(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873641
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
E01D19/12
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-186909(P2016-186909)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-53441(P2018-53441A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】前田 利光
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩
(72)【発明者】
【氏名】輿石 正己
(72)【発明者】
【氏名】小林 顕
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−264040(JP,A)
【文献】
特開2015−086594(JP,A)
【文献】
特開2005−023726(JP,A)
【文献】
特開2008−057678(JP,A)
【文献】
実開平06−086277(JP,U)
【文献】
特開平09−100512(JP,A)
【文献】
特開2008−075251(JP,A)
【文献】
特開2013−040484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う床版同士を連結するためのループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版であって、
前記ループ状継手は、床版本体に埋設された主筋に形成され、前記床版本体の接合端面から軸方向外側に突出して配設され、且つ、軸方向からの正面視で前記床版の厚さ方向の鉛直方向に対して所定の角度で交差するように傾斜して配設され、
隣り合う前記ループ状継手の一部は、平面視で重なって配置されていることを特徴とするループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床版同士を連結する手段の一つとして、例えば、
図3及び
図4に示すように、互いの床版1、2のループ状の継手鉄筋(ループ状継手3)を橋軸直角方向の幅方向T1に間隔をあけ、あるいは重ね合わせて配置し、各ループ状継手3内に補強鉄筋4を挿入配置するとともに互いの床版1、2の接合端面1a、2a間の間詰め部/連結部5にコンクリート6を打設することにより、隣り合う床版1、2同士を連結する構造Aが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この種の連結構造Aを適用する際には、床版本体1b、2bの接合端面1a、2aからループ状継手3の両端部を突出させるように鉄筋を床版本体1b、2bに埋め込み配置し、予めループ状継手3を備えたプレキャストコンクリート床版(プレキャストPC床版含む)を用いることが多い。すなわち、一般に、このループ状継手3を備えた連結構造Aは、プレキャストコンクリート床版1、2同士をRC構造で接続するように構成されている。
【0004】
さらに、ループ状継手3は、橋軸方向T2からの正面視で床版1、2の厚さ方向T3の鉛直方向に配設されるとともに橋軸直交方向の幅方向T1に所定の間隔をあけて複数配設される。また、ループ状継手3の内曲げ直径dB等は、ループ鉄筋径と配置間隔等に応じて設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−264040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、「道路橋示方書・同解説 鋼橋編」(日本道路協会:平成24年3月)では、PC床版の最小床版厚が床版支間4mの場合に210mmとなる。
【0007】
これに対し、上記従来のループ状継手3の連結構造Aを備える場合には、そのプレキャストPC床版の最小床版厚がループ状継手3の曲げ加工形状(内曲げ直径dB)と床版配筋の取合い及びプレテンションPC鋼材の配置余裕によって決まり、床版支間4mの場合の最小床版厚が240mmとなってしまう(
図4参照)。
【0008】
すなわち、上記従来のループ状継手3の連結構造A、これを備えた床版1、2においては、「道路橋示方書・同解説 鋼橋編」(日本道路協会:平成24年3月)で定められた最小床版厚の210mmを満たすことができず、その適用に大きな制限が生じていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、従来より最小床版厚を小さくすることができ、適用性の向上を可能にするループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明のループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版は、隣り合う床版同士を連結するためのループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版であって、前記ループ状継手は、床版本体に埋設された主筋に形成され、前記床版本体の接合端面から軸方向外側に突出して配設され、且つ、軸方向からの正面視で前記床版の厚さ方向の鉛直方向に対して所定の角度で交差するように傾斜して配設され
、隣り合う前記ループ状継手の一部は、平面視で重なって配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版においては、ループ状継手を所定の角度で斜設することにより、従来の垂直にループ状継手を配設した場合と比較し、プレキャストコンクリート床版の厚さを傾斜角度に応じて小さくすることができる。
【0013】
これにより、床版厚さを薄くし、軽量化を図ることが可能になる。そして、例えば、最小床版厚を「道路橋示方書・同解説 鋼橋編」(日本道路協会:平成24年3月)で規定されている値にすることも可能になり、ループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版の適用範囲を拡大する(汎用性を高める)ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版、床版の連結構造を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版、床版の連結構造を示す正面図である。
【
図3】従来のループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版、床版の連結構造を示す側面図である。
【
図4】従来のループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版、床版の連結構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1及び
図2を参照し、本発明の一実施形態に係るループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版について説明する。なお、本実施形態は、道路橋や鉄道橋などの橋梁のプレキャストコンクリート床版に関するものである。
【0016】
本実施形態のプレキャストコンクリート床版1、2は、
図1及び
図2に示すように、隣り合うプレキャストコンクリート床版1、2を連結するためのループ状継手3を備えて形成されている。また、このプレキャストコンクリート床版1、2では、床版本体1b、2bのコンクリートに埋設された主筋(上主筋と下主筋)を床版本体1b、2bの接合端面1a、2aから軸方向(橋軸方向)T2外側に突出させつつ略U字状を呈するように配設してループ状継手(ループ配筋部)3が形成されている。
【0017】
また、このループ状継手3は、プレキャストコンクリート床版1、2の幅方向T1に所定の間隔をあけて複数配設されている。
【0018】
そして、例えば、隣り合うプレキャストコンクリート床版1、2の接合端面1a、2aから突出したループ状継手3を重ね合わせるようにし、各ループ状継手3内に補強鉄筋4を挿入配置するとともに互いのプレキャストコンクリート床版1、2の接合端面1a、2a間の間詰め部/連結部5にコンクリート6を打設することにより、隣り合う床版1、2同士がループ状継手3、コンクリート6からなる連結構造(RC構造部)Bで一体に接続される。
【0019】
一方、本実施形態のプレキャストコンクリート床版1、2及び床版の連結構造Bにおいては、プレキャストコンクリート床版1、2の接合端面1a、2aから突出するループ状継手3がプレキャストコンクリート床版1、2の軸方向T1からの正面視で床版1、2の厚さ方向T3の鉛直方向に対して所定の角度θで交差するように傾斜して配設されているまた、複数のループ状継手3はそれぞれ傾斜角度θを同等にし、平行に配設されている。
【0020】
このように複数のループ状継手3を所定の傾斜角度θで斜設することにより、従来の垂直にループ状継手3を配設した場合と比較し、主筋のかぶりを確保しつつプレキャストコンクリート床版1、2の厚さを傾斜角度θに応じて小さくすることができる。
【0021】
これにより、本実施形態のプレキャストコンクリート床版1、2においては、ループ状継手3を斜めに倒して床版厚さを薄くし、軽量化を図ることが可能になる。例えば、プレキャストコンクリート床版1枚当たり13%程度の軽量化できることが確認されている。
【0022】
また、最小床版厚を「道路橋示方書・同解説 鋼橋編」(日本道路協会:平成24年3月)で規定されている値にすることが可能になり、ループ状継手3を備えたプレキャストコンクリート床版1、2の適用範囲を拡大する(汎用性を高める)ことが可能になる。これにより、今後、床版大規模更新工事などへのループ状継手3を備えたプレキャストコンクリート床版1、2の適用を期待することができる。
【0023】
さらに、ループ状継手3を所定の傾斜角度θで斜設することにより、従来の垂直にループ状継手3を配設した場合と比較し、床版厚さを薄くしても床版1、2や連結構造Bのせん断耐力、曲げ耐力等を高めることが可能になる。
【0024】
以上、本発明に係るループ状継手プレキャストコンクリート床版の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0025】
例えば、本実施形態では、本発明に係るプレキャストコンクリート床版(床版)が橋梁の床版であるものとして説明を行ったが、本発明に係るプレキャストコンクリート床版(床版)は建物等、他の構造物の床版に適用しても構わない。この場合であっても本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 プレキャストコンクリート床板(床版)
1a 接合端面
1b 床版本体
2 プレキャストコンクリート床板(床版)
2a 接合端面
2b 床版本体
3 ループ状継手
4 補強鉄筋
5 連結部
6 コンクリート
A 従来の床版の連結構造
B 床版の連結構造
T1 幅方向
T2 軸方向
T3 厚さ方向