特許第6873531号(P6873531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873531
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 27/06 20060101AFI20210510BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20210510BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20210510BHJP
   F16C 25/04 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16C27/06 A
   F16C17/02 Z
   F16C33/20 Z
   F16C25/04 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-54922(P2017-54922)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-155390(P2018-155390A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 昇
(72)【発明者】
【氏名】菊池 宏之
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151289(JP,A)
【文献】 特開2016−142372(JP,A)
【文献】 実開平02−127818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 27/06
F16C 17/02
F16C 25/04
F16C 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジング内に収容され、軸部材の軸方向の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な合成樹脂製の筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する熱可塑性エラストマー製の縮径用弾性部材と、を備え、
前記縮径用弾性部材は、
前記滑り軸受を前記ハウジング内に収容した場合に、径方向外方の端部が前記ハウジングの内周面と当接して、前記軸受本体を径方向内方に付勢するものであり、
軸方向の断面あるいは軸方向に垂直な断面において、径方向に対して傾斜しながら径方向外方に突出して、前記ハウジングの内周面と当接する突出部を有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項に記載の滑り軸受であって、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体された熱可塑性エラストマー製の係合用弾性部材をさらに有し
前記軸受本体は、
一方の端部において外周面から径方向外方に突出して、前記ハウジングの内周面に周方向に形成された環状溝に挿入される係合部をさらに有し、
前記係合用弾性部材は、
前記軸受本体の前記係合部とともに前記ハウジングの前記環状溝に挿入され、当該環状溝の側面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
筒状のハウジング内に収容され、軸部材の軸方向の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な合成樹脂製の筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する熱可塑性エラストマー製の縮径用弾性部材と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化された熱可塑性エラストマー製の係合用弾性部材と、を備え、
前記縮径用弾性部材は、
前記滑り軸受を前記ハウジング内に収容した場合に、径方向外方の端部が前記ハウジングの内周面と当接して、前記軸受本体を径方向内方に付勢するものであり、
前記軸受本体は、
一方の端部において外周面から径方向外方に突出して、前記ハウジングの内周面に周方向に形成された環状溝に挿入される係合部をさらに有し、
前記係合用弾性部材は、
前記軸受本体の前記係合部とともに前記ハウジングの前記環状溝に挿入され、当該環状溝の側面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項2または3に記載の滑り軸受であって、
前記係合用弾性部材は、前記縮径用弾性部材と一体化されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記軸受本体は、
外周面に形成され、底部の溝幅が開口部の溝幅より広い保持溝をさらに有し、
前記縮径用弾性部材は、
前記軸受本体の前記保持溝に収容され、当該保持溝の前記底部と同形状の被保持部をさらに有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な合成樹脂製の筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する熱可塑性エラストマー製の縮径用弾性部材と、を備え、
前記軸受本体は、
外周面に形成され、底部の溝幅が開口部の溝幅より広い保持溝をさらに有し、
前記縮径用弾性部材は、
前記軸受本体の前記保持溝に収容され、当該保持溝の前記底部と同形状の被保持部をさらに有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項7】
請求項5または6に記載の滑り軸受であって、
前記軸受本体の前記保持溝および前記縮径用弾性部材の前記被保持部は、
前記軸受本体の一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成され、両端部の溝幅が当該両端部に挟まれた中間部の溝幅より広い
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記軸受本体の前記保持溝の前記開口部は、
前記縮径用弾性部材の曲げ変形した部分を収容する収容領域を有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材の軸方向の移動を許容しつつ、軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、車両のステアリング機構に用いられるラックブッシュに好適な滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のステアリング機構に用いられるラックブッシュに好適な滑り軸受として、円筒状のハウジング内に軸方向の移動が規制された状態で収容され、ラック軸の軸方向の移動を許容しつつ、ラック軸に加わる荷重を支持する滑り軸受が記載されている。
【0003】
この滑り軸受は、ラック軸が挿入される円筒状の軸受本体と、軸受本体に装着され、軸受本体を径方向内方に付勢する弾性リングと、を備えている。軸受本体は、合成樹脂製であり、一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成された第一のスリットと、他方の端面から一方の端面に向けて軸方向に沿って形成された第二のスリットと、軸受本体の外周面に形成され、弾性リングが装着される装着溝と、を有している。
【0004】
この滑り軸受によれば、弾性リングによって軸受本体が縮径し、軸受本体に挿入されたラック軸を締め付けるので、軸受本体の内周面とラック軸の外周面との間のクリアランスをゼロにして、軸受本体の内周面とラック軸の外周面との衝突による不快音の発生を防止することができるとともに、ラック軸の外径寸法誤差による摩擦トルクの変動を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2008−151289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の滑り軸受は、軸受本体および弾性リングが別部品であるため、部品点数が増加して部品管理にコストがかかる。また、軸受本体の外周面に形成された装着溝に弾性リングを装着する必要があるため、組立工数が増加して組立作業にコストがかかる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数および組立工数を減らして、より低コストで製造可能な滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受では、軸部材が挿入される筒状の軸受本体に、一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを設けるとともに、軸受本体と一体的に形成され、外周面から径方向外方に突出する縮径用弾性部材を設けている。そして、この滑り軸受を例えば筒状のハウジング内に収容した場合に、縮径用弾性部材の径方向外方の端部がハウジングの内周面と当接して、軸受本体を径方向内方に付勢するように、軸受本体の外周面から突出する縮径用弾性部材の突出量を設定している。
【0009】
例えば、本発明の滑り軸受の第一の態様は、
筒状のハウジング内に収容され、軸部材の軸方向の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する縮径用弾性部材と、を備え
前記縮径用弾性部材は、
前記滑り軸受を前記ハウジング内に収容した場合に、径方向外方の端部が前記ハウジングの内周面と当接して、前記軸受本体を径方向内方に付勢するものであり、
軸方向の断面あるいは軸方向に垂直な断面において、径方向に対して傾斜しながら径方向外方に突出して、前記ハウジングの内周面と当接する突出部を有する
【0010】
また、本発明の滑り軸受の第二の態様は、
筒状のハウジング内に収容され、軸部材の軸方向の移動を許容しつつ、前記軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受であって、
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な合成樹脂製の筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する熱可塑性エラストマー製の縮径用弾性部材と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化された熱可塑性エラストマー製の係合用弾性部材と、を備え、
前記縮径用弾性部材は、
前記滑り軸受を前記ハウジング内に収容した場合に、径方向外方の端部が前記ハウジングの内周面と当接して、前記軸受本体を径方向内方に付勢するものであり、
前記軸受本体は、
一方の端部において外周面から径方向外方に突出して、前記ハウジングの内周面に周方向に形成された環状溝に挿入される係合部をさらに有し、
前記係合用弾性部材は、
前記軸受本体の前記係合部とともに前記ハウジングの前記環状溝に挿入され、当該環状溝の側面と当接する。
また、本発明の滑り軸受の第三の態様は、
一方の端面から他方の端面に向けて軸方向に沿って形成されたスリットを有し、径方向に伸縮自在な合成樹脂製の筒状の軸受本体と、
二色成形あるいはインサート成形により前記軸受本体と一体化され、前記軸受本体の外周面から径方向外方に突出する熱可塑性エラストマー製の縮径用弾性部材と、を備え、
前記軸受本体は、
外周面に形成され、底部の溝幅が開口部の溝幅より広い保持溝をさらに有し、
前記縮径用弾性部材は、
前記軸受本体の前記保持溝に収容され、当該保持溝の前記底部と同形状の被保持部をさらに有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、滑り軸受を例えば筒状のハウジング内に収容した場合に、縮径用弾性部材の径方向外方の端部がハウジングの内周面と当接して、軸受本体を径方向内方に付勢する。このため、滑り軸受をハウジング内に収容することにより、軸受本体が縮径し、軸受本体に挿入された軸部材を締め付けるので、軸受本体に弾性リングを装着する必要がない。また、縮径用弾性部材は、軸受本体と一体的に形成されているので、軸受本体と縮径用弾性部材とを別部品として部品管理する必要がない。したがって、本発明によれば、部品点数および組立工数を減らして、より低コストで製造可能な滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第一実施の形態に係るラックブッシュ1が用いられた車両のステアリング機構の一部の部分断面図である。
図2図2(A)、図2(B)および図2(C)は、ラックブッシュ1の正面図、側面図および背面図である。
図3図3(A)、図3(B)および図3(C)は、ブッシュ本体2の正面図、側面図および背面図であり、図3(D)および図3(E)は、図3(A)に示すブッシュ本体2のA−A断面図およびB−B断面図であり、図3(F)は、図3(A)に示すブッシュ本体2のC部拡大図である。
図4図4(A)、図4(B)および図4(C)は、縮径用弾性部材3の正面図、上面図および側面図であり、図4(D)は、図2(A)のD部拡大図である。
図5図5(A)、図5(B)および図5(C)は、本発明の第二実施の形態に係るラックブッシュ1’の正面図、側面図および背面図である。
図6図6(A)、図6(B)および図6(C)は、縮径用弾性部材3aの正面図、上面図および側面図であり、図6(D)は、図5(B)に示すE部の図5(C)に示すF方向矢視拡大図である。
図7図7(A)、図7(B)および図7(C)は、縮径用弾性部材3bの正面図、上面図および側面図であり、図7(D)は、図7(C)のG部拡大図である。
図8図8は、縮径用弾性部材3cの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第一実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るラックブッシュ1が用いられた車両のステアリング機構の一部の部分断面図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るラックブッシュ1は、円筒状のハウジング4内に軸O方向の移動が規制された状態で収容され、ラック軸5の軸O方向の移動を許容しつつ、ラック軸5に加わる荷重を支持する。
【0016】
図2(A)、図2(B)および図2(C)は、ラックブッシュ1の正面図、側面図および背面図である。
【0017】
図示するように、ラックブッシュ1は、ラック軸5が挿入される円筒状のブッシュ本体2と、二色成形、インサート成形等によりブッシュ本体2と一体的に形成された複数の縮径用弾性部材3と、を備えている。
【0018】
図3(A)、図3(B)および図3(C)は、ブッシュ本体2の正面図、側面図および背面図であり、図3(D)および図3(E)は、図3(A)に示すブッシュ本体2のA−A断面図およびB−B断面図であり、図3(F)は、図3(A)に示すブッシュ本体2のC部拡大図である。
【0019】
ブッシュ本体2は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂等の摺動特性のよい合成樹脂で形成され、図示するように、内周面20に形成され、挿入されたラック軸5の外周面50と摺接する摺動面21と、周方向に等間隔で交互に配置された複数の第一スリット25および第二スリット26と、外周面22に形成された係合部27と、縮径用弾性部材3を保持する複数の保持溝28と、を備えている。
【0020】
第一スリット25は、一方の端面23から他方の端面24に向けて軸O方向に沿って形成され、第二スリット26は、他方の端面24から一方の端面23に向けて軸O方向に沿って形成されている。ブッシュ本体2は、周方向に等間隔で交互に配置された複数の第一スリット25および第二スリット26により、縮径方向に変形することができる。
【0021】
係合部27は、一方の端面23側において外周面22から径方向外方に突出し、ハウジング4の内周面40に周方向に形成された環状溝41に挿入される。これにより、ハウジング4内に収容されたラックブッシュ1の軸O方向の移動が規制される。
【0022】
保持溝28は、両端面23、24を貫くように軸O方向に沿って外周面22に形成されている。また、保持溝28は、底部280の溝幅W1が開口部281の溝幅W2より広くなるように形成されている。
【0023】
図4(A)、図4(B)および図4(C)は、縮径用弾性部材3の正面図、上面図および側面図であり、図4(D)は、図2(A)のD部拡大図である。
【0024】
縮径用弾性部材3は、二色成形、インサート成形等によりブッシュ本体2と一体的に形成可能なポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマーで形成され、図示するように、被保持部31と、被保持部31の上面310に形成された一対の突出部30a、30bと、を備えている。
【0025】
突出部30a、30bは、ラックブッシュ1において、ブッシュ本体2の外周面22から径方向外方に突出し、突出部30a、30bの頂点を結ぶ円Cの直径D1(図2(A)参照)が、ハウジング4の内径D2(図1参照)に対してシメシロとなるように、被保持部31の上面310からの突出量が設定されている。これにより、縮径用弾性部材3は、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容した場合に、突出部30a、30bがハウジング4の内周面40と当接して、ブッシュ本体2を径方向内方に付勢する。
【0026】
また、図4(D)に示すように、縮径用弾性部材3の突出部30a、30bは、軸O方向に垂直な断面において、径方向Rに対して周方向Sに傾斜している。このため、突出部30a、30bは、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容した場合に、ハウジング4の内周面40と当接して周方向Sに曲げ変形する。また、ブッシュ本体2の保持溝28の開口部281は、縮径用弾性部材3の突出部30a、30bよりも広い溝幅の幅W2を有し、これにより、突出部30a、30bの周方向Sの両側に収容領域282a、282bを形成している。ハウジング4の内周面40と当接して曲げ変形した突出部30a、30bは、収容領域282a、282bに収容される。
【0027】
被保持部31は、ブッシュ本体2の保持溝28の底部280と同形状であり、この保持溝28の底部280に収容される。このため、ブッシュ本体2と一体的に形成された縮径用弾性部材3がブッシュ本体2から剥がれた場合でも、縮径用弾性部材3がブッシュ本体2の保持溝28から径方向に抜け落ちるのを防止することができる。
【0028】
以上、本発明の第一実施の形態について説明した。
【0029】
本実施の形態では、ラックブッシュ1を円筒状のハウジング4内に収容した場合に、縮径用弾性部材3の突出部30a、30bがハウジング4の内周面40と当接して、ブッシュ本体2を径方向内方に付勢する。このため、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容することにより、ブッシュ本体2が縮径し、ブッシュ本体2に挿入されたラック軸5を締め付けるので、ブッシュ本体2に弾性リングを装着する必要がない。また、縮径用弾性部材3は、ブッシュ本体2と一体的に形成されているので、ブッシュ本体2と縮径用弾性部材3とを別部品として部品管理する必要がない。したがって、本実施の形態によれば、部品点数および組立工数を減らして、より低コストで製造可能なラックブッシュ1を提供することができる。
【0030】
また、本実施の形態において、縮径用弾性部材3の突出部30a、30bは、軸O方向に垂直な断面において、径方向Rに対して周方向Sに傾斜しており、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容した場合に、ハウジング4の内周面40と当接して周方向Sに曲げ変形し、突出部30a、30bの周方向Sの両側に形成されたブッシュ本体2の保持溝28の収容領域282a、282bに収容される。縮径用弾性部材3に用いられる熱可塑性エラストマーの劣化は、一般に、曲げ変形よりも圧縮変形の影響の方が大きい。本実施の形態では、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容したときに縮径用弾性部材3に加わる圧縮応力の一部を突出部30a、30bの曲げ変形により逃がすことができるので、その分だけ圧縮変形量を小さくでき、これにより縮径用弾性部材3の耐久性を向上させることができる。
【0031】
また、本実施の形態では、ブッシュ本体2の保持溝28の底部280の溝幅W1を開口部281の溝幅W2より広くするとともに、縮径用弾性部材3の被保持部31を、ブッシュ本体2の保持溝28の底部280と同形状にして、この保持溝28の底部280に収容している。このため、ブッシュ本体2と一体的に形成された縮径用弾性部材3がブッシュ本体2から剥がれた場合でも、縮径用弾性部材3がブッシュ本体2の保持溝28から径方向に抜け落ちるのを防止することができる。
【0032】
また、上記特許文献1に記載の滑り軸受では、軸受本体を径方向内方に付勢する弾性リングを軸受本体の装着溝に装着している。このため、滑り軸受をハウジング4に挿入する際、装着溝から外れる方向の力が弾性リングに加わって、弾性リングが装着溝から外れてしまう可能性がある。しかし、本実施の形態では、縮径用弾性部材3を軸O方向に沿ってブッシュ本体2と一体的に形成しているので、そのような心配はない。したがって、本実施の形態によれば、ラックブッシュ1のハウジング4へ挿入作業の作業性を向上させることができる。
【0033】
また、上記特許文献1に記載の滑り軸受は、ハウジング4に挿入された場合、軸O方向において点でハウジング4に支持されることとなり(弾性リングが1本なら1点支持、2本なら2点支持)、このため、軸受本体の外周面がハウジング4内で軸O方向に傾く可能性がある。この点、本実施の形態では、縮径用弾性部材3が軸O方向に延びているので、ハウジング4に挿入された場合に、軸O方向において線でハウジング4に支持されることとなり、したがって、ブッシュ本体2の外周面22がハウジング4内で軸O方向の傾く可能性を低くすることができる。
【0034】
さらに、本実施の形態では、縮径用弾性部材3が曲げ変形を利用した形状であるため、形状の自由度が高く、剛性のコントロールがしやすいという利点がある。
【0035】
[第二実施の形態]
本実施の形態に係るラックブッシュ1’も、図1に示す第一実施の形態に係るラックブッシュ1と同様、円筒状のハウジング4内に軸O方向の移動が規制された状態で収容され、ラック軸5の軸O方向の移動を許容しつつ、ラック軸5に加わる荷重を支持する。
【0036】
図5(A)、図5(B)および図5(C)は、本発明の第二実施の形態に係るラックブッシュ1’の正面図、側面図および背面図である。
【0037】
本実施の形態に係るラックブッシュ1’が第一実施の形態に係るラックブッシュ1と異なる点は、縮径用弾性部材3に代えて縮径用弾性部材3aを用いたことである。その他の構成は、第一実施の形態に係るラックブッシュ1と同様である。
【0038】
図6(A)、図6(B)および図6(C)は、縮径用弾性部材3aの正面図、上面図および側面図であり、図6(D)は、図5(B)に示すE部の図5(C)に示すF方向矢視拡大図である。
【0039】
縮径用弾性部材3aが第一実施の形態に係るラックブッシュ1の縮径用弾性部材3と異なる点は、一対の係合用弾性部32a、32bを有することである。その他の構成は、第一実施の形態に係るラックブッシュ1の縮径用弾性部材3と同様である。
【0040】
係合用弾性部32a、32bは、ブッシュ本体2の係合部27側において、被保持部31の上面310に突出部30a、30bを挟んで形成され、ブッシュ本体2の外周面22から径方向外方に突出する。そして、ブッシュ本体2の係合部27とともに、ハウジング4の環状溝41に挿入される。
【0041】
係合用弾性部32a、32bの軸O方向の長さL1は、ブッシュ本体2の係合部27の軸O方向の長さL2より長く、かつ、ハウジング4の環状溝41の軸O方向の長さL3(図1参照)に対してシメシロとなるように設定されている。ただし、係合用弾性部32a、32bは、軸O方向において、少なくとも一方の端面がブッシュ本体2の係合部27の端面から環状溝41とシメシロとなるように突出する形状であれば、係合用弾性部32a、32bの軸O方向の長さL1が、ブッシュ本体2の係合部27の軸O方向の長さL2より短くてもかまわない。
【0042】
なお、ここでは、係合用弾性部32a、32bを縮径用弾性部材3aと一体的に形成しているが、係合用弾性部32a、32bは、ブッシュ本体2と一体的に形成されたものであればよく、縮径用弾性部材3aとは別部品であってもよい。
【0043】
以上、本発明の第二実施の形態について説明した。
【0044】
本実施の形態では、係合用弾性部32a、32bを、軸O方向において、少なくとも一方の端面がブッシュ本体2の係合部27の端面から突出する形状とし、かつ係合用弾性部32a、32bの軸O方向の長さL1を、ハウジング4の環状溝41の軸O方向の長さL3に対してシメシロとなるように設定している。このため、ラックブッシュ1をハウジング4内に収容した場合に、ブッシュ本体2の係合部27がハウジング4の環状溝41の側面と接触・非接触を繰り返して異音を発生させるのを防止できる。その他の効果は、本発明の第一実施の形態と同様である。
【0045】
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0046】
例えば、上記の各実施の形態では、縮径用弾性部材3、3aの突出部30a、30bを、軸O方向に垂直な断面において、径方向Rに対して周方向Sに傾斜させている(図4(D)参照)。しかし、本発明はこれに限定されない。図7に示す縮径用弾性部材3bのように、軸O方向の断面において、径方向Rに対して軸O方向に傾斜した突出部30cを、軸O方向に沿って被保持部31の上面310に複数設けてもよい。この場合、ハウジング4の内周面40と当接して曲げ変形した突出部30cが収容される収容領域282cを有するように、所定の間隔を空けて突出部30cを設けることが好ましい。
【0047】
また、上記の各実施の形態において、ブッシュ本体2の保持溝28の底部280の両端部における溝幅を、その両端部に挟まれた中央部の溝幅よりも広くし、これに併せて、図8に示す縮径用弾性部材3cのように、被保持部31の両端部311における幅を両端部311に挟まれた中央部312の幅より広くしてもよい。このようにすることで、ブッシュ本体2と一体的に形成された縮径用弾性部材3cがブッシュ本体2から剥がれた場合でも、縮径用弾性部材3cが軸O方向にスライドしてブッシュ本体2の保持溝28から軸O方向に抜け落ちるのを防止することができる。
【0048】
また、上記の各実施の形態では、ブッシュ本体2に、一方の端面23から他方の端面24に向けて複数の第一スリット25を軸O方向に沿って形成するとともに、他方の端面24から一方の端面23に向けて複数の第二スリット26を軸O方向に沿って形成している。しかし、本発明はこれに限定されない。ブッシュ本体2は、いずれか一方の端面から他方の端面に向けて軸O方向に沿って形成されたスリットを備えるものであればよい。また、上記の各実施の形態では、ブッシュ本体2の形状を円筒状としているが、挿入されるラック軸5の形状に適合する筒形状であればよい。また、本実施の形態では、ブッシュ本体2と縮径用弾性部材3、3a〜3cとを別材質で形成しているが、両者を同じ材質で形成してもよい。
【0049】
また、本発明はラックブッシュに限定されない。本発明は軸部材の移動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1、1’:ラックブッシュ、 2:ブッシュ本体、 3、3a〜3c:縮径用弾性部材、 4:ハウジング、 5:ラック軸、20:ブッシュ本体2の内周面、 21:ブッシュ本体2の摺動面、 22:ブッシュ本体2の外周面、 23、24:ブッシュ本体2の端面、 25:第一スリット、 26:第二スリット、 27:係合部、 28:保持溝、 30a〜30c:突出部、 31:被保持部、 32a、32b:係合用弾性部、 40:ハウジング4の内周面、 41:環状溝、 50:ラック軸5の外周面、 280:保持溝28の底部、 281:保持溝28の開口部、 282a〜282c:収容領域、 310:被保持部31の上面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8