(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873539
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/04 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
H01Q9/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-5228(P2017-5228)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-117182(P2018-117182A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 庸平
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 徹
【審査官】
鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/023778(WO,A1)
【文献】
特開2011−030196(JP,A)
【文献】
特開2012−169827(JP,A)
【文献】
特開2015−122557(JP,A)
【文献】
特開2008−288915(JP,A)
【文献】
米国特許第05673054(US,A)
【文献】
特開2015−035644(JP,A)
【文献】
特開2004−260343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の無線信号を介して通信を行う無線通信装置に内蔵され、略長方形の板状の絶縁部材により形成されたグランド板に略垂直に取り付けられて前記無線信号を送受信するアンテナ装置であって、
細板状の金属部材によりコの字型で両端の間隔が前記無線信号の波長の略10分の1の長さに形成され、一端が前記グランド板に接続され、他端が電力の供給を受ける給電部を介して前記グランド板に接続され、
前記グランド板に接続されている前記一端と前記他端とを交換可能である、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記グランド板に取り付けられている縦方向の位置は、前記グランド板を縦方向に配設したときの上部であり、
前記グランド板に取り付けられている横方向の位置は、略中央の位置である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記給電部には、インダクタ及びコンデンサにより構成されているマッチング回路が配設されている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンテナ装置が前記グランド板に取り付けられて内蔵されている、
ことを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏波信号を送受信することが可能なアンテナ装置及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)では、衛星から送信される信号として円偏波信号を使用している。そのため、GPSで使用されているGPS信号を受信して測位情報として使用するような無線通信装置では、円偏波信号を送受信する必要がある。しかしながら、例えば携帯電話では、直線偏波信号を使用している。そこで、携帯電話でGPS信号を受信することを可能にするため、携帯電話に円偏波信号を受信可能なチップアンテナを配設したチップアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、
図6(a)に示すようなアンテナ装置100は、無線通信装置に内蔵されて無線信号(例えば、GPS信号)を送受信するための装置であり、細板状の金属部材により逆L字型に形成されている。このアンテナ装置100は、主として脚部101と、脚部101から略直角に折り曲げられて延設されている延設部102と、脚部101の底側に配設されて電力を供給する給電部103とにより構成され、略長方形に形成されたグランド板110の上辺側に取り付けられている。また、アンテナ装置100が取り付けられたグランド板110は、無線通信装置に内蔵されている。このアンテナ装置100の等価回路を
図6(b)に示す。このように、この等価回路は、脚部101が給電部103を介して1点のみがグランドGに接地されている。
【0004】
また、例えば、
図7(a)に示すようなアンテナ装置200は、アンテナ装置100と同様に無線通信装置に内蔵されて無線信号を送受信するための装置であり、細板状の金属部材により逆F字型に形成されている。このアンテナ装置200は、主として脚部201,202と、脚部201から略直角に折り曲げられて延設され、脚部202に接続されてさらに延設されている延設部203と、脚部201の底側に配設されて電力を供給する給電部204とにより構成され、略長方形に形成されたグランド板210の上辺側に取り付けられている。また、アンテナ装置200が取り付けられたグランド板210は、グランド板110と同様に無線通信装置に内蔵されている。このアンテナ装置200の等価回路を
図7(b)に示す。このように、この等価回路は、脚部201が給電部204を介してグランドGに接地されて、さらに脚部202が直接グランドGに接地され、2点でグランドGに接地されている。また、脚部201と脚部202との距離は、d2だけ離隔するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−011336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アンテナ装置100,200のような構成の場合、放射パターンにヌルが生じ、衛星通信が不安定になることがあった。例えば、
図6(a)に示すようなアンテナ装置100の右旋回円偏波利得の解析結果を
図8に示す。
図8は、
図6(a)に示すようなアンテナ装置100がX−Z面及びY−Z面に生成する放射パターンであり、X−Z面は無線通信装置の正面側を左側に向けた状態であり、Y−Z面は無線通信装置の正面側を正面に向けた状態である。
図8に示す波形C3がX−Z面に生成する放射パターンであり、波形C4がY−Z面に生成する放射パターンである。波形C3及び波形C4に示すように、天頂方向にヌルが生じていることが分かる。そのため、衛星通信が不安定になる、という問題があった。
【0007】
そこで本発明は、従来のアンテナ装置の構成を大幅に変更することなく、円偏波信号を送受信することが可能なアンテナ装置及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定の周波数の無線信号を介して通信を行う無線通信装置に内蔵され、略長方形の板状の絶縁部材により形成されたグランド板に略垂直に取り付けられて前記無線信号を送受信するアンテナ装置であって、細板状の金属部材によりコの字型で両端の間隔が前記無線信号の波長の略10分の1の長さに形成され、一端が前記グランド板に接続され、他端が電力の供給を受ける給電部を介して前記グランド板に接続さ
れ、前記グランド板に接続されている前記一端と前記他端とを交換可能である、ことを特徴とする。
【0009】
この発明では、アンテナ装置は、細板状の金属部材によりコの字型で両端の間隔が無線信号の波長の略10分の1の長さに形成され、一端がグランド板に接続され、他端が電力の供給を受ける給電部を介してグランド板に接続されている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記グランド板に取り付けられている縦方向の位置は、前記グランド板を縦方向に配設したときの上部であり、前記グランド板に取り付けられている横方向の位置は、略中央の位置である、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、前記給電部には、インダクタ及びコンデンサにより構成されているマッチング回路が配設されている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項
4に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のアンテナ装置が前記グランド板に取り付けられて内蔵されている、ことを特徴とする無線通信装置である。
【0014】
本願発明者は、上述のアンテナ装置における右旋回円偏波利得の解析結果によって、X−Z面及びY−Z面に生成する放射パターンのヌルが消えていることから、円偏波信号を送受信することが可能であることを確認した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び
4に記載の発明によれば、アンテナ装置が、細板状の金属部材によりコの字型で両端の間隔が無線信号の波長の略10分の1の長さに形成され、一端がグランド板に接続され、他端が電力の供給を受ける給電部を介してグランド板に接続されているので、アンテナ装置とグランド板とが一体化し、アンテナ装置に流れる電流とグランド板に流れる電流分布との相乗効果により、円偏波信号を送受信することが可能になる。また、アンテナ装置がグランド板に対して略垂直に取り付けられるので、余計なスペースを使用することがない。さらに、アンテナ装置が金属部材により形成されており、誘電体を使用しないので、コストの低減化が図れる。
請求項1及び4に記載の発明によれば、また、グランド板に接続されている一端、すなわちグランド板に直接接続されている箇所と、他端、すなわち給電部を介してグランド板に接続されている箇所とを変更可能であるので、右旋回円偏波と左旋回円偏波とを切り替えることが可能になる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、アンテナ装置がグランド板に取り付けられている縦方向の位置は、前記グランド板を縦方向に配設したときの上部であり、横方向の位置は略中央の位置であるので、無線通信装置の天頂方向に対して放射が大きくなる。これにより、円偏波信号を送受信することが可能になる。また、等方向に近い放射パターンであるため、無線通信装置が倒れている状態でも通信が可能になる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、給電部にインダクタ及びコンデンサにより構成されているマッチング回路が配設されているので、電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)を最良点に調整することが可能になる。また、無線信号の周波数の変更にも対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態に係るアンテナ装置1及び無線通信装置20の概略を示す図であり、無線通信装置20に内蔵されているアンテナ装置1を示す斜視図(a)、及び図(a)のアンテナ装置1及びグランド板24の平面図、正面図、及び右側面図(b)である。
【
図2】
図1のアンテナ装置1の等価回路を示す回路構成図である。
【
図3】
図1の給電部4に配設されたマッチング回路10の等価回路を示す回路構成図である。
【
図4】
図1のアンテナ装置1がX−Z面に生成する放射パターンを示す円座標グラフである。
【
図5】
図1のアンテナ装置1がY−Z面に生成する放射パターンを示す円座標グラフである。
【
図6】従来例のアンテナ装置100の概略を示す図であり、グランド板110に取り付けられているアンテナ装置100を示す斜視図(a)、及び図(a)のアンテナ装置100の等価回路を示す回路構成図(b)である。
【
図7】従来例のアンテナ装置200の概略を示す図であり、グランド板210に取り付けられているアンテナ装置200を示す斜視図(a)、及び図(a)のアンテナ装置200の等価回路を示す回路構成図(b)である。
【
図8】
図6(a)のアンテナ装置100がX−Z面及びY−Z面に生成する放射パターンを示す円座標グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
この発明の実施の形態に係るアンテナ装置1は、
図1(a)に破線で示すような無線通信装置20に内蔵されて無線信号(例えば、GPS信号)を送受信するための装置である。無線通信装置20は、無線信号を介して通信を行う装置であり、例えば、各種番号の入力等を行うための操作部21と、操作部21による入力情報や無線通信装置20の動作状態を表示する表示部22と、音声出力を行うための音声出力部23と、接続されている各種素子の等電位面であるグランド板24とにより構成されている。グランド板24は、縦長の略長方形の板状の絶縁部材により形成され、
図1(a)に示すように無線通信装置20が縦方向に載置された時に、略垂直に直立するように内蔵されている。
【0022】
アンテナ装置1は、
図1(b)に示すように、細板状の金属部材によりコの字型に形成され、主として脚部2,3と、延設部4と、給電部5とにより構成され、グランド板24に対して略垂直に取り付けられている。脚部2,3は、コの字型に形成された細板状の金属部材の両端部であり、脚部2と脚部3とは、略平行に形成されている。この脚部2と脚部3との距離は、
図1(b)に示すようにd1であり、無線信号の波長λの略10分の1の長さであり、
図7(b)に示すd2と比較して十分長い距離になっている。また、脚部2及び脚部3の長さは、例えば、数mm程度に形成されている。延設部4は、脚部2から略直角に折り曲げられて延設され、脚部3に接続されている部材である。給電部5は、脚部2の底側に配設されて電力を供給する箇所である。
【0023】
このアンテナ装置1がグランド板24に取り付けられている位置は、
図1(b)に示すように、無線通信装置20が縦方向に載置された時、すなわち、グランド板24が略垂直に直立している状態の時の上部であり、横方向の略中央である。具体的には、グランド板24の上辺からの距離hは、グランド板24の上辺から下辺までの長さHに対して、
0<h≦H/2
の範囲になるように設定されており、できる限り上辺の近傍に取り付けられていることが好ましい。
【0024】
このアンテナ装置1の等価回路を
図2に示す。この等価回路は、脚部2が給電部5を介してグランドGに接地されて、さらに脚部3が直接グランドGに接地され、2点でグランドGに接地されている。このときの脚部2と脚部3との距離は上述のようにd1(≒λ/10)であり、
図7(b)に示す脚部201と脚部202との距離よりも長くなっている。これにより、天頂方向に対して放射が大きくなる効果がある。なお、グランド板24における脚部2及び脚部3の接続位置は、交換可能になっている。
【0025】
また、このアンテナ装置1の延設部4には、
図3に示すようなマッチング回路10が配設されている。このマッチング回路10の等価回路は、送受信信号11と、アンテナ装置12との間に、インダクタL及びコンデンサCが配設されて構成されている。このマッチング回路10は、アンテナ装置12の長さが無線信号の波長λに比べて短いので給電するために設けられているが、電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)を最良点に調整することが可能になり、また、無線信号の周波数に変更があった場合にも対応可能にするものである。
【0026】
次に、このようなアンテナ装置1及び無線通信装置20の作用等について説明する。
【0027】
本願発明者は、アンテナ装置1及び無線通信装置20における右旋回円偏波利得の解析結果によって、X−Z面及びY−Z面に生成する放射パターンのヌルが消えていることを確認し、このことから、円偏波信号を送受信することが可能であることを確認した。この結果について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、このアンテナ装置1は、例として右旋回円偏波を放射する特性を有しているものとして説明する。
【0028】
図1(a)、(b)に示すようなアンテナ装置1の右旋回円偏波利得の解析結果を、
図4及び
図5に示す。
図4は、
図1(a)、(b)に示すアンテナ装置1がX−Z面に生成する放射パターンであり、X−Z面は無線通信装置の正面側を左側に向けた状態である。
図5は、
図1(a)、(b)に示すアンテナ装置1がY−Z面に生成する放射パターンであり、Y−Z面は無線通信装置の正面側を正面に向けた状態である。なお、このとき、
図1に示すグランド板24の寸法は無線信号の波長λ換算で、縦の長さHは0.63λ、横幅は0.26λである。
【0029】
図4に示す、アンテナ装置1がX−Z面に生成する放射パターンの波形C1と、
図8に示す波形C3とを比較すると、波形C3に生じていたヌルが、波形C1では発生していないことが分かる。また、
図5に示す、アンテナ装置1がY−Z面に生成する放射パターンの波形C2と、
図8に示す波形C4とを比較すると、同様に、波形C4に生じていたヌルが、波形C2では発生していないことが分かる。これは、アンテナ装置1がグランド板24に取り付けられることで一体化し、アンテナ装置1に流れる電流と、グランド板24に流れる電流との相乗効果により、略等方向に放射するのに寄与するからである。このように、アンテナ装置1がX−Z面及びY−Z面に生成する放射パターンのヌルが消えているため、円偏波信号を送受信することが可能である。
【0030】
以上のように、このアンテナ装置1及び無線通信装置20によれば、アンテナ装置1が細板状の金属部材によりコの字型に形成され、脚部2と脚部3との距離がd1であり、無線信号の波長λの略10分の1の長さであり、脚部2が給電部5を介してグランドGに接地され、脚部3が直接グランドGに接地されているため、アンテナ装置1がグランド板24に取り付けられることで一体化し、アンテナ装置1に流れる電流と、グランド板24に流れる電流との相乗効果により、円偏波信号を送受信することが可能になる。また、アンテナ装置1がグランド板24に対して略垂直に取り付けられるので、余計なスペースを使用することがなくなる。さらに、市販のチップアンテナは誘電体を使用するため高価なものとなっているが、アンテナ装置1が金属部材により形成されており、誘電体を使用しないので、コストの低減化が図れる。
【0031】
また、アンテナ装置1がグランド板24に取り付けられている位置は、無線通信装置20が縦方向に載置された時の上辺から距離h(0<h≦L/2)だけ離隔した箇所であり、横方向の略中央であるため、無線通信装置20の天頂方向に対して放射が大きくなる。これにより、円偏波信号を送受信することが可能になる。また、等方向に近い放射パターンであるため、無線通信装置20が倒れている状態でも通信が可能になる。
【0032】
さらに、グランド板24における脚部2及び脚部3の接続位置は、交換可能になっているため、アンテナ装置1の特性を、右旋回円偏波と左旋回円偏波との間で切り替えることが可能になる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、アンテナ装置1が縦長の略長方形に形成されているグランド板24に取り付けられているが、このグランド板24は、横長の略長方形に形成しても、略正方形に形成しても良い。この形状は、無線通信装置20に依存されることになるが、上記の実施の形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0034】
1 アンテナ装置
2,3 脚部
4 延設部
5 給電部
20 無線通信装置
21 操作部
22 表示部
23 音声出力部
24 グランド板
C コンデンサ
L インダクタ
100 アンテナ装置
101 脚部
102 延設部
103 給電部
110 グランド板
200 アンテナ装置
201,202 脚部
203 延設部
204 給電部
210 グランド板