特許第6873550号(P6873550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6873550-車両 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873550
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20210510BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20210510BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20210510BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20210510BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20210510BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20210510BHJP
   B60L 50/50 20190101ALI20210510BHJP
【FI】
   B60R16/02 645D
   B60W20/50ZHV
   B60W10/26 900
   B60K6/445
   B60K6/40
   B60L50/16
   B60L50/50
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-73313(P2017-73313)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172096(P2018-172096A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 智紀
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−240165(JP,A)
【文献】 特開2012−243515(JP,A)
【文献】 特開2007−242247(JP,A)
【文献】 特開2015−216729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60K 6/40
B60K 6/445
B60L 50/16
B60L 50/50
B60W 10/26
B60W 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動源にモータを含む車両であって、
前記モータに供給される電力を蓄えておくための電池と、
前記電池から前記モータに電力を供給するための給電回路と、
前記電池と前記給電回路との間に設けられるリレー回路と、
前記モータを制御する第1制御ユニットと、
前記電池と一体的に設けられる第2制御ユニットとを備え、
前記リレー回路は、前記電池のプラス端子と前記給電回路とを接続するプラス配線、前記電池のマイナス端子と前記給電回路とを接続するマイナス配線、前記プラス配線に設けられるプラス側リレー、および前記マイナス配線に設けられるマイナス側リレーを含み、前記プラス側リレーおよび前記マイナス側リレーに対して前記電池と反対側において、前記プラス配線と前記マイナス配線との間にコンデンサが介在され、予備充電リレーおよび予備充電抵抗の直列回路からなる予備充電回路が前記マイナス側リレーと並列に前記マイナス配線に接続された構成を有し、
前記プラス側リレーおよび前記マイナス側リレーは、一方の導通および遮断が前記第1制御ユニットにより制御され、その他方の導通および遮断が前記第2制御ユニットにより制御される、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)などの車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッドカーなどの車両には、走行用モータに供給される電力を蓄えておくための高圧バッテリが搭載されている。
【0003】
高圧バッテリの出力電圧は、約200〜350Vの高電圧であり、高圧バッテリを搭載する車両では、高電圧に対する安全性の確保が重要である。そのため、高圧バッテリと走行用モータの駆動のためのインバータとの間には、リレーが介在されており、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が必要に応じてリレーを遮断(オフ)することにより、高圧バッテリがインバータから電気的に切り離されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−163406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、ハイブリッドカーでは、ECUによりエンジンおよびモータの両方を制御するため、通常、ECUは、車両の前部に設けられるエンジンルーム内に配置されている。ところが、ECUがエンジンルーム内に配置されていると、車両の前方衝突などによりECUが故障した場合にリレーを遮断できず、高圧バッテリをインバータから電気的に切り離せなくなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、電池を給電回路から電気的に切り離せなくなるおそれを低減できる、車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両は、走行用の駆動源にモータを含む車両であって、モータに供給される電力を蓄えておくための電池と、電池からモータに電力を供給するための給電回路と、電池と給電回路との間に設けられるリレー回路と、モータを制御する第1制御ユニットと、電池と一体的に設けられる第2制御ユニットとを備え、リレー回路は、電池のプラス端子と給電回路とを接続するプラス配線、電池のマイナス端子と給電回路とを接続するマイナス配線、プラス配線に設けられるプラス側リレー、およびマイナス配線に設けられるマイナス側リレーを含み、プラス側リレーおよびマイナス側リレーは、一方の導通および遮断が第1制御ユニットにより制御され、その他方の導通および遮断が第2制御ユニットにより制御される。
【0008】
この構成によれば、モータに供給される電力が蓄えられる電池と電池からモータに電力を供給するための給電回路との間には、プラス側リレーおよびマイナス側リレーを含むリレー回路が介在されている。
【0009】
プラス側リレーおよびマイナス側リレーの一方は、モータを制御する第1制御ユニットにより導通および遮断が制御され、その他方は、電池と一体的に設けられる第2制御ユニットにより導通および遮断が制御される。そのため、車両の衝突事故などにより第1制御ユニットまたは第2制御ユニットの一方が故障しても、その他方がプラス側リレーまたはマイナス側リレーのいずれかを遮断することができ、その遮断により電池を給電回路から電気的に切り離すことができる。
【0010】
よって、電池を給電回路から電気的に切り離せなくなるおそれを低減することができる。
【0011】
リレー回路は、プラス側リレーおよびマイナス側リレーに対して電池と反対側において、プラス配線とマイナス配線との間にコンデンサが介在され、予備充電リレーおよび予備充電抵抗の直列回路からなる予備充電回路がマイナス側リレーと並列にマイナス配線に接続された構成であってもよい。
【0012】
予備充電回路が設けられていることにより、リレー回路を突入電流が流れることを抑制でき、突入電流によるプラス側リレーおよびマイナス側リレーの接点の溶着の発生を抑制することができる。
【0013】
また、プラス側リレー、マイナス側リレーおよび予備充電リレーの各リレーの導通および遮断の組合せにより、各リレーの接点に溶着が生じているか否かを検出することができる。
【0014】
そのため、予備充電回路が設けられる構成では、第1制御ユニットまたは第2制御ユニットの一方は、プラス側リレーおよび予備充電リレーの導通および遮断を制御し、その他方は、マイナス側リレーの導通および遮断を制御することが好ましい。これにより、プラス側リレーおよび予備充電リレーの導通および遮断の切り替えの際の時間差を短縮でき、各リレーの溶着の検出に要する時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池を給電回路から電気的に切り離せなくなるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の構成を図解的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<車両の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両の構成を図解的に示す図である。
【0019】
車両1は、エンジン11および2個のモータジェネレータ12,13を走行用の駆動源として搭載したハイブリッド車である。
【0020】
エンジン11は、たとえば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。
【0021】
モータジェネレータ12,13は、DCブラシレスモータからなり、モータとしての機能と発電機(ジェネレータ)としての機能とを有している。
【0022】
エンジン11の駆動力およびモータジェネレータ12,13の駆動力は、遊星歯車機構14およびデファレンシャルギヤを内蔵した変速機15を介して、左右のドライブシャフト16L,16Rに伝達され、ドライブシャフト16L,16Rとともに左右の駆動輪17L,17Rを回転させる。
【0023】
車両1には、電池21およびインバータ22,23が搭載されている。
【0024】
電池21は、複数の二次電池を組み合わせた組電池からなる。
【0025】
インバータ22,23は、それぞれモータジェネレータ12,13に接続されている。
【0026】
電池21とインバータ22,23との間には、リレー回路31が介在されている。
【0027】
リレー回路31には、プラス配線32およびマイナス配線33が含まれる。プラス配線32およびマイナス配線33の一端は、それぞれ電池21のプラス端子およびマイナス端子に接続されている。プラス配線32およびマイナス配線33の他端は、インバータ22,23と電気的に接続されている。プラス配線32およびマイナス配線33には、それぞれプラス側リレー34およびマイナス側リレー35が介在されている。プラス側リレー34およびマイナス側リレー35に対して電池21と反対側において、プラス配線32とマイナス配線33との間には、コンデンサ36が介在されている。また、マイナス配線33には、予備充電リレー37および予備充電抵抗38の直列回路からなる予備充電回路39がマイナス側リレー35と並列に接続されている。
【0028】
車両1の走行中は、プラス側リレー34およびマイナス側リレー35が導通状態にされる。モータジェネレータ12,13がモータとして機能するときには、電池21から出力される電力がインバータ22,23に供給され、インバータ22,23で直流電力が交流電力に変換されて、交流電力がインバータ22,23からモータジェネレータ12,13に供給される。モータジェネレータ12,13が発電機として機能するときには、モータジェネレータ12,13で発生する交流電力がインバータ22,23で直流電力に変換されて、直流電力が電池21に入力されることにより電池21が充電される。
【0029】
また、車両1には、マイコンを含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が搭載されている。車両1の各部を制御するため、車両1には、複数のECUが搭載されており、各ECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。複数のECUには、エンジン11およびモータジェネレータ12,13を含むハイブリッドシステムの全体を制御するHV−ECU41と、電池21の状態を監視する電池ECU42とが含まれる。
【0030】
エンジン11、2個のモータジェネレータ12,13、遊星歯車機構14および変速機15などの駆動系は、車両1の前部に設けられたエンジンルーム(エンジンコンパートメント)43に配置されている。また、HV−ECU41は、エンジンルーム43に配置されている。
【0031】
電池ECU42は、電池21を収容する電池ケース内に配置されている。電池21は、エンジンルーム43の外部、たとえば、車両1の後部座席の下側に配置されている。
【0032】
そして、リレー回路31のプラス側リレー34および予備充電リレー37は、HV−ECU41により導通および遮断が制御され、マイナス側リレー35は、電池ECU42により導通および遮断が制御される。
【0033】
<作用効果>
以上のように、モータジェネレータ12,13に供給される電力が蓄えられる電池21と電池21からモータジェネレータ12,13に電力を供給するためのインバータ22,23との間には、プラス側リレー34およびマイナス側リレー35を含むリレー回路31が介在されている。
【0034】
プラス側リレー34は、モータジェネレータ12,13を制御するHV−ECU41により導通および遮断が制御され、マイナス側リレー35は、電池21と一体的に設けられる電池ECU42により導通および遮断が制御される。そのため、車両1の衝突事故などによりHV−ECU41または電池ECU42の一方が故障しても、その他方がプラス側リレー34またはマイナス側リレー35のいずれかを遮断することができ、その遮断により電池21をインバータ22,23から電気的に切り離すことができる。
【0035】
よって、電池21をインバータ22,23から電気的に切り離せなくなるおそれを低減することができる。
【0036】
また、リレー回路31には、予備充電リレー37および予備充電抵抗38の直列回路からなる予備充電回路39がマイナス側リレー35と並列に設けられている。
【0037】
プラス側リレー34およびマイナス側リレー35がオフからオンに切り替えられる際には、突入電流が回路に流れることを防止するため、マイナス側リレー35のオンに先立ち、プラス側リレー34および予備充電リレー37がオンにされる。これにより、電池21から出力される電流が予備充電抵抗38を流れ、コンデンサ36が予備充電される。そして、コンデンサ36の予備充電により、電池21の出力電圧とコンデンサ36の電圧との差が小さくなった後に、マイナス側リレー35がオンにされ、予備充電リレー37がオフにされる。これにより、リレー回路31を突入電流が流れることを抑制でき、突入電流によるプラス側リレー34およびマイナス側リレー35の接点の溶着の発生を抑制することができる。
【0038】
また、リレー回路31では、プラス側リレー34、マイナス側リレー35および予備充電リレー37の各接点に溶着が発生しているか否かを検出することができる。
【0039】
プラス側リレー34、マイナス側リレー35および予備充電リレー37のすべてが遮断の状態からプラス側リレー34のみが導通状態に切り替えられたときにコンデンサ36の両端に電圧が生じた場合、予備充電リレー37における接点の溶着の発生を検出できる。
【0040】
プラス側リレー34およびマイナス側リレー35が導通し、予備充電リレー37が遮断の状態からマイナス側リレー35が遮断状態に切り替えられたときにコンデンサ36の両端に電圧が生じた場合、マイナス側リレー35における接点の溶着の発生を検出できる。
【0041】
また、マイナス側リレー35の接点が溶着しているか否かの検出後、マイナス側リレー35の遮断状態を保持したまま、プラス側リレー34が遮断状態に切り替えられ、予備充電リレー37が導通状態に切り替えられたときにコンデンサ36の両端に電圧が生じた場合、プラス側リレー34における接点の溶着の発生を検出できる。
【0042】
プラス側リレー34および予備充電リレー37の導通および遮断がHV−ECU41により制御される構成では、プラス側リレー34の接点に溶着が発生しているか否かを検出する際に、HV−ECU41と電池ECU42との間の通信遅れによる影響がなく、プラス側リレー34または予備充電リレー37の一方の導通および遮断が電池ECU42により制御される構成と比較して、プラス側リレー34の導通状態から遮断状態への切り替えと予備充電リレー37の遮断状態から導通状態への切り替えとのタイムラグを短縮でき、その溶着の検出に要する時間を短縮することができる。
【0043】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0044】
たとえば、本発明は、1個のモータを搭載したハイブリッド車にも適用することができる。さらに、ハイブリッド車に限らず、モータを走行用の駆動源として搭載した車両であれば、エンジンを搭載していない電気自動車に本発明を適用することもできる。
【0045】
また、前述の実施形態に係る構成では、予備充電回路39がマイナス側リレー35と並列にマイナス配線33に接続されているが、予備充電回路39がプラス側リレー34と並列にプラス配線32に接続されてもよい。
【0046】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:車両
11:エンジン
12,13:モータジェネレータ
21:電池
22,23:インバータ(給電回路)
31:リレー回路
32:プラス配線
33:マイナス配線
34:プラス側リレー
35:マイナス側リレー
41:HV−ECU(第1制御ユニット)
42:電池ECU(第2制御ユニット)
図1