特許第6873572号(P6873572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873572
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】配線部品の保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20210510BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20210510BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20210510BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B60K1/00
   B60K6/46ZHV
   B60K6/40
   B60R16/02 620Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-182802(P2018-182802)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-50196(P2020-50196A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太
【審査官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−122825(JP,A)
【文献】 特開2013−035445(JP,A)
【文献】 特開2005−104387(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/060195(WO,A1)
【文献】 米国特許第04153127(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 6/40
B60K 6/46
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体前部のコンパートメントに配置された電子制御ユニットに、前記電子制御ユニットと前記コンパートメントの後部に設けられたパネルとの間で配線部品が接続されており、
板金製のブラケットが前記電子制御ユニットの下方から前記電子制御ユニットの後面と対向する位置まで延び、
前記ブラケットの対向部が前記電子制御ユニットのケースの後面に後側から対向し、前記ケースが前記対向部にボルトで締結されることにより、前記電子制御ユニットが前記ブラケットに支持され、
前記配線部品を保護するプロテクタが、前記パネルの前面に前側から対向する位置に配置されて、前記ブラケットの上部に取り付けられ、
前記プロテクタには、前記ブラケットの後端よりも後側に膨出する膨出部が設けられ、
前記ブラケットおよび前記プロテクタと前記電子制御ユニットの前記ケースの後面との間に、隙間が設けられている、配線部品の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)などの車両における配線部品の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車には、車体の前部に設けられるエンジンルームに、エンジンおよび走行のための駆動源である駆動モータを配置したものがある。
【0003】
エンジンルームには、エンジンおよび駆動モータのほか、駆動モータを制御するための電子制御ユニットが配置される。電子制御ユニットには、駆動モータに駆動電流を供給するインバータが内蔵されている。インバータには、約200〜350Vの高電圧を出力するバッテリから延びるハーネスがコネクタを介して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−147046号公報
【特許文献2】特許第4165494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハーネスおよびコネクタには、バッテリの高電圧による電流が流れる。そのため、車体の前面衝突時におけるハーネスの断線やコネクタの破損を防止すべく、ハーネスおよびコネクタを含む配線部品の保護対策が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、車両の前面衝突時に配線部品を良好に保護できる、配線部品の保護構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る配線部品の保護構造は、車両の車体前部のコンパートメントに配置された電子制御ユニットに、電子制御ユニットとコンパートメントの後部に設けられたパネルとの間で配線部品が接続されており、板金製のブラケットが電子制御ユニットの下方から電子制御ユニットの後面と対向する位置まで延び、電子制御ユニットがブラケットに支持され、配線部品を保護するプロテクタが、パネルの前面に前側から対向する位置に配置されて、ブラケットの上部に取り付けられ、プロテクタには、ブラケットの後端よりも後側に膨出する膨出部が設けられ、ブラケットおよびプロテクタと電子制御ユニットとの間に、隙間が設けられている。
【0008】
この構成によれば、車体の前面衝突時に、電子制御ユニットが後方に移動すると、プロテクタの膨出部がパネルに当接する。このとき、プロテクタの膨出部がパネルから受ける荷重がブラケットに伝達され、その荷重により、ブラケットの上部が前方に移動するようにブラケットが変形する。ブラケットの変形により、ブラケットが電子制御ユニットに当接し、また、プロテクタが電子制御ユニットに当接する。
【0009】
ブラケットの変形により荷重が吸収され、残った荷重がブラケットおよびプロテクタが電子制御ユニットに当接することにより分散されるので、プロテクタの変形や破損を抑制でき、プロテクタにより配線部品を良好に保護することができる。
【0010】
また、ブラケットの変形により荷重が吸収されるので、プロテクタに必要とされる強度が低減する。よって、プロテクタのコンパクト化および低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の前面衝突時に配線部品を良好に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る保護構造が採用された車両の車体の前部の平面図である。
図2】パワーユニットおよびPCUを左後側から見た斜視図である。
図3】パワーユニットおよびPCUを左側から見た側面図である。
図4】パワーユニットおよびPCUを右側から見た側面図である。
図5】車体の前面衝突前のPCU、ブラケットおよびプロテクタの位置関係を模式的に示す図である。
図6】車体の前面衝突後のPCU、ブラケットおよびプロテクタの位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
<車体前部の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る保護構造が採用された車両1の車体2の前部の平面図である。
【0015】
車両1は、たとえば、シリーズ方式のハイブリッド車である。シリーズ方式のハイブリッド車では、エンジンの動力が発電機で電力に変換され、発電機で発生する電力がバッテリに蓄えられる。そして、バッテリの出力で駆動モータが駆動されて、その駆動モータの動力が駆動輪に伝達される。
【0016】
エンジンは、車両1の車体2の前部に設けられたエンジンコンパートメント(エンジンルーム)3に配置される。図1には、エンジンが車体2から降ろされた状態が示されている。また、発電機および駆動モータは、ギヤ機構およびデファレンシャルギヤなどとともにユニットケース4に収容されて、パワーユニット5として一体化されている。
【0017】
エンジンコンパートメント3とその後側に設けられる車室とは、ダッシュパネル6によって仕切られている。言い換えれば、エンジンコンパートメント3の後端には、左右方向および上下方向に延びるダッシュパネル6が設けられている。また、ダッシュパネル6の上部のエンジンコンパートメント3側には、左右方向に延びるカウルパネル7が設けられている。
【0018】
パワーユニット5は、ダッシュパネル6の前側であって、エンジンの左側に隣接して配置されている。パワーユニット5の上側には、パワーユニット5を制御するためのPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)8が配置されている。PCU8は、その外殻をなす略直方体形状のケース9内に、駆動モータを駆動するためのインバータやマイコンなどを備えている。
【0019】
<PCUブラケット>
図2は、パワーユニット5およびPCU8を左後側から見た斜視図である。図3は、パワーユニット5およびPCU8を左側から見た側面図である。図4は、パワーユニット5およびPCU8を右側から見た側面図である。
【0020】
パワーユニット5のユニットケース4には、ブラケット11が取り付けられている。ブラケット11は、図2に示されるように、板金製であり、下端部12、対向部13、上端部14、左端部15および右端部16を一体に有している。
【0021】
下端部12は、左右方向に延びる板状をなしている。下端部12は、ユニットケース4の上面に当接して、複数のボルト19でユニットケース4に締結されている。
【0022】
対向部13は、下端部12の前端縁から上方に延びる板状をなしている。対向部13の上部は、PCU8のケース9の後面18に後側から対向している。PCU8は、ケース9がブラケット11の対向部13に複数のボルト17で締結されることにより、ブラケット11に支持されて、前下がりに傾斜した姿勢をなしている。
【0023】
上端部14は、対向部13の上端縁から後方に延びる板状をなしている。
【0024】
左端部15は、下端部12、対向部13および上端部14の各左端縁で下端部12、対向部13および上端部14に連続している。
【0025】
右端部16は、下端部12、対向部13および上端部14の各左端縁で下端部12、対向部13および上端部14に連続している。
【0026】
PCU8のケース9の後面18には、ハーネス21の先端に取り付けられたコネクタ22が接続されている。ハーネス21は、たとえば、車室の後部座席の下側に配置されたバッテリと電気的に接続され、ダッシュパネル6の後方からダッシュパネル6を貫通してダッシュパネル6の前方に延びている。コネクタ22は、ケース9の後面18に後側から接続され、ケース9に対して固定されている。
【0027】
<プロテクタ>
ケース9とダッシュパネル6およびカウルパネル7との間の空間には、プロテクタ31が配置されている。プロテクタ31は、たとえば、樹脂製であり、主部32、上壁部33、左壁部34、左ボルト挿通部35、右壁部36、右ボルト挿通部37および膨出部38を一体に有している。
【0028】
主部32は、略矩形板状をなし、PCU8のケース9の後面18との間にコネクタ22を挟んで、その後面18に対して略平行をなして対向している。
【0029】
上壁部33は、主部32の上端縁から前側(ケース9側)に延出する板状をなし、コネクタ22に対して上側から対向している。上壁部33には、その前端縁から切り欠かれた略半円形状の切欠39が形成されている。
【0030】
左壁部34は、主部32の左端縁から前側に延出する板状をなし、コネクタ22に対して左側から対向している。
【0031】
左ボルト挿通部35は、左壁部34の左面から左側に膨出して、左壁部34の前端縁に沿う方向に中心線が延びる略半円筒状の外面を有している。左ボルト挿通部35には、その長手方向に沿って延びるボルト挿通孔が貫通して形成されている。
【0032】
右壁部36は、主部32の右端縁から前側に延出する板状をなし、コネクタ22に対して右側から対向している。
【0033】
右ボルト挿通部37は、右壁部36の右面から右側に膨出して、右壁部36の前端縁に沿う方向に中心線が延びる略半円筒状の外面を有している。右ボルト挿通部37には、その長手方向に沿って延びるボルト挿通孔が貫通して形成されている。
【0034】
膨出部38は、主部32の上部(略上半分の部分)における左右方向の中央部から後側に膨出している。膨出部38の後端は、ブラケット11の後端よりも後方に位置している。膨出部38の下部は、主部32と略平行に延びる板状をなし、膨出部38の上部は、上側ほど主部32に近づくように傾斜する板状をなしている。膨出部38の左右両側には、複数の三角板状のリブ40が主部32と膨出部38とに跨がって設けられている。
【0035】
プロテクタ31は、2本のボルト41,42を用いて、ブラケット11に取り付けられている。具体的には、プロテクタ31の左ボルト挿通部35および右ボルト挿通部37は、ブラケット11の上端部14の上面に当接している。そして、ボルト41が左ボルト挿通部35のボルト挿通孔に上側から挿入され、ボルト42が右ボルト挿通部37のボルト挿通孔に上側から挿入されて、ボルト41,42の各先端部がブラケット11の上端部14を貫通した状態で、プロテクタ31がブラケット11に対して固定されている。
【0036】
図5は、車体2の前面衝突前のPCU8、ブラケット11およびプロテクタ31の位置関係を模式的に示す図である。
【0037】
プロテクタ31がブラケット11に取り付けられた状態では、PCU8のケース9の後面18とブラケット11との間に隙間G1が設けられている。また、後面18とプロテクタ31との間に隙間G2が設けられている。
【0038】
<作用効果>
図6は、車体2の前面衝突後のPCU8、ブラケット11およびプロテクタ31の位置関係を模式的に示す図である。
【0039】
車体2の前部と他の車両の車体や固定物などとが前後方向に激しく衝突したとき、つまり車体2が激しく前面衝突したときに、パワーユニット5およびPCU8が後方に移動する場合がある。パワーユニット5およびPCU8の後方への移動により、プロテクタ31の膨出部38がダッシュパネル6またはカウルパネル7に当接すると、プロテクタ31がボルト41,42でブラケット11に取り付けられているので、膨出部38がダッシュパネル6またはカウルパネル7から受ける荷重がボルト41,42を介してブラケット11に伝達される。この荷重により、ブラケット11の上部が前方に移動するようにブラケット11が変形する。ブラケット11の変形により、ブラケット11がPCU8のケース9の後面18に当接する。また、その当接後にブラケット11がさらに変形することにより、プロテクタ31がケース9の後面18に当接する。
【0040】
ブラケット11の変形により荷重が吸収され、残った荷重がブラケット11およびプロテクタ31がPCU8のケース9の後面18に当接することにより分散されるので、プロテクタ31の変形や破損を抑制でき、プロテクタ31によりハーネス21およびコネクタ22を良好に保護することができる。
【0041】
また、ブラケット11の変形により荷重が吸収されるので、プロテクタ31に必要とされる強度が低減する。よって、プロテクタ31のコンパクト化および低コスト化を図ることができる。
【0042】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0043】
たとえば、車両1は、シリーズ方式のハイブリッド車に限らず、パラレル方式など他の方式のハイブリッド車であってもよいし、電気自動車であってもよく、それら各種の車両に、本発明に係る保護構造を適用することができる。
【0044】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:車両
2:車体
3:エンジンコンパートメント(コンパートメント)
6:ダッシュパネル(パネル)
7:カウルパネル(パネル)
11:ブラケット
21:ハーネス(配線部品)
22:コネクタ(配線部品)
31:プロテクタ
38:膨出部
G1,G2:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6