(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873597
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】全固体リチウム電池の陽極及びこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1397 20100101AFI20210510BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20210510BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20210510BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20210510BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20210510BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20210510BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20210510BHJP
【FI】
H01M4/1397
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/136
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/36 B
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-222329(P2015-222329)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-127005(P2016-127005A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0195115
(32)【優先日】2014年12月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162123
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 誠
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ヒ、ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、テ、グン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ヒ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユン、ジ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン、グ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ナ、リ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ウン、ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン、ジン
【審査官】
森 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−254620(JP,A)
【文献】
特開2010−027458(JP,A)
【文献】
特開2010−138039(JP,A)
【文献】
特開2013−143299(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/112401(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0164620(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0315100(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101728538(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0200883(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103367791(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102163720(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01M 10/052
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)固体電解質を合成する段階;
b)メソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質を均一に分布させ、メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体を製造する段階;
c)Li2X粒子の表面に前記メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体をコーティングしてメソポーラス導電材−固体電解質−Li2Xの単一複合体を製造する段階;及び
d)複数個のメソポーラス導電材−固体電解質−Li2Xの単一複合体をバインダーを利用して相互連結する段階を含み、
前記Xは、S、Se、またはTeのいずれか一つであり、
前記メソポーラス導電材は、金属元素と炭素からなった10−6Ω・m以下の電気抵抗値を有する物質であって、前記メソポーラス導電材の大きさは10nmないし100μmで、孔隙率が10ないし90体積%であり、
前記段階b)の固体電解質を分布する方法は、溶融−拡散法、濾過注入法、及び気体−固体混合法からなる群から選択されることによって行われる、全固体リチウム電池の陽極の製造方法。
【請求項2】
前記バインダーに連結された複数個のメソポーラス導電材−固体電解質−Li2Xの単一複合体スラリーを陽極集電体にコーティングした後、圧延する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Li2Xは、陽極の活物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体電解質は、Li元素を含む2相系以上の物質としてリチウム酸化物を含む酸化物系固体電解質、及びリチウム硫化物を含む硫化物系固体電解質からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記段階c)のコーティングは、乾式ボールミリング、乾式プラネタリーミリング、メカノフュージョン、湿式ボールミリング、及び湿式プラネタリーミリングからなる群から選択される一つ以上によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記段階d)のバインダーは、フッ素系、及びゴム系からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングは、スリップキャスティング、加圧キャスティング、テープキャスティング、及びゲルキャスティングの方法からなる群から選択される方法で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記圧延は圧密、ロールプレス、及び等方圧密からなる群から選択される方法によって20〜50%の圧縮率の条件下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
陽極集電体及びバインダーで連結されたメソポーラス導電材−固体電解質−Li2Xの単一複合体を含む全固体リチウム電池の陽極において、
前記メソポーラス導電材−固体電解質−Li2Xの単一複合体は、Li2Xの表面がメソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体でコーティングされたもので、前記メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体はメソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質が均一に分布され、前記Xは、S、Se、またはTeのいずれか一つであり、
前記メソポーラス導電材は、金属元素と炭素からなった10−6Ω・m以下の電気抵抗値を有する物質であって、前記メソポーラス導電材の大きさは10nmないし100μmで、孔隙率が10ないし90体積%であり、メソポーラスの大きさは2nmないし50nmであり、
前記メソポーラス導電材気孔には前記固体電解質と前記Li2Xとが同時に存在している陽極。
【請求項10】
前記Li2Xは、陽極の活物質である、請求項9に記載の陽極。
【請求項11】
固体電解質は、Li元素を含む2相系以上の物質としてリチウム酸化物を含む酸化物系固体電解質とリチウム硫化物を含む硫化物系固体電解質からなる群から選択される1種以上である、請求項9に記載の陽極。
【請求項12】
前記バインダーがフッ素系及びゴム系からなる群から選択される1種以上である、請求項9に記載の陽極。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12のいずれか1項に記載の陽極、前記陽極の表面に積層された固体電解質、固体電解質の上に積層された陰極、及び陰極集電体を含むリチウム硫黄二次電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウム電池の陽極及びこれを応用した二次電池システムに関するもので、メソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質が均一に分布されたナノ複合体を製作し、非金属固体であるS、Se及びTeのいずれか一つからなったリチウム化合物の表面にメソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体をコーティングしてメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体を製造し、陽極として利用する二次電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気自動車や電池電力の保管システムなどの大容量電力保管電池と携帯電話、カムコーダー、ノートパソコンなどの携帯電子機器の小型の高性能エネルギー源として使われている。携帯電子機器の小型化と長時間連続使用を目指して、部品の軽量化と低消費電力化に対する研究と共に、小型ながら高容量を実現できる二次電池が求められている。二次電池としてのリチウムイオン電池は、ニッケルマンガン電池やニッケルカドミウム電池よりエネルギー密度が高くて面積当たり容量が大きい。また、自己放電率が低いため寿命が長い。さらに、メモリー効果がないので、使用が便利で寿命が長い特性を有する。
【0003】
しかし、次世代電気自動車用バッテリーとして、リチウムイオン電池は、過熱による安全性の問題、低いエネルギー密度及び低出力などのような様々な問題点を抱えている。このようなリチウムイオン電池の問題点を克服するために、高出力及び高エネルギー密度が具現できるリチウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池のようなポストリチウムイオン電池の研究開発が活発に進められている。
【0004】
リチウム硫黄二次電池は、既存のリチウムイオン電池の理論エネルギー密度より5倍も高い2500Wh−kgを示すことで、高出力、高エネルギー密度を求める電気自動車用バッテリーに相応しい。しかし、液体電解質を使うことで発生するポリスルフィドシャトル現象は、自己放電効果を引き起こしながらリチウム硫黄二次電池の寿命を縮める原因となり、充放電時に発生する液体電解質の副反応及び高温不安定性によって、安全性に危険と負担を抱いている。
【0005】
リチウムを利用する二次電池の材料に関する先行文献として、韓国公開特許第2013−0123142号は、3次元多孔構造物として製作される固体高イオン伝導体;前記多孔を成す、開かれた各気孔内に充填されるリチウム金属またはリチウム合金;各気孔内にリチウム金属またはリチウム合金が充填された固体高イオン伝導体の一面の方に結合される集電体から構成されることを特徴とする、リチウム金属バッテリー用リチウム電極を開示する。
【0006】
日本登録特許第10−4615339号は、多孔質固体電極及びこれを利用した全固体リチウム二次電池に関するもので、リチウム二次電池用電極において、前記電極が、0.5×10
−4S−cm
−1以上のリチウムイオン導電性を表す多孔質固体電解質と、前記多孔質固体電解質の孔の内部に充電される電池活物質との複合体から構成されることを特徴とする、リチウム二次電池用電極を開示する。
【0007】
韓国公開特許第2013−0073766号は、i)孔隙を有する多孔性導電材の孔隙内部に硫黄粒子が充電された硫黄多孔性ナノ複合構造体と、ii)孔隙内部が空いている同種の多孔性導電材が1:0.1〜0.9の体積の割合で相互隣接して配置されている、硫黄多孔性ナノ複合構造体と多孔性ナノ導電材を含んだリチウム硫黄二次電池用陽極を開示する。
【0008】
日本公開特許第2009−094029号は、全固体型のリチウム二次電池及び全固体型リチウム二次電池用電極に関するもので、少なくとも一つの電極において、活物質、導電助材、高分子固体電解質及び無機固体電解質の粉末を含んだ電極合材に対して高分子固体電解質及び無機固体電解質の粉末が占める割合が、体積分率で50%未満の電極を有する全固体型リチウム二次電池を開示する。
【0009】
日本公開特許第2013−051171号は、全固体電池用電極体及び全固体電池に関するもので、活物質粒子、リチウムイオン伝導性ガラス固体電解質及び酸化物系導電材を含んだ電極層と、リチウムイオン伝導性ガラス固体電解質を含んだ固体電解質層を含む全固体電池用電極体を開示する。
【0010】
しかし、前記公知された技術でも、特に自動車用電池システムで求められる水準の長期安全性、ポリスルフィドのシャトル現象の抑制、または高效率の充放電効果を得ることは難しい。よって、本発明では陽極の材料としての特殊構成の複合体を提供し、前記公知された技術の性能を上回る、安定して高效率の全固体リチウム電池システムを提供しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第2013−0123142号
【特許文献2】日本登録特許第10−4615339号
【特許文献3】韓国公開特許第2013−0073766号
【特許文献4】日本公開特許第2009−094029号
【特許文献5】日本公開特許第2013−051171号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前述の先行技術の限界を克服するために、固体電解質を使用した全固体電池システムを導入し、全固体電池で主なイシューであるイオン−電子の移動経路を確保するためにメソポーラス導電材−固体電解質複合体を適用し、充放電時に発生する活物質の体積の膨脹による構造的破壊を防止するため、リチウム化合物(Li
2X;X=S、SeまたはTe)を活物質として使うことで、体積の膨脹時にも安定した構造を保つことができる全固体リチウム電池の陽極及びこれを適用した全固体電池システムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
a)固体電解質を合成する段階;
b)メソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質を均一に分布させ、メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体を製造する段階;
c)Li
2X粒子の表面に前記メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体をコーティングしてメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体を製造する段階;及び
d)複数個のメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体をバインダーを利用して互いを連結する段階を含む全固体リチウム電池の陽極の製造方法を提供する。前記Xは、S、Se及びTeのいずれか一つである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、従来の技術に比べて次のような著しい長所がある。
1)従来の液体電解質システムに比べて活物質のシャトル現象が表れないので寿命の特性が優秀である。
2)液体電解質を使う時と比較して、高温で優秀な安全性を示す。
3)液体電解質を使用しないため、従来の技術に比べて高いエネルギー密度を有する二次電池の製造にが容易である。
4)陽極活物質としてLi
2Xの形態の活物質を使用することで、還元反応時に表れるXの体積の膨脹にも十分に空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の全固体リチウム電池内の化学メカニズムを図示化したものである。
【
図2】本発明の全固体リチウム電池の陽極を構成する方法を図示化したものである。
【
図3】本発明の全固体リチウム電池の陽極を利用した電池システムを図示化したものである。
【
図4】本発明によって製造された全固体複合陽極、及び従来技術による陽極を使用して、通水能力(discharge capacity)及び電圧(voltage)を測定した結果である。
【0016】
図1は、リチウム硫黄バッテリーの従来技術について説明したものである。理論的に、放電する時、リチウムの陰極から移動されてきた電子が導電材の表面に接した硫黄粒子と結合してS
82−に還元され、液体電解質内に溶解される。S
82−はリチウムイオンと結合して電解質に溶解された状態のLi
2S
8(Long−chain polysulfide)を形成する。Li
2S
8は、Liイオンとの持続的還元反応によって、最終的にLi
2S
2−Li
2S(Short−chain polysulfide)の形態でリチウム陰極表面に析出される。充電する時には、酸化反応が起きて逆過程を経て、再びS
82−に戻って来るようになり、導電材の表面で電子を失って硫黄粒子として析出される。しかし、図面から見られるように、充電時にLi
2S
2−Li
2SからLi
2S
8への酸化反応過程でリチウムイオンと反応し、再びLi
2S
2−Li
2Sに還元されるポリスルフィドシャトル現象が表れる。このようなシャトル現象は、液体電解質の内部で作動するリチウム硫黄バッテリーのメカニズムであり、液体電解質システムで最大の問題点である、充電時も自己放電が持続的に起きる現象によってバッテリーの寿命が縮まる問題点を発生させるし、放電時に活物質の質量の效率性を減少させる。従来技術の問題点を解決するために、本技術では固体電解質複合体を形成させて前記のような問題点を解決しようとする。
【0017】
ここで、本発明は、
a)固体電解質を合成する段階;
b)メソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質を均一に分布させ、メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体を製造する段階;
c)Li
2X粒子の表面に前記メソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体をコーティングしてメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体を製造する段階;及び
d)複数個のメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体をバインダーを利用して相互連結する段階を含む全固体リチウム電池の陽極製造方法を提供する。前記Xは、S、Se及びTeの中の一つである。
【0018】
図2は、本技術を適用した全固体リチウム電池の陽極構造と製作方法に対する説明である。先ず、メソポーラス導電材と固体電解質を合成してメソポーラス導電材気孔の内部に固体電解質が均一に分布されているナノ複合体を製作する。
【0019】
以後、Xが周期表上、6族元素に属する物質のうち、非金属固体に該当するS、Se、Teのいずれか一つからなるLi
2Xの形態のリチウム化合物の表面にメソポーラス導電材−固体電解質のナノ複合体をコーティングしてメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体を形成する。最終的に電極を製造するために、メソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体を有機系バインダーで連結した後、イオンの伝導と電子の伝達が円滑に行われるように圧延する。
【0020】
図3は、本技術を適用した全固体リチウム電池の陽極構造と製作方法に対する説明である。前記電池システムを製作するために、先ず、陽極集電体の表面にメソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体スラリーをコーティングした後、圧延する。このように製造された陽極表面に、固体電解質を薄膜形態で積層した後、対極として陰極集電体の表面にリチウム及びシリコーンを素材として使った陰極を接合させ、単一セルの形態で製作する。前記電池システムの駆動原理は次の通りである。放電時、陽極活物質であるLi
2X(X:S、Se、Te)が電子を失い、Li
2X(S)→2Li
+ +X(S)+2e
−のような酸化反応が起きながら、リチウムイオンは陰極の方へ移動するようになり、Xは陽極の表面に固状と形成される。充電時には、陰極表面のリチウムが酸化され陽極の方へ移動するようになり、陽極の内部ではX(S)+2Li
+ + 2e
− →Li
2X(S)のような還元反応が起きてLi
2Xが形成される。
【0021】
本発明のLi
2Xは、陽極の活物質として利用される。
【0022】
一方、メソポーラス導電材は、金属元素と炭素からなる10−6Ω・m以下の電気抵抗値を有する物質群から選択される1種以上である。前記メソポーラス導電材の大きさは数nm〜100μm、孔隙率が10〜90体積%、メソポーラスの大きさは毛細管力(capillary force)が作用される範囲の2nm〜50nm以下が好ましい。
【0023】
固体電解質はLi元素を含む2相(phase)系以上の物質で、リチウム酸化物を含む酸化物系固体電解質とリチウム硫化物を含む硫化物系固体電解質からなる群から選択される1種以上である。
【0024】
段階b)の固体電解質を分布する方法は、固体電解質に熱を加えて流動性を有する液状に変化させ、導電材のメソポーラス内部に注入する溶融−拡散法(Melting−Diffusion method)または濾過注入法(Infilteration method)、または固体電解質を気化した後、導電材のメソポーラス内部に固状で蒸着させる気体−固体混合法(Gas−Solid mixing method)によって行われる。
【0025】
段階c)のコーティング方法は、機械的乾式及び/または湿式ミキシングによって全て行われることができる。機械的乾式ミキシングの場合、ボールミリング、プラネタリーミリングまたはメカノフュージョン(mechanofusion)などがあり、機械的湿式ミキシングの場合、導電材と固体電解質の副反応が発生しない溶媒を使って、ボールミリングまたはプラネタリーミリングなどを行うことができる。
【0026】
段階d)のバインダーは、フッ素(Fluorine)系、ゴム(Rubber)系などからなる群から選択される1種以上である。
【0027】
一方、メソポーラス導電材−固体電解質−Li
2Xの単一複合体スラリーを陽極集電体にコーティングした後圧延する段階において、コーティングは、スリップキャスティング(Slip casting)、加圧キャスティング(Pressure casting)、テープキャスティング(Tape casting)、またはゲルキャスティング(Gel casting)の方法で、圧延は、圧密(Compaction)、ロールプレス(Roll press)、等方圧密(Isostatic Compaction)などによって20〜50%の圧縮率条件で行われることができる。
【0028】
本発明は、従来の技術に比べて次のような長所がある。
1)従来の液体電解質システムに比べて活物質のシャトル現象が表れないので、寿命特性が優秀である。
2)液体電解質を使う時に比べて、高温で優秀な安全性を表す。
3)液体電解質を使わないので、従来の技術に比べて高いエネルギー密度を持つ二次電池製造が容易である。
4)陽極活物質としてLi
2Xの形態の活物質を使うことで、還元反応時に表れるXの体積膨脹にも十分な空間確保が可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を下記の具体例でより詳細に説明するが、これは一例であるだけで、本発明の範囲を限定したり制限しようとすることではない。
【0030】
1.OMC/SE複合体の製作
Li
2S粉末とP
2S
5を80:20wt%の割合で混合した後、8時間500rpmでミーリングし、200℃で熱処理した。合成されたLSPS粉末をN−メチルホルムアミド(NMF)溶媒に入れて過飽和状態まで溶解し、LSPS溶液にOMC粉末を添加して分散させた後、150℃で3時間真空で熱処理し、溶媒を除いてOMC/SE複合体を製造した。
【0031】
2.OMC/SE/Li2S複合体の製作
前記OMC/SE複合体とLi
2S粉末を6:4の質量比で混合した後、300rpmで3時間プラネタリーミリングし、OMC/SE/Li
2S複合体を製造した。
【0032】
3.全固体複合陽極の製作
前記で合成されたOMC/SE/Li
2S粉末とゴム(rubber)系列のバインダー及びBTX系溶媒を混合して陽極スラリーを製造し、基材の表面にコーティングした後80℃で8時間対流乾燥して溶媒を除き、全固体複合陽極を製造した。
【0033】
前記のように製造された全固体複合陽極、及び従来技術による陽極を使って通水能力(discharge capacity)及び電圧(voltage)を測定した結果は、
図4のとおりであった。