特許第6873551号(P6873551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873551
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】振動機構付き入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20210510BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G06F3/041 480
   G06F3/01 560
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-79065(P2017-79065)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-180899(P2018-180899A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一成
【審査官】 田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/023606(WO,A1)
【文献】 特開2016−051660(JP,A)
【文献】 特開2008−282125(JP,A)
【文献】 特開2006−139371(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/092966(WO,A1)
【文献】 特開2007−026344(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/111349(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/062014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によって入力操作が可能な操作部と、
前記操作部に対して振動を発生させる振動発生部と、
前記振動発生部の動作を制御する制御部と、を有した振動機構付き入力装置であって、
前記操作部に一端側が取り付けられたブラケットの、前記一端側からオフセットして位
置する他端側に前記振動発生部が取り付けられており、
前記振動発生部から前記操作部に対し、前記操作部の操作面の面内方向に沿った方向の振動が与えられることを特徴とする、振動機構付き入力装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記振動発生部によって発生された振動成分のうち、前記ブラケットの一端側から他端側を結ぶ線上に沿った方向の振動成分を吸収する緩衝部を有することを特徴とする、請求項1に記載の振動機構付き入力装置。
【請求項3】
前記操作部の背面側の少なくとも一部を覆うように配置される固定部をさらに有し、
前記固定部は支持部によって前記操作部を自由方向に吊っていることを特徴とする、請求項2に記載の振動機構付き入力装置。
【請求項4】
前記緩衝部は前記支持部からなることを特徴とする、請求項3に記載の振動機構付き入力装置。
【請求項5】
前記操作部の操作面の法線に沿ってみたときに、前記操作部の重心を通り鉛直方向に伸びる線は、前記振動発生部の振動中心を通るように、前記振動発生部は配置されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の振動機構付き入力装置。
【請求項6】
前記操作部の操作面の法線に沿ってみたときに、前記操作部の重心を通り鉛直方向に伸びる線は、前記ブラケットの一端側の前記操作部に取り付けられた部分を通ることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の振動機構付き入力装置。
【請求項7】
前記操作部の操作面の面内方向に沿った方向の振動が、水平方向(Y1−Y2方向)の成分を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の振動機構付き入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動機構付き入力装置に関し、特に、車載用途など据え置き用途に好適な、振動機構付き入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルのように操作面に触れることで入力操作が行える入力装置が増えてきている。このような入力装置では、操作性の向上のために、操作したときに操作面に振動を加えることで擬似的な操作感触が感じられる振動機構付き入力装置が求められている。このような振動機構付き入力装置としては、例えば、下記の特許文献1に記載の振動機構(フォースフィードバック)付き入力装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の振動機構は、弾性を有するとともに前記操作部の下面に接触可能な位置に配置された第1のダンパ部材と、弾性を有するとともに前記ケース部材の上面または下面と前記アクチュエータの一部との間に配置された第2のダンパ部材と、を有する。これらのダンパ部材は、所定の向きの操作部が所定の向きに移動しようとする慣性力を弾性変形によって吸収するとともに、弾性回復力によって反対向きへの移動を付勢する。それゆえ、操作部の駆動方向を上方から下方へスムーズに切り替えることができる。このように操作部の駆動方向がスムーズに切り替わることで、操作部を間延びすることなく駆動させることができる。したがって、キレのある操作感触のフォースフィードバック付き入力装置を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−230620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タッチパネルは、スマートフォンなど携帯機器のほかに、車載用ナビゲーションシステムなど据え置き用途での採用も進んでいる。この据え置き用途では、特に車載用途において、高機能の実現およびデザイン性確保の観点から、タッチパネルには大画面化かつ薄型化への要求が高まっている。
【0006】
振動機構付きのタッチパネルが大画面化すると、一般的にはタッチパネルの重量が大きくなるため、振動機構が発生する加振力を大きくすることが求められる。このため、従来と同様の機構・配置のままでは、加振器が大型化する傾向がある。加振器が大型化すると、タッチパネルの大型化には対応できても、薄型化への要請に応えることができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる現状を鑑みて、タッチパネルなどの入力装置の大型化かつ薄型化の要求に応えうる振動機構を有する入力装置(振動機構付き入力装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく提供される本発明は、操作者によって入力操作が可能な操作部と、前記操作部に対して振動を発生させる振動発生部と、前記振動発生部の動作を制御する制御部と、を有した振動機構付き入力装置であって、前記操作部一端側が取り付けられたブラケットの、前記一端側からオフセットして位置する他端側に前記振動発生部が取り付けられており、前記振動発生部から前記操作部に対し、前記操作面の面内方向に沿った方向の振動が与えられることを特徴とする、振動機構付き入力装置である。。
【0009】
従来の振動機構付き入力装置では、操作部を振動させる振動発生部は、操作部の振動の均一性が高くなるように、操作部の重心に近位な位置に設けられることが一般的である。したがって、最も一般的には、振動する操作部がタッチパネルである場合には、操作面とは反対側の面(背面)の中心部分に加振器などの振動発生部が取り付けられる。この場合には、操作部の背面側に加振器が突出して設けられることになる。操作部が大型化すると、操作部の重量も大きくなるため、加振器の大型化は避けがたい。このため、操作部の背面に加振器を取り付ける構造の振動機構では、薄型化の要請に応えることは困難となってきている。
【0010】
操作部を支持する固定部に加振器を取り付けて、操作部を変位させる構造の振動機構の場合には、振動発生部は操作部の重心近傍に位置する必要はないため、薄型化の要請に応えうるものの、操作者からみて振動発生部が操作部と並置される構造となるため、入力装置の外形における操作部の面積割合を高めることに限界がある。このため、車載用途などデザイン性が重視される用途では、この構造の振動機構は受け入れられにくい。
【0011】
以上の予備的な検討を踏まえ、本発明者らは、大型化および薄型化の要請に応え、かつデザイン性に影響を与えない振動機構について検討を行った。その結果、上記のとおり、操作部と振動発生部とを離間させ、これらをブラケットにてつなぐ構成に想到した。振動発生部は操作部から離間しているため、操作部を含む入力装置が大型化して重量化したことに対応して振動発生部を大型化しても、入力装置の薄型化を維持することができる。なお、操作部に取り付けられるブラケットは機械的特性が許す限り薄型の部材を使用すればよい。
【0012】
上記の振動機構付き入力装置において、前記振動発生部は、少なくとも前記ブラケットの一端側から他端側を結ぶ線上から外れる方向に向かって振動を発生可能であって、前記操作部は、前記振動発生部によって発生された振動成分のうち、前記線上に沿った方向の振動成分を吸収する緩衝部を有していてもよい。このような緩衝部を有する場合には、振動発生部の振動方向やブラケットの一端側の操作部への取り付け位置が操作面に発生する振動の面内均一性に与える影響を少なくすることができる。したがって、入力装置(タッチパッド)が大型化しても振動の面内均一性を高く維持することが容易となる。
【0013】
上記の振動機構付き入力装置において、前記操作部の背面側の少なくとも一部を覆うように配置される固定部をさらに有し、前記固定部は支持部によって前記操作部を自由方向に吊っていてもよい。固定部を有することにより、振動機構付きの入力装置を車両など入力装置の取り付け対象に取り付けることが容易となる。
【0014】
上記の固定部を有する場合において、前記緩衝部は前記支持部からなることが好ましい。支持部は操作部を自由方向に吊っているので、この支持部を緩衝部として機能させれば、振動発生手段からの振動の制御を容易に実現させることができる。
【0015】
上記の振動機構付き入力装置において、前記操作部の操作面の法線に沿ってみたときに、前記操作部の重心を通り鉛直方向に伸びる線は、前記振動発生部の振動中心を通るように、前記振動発生部は配置されてもよい。このように振動発生部が配置されている場合には、振動発生部の振動に起因して発生する操作部の振動について、操作面内での均一性を高めることができる。
【0016】
上記の振動機構付き入力装置において、前記操作部の操作面の法線に沿ってみたときに、前記操作部の重心を通り鉛直方向に伸びる線は、前記ブラケットの一端側の前記操作部に取り付けられた部分を通っていてもよい。ブラケットの一端側がこのように操作部に取り付けられている場合には、振動発生部の振動に起因して発生する操作部の振動について、操作面内での均一性を高めることができる。
【0017】
上記の振動機構付き入力装置では、振動発生部が面内方向に沿った方向に振動することにより、操作部に発生する振動も面内方向に沿った方向となる。面内方向の振動は操作者に操作感覚として伝わりやすく、好ましい。特に、入力装置の取り付け対象が車両である場合には、鉛直方向の振動は操作者に操作感覚として伝わりにくいため、操作面と水平面との交線に沿った方向に振動することが、操作者にとっては操作感覚として効率的に伝わりやすい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の振動機構付き入力装置の振動機構は、振動発生部が操作部と離間しブラケットで連結された構成を有する。かかる構成を有することにより、近時の据え置き型入力装置に求められる大画面化および薄型化の要請に効果的に応えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の外観図であって、(a)操作面が視認できる向きからの外観図、および(b)操作部の背面が視認できる向きからの外観図である。
図2】(a)本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の側面図、および(b)本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の背面図である。
図3】(a)本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える固定部の構造を説明するための外観図、(b)本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える可動部の構造を説明するための外観図、および(c)本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える可動部の構造を説明するための側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の動作を説明する図であって、(a)では基本動作を説明するために支持部(緩衝部)を有しない可動部の構成を示し、(b)では支持部(緩衝部)の機能を説明するために支持部(緩衝部)を有する可動部の構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の外観図である。図1(a)は、操作面が視認できる向きからの外観図であり、図1(b)は、操作部の背面が視認できる向きからの外観図である。図2(a)は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の側面図である。図2(b)は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の背面図である。図3(a)は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える固定部の構造を説明するための外観図である。図3(b)は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える可動部の構造を説明するための外観図である。図3(c)は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置が備える可動部の構造を説明するための側面図である。
【0021】
図1から図3に示されるように、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置10は、操作者の操作部位(例えば指F)が接することにより入力操作が可能な操作面21Aを有する操作部21を有する可動部20と、可動部20のヒンジ211が係止する貫通受け孔311を有して操作部21を支持するディスプレイシャーシ30とを有する。操作面21Aは、可動部20が有する操作部21のX1−X2方向X1側の面であり、そのX2側には図示されないタッチパネル(静電式、抵抗式のいずれであってもよい。)および表示装置(液晶表示装置、有機EL表示装置などが例示される。)が配置されている。
【0022】
ディスプレイシャーシ30は、Y1−Y2方向からみたときの外形がZ1−Z2方向に伸びる部分である固定部31とX1−X2方向に伸びる部分であるベース部32とを有するL字型である。固定部31には上記の貫通受け孔311が設けられており、この貫通受け孔311において操作部21を支持している。ベース部32は、車両など振動機構付き入力装置10が取り付けられる対象である被取り付け体BPとの連結部(図示せず。)を有する。図2には、被取り付け体BPおよびベース部32を隠すように配置される外装部IPが二点鎖線で示されている。被取り付け体BPが車両の一部の場合には、外装部IPはインスツルメントパネルまたはダッシュボードの一部である。後述するように、ベース部32の内側には、操作部21に連設されるブラケット50およびブラケット50にさらに連設される振動発生部40が配置される。このようにすることで、ベース部32によって、振動発生部40から操作部21への振動が外部からの異物などの影響を受けることが抑制される。振動発生部40の動作は図示しない制御部によって制御される。制御部は、例えばベース部32における、振動発生部の動作と干渉しない位置に配置される。
【0023】
図2(b)に示されるように、固定部31に対する操作部21の相対位置の変更範囲を規制する部材として、振動機構付き入力装置10には、ヒンジ211に加えて支持部25が設けられている。
【0024】
支持部25はZ1−Z2方向に伸縮する弾性体からなる。具体的には、支持部25はコイルばねからなり、Z1−Z2方向Z2側の端部251においてディスプレイシャーシ30に対して固定され、Z1−Z2方向Z1側の端部252において操作部21に対して固定される。したがって、ディスプレイシャーシ30の固定部31は支持部25によって操作部21を含む可動部20を自由方向に吊っている。特段の外力(振動発生部40による加振力を含む。)が付与されていない場合には、自由方向は鉛直方向(Z1−Z2方向)である。
【0025】
ディスプレイシャーシ30の固定部31をX1−X2方向からみたときの中央部には貫通部312が設けられており、この貫通部312を用いて、操作部21と固定部31とのY1−Y2方向への相対位置の変動範囲を規制するとともに、振動発生部40からの操作部21に伝達される振動を規制する振動規制ダンパ機構26が設けられている。
【0026】
図3(a)および図3(b)に示されるように、ディスプレイシャーシ30の固定部31は、ヒンジ211が挿通する貫通受け孔311および支持部25の一方(Z1−Z2方向Z2側)の端部251が係止するピン313によって、操作部21を含む可動部20を振動可能に保持している。支持部25の他方(Z1−Z2方向Z1側)の端部は、操作部21に設けられたピン213において操作部21を支持している。なお、ヒンジ211は弾性体からなるブッシュを有し、このブッシュにおいて貫通受け孔311と接触する。このようにヒンジ211が弾性体からなるブッシュを有することにより、固定部31に対して操作部21が所定の範囲内で振動しながら保持されることが実現される。支持部25を有しない場合には操作部21の自重に基づく鉛直方向の力のすべてがヒンジ211のブッシュに加わるが、支持部25を有することにより、上記の鉛直方向の力の一部が支持部25に加えられるため、ブッシュに加えられる力を少なくすることができ、ブッシュの寿命を延ばすことができる。
【0027】
図3(b)に示されるように、可動部20が有する操作部21には、X1−X2方向からみて操作部21の重心21Gが接続中心となるように、ブラケット50の一端側(Z1−Z2方向Z2側)が取り付けねじ51によって取り付けられている。図3(c)に示されるように、ブラケット50は、Y1−Y2方向からみたときに、一端がZ1−Z2方向Z2向きに延在し、他端がX1−X2方向X2向きに延在する屈曲形状を有する。そして、この他端側(X1−X2方向X2側)に、振動発生部40が取り付けられている。
【0028】
したがって、図3(c)に示されるように、振動発生部40の振動中心40Gは、操作部21の重心21Gから、X1−X2方向X2側に距離Dxだけオフセットし、Z1−Z2方向Z2側に距離Dzだけオフセットしている。このように操作部21の重心21Gに対してオフセットした位置に振動発生部40を配置することにより、操作部21の外形を大きくすることなく、具体的には、厚さ(X1−X2方向長さ)を厚くすることなく、幅(Y1−Y2方向長さ)を広げることなく、高さを(Z1−Z2方向長さ)を高くすることなく、加振力の大きな振動発生部40を操作部21に力学的に連結することができる。それゆえ、かかる構造を有する振動機構付き入力装置10は、大型化と薄型化の要請に適切に応えることができる。なお、車載用途、特にインストルメントパネルから操作部21が突出するように配置される場合には、ディスプレイシャーシ30のベース部32の内部に振動発生部40を配置し、ベース部32ごとインストルメントパネルIPの内部に配置すれば、振動発生部40は使用者から視認されることがないため、好ましい。
【0029】
続いて、振動発生部40による操作部21の振動機構について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置の動作を説明する図であって、図4(a)では、基本動作を説明するために、支持部(緩衝部)を有しない可動部20の構成を示している。図4(b)では、支持部(緩衝部)の機能を説明するために、支持部(緩衝部)を有する可動部20の構成を示している。
【0030】
図4(a)に示されるように、振動発生部40の内部には、振動発生装置41が組み込まれている。図4に示される振動発生装置41は、2つのソレノイドコイルの間に錘がついたプランジャが配置され、この錘が2つのソレノイドの間を移動することにより、振動を発生させる構造を有する。したがって、振動発生装置41が発生させる振動の方向は、Y1−Y2方向である。振動発生装置41が発生させる振動の方向と操作面21Aとの関係は特に限定されない。操作面21AがY―Z平面内に位置する場合には、上記のように、面内方向(Y1−Y2方向成分および/またはZ1−Z2方向)の成分を有する方向に振動してもよい。操作者に振動を効率的に伝達する観点からは、面内方向(Y1−Y2方向および/またはZ1−Z2方向)の成分を有する方向に振動することが好ましい。また、車載用途の場合には、車両においてほぼ連続的にZ1−Z2方向の振動が発生しているため、Z1−Z2方向の振動成分は、操作者にとって不感成分となる。したがって、振動機構付き入力装置10が車載用途の場合には、図4に示されるように、振動発生部40において発生する振動の方向は、Y1−Y2方向の成分を有することが好ましく、実質的にY1−Y2方向の成分からなることがより好ましい。
【0031】
ブラケット50を構成する材料は、振動発生部40において発生した振動を操作部21に適切に伝達できる限り任意である。操作部21を含む操作者が直接的に視認する部分の厚さを薄くする観点から、ブラケット50も可能な限り薄いことが好ましい。ブラケットを構成する材料の限定されない例示を行えば、鋼板、銅合金の板材、アルミニウム合金の板材などが挙げられる。こうした板材を適宜折り曲げ加工することにより、ブラケット50を製造することができる。
【0032】
振動発生部40の内部の振動発生装置41が動作して、図4(a)に示されるように、Y1−Y2方向Y2側に振動中心40Gが移動すると、Y1−Y2方向Y2側への加振力FRが発生する。この加振力FRは、その他端側において振動発生部40に接続されるブラケット50に伝達され、さらにブラケット50の一端側において接続される操作部21にも伝達されて、操作部21をY1−Y2方向Y2側へと移動させる並進力FHとなる。同様に、振動発生部40の内部の振動発生装置41が動作して、Y1−Y2方向Y1側に加振力FRが生じた場合には、Y1−Y2方向Y1側の並進力FHが操作部21に発生する。したがって、振動発生部40の内部の振動発生装置41がY1−Y2方向に往復振動することにより、操作部21をY1−Y2方向に往復動させる並進力FHが生じ、操作部21の振動が生じる。
【0033】
ここで、振動中心40Gと重心21Gとは、距離Dzでオフセットしているため、振動発生装置41に加振力FRが生じると、操作部21には、並進力FHのみならず、重心21G周りのモーメントが生じる。具体的には、Y1−Y2方向Y2側に加振力FRが生じると、操作部21には反時計回りのモーメントが生じる。このため、図4(a)に示されるように、振動発生装置41からの加振力FRはそのすべてが並進力FHとならず、一部はモーメントに基づく回転力F1として操作部21に作用する。回転力F1は、Y−Z面内方向であるから、加振力FRの一部が回転力F1となることにより、操作部21の振動方向は、Y1−Y2方向のみならず、Z1−Z2方向の成分を有することになる。
【0034】
前述のように、振動機構付き入力装置10が車載用途で用いられる場合には、Z1−Z2方向の振動成分は不感成分となる。したがって、回転力F1に基づくZ1−Z2方向の振動成分が大きくなると、操作面21Aに触れる操作者の操作部位(例えば指F)が感じる実質的な振動は、回転力F1がない場合、すなわち並進力FHのみの場合に比べて小さくなる。
【0035】
そこで、振動機構付き入力装置10では、図4(b)に示されるように、2つのコイルバネからなる支持部25を緩衝部として備え、この支持部25によって、回転力F1に基づいて鉛直方向(Z1−Z2方向)に操作部21が変位することを抑制する。具体的には、回転力F1の鉛直成分F1Vを弾性収縮力FEにより緩和する。その結果、加振力FRが並進力FHに変換される効率が高くなり、操作部21のY1−Y2方向の振動が効率的に発生するようになる。支持部25が上記の機能を適切に果たす観点から、支持部25の弾性係数は高いことが好ましい。したがって、支持部25は弾性係数が低い、いわゆるばねである必要はなく、棒状の鋼材などから形成されていてもよいし、線材から構成されていてもよい。
【0036】
このような緩衝部を備える場合には、振動発生部40が少なくとも前記ブラケット50の一端側から他端側を結ぶ線(図4(b)では一点鎖線にて示した。)上から外れる方向に向かって振動を発生可能であっても、振動発生部40によって発生された振動成分のうち、上記の線上に沿った方向の振動成分を緩衝部において吸収することによって、操作部21の振動方向を適切に制御することが可能である。
【0037】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る振動機構付き入力装置10は、振動発生部40が操作部21と離間しブラケット50で連結された構成を有する。かかる構成を有することにより、近時の据え置き型入力装置に求められる大画面化および薄型化の要請に効果的に応えることが可能である。
【0038】
上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0039】
例えば、上記の振動機構付き入力装置10では、ブラケット50の一端側(Z1−Z2方向Z2側)は、X1−X2方向からみて操作部21の重心21Gと重なるように配置されているが、これに限定されない。例えば、ブラケット50の一端側(Z1−Z2方向Z2側)が、X1−X2方向からみて操作部21の重心21Gよりも上側(Z1−Z2方向Z2側)に位置するように、ブラケット50は操作部21に取り付けられていてもよいし、操作部21の重心21Gよりも下側(Z1−Z2方向Z1側)に位置するように取り付けられていてもよい。また、振動機構付き入力装置10の振動発生部40に取り付けられた振動発生装置41は、2つのソレノイドを有する構造を有していたが、これに限定されない。他の構造を有する振動発生装置の具体例として、回転するモータの回転軸に回転中心からずれた位置に重心を有する部材が設けられた構造を有する振動発生装置や、ボイスコイルを基本構造とする振動発生装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0040】
10 :振動機構付き入力装置
20 :可動部
21 :操作部
21A :操作面
21G :重心
211 :ヒンジ
213 :操作部21のピン
25 :支持部
251 :支持部25のZ1−Z2方向Z2側の端部
252 :支持部25のZ1−Z2方向Z1側の端部
26 :振動規制ダンパ機構
30 :ディスプレイシャーシ
31 :固定部
311 :貫通受け孔
312 :貫通部
313 :固定部31のピン
32 :ベース部
40 :振動発生部
40G :振動中心
41 :振動発生装置
50 :ブラケット
51 :取り付けねじ
BP :被取り付け体
IP :外装部
Dx :X1−X2方向のオフセット距離
Dz :Z1−Z2方向のオフセット距離
F :指
FR :加振力
FH :並進力
F1 :回転力
F1V :回転力F1の鉛直成分
FE :弾性収縮力
図1
図2
図3
図4