特許第6873548号(P6873548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6873548-鋳物砂の製造方法 図000004
  • 特許6873548-鋳物砂の製造方法 図000005
  • 特許6873548-鋳物砂の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873548
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】鋳物砂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20210510BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20210510BHJP
   C01B 33/26 20060101ALN20210510BHJP
   B22C 5/06 20060101ALN20210510BHJP
   B22C 5/04 20060101ALN20210510BHJP
   B22C 5/10 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B22C1/00 B
   B22C1/22 C
   !C01B33/26
   !B22C5/06
   !B22C5/04 D
   !B22C5/10
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-62230(P2017-62230)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-164914(P2018-164914A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】高田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 勉司
(72)【発明者】
【氏名】山川 晟男
(72)【発明者】
【氏名】河上 高庸
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−185736(JP,A)
【文献】 特開2016−150368(JP,A)
【文献】 特開平06−170485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工砂から磁力により磁性体を分離する磁選工程と、
前記磁選工程後において、前記人工砂に硬化剤を混合する硬化剤混合工程と、
前記磁選工程と前記硬化剤混合工程との間において、前記人工砂にフラン樹脂組成物を混合する樹脂組成物混合工程と、
を含むことを特徴とする、鋳物砂の製造方法。
【請求項2】
前記磁選工程前において、前記人工砂から微粉を除去する微粉除去工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の鋳物砂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造により鋳物を作製するには、まず、鋳型を造形した後、その鋳型に溶解した材料(例えば、金属など)を流し込み、所要の形状に形成する。そのような鋳型に用いられる骨材として、人工砂が知られている。
【0003】
人工砂として、例えば、アルミナ40〜90重量%、シリカ60〜10重量%の合成ムライトを主とする球状物からなる鋳型用砂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−251434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の鋳型用砂と硬化剤とを混合した後に、バインダを添加して砂型(鋳型)を製造すると、砂型の強度を十分に確保できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、砂型の強度の向上を図ることができる鋳物砂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、人工砂から磁力により磁性体を分離する磁選工程と、前記磁選工程後において、前記人工砂に硬化剤を混合する硬化剤混合工程と、を含む、鋳物砂の製造方法を含んでいる。
【0008】
しかるに、人工砂に含まれる磁性体が硬化剤と接触すると、硬化剤の活性能が低下してしまう場合がある。
【0009】
一方、上記の方法によれば、硬化剤が混合される前に、人工砂から磁性体が分離される。そのため、人工砂に硬化剤が混合されたときに、磁性体と硬化剤とが接触することを抑制できる。その結果、鋳物砂にバインダを供給して砂型を製造すると、砂型の強度の向上を図ることができる。
【0010】
本発明[2]は、前記磁選工程前において、前記人工砂から微粉を除去する微粉除去工程をさらに含む、上記[1]に記載の鋳物砂の製造方法を含んでいる。
【0011】
このような方法によれば、人工砂から磁性体が分離される前に、人工砂から微粉が除去される。その後、微粉が除去された人工砂から磁性体を分離すると、磁性体を効率よく除去できる。その結果、砂型の経時的な強度の低下を抑制することができる。
【0012】
本発明[3]は、前記磁選工程と前記硬化剤混合工程との間において、前記人工砂にフラン樹脂組成物を混合する樹脂組成物混合工程を、さらに含む、上記[1]または[2]に記載の鋳物砂の製造方法を含んでいる。
【0013】
このような方法によれば、人工砂に硬化剤が混合される前に、人工砂とフラン樹脂組成物とが混合される。そのため、フラン樹脂組成物が人工砂の各粒子の周囲を取り囲むように被覆する。その後、硬化剤が混合されると、人工砂の各粒子を被覆するフラン樹脂組成物が、硬化剤と接触し硬化してフラン樹脂膜(層)となる。これによって、人工砂と、人工砂を被覆するフラン樹脂を含有する表面改質層と、表面改質層に付着する硬化剤層とを備える鋳物砂が製造できる。
【0014】
その結果、表面改質層により、硬化剤が人工砂と接触することを抑制でき、硬化剤の活性能が、人工砂に含有される成分により、低下することを抑制できる。
【0015】
これにより、鋳物砂にバインダを供給すると、バインダを確実に硬化させることができ、砂型の強度の向上を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、砂型の強度の向上を図ることができる鋳物砂を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の鋳物砂の製造方法の一実施形態により製造される鋳物砂の概略構成図である。
図2図2は、本発明の鋳物砂の製造方法の一実施形態が実施される鋳物砂の製造ユニットの概略構成図である。
図3図3Aは、各実施例および各比較例における、抗折力試験に用いられる試験柱の斜視図である。図3Bは、図3Aに示す試験柱が、試験装置に挟持されている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<鋳物砂の製造方法>
本発明の鋳物砂の製造方法は、人工砂から磁性体を分離する磁選工程と、磁選工程後に人工砂に硬化剤を混合する硬化剤混合工程とを含む。また、鋳物砂の製造方法は、好ましくは、人工砂から微粉を除去する微粉除去工程をさらに含み、磁選工程と硬化剤混合工程との間において、人工砂にフラン樹脂組成物を混合する樹脂組成物混合工程をさらに含む。
【0019】
本実施形態では、磁選工程(一次磁選工程)、微粉除去工程、磁選工程(二次磁選工程)、樹脂組成物混合工程、および、硬化剤混合工程が順次実施される態様について説明する。
【0020】
1.一次磁選工程
磁選工程では、人工砂から磁力により磁性体を分離する。
【0021】
(1−1)人工砂
人工砂は、公知の方法(例えば、焼結法、溶融法、火炎溶融法など)により製造される。人工砂として、例えば、酸化アルミニウム砂(アルミナ砂)、ムライト砂、ムライト−ジルコン砂などが挙げられる。人工砂は、単独使用または2種類以上併用することができる。人工砂のなかでは、好ましくは、ムライト砂が挙げられる。
【0022】
ムライト砂は、酸化アルミニウム(アルミナ)と二酸化珪素(シリカ)との混合組成化合物(アルミノケイ酸塩)を主成分としている。
【0023】
酸化アルミニウムの含有割合は、ムライト砂全量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。二酸化珪素の含有割合は、ムライト砂全量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0024】
このようなムライト砂は、例えば、特開昭61−63333号公報に記載の方法や、特開2003−251434号公報に記載の方法により調製することができる。
【0025】
また、ムライト砂は、市販品を用いることもできる。ムライト砂の市販品として、例えば、エスパール(山川産業社製)、セラビーズ(伊藤忠セラテック社製)などが挙げられる。
【0026】
このような人工砂は、呼び寸法が53μm(281メッシュ)以上150μm(100メッシュ)以下の粒子を主成分として含む。また、人工砂には、天然珪砂を混合することもできる。
【0027】
(1−2)磁選処理
上記の人工砂は、磁性体を含有する。
【0028】
磁性体として、例えば、Fe(マグネタイト)、γ−Fe(マグへマイト)などが挙げられる。
【0029】
磁性体は、例えば、公知の磁選装置により人工砂から分離される。
【0030】
磁選装置として、例えば、図2に示す磁選装置5が挙げられる。なお、図2では、磁性体を含む人工砂がホッパ81に貯留されており、人工砂は、ホッパ81からベルトコンベア82を介して磁選装置5に搬送される。
【0031】
磁選装置5は、ドラム型磁選装置であって、ドラム51と、磁石52と、磁性体ホッパ53と、人工砂ホッパ54とを備える。
【0032】
ドラム51は、略円筒形状を有する。ドラム51は、軸線を中心として回転可能である。ドラム51は、磁力を通過させるように構成されており、例えば、金属材料から形成される。
【0033】
磁石52は、ドラム51内に配置されている。磁石52は、固定されており、ドラム51の回転に追従しない。磁石52は、ドラム51の周方向において、磁場が生じる範囲と磁場が生じない範囲とを形成する。
【0034】
磁性体ホッパ53は、ドラム51の周方向における磁場が生じない範囲の下方に位置する。人工砂ホッパ54は、磁性体ホッパ53に対して、ドラム51の回転方向の上流側に位置する。
【0035】
そして、人工砂から磁性体を除去するには、例えば、人工砂を、回転するドラム51に磁場が生じる範囲で接触させる。すると、人工砂に含まれる磁性体は、磁石52の磁力によりドラム51に付着して、ドラム51の回転とともに搬送される。その後、磁性体は、磁場が生じない範囲に到達すると、重力によりドラム51から落下して、磁性体ホッパ53に回収される。
【0036】
一方、人工砂は、磁場が生じる範囲においてもドラム51に付着しないので、磁場が生じない範囲に到達する前に、重力によりドラム51から落下して、人工砂ホッパ54に回収される。
【0037】
これにより、磁性体と人工砂とが分離され、人工砂から磁性体が除去される。
【0038】
2.微粉除去工程
微粉除去工程では、人工砂から微粉を除去する。
【0039】
微粉除去工程は、例えば、公知の微粉分級装置により実施される。
【0040】
微粉分級装置として、例えば、図2に示す粉体分級装置6が挙げられる。なお、図2では、人工砂は、人工砂ホッパ54から搬送ライン55を介して粉体分級装置6に搬送される。
【0041】
粉体分級装置6は、気体サイクロンであって、サイクロンボディ61と、微粉排出部62と備える。
【0042】
サイクロンボディ61は、上下方向に延びる略円筒形状を有し、サイクロンボディ61の下側部分は、下方に向かうにつれて小径となる略円錐形状を有する。サイクロンボディ61の下端部には、人工砂排出口63が形成される。人工砂排出口63は、サイクロンボディ61の内外を連通する。
【0043】
微粉排出部62は、サイクロンボディ61の上端部に設けられる。微粉排出部62は、微粉を含む空気を排出可能である。
【0044】
そして、人工砂から微粉を除去するには、例えば、人工砂を含む空気を、サイクロンボディ61内において渦を巻くように、サイクロンボディ61に吹き込む。これにより、人工砂が分級される。そして、人工砂に含まれる微粉は、空気とともに、サイクロンボディ61の上端に設けられる微粉排出部62から排出される一方、人工砂は、サイクロンボディ61の下端に形成される人工砂排出口63から排出される。
【0045】
以上によって、人工砂から微粉が除去される。
【0046】
3.二次磁選工程
その後、本実施形態では、上記と同様の磁選工程(二次磁選工程)が実施される。図2では、人工砂排出口63から排出された人工砂は、ベルトコンベア86により、磁選装置5に搬送される。そして、上記と同様にして、磁性体と人工砂とが分離され、磁性体が磁性体ホッパ53に回収され、人工砂が人工砂ホッパ54に回収される。
【0047】
4.樹脂組成物混合工程
樹脂組成物混合工程は、二次磁選工程と硬化剤混合工程との間において実施され、二次磁選工程後の人工砂にフラン樹脂組成物が混合される。
【0048】
フラン樹脂組成物は、酸存在下において、例えば、35℃以上150℃未満で完全硬化状態(Cステージ)となる。フラン樹脂組成物は、フラン樹脂前駆体を含んでいる。
【0049】
フラン樹脂前駆体として、例えば、フルフリルアルコール、フラン樹脂プレポリマーなどが挙げられる。
【0050】
フラン樹脂プレポリマーとして、例えば、フルフリルアルコールの単独重合体、フルフリルアルコールとアルデヒド化合物との共重合体、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド化合物との共重合体(尿素変性フラン樹脂プレポリマー)、フルフリルアルコールとフルフラールとの共重合体などが挙げられる。フラン樹脂プレポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
フラン樹脂プレポリマーのなかでは、好ましくは、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド化合物との共重合体(尿素変性フラン樹脂プレポリマー)が挙げられる。尿素変性フラン樹脂プレポリマーのモノマーとしてのアルデヒド化合物として、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、パラホルムアルデヒドなどが挙げられ、好ましくは、パラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0052】
フラン樹脂前駆体は、フルフリルアルコールおよびフラン樹脂プレポリマーのいずれか一方を単独で使用することができるが、好ましくは、フルフリルアルコールおよびフラン樹脂プレポリマーが併用される。
【0053】
フラン樹脂前駆体の含有割合は、フラン樹脂組成物の全量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上、例えば、95質量%以下である。
【0054】
フラン樹脂組成物は、上記成分に加えて、溶媒、上記した架橋剤などを含有することができる。溶媒としては、例えば、水、アセトン、酢酸エチル、アルコールなどが挙げられ、好ましくは、水が挙げられる。
【0055】
そして、人工砂とフラン樹脂組成物とを混合するには、例えば、人工砂を35℃以上100℃以下に予熱した後、人工砂にフラン樹脂組成物を添加する。その後、温度を維持しながら、人工砂とフラン樹脂組成物とが均一になるまで撹拌混合する。
【0056】
フラン樹脂組成物の混合割合は、人工砂100質量部に対して、例えば、0.10質量部以上0.50質量部以下である。
【0057】
これによって、フラン樹脂組成物が、人工砂の各粒子の周囲を取り囲むように被覆する。
【0058】
5.硬化剤混合工程
硬化剤混合工程では、人工砂に硬化剤が混合される。
【0059】
硬化剤は、後述するバインダを硬化できれば、特に制限されない。本実施形態では、砂型が、バインダがフラン樹脂組成物であるフラン自硬性砂型である場合について説明する。この場合、硬化剤は、例えば、バインダ(フラン樹脂組成物)を硬化(完全硬化状態に)させる酸触媒を含む。酸触媒として、例えば、脂肪族スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸など)、芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸など)、無機酸(例えば、硫酸、リン酸、塩酸など)、カルボン酸(例えば、マレイン酸、シュウ酸など)などが挙げられる。酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0060】
酸触媒のなかでは、好ましくは、芳香族スルホン酸、さらに好ましくは、キシレンスルホン酸が挙げられる。酸触媒の含有割合は、硬化剤全量に対して、例えば、90.0質量%以上、好ましくは、95.0質量%以上、例えば、100質量%以下である。
【0061】
そして、人工砂と硬化剤とを混合するには、例えば、フラン樹脂組成物が混合された人工砂に、35℃以上100℃以下で硬化剤を添加し混合する。その後、硬化剤が添加された人工砂が円滑に流動するまで撹拌混合する。
【0062】
硬化剤の混合割合は、人工砂100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上0.50質量部以下である。
【0063】
これによって、人工砂を被覆するフラン樹脂組成物が、硬化剤と接触してフラン樹脂膜となり、人工砂を被覆するフラン樹脂を含有する表面改質層が形成される。
【0064】
また、硬化剤の酸触媒は、フラン樹脂の硬化反応において触媒として作用し、フラン樹脂の硬化反応において生成する水とともに表面改質層の表面に押し出される。これによって、硬化剤が、表面改質層の表面に付着して、硬化剤層を形成する。
【0065】
以上によって、図1に示すように、人工砂2と、人工砂2を被覆するフラン樹脂を含有する表面改質層3と、表面改質層3に付着する硬化剤層4とを備える鋳物砂1が調製される。
【0066】
このような樹脂組成物混合工程および硬化剤混合工程は、例えば、図2に示す混合ユニット7により実施される。なお、図2では、人工砂は、人工砂ホッパ54から搬送ライン55を介して混合ユニット7に搬送される。
【0067】
混合ユニット7は、混合槽71と、ジャケット72と、撹拌翼73と、樹脂供給ユニット74と、硬化剤供給ユニット75と、鋳物砂取出ライン76とを備える。
【0068】
混合槽71は、搬送ライン55から搬送される人工砂を収容可能である。ジャケット72は、混合槽71内を加熱可能である。撹拌翼73は、混合槽71内に収容される撹拌対象物(人工砂、樹脂組成物および硬化剤)を撹拌可能である。
【0069】
樹脂供給ユニット74は、樹脂タンク74Aと、樹脂供給ライン74Bとを備える。樹脂タンク74Aは、上記したフラン樹脂組成物を貯留する。樹脂供給ライン74Bは、樹脂タンク74Aから混合槽71にフラン樹脂組成物を搬送する。
【0070】
硬化剤供給ユニット75は、硬化剤タンク75Aと、硬化剤供給ユニット75とを備える。硬化剤タンク75Aは、上記した硬化剤を貯留する。硬化剤供給ライン75Bは、硬化剤タンク75Aから混合槽71に硬化剤を搬送する。
【0071】
鋳物砂取出ライン76は、混合槽71から鋳物砂を取り出し可能である。鋳物砂取出ライン76の上流端部は、混合槽71の底部に接続される。
【0072】
そして、混合ユニット7では、混合槽71に収容される人工砂に、樹脂供給ユニット74からフラン樹脂組成物が供給されて、上記した樹脂組成物混合工程が実施された後、フラン樹脂組成物と混合された人工砂に、硬化剤供給ユニット75から硬化剤が供給されて、上記した硬化剤混合工程が実施される。これにより、図1に示す鋳物砂1が製造される。鋳物砂1は、鋳物砂取出ライン76を介して、混合槽71から取り出される。
【0073】
6.砂型の造形
上記した鋳物砂は、砂型の造形(製造)に好適に利用できる。
【0074】
砂型を造形するには、鋳物砂にバインダを添加して、鋳物砂を所定の形状に固める。
【0075】
バインダとして、例えば、上記したフラン樹脂組成物が挙げられる。
【0076】
砂型の造形方法として、例えば、原型(例えば、木型や金型など)を用いて造形する原型造形法や、3次元積層造形法(つまり3Dプリンタによる造形)などが挙げられ、好ましくは、3次元積層造形法が挙げられる。
【0077】
3次元積層造形法では、上記した鋳物砂を層状に形成する工程と、鋳物砂の層に上記したバインダ(フラン樹脂組成物)を供給して、鋳物砂の層におけるバインダの供給部分を固める工程とを繰り返して、砂型を造形する。
【0078】
7.作用効果
本実施形態では、硬化剤が混合される前に、人工砂から磁力により磁性体が分離される。そのため、磁性体と硬化剤とが接触することを抑制できる。
【0079】
その結果、磁性体が分離された人工砂に硬化剤を混合して鋳物砂を調製した後、鋳物砂にバインダを供給して砂型を製造すると、砂型の強度の向上を図ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、人工砂から微粉が除去された後に、人工砂から磁性体が除去される。その結果、磁性体を効率よく除去でき、砂型の経時的な強度の低下を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、人工砂に硬化剤が混合される前に、人工砂とフラン樹脂組成物とが混合される。そのため、フラン樹脂組成物が人工砂の各粒子の周囲を取り囲むように被覆する。その後、硬化剤が混合されると、人工砂の各粒子を被覆するフラン樹脂組成物が、硬化剤と接触し硬化してフラン樹脂膜(層)となる。
【0082】
これによって、図1に示すように、人工砂2と、人工砂2を被覆するフラン樹脂を含有する表面改質層3と、表面改質層3に付着する硬化剤層4とを備える鋳物砂1が製造できる。
【0083】
その結果、表面改質層3により、硬化剤が人工砂2と接触することを抑制でき、硬化剤の活性能が、人工砂2に含有される成分により低下することを抑制できる。
【0084】
これにより、鋳物砂1にバインダを供給すると、バインダを確実に硬化させることができ、砂型の強度の向上を確実に図ることができる。
【0085】
8.変形例
上記の実施形態では、微粉除去工程の前後両方において磁選工程が実施されるが、磁選工程は、微粉除去工程の前後のいずれか一方のみで実施されてもよい。
【0086】
磁選工程が微粉除去工程の前後のいずれか一方のみで実施される場合、砂型の経時的な強度低下を抑制する観点から、微粉除去工程の後に磁選工程を実施することが、微粉除去工程の前に磁選工程を実施するよりも好ましい。つまり、鋳物砂の製造方法は、好ましくは、磁選工程前において、微粉除去工程を含む。
【0087】
上記の実施形態では、磁選工程(二次磁選工程)と硬化剤混合工程との間において、樹脂組成物混合工程が実施されるが、これに限定されず、樹脂組成物混合工程は、実施されなくてもよい。
【0088】
この場合、磁選工程後の人工砂に、フラン樹脂組成物が添加されることなく、硬化剤が混合されて、鋳物砂が調製される(硬化剤混合工程)。その後、その鋳物砂にバインダを添加することにより、鋳物砂を固めることができ、砂型を製造できる。
【0089】
上記の実施形態の砂型は、フラン自硬性砂型であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、硬化剤がポリイソシアネートであり、バインダがフェノール樹脂であるフェノールウレタン自硬性砂型であってもよく、硬化剤が有機エステルであり、バインダがアルカリフェノール樹脂であるアルカリフェノール自硬性砂型であってもよい。
【0090】
これらによっても、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0092】
(実施例1)
人工砂(ムライト砂、商品名:エスパール#100DAM、山川産業社製)に対して、上記した磁選装置(図2参照)により磁選工程(一次磁選工程)を実施した。なお、表1において、エスパール#100DAMをEPとする。
【0093】
次いで、人工砂に対して、上記した粉体分級装置(図2参照)により微粉除去工程を実施した。これにより、人工砂から微粉が除去された。
【0094】
次いで、人工砂に対して、上記の磁選装置(図2参照)により磁選工程(二次磁選工程)を実施した。
【0095】
その後、人工砂100質量部を70℃に予熱した後、表2に示すフラン樹脂組成物を0.25質量部添加して、人工砂とフラン樹脂組成物とが均一になるまで撹拌混合した。
【0096】
その後、フラン樹脂組成物が混合された人工砂に、キシレンスルホン酸(酸触媒)を含む硬化剤0.25質量部を添加して、硬化剤が添加された人工砂が円滑に流動するまで撹拌混合した。硬化剤の混合工程では、70℃+5〜10℃の温度範囲に維持された。
【0097】
これによって、人工砂と、人工砂を被覆するフラン樹脂を含有する表面改質層と、表面改質層に付着する硬化剤とを備える鋳物砂を製造した。
【0098】
(実施例2)
一次磁選工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、鋳物砂を製造した。
【0099】
(実施例3)
二次磁選工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、鋳物砂を製造した。 (実施例4)
人工砂を、セラビーズ#1450(ムライト砂、伊藤忠セラテック社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、鋳物砂を製造した。なお、表1において、セラビーズ#1450をCBとする。
【0100】
(比較例1)
一次磁選工程および二次磁選工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、鋳物砂を製造した。
【0101】
(比較例2)
一次磁選工程および二次磁選工程を実施しなかった以外は、実施例4と同様にして、鋳物砂を製造した。
<抗折力試験>
各実施例および各比較例で得られた鋳物砂と、表2に示すバインダとを、3次元積層造形装置(商品名:S−Print、ExOne社製)にセットし、鋳物砂の層形成、および、鋳物砂の層に対するバインダの供給を順次繰り返して、図3Aに示すように、一辺Dが22.4mm、長さLが147mmである正四角柱の試験柱を製造した。
【0102】
次いで、各試験柱を、室温24℃、湿度45%の条件下で、表1に示す各時間放置した。そして、図3Bに示すように、試験柱を、試験柱の長さ方向外側から挟み込むように、試験装置(Universal Strength Machine PFG、シンプソン社製)にセットした。
【0103】
次いで、試験柱の一端を固定して、試験柱に対して他方側から、試験柱の長さ方向に沿って、試験柱に圧力を加えた。そして、試験柱が折れたときの圧力を抗折力とした。そして、上記の抗折力試験を5回繰り返して、表1に示す各時間における抗折力の平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【符号の説明】
【0106】
1 鋳物砂
2 人工砂
3 表面改質層
4 硬化剤層
図1
図2
図3