特許第6873588号(P6873588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6873588
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】活性ガス生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   H05H1/24
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-522745(P2020-522745)
(86)(22)【出願日】2019年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2019044356
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】有田 廉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙資
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6239483(JP,B2)
【文献】 特開2003−303814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間に供給された原料ガスを活性化して得られる活性ガスを生成する活性ガス生成装置であって、
第1の電極構成部と
前記第1の電極構成部の下方に設けられる第2の電極構成部とを備え、
前記第1の電極構成部は、第1の電極用誘電体膜と前記第1の電極用誘電体膜の上面上に形成される第1の金属電極とを有し、前記第2の電極構成部は、第2の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜の下面上に形成される第2の金属電極とを有し、前記第1及び第2の金属電極間に交流電圧が印加され、前記第1及び第2の電極用誘電体膜が対向する誘電体空間内において、前記第1及び第2の金属電極が平面視重複する領域を前記放電空間として含み、
前記第2の電極用誘電体膜は、前記活性ガスを外部に噴出するためのガス噴出孔を有し、前記放電空間から前記ガス噴出孔に至る経路が活性ガス流通経路として規定され、
前記第1の電極構成部は、
前記第1の電極用誘電体膜の上面上に前記第1の金属電極と独立して形成される補助導電膜をさらに有し、
前記補助導電膜は平面視して前記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、前記補助導電膜は接地電位に設定され、
前記活性ガス生成装置は、
前記誘電体空間内において、前記放電空間と前記ガス噴出孔との間に、前記活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる活性ガス用補助部材をさらに備えることを特徴する、
活性ガス生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の活性ガス生成装置であって、
前記誘電体空間内において、前記原料ガスが前記放電空間に至る経路が原料ガス流通経路として規定され、
前記活性ガス生成装置は、
前記誘電体空間内において、前記原料ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる原料ガス用補助部材をさらに備えることを特徴する、
活性ガス生成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の活性ガス生成装置であって、
前記原料ガスは、水素、窒素、酸素、弗素、塩素ガスのうち少なくとも一つを含むガスである、
活性ガス生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行平板方式の誘電体バリア放電で活性ガスを生成し、後段の処理空間に活性ガスを供給する活性ガス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平行平板方式の誘電体バリア放電で活性ガスを生成する活性ガス生成装置は、例えば特許文献1で開示されている。
【0003】
図8は特許文献1で開示された従来の窒素ラジカル生成システム300の概略構成を示す説明図である。窒素ラジカル生成システム300は、窒素ラジカル生成装置301、交流電圧源308及び処理チャンバー312から構成されている。
【0004】
活性ガス生成装置である窒素ラジカル生成装置301は、誘電体バリア放電を利用して、窒素ガスから活性ガスである窒素ラジカルを生成する。
【0005】
窒素ラジカル生成装置301内の空間302には、誘電体バリア放電を生成するための放電ユニットが配設されている。ここで、上記放電ユニットは、第一電極303及び第二電極304から構成される。
【0006】
第二電極304は、窒素ラジカル生成装置301の底面の中央部に設置されている。そして、第二電極304に対面して、第一電極303が配設されている。ここで、第一電極303と第二電極304とは、所定の間隔だけ離れて対面している。つまり、第一電極303と第二電極304の間には、放電空間305が形成されている。
【0007】
また、放電空間305に面する第一電極303の主面(放電空間形成面)及び放電空間305に面する第二電極304の主面(放電空間形成面)の少なくとも一方には、誘電体(図8において図示を省略している)が配設されている。
【0008】
上記放電ユニットは、第一電極303と第二電極304との間の放電空間305に誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0009】
窒素ラジカル生成装置301の上面中央部において、ガス供給口306が配設されている。ガス供給口306を介して、窒素ラジカル生成装置301の外部から、窒素ラジカル生成装置301内の空間302へと、原料ガスである窒素ガスが供給される。
【0010】
第二電極304の中央部には、窒素ラジカルガスが、窒素ラジカル生成装置301外へと出力する貫通孔である、ガス放出部307が一つ穿設されている。
【0011】
交流電圧源308は、上記放電ユニットに対して、高圧の交流電圧を印加する。交流電圧源308の一方端子は、第一電極303と電気的に接続される。また、交流電圧源308の他方端子は、窒素ラジカル生成装置301の筐体(接地)と電気的に接続されている。なお、上記から分かるように、窒素ラジカル生成装置301の底面には、第二電極304が配設されている。したがって、交流電圧源308の他方端子は、窒素ラジカル生成装置301を介して、第二電極304と電気的に接続される。
【0012】
つまり、交流電圧源308は、第一電極303と第二電極304との間に、高圧の交流電圧を印加する。そして、交流電圧の印加により、第一電極303と第二電極304との間の放電空間305において、誘電体バリア放電が発生する。
【0013】
ガス供給口306から供給された窒素ガスは、各電極303,304の外周部から放電空間305内に侵入する。そして、窒素ガスは、各電極303,304の外周部から内部へと伝搬する。放電空間305内に発生している誘電体バリア放電によって、伝搬中の窒素ガスから窒素ラジカルガスが生成される。生成された窒素ラジカルガスは、ガス放出部307から、窒素ラジカル生成装置301外へと出力される。
【0014】
また、図8に示すように、窒素ラジカル生成装置301の下側には、処理チャンバー312が配設されている。ここで、窒素ラジカル生成装置301の底面と処理チャンバー312の上面とが接している。
【0015】
また、窒素ラジカル生成装置301と処理チャンバー312との間には、オリフィス部309が配設されている。オリフィス部309は、細孔310を介してガス放出部307と処理チャンバー312内の処理室311とを接続する。
【0016】
オリフィス部309の細孔310の径は、ガス放出部307の孔の径よりも小さい。より具体的に、オリフィス部309の細孔310の入り口の径は、ガス放出部307の孔の出口の径よりも小さい。したがって、オリフィス部309の細孔310により、窒素ラジカル生成装置301内の空間302と処理室311との間における圧力区分が、形成される。
【0017】
処理チャンバー312内の処理室311では、窒素ラジカル生成装置301で生成され、当該窒素ラジカル生成装置301(具体的には、ガス放出部307)から出力される窒素ラジカルを利用した処理が実施される。
【0018】
図8に示すように、処理チャンバー312内の処理室311には、サセプタ314が配設されており、当該サセプタ314上には、処理対象物であるウェハ(基板)313が載置されている。処理室311内の空間が、窒素ラジカル生成装置301の後段に配置されウェハ313等の処理対象物を収容するための処理空間となる。
【0019】
また、処理チャンバー312の側面には、ガス排気部315が配設されている。ガス排気部315により、処理室311内の圧力は、たとえば1Torr〜300Torr程度の範囲で、一定に維持されている。また、ガス排気部315によるガス排気処理により、空間302及び処理室311の圧力設定のみならず、窒素ラジカル生成装置301から処理チャンバー312への、窒素ガス及び窒素ラジカルガスの流れも発生させている。
【0020】
このように、図8で示した従来の窒素ラジカル生成システム300における窒素ラジカル生成装置301は、誘電体バリア放電を第一電極303と第二電極304との間の放電空間305で発生させ、誘電体バリア放電によって得られた活性ガスを、ガス放出部307及びオリフィス部309の細孔310を経由して、後段の装置である処理室311に供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第6239483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
図8で示した従来の活性ガス生成装置である窒素ラジカル生成装置301は、第一電極303と第二電極304との間の放電空間305において誘電体バリア放電を発生させ、原料ガスを活性化して活性ガスを得てうる。この活性ガスはガス放出部307とオリフィス部309に設けられた細孔310を経由して後段の処理チャンバー312に供給されている。
【0023】
誘電体バリア放電を発生させる平行平板型の電極対において、互いに対向する電極の少なくとも一方の放電空間形成面は絶縁体である必要がある。導体は絶縁体と比較して表面の元素がイオン化しやすい傾向があり、半導体製造装置においてはイオン化した元素が半導体のコンタミネーションの要因となりうる。このため、第一電極303及び第二電極304それぞれにおける放電空間形成面は共に絶縁体であることが望ましい。
【0024】
しかし、第一電極303と第二電極304の放電空間形成面が共に絶縁体であった場合、誘電体バリア放電発生のため付与した電界が、電極を通じて後段の処理チャンバー312へ漏れ、処理室311内にて絶縁破壊が生じる。
【0025】
なぜなら、後段の処理チャンバー312の処理室311は第一電極303と第二電極304とが存在する空間よりもりも高真空雰囲気下にあるからである。
【0026】
さらに、処理室311内の処理空間は一般的に比較的低い圧力に設定されるため、上記絶縁破壊を生じさせる電界強度は、上記処理空間の圧力が低くなるに従い小さくなる傾向がある。このため、上記処理空間における電極強度の緩和は重要となる。
【0027】
電界強度を緩和させるための方法として、放電を発生させる空間である放電空間305と、後段の処理室311との接続部分である、オリフィス部309やガス放出部307と十分距離を離すという方法がある。
【0028】
しかしながら、この方法を採用すると、活性ガスを生成する放電空間305と後段の処理室311との距離が必然的に長くなるため、活性ガスが後段の処理室311に到達する時間が長くなる結果、活性ガスが失活(消滅)してしまうという問題点がある。
【0029】
他の方法として、交流電圧源308が印加する交流電圧を低くするという方法もあるが、この方法では、生成する活性ガスの絶対量が低下するという問題点があるため、実施的に採用することはできない。
【0030】
本発明では、上記のような問題点を解決し、装置の後段(下方)に設けられる処理空間の電界強度を意図的に弱め、かつ、活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる、活性ガス生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明における活性ガス生成装置は、放電空間に供給された原料ガスを活性化して得られる活性ガスを生成する活性ガス生成装置であって、第1の電極構成部と前記第1の電極構成部の下方に設けられる第2の電極構成部とを備え、前記第1の電極構成部は、第1の電極用誘電体膜と前記第1の電極用誘電体膜の上面上に形成される第1の金属電極とを有し、前記第2の電極構成部は、第2の電極用誘電体膜と前記第2の電極用誘電体膜の下面上に形成される第2の金属電極とを有し、前記第1及び第2の金属電極間に交流電圧が印加され、前記第1及び第2の電極用誘電体膜が対向する誘電体空間内において、前記第1及び第2の金属電極が平面視重複する領域を前記放電空間として含み、前記第2の電極用誘電体膜は、前記活性ガスを外部に噴出するためのガス噴出孔を有し、前記放電空間から前記ガス噴出孔に至る経路が活性ガス流通経路として規定され、前記第1の電極構成部は、前記第1の電極用誘電体膜の上面上に前記第1の金属電極と独立して形成される補助導電膜をさらに有し、前記補助導電膜は平面視して前記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、前記補助導電膜は接地電位に設定され、前記活性ガス生成装置は、前記誘電体空間内において、前記放電空間と前記ガス噴出孔との間に、前記活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる活性ガス用補助部材をさらに備えることを特徴する。
【発明の効果】
【0032】
この発明における活性ガス生成装置において、補助導電膜は平面視して活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜は接地電位に設定されていることを第1の特徴としている。
【0033】
さらに、この発明における活性ガス生成装置は、誘電体空内において、放電空間とガス噴出孔との間に、活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる活性ガス用補助部材をさらに備えることを第2の特徴としている。
【0034】
この発明における活性ガス生成装置は、上記第1の特徴を有することにより、接地電位に設定された補助導電膜によって、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和することができる。
【0035】
この発明における活性ガス生成装置は、上記第2の特徴を有することにより、上記活性ガス流通経路の一部を活性ガス用補助部材で埋める分、活性ガス流通経路における空間体積を狭くして、活性ガスが上記活性ガス流通経路を通過する時間を、活性ガスが失活しない程度に短くすることができる。
【0036】
その結果、この発明における活性ガス生成装置は、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和し、かつ、活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる効果を奏する。
【0037】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】この発明の実施の形態1である活性ガス発生装置の基本構成を示す説明図である。
図2】実施の形態1の第1の態様の活性ガス生成用電極群の全体構成を模式的に示す説明図である。
図3】実施の形態1の第2の態様の活性ガス生成用電極群の全体構成を模式的に示す説明図である。
図4】この発明の実施の形態2である活性ガス発生装置の基本構成を示す説明図である。
図5】実施の形態2の第1の態様の活性ガス生成用電極群の全体構成を模式的に示す説明図である。
図6】実施の形態2の第2の態様の活性ガス生成用電極群の全体構成を模式的に示す説明図である。
図7】前提技術である活性ガス生成装置の基本構成を示す説明図である。
図8】従来の窒素ラジカル生成システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<前提技術>
(基本構成)
図7はこの発明の前提技術である活性ガス生成装置の基本構成を示す説明図である。図7にXYZ直交座標系を記している。前提技術のガス発生装置200は、放電空間6に供給された原料ガス5(窒素ガス等)を活性化して得られる活性ガス7(窒素ラジカル等)を生成する活性ガス生成装置である。
【0040】
ガス発生装置200は、金属筐体31、ガス供給口32、活性ガス生成用電極群201及びオリフィス部40を主要構成部として含んでいる。
【0041】
金属筐体31は、接地電位に設定された金属製のガス発生装置200用の筐体であり、上部にガス供給口32が取り付けられ、ガス供給口32から原料ガス5が金属筐体31の筐体内空間33に供給される。
【0042】
ガス発生装置200における金属筐体31の筐体内空間33に活性ガス生成用電極群201が配置される。具体的には、金属筐体31の底面上に活性ガス生成用電極群201が配置される。そして、金属筐体31の底面の一部にオリフィス部40が組み込まれている。
【0043】
活性ガス生成用電極群201は、第1の電極構成部である高電圧印加電極部1と、第2の電極構成部である接地電位電極部2との組合せにより構成され、接地電位電極部2は高電圧印加電極部1の下方に設けられる。
【0044】
高電圧印加電極部1は、第1の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜11と、電極用誘電体膜11の上面上に形成される第1の金属電極である電極用導電膜10とを主要構成部として有している。高電圧印加電極部1は、電極用誘電体膜11の上面上に電極用導電膜10と独立して形成され、導電性を有する金属製の補助導電膜12をさらに有している。
【0045】
補助導電膜12は、平面視して少なくとも一つのガス噴出孔25と金属製の電極用導電膜10との間に設けられる。なお、金属製の補助導電膜12は、平面視して少なくとも一つのガス噴出孔25と重複しても良い。
【0046】
なお、電極用導電膜10及び補助導電膜12は、例えばスパッタリング法や印刷焼成法を利用して電極用誘電体膜11の上面上に設けられる。
【0047】
接地電位電極部2は、第2の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜21と電極用誘電体膜21の下面上に形成される第2の金属電極である電極用導電膜20とを主要構成部として有している。
【0048】
なお、金属製で導電性を有する電極用導電膜20は、スパッタリング法や印刷焼成法等を利用して、電極用誘電体膜21の下面上に設けられる。
【0049】
高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11と接地電位電極部2の電極用誘電体膜21とは図示しないスペーサー等により、予め定められた一定の間隔が設けられるように設置されている。
【0050】
そして、電極用導電膜10と電極用導電膜20との間に高周波電源9から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜10には高周波電源9から交流電圧が印加され、電極用導電膜20及び補助導電膜12は、接地電位が付与される金属筐体31を介して接地電位に設定される。
【0051】
電極用誘電体膜11と電極用誘電体膜21とが対向する誘電体空間内において、電極用導電膜10及び20が平面視重複する領域を含んで放電空間6が設けられる。
【0052】
なお、電極用誘電体膜11の上面、電極用誘電体膜21の下面の形状は面一でもよく、所定の形状を設けても良い。例えば、電極用誘電体膜11の上面において、電極用導電膜10と補助導電膜12との間で沿面放電が発生しないように、障害となる凹凸形状を設けるようにしても良い。
【0053】
電極用誘電体膜21は、活性ガス7を最終的に外部の処理空間63に噴出するための少なくとも一つのガス噴出孔25を有している。
【0054】
オリフィス部40は、電極用誘電体膜21の下方に設けられ、少なくとも一つのガス噴出孔25に対応する少なくとも一つの貫通孔49を有している。なお、オリフィス部40は構成材料をセラミック、ガラス及びサファイアのうちの一つとしている。
【0055】
このような構成のガス発生装置200において、電極用導電膜10及び20間に、高周波電源9から交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群201の放電空間6に誘電体バリア放電を発生させている。同時にガス供給口32から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群201の外周部から内部に原料ガス5を流通させる。
【0056】
すると、ガス発生装置200において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6から少なくとも一つのガス噴出孔25に至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0057】
上記活性ガス流通経路を流れる活性ガス7は、少なくとも一つのガス噴出孔25及びオリフィス部40の貫通孔49を経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0058】
前提技術のガス発生装置200において、上述したように、補助導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられている。
【0059】
(前提技術の効果)
このように、前提技術のガス発生装置200は、以下の特徴(1)及び特徴(2)を有している。
(1) 補助導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられる。
(2) 補助導電膜12は接地電位に設定されている。
【0060】
本実施の形態のガス発生装置200は、上記特徴(1)及び特徴(2)を有することにより、接地電位に設定された補助導電膜である補助導電膜12によって、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和することができる。
【0061】
その結果、本実施の形態のガス発生装置200は、オリフィス部40の構造を変更することなく、オリフィス部40の後段(下方)に設けられる処理空間63の電界強度を意図的に弱めることができるという効果を奏する。
【0062】
(前提技術の問題点)
上述した前提技術であるガス発生装置200にて生成される活性ガス7は、平行平板方式の高電圧印加電極部1及び接地電位電極部2間の放電空間6において、誘電体バリア放電によって生成される。この活性ガス7は、半導体製造に必要なガスとして、後段の処理空間63に供給される。
【0063】
しかしなら、上述したように、活性ガス7は不安定であり時間的に減衰する、すなわち、時間経過に伴い失活する性質を有している。
【0064】
放電空間6で生成された活性ガス7として、例えば窒素分子ガスを放電によって解離させた窒素原子が考えられる。上記した窒素原子は他のガス分子との衝突によって消滅する。つまり、放電空間6で生成された活性ガス7は、時間の経過に伴い失活(消滅)するため、活性ガス7の生成後、活性ガス7を、速やかに活性ガス7が使用される空間、すなわち、処理空間63に供給する必要がある。
【0065】
しかしながら、前提技術のガス発生装置200では、上記効果を発揮させるための補助導電膜12を設ける関係上、必ず、上記活性ガス流通経路が誘電体空間内に存在する。
【0066】
上記活性ガス流通経路は、電極用導電膜10と補助導電膜12との距離を短くすることにより短縮化が可能である。しかしながら、上記活性ガス流通経路と平面視して重複して補助導電膜12を設ける必要があるため、上記活性ガス流通経路の短縮化には限界がある。
【0067】
このように、前提技術では、活性ガス7が上記活性ガス流通経路を通過する時間を十分に短くすることができないため、上記活性ガス流通経路の通過時に活性ガス7が失活してしまう問題点を解消することはできない。
【0068】
以下で述べる実施の形態1及び実施の形態2では、上述した前提技術の問題点を解消し、装置の後段(下方)に設けられる処理空間の電界強度を意図的に弱め、かつ、活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる、活性ガス生成装置を提供することを目的としている。
【0069】
<実施の形態1>
(基本構成)
図1はこの発明の実施の形態1である活性ガス発生装置101の基本構成を示す説明図である。図1にXYZ直交座標系を記している。実施の形態1の活性ガス発生装置101は、放電空間6に供給された原料ガス5を活性化して得られる活性ガス7を生成する活性ガス生成装置である。
【0070】
活性ガス発生装置101は、金属筐体31及び活性ガス生成用電極群51を主要構成部として含んでいる。
【0071】
金属製で導電性を有する金属筐体31は、接地電位に設定された金属製の活性ガス発生装置101用の筐体であり、図示しないガス供給口が取り付けられ、ガス供給口から原料ガス5が金属筐体31の筐体内空間33に供給される。
【0072】
金属筐体31は、底部の中央領域に活性ガス7用の活性ガス通過空間31sが形成されるように、部分的に上方(+Z方向)突出した中央突出部31aを有している。活性ガス通過空間31sは金属筐体31の底面の一部を貫通しており、この活性ガス通過空間31sの周囲に中央突出部31aが設けられる。
【0073】
活性ガス発生装置101における金属筐体31内の原料ガス供給空間である筐体内空間33に活性ガス生成用電極群51が配置される。具体的には、金属筐体31の活性ガス通過空間31sを含む中央突出部31a上に活性ガス生成用電極群51が配置される。
【0074】
活性ガス生成用電極群51は、第1の電極構成部である高電圧印加電極部1と、第2の電極構成部である接地電位電極部2との組合せにより構成され、接地電位電極部2は高電圧印加電極部1の下方に設けられる。
【0075】
高電圧印加電極部1は、第1の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜11と、電極用誘電体膜11の上面上に形成される第1の金属電極である電極用導電膜10とを主要構成部として有している。高電圧印加電極部1は、図7で示した前提技術と同様、電極用誘電体膜11の上面上に電極用導電膜10と独立して形成される補助導電膜12をさらに有している。
【0076】
金属製で導電性を有する補助導電膜12は、金属製で導電性を有する電極用導電膜10との間に、平面視してガス噴出孔23と重複するように設けられる。
【0077】
なお、電極用導電膜10及び補助導電膜12は、例えばスパッタリング法や印刷焼成法を利用して電極用誘電体膜11の上面上に設けられる。
【0078】
接地電位電極部2は、第2の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜21と電極用誘電体膜21の下面上に形成される第2の金属電極である電極用導電膜20とを主要構成部として有している。
【0079】
そして、中央突出部31aの上面に接地電位電極部2の電極用導電膜20が接触する態様で、金属筐体31の中央突出部31aによって活性ガス生成用電極群51が支持される。
【0080】
なお、電極用導電膜20は、スパッタリング法や印刷焼成法等を利用して、電極用誘電体膜21の下面上に設けられる。
【0081】
高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11と接地電位電極部2の電極用誘電体膜21とは図示しないスペーサー等により、予め定められた一定の間隔が設けられるように設置されている。この一定の間隔が放電空間6のギャップ長となる。
【0082】
そして、電極用導電膜10と電極用導電膜20との間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜10には高周波電源5から交流電圧が印加され、金属筐体31は接地電位に設定される。さらに、電極用導電膜20及び補助導電膜12も接地電位に設定される。電極用導電膜20は金属筐体31を介して接地電位に設定され、補助導電膜12は金属筐体31あるいは他の接続手段を介して接地電位に設定される。
【0083】
電極用誘電体膜11と電極用誘電体膜21とが対向する誘電体空間内において、電極用導電膜10及び20が平面視重複する領域を含んで放電空間6が設けられる。
【0084】
なお、電極用誘電体膜11の上面、電極用誘電体膜21の下面の形状は面一でもよく、所定の形状を設けても良い。例えば、電極用誘電体膜11の上面において、電極用導電膜10と補助導電膜12との間で沿面放電が発生しないように、障害となる凹凸形状を設けるようにしても良い。
【0085】
電極用誘電体膜21は、活性ガス7を後段(下方)の処理空間63に噴出するためのガス噴出孔23を有している。
【0086】
金属筐体31の底面に設けられた活性ガス通過空間31sは、ガス噴出孔23の下方に位置するように設けられる。したがって、後述するガス噴出用開口部65を経由して、ガス噴出孔23から噴出される活性ガス7は、活性ガス通過空間31sを通過して、後段(下方)のガス噴出用開口部65に供給される。
【0087】
上述した構成の活性ガス発生装置101において、誘電体バリア放電が発生される放電空間6内で原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6からガス噴出孔23に至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0088】
接地電位電極部2は、電極用誘電体膜21の上面上に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる活性ガス用補助部材60をさらに備えている。活性ガス用補助部材60は、ガス噴出孔23の上方に位置するガス噴出用開口部65を有している。ガス噴出用開口部65は活性ガス用補助部材60の中央部において高さ方向(Z方向)に沿って活性ガス用補助部材60を貫通して設けられ、上記活性ガス流通経路の一部となる。
【0089】
活性ガス用補助部材60の形成高さは、電極用誘電体膜11及び21間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。このため、この活性ガス用補助部材60の上面と高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11の下面との間に少し隙間(以下、「活性ガス流通用隙間」と略記する場合あり)が設けられる。
【0090】
このように、実施の形態1の活性ガス発生装置101において、電極用誘電体膜21の上面上に設けられる活性ガス用補助部材60は、上記誘電体空間内において、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通経路の少なくとも一部を狭小な上記活性ガス流通用隙間に制限している。
【0091】
このような構成の活性ガス発生装置101において、電極用導電膜10及び20間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群51の放電空間6に誘電体バリア放電を発生させる。同時に図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給して、活性ガス生成用電極群51の外周部から内部に原料ガス5を流通させる。筐体内空間33が原料ガス5を供給する原料ガス供給空間となる。
【0092】
すると、活性ガス発生装置101において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記活性ガス流通経路を流れる。この際、活性ガス用補助部材60によって上記活性ガス流通用隙間の一部が埋められる分、上記活性ガス流通経路の空間体積が大幅に縮小される。
【0093】
上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65、ガス噴出孔23及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0094】
活性ガス発生装置101において、電極用誘電体膜11の上面上に設けられる補助導電膜12は、平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12は接地電位に設定されていることを第1の特徴としている。
【0095】
さらに、活性ガス発生装置101の接地電位電極部2は、誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60を備えることを第2の特徴としている。
【0096】
実施の形態1の活性ガス発生装置101は、上記第1の特徴を有することにより、接地電位に設定された補助導電膜12によって、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和することができる。
【0097】
さらに、実施の形態1の活性ガス発生装置101は、上記第2の特徴を有することにより、上記活性ガス流通経路の一部を活性ガス用補助部材60で埋める分、上記活性ガス流通経路における空間体積を狭くして、活性ガス7が上記活性ガス流通経路を通過する時間を、活性ガス7が失活しない程度に短くすることができる。
【0098】
その結果、実施の形態1の活性ガス発生装置101は、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和し、かつ、上記活性ガス流通経路を通過する活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる効果を奏する。
【0099】
さらに、活性ガス用補助部材60の上面上に形成される上記活性ガス流通用隙間を十分狭くして、すなわち、上記原料ガス流通用隙間の高さ方向(Z方向)における長さを十分短くことにより、上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることができる。上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることにより、活性ガス発生装置101の後段(下方)の処理空間63と放電空間6との間に圧力差を持たせ、処理空間63の圧力を十分低くすることができる。
【0100】
この際、処理空間63は、十分低い電界強度に設定されているため、比較的低い圧力環境下の処理空間63においても絶縁破壊を防止することができる。
【0101】
加えて、図7で示した前提技術のように、ガス噴出孔23の後段にオリフィス部40を設ける必要がなくなる。
【0102】
図1で示した実施の形態1の活性ガス発生装置101の基本構成を実現する具体的構成として以下で説明する第1の態様及び第2の態様が考えられる。
【0103】
(第1の態様)
図2は実施の形態1の活性ガス発生装置101における第1の態様の活性ガス生成用電極群51Aの全体構成を模式的に示す説明図である。図2にXYZ直交座標系を記している。
【0104】
活性ガス発生装置101の第1の態様は、図1で示した基本構成の活性ガス生成用電極群51として、図2で示す活性ガス生成用電極群51Aを採用している。
【0105】
図2に示すように、活性ガス生成用電極群51Aは、第1の電極構成部である高電圧印加電極部1Aと、第2の電極構成部である接地電位電極部2Aとの組合せにより構成される。接地電位電極部2Aは高電圧印加電極部1Aの下方に設けられる。図2に示すように、活性ガス生成用電極群51Aは平行平板方式を採用している。
【0106】
高電圧印加電極部1Aは、第1の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜11Aと、電極用誘電体膜11Aの上面上に形成される第1の金属電極である電極用導電膜10Aとを主要構成部として有している。高電圧印加電極部1Aは、電極用誘電体膜11Aの上面上に電極用導電膜10Aと独立して形成される補助導電膜12Aをさらに有している。
【0107】
図2に示すように、電極用誘電体膜11Aは円盤状(円柱状)、すなわち、平面視して円状に形成され、電極用導電膜10Aは平面視して円環状に形成され、補助導電膜12Aは円盤状に形成される。補助導電膜12Aは電極用誘電体膜11Aの中心部上に、平面視してガス噴出孔23Aと重複するように配置される。電極用導電膜10Aは、補助導電膜12の周囲を囲むように、補助導電膜12の外周部から所定距離隔てて配置される。
【0108】
一方、接地電位電極部2Aは、第2の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜21Aと電極用誘電体膜21Aの下面上に形成される第2の金属電極である電極用導電膜20Aとを主要構成部として有している。
【0109】
電極用誘電体膜11Aと電極用誘電体膜21Aとが対向する誘電体空間内において、10A及び20Bが平面視重複する領域を含んで放電空間6が設けられる。
【0110】
そして、電極用誘電体膜21Aは、活性ガス7を外部の処理空間63に噴出するための、電極用誘電体膜21Aを貫通する単一のガス噴出孔23Aを中心部に有している。このガス噴出孔23Aが図1で示した基本構成におけるガス噴出孔23に対応する。
【0111】
電極用誘電体膜21Aは円盤状に形成され、電極用導電膜20Aは平面視して円環状に形成され、単一のガス噴出孔23Aは平面視して円状に形成される。ガス噴出孔23Aは平面視して電極用誘電体膜21Aの中心に設けられる。
【0112】
図2に示すように、接地電位電極部2において、活性ガス用補助部材60Aは、電極用誘電体膜21Aの上面上に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる。活性ガス用補助部材60Aは、ガス噴出孔23Aの上方に位置するガス噴出用開口部65Aを有している。ガス噴出用開口部65Aは、活性ガス用補助部材60Aの上面から下面にかけて、活性ガス用補助部材60Aの中央部を貫通して設けられ、上記活性ガス流通経路の一部となる。
【0113】
活性ガス用補助部材60Aの形成高さは、電極用誘電体膜11A及び21A間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。このため、活性ガス用補助部材60Aの上面と高電圧印加電極部1Aの電極用誘電体膜11Aの下面との間に上記活性ガス流通用隙間が設けられる。
【0114】
このように、実施の形態1の第1の態様の活性ガス用補助部材60Aは、上記誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通経路の少なくとも一部を狭小な上記活性ガス流通用隙間に制限している。
【0115】
上述したように、活性ガス用補助部材60Aは中央部にガス噴出用開口部65Aを有し、ガス噴出用開口部65Aを含んで円盤状に形成されている。すなわち、ガス噴出用開口部65Aは平面視して単一のガス噴出孔23Aとほぼ完全に重複するように設けられる。したがって、活性ガス用補助部材60Aは平面視して円環状に形成される。
【0116】
このように、活性ガス発生装置101の第1の態様の接地電位電極部2は、電極用誘電体膜11A及び21A間の誘電体空間内において、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通経路の少なくとも一部を上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60Aをさらに備えている。
【0117】
電極用導電膜20Aは平面視して活性ガス用補助部材60Aを囲むように、平面視して活性ガス用補助部材60Aの外周に沿って円環状に配置される。
【0118】
上述した構成の第1の態様は、電極用誘電体膜11A及び21A間に形成される誘電体空間内において、放電空間6から単一のガス噴出孔23Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0119】
図2に示すように、補助導電膜12Aは平面視してガス噴出孔23Aと重複する位置に配置される。すなわち、補助導電膜12Aは、平面して上記活性ガス流通経路の少なくとも一部と重複するように配置される。
【0120】
そして、電極用導電膜10Aと電極用導電膜20Aとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜10Aには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属筐体31は接地電位に設定される。さらに、電極用導電膜20A及び補助導電膜12Aも接地電位に設定される。電極用導電膜20Aは金属筐体31を介して接地電位に設定され、補助導電膜12Aは金属筐体31あるいは他の接続手段を介して接地電位に設定される。
【0121】
このように、活性ガス発生装置101の第1の態様において、補助導電膜12Aは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12Aは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、実施の形態1の第1の態様は、実施の形態1の基本構成と同様、上記第1の特徴を有している。
【0122】
このような構成の活性ガス発生装置101の第1の態様は、電極用導電膜10A及び20A間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群51Aの放電空間6に誘電体バリア放電を発生させる。同時に、活性ガス発生装置101の第1の態様は、図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群51Aの外周部から単一のガス噴出孔23Aに向かう方向をガスの流れ15として原料ガス5を流通させる。
【0123】
すると、活性ガス発生装置101の第1の態様において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6から単一のガス噴出孔23Aに至る経路である上記活性ガス流通経路を流れる。
【0124】
この際、上記活性ガス流通経路の一部を活性ガス用補助部材60Aで埋めている分、上記活性ガス流通経路の空間体積は大幅に縮小される。
【0125】
上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65A、ガス噴出孔23A及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0126】
実施の形態1の第1の態様は、実施の形態1の基本構成と同様、活性ガス用補助部材60Aの上面上に形成される上記活性ガス流通用隙間を十分狭くして、上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることができる。
【0127】
実施の形態1の第1の態様は、上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることにより、活性ガス発生装置101の後段(下方)の処理空間63と放電空間6との間に圧力差を持たせ、処理空間63の圧力を十分低くすることができる。
【0128】
(第2の態様)
図3は実施の形態1の活性ガス発生装置101における第2の態様の活性ガス生成用電極群51Bの全体構造を模式的に示す説明図である。図3にXYZ直交座標系を記している。
【0129】
活性ガス発生装置101の第2の態様は、図1で示した基本構成の活性ガス生成用電極群51として、図3で示す活性ガス生成用電極群51Bを採用している。
【0130】
以下、図3を適宜参照して、第2の態様の活性ガス生成用電極群51Bについて説明する。
【0131】
図3に示すように、活性ガス生成用電極群51Bは、第1の電極構成部である高電圧印加電極部1Bと、第2の電極構成部である接地電位電極部2Bとの組合せにより構成される。接地電位電極部2Bは高電圧印加電極部1Bの下方に設けられる。図3に示すように、活性ガス生成用電極群51Bは平行平板方式を採用している。
【0132】
高電圧印加電極部1Bは、第1の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜11Bと、電極用誘電体膜11Bの上面上に形成される第1の金属電極である電極用導電膜対10H及び10Lとを主要構成部として有している。高電圧印加電極部1Bは、電極用誘電体膜11Bの上面上に電極用導電膜対10H及び10Lと独立して形成される補助導電膜12Bをさらに有している。
【0133】
図3に示すように、電極用誘電体膜11Bは平面視してX方向を長辺方向とした矩形状に形成され、電極用導電膜対10H及び10Lはそれぞれ平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、補助導電膜12Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成される。補助導電膜12Bは平面視して電極用誘電体膜11BのX方向の中心部上に配置される。
【0134】
電極用導電膜対10H及び10Lは補助導電膜12Bを挟むように、補助導電膜12Bから所定距離隔てて配置される。すなわち、電極用導電膜10Hは補助導電膜12Bに対し左側(−X方向側)に配置され、電極用導電膜10Lは補助導電膜12Bに対し右側(+X方向側)に配置される。
【0135】
一方、接地電位電極部2Bは、第2の電極用誘電体膜である電極用誘電体膜21Bと電極用誘電体膜21Bの下面上に形成される第2の金属電極である電極用導電膜対20H及び20Lとを主要構成部として有している。
【0136】
電極用誘電体膜11Bと電極用誘電体膜21Bとが対向する誘電体空間内において、電極用導電膜対10H及び10L並びに電極用導電膜20H及び20Lが平面視重複する領域を含んで放電空間6が設けられる。
【0137】
図3に示すように、電極用誘電体膜21Bは平面視してX方向を長辺方向とした矩形状に形成される。
【0138】
そして、電極用誘電体膜21Bは、活性ガス7を外部の処理空間63に噴出するため、電極用誘電体膜21Bを貫通する単一のガス噴出孔23Bを有している。単一のガス噴出孔23Bが図1で示した基本構成におけるガス噴出孔23に対応する。単一のガス噴出孔23Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成される。
【0139】
電極用誘電体膜21Bは平面視してX方向を長辺方向とした矩形状に形成され、電極用導電膜20H及び20Lはそれぞれ平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、単一のガス噴出孔23Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成される。ガス噴出孔23Bは平面視して電極用誘電体膜21Bの中心部に設けられる。
【0140】
図3に示すように、接地電位電極部2において、活性ガス用補助部材60Bは、電極用誘電体膜21Bの上面上に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めるように設けられる。活性ガス用補助部材60Bは、ガス噴出孔23Bの上方に位置するガス噴出用開口部65Bを有している。ガス噴出用開口部65Bは、活性ガス用補助部材60Bの上面から下面にかけて、活性ガス用補助部材60Bの中央部を貫通して設けられ、上記活性ガス流通経路の一部となる。
【0141】
活性ガス用補助部材60Bの形成高さは、電極用誘電体膜11B及び21B間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。したがって、活性ガス用補助部材60Bの上面と高電圧印加電極部1Bの電極用誘電体膜11Bの下面との間に上記活性ガス流通用隙間が設けられる。
【0142】
このように、実施の形態1の第2の態様の活性ガス用補助部材60Bは、上記誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通経路の少なくとも一部を狭小な上記活性ガス流通用隙間に制限している。
【0143】
上述したように、活性ガス用補助部材60Bは中央部にガス噴出用開口部65Bを有し、ガス噴出用開口部65Bを含んで円盤状に形成されている。すなわち、ガス噴出用開口部65Bは平面視して単一のガス噴出孔23Bの全体を含んで、ガス噴出孔23Bと重複するように設けられる。したがって、活性ガス用補助部材60Bは平面視してガス噴出用開口部65Bを全て含んで矩形状に形成される。
【0144】
このように、活性ガス発生装置101の第2の態様の接地電位電極部2Bは、電極用誘電体膜11B及び21B間の誘電体空間内において、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通経路の少なくとも一部を上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60Bをさらに備えている。
【0145】
電極用導電膜対20H及び20Lは、活性ガス用補助部材60Bを挟むように配置される。電極用導電膜20Hは活性ガス用補助部材60Bに対し左側(−X方向側)に配置され、電極用導電膜20Lは活性ガス用補助部材60Bに対し右側(+X方向側)に配置される。
【0146】
上述した構成の第2の態様は、電極用誘電体膜11B及び21B間に形成される誘電体空間内において、放電空間6からガス噴出孔23Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0147】
図3に示すように、補助導電膜12Bは平面視して単一のガス噴出孔23Bと重複する位置に配置される。すなわち、補助導電膜12Bは、平面して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように配置される。
【0148】
そして、電極用導電膜対10H及び10Lと電極用導電膜対20H及び20Lとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜対10H及び10Lには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属筐体31は接地電位に設定される。さらに、電極用導電膜20H及び20L並びに補助導電膜12も接地電位に設定される。電極用導電膜20H及び20Lは金属筐体31を介して接地電位に設定され、補助導電膜12は金属筐体31あるいは他の接続手段を介して接地電位に設定される。
【0149】
金属筐体31の活性ガス通過空間31sは、単一のガス噴出孔23Bの下方に設けられる。したがって、ガス噴出用開口部65B及びガス噴出孔23Bを通過した活性ガス7は、活性ガス通過空間31sをさらに通過して、後段(下方)の処理空間63に供給される。
【0150】
このように、活性ガス発生装置101の第2の態様において、補助導電膜12Bは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12Bは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、実施の形態1の第2の態様は、実施の形態1の基本構成と同様、第1の特徴を有している。
【0151】
このような構成の活性ガス発生装置101の第2の態様は、電極用導電膜対10H及び10Lと電極用導電膜対20H及び20Lとの間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群51Bの放電空間6に誘電体バリア放電を発生させる。さらに、活性ガス発生装置101の第2の態様は、図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群51BのX方向両端部から、X方向に平行なガスの流れ15に沿って内部に原料ガス5を流通させる。
【0152】
すると、活性ガス発生装置101の第2の態様において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6からガス噴出孔23Bに至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0153】
この際、上記活性ガス流通経路の一部を活性ガス用補助部材60Bで埋めている分、上記活性ガス流通経路の空間体積は大幅に縮小される。
【0154】
上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65B、ガス噴出孔23及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0155】
実施の形態1の第2の態様は、実施の形態1の基本構成と同様、活性ガス用補助部材60Bの上面上に形成される上記活性ガス流通用隙間を十分狭くして、上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることができる。
【0156】
実施の形態1の第2の態様は、上記活性ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることにより、活性ガス発生装置101の後段(下方)の処理空間63と放電空間6との間に圧力差を持たせ、処理空間63の圧力を十分低くすることができる。
【0157】
<実施の形態2>
(基本構成)
図4はこの発明の実施の形態2である活性ガス発生装置102の基本構成を示す説明図である。図4にXYZ直交座標系を記している。実施の形態2の活性ガス発生装置102は、放電空間6に供給された原料ガス5を活性化して得られる活性ガス7を生成する活性ガス生成装置である。
【0158】
以下、図1図3で示した実施の形態1の活性ガス発生装置101と同様な構成及び動作は、同一の符号を付すことにより説明を適宜省略し、実施の形態2の活性ガス発生装置102の特徴部分を中心に説明する。
【0159】
活性ガス発生装置102は、金属筐体31及び活性ガス生成用電極群52を主要構成部として含んでいる。
【0160】
活性ガス発生装置102において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6からガス噴出孔23に至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0161】
接地電位電極部2において、実施の形態1と同様、電極用誘電体膜21の上面上に、ガス噴出孔23の上方にガス噴出用開口部65を有する活性ガス用補助部材60が設けられる。活性ガス用補助部材60は、活性ガス用補助部材60の上面と高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11の下面との間に微小な上記活性ガス流通用隙間が生じるように、電極用誘電体膜21の上面上に設けられる。
【0162】
このように、実施の形態2の活性ガス発生装置102の接地電位電極部2は、実施の形態1と同様、上記誘電体空間内において、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60をさらに備えている。
【0163】
加えて、活性ガス発生装置102の接地電位電極部2は、電極用誘電体膜21の上面上に原料ガス用補助部材72をさらに有している。
【0164】
筐体内空間33に供給された原料ガス5が活性ガス生成用電極群52の外周部から、電極用誘電体膜11,21間の誘電体空間に流れる、上記誘電体空間内において、原料ガス5が放電空間6に至るまでの経路が原料ガス流通経路として規定される。
【0165】
原料ガス用補助部材72の形成高さは、電極用誘電体膜11及び21間の距離(ギャップ長)よりも低く、活性ガス用補助部材60の形成高さと同程度に設定される。このため、原料ガス用補助部材72の上面と高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11の下面との間に少し隙間(以下、「原料ガス流通用隙間」と略記する場合がある)が生じる。
【0166】
したがって、原料ガス用補助部材72は、上記誘電体空間内において、上記原料ガス流通経路の一部を埋めて、上記原料ガス流通用隙間に制限している。
【0167】
このような構成の活性ガス発生装置102において、電極用導電膜10及び20間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群52の放電空間6に誘電体バリア放電を発生させ、同時に図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群52の外周部から内部に原料ガス5を流通させる。
【0168】
すると、原料ガス5は、活性ガス発生装置102の上記原料ガス流通経路を経由して、放電空間6に到達する。この際、上記原料ガス流通経路は、原料ガス用補助部材72の上方において上記原料ガス流通用隙間に制限される。
【0169】
原料ガス5が放電空間6に到達後、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記活性ガス流通経路を流れる。この際、上記活性ガス流通経路は、活性ガス用補助部材60の上方において上記活性ガス流通用隙間に制限される。
【0170】
上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65、ガス噴出孔23及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0171】
実施の形態2の活性ガス発生装置102において、上述したように、補助導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられている。
【0172】
実施の形態2の活性ガス発生装置102において、実施の形態1と同様、補助導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12は接地電位に設定されていることを第1の特徴としている。
【0173】
さらに、活性ガス発生装置102は、実施の形態1と同様、誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60をさらに備えることを第2の特徴としている。
【0174】
実施の形態2の活性ガス発生装置102は、上記第1及び第2の特徴を有することにより、実施の形態1と同様、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和し、かつ、上記活性ガス流通経路を通過する活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる効果を奏する。
【0175】
加えて、実施の形態2の活性ガス発生装置102は、上記第1及び第2の特徴に加え、接地電位電極部2は、誘電体空間内において、上記原料ガス流通経路の一部を埋めて、上記原料ガス流通用隙間に制限する原料ガス用補助部材72をさらに備えるという第3の特徴を有している。
【0176】
実施の形態2の活性ガス発生装置102、上記第3の特徴を有するため、上記原料ガス流通経路の一部を原料ガス用補助部材72で埋めて、上記原料ガス流通経路の少なくとも一部に狭小な上記原料ガス流通用隙間を形成することができる。
【0177】
この原料ガス流通用隙間を十分狭く形成する、すなわち、高さ方向(Z方向)における長さを十分短くすることにより、原料ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることができる。このオリフィス機能により、放電空間6と放電空間6外で原料ガス供給するための原料ガス供給空間となる筐体内空間33との間に所望の圧力差を設定することができる。
【0178】
その結果、実施の形態2の活性ガス発生装置102は、放電空間6の前段に存在し、原料ガス供給空間となる筐体内空間33の圧力を十分高くしても、放電空間6の圧力を比較的低く設定することができる。
【0179】
このため、筐体内空間33の圧力を十分高くすることにより、筐体内空間33におけるガスの絶縁破壊を効果的に抑制することができる。
【0180】
加えて、筐体内空間33内の絶縁破壊の抑制効果を保ちつつ、筐体内空間33を比較的狭く形成することにより、活性ガス発生装置102の小型化を図ることができる。
【0181】
さらに、原料ガス用補助部材72の上方に形成される上記原料ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることにより、放電空間6の圧力を比較的低く設定することができる。
【0182】
活性ガス7として、例えば窒素分子が窒素原子となった場合を考える。この場合、窒素原子は他の窒素原子との衝突によって失活することから、放電空間6の圧力を比較的低く設定することにより、活性ガス7となる窒素原子の失活量を効果的に減少させることができる。
【0183】
図4で示した実施の形態2の活性ガス発生装置102の基本構成を実現する具体的構成として以下で説明する第1の態様及び第2の態様が考えられる。
【0184】
(第1の態様)
図5は実施の形態2の活性ガス発生装置102における第1の態様の活性ガス生成用電極群52Aの全体構成を模式的に示す説明図である。図5にXYZ直交座標系を記している。
【0185】
活性ガス発生装置102の第1の態様は、図4で示した基本構成の活性ガス生成用電極群52として、図5で示す活性ガス生成用電極群52Aを採用している。
【0186】
図5に示すように、実施の形態2の第1の態様は、実施の形態1の第1の態様と同様、電極用誘電体膜11A及び21A間の誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60Aをさらに備えている。
【0187】
電極用導電膜20Aは、平面視して活性ガス用補助部材60Aを囲むように、活性ガス用補助部材60Aの外周に沿って配置される。
【0188】
さらに、実施の形態2の第2の態様において、基本構成の原料ガス用補助部材72に対応する原料ガス用補助部材72Aは、平面視して電極用導電膜20Aを囲むように、活性ガス用補助部材60Aから所定距離隔てて、電極用誘電体膜21Aの上面上に設けられる。原料ガス用補助部材72Aは平面視して円環状に電極用誘電体膜21の外周に沿って、活性ガス用補助部材60Aと同程度の形成高さで設けられる。
【0189】
原料ガス用補助部材72Aの形成高さは、電極用誘電体膜11A及び21A間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。このため、原料ガス用補助部材72Aの上面と高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11Aの下面との間に上記原料ガス流通用隙間が設けられる。
【0190】
このように、原料ガス用補助部材72Aは、上記誘電体空間内において、上記原料ガス流通経路の一部を埋めて、上記原料ガス流通用隙間に制限するように設けられる。
【0191】
上述した構成の実施の形態2の第1の態様は、電極用誘電体膜11A及び21A間に形成される誘電体空間内において、放電空間6から単一のガス噴出孔23Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0192】
図5に示すように、補助導電膜12Aは平面視してガス噴出孔23Aと重複する位置に配置される。すなわち、補助導電膜12Aは、平面して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように配置される。
【0193】
そして、電極用導電膜10Aと電極用導電膜20Aとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜10Aには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属筐体31は接地電位に設定される。さらに、電極用導電膜20A及び補助導電膜12Aも接地電位に設定される。電極用導電膜20Aは金属筐体31を介して接地電位に設定され、補助導電膜12Aは金属筐体31あるいは他の接続手段を介して接地電位に設定される。
【0194】
このように、活性ガス発生装置102の第1の態様において、補助導電膜12Aは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12Aは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、実施の形態2の第1の態様は、実施の形態2の基本構成と同様、上記第1の特徴を有している。
【0195】
このような構成の活性ガス発生装置102の第1の態様は、電極用導電膜10A及び20A間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群52Aの放電空間6に誘電体バリア放電を発生させる。同時に、活性ガス発生装置102の第1の態様は、図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群52Aの外周部から単一のガス噴出孔23Aに向かう方向をガスの流れ15として原料ガス5を流通させる。
【0196】
すると、原料ガス用補助部材72Aの上方に形成される少なくとも一部が上記原料ガス流通用隙間に制限されている上記原料ガス流通経路を経由して、原料ガス5は放電空間6に到達する。
【0197】
この際、原料ガス用補助部材72Aの上方に形成される上記原料ガス流通用隙間を十分狭くする、すなわち、上記原料ガス流通用隙間の高さ方向(Z方向)における長さを十分短くことにより、原料ガス流通用隙間にオリフィス機能を持たせることができる。このオリフィス機能により、放電空間6と放電空間6外で原料ガス供給するための原料ガス供給空間となる筐体内空間33との間の所望の圧力差を設定することができる。
【0198】
したがって、実施の形態2の第1の態様は、放電空間6の前段に存在する、筐体内空間33の圧力を十分高くしても、放電空間6の圧力を比較的低く設定することができる。
【0199】
そして、活性ガス発生装置102の第1の態様において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6から単一のガス噴出孔23Aに至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0200】
この際、上記活性ガス流通経路の一部が活性ガス用補助部材60Aよって埋められる分、上記活性ガス流通経路の空間体積は縮小化される。
【0201】
そして、上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65A、単一のガス噴出孔23A及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0202】
(第2の態様)
図6は実施の形態2の活性ガス発生装置102における第2の態様の活性ガス生成用電極群52Bの全体構造を模式的に示す説明図である。図6にXYZ直交座標系を記している。
【0203】
活性ガス発生装置102の第2の態様は、図4で示した基本構成の活性ガス生成用電極群52として、図6で示す活性ガス生成用電極群52Bを採用している。
【0204】
以下、図6を適宜参照して、第2の態様の活性ガス生成用電極群52Bについて説明する。
【0205】
図6に示すように、実施の形態2の第2の態様は、実施の形態1の第2の態様と同様、電極用誘電体膜11B及び21B間の誘電体空間内において、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限する活性ガス用補助部材60Bをさらに備えている。
【0206】
電極用導電膜対20H及び20Lは、活性ガス用補助部材60Bを挟むように配置される。電極用導電膜20Hは活性ガス用補助部材60Bに対し左側(−X方向側)に配置され、電極用導電膜20Lは活性ガス用補助部材60Bに対し右側(+X方向側)に配置される。
【0207】
さらに、基本構成の原料ガス用補助部材72に対応する原料ガス用補助部材72Bは、平面視して活性ガス用補助部材60B及び電極用導電膜20H及び20Lを囲むように、活性ガス用補助部材60Bから所定距離隔てて、電極用誘電体膜21Bの上面上に設けられる。原料ガス用補助部材72Bは平面視して矩形枠状に電極用誘電体膜21Bの外周に沿って設けられる。
【0208】
原料ガス用補助部材72Bは、原料ガス用補助部材72Bの上面と高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11Bの下面との間に上記原料ガス流通用隙間が生じるように、電極用誘電体膜21B上に活性ガス用補助部材60Bと同程度の形成高さで設けられる。すなわち、活性ガス用補助部材60Bの形成高さは、電極用誘電体膜11B及び21B間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。
【0209】
このように、原料ガス用補助部材72Bは、上記誘電体空間内において、上記原料ガス流通経路の一部を埋めて、上記原料ガス流通用隙間に制限するように設けられる。
【0210】
上述した構成の実施の形態2の第2の態様は、電極用誘電体膜11B及び21B間に形成される誘電体空間内において、放電空間6からガス噴出孔23Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0211】
図6に示すように、補助導電膜12Bは平面視して単一のガス噴出孔23Bと重複する位置に配置される。すなわち、補助導電膜12Bは、平面して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように配置される。
【0212】
そして、電極用導電膜対10H及び10Lと電極用導電膜対20H及び20Lとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、電極用導電膜対10H及び10Lには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属筐体31は接地電位に設定される。さらに、電極用導電膜20H及び20L並びに補助導電膜12も接地電位に設定される。電極用導電膜20H及び20Lは金属筐体31を介して接地電位に設定され、補助導電膜12は金属筐体31あるいは他の接続手段を介して接地電位に設定される。
【0213】
金属筐体31の活性ガス通過空間31sは、単一のガス噴出孔23Bの下方に設けられる。したがって、単一のガス噴出孔23Bを通過した活性ガス7は、活性ガス通過空間31sを通過して、後段(下方)の処理空間63に供給される。
【0214】
このように、活性ガス発生装置102の第2の態様において、補助導電膜12Bは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜12Bは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、実施の形態2の第2の態様は、実施の形態2の基本構成と同様、第1の特徴を有している。
【0215】
このような構成の活性ガス発生装置102の第2の態様は、電極用導電膜対10H及び10Lと電極用導電膜対20H及び20Lとの間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群52Bの放電空間6に誘電体バリア放電を発生させる。同時に、活性ガス発生装置102の第2の態様は、図示しないガス供給口から金属筐体31の筐体内空間33内に原料ガス5を供給し、活性ガス生成用電極群52BのX方向両端部から、X方向に平行なガスの流れ15に沿って内部に原料ガス5を流通させる。
【0216】
すると、原料ガス用補助部材72Bの上方に形成される上記原料ガス流通経路を経由して、原料ガス5は放電空間6に到達する。
【0217】
この際、原料ガス用補助部材72Bの上方において上記原料ガス流通用隙間を十分狭くしてオリフィス機能を持たせることにより、筐体内空間33を含む上記原料ガス流通経路と放電空間6との間に所望の圧力差を設けることができる。
【0218】
したがって、実施の形態2の第2の態様は、活性空間6の前段に存在する、原料ガス供給空間である筐体内空間33の圧力を十分高くしても、放電空間6の圧力を比較的低く設定することができる。
【0219】
そして、活性ガス発生装置102の第2の態様において、放電空間6内の原料ガス5が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間6からガス噴出孔23Bに至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0220】
この際、活性ガス用補助部材60Bにより、上記活性ガス流通経路の一部を活性ガス用補助部材60Bで埋める分、上記活性ガス流通経路の空間体積は大幅に縮小化される。
【0221】
上記活性ガス流通用隙間を通過した活性ガス7は、ガス噴出用開口部65B、ガス噴出孔23及び活性ガス通過空間31sを経由して、ガスの流れ15に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0222】
<その他>
また、実施の形態1及び実施の形態2の活性ガス発生装置101及び1021で用いる原料ガス5は、水素、窒素、酸素、弗素、塩素ガスのうち少なくとも一つを含むガスであることが望ましい。
【0223】
活性ガス発生装置101及び102は、上述したガスを原料ガスとすることにより、窒化膜・酸化膜などの成膜処理、エッチングガスや洗浄ガスの生成、表面改質処理が可能となる。
【0224】
以下、この点を詳述する。窒素や酸素を原料ガス5とすれば窒化膜や酸化膜の絶縁膜を成膜することができる。弗素や塩素ガスを原料ガス5とすれば、活性化した弗化ガスや塩素ガスをエッチングガスや洗浄ガスとして利用することができる。水素や窒素を原料ガス5とすれば、活性化した水素ガスや窒化ガスによって基板等の所定対象物の表面を水素化、窒化して表面改質処理が行える。
【0225】
上述した実施の形態で示した活性ガス用補助部材60(60A,60B)の材質として、セラミック等の絶縁体、あるいは金属等の導電体が考えられる。ただし、活性ガス用補助部材60として導電体を用いる場合、放電空間6との間に十分な距離を確保して活性ガス用補助部材60を配置することが望ましい。なぜなら、導電体は放電し易いため、放電空間6の近くに導電体を構成材料とした活性ガス用補助部材60が存在すると、活性ガス用補助部材60の構成元素がイオン化して活性ガス7と共に噴出される可能性が高くなるからである。
【0226】
また、原料ガス用補助部材72(72A,72B)の材質として、セラミック等の絶縁体、あるいは金属等の導電体が考えられる。
【0227】
なお、活性ガス用補助部材60及び原料ガス用補助部材72を電極用誘電体膜21(21A.21B)と一体的に形成する場合、電極用誘電体膜21の構成材料として用いられている誘電体を、活性ガス用補助部材60及び原料ガス用補助部材72の構成材料とすることが望ましい。
【0228】
また、上述した実施の形態では、活性ガス用補助部材60(60A,60B)及び原料ガス用補助部材72(72A,72B)を、接地電位電極部2の電極用誘電体膜21(21A,21B)の上面上に形成したが、上記形成に変えて、高電圧印加電極部1の電極用誘電体膜11(11A,11B)の下面上に形成しても良い。
【0229】
この場合、活性ガス用補助部材60の下方(−Z方向)に向かう形成高さは、電極用誘電体膜11及び21間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。したがって、活性ガス用補助部材60の下面と接地電位電極部2の電極用誘電体膜21の上面との間に上記活性ガス流通用隙間が設けられる。
【0230】
このように、電極用誘電体膜11の下面上に活性ガス用補助部材60を設けることにより、誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記活性ガス流通経路の一部を埋めて、上記活性ガス流通用隙間に制限することができる。
【0231】
同様にして、原料ガス用補助部材72の下方に向かう形成高さは、電極用誘電体膜11及び21間の距離(ギャップ長)よりも低く設定される。したがって、活性ガス用補助部材60の下面と接地電位電極部2の電極用誘電体膜21の上面との間に上記原料ガス流通用隙間が設けられる。
【0232】
このように、電極用誘電体膜11の下面上に原料ガス用補助部材72を設けることにより、誘電体空間内において、放電空間6とガス噴出孔23との間に、上記原料ガス流通経路の一部を埋めて、上記原料ガス流通用隙間に制限することができる。
【0233】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0234】
1 高電圧印加電極部
2 接地電位電極部
6 放電空間
10,10A,10H,10L,20,20A,20H,20L 電極用導電膜
11,11A,11B,21,21A,21B 電極用誘電体膜
12 補助導電膜
60,60A,60B 活性ガス用補助部材
72,72A,72B 原料ガス用補助部材
【要約】
本発明は、装置の後段に設けられる処理空間の電界強度を意図的に弱め、かつ、活性ガスの失活量を必要最小限に抑えることができる、活性ガス生成装置の構造を提供することを目的とする。そして、本発明の活性ガス発生装置(101)において、電極用誘電体膜(11)上に設けられる補助導電膜(12)は、平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、補助導電膜(12)は接地電位に設定されている。電極用誘電体膜(21)上に設けられる活性ガス用補助部材(60)は、電極用誘電体膜(11)及び(21)間の誘電体空間内において、放電空間(6)とガス噴出孔(23)との間に、活性ガス流通経路の一部を埋めて活性ガス流通用隙間に制限するように設けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8