(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TDを前記トウバンドのトータルデニールとし、Lをプラグ長とするとき、前記演算部は、数2に基づいて前記重量WT1を算出する、請求項2に記載のシガレットフィルター製造装置。
[数2]
WT1=TD×L/9000
捲縮されて搬送されるトウバンドに張力を与えて前記トウバンドを開繊する複数の開繊ロール対と、前記複数の開繊ロール対よりも前記トウバンドの搬送方向の下流側において、前記複数の開繊ロール対のうちで最も前記下流側の開繊ロール対の周速度よりも遅い周速度で回転し、前記トウバンドに及ぶ前記張力を緩和させて前記トウバンドを搬送する搬送ロール対と、前記搬送ロール対よりも前記下流側において、前記トウバンドを成形して前記下流側に搬出する巻管部とを備えるシガレットフィルター製造装置の制御方法であって、
捲縮が解除された状態での前記トウバンドの単位長当たりの重量WT1と、プラグに詰め込まれた前記トウバンドの前記単位長当たりの重量WT2との重量比WT2/WT1であるプラグ残存捲縮RCR(plug)と、前記巻管部からの前記トウバンドの搬出速度VKDFと、最も前記下流側の前記開繊ロール対の周速度V2とにより、前記搬送方向で最も上流側の前記開繊ロール対の周速度V0を用いずに、最も前記下流側の前記開繊ロール対におけるトウバンド残存捲縮RCR(V2)を算出し、前記トウバンド残存捲縮RCR(V2)の値が、予め定められた許容値M1となるように、前記周速度V2を制御する、シガレットフィルター製造装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、各図を参照して説明する。以下の説明において、「上流側」とは、トウバンドの搬送方向の上流側を指す。また「下流側」とは、トウバンドの搬送方向の下流側を指す。
【0029】
(実施形態)
[シガレットフィルター製造装置]
図1は、実施形態に係るシガレットフィルター製造装置1(以下、製造装置1と称する。)の側面図である。
図2は、
図1の製造装置1の部分的な側面図である。
図1に示すように、製造装置1は、収束リング2、第1開繊ユニット3、ターンバッフル4、ブーム5、第2開繊ユニット6、プレテンションロール対7、第1開繊ロール対8、第2開繊ロール対9、第3開繊ユニット10、可塑剤添着装置11、搬送ロール対12、トランスポートジェット13、巻管部14、ガニチャーベルト15、及び切断装置16を備える。また、製造装置1は、制御部19と、制御部19が収容された筐体20とを備える。
【0030】
製造装置1の近傍には、梱包容器50が配置される。梱包容器50には、ベール状に折り畳まれて圧縮されたトウバンド60が梱包される。
図1において、梱包容器50は、断面構造を示す。
【0031】
収束リング2は、梱包容器50から繰り上げられたトウバンド60を内部に挿通させて収束させる。第1開繊ユニット3は、互いの板面が並行に対向配置された一対のプレート17、18を有する。一対のプレート17、18間には、トウバンド60が挿通される間隙が設けられる。一対のプレート17、18のうち、一方のプレートの表面には噴出口が設けられる。前記噴出口からは、搬送されるトウバンド60に向けて加圧空気が噴出される。前記噴出口は、例えば、スリット或いは孔の少なくともいずれかを有する。前記噴出口から噴出される加圧空気は、トウバンド60に当てられる。これによりトウバンド60は、繊維同士の間隙が広げられて幅方向に開繊される。
【0032】
ターンバッフル4は、一例として、曲げ加工された板部材である。ターンバッフル4は、梱包容器50から繰り上げられたトウバンド60を第2開繊ユニット6に向けてガイドする。ブーム5は、一例として、長尺状のパイプである。ブーム5の上端部には、収束リング2、第1開繊ユニット3及びターンバッフル4が取り付けられる。ブーム5の下端部は、筐体20に固定される。
【0033】
第2開繊ユニット6は、一例として、第1開繊ユニット3と同一の構成を有する。第2開繊ユニット6は、第1開繊ユニット3により開繊されたトウバンド60を、更に幅方向に開繊する。第2開繊ユニット6は、筐体20に支持される。
【0034】
プレテンションロール対7、第1開繊ロール対8、及び第2開繊ロール対9は、トウバンド60の搬送路35に沿って設けられる。プレテンションロール対7は、第2開繊ユニット6より下方で且つ第2開繊ユニット6よりも下流側に配置される。
【0035】
プレテンションロール対7は、上側ロール21と下側ロール22とを有する。上側ロール21と下側ロール22とは、互いの周面を対向させて配置されている。プレテンションロール対7は、従動ロールである。第1開繊ロール対8と第2開繊ロール対9とが回転駆動されることで、プレテンションロール対7は、周速度V0で回転する。
【0036】
プレテンションロール対7は、トウバンド60に対して、搬送方向Qに張力を予備的に付与する。プレテンションロール対7は、第1開繊ロール対8及び第2開繊ロール対9と共に、トウバンド60を開繊するための開繊ロール対としても機能する。
【0037】
第1開繊ロール対8と第2開繊ロール対9とは、捲縮されて搬送されるトウバンド60に張力を与えてトウバンド60を開繊する。第1開繊ロール対8は、プレテンションロール対7よりも下流側に配置される。
【0038】
第1開繊ロール対8は、上側ロール23と下側ロール24とを有する。上側ロール23と下側ロール24とは、互いの周面を対向させて配置されている。第1開繊ロール対8は、周速度V1で回転する。第1開繊ロール対8は、「フィードロール」とも称する。
【0039】
第2開繊ロール対9は、第1開繊ロール対8よりも下流側に配置される。第2開繊ロール対9は、上側ロール25と下側ロール26とを有する。上側ロール25と下側ロール26とは、互いの周面を対向させて配置されている。第2開繊ロール対9は、後述する開繊処理部33の最も下流側に位置する。第2開繊ロール対9は、周速度V2で回転する。第2開繊ロール対9は、「レシオロール」とも称する。
【0040】
上側ロール23、25は、トウバンド60の幅方向に軸方向を向けた状態で、筐体20に軸支されている。上側ロール23、25は、駆動ロールである。上側ロール23、25には、筐体20に収容された駆動部から、回転駆動力が個別に伝えられる。
【0041】
筐体20の操作部からオペレータが入力した情報に基づき、制御部19が前記駆動部を制御することで、上側ロール23の周速度V1と上側ロール25の周速度V2とが制御される。一例として、周速度V2は、周速度V1よりも速くなるように制御される。上側ロール23の周速度V1と上側ロール25の周速度V2とが制御されることで、プレテンションロール対7の周速度V0が間接的に調整される。
【0042】
筐体20には、速度計36、37が設けられる。速度計36は、上側ロール23の周速度V1を計測する。速度計37は、上側ロール25の周速度V2を計測する。速度計36、37は、制御部19に接続される。これによって周速度V1、V2は、制御部19に管理される。
【0043】
下側ロール24、26は、トウバンド60の幅方向に回転軸の軸方向を向けた状態で、筐体20に設けられた支持部により軸支される。前記支持部は、昇降装置を有する。上側ロール23と下側ロール24との間の距離と、上側ロール25と下側ロール26との間の距離とは、前記昇降装置により調整される。
【0044】
トウバンド60は、上側ロール23と下側ロール24との間と、上側ロール25と下側ロール26との間とに挿通される。これにより、第1開繊ロール対8と第2開繊ロール対9とによって、トウバンド60が所定の搬送速度で搬送される。
【0045】
図2に示すように、製造装置1には開繊処理部33が設けられる。開繊処理部33は、プレテンションロール対7とトウバンド60とが最初に接触する接触位置P1から、第2開繊ロール対9とトウバンド60との接触位置(上側ロール25と下側ロール26とのニップ位置N)までの開繊領域L1において、トウバンド60を開繊する。
【0046】
開繊領域L1では、トウバンド60は、プレテンションロール対7、第1開繊ロール対8、及び第2開繊ロール対9によって、搬送方向Qと幅方向とに張力を与えられて開繊される。これによりトウバンド60が搬送方向Qに伸ばされ、トウバンド60の捲縮された複数本のフィラメント同士が引き離され、トウバンド60が嵩高くなるように開繊される。
【0047】
トウバンド60の開繊程度は、プレテンションロール対7の周速度V0と、第2開繊ロール対9の周速度V2との速度比(以下、「ストレッチ比」と称する。)V2/V0により調節される。ストレッチ比V2/V0の値を1よりも大きくすると、トウバンド60に及ぶ張力が大きくなり、開繊程度が大きくなる。但し、トウバンド60に及ぶ張力が過大であると、トウバンド60が降伏限界点に達してフライ(毛羽立ち)が生じたり、極端な場合にはトウバンド60の破断が生じたりする。
【0048】
図1及び2では、各ロール対7〜9は水平方向に並設されているが、上下方向に並設されていてもよい。また、上側ロール23、25の一方と、下側ロール24、26の一方とには、トウバンド60を幅方向に開繊する溝部が周方向に形成されていてもよい。ロール23〜26は、金属製のロールであってもよい。
【0049】
また下側ロール24、26は、例えば、ゴム製のロールであってもよい。前記ゴム製のロールとしては、例えば、帯電防止用ロールが好適である。第1開繊ロール対8と第2開繊ロール対9とは、トウバンド60に対して滑りにくいことが望ましい。ロール23〜26は、回転中に軸線が径方向にブレにくいことが望ましい。
【0050】
第3開繊ユニット10は、一例として、第1開繊ユニット3と同様の構成を有する。第3開繊ユニット10は、開繊処理部33で開繊されたトウバンド60を更に幅方向に開繊する。これにより、トウバンド60の形状が整えられ、可塑剤添着装置11において、トウバンド60に可塑剤が付着し易くなる。第1開繊ユニット3、第2開繊ユニット6及び第3開繊ユニット10は、「バンディングジェット」とも称する。
【0051】
可塑剤添着装置11は、箱型の筐体27を有する。筐体27の内部には、液状の可塑剤が貯留される。この可塑剤は、一例として、トリアセチンを含む。筐体27の内部には、第3開繊ユニット10から搬出されるトウバンド60が挿通される。可塑剤添着装置11は、トウバンド60に対して可塑剤を噴霧等の方法により付着させる。
【0052】
トウバンド60に可塑剤を付着することで、トウバンド60中のフィラメントの一部が溶解し、トウバンド60の内部に三次元の網目構造が形成される。これにより、後述する巻管部14においてトウバンド60がロッド状に成形される際、トウバンド60の形状が保持され易くなる。
【0053】
筐体27と搬送ロール対12との間には、幅検出装置39が設けられている。幅検出装置39は、可塑剤添着装置11から搬出されるトウバンド60の幅を検出する。幅検出装置39は、一例として、CCD等の撮像素子を用いたラインセンサを有する。幅検出装置39は、制御部19に接続されている。幅検出装置39の検出信号は、制御部19に送られる。
【0054】
搬送ロール対12は、複数の開繊ロール対8、9のうちで最も下流側の開繊ロール対(第2開繊ロール対9)の周速度V2よりも遅い周速度V3で回転する。搬送ロール対12は、トウバンド60に及ぶ前記張力を緩和させて、トウバンド60を搬送する。
【0055】
搬送ロール対12は、上側ロール31と下側ロール32とを有する。搬送ロール対12は、可塑剤添着装置11から搬出されるトウバンド60を、上側ロール31と下側ロール32との間に挿通して、トランスポートジェット13に搬送する。上側ロール31は、駆動ロールである。
【0056】
周速度V3は、制御部19に制御される。一例として、上側ロール31の周速度V3は、第2開繊ロール対9の上側ロール25の周速度V2よりも遅くなるように設定される。搬送ロール対12は、「送り込みロール」とも称する。
【0057】
図2に示すように、製造装置1には緩和処理部34が設けられる。緩和処理部34は、第2開繊ロール対9のニップ位置Nから、搬送ロール対12の上側ロール31が最初にトウバンド60に接触する接触位置P2までの緩和領域L2において、トウバンド60に及ぶ張力を緩和する。
【0058】
緩和領域L2において、トウバンド60に及ぶ張力の緩和程度は、第2開繊ロール対9の周速度V2と、搬送ロール対12の周速度V3との速度比(以下、「リラックス比」と称する。)V3/V2により調節される。
【0059】
一例として、リラックス比V3/V2の値を1よりも小さくすると、緩和の程度が大きくなる。なお、緩和領域L2には第3開繊ユニット10が配置されているが、緩和領域L2の全体においては、リラックス比V3/V2の値を1よりも小さくすることで、トウバンド60に対して搬送方向Qに及ぶ張力は緩和される。
【0060】
トランスポートジェット13は、搬送ロール対12から搬出されるトウバンド60をジェット気流により巻管部14に搬送する。巻管部14は、搬送ロール対12よりも下流側において、トウバンド60を成形して下流側に搬出する。巻管部14は、ファンネル41、トング42、及びガニチャー43を有する。
【0061】
巻管部14では、トランスポートジェット13から搬出されるトウバンド60が、漏斗状のファンネル41で渦巻き状に巻き取られてロッド状に成形される。また巻紙40が、トング42によりトウバンド60側に案内される。ロッド状に成形されたトウバンド60は、駆動ローラ44により回動されるガニチャーベルト15により搬送される。巻紙40は、ガニチャー43において、ロッド状に成形されたトウバンド60の外周に巻回され、トウバンド60に固定される。
【0062】
ガニチャー43の出口よりも下流側に位置するトウバンド60の搬送位置P3には、速度計38が設けられている。速度計38は、巻管部14からのトウバンド60の搬出速度V
KDFを計測する。搬送位置P3は、一例として、ガニチャー43と切断装置16との間に位置している。搬出速度V
KDFは、ロッド状に成形されたトウバンド60が巻管部14から搬出される速度であり、「巻上速度」とも称する。
【0063】
速度計38は、ガニチャーベルト15を回動させる駆動ローラ44の周速度を測定することで、搬出速度V
KDFを計測する。速度計38は、制御部19に接続される。これにより、搬出速度V
KDFは、制御部19に管理される。搬出速度V
KDFは、通常、製造装置1におけるプラグ61の製造効率と比例する。
【0064】
切断装置16は、ロッド状に成形されたトウバンド60を所定の長さ寸法(例えば88mm以上136mm以下の範囲の値の長さ寸法)に切断する。これによりプラグ61が製造される。プラグ61を更に所定の長さ寸法に切断することで、シガレットフィルターが製造される。
【0065】
図3は、
図1の制御部19の機能ブロック図である。制御部19は、複数の開繊ロール対8、9と搬送ロール対12との周速度V1、V2、及びV3を制御する。制御部19は、演算部29と、演算部29に接続された記憶部30とを有する。制御部19は、記憶部30に格納された制御プログラムに基づいて動作する。
【0066】
制御プログラムは、トウバンド60の開繊状態と、プラグ61へのトウバンド60の詰め込み重量とが仕様通りになるように、制御部19に、周速度V1、V2、及びV3を制御させる。このため制御プログラムは、演算部29に後述する数1〜3に基づく所定の演算を実行させる。
【0067】
なお、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、及び各種メモリーカードのような記録媒体に制御プログラムを格納しておき、制御部19に記録媒体から制御プログラムを読み込ませてもよい。
【0068】
制御部19は、周速度V2を制御するための指標として、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)を用いる。トウバンド残存捲縮RCR
(V2)は、捲縮が解除された状態でのトウバンド60の単位長当たりの重量WT1と、第2開繊ロール対9のニップ位置Nにおけるトウバンド60の前記単位長当たりの重量WT3との重量比WT3/WT1である。重量WT1は、具体的には、前記単位長を9000mに設定し、繊維の長手方向に2.27kg(5ポンド)の張力をトウバンド60に掛けることにより、トウバンド60の捲縮が実質的に解除された状態でのトウバンド60の前記単位長当たりの重量を指す。トウバンド残存捲縮RCR
(V2)は、ニップ位置Nにおいてトウバンド60に残存する捲縮の程度を示す。トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値は、トウバンド60の捲縮残留量が多いほど大きくなる。
【0069】
制御部19は、プラグ残存捲縮RCR
(plug)と、周速度V2と、搬出速度V
KDFとに基づいて演算を行うことによりトウバンド残存捲縮RCR
(V2)を算出し、算出値が予め定められた許容値M1であるか否かを判定する。
【0070】
ここでプラグ残存捲縮RCR
(plug)は、捲縮が解除された状態でのトウバンド60の前記単位長当たりの重量WT1と、プラグ61に詰め込まれたトウバンド60の前記単位長当たりの重量WT2との重量比WT2/WT1である。プラグ残存捲縮RCR
(plug)は、プラグ61に詰め込まれたトウバンド60に残存する捲縮の程度を示す。
【0071】
プラグ残存捲縮RCR
(plug)の値は、トウバンド60の捲縮残留量が多いほど大きくなる。また、プラグ残存捲縮RCR
(plug)の値は、プラグ61に詰め込まれたトウバンド60の量が多いほど大きくなる。以下、製造装置1の制御方法について、具体的に説明する。
【0072】
[シガレットフィルター製造装置の制御方法]
図4は、
図1の制御部19の制御フロー図である。製造装置1を稼働させる際、オペレータは、まず筐体20の操作部を通じて、周速度V1、V2、及びV3を仮設定するための情報を製造装置1に入力する。このときオペレータは、例えば、製造しようとするシガレットフィルターの仕様に大略的に合うように、周速度V1、V2、及びV3を設定するための情報を入力する。
【0073】
その後、制御部19は、制御プログラムに基づいて、以下の各ステップを順次実行する。制御部19は、オペレータが入力した情報を基に、周速度V1、V2、及びV3を仮設定する。これにより、周速度V0が間接的に仮設定される。制御部19は、製造装置1の仮稼働を開始する(ステップS1)。
【0074】
次に制御部19は、仮稼働により製造されたプラグ61の重量を計測する。制御部19は、プラグ61へのトウバンド60の詰め込み重量が、シガレットフィルターの仕様に合う範囲(以下、「許容範囲」と称する。)以内か否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において、制御部19は、プラグ61の重量が許容範囲外であると判定した場合、次にプラグ61の重量が、許容範囲よりも軽いか否かを判定する(ステップS3)。
【0075】
ステップS3において、制御部19は、プラグ61の重量が許容範囲よりも軽いと判定した場合、次に周速度V1、V2、及びV3の速度比を保ったまま、周速度V1、V2、及びV3を一定量増速し(S4)、フローをステップS2に戻す。或いは、ステップS3において、制御部19は、プラグ61の重量が許容範囲よりも軽くないと判定した場合、次に周速度V1、V2、及びV3の速度比を保ったまま、周速度V1、V2、及びV3を一定量減速し(ステップS5)、フローをステップS2に戻す。
【0076】
ステップS2において、制御部19は、プラグ61の重量が許容範囲以内であると判定した場合、次に演算部29にトウバンド残存捲縮RCR
(V2)を算出させる(ステップS6)。一例として演算部29は、以下の数1に基づいて、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)を算出する。
[数1]
RCR
(V2)=RCR
(plug)×V
KDF/V2
【0077】
この数1は、製造装置1内の複数位置において、製造装置1内を搬送されるトウバンド60の単位時間当たりの搬送量が略一定であること(RCR
(V2)×V2=RCR
(plug)×V
KDF)に着眼したことにより導出されたものである。この数1によれば、製造装置1において、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の算出のために測定が必要な速度としては、搬出速度V
KDFと周速度V2のみでよい。従って、周速度V0を測定する速度計を持たない製造装置1においても、比較的簡素な演算により、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)が算出される。
【0078】
制御部19は、数1における周速度V2の値として、制御部19がステップS6を実行する時点の周速度V2の値を用いる。また制御部19は、速度計38により計測した搬出速度V
KDFの値を用いる。また演算部29は、一例として、トウバンド60のTDとプラグ長Lとにより表される以下の数2に基づいて、重量WT1を算出する。
[数2]
WT1=TD×L/9000
【0079】
ここでプラグ残存捲縮RCR
(plug)は、トウバンド60のTDと、1本のプラグ61に詰め込まれるプラグ長L当たりのトウバンド60の詰め込み重量(NTW:Net tow weight)と、プラグ長Lとにより表される以下の数3に基づいて算出することもできる。更に演算部29は、一例として、数3によりプラグ残存捲縮RCR
(plug)を算出する。
[数3]
RCR
(plug)=NTW/TD×9000/L
【0080】
ステップS6では、演算部29が数1、数2、及び数3に基づいて演算を行うことで、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)が算出される。次に制御部19は、算出されたRCR
(V2)の値が、第1目標範囲内か否かを判定する(ステップS7)。
【0081】
ここで第1目標範囲は、製造装置1のストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを適切値に設定するためのトウバンド残存捲縮RCR
(V2)の範囲である。第1目標範囲の値は、一例として、0.80以上0.92以下の範囲の値であるが、これに限定されない。
【0082】
ステップS7において、制御部19は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲内ではないと判定した場合、次にトウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、目標範囲より大きいか否かを判定する(S8)。
【0083】
ステップS8において、制御部19は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲より大きいと判定した場合、次に周速度V2を一定量だけ増速させ(ステップS9)、フローをステップS6に戻す。ステップS8において、制御部19は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲より大きくないと判定した場合、次に周速度V2を一定量だけ減速させ(ステップS10)、フローをステップS6に戻す。
【0084】
制御部19は、ステップS7において、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲の値であると判定するまで、ステップS6〜S10を繰り返す。これにより制御部19は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲内の値である許容値M1になるように制御する。
【0085】
ステップS7において、制御部19は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、第1目標範囲内であると判定した場合、次に幅検出装置39の検出信号により、可塑剤添着装置11の出口付近におけるトウバンド60の幅が、第2目標範囲の値であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0086】
ここで第2目標範囲は、製造装置1のストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを適切値に設定するためのトウバンド60の幅の範囲である。第2目標範囲の値は、一例として、21cm以上30cm未満の範囲の値であるが、これに限定されない。
【0087】
ステップS11において、制御部19は、トウバンド60の幅が、第2目標範囲内ではないと判定した場合、次にトウバンド60の幅が、第2目標範囲より大きいか否かを判定する(ステップS12)。
【0088】
ステップS12において、制御部19は、トウバンド60の幅が、第2目標範囲より大きいと判定した場合、次に周速度V3を一定量だけ増速させ(ステップS13)、フローをステップS11に戻す。ステップS12において、制御部19は、トウバンド60の幅が、第2目標範囲より大きくないと判定した場合、次に周速度V3を一定量だけ減速させ(ステップS14)、フローをステップS11に戻す。
【0089】
制御部19は、ステップS11において、トウバンド60の幅が、第2目標範囲内の値であると判定するまで、ステップS11〜S14を繰り返す。これにより制御部19は、トウバンド60の幅が第2目標範囲内の値となるように、リラックス比V3/V2の値を許容値M2に制御する。
【0090】
ステップS11において、制御部19は、トウバンド60の幅が、第2目標範囲内の値であると判定した場合、次に現時点の周速度V1、V2、V3を把握し、これらの値を設定する(ステップS15)。これにより、製造装置1のストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とが設定される。ステップS15の後、制御部19は、当該フローを終了する。
【0091】
以上説明したように、製造装置1によれば、プラグ残存捲縮RCR
(plug)と、搬出速度V
KDFと、最も下流側の開繊ロール対9の周速度V2とによりトウバンド残存捲縮RCR
(V2)を算出し、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、予め定められた許容値M1となるように、周速度V2を制御する。
【0092】
このように、客観的なパラメータを用いて周速度V2を制御することで、製造装置1を簡素な方法により制御できる。また、周速度V2を制御することで、複数の開繊ロール対8、9によりトウバンドに適切に張力を付与できると共に、最下流側の開繊ロール対9と搬送ロール対12とによって、トウバンド60に及ぶ張力を適切に緩和できる。
【0093】
よって、トウバンド60の開繊状態が安定化されると共に、製造装置1内を搬送されるトウバンド60の単位時間当たりの搬送量が均一化されて、シガレットフィルターへのトウバンド60の詰め込み重量が安定化され、シガレットフィルターの通気抵抗や硬度がばらつくのを抑制できる。
【0094】
また、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が、予め定められた許容値M1となるように周速度V2を制御することで、オペレータによる製造装置1の設定のばらつきを防止できる。これにより、製造装置1の設定のばらつきによって、シガレットフィルターの品質が低下するのを防止できる。
【0095】
また制御部19は、数1に基づいてトウバンド残存捲縮RCR
(V2)を算出する演算部29を有しているので、プラグ残存捲縮RCR
(plug)と、搬出速度V
KDFと、開繊ロール対の周速度V2とを用いた数1を演算部29が演算することにより、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)を容易に算出できる。
【0096】
また演算部29は、数2に基づいて重量WT1を算出するので、予め定められたトウバンド60の仕様に基づいて、演算部29が重量WT1を容易に算出できる。また制御部19は、幅検出装置39の検出値に基づいて、最も下流側の第2開繊ロール対9と搬送ロール対12との間のトウバンド60の幅が目標範囲となるように、速度比V3/V2の値を予め定められた許容値M2に制御するので、オペレータが速度比V3/V2を制御する手間を軽減できると共に、オペレータが速度比V3/V2を設定する際の設定のばらつきを防止できる。
【0097】
(リラックス比及びストレッチ比について)
ストレッチ比V2/V0が過大になるにつれ、トウバンドのフィラメントが多く断裂し、フライの発生量が増加する。フライは、可塑剤添着装置の周囲に蓄積するため、フライが可塑剤を吸収した状態でプラグに混入する可能性が高まる。これにより、プラグの内部で可塑剤の濃度が局所的に高くなり、プラグのフィラメントが溶解してメルトホールが発生するおそれがある。
【0098】
ストレッチ比V2/V0が過小であると、トウバンドの開繊が不十分となる。これに伴い、シガレットフィルターの通気抵抗の発現性が低下し易くなる。この場合、シガレットフィルターで通気抵抗の一定の発現性を達成するためには、詰め込み重量NTWを増大させなければならず、シガレットフィルターの品質を仕様に合わせるのが困難になる。また、ストレッチ比V2/V0が過小であると、シガレットフィルターの通気抵抗が過度に低下しうる。これにより、シガレットフィルターがシガレットの煙を適切に濾過する性能等が得られにくくなる。
【0099】
また、リラックス比V3/V2が過小であると、トウバンド60が緩和領域L2を搬送される際に上下または左右に振動する。これにより、トウバンド60のフィラメントが損傷し、フライが発生し易くなる。
【0100】
また、リラックス比V3/V2が大きくなると、シガレットフィルターの通気抵抗の発現性が低下する。更に、リラックス比V3/V2が過大になると、トウバンド60を十分に緩和できない。これにより、シガレットフィルターの通気抵抗の発現性が過度に低下しうる。
【0101】
また、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とが共に過大であるということは、周速度V1、V2、V3が全て速くなることを意味する。この場合、結果的に詰め込み重量NTWが増大しうる。この条件では、シガレットフィルターの品質を仕様に合わせるのが困難になる。
【0102】
このように、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とが適切でないと、諸々の不都合が生じうる。従って、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とは、適切に制御する必要がある。また、シガレットフィルターの仕様に合わせて、通気抵抗及び詰め込み重量NTWを適切に調整するために、トウバンドの幅の目標範囲を適切に制御する必要がある。
【0103】
製造装置1によれば、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)が許容値M1となるように周速度V2を制御することで、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを適切に設定できる。製造装置1では、前記したように周速度V0の具体的な値を計測しなくても、周速度V2を制御することにより、ストレッチ比V2/V0を間接的に設定できる。
【0104】
図5は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)と差分αとの関係を示すグラフである。差分αは、ストレッチ比V2/V0とトウバンド残存捲縮RCR
(V0)との差分であり、以下の数4に基づいて算出される。
[数4]
α=V2/V0−RCR
(V0)
【0105】
ここでトウバンド残存捲縮RCR
(V0)は、捲縮が解除された状態でのトウバンド60の前記単位長当たりの重量WT1と、接触位置P1におけるトウバンド60の前記単位長当たりの重量WT4との重量比WT4/WT1である。
【0106】
図5に示すデータ収集に際し、トウバンド60のフィラメントとして、単繊維繊度(FD)が1.9のY型断面のフィラメントを用いた。トウバンド60の全繊度(TD)は、44200に設定した。製造装置1として、ハウニ社(ドイツ)製のプラグ巻上機(KDF−3/AF−3)を用いた。搬出速度V
KDFは400m/min、プラグ長は120mm、プラグ円周は24.4mm、プラグ重量は0.780g、詰め込み重量NTWは0.700gに設定した。
【0107】
発明者らの検討により、ストレッチ比V2/V0、トウバンド残存捲縮RCR
(V0)、及び差分αには、数4に示す相関関係があることが分かっている。また
図5に示すように、製造装置1内を搬送されるトウバンド60の単位時間当たりの搬送量が略一定であること(RCR
(V2)×V2=RCR
(0)×V0)により、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)と差分αとにも、相関関係があることが分かっている。
【0108】
発明者らが行った確認試験によれば、フライの発生を適切に防止すると共に詰め込み重量NTWを適切に調整し、且つ、シガレットフィルターの通気抵抗のばらつきを適切に抑制可能にするために、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを設定する際の差分αの最適値は、0.10以上0.35以下の範囲の値であった。
図5に示すように、差分αが0.10以上0.35以下の範囲の値となるとき、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の範囲は、0.80以上0.92以下の値となる。
【0109】
トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が0.82未満であると、ストレッチ比V2/V0が過大となり、フライが生じうる。また、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が0.94より大きいと、ストレッチ比V2/V0が過小となり、トウバンド60の開繊が不十分となる。
【0110】
図6は、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)とストレッチ比V2/V0との関係を示すグラフである。
図6は、
図5に示すデータ収集時と同様の条件により得られたデータを基に作成している。
図6に示すように、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値が0.80以上0.92以下の範囲の値となるとき、ストレッチ比V2/V0は、およそ1.60以上1.90以下の範囲の値となる。
【0111】
ここで、
図5に示すデータ収集時と同様の条件により発明者らが行った別の確認試験により、トウバンドの幅の目標範囲が24cm以上30cm以下の場合、ストレッチ比V2/V0の値を1.55以上1.75以下に設定し、且つ、リラックス比V3/V2を0.75以上0.92以下に設定するのが好ましいことが分かった。更に、ストレッチ比V2/V0の値を1.55以上1.65以下に設定し、且つ、リラックス比V3/V2を0.81以上0.84以下に設定するのがより好ましいことが分かった。
【0112】
図6に示すように、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)を0.80以上0.92以下の範囲の値に設定すると共に、周速度V3を調整することで、周速度V0を測定したり、周速度V0を直接調整することなく、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを好ましい値に設定し易くできる。
【0113】
なお、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2との好ましい値、及びトウバンドの幅の目標範囲は、トウバンドの品種、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)、搬出速度V
KDF、開繊処理部33内で隣接するロール間の距離、第1開繊ロール対8及び第2開繊ロール対9における上側ロール23、25及び下側ロール24、26の各材質の違い、下側ロール24、26をゴム製のロールとしたときの下側ロール24、26の摩耗具合等の条件によって若干変動する。
【0114】
しかしながら、
図5に示すトウバンド残存捲縮RCR
(V2)及び差分αの関係と、
図6に示すトウバンド残存捲縮RCR
(V2)及びストレッチ比V2/V0の関係とは、上記した条件が若干変動しても共通するものと推測される。ストレッチ比V2/V0、リラックス比V3/V2、及びトウバンドの幅の目標範囲は、シガレットフィルター製造装置の特性と、製造しようとするシガレットフィルターの仕様とに合わせ、総合的に調整することが望ましい。
【0115】
(比較試験)
製造装置1において、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを変化させた場合、製造されるシガレットフィルターの物理性能がどのように変化するかを調べた。
【0116】
トウバンド60は、単繊維繊度(FD)が1.9のY型断面のフィラメントを用いて製造した。トウバンド60の全繊度(TD)は、44200に設定した。製造装置1として、ハウニ社(ドイツ)製のプラグ巻上機(KDF−3/AF−3)の制御部に、制御プログラムを読み込ませたものを用いた。搬出速度V
KDFは400m/min、プラグ長は120mm、プラグ円周長は24.4mm、プラグ重量は0.780g、詰め込み重量NTWは0.700gに設定した。
【0117】
ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを変化させることにより、実施例1〜5及び比較例1〜3のサンプルのプラグを作製した。実施例1〜5及び比較例1〜3について、トウバンド残存捲縮RCR
(V0)、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)、差分α、可塑剤添着装置11の出口におけるトウバンドの幅、15分間で可塑剤添着装置11内に堆積したフライの発生量、プラグの通気抵抗(PD)、及びプラグの前記通気抵抗の標準偏差における変動値(PDCv)を調べた。
【0118】
PDは、サンプルの各プラグのトウ重量及びプラグ円周長が均一になるように補正して算出した。また、各サンプルの15本のプラグを1組とし、1組のプラグの通気抵抗値のばらつきからCv値を計算した。そして、10組分のCv値の平均値としてPDCvを算出した。
【0119】
なお本試験では、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)と、周速度V0と、差分αとの関係を調べると共に、トウバンド残存捲縮RCR
(V0)とストレッチ比V2/V0との数値を算出するため、速度計により周速度V0を測定した。試験結果を表1及び2に示す。
【0122】
表1及び2に示す結果から、本試験を行った範囲では、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)と差分αとの間に反比例の関係があることが分かった。この関係は、
図5の破線に示したように、略一次関数として表すことができる。従って、この関係に基づき、トウバンド残存捲縮RCR
(V2)を適切な値に設定することにより、周速度V0を測定することなくストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを設定できることを確認できた。
【0123】
また比較例1及び2のように、ストレッチ比V2/V0が過大であり、且つリラックス比V3/V2が過小である場合、PD、PDCv、及びフライの発生量が、いずれも増大することが分かった。
【0124】
また比較例3では、プラグを確認したところ、トウバンドのフィラメントの捲縮が十分に解除されておらず、トウバンドが未開繊状態(相当量の捲縮が残存した状態)であることが確認された。これは、ストレッチ比V2/V0が過小であったことが原因と考えられる。このようにトウバンドが未開繊状態の場合、プラグの通気抵抗の低下及びプラグの硬度の低下を招くおそれがある。
【0125】
ここで表1及び2には示さないが、ストレッチ比V2/V0を実施例1と同一に設定し、且つリラックス比V3/V2を実施例1よりも下げた場合、緩和領域L2において、トウバンドの走行状態が不安定になり、最終的にトウバンドが搬送ロール対に巻き付いて製造装置1を停止せざるを得なくなった。この結果により、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2との差を、ある程度以上に大きくすることは困難であると考えられる。
【0126】
また、ストレッチ比V2/V0を実施例1と同一に設定し、且つリラックス比V3/V2を実施例1よりも上げた場合、プラグの重量が過大になり、周速度V0〜V3を全て下げざるを得なくなった。この結果により、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とを、共にある程度より大きくすることは困難であると考えられる。
【0127】
これに対して実施例1〜5では、フライの発生量を低減できると共に、PDを安定化でき、且つ、PDCvも抑制できることが分かった。このような結果が得られた理由として、ストレッチ比V2/V0とリラックス比V3/V2とが適切に設定されたことで、良好な性能を有するプラグが安定して製造されたと考えられる。なお、表1及び2に記載するように、実際に複数のプラグを異なる条件で製造する際には、プラグ残存捲縮RCR
(plug)の値は、若干異なる場合がある。
【0128】
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。緩和領域L2において、幅検出装置39によりトウバンド60の幅を測定する搬送位置P3は、可塑剤添着装置11の出口側の位置に限定されず、可塑剤添着装置11の入口側の位置でもよい。
【0129】
記憶部30には、複数の異なる仕様のシガレットフィルターについて過去に算出したトウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値を、シガレットフィルターの仕様と関連付けて記憶させてもよい。これにより、過去に製造した仕様のシガレットフィルターを製造する際、当該仕様に対応するトウバンド残存捲縮RCR
(V2)の値を用いて、シガレットフィルター製造装置を迅速に制御できる。
【0130】
緩和処理部34は、プレテンションロール対7、第1開繊ロール対8、及び第2開繊ロール対9の3対(計6本)のロールを有する構成に限定されず、これ以外の本数のロールを有してもよい。
【0131】
上記実施形態では、制御部19が、幅検出装置39の検出信号に基づいてリラックス比V3/V2を制御したが、これに限定されない。例えば、オペレータがトウバンド60の幅を確認しながら周速度V3を調節することで、リラックス比V3/V2を制御してもよい。