を収集した後、自身に蓄積されている露点テーブルに基づいて該温度及び湿度に対応する空気の露点値を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項3】
前記冷却片制御ユニットは、更に、電子冷却片の出力パワー、電流又は電圧を検出することで、電子冷却片が正常に運転しているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項4】
前記主制御装置は、更に、冷却片制御ユニットが電子冷却片に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片の動作回路を自動的に切断し、予備の電子冷却片を起動して動作させるか、その他の電子冷却片の正常運転を維持することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項5】
前記主制御装置は、更に、冷却片制御ユニットが電子冷却片に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片の番号を提示することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項6】
前記主制御装置は、冷却片制御ユニットの検出及び/又は温度センサの検出によって、異常が発生した電子冷却片の番号を識別することを特徴とする請求項5に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項7】
前記主制御装置は、更に、異常が発生した電子冷却片が交換された場合、交換された電子冷却片の動作回路を再び有効化することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項8】
前記テストチャンバの外部には第1温度センサが装着されており、環境温度を検出するために用いられ、環境温度がテストチャンバ内部の空気の露点よりも低い場合、主制御装置は、テストチャンバのサンプリング口における結露リスク、及び/又は、サンプリング管に対する温度調整処理を提示することを特徴とする請求項1に記載の電子冷却結露防止システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子冷却結露防止システムの結露防止方法であって、
(1)温湿度センサによってテストチャンバ内部の温度及び湿度をリアルタイム収集するとともに、温度センサによって電子冷却片の温度をリアルタイム検出するステップと、
(2)主制御装置が取得した温湿度センサにより収集されたテストチャンバ内部の温度及び湿度から、テストチャンバ内の空気の露点値を算出し、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片の動作数又は電子冷却片の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニットを制御し、前記予め定められた閾値は、温度センサが収集した電子冷却片の温度T1又は電子冷却片の温度T1+n℃とし、0<n≦10であるステップ、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査機器の技術分野に関し、より具体的には、電子冷却結露防止システム及びその結露防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家具、自動車用品等の材料には、ホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)等の揮発性有害ガスが存在し、揮発性有害ガスの濃度が一定の範囲を上回ると人体に害を及ぼす。材料内のホルムアルデヒド、VOC等の揮発性有害ガスを合理的に収集することは、検査技術における要の一つとなっている。
【0003】
現在、工業的には、ホルムアルデヒドやVOC等の揮発性有害ガスの放出量をテストするための多くの機器が存在する。この種のテスト機器は電子冷却片によって冷却又は加熱を可能としているが、電子冷却片は冷却時にテスト機器のチャンバを結露させることが多く、テストの効果に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における上記の瑕疵を解消し、冷却片に結露防止措置を講じるとともに冷却片を冗長化制御し、異常時に停止しない電子冷却結露防止システム及びその結露防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を実現するために、本発明は第一の局面において、テストチャンバを含む電子冷却結露防止システムを提供する。該システムは、更に、冷却及び/又は加熱に用いられるものであって、少なくとも1組設けられ、各々がテストチャンバのチャンバ壁にそれぞれ装設され、且つ、一端部がテストチャンバの外部に位置して放熱するとともに、他方の部位がテストチャンバのチャンバ壁又はチャンバ内に固定される電子冷却片と、電子冷却片の温度を検出するために用いられるものであって、各電子冷却片におけるチャンバ寄りの内側部位、又は、全電子冷却片が共有するチャンバ寄りの内側部位、又は、チャンバ壁、又は、電子冷却片におけるチャンバ内の放熱片に装設される温度センサと、テストチャンバ内部の温度及び湿度を検出するために用いられるものであって、テストチャンバの内部に装設される温湿度センサと、電子冷却片の運転及び/又は停止を制御するために用いられるものであって、各々に対応する電子冷却片に一対一となるよう電気的に接続されるか、全ての電子冷却片に一対複数となるよう電気的に接続される冷却片制御ユニットと、温度センサ、温湿度センサ及び冷却片制御ユニットに電気的に接続され、温湿度センサが収集したテストチャンバ内部の温度及び湿度に基づいてテストチャンバ内の空気の露点値を算出するものであって、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片の動作数又は電子冷却片の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニットを制御し、前記予め定められた閾値は、温度センサが収集した電子冷却片の温度T1又は電子冷却片の温度T1+n℃とし、0<n≦10である主制御装置、を含む。
【0006】
好ましい実施形態として、前記主制御装置は、温湿度センサが収集したテストチャンバ内部の温度及び湿度を収集した後、自身に蓄積されている露点テーブルに基づいて該温度及び湿度に対応する空気の露点値を算出する。
【0007】
好ましい実施形態として、前記冷却片制御ユニットは、更に、電子冷却片の出力パワー、電流又は電圧を検出することで、電子冷却片が正常に運転しているか否かを判断する。
【0008】
好ましい実施形態として、前記主制御装置は、更に、冷却片制御ユニットが電子冷却片に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片の動作回路を自動的に切断し、予備の電子冷却片を起動して動作させるか、その他の電子冷却片の正常運転を維持する。
【0009】
好ましい実施形態として、前記主制御装置は、更に、冷却片制御ユニットが電子冷却片に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片の番号を提示する。
【0010】
好ましい実施形態として、前記主制御装置は、冷却片制御ユニットの検出及び/又は温度センサの検出によって、異常が発生した電子冷却片の番号を識別する。
【0011】
好ましい実施形態として、前記主制御装置は、更に、異常が発生した電子冷却片が交換された場合、交換された電子冷却片の動作回路を再び有効化する。
【0012】
本発明は、第2の局面において、電子冷却結露防止システムの結露防止方法を提供する。該方法は、(1)温湿度センサによってテストチャンバ内部の温度及び湿度をリアルタイム収集するとともに、温度センサによって電子冷却片の温度をリアルタイム検出するステップと、(2)主制御装置が取得した温湿度センサにより収集されたテストチャンバ内部の温度及び湿度から、テストチャンバ内の空気の露点値を算出し、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片の動作数又は電子冷却片の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニットを制御し、前記予め定められた閾値は、温度センサが収集した電子冷却片の温度T1又は電子冷却片の温度T1+n℃とし、0<n≦10であるステップ、を含む。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0014】
本発明は、電子冷却片の動作状態をリアルタイム制御可能であり、冷却片の冗長化制御を実現している。これにより、冷却片によるチャンバの結露を回避でき、異常時に停止することなく動作可能としている。
【0015】
本発明の実施例又は従来技術における技術方案をより明確に説明すべく、以下に、実施例又は従来技術の記載にあたり使用を要する図面について簡単に説明する。なお、言うまでもなく、以下に記載する図面は本発明の実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要することなくこれらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電子冷却結露防止システムの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明らかとすべく、以下に、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、本発明の実施例における技術方案について明瞭簡潔に述べる。なお、言うまでもなく、ここで記載する実施例は本発明の実施例の一部であって、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて当業者が創造的労働を要さずに取得するその他あらゆる実施例は、いずれも本発明による保護の範囲に属する。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施例は、電子冷却結露防止システムを提供する。該システムは、テストチャンバ1、電子冷却片2、温度センサ3、温湿度センサ4、冷却片制御ユニット5及び主制御装置6を含む。以下に、図面を組み合わせて、本実施例の各構成部分について詳細に説明する。
【0019】
電子冷却片2は、冷却及び/又は加熱に用いられる。前記電子冷却片2は、少なくとも1組設けられる(例えば、M1、M2・・・Mn)。各電子冷却片2はそれぞれテストチャンバ1のチャンバ壁に装設され、一端部がテストチャンバの外部に位置して放熱するとともに、他方の部位がテストチャンバのチャンバ壁又はチャンバ内に固定される。
【0020】
温度センサ3は、電子冷却片2の温度を検出するために用いられる。前記温度センサ3は、各電子冷却片2におけるチャンバ寄りの内側部位、又は、全電子冷却片が共有するチャンバ寄りの内側部位、又は、チャンバ壁、又は、電子冷却片におけるチャンバ内の放熱片に装設される。
【0021】
温湿度センサ4は、テストチャンバ1内部の温度及び湿度を検出するために用いられる。前記温湿度センサ4は、テストチャンバ1の内部に装設される。
【0022】
冷却片制御ユニット5は、電子冷却片2の運転及び/又は停止を制御するために用いられる。前記冷却片制御ユニット5は、少なくとも1つ設けられる(例えば、N1、N2・・・Nn)。前記冷却片制御ユニット5は、各々に対応する電子冷却片2に一対一となるよう電気的に接続されるか、全ての電子冷却片2に一対複数となるよう電気的に接続される。
【0023】
主制御装置6は、温度センサ3、温湿度センサ4及び冷却片制御ユニット5に電気的に接続され、温湿度センサ4が収集したテストチャンバ1内部の温度及び湿度に基づいて、テストチャンバ1内の空気の露点値を算出する。そして、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片2の動作数又は電子冷却片2の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニット5を制御する。前記予め定められた閾値は、温度センサ3が収集した電子冷却片2の温度T1又は電子冷却片2の温度T1+n℃とし、0<n≦10である。
【0024】
本実施例において、前記主制御装置6は、温湿度センサ4が収集したテストチャンバ1内部の温度及び湿度を収集した後、自身に蓄積されている露点テーブルに基づいて該温度及び湿度に対応する空気の露点値を算出する。なお、露点テーブルについては、文献又は教科書に基づいて取得すればよい。
【0025】
本実施例において、前記冷却片制御ユニット5は、更に、電子冷却片2の出力パワー、電流又は電圧を検出することで、電子冷却片2が正常に運転しているか否かを判断する。
【0026】
本実施例において、前記主制御装置6は、更に、冷却片制御ユニット5が電子冷却片2に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片2の動作回路を自動的に切断し、予備の電子冷却片2を起動して動作させるか、その他の電子冷却片2の正常運転を維持する。
【0027】
本実施例において、前記主制御装置6は、更に、冷却片制御ユニット5が電子冷却片2に異常が発生したことを検出すると、異常が発生した電子冷却片2の番号を提示する。
【0028】
具体的に実施する場合、前記主制御装置6は、冷却片制御ユニット5の検出及び/又は温度センサ3の検出によって、異常が発生した電子冷却片2の番号を識別可能である。これら2種類の異常判定は別々に使用してもよいし、同時に使用してもよい。
【0029】
本実施例において、前記主制御装置6は、更に、異常が発生した電子冷却片2が交換された場合、交換された電子冷却片2の動作回路を再び有効化する。
【0030】
更に、前記テストチャンバの外部には第1温度センサ7が装着されており、環境温度を検出するために用いられる。環境温度がテストチャンバ内部の空気の露点よりも低い場合、主制御装置6は、テストチャンバのサンプリング口における結露リスク、及び/又は、サンプリング管に対する温度調整処理を提示する。
【0031】
また、本発明は、電子冷却結露防止システムの結露防止方法を更に提供する。該方法は、以下のステップを含む。
【0032】
(1)温湿度センサ4によってテストチャンバ1内部の温度及び湿度をリアルタイム収集するとともに、温度センサ3によって電子冷却片2の温度をリアルタイム検出する。
【0033】
(2)主制御装置6が取得した温湿度センサ4により収集されたテストチャンバ1内部の温度及び湿度から、テストチャンバ1内の空気の露点値を算出し、空気の露点値が予め定められた閾値よりも高い場合には、電子冷却片2の動作数又は電子冷却片2の出力パワーを低減させるよう冷却片制御ユニット5を制御する。前記予め定められた閾値は、温度センサ3が収集した電子冷却片2の温度T1又は電子冷却片2の温度T1+n℃とし、0<n≦10である。
【0034】
上述したように、本発明は、電子冷却片の動作状態をリアルタイム制御可能であり、冷却片の冗長化制御を実現している。これにより、冷却片によるチャンバの結露を回避でき、異常時に停止することなく動作可能としている。
【0035】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記実施例に制限されない。本発明の本質及び原理を逸脱することなく実施されるその他のあらゆる変形、補足、置き換え、組み合わせ、簡略化はいずれも等価の置換方式とみなされ、本発明による保護の範囲に含まれる。
図1