(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分散型電源の電力を無限大母線電力系統につながる電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置であって、
前記分散型電源の前記電力を、前記電力系統に対応した前記交流電力に変換する主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
非線形式に対応したカルマンフィルタを用いることにより、前記電力系統との連系点の有効電力値、前記連系点の無効電力値、及び前記連系点の電圧値を基に、前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値と、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値と、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値と、を演算する推定値演算部と、
前記連系点の電圧の指定値が入力され、前記電力系統との連系点の有効電力値、前記連系点の無効電力値、前記連系点の電圧値、前記系統インピーダンスの抵抗成分の推定値、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値、及び前記連系点の電圧の指定値を基に、前記連系点の電圧値を前記指定値に近付けるために前記電力系統に供給する無効電力の無効電力指令値を演算する無効電力演算部と、
所定の有効電力及び前記無効電力指令値に対応する無効電力を出力するように、前記主回路部を駆動する駆動回路と、
を有し、
前記無効電力演算部は、前記推定値演算部の演算結果を基に、前記連系点の電圧値の前記連系点の無効電力値に対する傾きを演算し、前回の連系点の無効電力値と、前回の連系点の電圧値と、前記指定値と、前記傾きと、を基に、前記無効電力指令値を演算する電力変換装置。
前記推定値演算部は、前記系統インピーダンスの抵抗成分、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分、及び前記無限大母線電力系統の電圧値を成分とする状態ベクトルの予測を行い、予測後の前記状態ベクトルの各成分を、それぞれ前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値、及び前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値として演算し、
前記制御部は、演算された前記推定値に基づいて前記主回路部を動作させるとともに、前記主回路部を動作させた時の前記有効電力値、前記無効電力値、及び前記連系点の電圧値を取得し、
前記推定値演算部は、取得された前記有効電力値、前記無効電力値、及び前記連系点の電圧値を基に、前記状態ベクトルを更新する請求項2記載の電力変換装置。
前記推定値演算部は、前記系統インピーダンスの抵抗成分の推定値、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値、及び前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値のそれぞれの所定期間における平均値を算出し、算出した前記平均値を次の所定期間における前記状態ベクトルの初期値とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、分散型電源システム2は、無限大母線電力系統3につながる電力系統4と、分散型電源6と、電力変換装置10と、を備える。電力系統4の電力は、交流電力である。電力系統4の電力は、例えば、三相交流電力である。
【0014】
分散型電源6は、例えば、ソーラーパネルである。分散型電源6の電力は、直流電力である。電力変換装置10は、分散型電源6と接続されるとともに、変圧器12、14などを介して電力系統4と接続される。電力変換装置10は、分散型電源6の直流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統4に供給することにより、分散型電源6を電力系統4と連系させる。
【0015】
分散型電源6は、ソーラーパネルに限ることなく、例えば、風力発電機やガスタービン発電機などの他の発電機でもよい。また、分散型電源6は、例えば、蓄電池やコンデンサなどの電荷蓄積素子でもよい。
【0016】
電力系統4の直近には、分散型電源6及び電力変換装置10の他に、例えば、需要家16(負荷)や他の発電機18などが接続される可能性がある。電力変換装置10は、分散型電源6の出力に基づき、有効電力を電力系統4に供給するとともに、最適な無効電力を電力系統4に供給する。これにより、電力変換装置10は、自身の有効電力の供給、及び需要家16や発電機18の影響によって、電力系統4との連系点LPの電圧が変動してしまうことを抑制する。
【0017】
図2は、実施形態に係る分散型電源システムの電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電力変換装置10は、主回路部40と、制御部42と、を有する。主回路部40は、分散型電源6から供給された直流電力又は交流電力を、電力系統4に対応した交流電力に変換する。制御部42は、主回路部40の動作を制御する。
【0018】
主回路部40は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオン・オフにより、電力の変換を行う。制御部42は、主回路部40の複数のスイッチング素子のオン・オフの切り替えを制御することにより、主回路部40による電力の変換を制御する。主回路部40には、例えば、周知のインバータ回路が用いられる。主回路部40の構成は、上記の電力変換を行うことができる任意の構成でよい。
【0019】
分散型電源システム2は、例えば、計測装置20、22をさらに備える。計測装置20は、分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電圧の電圧値Vdc、及び分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電流の電流値Idcを検出し、検出した電圧値Vdc及び電流値Idcを制御部42に入力する。
【0020】
制御部42は、例えば、直流電力を分散型電源6の最大電力点に追従させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御を行う。制御部42は、例えば、計測装置20によって検出された電圧値Vdc及び電流値Idcを基に、分散型電源6の最大電力点(最適動作点)を抽出し、抽出した最大電力点に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、主回路部40の動作を制御する。
【0021】
但し、電力変換装置10から電力系統4に供給する有効電力の決定方法は、MPPT方式に限るものではない。電力変換装置10から電力系統4に供給する有効電力は、例えば、上位のコントローラなどから入力される有効電力指令値に基づいて決定してもよい。制御部42は、入力された有効電力指令値に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、主回路部40の動作を制御してもよい。
【0022】
計測装置22は、電力変換装置10の電力系統4との連系点LPの有効電力値Pと、連系点LPの無効電力値Qと、連系点LPの電圧値Vsと、を検出し、検出した有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを制御部42に入力する。
【0023】
制御部42は、推定値演算部50と、無効電力演算部52と、駆動回路54と、を有する。制御部42は、計測装置22から入力された有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを推定値演算部50に入力する。
【0024】
推定値演算部50は、計測装置22から入力された有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを基に、電力系統4の系統インピーダンスの抵抗成分Rの推定値^Rと、電力系統4の系統インピーダンスのリアクタンス成分Xの推定値^Xと、無限大母線電力系統3の電圧値Vrの推定値^Vrと、を演算する。なお、^Rなどの推定値を表す^(ハット)は、
図2などに表すように、Rなどの直上に表記されるものであるが、明細書中においては、書式形式の都合により、^Rのように、ずらして表記するものとする。
【0025】
推定値演算部50は、換言すれば、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを基に、電力系統4の系統特性を推定する。この際、推定値演算部50は、
図2に表したように、電力系統4の系統モデルを系統インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xのみの最も簡素な系統モデルとして考える。
【0026】
推定値演算部50は、非線形式に対応したカルマンフィルタを用いることにより、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsから各推定値^R、^X、^Vrを演算する。より具体的には、推定値演算部50は、拡張カルマンフィルタを用いることにより、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsから各推定値^R、^X、^Vrを演算する。推定値演算部50は、演算した各推定値^R、^X、^Vrを無効電力演算部52に入力する。また、推定値演算部50は、演算に用いた有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsも、各推定値^R、^X、^Vrとともに無効電力演算部52に入力する。
【0027】
なお、非線形式に対応したカルマンフィルタは、拡張カルマンフィルタに限ることなく、例えば、Unscented カルマンフィルタやアンサンブル カルマンフィルタなどでもよい。但し、拡張カルマンフィルタを用いることにより、これらに比べて推定値演算部50での演算負荷を抑えることができる。
【0028】
無効電力演算部52には、推定値演算部50から各推定値^R、^X、^Vr、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsが入力されるとともに、連系点LPの電圧の指定値Vsrが入力される。連系点LPの電圧の指定値Vsrは、例えば、ネットワークなどを介して上位のコントローラから無効電力演算部52に入力される。連系点LPの電圧の指定値Vsrは、例えば、オペレータなどが手動で設定できるようにしてもよいし、予め設定された一定の値などでもよい。
【0029】
無効電力演算部52は、推定値演算部50から入力された各推定値^R、^X、^Vr、有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vs、及び上位のコントローラなどから入力された連系点LPの電圧の指定値Vsrを基に、電力系統4に供給する無効電力の無効電力指令値Qnを演算する。無効電力指令値Qnは、連系点LPの電圧値Vsを指定値Vsrに近付けるために、電力系統4に供給する無効電力の指令値である。無効電力演算部52は、演算した無効電力指令値Qnを駆動回路54に入力する。
【0030】
駆動回路54には、無効電力演算部52で演算された無効電力指令値Qnが入力されるとともに、計測装置20で計測された分散型電源6の電圧値Vdc及び電流値Idcが入力される。
【0031】
駆動回路54は、電圧値Vdc及び電流値Idcに基づくMPPT方式の制御によって有効電力を決定し、決定した有効電力及び無効電力指令値Qnに対応する無効電力を出力するように、主回路部40を駆動する。駆動回路54は、主回路部40の複数のスイッチング素子のオン・オフを切り替えることにより、決定した有効電力及び無効電力指令値Qnに対応する無効電力を、主回路部40から電力系統4に供給する。
【0032】
計測装置22及び推定値演算部50は、定期的に有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを取得する。推定値演算部50は、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを取得する毎に、各推定値^R、^X、^Vrを演算(予測)するとともに、予測した状態と観測による情報から現在の状態を更新する。
【0033】
無効電力演算部52は、推定値演算部50から各推定値^R、^X、^Vrが入力される毎に、無効電力指令値Qnを演算する。駆動回路54は、無効電力指令値Qnが入力される毎に、主回路部40の制御信号を生成し、有効電力及び無効電力を主回路部40から電力系統4に供給する。制御部42は、上記の処理を繰り返すことにより、分散型電源6に応じた有効電力を電力系統4に供給するとともに、連系点LPの電圧の指定値Vsrに応じた無効電力を電力系統4に随時供給する。
【0034】
このように、有効電力及び無効電力を電力系統4に供給することにより、電力変換装置10から電力系統4への有効電力の供給や、需要家16及び発電機18などの影響による連系点LPの電圧の変動を抑制することができる。例えば、連系点LPの電圧値Vsの変動を指定値Vsrに対して±2%以内に抑えることができる。
【0035】
電力変換装置10では、拡張カルマンフィルタ(非線形式に対応したカルマンフィルタ)を用いて各推定値^R、^X、^Vrを演算している。これにより、例えば、線形の近似式を用いて電力系統4の系統特性を推定する方法と比べて、電力系統4の系統特性をより適切に推定することができる。
【0036】
例えば、分散型電源6の設置場所が遠方で、系統インピーダンスの抵抗成分R及びリアクタンス成分Xが大きい場合でも、電力系統4の系統特性をより適切に推定し、連系点LPの電圧変動を抑制することができる。
【0037】
さらには、工場などの負荷(需要家16)や他の分散型電源(発電機18)が直近にある場合にも、これらの影響を系統特性の変動として推定し、対応する無効電力を連系点LPに注入することができる。従って、負荷や他の分散型電源が直近にある場合にも、分散型電源6の連系点LPの電圧をより適切に指定値Vsrに制御することができる。
【0038】
次に、推定値演算部50による拡張カルマンフィルタを用いた各推定値^R、^X、^Vrの演算について説明する。
【0039】
連系点LPの電圧値Vsは、次の(1)式の非線形式で表すことができる。この非線形式に基づいて拡張カルマンフィルタを適用することにより、各推定値^R、^X、^Vrを演算する。
【数1】
拡張カルマンフィルタの状態方程式は、次の(2)式で表すことができる。そして、拡張カルマンフィルタの出力方程式は、次の(3)式で表すことができる。
【数2】
【数3】
(2)式において、xは、次の(4)式に表すように、電力系統4の系統インピーダンスの抵抗成分R、リアクタンス成分X、及び無限大母線電力系統3の電圧値Vrを成分とする状態ベクトルである。但し、(4)式において、「T」は、転置を表す。
【数4】
(2)式において、fは、状態ベクトルxの非線形関数である。(2)式において、wは、システムノイズのベクトルである。また、(2)式及び(3)式において、添え字の「k」は、時刻を表す。換言すれば、添え字「k」は、定期的に取得される有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsに対応するデータの順序である。「k−1」は、「k」の1つ前のデータを表す。従って、(2)式は、1つ前の状態ベクトルxから現在の状態ベクトルxを推定することを表している。添え字「k」は、以下の各式においても同様である。
【0040】
(3)式において、zは、電圧値Vsの観測値である。(3)式において、hは、xの非線形関数である。また、(3)式において、vは、観測ノイズである。(3)式は、状態ベクトルxに対する観測値zの反応を表している。この例において、h(x)は、連系点LPの予測電圧値Vsである(h(x)=Vs)。すなわち、観測値zは、連系点LPの電圧値Vsに観測ノイズvを足したものと考えることができる。観測値zは、計測装置22による電圧値Vsの測定値である。
【0041】
拡張カルマンフィルタは、予測ステップと、更新ステップと、を有する。推定値演算部50は、予測ステップにおいて、次の(5)式により、状態ベクトルxの予測を行う。
【数5】
(5)式において、x
fは、状態ベクトルxの予測値を表す。x
aは、更新ステップにおいて更新された状態ベクトルxを表す。このように、この例では、更新後の状態ベクトルx
aを、予測後の状態ベクトルx
fとして用いる。
【0042】
推定値演算部50は、この予測後の状態ベクトルx
fの各成分を、それぞれ各推定値^R、^X、^Vrとして演算する。すなわち、各推定値^R、^X、^Vrは、換言すれば、更新後の状態ベクトルx
aの各成分である。また、推定値演算部50は、状態ベクトルxの初期値を有し、更新ステップが行われていない初期状態においては、この初期値を予測後の状態ベクトルx
fとして用いる。制御部42は、このように演算された各推定値^R、^X、^Vrに基づき、上記のように主回路部40の動作を制御する。
【0043】
状態ベクトルxの初期値は、一定の値でもよいし、例えば、分散型電源6がソーラーパネルである場合などには、一日分の各推定値^R、^X、^Vrの平均値を算出し、この各推定値^R、^X、^Vrの平均値を次の日の状態ベクトルxの初期値として用いてもよい。推定値演算部50は、各推定値^R、^X、^Vrのそれぞれの所定期間における平均値を算出し、算出した各推定値^R、^X、^Vrの平均値を次の所定期間における状態ベクトルxの初期値とする機能を有してもよい。
【0044】
推定値演算部50は、予測ステップにおいて、状態ベクトルxの予測を行うとともに、次の(6)式により、共分散行列P
fを予測する。共分散行列P
fは、システムノイズwの影響を考慮した予測後の状態ベクトルx
fの誤差共分散行列である。
【数6】
(6)式において、J
f(x)は、非線形関数fのヤコビアンで定義した行列であり、この例では、次の(7)式に表すように、(1,1,1)の対角行列である。
【数7】
(6)式において、P
k−1は、1つ前の共分散行列、又は共分散行列の初期値である。(6)式において、J
f(x)
Tは、ヤコビアン行列J
f(x)の転置行列である。また、(6)式において、Q
k−1は、システムノイズwの共分散行列である。システムノイズwの共分散行列Q
k−1は、次の(8)式に表すように、システムノイズw及びその転置行列の内積の期待値である。
【数8】
制御部42は、予測ステップにおいて演算された各推定値^R、^X、^Vrに基づいて主回路部40を動作させるとともに、主回路部40を動作させた時の有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを取得する。推定値演算部50は、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsが取得された後、更新ステップを実行する。更新ステップにおいて、推定値演算部50は、取得された有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを基に、状態ベクトルxを更新する。
【0045】
推定値演算部50は、更新ステップにおいて、まず、取得した有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsの各測定値と共分散行列P
fとを基に、状態ベクトルxを更新するためのカルマンゲインの最適化を行う。カルマンゲインは、次の(9)式によって求められる。
【数9】
(9)式において、J
h(x)は、非線形関数hのヤコビアンで定義した行列である。この例において、非線形関数h(x)は、連系点LPの電圧値Vsであるから、J
h(x)は、次の(10)式のように表される。
【数10】
(10)式において、∂Vs/∂R、∂Vs/∂X、∂Vs/∂Vrは、上記の(1)式から、それぞれ次の(11)式、(12)式、(13)式のように表される。
【数11】
【数12】
【数13】
但し、(11)式、(12)式、(13)式において、Bは、次の(14)式、Cは、次の(15)式である。
【数14】
【数15】
また、上記の(9)式において、J
h(x)
Tは、ヤコビアン行列J
h(x)の転置行列である。(9)式において、R
kは、観測ノイズvの共分散行列である。観測ノイズvの共分散行列R
kは、次の(16)式に表すように、観測ノイズv及びその転置行列の内積の期待値である。
【数16】
(9)式において、[J
h(x)P
fJ
h(x)
T+R
k]
−1の部分は、換言すれば、予測誤差(z−h(x
f))に対する誤差共分散である。
【0046】
推定値演算部50は、更新ステップにおいて、カルマンゲインの最適化を行った後、このカルマンゲインを用い、次の(17)式により、状態ベクトルxを更新する。
【数17】
(17)式において、h(x
f)は、予測後の状態ベクトルx
fから(1)式を用いて演算した電圧値Vsの予測値である。すなわち、推定値演算部50は、連系点LPの電圧値Vsの測定値zと、予測後の状態ベクトルx
fを用いて演算した連系点LPの電圧値Vsの予測値h(x
f)と、を基に、連系点LPの電圧値Vsの予測誤差を求める。推定値演算部50は、測定値zから予測値h(x
f)を差し引くことで、予測誤差を求める。
【0047】
推定値演算部50は、この予測誤差にカルマンゲインを乗じることにより、状態ベクトルxの補正値を算出し、その補正値を予測後の状態ベクトルx
fに加えることにより、更新後の状態ベクトルx
aを求める。これにより、予測誤差を考慮して次の状態ベクトルxの予測を行うことができる。
【0048】
この際、推定値演算部50は、予測誤差(z−h(x
f))の絶対値が、所定値以上か否かを判定する。推定値演算部50は、所定値以上である場合、前回の共分散行列P
k−1を初期値にリセットする。共分散行列の初期値は、例えば、diag(200,200,200)などの比較的大きな値の共分散行列である。これにより、系統特性が変化した場合などに、共分散行列P
k−1の収束を早めることができる。
【0049】
推定値演算部50は、更新ステップにおいて、状態ベクトルxを更新するとともに、次の(18)式により、共分散行列Pも併せて更新する。(18)式に表したように、推定値演算部50は、最適化したカルマンゲインを基に共分散行列Pを更新する。
【数18】
推定値演算部50は、上記の予測ステップと更新ステップとを繰り返し実行する。これにより、拡張カルマンフィルタによって各推定値^R、^X、^Vrを予測し、予測に基づいて主回路部40の動作を制御することができる。これにより、連系点LPの電圧値Vsの変動を抑制することができる。なお、(18)式において、Iは、単位行列である。
【0050】
次に、無効電力演算部52による無効電力指令値Qnの演算について説明する。
図3は、無効電力演算部の動作の一例を模式的に表すグラフ図である。
図3の横軸は、連系点LPの無効電力値Qであり、
図3の縦軸は、連系点LPの電圧値Vsである。
【0051】
無効電力演算部52は、推定値演算部50から各推定値^R、^X、^Vr、有効電力値P、無効電力値Q、及び電圧値Vsを入力されると、
図3に表したように、推定値演算部50の演算結果を基に、電圧値Vsの無効電力値Qに対する傾きKを演算する。無効電力演算部52は、次の(19)式により、傾きKを演算する。なお、(19)式において、Bは、(14)式に表したものであり、Cは、(15)式で表したものである。
【数19】
次回の連系点LPの電圧値をVs
(n)、計測装置22で計測された前回の連系点LPの電圧値をVs
(n−1)、次回の連系点LPの無効電力値をQ
n、計測装置22で計測された前回の連系点LPの無効電力値をQ
n−1とする時、次回の連系点LPの電圧値Vs
(n)は、次の(20)式で表すことができる。
【数20】
従って、次回の連系点LPの電圧値をVs
(n)を指定値Vsrとした場合、次回の連系点LPの無効電力値Q
nは、次の(21)式で表すことができる。
【数21】
このように、無効電力演算部52は、推定値演算部50から入力された各値を基に、傾きKを演算するとともに、次回の連系点LPの無効電力値Q
nを演算し、この次回の連系点LPの無効電力値Q
nを無効電力指令値Qnとして演算する。
【0052】
図4(a)〜
図4(c)は、実施形態に係る分散型電源システムのシミュレーション結果の一例を模式的に表すグラフ図である。
図4(a)の縦軸は、連系点LPの電圧値Vsと、無限大母線電力系統3の電圧値Vrである。このシミュレーションでは、指定値Vsrを無限大母線電力系統3の電圧値Vrとしている。
図4(b)の縦軸は、無効電力値Qと、連系点LPの電圧値Vsを無限大母線電力系統3の電圧値Vrとするための最適無効電力値Qopである。
図4(c)の縦軸は、傾きKである。
図4(a)〜
図4(c)の横軸は、時間である。また、
図4(a)、
図4(b)において、縦軸は、定格を「1p.u.」とする単位当たりの量で表している。
【0053】
最適無効電力値Qopは、指定値Vsrを^Vrとすると、次の(22)式で表すことができる。なお、(22)式において、「sign」は、符号関数である。
【数22】
図4(a)〜
図4(c)に表したように、シミュレーションでは、無効電力指令値Qnの無効電力を連系点LPに注入することで、連系点LPの電圧値Vsは、無限大母線電力系統3の電圧値Vrに収束し、連系点LPの無効電力値Qは、最適無効電力値Qopに収束した。
【0054】
このように、本実施形態に係る分散型電源システム2及び電力変換装置10では、適切な無効電力を連系点LPに注入することで、連系点LPの電圧を適切に指定値Vsrに制御することができる。
【0055】
また、最適無効電力値Qopにより、Vs=Vrが達成できるので、安定限界電力の増大化を可能とすることもできる。
【0056】
図5は、実施形態に係る分散型電源システムの動作の一例を模式的に表すグラフ図である。
電力変換装置10は、力率を制御可能な可制御範囲を有する。電力変換装置10における力率の可制御範囲は、例えば、±0.85以上の範囲である。すなわち、遅れ力率及び進み力率の双方で0.85以上1.00以下の範囲である。
【0057】
このため、電力変換装置10は、
図5に表したように、連系点LPの電圧値Vsにおいても、制御可能な可制御範囲と、制御不可能な非可制御範囲と、を有する。なお、
図5では、R=0.1(pu)、X=0.2(pu)、Vr=1(pu)、力率の可制御範囲を±0.85以上とした場合の、電圧値Vsの可制御範囲の一例を模式的に表している。
【0058】
無効電力演算部52は、無効電力指令値Qnを演算した結果、演算した無効電力指令値Qnが可制御範囲を超える場合、可制御範囲内において取り得る最大又は最小の無効電力値を無効電力指令値Qnとして設定する。
【0059】
次に、本願発明者の行ったシミュレーションの一例について説明する。
図6は、シミュレーションに用いた干渉系統図である。
図6に表したように、シミュレーションでは、第1及び第2の2つの系統(電力変換装置10)が電力系統4に接続されている場合について検討する。
【0060】
図7(a)〜
図7(f)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図7(a)は、第1系統の出力する有効電力P10、及び第1系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P1xの時間変化を模式的に表す。
図7(b)は、第2系統の出力する有効電力P20、及び第2系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P2xの時間変化を模式的に表す。
図7(c)は、第1系統の出力する無効電力Q10、及び第1系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q1xの時間変化を模式的に表す。
図7(d)は、第2系統の出力する無効電力Q21、及び第2系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q2xの時間変化を模式的に表す。
図7(e)は、第1系統の出力電圧Vs1の時間変化を模式的に表す。
図7(f)は、第2系統の出力電圧Vs2の時間変化を模式的に表す。
【0061】
図7(a)〜
図7(f)では、第1系統及び第2系統が力率1で運転し、第1系統の有効電力の出力によって、連系点の有効電力が二次関数状に変化した場合の各系統の電圧の変化を検討している。
【0062】
各系統を力率1で運転させた場合、
図7(e)に表したように、連系点の有効電力の変化にともなって、第1系統の出力電圧が変化してしまう。そして、
図7(f)に表したように、第1系統の出力電圧だけでなく、第2系統の出力電圧も変化してしまう。これにより、連系点の電圧も変動してしまう。
【0063】
図8(a)〜
図8(e)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図8(a)は、連系点の有効電力値P、及び最適無効電力値Qopの時間変化を模式的に表す。
図8(b)は、連系点の電圧値Vsの時間変化を模式的に表す。
図8(c)は、系統インピーダンスの抵抗成分Rの推定値^R、及び電力系統4の系統インピーダンスのリアクタンス成分Xの推定値^Xの時間変化を模式的に表す。
図8(d)は、無限大母線電力系統3の電圧値Vrの推定値^Vrの時間変化を模式的に表す。
図8(e)は、(z−h(x
f))で表される予測誤差errの時間変化を模式的に表す。
【0064】
図8(a)〜
図8(e)は、
図7(a)及び
図7(b)と同様に有効電力が変化する条件において、指定値Vsrを無限大母線電力系統3の電圧値Vrとして傾きK及び無効電力指令値Qnを演算し、無効電力指令値Qnに基づく無効電力を連系点に注入する制御を第1系統に行わせた場合の第1系統の各値を表している。
【0065】
図8(b)に表したように、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行った場合には、力率1の定力率制御を行う場合と比べて、電圧値Vsの変動を抑制することができる。
【0066】
図9(a)〜
図9(c)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図9(a)は、第1系統の出力する有効電力P10、第1系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P1x、第1系統の出力する無効電力Q10、及び第1系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q1xの時間変化を模式的に表す。
図9(b)は、第1系統の出力電圧Vs1の時間変化を模式的に表す。
図9(c)は、第1系統の力率Pf1の時間変化を模式的に表す。
【0067】
図9(a)〜
図9(c)では、第1系統及び第2系統が力率1で運転し、第1系統の有効電力の出力によって、第1系統の出力電圧Vs1が波打つように変化した場合を検討している。
図9(c)に表したように、この例では、第1系統の出力電圧Vs1の変化により、第1系統の力率Pf1が、遅れ力率から進み力率に変化している。
【0068】
図10(a)〜
図10(g)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図10(a)は、第1系統の出力する有効電力P10、第1系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P1x、第1系統の出力する無効電力Q10、及び第1系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q1xの時間変化を模式的に表す。
図10(b)は、第1系統の出力電圧Vs1の時間変化を模式的に表す。
図10(c)は、第1系統の力率Pf1の時間変化を模式的に表す。
図10(d)は、系統インピーダンスの抵抗成分Rの推定値^R、及び電力系統4の系統インピーダンスのリアクタンス成分Xの推定値^Xの時間変化を模式的に表す。
図10(e)は、無限大母線電力系統3の電圧値Vrの推定値^Vrの時間変化を模式的に表す。
図10(f)は、傾きKの時間変化を模式的に表す。
図10(g)は、予測誤差errの絶対値の時間変化を模式的に表す。
【0069】
図10(a)〜
図10(g)は、
図9(b)に表したように第1系統の出力電圧Vs1が変化する条件において、指定値Vsrを1.05(pu)として傾きK及び無効電力指令値Qnを演算し、無効電力指令値Qnに基づく無効電力を連系点に注入する制御を第1系統に行わせた場合の第1系統の各値を表している。
【0070】
図10(b)に表したように、非可制御範囲においては、出力電圧Vs1を指定値Vsrに制御できていないものの、徐々に出力電圧Vs1を指定値Vsrに近付け、可制御範囲においては、出力電圧Vs1を指定値Vsrに制御できている。このように、無限大母線電力系統3の電圧値Vrと異なる所定の値に指定値Vsrを設定した場合にも、力率1の定力率制御を行う場合と比べて、電圧値Vsの変動を抑制することができる。また、この例では、
図10(c)に表したように、第1系統の力率Pf1は、遅れ力率で制御できている。
【0071】
図11(a)〜
図11(f)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図11(a)は、第2系統の出力する有効電力P20、第2系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P2x、第2系統の出力する無効電力Q21、及び第2系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q2xの時間変化を模式的に表す。
図11(b)は、第2系統の出力電圧Vs2の時間変化を模式的に表す。
図11(c)は、第2系統の力率Pf2の時間変化を模式的に表す。
図11(d)は、第2系統の出力する有効電力P20、第2系統の有効電力の出力にともなう連系点の有効電力の変化分P2x、第2系統の出力する無効電力Q21、及び第2系統の無効電力の出力にともなう連系点の無効電力の変化分Q2xの時間変化を模式的に表す。
図11(e)は、第2系統の出力電圧Vs2の時間変化を模式的に表す。
図11(f)は、第2系統の力率Pf2の時間変化を模式的に表す。
【0072】
図11(a)〜
図11(c)は、第1系統を力率1で運転させた場合の第2系統の各値を模式的に表している。
図11(d)〜
図11(f)は、第1系統を
図10に表した制御で運転させた場合の第2系統の各値を模式的に表している。
【0073】
図11(b)及び
図11(e)に表したように、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を第1系統で行うことにより、第2系統の出力電圧Vs2の変動も抑制することができる。
【0074】
図11(c)及び
図11(f)に表したように、
図11では、第2系統を力率1で運転させている。第2系統においても、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行ってもよい。これにより、第2系統の出力電圧Vs2の変動を、より適切に抑制することができる。
【0075】
図12は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図12は、第2系統で傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行った場合の無効電力Qf、及び第2系統の無効電力の理論解Qsを模式的に表している。理論解Qsは、第2系統の出力電圧Vs2を無限大母線電力系統3の電圧値Vrとするための最適無効電力の理論解である。理論解Qsは、換言すれば、最適無効電力値Qopである。また、無効電力Qfの演算では、指定値Vsrを無限大母線電力系統3の電圧値Vrとしている。
【0076】
図12に表したように、無効電力Qfは、可制御範囲においては、理論解Qsとほぼ一致している。従って、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行うことにより、可制御範囲においては、第2系統の出力電圧Vs2の変動も適切に抑制することができる。
【0077】
このように、分散型電源システム2において、電力系統4と連系する複数台の電力変換装置10で、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算し、無効電力指令値Qnに基づく適切な無効電力を連系点に注入する制御を行うことにより、送電による電圧上昇をより抑制し、Vs=Vrをより達成し易くすることができる。例えば、電力系統4側に設置する無効電力補償装置の台数を減らすなど、電力系統4側での電圧管理機能の簡素化を図ることができる。
【0078】
図13(a)〜
図13(g)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図13(a)〜
図13(g)のそれぞれは、
図10(a)〜
図10(g)のそれぞれと同じ特性の時間変化を模式的に表している。
【0079】
図13(a)〜
図13(g)は、
図9(b)に表したように第1系統の出力電圧Vs1が変化する条件において、指定値Vsrを1.00(pu)として傾きK及び無効電力指令値Qnを演算し、無効電力指令値Qnに基づく無効電力を連系点に注入する制御を第1系統に行わせた場合の第1系統の各値を表している。
【0080】
図13(b)に表したように、指定値Vsrを1.00(pu)とした場合にも、可制御範囲においては、出力電圧Vs1を指定値Vsrに制御できている。また、
図13(c)に表したように、この例では、第1系統の力率Pf1が、進み力率で制御されている。このように、進み力率となる条件においても、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算し、無効電力指令値Qnに基づく無効電力を連系点に注入する制御を行うことで、出力電圧Vs1を指定値Vsrに適切に制御することができる。
【0081】
図14(a)〜
図14(f)は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図14(a)〜
図14(f)のそれぞれは、
図11(a)〜
図11(f)のそれぞれと同じ特性の時間変化を模式的に表している。
【0082】
図14(b)及び
図14(e)に表したように、進み力率となる条件においても、遅れ力率の場合と同様に、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を第1系統で行うことにより、第2系統の出力電圧Vs2の変動も抑制することができる。
【0083】
図15は、シミュレーションの一例を模式的に表すグラフ図である。
図15は、
図13の条件で第1系統を運転させた場合に、第2系統で傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行った場合の無効電力Qf、及び第2系統の無効電力の理論解Qsを模式的に表している。
【0084】
図15に表したように、進み力率となる条件においても、遅れ力率の場合と同様に、無効電力Qfは、可制御範囲においては、理論解Qsとほぼ一致している。従って、傾きK及び無効電力指令値Qnを演算する制御を行うことにより、可制御範囲においては、第2系統の出力電圧Vs2の変動も適切に抑制することができる。
【0085】
図16(a)及び
図16(b)は、実施形態に係る分散型電源システムの動作の一例を模式的に表すグラフ図である。
図16(a)は、定力率制御を行った場合の有効電力Ppf1と、拡張カルマンフィルタを用いた推定を行った場合の有効電力Ppf2の一例をそれぞれ模式的に表している。
【0086】
図16(b)は、定力率制御を行った場合の無効電力Qpf1と、拡張カルマンフィルタを用いた推定を行った場合の無効電力Qpf2の一例をそれぞれ模式的に表している。
【0087】
図16(a)及び
図16(b)に表したように、拡張カルマンフィルタを用いた推定を行った場合には、定力率制御を行った場合と比べて、無効電力を小さくし、力率を改善することができる。従って、分散型電源6から電力系統4により効率良く有効電力を供給することができる。例えば、分散型電源6のオーナーにおいては、電力の売却利益を高めることができる。
【0088】
このように、本実施形態に係る分散型電源システム2及び電力変換装置10では、適切な無効電力を連系点LPに注入することで、連系点LPの電圧Vsの変動をより適切に抑制できるとともに、出力する交流電力の力率を改善し、より効率良く有効電力を電力系統4に供給することができる。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、分散型電源システム2及び電力変換装置10に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0090】
その他、本発明の実施の形態として上述した分散型電源システム2及び電力変換装置10を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての分散型電源システム及び電力変換装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0091】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
分散型電源の電力を無限大母線電力系統につながる電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置であって、前記分散型電源の前記電力を、前記電力系統に対応した前記交流電力に変換する主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、非線形式に対応したカルマンフィルタを用いることにより、前記電力系統との連系点の有効電力値、前記連系点の無効電力値、及び前記連系点の電圧値を基に、前記電力系統の系統インピーダンスの抵抗成分の推定値と、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値と、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値と、を演算する推定値演算部と、前記連系点の電圧の指定値が入力され、前記電力系統との連系点の有効電力値、前記連系点の無効電力値、前記連系点の電圧値、前記系統インピーダンスの抵抗成分の推定値、前記系統インピーダンスのリアクタンス成分の推定値、前記無限大母線電力系統の電圧値の推定値、及び前記連系点の電圧の指定値を基に、前記連系点の電圧値を前記指定値に近付けるために前記電力系統に供給する無効電力の無効電力指令値を演算する無効電力演算部と、所定の有効電力及び前記無効電力指令値に対応する無効電力を出力するように、前記主回路部を駆動する駆動回路と、を有する電力変換装置が提供される。これにより、分散型電源の連系点の電圧をより適切に指定値に制御できる電力変換装置及び分散型電源システムが提供される。