特許第6873535号(P6873535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873535
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】中継装置および中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20210510BHJP
   H04J 11/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H04B7/15
   H04J11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-136160(P2016-136160)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-7209(P2018-7209A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 真碁
(72)【発明者】
【氏名】梶 貴一
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−282146(JP,A)
【文献】 特開2015−154100(JP,A)
【文献】 特開2003−309536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位局から送信されたデジタル放送信号を受信する受信部と、受信したデジタル放送信号を補償処理する信号処理部と、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する送信部とを備える中継装置であって、
受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生部と、
デジタル放送信号の受信の有無を検知し、デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生し、デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合には、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定部と、
前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を前記送信部に出力し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を前記送信部に出力し、前記中継停止フラグが発生している期間は、前記送信部へのデジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替部と、
受信したデジタル放送信号をフーリエ変換するFFT部と、
補償処理されたデジタル放送信号を逆フーリエ変換するIFFT部と、
受信したデジタル放送信号に基づいて、少なくとも前記疑似信号発生部、前記FFT部、および前記IFFT部の同期を確立する同期部と、を備え
前記同期部は、前記疑似放送信号が発生している間は、無入力の信号によって同期制御されるのを防ぐために、少なくとも前記FFT部および前記IFFT部へ出力する信号に保護を掛ける、
ことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
記出力切替部は、前記FFT部および前記IFFT部の処理によって発生する装置遅延時間内に前記デジタル放送信号を前記疑似放送信号に切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
記疑似放送信号を逆フーリエ変換する第2のIFFT部をさらに備えており、
前記出力切替部は、前記FFT部および前記IFFT部の処理によって発生する装置遅延時間内に、前記第2のIFFT部に切り替えることで前記デジタル放送信号を前記疑似放送信号に切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
デジタル放送信号は、パイロットシンボル、データキャリア、TMCCデータおよびACデータを含むOFDM信号であり、前記疑似放送信号は、受信が停止したデジタル放送信号の前記パイロットシンボル、前記データキャリア、前記TMCCデータおよび前記ACデータにそれぞれ停止直前のデータに基づいて生成された疑似パイロットシンボル、疑似ランダム信号、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記疑似ランダム信号は、前記TMCCデータに含まれた変調設定情報に基づいて生成される、
ことを特徴とする請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
上位局から送信されたデジタル放送信号を受信する受信部と、受信したデジタル放送信号を補償処理する信号処理部と、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する送信部とを備える中継装置であって、
受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生部と、
デジタル放送信号の受信の有無を検知し、デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生し、デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合には、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定部と、
前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を前記送信部に出力し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を前記送信部に出力し、前記中継停止フラグが発生している期間は、前記送信部へのデジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替部と、を備え、
デジタル放送信号は、パイロットシンボル、データキャリア、TMCCデータおよびACデータを含むOFDM信号であり、前記疑似放送信号は、受信が停止したデジタル放送信号の前記パイロットシンボル、前記データキャリア、前記TMCCデータおよび前記ACデータにそれぞれ停止直前のデータに基づいて生成された疑似パイロットシンボル、疑似ランダム信号、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含み、
前記信号処理部は、前記疑似放送信号を補償処理する際に、前記疑似TMCCデータの異常検出段数を、瞬断判定時間よりも時間がかかる2フレーム以上のOFDMフレームで行なう、
ことを特徴とする中継装置。
【請求項7】
上位局から送信されたデジタル放送信号を受信し、受信したデジタル放送信号を補償処理し、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する中継方法であって、
受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生ステップと、
デジタル放送信号の受信の有無を検知するステップと、
デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生するステップと、
デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合に、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定ステップと、
FFT部が、受信したデジタル放送信号をフーリエ変換するステップと、
前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を下位局に送信し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を下位局に送信し、前記中継停止フラグが発生している期間は、デジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替ステップと、
IFFT部が、補償処理されたデジタル放送信号を逆フーリエ変換するステップと、を備え
前記疑似放送信号が発生している間は、無入力の信号によって同期制御されるのを防ぐために、少なくとも前記FFT部および前記IFFT部へ出力する信号に保護を掛ける、
ことを特徴とする中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位局から送信されたデジタル放送信号を受信して補償処理を行い、下位局へ向けて送信する中継装置および中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送ネットワークは、放送局で生成されたデジタル放送信号を送信する親局と、親局から送信されたデジタル放送信号を受信装置(デジタルテレビなど)まで中継する複数の中継局とを備える。デジタル放送信号には、周波数利用効率の向上、多チャンネル化、高画質化、高音質化を図るため、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が用いられている。OFDM信号とは、一般に、互いに直交する多数のキャリアそれぞれをデジタルデータで変調し、それらの変調波を多重して得られる信号である。
【0003】
親局には、放送局からマイクロ波を使って送信されたデジタル放送信号を受信する受信装置と、受信したデジタル放送信号を大電力の放送波として中継局へ向けて送信する送信装置とが設置されている。また、中継局には、親局または上段の中継局(上位局)から送信されたデジタル放送信号を受信し、受信したデジタル放送信号を後段の中継局または受信装置(下位局)に向けて送信する中継装置が設置されている(例えば、特許文献1参照)。また、中継装置には、伝送中の劣化を補償するために、受信したデジタル放送信号に同期して波形等化処理などの補償処理を行う補償器を備えた信号処理部が設けられている。
【0004】
親局は冗長性を得るために、複数の受信装置および送信装置をそれぞれ備えている。例えば、親局で使用中の送信装置(1号機)をメンテナンスする場合には、デジタル放送信号の送信を1号機から2号機の送信装置に切り替える号機切り替えが行われる。親局で号機切り替えが行われると、デジタル放送信号の送信が一時的に瞬断(例えば、250ms程度)され、号機切り替えの完了後にデジタル放送信号の送信が再開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−330112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の中継装置では、上位局からのデジタル放送信号の送信が停止した場合に、地上デジタル放送が終了したものと判断して下位局へのデジタル放送信号の送信を停止するスケルチ制御を行っている。そのため、親機の号機切り替えによってデジタル放送信号が瞬断した場合にも、地上デジタル放送が終了したものと誤検知されてスケルチ制御が行われてしまうという問題があった。
【0007】
号機切り替え時の瞬断によってスケルチ制御が行われると、補償器によるデジタル放送信号に対する同期が外れてしまい、デジタル放送信号の送信が再開されても同期を再確立する処理に時間がかかり、すぐにはデジタル放送信号の中継が再開できない。一般的な中継装置では、同期を再確立してデジタル放送信号の送信を再開するまでに1〜3秒の時間がかかる。この同期の再確立処理は、複数の中継装置全てで必要になり、再確立処理にかかる時間は、複数の中継装置で累積されるので、最終段の中継装置では1分近くもデジタル放送信号の送信が停止してしまい、受信装置では停波状態となってしまう。
【0008】
上記問題は、スケルチの時間を号機切り替え時の瞬断に反応しないように延ばしたり、瞬断が発生しても同期が外れないように同期状態および同期処理に必要な制御値などの保持時間を延ばしたりすることで解消することができる。しかしながら、スケルチ時間を延長したり同期の保持時間を延長したりする場合には、全てのすべての中継局の中継装置で設定を変更しなければならず、作業に時間およびコストがかかってしまうので、導入が難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、親局の号機切り替えによりデジタル放送信号が瞬断された場合に、全ての中継局の中継装置で設定変更を行わなくても、同期外れによって停波状態となるのを防止することができる中継装置および中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上位局から送信されたデジタル放送信号を受信する受信部と、受信したデジタル放送信号を補償処理する信号処理部と、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する送信部とを備える中継装置であって、受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生部と、デジタル放送信号の受信の有無を検知し、デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生し、デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合には、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定部と、前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を前記送信部に出力し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を前記送信部に出力し、前記中継停止フラグが発生している期間は、前記送信部へのデジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替部と、受信したデジタル放送信号をフーリエ変換するFFT部と、補償処理されたデジタル放送信号を逆フーリエ変換するIFFT部と、受信したデジタル放送信号に基づいて、少なくとも前記疑似信号発生部、前記FFT部、および前記IFFT部の同期を確立する同期部と、を備え、前記同期部は、前記疑似放送信号が発生している間は、無入力の信号によって同期制御されるのを防ぐために、少なくとも前記FFT部および前記IFFT部へ出力する信号に保護を掛ける、ものである。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上位局からのデジタル放送信号の受信が停止した場合に、瞬断判定部によって疑似信号フラグを発生し、この疑似信号フラグの発生に応じて、出力切替部はデジタル放送信号の代わりに疑似放送信号を送信部に出力する。また、上位局からのデジタル放送信号の受信が再開された場合には、瞬断判定部は疑似信号フラグの発生を停止し、出力切替部は疑似放送信号の代わりにデジタル放送信号の出力を再開する。さらに、上位局からのデジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間に達した場合には、瞬断判定部は疑似信号フラグの代わりに中継停止フラグを発生し、出力切替部は瞬断では無くデジタル放送の停止状態と判断して、送信部へのデジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中継装置において、前記出力切替部は、前記FFT部および前記IFFT部の処理によって発生する装置遅延時間内にデジタル放送信号を疑似放送信号に切り替えるものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の中継装置において、前記疑似放送信号を逆フーリエ変換する第2のIFFT部をさらに備えており、前記出力切替部は、前記FFT部および前記IFFT部の処理によって発生する装置遅延時間内に、前記第2のIFFT部に切り替えることで前記デジタル放送信号を前記疑似放送信号に切り替えるものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の中継装置において、デジタル放送信号は、パイロットシンボル、データキャリア、TMCCデータおよびACデータを含むOFDM信号であり、前記疑似放送信号は、受信が停止したデジタル放送信号の前記パイロットシンボル、前記データキャリア、前記TMCCデータおよび前記ACデータにそれぞれ停止直前のデータに基づいて生成された疑似パイロットシンボル、疑似ランダム信号、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含むものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の中継装置において、前記疑似ランダム信号は、前記TMCCデータに含まれた変調設定情報に基づいて生成されるものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、上位局から送信されたデジタル放送信号を受信する受信部と、受信したデジタル放送信号を補償処理する信号処理部と、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する送信部とを備える中継装置であって受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生部と、デジタル放送信号の受信の有無を検知し、デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生し、デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合には、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定部と、前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を前記送信部に出力し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を前記送信部に出力し、前記中継停止フラグが発生している期間は、前記送信部へのデジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替部と、を備え、デジタル放送信号は、パイロットシンボル、データキャリア、TMCCデータおよびACデータを含むOFDM信号であり、前記疑似放送信号は、受信が停止したデジタル放送信号の前記パイロットシンボル、前記データキャリア、前記TMCCデータおよび前記ACデータにそれぞれ停止直前のデータに基づいて生成された疑似パイロットシンボル、疑似ランダム信号、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含み、前記信号処理部は、前記疑似放送信号を補償処理する際に、前記疑似TMCCデータの異常検出段数を瞬断判定時間よりも時間がかかる2フレーム以上のOFDMフレームで行なうものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、上位局から送信されたデジタル放送信号を受信し、受信したデジタル放送信号を補償処理し、補償処理したデジタル放送信号を下位局へ送信する中継方法であって、受信したデジタル放送信号に基づく疑似放送信号を発生する疑似信号発生ステップと、デジタル放送信号の受信の有無を検知するステップと、デジタル放送信号の受信が停止した場合に疑似信号フラグを発生するステップと、デジタル放送信号の受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合に、前記疑似信号フラグを停止して中継停止フラグを発生する瞬断判定ステップと、FFT部が、受信したデジタル放送信号をフーリエ変換するステップと、前記疑似信号フラグが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号を下位局に送信し、前記疑似信号フラグが発生している期間は、デジタル放送信号に代えて疑似放送信号を下位局に送信し、前記中継停止フラグが発生している期間は、デジタル放送信号および疑似放送信号の出力を停止する出力切替ステップと、IFFT部が、補償処理されたデジタル放送信号を逆フーリエ変換するステップと、を備え、前記疑似放送信号が発生している間は、無入力の信号によって同期制御されるのを防ぐために、少なくとも前記FFT部および前記IFFT部へ出力する信号に保護を掛ける、ものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、7に記載の発明によれば、上位局からのデジタル放送信号の受信が停止した場合に、デジタル放送信号の代わりに疑似放送信号を送信部に出力して後段の中継装置に送信するので、信号処理部での同期外れを防止することができる。これにより、上位局からのデジタル放送信号の受信が再開された場合に、時間がかかる信号処理部の同期の再確立処理を行なう必要がなくなるので、地上デジタル放送において停波状態が発生するのを防止することができる。また、上位局からのデジタル放送信号の受信停止時間が瞬断判定時間に達した場合には、瞬断ではなく、地上デジタル放送が停止したものと判断してスケルチ制御を行なうことができる。さらに、後段の中継装置でスケルチ時間を延長したり、同期の保持時間を延長したりするなどの設定変更が不要なので、容易に導入することができる。
【0019】
請求項2、3に記載の発明によれば、デジタル放送信号と疑似放送信号との切り替えを、FFT部およびIFFT部の処理によって発生する装置遅延時間内に行なうので、デジタル放送信号と疑似放送信号との間に途切れを生じさせることなく信号の切り替えを行なうことができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、疑似放送信号には、OFDM信号であるデジタル放送信号に対して、停止直前のデータに基づいて生成された疑似パイロットシンボル、疑似ランダム信号、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含むようにしたので、デジタル放送信号の代わりに信号処理部における同期の確立を適切に維持することができる。すなわち、疑似放送信号は、切り替えられる直前までに受信していたデジタル放送信号に含まれるパイロットシンボル及びTMCCデータと連続性がある、疑似パイロットシンボル及び疑似TMCCデータを含むので、連続性があり正しい疑似放送信号の出力を可能にする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、疑似ランダム信号は、TMCCデータに含まれた変調設定情報に基づいて生成するようにしたので、後段の中継装置の信号処理部での処理が不連続になるのを防止することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、信号処理部は、疑似信号発生部で生成された疑似放送信号を補償処理する際に、疑似TMCCデータの異常検出段数を、瞬断判定時間よりも時間が長くなる2フレーム以上のOFDMフレームを利用して行なうようにしたので、瞬断判定時間内における疑似TMCCデータの復調エラーを防止し、同期外れが発生するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施の形態に係る地上デジタル放送ネットワークを示す概略図である。
図2図1で示す中継局に設置された中継装置の概略的な構成を示すブロック図である。
図3図2の信号処理部6の構成を変更して出力切替部63a及びIFFT部64a,64bにした構成を示すブロック図である。
図4】デジタル放送信号を構成するOFDMフレームの構成例である。
図5】疑似放送信号を構成するOFDMフレームの構成例である。
図6】デジタル放送信号が瞬断した場合にデジタル放送信号から疑似放送信号に切り替えるタイミングを示すタイミングチャートである。
図7】デジタル放送信号が瞬断した場合にデジタル放送信号から疑似放送信号に切り替える手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
図1は、地上デジタル放送ネットワーク1の構成を示す概略図である。地上デジタル放送ネットワーク1は、放送局で生成されたデジタル放送信号DSを送信する親局2と、親局2から送信されたデジタル放送信号DSを受信装置(デジタルテレビなど)3まで中継する複数の中継局A〜Bなどを備える。
【0026】
親局2には、放送局からマイクロ波を使って送信されたデジタル放送信号DSを受信する受信装置(図示せず)と、受信したデジタル放送信号DSを大電力の放送波として中継局Aへ向けて送信する送信装置(図示せず)とが設置されている。また、中継局A〜Bには、親局2または上段の中継局から送信されたデジタル放送信号DSを受信して補償し、補償したデジタル放送信号DSを後段の中継局または受信装置3へ向けて送信する中継装置4(図3参照)が設置されている。デジタル放送信号DSには、周波数利用効率の向上、多チャンネル化、高画質化、高音質化を図るため、OFDM信号が用いられている。なお、図1では、2つの中継局A〜Bしか図示していないが、実際には親局2から受信装置3までの中継距離に応じてさらに多数の中継局が設けられている。
【0027】
図2は、中継局A〜Bに設置されている中継装置4の概略的な構成を示すブロック図である。この中継装置4は、親局2で送信装置の号機切り替えによるデジタル放送信号DSの瞬断が発生した場合に、瞬断されたデジタル放送信号DSの代わりに、疑似放送信号PSを下位局へ向けて送信し、同期外れによって停波状態となるのを防止する機能を備えている。
【0028】
中継装置4は、親局2または上段の中継局からデジタル放送信号DSを受信する受信部5と、補償処理したデジタル放送信号DSあるいは疑似放送信号PSを出力する信号処理部6と、補償処理したデジタル放送信号DSあるいは疑似放送信号PSを後段の中継局または受信装置3へ向けて送信する送信部7とを備える。
【0029】
信号処理部6は、FFT部61、補償器62、出力切替部63、IFFT部64、瞬断判定部65、疑似信号発生部66、および同期部67を備える。FFT部61は、受信したデジタル放送信号DSをフーリエ変換してOFDMフレームを生成する。補償器62は、OFDMフレームに波形等化処理などの補償処理を行って伝送中に劣化したデジタル放送信号を補償する。出力切替部63は、瞬断判定部65からの入力に応じて、送信部7に出力する信号を補償後のデジタル放送信号と疑似放送信号との間で切り替える。IFFT部64は、補償処理されたOFDMフレームを逆フーリエ変換して再びOFDM信号からなるデジタル放送信号DSを生成する。
【0030】
FFT部61およびIFFT部64は、OFDMフレームを1シンボル毎に処理する。そのため、中継装置4では、デジタル放送信号DSを上位局から受信して下位局に送信するまでに、少なくとも2シンボル分の装置遅延が発生する。OFDM信号のモード3では、1シンボルの処理におよそ1msの時間が必要なので、2シンボル分の装置遅延は、およそ2msとなる。
【0031】
瞬断判定部65は、デジタル放送信号DSの受信の有無を検知し、デジタル放送信号DSの受信が停止した場合に疑似信号フラグPFを発生し、デジタル放送信号DSの受信停止時間が予め設定した瞬断判定時間以上となった場合には、疑似信号フラグPFを停止して中継停止フラグSFを発生する。瞬断判定時間は、親局2による送信装置の号機切り替えにかかる時間が例えば250msである場合、300ms程度が好ましい。
【0032】
上述した出力切替部63は、疑似信号フラグPFが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号DSを送信部7に出力する。また、出力切替部63は、疑似信号フラグPFが発生している期間は、デジタル放送信号DSに代えて、疑似信号発生部66で生成された疑似放送信号PSを送信部7に出力する。さらに、出力切替部63は、中継停止フラグSFが発生している期間は、地上デジタル放送が停止しているものと判断して、送信部7へのデジタル放送信号DSおよび疑似放送信号PSの出力を停止する。すなわち、出力切替部63は、スケルチ制御を行なう。
【0033】
疑似信号発生部66は、受信したデジタル放送信号DSに基づいて、疑似放送信号PSを生成し、出力切替部63に入力する。なお、疑似放送信号PSの生成は、デジタル放送信号DSの中継時に常時行なっていてもよいし、疑似信号フラグPFの発生に応じて生成を開始してもよい。
【0034】
同期部67は、受信したデジタル放送信号DSに基づいて、FFT部61、補償器62、IFFT部64および疑似信号発生部66などの同期を確立する。また、同期部67は、瞬断判定部65がデジタル放送信号DSの瞬断を検知し、疑似信号発生部66から疑似放送信号PSが発生している間は、無入力の信号によって同期制御されるのを防ぐために(同期が動かないようにするため)、FFT部61、補償器62およびIFFT部64へ出力する信号に保護を掛けている。
【0035】
なお、この信号処理部6は、図3に示すように、補償処理されたデジタル放送信号DSをIFFT部(第1のIFFT部)64aにて逆フーリエ変換してから出力切替部63aにて切り替えを行っても良い。この場合、疑似信号発生部66が生成した疑似放送信号PSの逆フーリエ変換を行うIFFT部(第2のIFFT部)64bを設ける必要がある。
【0036】
図3は、モード3の場合の1つのOFDMフレーム8を示している。この図では、キャリアを周波数の昇順に左から右へ並べ、シンボルを時間順に上から下へ並べて示している。OFDMフレーム8には、204個のシンボルが含まれる。1つのシンボルには、OFDMのすべてのキャリアの本数分の情報が含まれる。シンボルとキャリアとが交差する各セルは、地上デジタル放送の映像信号および音声信号を構成するデータが格納されたデータキャリアDCである。
【0037】
OFDMフレーム8には、信号の等化に用いられる基準値を示すパイロットシンボルであるSP(Scattered Pilot)シンボルが分散して配置されている。SPシンボルは、時間順には、3本に1本のキャリアによってそれぞれ4シンボル期間に1回伝送され、また、周波数順には、全てのシンボル期間において、12本に1本のキャリアによって伝送される。
【0038】
OFDMフレーム8では、所定のキャリアを用いてTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)データが伝送される。TMCCデータは、フレームの同期タイミングを示す同期シンボルと、セグメント形式識別シンボルと、TMCC情報シンボルを含んでいる。したがって、TMCC信号により、セグメントの種類、変調方式などが識別できる。また、OFDMフレーム8では、所定のキャリアを用いて、付加情報などを送るためのAC(Auxiliary Channel)データが伝送される。
【0039】
図4は、疑似放送信号PSを構成する疑似OFDMフレーム9を示す。疑似OFDMフレーム9は、OFDMフレーム8のデータキャリアDC、SPシンボル、TMCCデータおよびACデータに対応する、疑似ランダム信号PN、疑似SPシンボルPSP、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを備える。
【0040】
疑似ランダム信号PNは、データキャリアDCの代わりに生成されたランダムなデータである。疑似ランダム信号PNは、後段の中継装置の補償器での処理が不連続にならないように、受信していたデジタル放送信号のTMCCデータから取得したセグメントの種類、変調方式で変調されている。
【0041】
疑似SPシンボルPSPは、後段の補償器で伝送路推定処理を行なうために、デジタル放送信号DSのSPシンボルと同じ位置に配置されている。すなわち、疑似SPシンボルPSPは、受信していたデジタル放送信号のSPシンボルに基づいて、同じ配置で生成される。
【0042】
疑似TMCCデータは、デジタル放送信号DSのTMCCデータと略同じデータ内容である。なお、疑似TMCCデータは、補償器62で復調エラーが生じるため、補償器62での異常検出段数を2フレーム以上のOFDMフレームとしている。これにより、疑似TMCCデータの異常検出に係る時間は408ms以上になり、瞬断判定時間よりも長くなるので、瞬断判定時間内における同期外れを防止することができる。
【0043】
疑似ACデータは、意味の無いデータで構成されているが、後段の補償器62による誤検知防止するため、BPSK変調で、データキャリアよりも4/3高い信号レベルとされている。
【0044】
図5は、地上デジタル放送ネットワーク1の親局2でデジタル放送信号DSの瞬断が発生した場合を示すタイミングチャートである。出力切替部63は、疑似信号フラグPFが発生していない期間は、補償処理されたデジタル放送信号DSを送信部7に出力する。したがって、地上デジタル放送ネットワーク1では、デジタル放送信号DSが中継される。
【0045】
親局2で送信装置の号機切り替えが行なわれてデジタル放送信号DSの瞬断が発生すると、この瞬断は瞬断判定部65によって検知される。瞬断判定部65は、デジタル放送信号DSの瞬断を検知すると疑似信号フラグPFを発生し、出力切替部63に入力する。出力切替部63は、疑似信号フラグPFが発生している期間は、デジタル放送信号DSに代えて、疑似信号発生部66で生成された疑似放送信号PSを送信部7に出力する。このデジタル放送信号DSから疑似放送信号PSへの切り替えは、FFT部61およびIFFT部64による装置遅延の間に行なわれるので、補償器62の同期が外れないように途切れることなく放送信号を中継することができる。
【0046】
親局2での号機切り替えが終了して、デジタル放送信号DSの送信が再開されると、この送信再開は、瞬断判定部65によって検知され、疑似信号フラグPFが停止される。出力切替部63は、疑似信号フラグPFが停止すると、FFT部61およびIFFT部64による装置遅延の間に出力切り替えを行い、補償処理されたデジタル放送信号DSを送信部7に出力する。これにより、補償器62の同期が外れないように途切れることなく放送信号を中継することができる。
【0047】
また、瞬断判定部65は、瞬断判定時間内にデジタル放送信号DSの送信が再開されない場合には、中継停止フラグSFを発生して出力切替部63に入力する。出力切替部63は、中継停止フラグSFが発生している期間は、地上デジタル放送が停止しているものと判断してスケルチ制御を行なう。
【0048】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。地上デジタル放送ネットワーク1は、図6のフローチャートで示すように、親局2と、中継局A〜Bとを用いてデジタル放送信号DSを受信装置3まで中継している(ステップS1)。親局2で送信装置の号機切り替えが行なわれてデジタル放送信号DSが瞬断すると(ステップS2でYES)、瞬断判定部65は、疑似信号フラグPFを発生し(ステップS3)、出力切替部63は、疑似信号フラグPFが発生している期間は、デジタル放送信号DSに代えて、疑似信号発生部66で生成された疑似放送信号PSを送信部7に出力する(ステップS4)。疑似放送信号PSは、親局2からデジタル放送信号DSの送信が再開されるまで継続される(ステップS5、S6)。
【0049】
親局2での号機切り替えが終了して、デジタル放送信号DSの送信が再開されると(ステップS6でYES)、この送信再開は、瞬断判定部65によって検知され、疑似信号フラグPFが停止される(ステップS7)。出力切替部63は、疑似信号フラグPFが停止すると、FFT部61およびIFFT部64による装置遅延の間に出力切り替えを行い、補償処理されたデジタル放送信号DSを送信部7に出力する(ステップS8)。これにより、補償器62の同期が外れないように途切れることなく放送信号を中継することができる。
【0050】
また、瞬断判定部65は、瞬断判定時間内にデジタル放送信号DSの送信が再開されない場合、すなわち、受信停止時間が瞬断判定時間に達すると(ステップS5でYES)、疑似信号フラグPFを停止して中継停止フラグSFを発生し(ステップS9)、出力切替部63に入力する。出力切替部63は、中継停止フラグSFが発生している期間は、地上デジタル放送が停止しているものと判断し、送信部7へのデジタル放送信号DSおよび疑似放送信号PSの出力を停止するスケルチ制御を行なう(ステップS10)。
【0051】
以上で説明した第1の実施形態によれば、上位局からのデジタル放送信号DSの受信が停止した場合に、デジタル放送信号DSの代わりに疑似放送信号PSを送信部7に出力して後段の中継装置4に送信するので、信号処理部6での同期外れを防止することができる。これにより、上位局からのデジタル放送信号DSの受信が再開された場合に、時間がかかる信号処理部6での同期の再確立処理を行なう必要がなくなるので、地上デジタル放送において停波状態が発生するのを防止することができる。また、上位局からのデジタル放送信号DSの受信停止時間が瞬断判定時間に達した場合には、瞬断ではなく、地上デジタル放送が停止したものと判断してスケルチ制御を行なうことができる。さらに、上段の中継局Aから疑似放送信号PSを出力するだけで停波を防止することができ、後段の中継局Bでスケルチ時間を延長したり、同期の保持時間を延長したりする必要がないので、運用中のデジタル放送ネットワークに対して容易に導入することができる。
【0052】
また、デジタル放送信号DSと疑似放送信号PSとの切り替えを、FFT部61およびIFFT部64の処理によって発生する装置遅延時間内に行なうので、デジタル放送信号DSと疑似放送信号PSとの間に途切れを生じさせることなく信号の切り替えを行なうことができる。
【0053】
さらに、疑似放送信号PSには、OFDM信号であるデジタル放送信号DSに対して、停止直前のデータに基づいて生成された疑似SPシンボルPSP、疑似ランダム信号PN、疑似TMCCデータおよび疑似ACデータを含むようにしたので、デジタル放送信号DSの代わりに信号処理部6における同期の確立を適切に維持することができる。これは、疑似SPシンボルPSP及び疑似TMCCデータが、デジタル放送信号DSに含まれるパイロットシンボル及びTMCCデータと連続性があることによる。
【0054】
また、疑似ランダム信号PNは、TMCCデータに含まれていた変調設定情報に基づいて生成するようにしたので、後段の中継装置4の信号処理部6での処理が不連続になるのを防止することができる。
【0055】
さらに、疑似ACデータは、デジタル放送信号DSのACデータと同じ変調が施され、かつデータキャリアDCよりも高い信号レベルを有するものとすることにより、ACデータとして検知されるようにしたので、後段の中継装置4の信号処理部6における誤検知を防止することができる。
【0056】
また、信号処理部6は、疑似信号発生部66で生成された疑似放送信号PSを補償処理する際に、疑似TMCCデータの異常検出段数を、瞬断判定時間よりも時間が長くなる2フレーム以上のOFDMフレームを利用して行なうようにしたので、瞬断判定時間内における疑似TMCCデータの復調エラーを防止し、同期外れが発生するのを防ぐことができる。
【0057】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、FFT部61およびIFFT部64の処理によって発生する装置遅延時間内にデジタル放送信号DSと疑似放送信号PSとの切り替えを行なうようにしたが、中継装置によっては、装置遅延が発生しない場合がある。このような装置遅延が発生しない中継装置であっても、同期外れが発生しないような短時間にデジタル放送信号DSと疑似放送信号PSとを切り替えれば、同期の再確立処理の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 地上デジタル放送ネットワーク
2 親局
3 受信装置
4 中継装置
5 受信部
6 信号処理部
7 送信部
61 FFT部
62 補償器
63,63a 出力切替部
64 IFFT部
64a IFFT部(第1のIFFT部)
64b IFFT部(第2のIFFT部)
65 瞬断判定部
66 疑似信号発生部
67 同期部
A、B 中継局
DS デジタル放送信号
PS 疑似放送信号
PF 疑似信号フラグ
SF 中継停止フラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7