特許第6873558号(P6873558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873558
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】インサート成形容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20210510BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20210510BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/27
   B29K67:00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-148409(P2017-148409)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-25811(P2019-25811A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 和位
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−216979(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/048139(WO,A1)
【文献】 特開2012−116521(JP,A)
【文献】 特開平09−131753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次容器の外側に該一次容器の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器が一体に設けられた二重壁構造のインサート成形容器の製造方法であって、
外側面に蒸着層が設けられた前記一次容器の該蒸着層が設けられた部分における外側面に、前記蒸着層の一部を覆う透明な合成樹脂製のカバー部材を取り付けるカバー取付け工程と、
前記カバー部材をゲートに対向させて前記一次容器を金型の内部に配置する配置工程と、
前記ゲートから前記金型の内部に透明な合成樹脂材料を射出して、前記一次容器の外側に前記二次容器を一体に形成するインサート成形工程と、を有し、
前記カバー部材が前記二次容器を形成する合成樹脂材料と同材質の合成樹脂材料で形成されていることを特徴とするインサート成形容器の製造方法。
【請求項2】
前記一次容器が側壁と底壁とを有し、
前記底壁の外側面の全体に前記蒸着層が設けられており、
前記カバー取付け工程において、前記底壁の中心部分に前記カバー部材を取り付ける、請求項1に記載のインサート成形容器の製造方法。
【請求項3】
前記一次容器が、外側面の全体に前記蒸着層が設けられたものである、請求項1または2に記載のインサート成形容器の製造方法。
【請求項4】
前記二次容器がポリエステル系の合成樹脂材料で形成される、請求項1〜の何れか1項に記載のインサート成形容器の製造方法。
【請求項5】
前記蒸着層がアルミ蒸着層である、請求項1〜の何れか1項に記載のインサート成形容器の製造方法。
【請求項6】
前記一次容器が前記二次容器を形成する合成樹脂材料よりも融点の高い合成樹脂材料で形成されている、請求項1〜の何れか1項に記載のインサート成形容器の製造方法。
【請求項7】
前記一次容器が射出成形品である、請求項1〜の何れか1項に記載のインサート成形容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次容器の外側に一次容器の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器が一体に設けられた二重壁構造のインサート成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一次容器の外側に一次容器の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器が一体に設けられた二重壁構造のインサート成形容器が知られている。このような二重壁構造のインサート成形容器は、優れた光学的な加飾機能を発揮できることから、例えば化粧料を収容する容器など、高級感のあるパッケージングで商品の差別化が要望される用途に使用されている。
【0003】
上記インサート成形容器は、一次容器をインサート材として金型の内部に配置した状態で金型のゲートから金型内に透明な合成樹脂材料を射出するインサート成形の手法を用いて上記した二重壁構造に形成される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−12072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のインサート成形容器では、一次容器の外側面にアルミ蒸着等の光沢のある蒸着層を設けることで、蒸着層の光沢をさらに透明感のあるものとして、より高級感のある美観の高いものとすることができる。
【0006】
しかし、蒸着層が設けられた一次容器をインサート材としてインサート成形を行うと、ゲートから金型内に射出される溶融した合成樹脂材料の熱と圧力によって一次容器のゲートの周辺領域における外側面が溶かされて蒸着層とともにゲートから離れる方向に向けて流れ、これにより、一次容器のゲート周辺領域に蒸着層が剥がれた部分が生じて美観が損なわれてしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、一次容器の蒸着層に剥がれが生じることを防止して、より美観の高いインサート成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、一次容器の外側に該一次容器の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器が一体に設けられた二重壁構造のインサート成形容器の製造方法であって、外側面に蒸着層が設けられた前記一次容器の該蒸着層が設けられた部分における外側面に、前記蒸着層の一部を覆う透明な合成樹脂製のカバー部材を取り付けるカバー取付け工程と、前記カバー部材をゲートに対向させて前記一次容器を金型の内部に配置する配置工程と、前記ゲートから前記金型の内部に透明な合成樹脂材料を射出して、前記一次容器の外側に前記二次容器を一体に形成するインサート成形工程と、を有し、前記カバー部材が前記二次容器を形成する合成樹脂材料と同材質の合成樹脂材料で形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記一次容器が側壁と底壁とを有し、前記底壁の外側面の全体に前記蒸着層が設けられており、前記カバー取付け工程において、前記底壁の中心部分に前記カバー部材を取り付けるのが好ましい。
【0011】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記一次容器が、外側面の全体に前記蒸着層が設けられたものであるのが好ましい。
【0012】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記二次容器がポリエステル系の合成樹脂材料で形成されるのが好ましい。
【0013】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記蒸着層がアルミ蒸着層であるのが好ましい。
【0014】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記一次容器が前記二次容器を形成する合成樹脂材料よりも融点の高い合成樹脂材料で形成されているのが好ましい。
【0015】
本発明のインサート成形容器の製造方法は、上記構成において、前記一次容器が射出成形品であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一次容器の蒸着層に剥がれが生じることを防止して、より美観の高いインサート成形容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態であるインサート成形容器の半断面図である。
図2図1に示すインサート成形容器を用いた化粧料容器の断面図である。
図3】外側面に蒸着層が設けられた一次容器をカバー部材とともに示す半断面図である。
図4】(a)はカバー取付け工程においてカバー部材が取り付けられた一次容器の断面図であり、(b)は同底面図である。
図5】配置工程においてカバー部材が取り付けられた一次容器を金型に配置した状態を示す断面図である。
図6】インサート成形工程においてゲートから金型の内部に合成樹脂材料を射出している様子を示す断面図である。
図7】インサート成形工程が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。
【0026】
図1に示す本発明の一実施の形態であるインサート成形容器1は、一次容器10の外側に、この一次容器10の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器20が一体に設けられた二重壁構造を有するインサート成形品である。インサート成形容器1は、円筒状の口部2、口部2に連なる円筒状の胴部3及び胴部3の下端を閉塞する円形の底部4を備え、全体として広口瓶形状(ジャー形状)となっている。
【0027】
インサート成形容器1は、例えば内容物として化粧料を収容する化粧料容器として用いることができる。図2には、インサート成形容器1を、その内部に化粧料が充填されたリフィル容器30を収容するとともに口部2をキャップ40で閉塞したリフィルタイプ(付替えタイプ)の化粧料容器に構成した場合を示す。
【0028】
リフィル容器30は、インサート成形容器1の内面に対応した形状の有底円筒状のリフィル容器本体31の内部に化粧料32を充填し、その開口にシート状の閉塞体33を接着等の手段によって固定して密封した構成を有している。リフィル容器本体31は、例えばポリプロピレン樹脂で形成されたものとすることができる。リフィル容器本体31の上端部の外周には爪状の係止部34が設けられており、この係止部34が口部2の上端部の外周に設けられた溝部2aにアンダーカット係合することで、リフィル容器30はインサート成形容器1に着脱自在に保持されている。
【0029】
キャップ40は、ポリプロピレン樹脂により、リフィル容器本体31の外径に対応した外径の有頂円筒状に形成されており、その内周面に設けられた雌ねじ41を口部2の外周面に設けられた雄ねじ2bにねじ結合させることでインサート成形容器1に着脱自在に装着されている。
【0030】
キャップ40をインサート成形容器1から取り外し、閉塞体33を引き剥がしてリフィル容器本体31を開封することで、化粧料32をリフィル容器本体31から取り出して使用することができる。使用後には、キャップ40をインサート成形容器1に装着することでリフィル容器本体31を閉塞して保管することができる。化粧料32が全て取り出されてリフィル容器本体31が空になった場合には、空のリフィル容器本体31をインサート成形容器1から取り外し、新たなリフィル容器30をインサート成形容器1に装着することで、インサート成形容器1を再使用することができる。
【0031】
なお、リフィル容器30を用いることなく、インサート成形容器1の内部に内容物を直に収容する構成とすることもできる。
【0032】
図1に示すように、一次容器10は、円筒状の側壁11と、この側壁11の下端を閉塞する底壁12とを有する有底円筒状となっており、側壁11はインサート成形容器1の胴部3の内周側部分を構成し、底壁12はインサート成形容器1の底部4の上面側部分を構成している。
【0033】
本実施の形態においては、一次容器10は、ポリカーボネート(PC)を射出して形成されたポリカーボネートの射出成形品となっている。
【0034】
なお、一次容器10は、ポリカーボネート製に限らず、他の合成樹脂材料、ガラス、金属等の他の材質で形成されたものとすることもできる。また、一次容器10を合成樹脂材料で形成されたものとする場合には、合成樹脂材料を射出成形して形成したものに限らず、ブロー成形で形成したものを採用することもできる。
【0035】
一次容器10の外側面には、その全体に蒸着層13が設けられている。すなわち、側壁11の外側を向く外側面の全体と底壁12の外側を向く外側面の全体とに蒸着層13が設けられ、一次容器10の外側面の全体が蒸着層13によって被覆されている。なお、一次容器10の内側面には蒸着層13は設けられず、ポリカーボネートがそのまま露出している。
【0036】
本実施の形態においては、一次容器10の外側面に設けられる蒸着層13はアルミ蒸着層である。アルミ蒸着層である蒸着層13が設けられることにより、一次容器10の外側面は、その全体が光沢のある鏡状に加飾されている。
【0037】
二次容器20は、円筒状の側壁21と、この側壁21の下端を閉塞する底壁22とを有する有底円筒状となっており、側壁21はインサート成形容器1の胴部3の外周側部分を構成し、底壁22はインサート成形容器1の底部4の下面側部分を構成している。
【0038】
二次容器20は、一次容器10をインサート材としたインサート成形において一次容器10の外側にポリエステル系の合成樹脂材料を射出して形成された透明な合成樹脂製となっている。本実施の形態では、二次容器20を形成する合成樹脂材料は、飽和ポリエステル樹脂の一種であるPCTA樹脂である。ここで、二次容器20は、二次容器20を通して一次容器10の外側面の蒸着層13を視認することができる程度に透明であればよく、例えば半透明であってもよい。
【0039】
二次容器20を形成する合成樹脂材料は、一次容器10を形成する合成樹脂材料よりも融点の低い合成樹脂材料であるのが好ましい。これにより、インサート成形時に、インサート材として金型に配置された一次容器10が、二次容器20を形成するために溶融した状態で金型内に射出される合成樹脂材料の熱によって溶融してしまうことを抑制することができる。
【0040】
二次容器20の底壁22は、その中央部分(中心位置)に、当該底壁22の下面から突出する略円柱状のゲート痕23を有している。ゲート痕23は、一次容器10をインサート材としたインサート成形により二次容器20を射出成形した際に、ゲート内の合成樹脂材料が二次容器20の金型のゲートに対応した部分に残存して生じるものである。ゲート痕23は、一次容器10の底壁12の中央部分(中心位置)に対向している。すなわち、一次容器10の底壁12のゲート痕23の周辺領域は、蒸着層13が設けられている部分である。なお、底壁22は、その外周縁に対して内側部分が上方に向けて僅かに凹んだ形状を有し、ゲート痕23は当該凹みの範囲内で底壁22の下面から突出している。
【0041】
口部2は、上記インサート成形において、二次容器20とともに成形されて二次容器20の側壁21の上端に一体に連ねて設けられている。また、一次容器10の底壁12の中央部分は貫通孔14となっており、この貫通孔14に二次容器20の底壁22の上面から突出する凸部24が嵌合している。
【0042】
上記構成を有する本実施の形態のインサート成形容器1は、光沢のある蒸着層13が外側面に設けられた一次容器10の外側に、一次容器10の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器20が一体に設けられた二重壁構造であるので、二次容器20を通して一次容器10の外側面に設けられた光沢のある蒸着層13を視認することができる。また、透明な二次容器20による光学的な加飾機能により、一次容器10の外側面に設けられた蒸着層13は、その光沢がさらに透明感のあるものとされている。さらに、本実施の形態のインサート成形容器1では、一次容器10のゲート痕23の周辺領域である底壁12の外側面の全体に蒸着層13が設けられている。したがって、本実施の形態のインサート成形容器1は、一次容器10のゲート周辺領域に蒸着層13が剥がれた部分がなく、その胴部3及び底部4の全体が、高級感のある美観の高いものとなっている。
【0043】
このように、本実施の形態のインサート成形容器1では、光沢のある蒸着層13が外側面に設けられた一次容器10の外側に、一次容器10の外側面を覆う透明な合成樹脂製の二次容器20が一体に設けられた二重壁構造において、一次容器10のゲート痕23の周辺領域にも蒸着層13を設けるようにしたので、一次容器10をゲート痕23の周辺領域に蒸着層13が剥がれた部分がないものとして、インサート成形容器1の美観を高めることができる。
【0044】
また、本実施の形態のインサート成形容器1では、二次容器20を形成する合成樹脂材料としてポリエステル系の合成樹脂材料を用いることにより、二次容器20をより透明性の高いものとして、インサート成形容器1の美観を高めることができる。
【0045】
さらに、本実施の形態のインサート成形容器1では、ゲート痕23を一次容器10の底壁12の中心部分に対向して設け、底壁12の外側面の全体に蒸着層13を設けるようにしたので、ゲート痕23を外部から目立たない底部4に設けつつ、当該底部4の美観をも高めることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態のインサート成形容器1では、一次容器10の外側面の全体に蒸着層13を設けるようにしたので、インサート成形容器1の美観をより効果的に高めることができる。
【0047】
さらに、本実施の形態のインサート成形容器1では、蒸着層13としてアルミ蒸着層を用いるようにしたので、一次容器10を光沢のあるものとして、インサート成形容器1の美観をより効果的に高めることができる。
【0048】
上記構成を有する本実施の形態のインサート成形容器1は、本発明の一実施の形態であるインサート成形容器の製造方法により製造することができる。以下に、図3図6に基づいて、本発明の一実施の形態であるインサート成形容器の製造方法によりインサート成形容器1を製造する手順について説明する。
【0049】
まず、図3に示すように、外側面に蒸着層13が設けられた一次容器10とカバー部材50とを用意する。
【0050】
カバー部材50は、二次容器20を形成する合成樹脂材料と同材質の合成樹脂材料(PCTA樹脂)により、円形で皿状のカバー本体部50aと、カバー本体部50aの中心から突出する円柱状の軸部50bとを備えた形状に形成されている。カバー本体部50aの直径は一次容器10の底壁12の直径よりも小さく、軸部50bの直径は一次容器10の貫通孔14の内径よりも僅かに小さくなっている。
【0051】
次に、図4(a)に示すように、カバー部材50の軸部50bを一次容器10の貫通孔14に外側から挿入してカバー部材50を一次容器10に取り付ける(カバー取付け工程)。一次容器10にカバー部材50が取り付けられると、図4(b)に示すように、一次容器10の底壁12における外側面の中央部分、すなわち底壁12に設けられた蒸着層13の中央部分がカバー本体部50aにより覆われる。なお、軸部50bが貫通孔14に圧入状態で挿入されることにより、カバー部材50は底壁12に保持されている。
【0052】
一次容器10にカバー部材50が取り付けられると、次に、図5に示すように、カバー部材50が取り付けられた一次容器10を、インサート材としてインサート成型用の金型60の内部に配置する(配置工程)。一次容器10が金型60に配置されて当該金型60に保持された状態においては、一次容器10の底壁12に取り付けられたカバー部材50のカバー本体部50aは、その中心位置が金型60のゲート61の軸心と一致するようにゲート61に対向する。
【0053】
金型60は、下型62と上型63とを有し、上型63の一部は左右に分割可能な分割型63a、63bとなっており、一次容器10は、分割型63a、63bの軸心に設けられた上型63の柱状部分63cに嵌め込まれて保持される。なお、金型60としては、上記構成のものに限らず、一次容器10をインサート材としたインサート成形を行うことができるものであれば、他の構成のものを用いることもできる。
【0054】
カバー部材50が取り付けられた一次容器10がインサート材として金型60の内部に配置され、金型60が型締めされると、次に、図6に示すように、ゲート61から金型60の内部に向けて、すなわち一次容器10の外側面と金型60の内面との間に形成されたキャビティ64に向けて、二次容器20を形成するための透明な合成樹脂材料(PCTA樹脂)70を射出して、インサート成形を行う(インサート成形工程)。当該インサート成形において射出された合成樹脂材料70がキャビティ64の内部で硬化すると、図7に示すように、一次容器10の外側に二次容器20が一体に形成される。
【0055】
ここで、一次容器10のゲート61に対向する部分にはカバー部材50が取り付けられているので、インサート成形においてゲート61から金型60の内部に向けて射出される合成樹脂材料70は、カバー部材50のカバー本体部50aに当たってからキャビティ64の内部の隅に向かって流れ、一次容器10ないし蒸着層13に直接当たることがない。したがって、カバー部材50により、ゲート61から金型60の内部に向けて射出される溶融した合成樹脂材料70の熱と圧力から一次容器10ないし蒸着層13を保護することができる。このように、一次容器10のゲート61に対向する部分にカバー部材50を取り付けた状態でインサート成形を行うことにより、溶融した合成樹脂材料70の熱と圧力から一次容器10ないし蒸着層13を保護して、一次容器10のゲート61の周辺領域における外側面が溶かされて蒸着層13とともにゲート61から離れる方向に向けて流れて一次容器10のゲート61の周辺領域に蒸着層13が剥がれた部分が生じてしまうことを防止することができる。
【0056】
なお、カバー部材50は二次容器20を形成する合成樹脂材料70と同材質の合成樹脂材料により形成されているので、インサート成形の際の熱及び圧力により溶かされて二次容器20と一体化される。したがって、製造されたインサート成形容器1の底部4において二次容器20の底壁22は高い透明性を有することになり、美観が損なわれることがない。なお、カバー部材50の軸部50bは、インサート成形容器1の二次容器20に一体に形成される凸部24となる。
【0057】
このように、本実施の形態のインサート成形容器の製造方法によれば、一次容器10のゲート61に対向する部分にカバー部材50を取り付け、インサート成形の際に、カバー部材50によってゲート61の周辺領域における一次容器10ないし蒸着層13を保護するようにしたので、一次容器10のゲート61の周辺領域に蒸着層13が剥がれた部分が生じることを防止して、美観の高いインサート成形容器1を製造することができる。
【0058】
また、本実施の形態のインサート成形容器の製造方法では、一次容器10の底壁12の中心部分にゲート61を対向させるとともにカバー部材50を取り付けるようにしたので、二次容器20を形成する合成樹脂材料70をゲート61から金型60の内部において一次容器10の外側に均等に充填しつつ、底壁12に蒸着層13が剥がれた部分が生じることを防止することができる。
【0059】
さらに、本実施の形態のインサート成形容器の製造方法では、カバー部材50を、二次容器20を形成する合成樹脂材料と同材質の合成樹脂材料で形成されたものとしたので、インサート成形後にカバー部材50を二次容器20に一体化させて、インサート成形容器1の美観をより高めることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態のインサート成形容器の製造方法では、一次容器10を、二次容器20を形成する合成樹脂材料よりも融点の高い合成樹脂材料で形成するようにしたので、インサート成形工程において金型60の内部に射出される合成樹脂材料70の熱や圧力により一次容器10が溶融されることを防止して、一次容器10のゲート61の周辺領域における外側面が合成樹脂材料70の熱や圧力によって溶かされて蒸着層13とともにゲート61から離れる方向に向けて流れ、一次容器10のゲート61の周辺領域に蒸着層13が剥がれた部分が生じてしまうことを、さらに確実に防止することができる。
【0061】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0062】
例えば、前記実施の形態においては、インサート成形容器1は、広口瓶様の外形形状となっているが、これに限らず、例えばボトル形状などの種々の形状とすることができる。
【0063】
また、インサート成形容器1は、口部2がキャップ40で閉塞されるものに限らず、口部2にポンプやノズル等の吐出具が装着されるものとすることもできる。
【0064】
さらに、前記実施の形態においては、二次容器20を形成するポリエステル系の合成樹脂材料としてPCTA樹脂を用いているが、これに限らず、例えばPET樹脂やPCT樹脂等の他のポリエステル系の合成樹脂材料を用いるようにしてもよい。また、例えばSAN樹脂(スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂)などの、ポリエステル系以外の他の合成樹脂材料を用いるようにしてもよい。
【0065】
さらに、前記実施の形態においては、カバー部材50を、二次容器20を形成する合成樹脂材料と同材質の合成樹脂材料で形成されたものとしているが、これに限らず、透明な材質であれば他の合成樹脂材料で形成されたものとしてもよい。この場合、二次容器20を形成する合成樹脂材料と同一または近似した屈折率のものを用いるのが好ましい。カバー部材50を、二次容器20を形成する合成樹脂材料と屈折率の近似した合成樹脂材料で形成されたものとすることで、インサート成形後における二次容器20とカバー部材50との境界を不鮮明にして、インサート成形容器1の美観を高めることができる。
【0066】
さらに、前記実施の形態においては、一次容器10は、外側面の全体に蒸着層13が設けられたものとしているが、これに限らず、少なくとも一次容器10の外側面のゲート61に対向する部分の周辺領域に蒸着層13が設けられていれば、一次容器10の外側面の一部に蒸着層13が設けられない部分があってもよい。また、蒸着層13の外側に文字や図柄を示す印刷層が設けられていてもよい。
【0067】
さらに、前記実施の形態においては、一次容器10と二次容器20は、何れも有底円筒状とされているが、これに限らず、例えば多角筒状とするなど、その形状は種々変更可能である。また、一次容器10と二次容器20の何れか一方を有底円筒状とし、他方を多角筒状とするなど、その形状を互いに相違させるようにしてもよい。
【0068】
さらに、前記実施の形態においては、蒸着層13はアルミ蒸着層とされているが、これに限らず、他の蒸着層であってもよいが、光沢のあるものであるのが好ましい。
【0069】
さらに、前記実施の形態においては、ゲート痕23を二次容器20の底壁22に設けるようにしているが、これに限らず、他の部位に設けることもできる。また、前記実施の形態においては、インサート成形においてゲート61を一次容器10の底壁12に対向させるようにしているが、これに限らず、他の部位に対向させることもできる。
【0070】
さらに、前記実施の形態においては、カバー部材50の軸部50bが、一次容器10の底壁12に設けた貫通孔14を貫通する構成としているが、これに限らず、例えば、インサート成形容器1を、リフィル容器30を用いずに内部に直接内容物を収容する構成とした場合には、カバー部材50の軸部50bが、一次容器10の底壁12を貫通しない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 インサート成形容器
2 口部
2a 溝部
2b 雄ねじ
3 胴部
4 底部
10 一次容器
11 側壁
12 底壁
13 蒸着層
14 貫通孔
20 二次容器
21 側壁
22 底壁
23 ゲート痕
24 凸部
30 リフィル容器
31 リフィル容器本体
32 化粧料
33 閉塞体
34 係止部
40 キャップ
41 雌ねじ
50 カバー部材
50a カバー本体部
50b 軸部
60 金型
61 ゲート
62 下型
63 上型
63a 分割型
63b 分割型
63c 柱状部分
64 キャビティ
70 合成樹脂材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7